説明

電子機器筐体のカード挿入部の構造

【課題】カード挿入口を、容易に且つコストを抑えながら電子機器筐体に設けることができる、電子機器筐体のカード挿入部の構造を提供する。
【解決手段】デジタル・アナログコンバータユニット1の筐体2を、カードスロット5が組み付けられているシャーシ6と、シャーシ6を覆うカバー7とで構成し、カードスロット5の差込口23の前方において、シャーシ6とカバー7との間に、ICカード100の挿入方向と直交する断面形状にほぼ一致するとともに、ICカード100を挿通可能な大きさの隙間42を設けることにより、ICカード挿入部43を形成する。そして、ICカード挿入部43において、隙間42の一部に、隙間42を広げて拡張部45を形成し、シャーシ6及びカバー7の少なくとも一方に、隙間42を構成する端部からカードスロット5の差込口23の方向に延設してガイド部29を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、テレビジョン放送用のヘッドエンド装置などの電子機器筐体におけるカード挿入部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器筐体の前面に、プラスチック製のパネルが取り付けられ、当該パネルに、カードスロットにカードを差し込むための挿入口が一体形成されている構造は、実用化され既に周知技術となっている。例えば、特許文献1の具体例によれば、扁平な箱形状の電子機器50の正面にパネル51が配設されており、パネル51は、そのX2側の端寄りの箇所に、全高さに亘って表面に対してY1方向に凹んでいる凹段部52を有し、この凹段部52に、カードを挿入するためのカード挿入スロット53が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−85066号公報(第4頁、第1、2、5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カード挿入口を、電子機器の筐体とは別に設けたパネルに形成するとなれば、筐体への組み付けなど、パネルに係る製造工程が必要になるとともに、パネル用に金型を起こす必要があるためコストも嵩む。
【0005】
そこで、本発明は、電子機器筐体のカード挿入口を、容易に且つコストを抑えながら筐体に設けることができる、電子機器筐体のカード挿入部の構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造は、カードスロットを内蔵した電子機器筐体におけるカード挿入部の構造であって、
前記電子機器筐体を、前記カードスロットが組み付けられているシャーシと、当該シャーシを覆うカバーとで構成し、前記カードスロットの差込口の前方において、前記シャーシと前記カバーとの間に、前記カードの挿入方向と直交する断面形状にほぼ一致するとともに、前記カードを挿通可能な大きさの隙間を設けることにより、前記カード挿入部を形成し、
当該カード挿入部において、前記隙間の一部に、当該隙間を広げて拡張部を形成し、前記シャーシ及び前記カバーの少なくとも一方に、前記隙間を構成する端部から前記カードスロットの差込口の方向に延設してガイド部を設けていることを特徴としている。
【0007】
この電子機器筐体のカード挿入部の構造によれば、前記カードが、前記隙間と前記カイド部とにより、内蔵されている前記カードスロットの前記差込口に案内されるため、確実に前記カードスロットに差し込むことができる。さらに、前記隙間の一部には、当該隙間を広げて前記カードを持つ指が入る程度の前記拡張部を形成しているため、前記カードを持つ指に、前記シャーシや前記カバーが干渉することを防ぐことができ、前記カードの前記カードスロットへの差込操作がし易くなる。しかも、前記カードの挿入部は、前記シャーシ及び前記カバーの一部として構成されるため、別途部品を設ける必要がなく、部品点数を抑えることができる。
【0008】
請求項2に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造は、少なくともシャーシを板金製とし、ガイド部を、隙間を構成する前記シャーシの端部において曲げ加工を行なうことにより設けることを特徴としている。この電子機器筐体のカード挿入部の構造によれば、簡単な前記シャーシの加工により、前記ガイド部を設けることができ、しかも、パネルが不要になるため、パネルに係る製造工程やコストを省くことができる。
【0009】
請求項3に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造は、拡張部を、挿入されるカードの表面に設けられているICチップが通過する位置に形成することを特徴としている。この電子機器筐体のカードの挿入部の構造によれば、前記カードを筐体に挿入する際、前記カードの表面に設けられている前記ICチップが、シャーシ又はカバーに接触することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造は、カードがカードスロットから逸れる誤挿入が生じないカードの挿入部を、簡単且つコストを抑えながら設けることができる。また、カードを持つ指に、シャーシやカバーが干渉しにくいため、カードのカードスロットへの差し込みを容易に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造は、シャーシに曲げ加工を行なうことで、ガイド部を設けることができるため、製造工程の簡略化を図るとともに、コストを抑えることができる。
【0012】
請求項3に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造は、カードの表面に設けられたICチップを傷つけることなく、カードスロットに差し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るカード挿入部を備えたデジタル・アナログコンバータユニットの実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は右側面図。
【図2】図1(b)におけるA−A矢視方向断面図。
【図3】デジタル・アナログコンバータユニットが、ラックに収納されている状態を示すラックの正面図。
【図4】(a)は図1に示すデジタル・アナログコンバータユニットのシャーシの平面図、(b)は右側面図。
【図5】図4(b)におけるB−B矢視方向断面図。
【図6】(a)は図1に示すデジタル・アナログコンバータユニットのカバーの平面図、(b)は図(a)におけるC−C矢視方向断面図。
【図7】(a)は図1に示すデジタル・アナログコンバータユニットに内蔵されているカードスロットの右側面図、(b)はカードスロットの平面図。
【図8】(a)はシャーシにカバーを取り付けた状態を示すデジタル・アナログコンバータユニットの平面図、(b)はICカード挿入部を塞ぐ蓋の平面図。
【図9】(a)はカード挿入部にICカードを挿入している状態を示すデジタル・アナログコンバータの奥行き方向の縦断面図、(b)は図(a)の部分拡大図。
【図10】挿入されたICカードをカードスロットに差し込んだ状態を、図4(b)を用いて示した図。
【図11】(a)はカードスロットにICカードが差し込まれた状態を、図7(a)を用いて示した図、(b)は図(a)におけるD−D矢視方向断面図、(c)はICカード挿入部を蓋で塞いだ状態を、図2を用いて示した部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電子機器筐体のカード挿入部の構造の実施形態について、図1〜図11を参照しつつ説明する。
【0015】
図1(a)は、テレビジョン放送のヘッドエンド装置であるデジタル・アナログコンバータユニット1の平面図を示し、図1(b)は右面図を示している。これらの図1(a)、(b)に示すように、デジタル・アナログコンバータ1は、扁平な縦長の筐体2に、図2の断面図に示すように、チューナ回路基板3と変調回路基板4、及びICカード100を差し込むカードスロット5が内蔵されている。このデジタル・アナログコンバータユニット1は、地上デジタル放送のチャンネルを、既存のアナログテレビで視聴できるようにするため、デジタル放送信号をアナログ放送信号に変換できるようになっており、図3に示すように、チャンネル数に応じた数のデジタル・アナログコンバータユニット1が、電源ユニット201と共に、ラック200に収納されている。
【0016】
デジタル・アナログコンバータユニット1の筐体2は、板金製であり、チューナ回路基板3と変調回路基板4、及びICカード100を差し込むカードスロット5が組み付けられていて、図4及び図5の断面図に示すシャーシ6と、シャーシ6を覆うカバー7とで構成されている(図6)。
【0017】
シャーシ6は、筐体2の左側面を構成する矩形状の筐体左側面板8の各辺に、折り曲げ加工によって、上下カバー取付部9、10や筐体2の筐体正面板11及び筐体背面板12が設けられている。これらの上下カバー取付部9、10と筐体正面板11及び筐体背面板12は、筐体2の内側方向に直角に折り曲げることによって設けられており、上下カバー取付部9、10は、筐体左側面板8の上下にそれぞれ位置し、筐体正面板11及び筐体背面板12は、筐体左側面板8の両側縁にそれぞれ位置している。そして、筐体正面板11には、チャンネル表示部を備えた縦長長方形状のパネル13が取り付けられており、同パネル13の上下両端部には、デジタル・アナログコンバータユニット1を、図示しない電子機器用筐体に螺子止めする際に用いる取付螺子14、15が設けられている。
【0018】
図4(a)の平面図及び図4(b)の右側面図、そして、図5の断面図に示すように、シャーシ6に組み付けられているチューナ回路基板3は、メイン基板16とサブ基板17とで構成されており、メイン基板16が、シャーシ6の筐体2の上側において、メイン基板取付部18に固定されている。サブ基板17は、メイン基板16上に設けられているサブ基板取付部19と、上カバー取付部9に形成されているサブ基板取付部20とに、メイン基板16と間隔を設けた状態で固定されている。上カバー取付部9に形成されているサブ基板取付部20は、上カバー取付部9において、筐体2の厚み方向に突出するように設けられている門型部分21の横渡し部を、下方に直角に折り曲げることによって設けられている。そして、シャーシ6の下側において、変調回路基板4が、変調基板取付部22に固定されて配設されている。
【0019】
チューナ回路基板3のメイン基板16とサブ基板17との間には、カードスロット5が、差込口23を上方に向け、且つICカード100の長さに応じた距離を上カバー取付部9から設けて、メイン基板16上に固定されている。カードスロット5は、図7に示すように、扁平な矩形状に形成されており、一側面に差込口23が設けられている。差込口23の内部には、差し込まれたICカード100を、対面して配設されている第1突起部24に押し付けた状態で保持し、且つICカード100のICチップ101と接触する接触端子25が、第1突起部24の方向に付勢された状態で設けられている。同接触端子25のさらに奥には、対面して配設されている第2突起部27に、差し込まれたICカード100を押し付けた状態で保持することができるストッパー用バネ28が、第2突起部27の方向に付勢された状態で設けられている。
【0020】
また、上カバー取付部9において、カードスロット5の差込口23の前方に位置する箇所には、門型部分21の内側にあって、筐体2の厚み方向に突出したのち、先端部を下方に向かって直角に屈曲させた断面逆L字型のガイド部29が、間隔をあけて二個設けられている。そして、カバー7を螺子止めするための螺子孔35が、門型部分21と、門型部分21から筐体背面板12寄りにおいて、筐体2の厚み方向に突出して形成されている取付片36とに設けられている。
【0021】
一方、シャーシ6に設けられている筐体正面板11及び筐体背面板12には、先端部を筐体2の内側に屈曲させて断面L字型に形成し、螺子孔41を備えたカバー7の取付部30、31が設けられている。また、筐体背面板12の上部には、筐体2の内部の換気を行なうための空冷用ファン32が配設され、空冷用ファン32の下方には、端子33、34が二箇所に設けられている。
【0022】
それから、カバー7は、筐体2の右側面を構成する矩形状の筐体右側面板37において、上下各辺に、折り曲げ加工によって、筐体2の筐体上面板38及び筐体底面板39が設けられている。筐体上面板38と筐体底面板39とは、筐体2の内側方向に直角に折り曲げられているため、カバーは、コの字型の断面形状になっている。そして、カバー7の筐体上面板38には、先端部に凸型の切欠き部40が形成されている。
【0023】
以上のように構成されているシャーシ6にカバー7を被せ、シャーシ6の上下カバー取付9、10の螺子孔35と、筐体正面板11及び筐体背面板12の取付部30、31の螺子孔41とにより、カバー7を螺子止めして固定する。すると、図8(a)に示すように、筐体上面板38におけるカードスロット5の差込口23の前方に位置する箇所に、シャーシ7とカバー7との間に隙間42が設けられてICカード挿入部43が形成される。隙間42は、カバー7の切り欠部40とガイド部29とによって構成されており、筐体2の奥行き方向と平行な部分のうち、筐体左側面板8寄りの二箇所の部分44と、シャーシ6のガイド部29との間隔が、ICカード100の厚みにほぼ一致し、且つICカード100を挿通可能な大きさになっている。隙間42は、その幅方向においても、ICカード100の挿入方向と直交する幅方向の長さにほぼ一致し、且つICカード100を挿通可能な大きさになっている。そして、中央部には、隙間42の間隔を広げるようにして拡張部45が形成されている。この拡張部45は、ICカード100を持つ指が入る程度の大きさになっており、挿入されるICカード100のICチップ101が通過する位置に設けられている。
【0024】
このICカード挿入部43には、シャーシ6の端部から、カードスロット5の差込口23の方向に延設した状態になっているガイド部29により、挿入されたICカード100を、カードスロット5の差込口23に案内することができる。そして、挿入されたICカード100が不用意に抜き取られないようにするための蓋46が、カバー7に設けられている螺子孔47を利用して、螺子止めにより取り付けることができるようになっている。
【0025】
次に、上記のICカード挿入口43を備えたデジタル・アナログコンバータユニット1に、ICカード100を挿入する場合について説明を行なう。
【0026】
図9(a)、(b)に示すように、ICカード100を、ICチップ101が設けられている面を、筐体2の左側面方向に向けて、長手方向を縦向きにしてICカード挿入口43に挿入する。ICカード100は、シャーシ6とカバー7との隙間42及びガイド部29により方向が逸れることがなく、奥にあるカードスロット5の差込口23に案内される。この際、隙間42の拡張部45によって、ICチップ101とシャーシ6との接触が避けられる。そして、さらにICカード100を押し込むことにより、ICカード100をカードスロット5に差し込む。ICカード100をカードスロット5に差し込む際、ICカード挿入口43の拡張部45によって、ICカード100を持った指に、シャーシ6やカバー7が干渉することがなく、ICカード100をカードスロット5に楽に差し込むことができる。図10に示すように、カードスロット5に差し込まれたICカード100は、図11(a)、(b)に示すように、接触端子25と第1突起部24との間及びストッパー用バネ28と第2突起部27との間で挟まれて保持される。そして、図11(c)に示すように、接触端子25によってICチップ101に記録されている情報が読み取られる。ICカードは、この状態でも脱落することはないが、不用意に抜き取られることを防止するため、蓋46をカバー7に螺子止めしてICカード挿入口43を塞ぐ。なお、カードについては、ICカードを用いて説明したが、磁気カードを用いてもよく、その際は、スロット内に、磁気を読み取る装置を設けておけばよい。
【符号の説明】
【0027】
1 デジタル・アナログコンバータユニット
2 筐体
3 チューナ回路基板
4 変調回路基板
5 カードスロット
6 シャーシ
7 カバー
8 筐体左側面板8
9 上カバー取付部
10 下カバー取付部
11 筐体正面板
12 筐体背面板
13 パネル
14、15 取付螺子
16 メイン基板
17 サブ基板
18 メイン基板取付部
19、20 サブ基板取付部
21 門型部分
22 変調回路基板取付部
23 差込口
24 第1突起部
25 接触端子
27 第2突起部
28 ストッパー用バネ
29 ガイド部
30、31 取付部
32 空冷用ファン
33、34 端子
35 螺子孔
36 取付片
37 筐体右側面板
38 筐体上面板
39 筐体底面板
40 切欠き部
41 螺子孔
42 隙間
43 カード挿入部
44 部分
45 拡張部
46 蓋
100 ICカード
101 ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードスロットを内蔵した電子機器筐体におけるカード挿入部の構造であって、
前記電子機器筐体が、前記カードスロットが組み付けられているシャーシと、当該シャーシを覆うカバーとからなり、前記カードスロットの差込口の前方において、前記シャーシと前記カバーとの間に、前記カードの挿入方向と直交する断面形状にほぼ一致するとともに、前記カードを挿通可能な大きさの隙間を設けることにより、前記カード挿入部が形成され、
当該カード挿入部において、前記隙間の一部には、当該隙間の間隔を広げて拡張部が形成されており、前記シャーシ及び前記カバーの少なくとも一方に、前記隙間を構成する端部から前記カードスロットの差込口の方向に延設してガイド部が設けられていることを特徴とする電子機器筐体のカード挿入部の構造。
【請求項2】
少なくとも前記シャーシが板金製であり、前記ガイド部が、前記隙間を構成する前記シャーシの前記端部において曲げ加工を行なうことにより設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子機器筐体のカード挿入部の構造。
【請求項3】
前記拡張部が、挿入される前記カードの表面に設けられているICチップが通過する位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器筐体のカード挿入部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−192765(P2010−192765A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37011(P2009−37011)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】