説明

電子機器筐体の嵌着構造

【課題】 スムーズに摺動する電子機器筐体の嵌着摺動構造を提供する。
【解決手段】 電子機器筐体1に穿設された開口部2に嵌着されて摺動する成形品の摺動体3を備えた電子機器筐体の嵌着摺動構造であって、筐体の表面1Sには、摺動体の過剰摺動を防ぐ1対の摺動阻止穴12A、12Bが、摺動体の摺動方向において開口部を挟んで穿設され、摺動体の摺動方向の両端には、摺動阻止穴に係止される1対の係止爪3A、3Bが設けられ、係止爪はそれぞれ、摺動体の摺動方向において端部ほど狭まった傾斜面3M、3Nを有し、摺動阻止穴はそれぞれ、係止爪の傾斜面に対応した傾斜面12M、12Nを有し、1対の係止爪間距離Xは、1対の摺動阻止穴間距離Yより短く一方の係止爪は常に筐体の表面にあるので、一方の係止爪が一方の摺動阻止穴から容易に出て、摺動体は移動したい方向に容易にスライド可能で、他方の係止爪が他方の摺動阻止穴に係止される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は電子機器筐体の嵌着摺動構造に係わり、特に、摺動容易な成形品の摺動体を有する電子機器筐体の嵌着摺動構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターホン等の電子機器には、筐体の一部に開口部を穿設し、この開口部に成形品の摺動体を採用し、開口部内部に設けられたディプスイッチ等の蓋としている。
従来この種の電子機器筐体の嵌着摺動構造は、図3(a)、(b)に示すように、電子機器筐体10に穿設された開口部20と、開口部20に嵌着されて摺動する成形品の摺動体30とから成り、電子機器筐体10の表面10Sには、摺動体30の摺動範囲を決めて係止する断面が実質的に半円形の穴13A、13Bが穿設され、摺動体30の一端には穴13A、13Bに係止され穴13A、13Bと相似形の係止爪34が設けられている。
【0003】
また、図2(a)、(b)に示すように、摺動体30は、電子機器筐体の表面10Sを摺動し開口部20を覆う蓋30Cと、蓋30Cから電子機器筐体の内部に延設される脚30Lと、脚30Lにおいて蓋30Cと対抗する側に設けられた1対の爪30F、30Fとから成る。
開口部20には、上述の摺動体30の爪30F、30Fが係止されるため、摺動体30が摺動する方向に沿って電子機器筐体の内面10Uに突設された並行な摺動体ガイド突起11C、11Cが設けられている。
【0004】
従来の電子機器筐体の嵌着摺動構造は、組立時に、摺動体30の弾性を利用して1対の脚30L、30Lを近づけるようにしながら、1対の爪30F、30Fおよび脚30L、30Lを開口部20から電子機器筐体1の内部に嵌着する。次いで摺動体30の蓋30Cを矢印P方向にスライドさせ、係止爪34を穴13Aから移動させて穴13Bの位置で停止させる。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、従来の電子機器筐体の嵌着摺動構造は、合成樹脂成形品である摺動体30の蓋30Cを筐体1の表面1S上をスライドさせようとすると、断面が実質的に半円形の係止爪34が、相似形状の穴13A(または13B)に食込む状態となり、非常にスライドさせにくいという難点があった。
【0006】
本考案は、上記従来の難点を解決するためになされたもので、係止爪と穴を改良してスムーズにスライドする電子機器筐体の嵌着摺動構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造は、電子機器筐体に穿設された開口部に嵌着されて摺動する成形品の摺動体を備えた電子機器筐体の嵌着摺動構造であって、電子機器筐体の表面には、摺動体の過剰摺動を防ぐ1対の摺動阻止穴が、摺動体の摺動方向において開口部を挟んで穿設され、摺動体の摺動方向の両端には、摺動阻止穴に係止される1対の係止爪が設けられ、係止爪はそれぞれ、摺動体の摺動方向において端部ほど狭まった傾斜面を有し、摺動阻止穴はそれぞれ、係止爪の傾斜面に対応した傾斜面を有し、1対の係止爪間距離は、1対の摺動阻止穴間距離より短いものである。
【0008】
係止爪が摺動体の両端にあり、摺動阻止穴には摺動方向に向う斜面が形成され、係止爪はそれに対応する斜面を有し、一方の係止爪は常に筐体の表面にあるので、一方の係止爪が一方の摺動阻止穴から容易に出て、摺動体は移動したい方向に容易にスライドして、他方の係止爪が他方の摺動阻止穴に係止される。
【0009】
【考案の実施の形態】
以下、本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造の実施例を図面を参照して詳述する。
インターホン等の電子機器には、筐体の一部に開口部を穿設し、この開口部に成形品の摺動体を採用し、開口部内部に設けられたディプスイッチ等の蓋としている。
【0010】
本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造は、図1(a)、(c)に示すように、電子機器筐体1に穿設された開口部2と、開口部2に嵌着されて摺動する成形品の摺動体3とから成る。
摺動体3は合成樹脂で成形され、電子機器筐体1の表面1Sを摺動し開口部2を覆う蓋3Cと、蓋3Cのほぼ中央から電子機器筐体1の内部に延設される脚3Lと、脚3Lにおいて蓋3と対抗する側に設けられ後述する並行な摺動体ガイド突起11A、11Bに係止される係止突部3Sとから成る。
【0011】
図1(a)、(b)に示すように、開口部2に近い電子機器筐体1の表面1Sに、摺動体3の過剰摺動を防ぐ1対の摺動阻止穴12A、12Bが、摺動体3の摺動方向において開口部2を挟んで穿設され、摺動体3の摺動方向の両端には、摺動阻止穴12A、12Bに係止される1対の係止爪3A、3Bが設けられ、係止爪3A、3Bはそれぞれ、摺動体3の摺動方向において端部ほど狭まった傾斜面3M、3Nを有し、摺動阻止穴12A、12Bはそれぞれ、係止爪3A、3Bの傾斜面3M、3Nに対応した傾斜面12M、12Nを有し、1対の係止爪間距離Xは、1対の摺動阻止穴間距離Yより短く、1方の係止爪(3Aまたは3B)は常に筐体1の表面1Sにある。
【0012】
また、本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造では、開口部2には、摺動体3が摺動する方向に沿って並行な摺動体ガイド突起11A、11Bが、電子機器筐体1の内面1Uに、係止突部3Sを除く脚3Lと実質的に等しくなるよう突設されている。また、並行な摺動体ガイド突起11A、11Bの一方(図1では11A)
は、開口部2の長手方向と実質的に等しい長さを有し、他方(図1では11B)
は、摺動体3の脚3Lが嵌着可能なように、開口部2の長手方向において、摺動体3の脚3Lの長さMだけ短く形成される(図1(a)、(d))。
【0013】
この片側だけ摺動体ガイド突起11Aが形成された開口部2Aでは、開口部2の幅は脚3Lの幅Nと実質的に等しく(図1(c))、摺動体3の脚3Lが嵌着される位置となり、両側とも摺動体ガイド突起11A、11Bが形成された開口部2Bでは、開口部2の幅は脚3Lの幅Nより摺動体ガイド突起11Bの幅だけ狭く、摺動体3が係止される位置となる。
【0014】
本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造の組立は、開口部2Aから摺動体3の脚3Lを電子機器筐体の中に嵌着させ(図1(c)矢印A)、脚3Lを横にスライド(図1(d)の矢印B)した後、脚3Lの係止突部3Sが摺動体ガイド突起11A、11Bに係止されるよう、摺動体3の蓋3Cを矢印Cのようにスライドさせる。
【0015】
このとき係止爪3Aは、傾斜面3Mが筐体1の表面1Sの傾斜面12Mを滑り出て、筐体1の表面1S上にあった係止爪3Bと共に表面1Sを移動し、係止爪3Bが、開口部2を挟み反対側にある摺動阻止穴12Bに係止され、係止爪3Aが筐体1の表面1S上にくる(図1(b))。こうして、摺動体3の過剰摺動は防止される。
【0016】
なお、本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造は、筐体1の内部側が図2(a)、(b)に示すような構成、即ち、開口部20に嵌着されて摺動する成形品の摺動体30は、電子機器筐体の表面10Sを摺動して開口部20を覆う蓋30Cと、蓋30Cから電子機器筐体の内部に延設される脚30Lと、脚30Lにおいて蓋30Cと対抗する側に設けられた1対の爪30F、30Fとで構成され、開口部20には、摺動体30の爪30F、30Fが係止されるため、摺動体30が摺動する方向に沿って電子機器筐体の内面10Uに突設された並行な摺動体ガイド突起11C、11Cが設けられる構成にも採用することができる。
【0017】
実施例は、摺動体3を開口部内部に設けられたディプスイッチ等の蓋として説明したが、摺動体3がスライドスイッチを駆動させるスイッチ駆動部、あるいはその他の駆動部品であっても同様に好適である。
【0018】
【考案の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本考案による電子機器筐体の嵌着摺動構造は、電子機器筐体に穿設された開口部に嵌着されて摺動する成形品の摺動体を備えた電子機器筐体の嵌着摺動構造であって、電子機器筐体の表面には、摺動体の過剰摺動を防ぐ1対の摺動阻止穴が、摺動体の摺動方向において開口部を挟んで穿設され、摺動体の摺動方向の両端には、摺動阻止穴に係止される1対の係止爪が設けられ、係止爪はそれぞれ、摺動体の摺動方向において端部ほど狭まった傾斜面を有し、摺動阻止穴はそれぞれ、係止爪の傾斜面に対応した傾斜面を有し、1対の係止爪間距離は、1対の摺動阻止穴間距離より短く一方の係止爪は常に筐体の表面にあるので、一方の係止爪が一方の摺動阻止穴から容易に出て、摺動体は移動したい方向に容易にスライド可能で、他方の係止爪が他方の摺動阻止穴に係止される。
【提出日】平成8年11月27日

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】電子機器筐体(1)に穿設された開口部(2)に嵌着されて摺動する成形品の摺動体(3)を備えた電子機器筐体の嵌着摺動構造であって、前記電子機器筐体の表面(1S)には、前記摺動体の過剰摺動を防ぐ1対の摺動阻止穴(12A、12B)が、前記摺動体の摺動方向において前記開口部を挟んで穿設され、前記摺動体の摺動方向の両端には、前記摺動阻止穴に係止される1対の係止爪(3A、3B)が設けられ、前記係止爪はそれぞれ、前記摺動体の摺動方向において端部ほど狭まった傾斜面(3M、3N)を有し、前記摺動阻止穴はそれぞれ、前記係止爪の傾斜面に対応した傾斜面(12M、12N)を有し、前記1対の係止爪間距離(X)は、前記1対の摺動阻止穴間距離(Y)より短いことを特徴とする電子機器筐体の嵌着摺動構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】第3036211号
【登録日】平成9年(1997)1月29日
【発行日】平成9年(1997)4月15日
【考案の名称】電子機器筐体の嵌着構造
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−7843
【出願日】平成8年(1996)8月7日
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)