説明

電子機器筐体

【課題】
本発明の目的は、降雨による水滴を筐体内に浸入させること無く筐体内に発生したガスを外部に排気することである。
【解決手段】
本発明は上記目的を達成するために、通気穴を有した筐体に、通気穴に対して所定の間隔を設けて通気穴を覆い防水面を有する防水板、水抜き穴を有した防水部、水抜き穴を有した通気部を設けて3重板構造とすることにより、筐体内に発生したガスを筐体外に排出させると同時に、筐体内に浸入しようとする水滴を遮断し、浸水制御を可能としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に屋外設置型の電子機器筐体の通気構造及び防水構造に関するものである。特に、無線通信システムや携帯電話システムなどの移動通信システムにおける無線基地局設備や中継器、各市町村に防災無線用に設けられた屋外拡声装置などの屋外設置機器の通気性及び防水性を保つように構成された、電子機器筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムや携帯電話システムなどにおいて、無線基地局設備は例えば丘の上やビルディングの屋上などアンテナを取り付けた鉄塔の上部または基台付近に設置されている。電子機器筐体は、このような場所に設置され、雨風にさらされる電子機器を保護するために用いられる。これらの電子機器は、送信部や電源部から熱が発生するため放熱する必要があり、密閉しない状態で通気性及び防水性を保つように工夫されている。このため、電子機器筐体は、電子機器の放熱のための排気性と雨水浸入を防止する防雨性の両方の特性を持つことが要求されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、電子機器収容箱は、収容部の上部に有する内部排気口から排気される電子機器からの排気を外部へ導く天井板を備え、電子機器からの排気を外部へ導くために、天井板は、収容部の上部の任意の位置に取り付けられた複数の天井板取付け用柱を介して固定され、天井板の全周囲から外部へ排気されるような排気用間隙を保つ間隙構造に形成されて収容部の上部に配置され、電子機器の冷却が行えるように構成されている。
【0004】
さらに、例えば特許文献2では、屋外で用いられる電子機器を収容する屋外設置型の電子機器収容箱は、その上部に電子機器の発熱を排気により逃がすための内部排気口を有する収容箱本体と、この収容箱本体の上面に排気を外気に導くための排気用間隙をおいて収容箱本体の上面を覆って収容箱本体の上面の2辺と平行に取り付けられた2つの天井板取付け用アングルによって固定された天井板とを備えたものである。この屋外設置型の電子機器収容箱に設けた収容部内には、送信ユニットおよび電源などの発熱ユニットと冷却ファンを構成とした電子機器が収容される。電子機器の冷却ファンによって収容箱本体の底面から強制吸気された外気は、電子機器の発熱ユニットを冷却し、そこで熱せられた空気流が収容箱本体の上面の内部排気口を介して天井板の2辺に有する排気のための排気用間隙から主に外部へ排気される。
【0005】
屋外に筐体を設置する場合には、上記の特許文献のような排気構造に加えて、降雨による水滴が筐体内に進入することを防止する必要がある。加えて、場合によっては、筐体内で発生した水素等のガスを筐体外に排気する必要もある。従来の技術では、電子機器筐体は、例えば図6、図7に示すように構成されている。図6、図7において、1は筐体、2は筐体1に設けられた通気穴、3は筐体1に取付けられた通気部、4は通気部3に設けられた通気孔、5は筐体1と通気部3との間に設けられたフィルタである。また、図7において、11は降雨により発生した水滴、12は筐体1内で発生したガスである。筐体1内で発生したガス12は通気穴2を通り、筐体1からフィルタ5内に移る。フィルタ5内のガス12はフィルタ5の目の間を抜け、通気部3内に移る。通気部3内のガス12は通気孔4を通り排気される。一方、降雨により筐体1外側に付着した水滴11は、降雨による風圧を受けて通気孔4より通気部3内に浸入する。通気部3内の水滴11はフィルタ5に遮断され大部分は筐体1内には浸入しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−234922号公報
【特許文献2】特開平11−11534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通気部内に浸入した水滴の大部分は、フィルタに遮断されるため筐体内には進入しないが、ごく少量の水滴が雨風等による風圧でフィルタの目の中を通り抜けてフィルタ内に浸入し、フィルタ内の通気穴から筐体内に浸入してしまうことがある。一方で、筐体に水滴が浸入しないような密閉構造とすると、筐体内に発生する不要なガスを排気することができず、筐体内にガスが蓄積され、最悪の場合には筐体が破裂してしまう可能性がある。
本発明は、筐体に設けられた通気穴の通気性を確保しながら、通気穴に水滴が浸入することを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器筐体は、電子機器を収容し、通気穴を有する電子機器筐体であって、前記通気穴に対して所定の間隔を設けて前記通気穴を覆う防水面を有する第1の通気部と、前記第1の通気部を内部に収容し、第1通気面を備えた第2の通気部と、前記第2の通気部を内部に収容し、第2通気面を備えた第3の通気部と、を備え、前記第2の通気部及び前記第3の通気部にはそれぞれの内部に侵入した水を排出する排出部が設けられることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電子機器筐体は、第2の通気部及び第3の通気部に通気孔を設けることを特徴としている。
【0010】
本発明の電子機器筐体は、第2の通気部の通気孔の大きさが第3の通気部の通気孔の大きさよりも小さいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通気性を確保しながら筐体内に水滴を浸入させることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の全体構成を示す斜視図
【図2】本発明の全体構成を示す分解図
【図3】本発明の部分構成である通気部を示す構造図
【図4】本発明の部分構成である防水部を示す構造図
【図5】本発明の効果を示す構造図
【図6】従来技術の全体構成を示す分解図
【図7】従来技術の課題を示す構造図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施例を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の屋外設置型の電子機器筐体の斜視図であり、図2は本発明の特徴部分であるガス排気部を分解した分解図である。本発明では、これらの図に示す通り、従来のフィルタ5に代わって通気部3の内部に防水部6と防水板8を設け、通気穴2の排気構造を3重板構造とすることにより、筐体内に水滴が浸入することを防止できるような構造とした。このような構成とすることにより、従来のフィルタ5のみを設置した場合よりも、筐体1に水滴が浸入することを防止できる。
【0014】
図1、図2において、1は筐体、2は通気穴、3は通気部、4は通気部に複数設けられた通気孔、6は通気部3の内部に設けられた防水部、7は防水部6に設けられた通気孔、8は防水部6の内部に設けられた防水板、9は通気部3の底部に設けられた水抜き穴、10は防水部6の底部に設けられた水抜き穴である。防水板8は、少なくとも通気穴2を全て覆う大きさであり、ここでは防水部6に設けられた通気孔7を全て覆う大きさである。そして、防水板8は、筐体の側面に設けられた通気穴2に対して所定の間隔(隙間)をあけて通気穴2を覆うように筐体1に取り付けられている。
【0015】
通気部3は防水部6よりも大きく、防水部6を覆うように筐体1に取り付けられており、通気孔4及び水抜き穴9以外には開口部は設けない。つまり、図3、図5に示すように、通気部3は蓋状であり、通気部3の内部に防水部6が収容されている。さらに、防水部6は防水板8よりも大きく、防水板8の防水面に対向した防水部6の通気面に通気孔4を設けるような構造となっている。このように、防水部6は防水板8を覆うようにして筐体1に取り付けられており、通気孔7及び水抜き穴10以外には開口部は設けない。つまり、図4、図5に示すように、防水部6は蓋状であり、防水部6の内部に防水板8が収容される。このようにして、通気部3及び防水部6の上面、両側面には穴のような開口部を設けていないが、通気部3及び防水部6の対向面及び底面にはそれぞれ適切な大きさの穴が形成されている。
【0016】
次に、図5を参照しながら筐体1の排気及び防水作用について説明する。図5に示すように、筐体1内で発生したガス12は、通気穴2を通り、防水板8と筐体1との僅かな隙間を通り抜けて防水部6の内部に排気される。続いて、防水部6内に溜まったガス12は防水部6の通気孔7を通り、通気部3の内部に排気される。さらに、通気部3内に溜まったガス12は通気孔4を通り、外部に移動して排気が完了する。
【0017】
また、降雨や結露等により発生した水滴11の一部は、通気部3外面に付着する場合がある。通気部3の外面に付着した水滴11は、大部分が重力により通気部3外面を伝わり落ち、通気部3内への浸入は遮断されるが、一部は降雨や風による風圧を受けて通気部3の通気孔4を通り、通気部3内に浸入してしまう場合がある。このようにして通気部3内に浸入した水滴11は、大部分が重力により通気部3内面を伝わり落ち通気部3下部に溜まり、底面に設けられた水抜き穴9より外部に排出されるが、一部は降雨や風による風圧を受けて防水部6外面に付着する。防水部6外面に付着した水滴11は大部分が重力により防水部6外面を伝わり落ち、防水部6内への浸入は遮断されるが、一部が降雨や風による風圧を受け通気孔7を通り、防水部6の内側に浸入しようとする。
【0018】
しかし、防水部6の通気孔7は微小である為に、表面張力により水滴11が通気孔7から防水部6内部に浸入することはほとんど無い。仮に一部の水滴11が通気孔7を通り防水部6内部に浸入したとしても、大部分が重力により防水部6内面を伝わり落ち、防水部6下部に溜まり、防水部6の底面に設けられた水抜き穴10より防水部6の外部に排出される。また風圧が強く水滴11が通気穴2の方向に向かって飛散したとしても、通気穴2の全面を覆っている防水板8によって通気穴2への浸入を遮断することができる。これにより、水滴11は、重力により防水板8外面を伝わり落ち、防水部6下部に溜まり、底面に設けられた水抜き穴10より防水部6の外部に排出される。
【0019】
一方で、防水板8を、通気穴2に固定する際、上下左右の側面は密閉構造とはせず、ガスが通れるほどのスペースを設けて設置する。また、防水部6に設けられた通気孔7の穴の大きさは、水滴11のような液体は浸入しにくいが、水素ガスのような気体は通気できる大きさとする。特に、水素ガスは気体の中でも最も分子量の小さい物質であるため、ごく微小な空間でも容易に通気しやすいため、微小でも穴が空いていれば問題なく容易に通気可能である。尚、通気穴2への防水板8の固定の仕方は、はめ込み、溶接、ネジ止め等どのような固定方法でもよい。また、防水板8を通気穴2に固定する際には、図2でも示しているように、通気穴2に対して所定の間隔を設けて、固定しやすいように防水板8に足を設け、はめ込み、溶接、ネジ止め等を行いやすくすることが好ましい。
【0020】
以上のように、筐体1のガス排気部の排気構造を、通気部3、防水部6、防水板8の3重板構造とすることにより、外部からの水滴が筐体1内に浸入することをより確実に防止することができる。さらに、水滴11が筐体1内に浸入することを防止する方法として、通気部3の通気孔4よりも防水部6の通気孔7の穴の大きさをより小さくすることが好ましい。つまり、より内側に設けられた板に有する穴の大きさを、より外側に設けられた板に有する穴の大きさよりも小さくすることにより、内部への水滴の浸入をより確実に防止することができる。さらに、通気部3の通気孔4と防水部6の通気孔7が重ならないような配置にし、風圧等による水滴が容易に内部に浸入しようとすることを防止するような構造とすることが好ましい。
【0021】
尚、上述した実施例では、筐体1内に蓄積されたガス排気のための排気構造として説明したが、本発明は吸気のための吸気構造にも適用できる。つまり、通気部3、防水部6、防水板8は、通気穴2の通気構造一般に適用できる。また、通気孔4、7、水抜き穴9、10の形状は、図に示す形に限定されず、通気機能、防水機能を果たす形状であれば、丸形状、四角形状、楕円形状等どのような形状でも構わない。
【0022】
また、上述した実施例では、通気部3及び防水部6の底面に水抜き穴9、10を設けるような構造としているが、底面を設けず、底部が貫通形状としてもよいし、底面を設けた場合でも、水抜き穴9、10を設けるのではなく、切り欠き形状としてもよい。つまり、通気部3及び防水部6の内部に浸入した水滴11が、重力により伝わり落ち、外部に排出できるような構造であればどのような構造でも構わない。
【0023】
本発明の目的は、通気部内に浸入した水滴の流れを作り、効率良く水滴を排出することができ、筐体への水滴の浸入を抑えることができる構造に加えて、筐体内に発生する例えば水素等の有害なガスを効率良く排気することができるという問題を解決することにある。つまり、目的を達成するために、本発明は、通気部3の底面に複数の水抜き穴9を設け、通気部3の内部に、底面に水抜き穴10を設けた防水部6をフィルタ5の代わりに設け、防水部6の内部に防水板8を設けることで、筐体1内への水滴11の進入を防ぎ、さらに防水板8と筐体1の通気穴2との間は、わずかに隙間を有するような構造となっており、筐体1外へのガス12の排気を可能としたものである。
【0024】
このように本発明により、筐体内に発生したガスを外部に排気しつつ、降雨による水滴を筐体内に浸入させること無く排出することができるため、筐体内にガスが蓄積されて筐体が破裂してしまうことを防止し、筐体内が水滴にさらされて電子機器が漏電してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:筐体、2:通気穴、3:通気部、4:通気孔、5:フィルタ、6:防水部、
7:通気孔、8:防水板、9:水抜き穴、10:水抜き穴、11:水滴、12:ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容し、通気穴を有する電子機器筐体であって、
前記通気穴に対して所定の間隔を設けて前記通気穴を覆う防水面を有する第1の通気部と、
前記第1の通気部を内部に収容し、前記防水面に対向する第1通気面を備えた第2の通気部と、
前記第2の通気部を内部に収容し、第2通気面を備えた第3の通気部と、を備え、
前記第2の通気部及び前記第3の通気部にはそれぞれの内部に浸入した水を排出する排出部が設けられることを特徴とする電子機器筐体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−135013(P2011−135013A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295565(P2009−295565)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】