説明

電子機器

【課題】消費電力を抑え、筐体内の温度を効率良く調整することができる電子機器を提供する。
【解決手段】稼動状態で発熱するデバイス31が搭載された回路基板30と、回路基板30を収容する筐体20であって、内側に突出しデバイス31に接してデバイス31から吸熱する押さえ部40を有しデバイス31の放熱作用を兼ねた筐体20と、温度に応じて伸縮することにより、所定温度以下の温度ではデバイス31が押さえ部40から離間し所定温度を超える温度ではデバイス31が押さえ部40に接触するように回路基板30を移動させる温度変化素子とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本電子機器は、筐体内に稼動状態で発熱するデバイスが収容された電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される電子機器では、雨水や埃などから電子機器を保護するために、電子部品が筐体内に収容されていることが一般的である。しかし、このような屋外用の電子機器では、電子部品から発生する熱や直射日光の照射によって筐体内部の温度が上昇しやすく、屋内用の電子機器と比べて熱による故障が発生しやすい。このため、通常は、筐体に冷却フィンなどといった冷却効果が高い放熱機構を備え、電子部品で発生した熱をヒートパイプなどで吸熱して放熱機構に伝達し、筐体内部を冷却することが行われている。
【0003】
また、屋外用の電子機器では、高温下で電子機器が使用されることも想定されるが、その逆に、氷点下といった低温下で電子機器が使用されることも想定される。実際に、屋外で使用される電子機器に対し、−40℃程度の環境下でも正常に稼動することが求められることもある。しかし、通常の電子部品は、正常に稼動するのに0℃程度の温度は必要であり、自己発熱で得られた熱は冷却効果が高い放熱機構によって奪われてしまうため、環境温度がさらに低い場合には十分な温度を得ることができず、稼動中に動作不良が発生したり、誤作動によって電子部品が破損してしまう恐れがある。特に、電子機器を立ち上げるときには、筐体内の温度が環境温度と同程度にまで低下しているため、電子部品を起動することができないという問題がある。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、筐体に外部の空気を取り込んで筐体内を冷却するための通気孔を設け、光を吸収して変形するバイメタルを使って通気孔を開閉する通気孔自動開閉装置について記載されている。この通気孔自動開閉装置によると、日光が照射されていない低温状態では通気孔が閉じられるため、高温時にのみ通気孔を開いて筐体内を冷却することができるとともに、雨などが通気孔から筐体内に浸入してしまう不具合を軽減することもできる。
【0005】
しかし、環境温度に応じて通気孔を開閉するだけでは、高温時に筐体内を十分には冷却することができず、低温時に筐体内の温度を電子部品が正常に稼動可能な規定温度にまで上昇させることはできない。このため、特許文献1に記載された通気孔自動開閉装置にヒートパイプやヒータなどを併用し、高温時には電子部品で発生した熱をヒートパイプで吸熱して効率良く放熱するとともに、低温時にはヒータで電子部品を暖めることが好ましいと考えられる。
【特許文献1】特開平11−307970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、低温時にヒータで電子部品を暖めても、その電子部品を暖めた熱自体もヒートパイプによって筐体外に放熱されてしまうため、電子部品の温度が十分に上昇するまでに時間がかかってしまったり、ヒータによる消費電力が増大して運用コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
上記事情に鑑み、消費電力を抑え、筐体内の温度を効率良く調整することができる電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する電子機器の基本形態は、
稼動状態で発熱するデバイスが搭載された回路基板を収容する筐体であって、デバイスに接してデバイスから吸熱する押さえ部を有し該デバイスからの熱を放射する筐体と、
所定温度以下の温度ではデバイスが押さえ部から離間し所定温度を超える温度ではデバイスが押さえ部に接触するように、温度に応じて伸縮する温度変化素子とを備えたことを特徴とする。
【0009】
空気の熱伝導率は0.0241[W/m・K]程度であるのに対し、鉄の熱伝導率は83.5[W/m・K]であり、アルミ合金の熱伝導率は100〜250[W/m・K]であり、空気はヒートシンクとして広く利用されている金属と比べて熱抵抗がかなり大きいことがわかる。
【0010】
この電子機器の基本形態によると、筐体内の温度が所定温度を超える場合には、デバイスが押さえ部と接することにより、デバイスで発生した熱が押さえ部に吸熱されて筐体外に放熱され、筐体内の温度が所定温度以下である場合には、回路基板が移動されることによって、デバイスが押さえ部から離間される。このため、低温時には、デバイスと押さえ部との間に熱抵抗が大きい空気の層が挟まれることとなり、デバイスで発生した熱や、ヒータによってデバイスが暖められた熱が筐体外に放熱されてしまう不具合を防止することができ、筐体内の温度を効率良く調整することができる。
【0011】
また、上述した電子機器の基本形態に対し、
回路基板を表裏から挟むように支持する一対の支持部材を備え、
上記一対の支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材が温度に応じて伸縮する温度変化素子であるという応用形態は好適である。
【0012】
この好適な電子機器の応用形態によると、電力を使わずに簡易な機構で回路基板を移動させることができる。
【0013】
また、上述した電子機器の基本形態に対し、上記温度変化素子は、温度に応じて湾曲するバイメタルであるという応用形態は好ましい。
【0014】
熱膨張率が相互に異なる2種類の金属板を貼り合わせたバイメタルは、温度の上昇に伴って2種類の金属板それぞれが伸びるが、相対的に熱膨張率が高い金属板の方が大きく伸びることによって、バイメタル全体が反るという特性を有している。安価なバイメタルを温度変化素子として利用することによって、製造コストを抑えて、回路基板を移動させることができる。
【0015】
また、温度変化素子がバイメタルであるという電子機器の応用形態に対して、
上記温度変化素子は、バイメタルで構成された複数のコイルバネが伸縮方向に積み重ねられたものであるという応用形態はさらに好ましい。
【0016】
バイメタルで構成された複数のコイルバネが伸縮方向に積み重ねられることによって、温度変化素子の伸縮量を増加させることができ、回路基板を確実に移動させることができる。
【0017】
また、上述した電子機器の基本形態に対し、
上記温度変化素子は、形状記憶合金であるという応用形態も好ましい。
【0018】
温度変化素子として、温度変化によって変形する形状記憶合金を利用することによっても、電力を使わずに簡易な機構で回路基板を移動させることができる。
【0019】
また、温度変化素子が形状記憶合金であるという電子機器の応用形態に対して、
上記温度変化素子は、形状記憶合金で構成されたバネであるという応用形態はさらに好ましい。
【0020】
形状記憶合金で構成されたバネは、温度に応じてバネ係数が変化するという特性を有しており、温度変化素子として利用することによって、回路基板を大きく移動させることができる。
【0021】
また、上述した電子機器の基本形態に対し、
上記一対の支持部材は温度に応じて互いに逆方向に伸縮する温度変化素子であるという応用形態は好適である。
【0022】
この好適な電子機器の応用形態によると、温度変化素子の伸縮特性のばらつきを吸収することができ、回路基板を温度に応じて安定的に移動させることができる。
【0023】
また、上述した電子機器の基本形態に対し、
上記一対の支持部材のうちの一方の支持部材が温度に応じて伸縮する温度変化素子であり、その一方に対する他方の支持部材が温度変化素子における伸縮を吸収する弾性部材であるという応用形態も好適である。
【0024】
この好適な電子機器の応用形態によると、温度変化に応じて回路基板を確実に移動させることができる。
【0025】
また、上述した電子機器の基本形態に対し、
上記温度変化素子の伸縮量を規制するストッパを備えたという応用形態は好ましい。
【0026】
この好ましい電子機器の応用形態によると、温度変化素子によって回路基板が大きく移動され、回路基板が筐体に衝突してしまう不具合を回避することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、電子機器の基本形態によると、消費電力を抑え、筐体内の温度を効率良く調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して、上記説明した基本形体および応用形態に対する具体的な実施形態を説明する。
【0029】
図1は、上述した電子機器の具体的な第1実施形態である通信機器1の外観図である。
【0030】
通信機器1は、屋外に設置されるものであり、外観上、内部に回路基板などが収容された箱20と、箱20と接触して箱20内の熱を放熱する冷却フィン10とで構成されている。冷却フィン10と箱20とを合わせたものは、上述した電子機器の基本形態における筐体の一例に相当する。
【0031】
箱20の内部には、通信機器1としての機能を実行するための各種デバイスが搭載されており、この通信機器1は、稼動中にデバイスから発生する熱や直射日光の照射によって、箱20内の温度が上昇しやすい。このため、箱20内の温度が高い場合には、デバイスで発生した熱を冷却フィン10に伝達し、箱20内を冷却する必要がある。その逆に、箱20内の温度が低い場合には、デバイスが正常に稼動可能な所定温度にまで箱20内の温度を素早く上昇させる必要がある。
【0032】
図2は、箱20の内部を示す透過図である。
【0033】
箱20は、上蓋部21と底部22とで構成されている。
【0034】
底部22には、温度に応じて上下方向に伸縮する複数の第2支持部52が固定されており、複数のデバイス31が搭載された回路基板30がそれら第2支持部52によって下方から支持されている。デバイス31は、上述した電子機器の基本形態におけるデバイスの一例にあたり、回路基板30は、上述した電子機器の基本形態における回路基板の一例に相当する。
【0035】
また、上蓋部21には、温度に応じて第2支持部52とは逆方向に伸縮する複数の第1支持部51が固定されており、それら第1支持部51は上方から回路基板30を押圧している。すなわち、回路基板30は、第1支持部51および第2支持部52によって表裏から挟まれて支持されており、第1支持部51および第2支持部52が温度に応じて相互に逆方向に伸縮することにより、上下方向に移動される。第1支持部51および第2支持部52は、上述した電子機器の基本形態における温度変化素子の一例にあたるとともに、上述した電子機器の応用形態における一対の支持部材の一例に相当する。
【0036】
上蓋部21の上面には、箱20の一部が突出してデバイス31と接触する押さえ部40が固定されている。押さえ部40は、上述した電子機器の基本形態における押さえ部の一例に相当する。
【0037】
この図2には、箱20内の温度が所定温度よりも高い状態が示されている。図2では、回路基板30はデバイス31が押さえ部40と接触する位置に移動されており、デバイス31で発生した熱が押さえ部40によって冷却ファン10に伝達されることにより、箱20内が冷却されている。
【0038】
また、箱20内には、低温時にデバイス31を暖めるためのヒータ70(図5参照)なども配置されているが、図2では図示を省略している。
【0039】
図3は、第1支持部51および第2支持部52の構成を示す図であり、図4は、第1支持部51および第2支持部52の、温度変化による伸縮を示す図である。
【0040】
図3には、第1支持部51および第2支持部52を代表して、第1支持部51の構成が示されている。第1支持部51は、入れ子に嵌め込まれた2つの箱61,62内に、温度に応じて伸縮するバイメタルで構成された複数のコイルバネ63が上下方向に積み重ねられて収容されている。コイルバネ63は、本実施形態におけるバイメタルの一例にあたるとともに、本実施形態における複数のコイルバネの一例に相当する。
【0041】
また、図4に示すように、第1支持部51および第2支持部52には、温度変化に伴って相互に逆方向に伸縮するコイルバネ63が収容されている。本実施形態においては、回路基板31を押さえ部40と同じ上方から支持する第1支持部51には、温度が低下すると図4(B)から図4(A)のように上下方向に膨張するコイルバネが収容されており、回路基板31を下方から支持する第2支持部52には、温度が低下すると図4(A)から図4(B)のように上下方向に縮むコイルバネが収容されている。
【0042】
回路基板30が、金属材料であるバイメタルで構成された第1支持部51および第2支持部52で支持されることによって、箱20−回路基板30の必要箇所間の電位を共通化してエミッション/イミュニティへの耐力を向上させることができ、第1支持部51および第2支持部52がコイルバネ63で構成されることによって、箱20に加えられた振動を減衰させ、振動耐力を向上させることができる。
【0043】
図5は、高温状態において箱20を上下方向に切断したときの断面図であり、図6は、低温状態において箱20を上下方向に切断したときの断面図である。
【0044】
回路基板31の、デバイス31の脇には、低温時にデバイス31を暖めるためのヒータ70が取り付けられており、デバイス31の上面には、押さえ部40に熱を伝達するための放熱用ゴム80が塗布されている。
【0045】
図5に示すように、箱20内の温度が所定温度よりも高い状態では、回路基板31を上方から押圧する第1支持部51が縮み、回路基板31を下方から押圧する第2支持部52が伸びることによって、回路基板31が上方に移動される。その結果、デバイス31が放熱用ゴム80を介して押さえ部40に押し付けられ、デバイス31で発生した熱が押さえ部40によって吸熱されて図1に示す冷却フィン10から放熱される。第1支持部51および第2支持部52の伸縮量は、温度に応じて変化するため、温度が高いほどデバイス31に貼り付けられた放熱用ゴム80が押さえ部40に強く押し付けられて密着度および接触圧力が上昇することとなり、放熱率を温度に応じて調整することができる。また、第1支持部51および第2支持部52が、上下方向に積み重ねられた複数のコイルバネ63で構成されることによって、回路基板31の移動量を増加させることができ、第1支持部51および第2支持部52が温度変化に伴って相互に逆方向に伸縮したり、第1支持部51および第2支持部52が複数箇所に設けられることによって、コイルバネ63を構成しているバイメタルの特性差を吸収し、安定した押さえを実現することができる。
【0046】
また、箱20内の温度が所定温度以下に低下すると、図6に示すように、回路基板31を上方から押圧する第1支持部51が伸び、回路基板31を下方から押圧する第2支持部52が縮むことによって、回路基板31が下方に移動されてデバイス31が押さえ部40から離れる。その結果、デバイス31と押さえ部40との間に空気の層ができ、押さえ部40による放熱が中止される。
【0047】
図7は、低温状態における箱20の内部を示す透過図である。
【0048】
図7に示すように、箱20内の温度が所定温度以下の状態では、図2に示す高温状態時と比べて回路基板31が下方に移動されており、デバイス31が押さえ部40から離間されている。図6に示すヒータ70から熱が発せられると、その熱が押さえ部40に奪われることなくデバイス31が暖められるため、消費電力を抑えて、箱20内の温度を上昇させることができる。
【0049】
図4に示すコイルバネ63を構成するバイメタルとしては、熱膨張率が相対的に低い金属材料としてインバー(ニッケルと鉄の合金)を適用し、熱膨張率が相対的に高い金属材料としてニッケルやステンレス、銅などの合金を用いることができる。長さ100mm程度のバイメタルを半径8mm程度のネジマキバネ形状を形成することにより、−30℃から40℃までの間の70℃程度の温度変化によって1つのコイルあたり0.14mm程度のそりが発生し、その結果、径としては0.26mm程度の収縮が得られた。
【0050】
また、このようなバネを4つ積み上げることで全体として1mm程度の変動を発生させることができ、さらに、このような特性を有するバネを相互に逆方向に湾曲させたものを回路基板30の表裏面側それぞれに配置することによって、回路基板30を上下方向に移動させることができた。
【0051】
以上のように、本実施形態によると、箱20内の温度が所定温度よりも大きい状態では、デバイス31が押さえ部40と接することによって、稼動中に発せられた熱や直射日光などによる熱が放熱され、高温によるデバイス31の破損などを抑えることができる。さらに、箱20内の温度が所定温度以下である場合には、デバイス31が押さえ部40から離間することによって押さえ部40による放熱が中止され、ヒータ70によってデバイス31を効率良く暖めることができ、低温環境下における起動不良や誤動作などを軽減することができる。
【0052】
以上で、第1実施形態の説明を終了し、上記説明した電子機器の基本形体および応用形態に対する第2実施形態について説明する。電子機器の第2実施形態については、第1支持部51および第2支持部52の構成のみが第1実施形態とは異なり、それ以外は第1実施形態と同様の構成を有しているため、第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0053】
図8は、第1支持部51_2および第2支持部52_2の構成を示す図である。
【0054】
図8(A)に示すように、本実施形態においては、図3に示すバイメタル製のコイルバネ63が収容された第1支持部51に代えて、内部に形状記憶合金製の第1バネ63_2が収容された第1支持部51_2が備えられている。形状記憶合金は、所定の温度以上では変形が大きくなるものであり、第1バネ63_2は、温度が上昇することによって弾性力が弱まり、バネ係数が減少する特性を有している。第1バネ63_2は、上述した電子機器の応用形態における形状記憶合金の一例に相当する。
【0055】
また、図8(B)に示すように、本実施形態においては、回路基板30を下方から支持する第2支持部52_2として、内部に温度変化によるバネ係数の変化が少ないステンレスなどで構成された第2バネ63_3が収容されている。第2バネ63_3は、上述した電子機器の応用形態における弾性部材の一例に相当する。
【0056】
図2に示す箱20内の温度が上昇すると、回路基板30を上方から支持している第1バネ63_2のバネ係数が減少する。その結果、第1バネ63_2が回路基板30を下方に押圧する力が、第2バネ63_2が回路基板30を上方に押圧する力よりも弱まり、第1支持部51_2が縮んで第2支持部52_2が伸びる。このとき、回路基板30は上方に移動されてデバイス31が押さえ部40に押し付けられ、デバイス31の熱が押さえ部40によって吸熱されて、図1に示す冷却フィン10から放熱される。
【0057】
また、箱20内の温度が低下すると、第1バネ63_2のバネ係数が上昇し、第1支持部51_2が伸びて第2支持部52_2が縮むことによって、回路基板30が下方に押圧される。その結果、回路基板30が押さえ部40から離間されて、デバイス31の放熱が中止される。
【0058】
図8に示す第2実施形態の第1支持部51_2および第2支持部52_2は、図3に示すバイメタル製のコイルバネ63を使った第1支持部51および第2支持部52よりも伸縮量が大きく、回路基板30を上下方向に大きく移動させることができる。このため、低温時に回路基板30と押さえ部40との間の距離を大きくあけることができ、より確実にデバイス31の放熱を防止することができる。
【0059】
以上で、第2実施形態の説明を終了し、上記説明した電子機器の基本形体および応用形態に対する第3実施形態について説明する。電子機器の第3実施形態については、第2実施形態とほぼ同様の構成を有しているため、第1実施形態および第2実施形態と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略し、第2実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0060】
図9は、本実施形態における第1支持部51_3の構成を示す図である。
【0061】
本実施形態の第1支持部51_3には、図8に示す第2実施形態の第1支持部51_2と同様に、内部に形状記憶合金製の第1バネ63_2が収容されており、さらに、第1バネ63_2の中心に第1支持部51_3の伸縮量を規制するためのストッパ90が挿入されている。ストッパ90を構成する材料としては、圧縮が小さいものが好ましく、金属、プラスチック、およびガラスなどを適用することができる。ストッパ90は、上述した電子機器の応用形態におけるにおけるストッパの一例に相当する。
【0062】
図2に示す箱20内の温度が上昇すると、第1支持部51_3に収容された第1バネ63_2のバネ係数が減少し、図8に示す第2支持部52_2に収容された第2バネ63_2の付勢力によって、第1支持部51_3が縮められ、回路基板30が上方に移動される。このとき、ストッパによって第1支持部51_3の収縮量が規制されるため、回路基板30の上方向の移動量も規制され、デバイス31が押さえ部40に強く押し付けられてデバイス31が破損してしまう不具合を回避することができる。
【0063】
以上で、第3実施形態の説明を終了し、上記説明した電子機器の基本形体および応用形態に対する第4実施形態について説明する。電子機器の第4実施形態については、第1実施形態とほぼ同様の構成を有しているため、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0064】
図10は、図2に示す箱20を上下方向に切断したときの断面図である。
【0065】
本実施形態においても、箱20の内部には、図5に示す第1実施形態と同様に、回路基板30、第1支持部51、第2支持部52、押さえ部40、デバイス31、およびヒータ70などが収容されており、さらに、箱20の上蓋部21に、下方に延びるストッパ91が取り付けられている。
【0066】
箱20内の温度が上昇すると、第1支持部51が縮んで第2支持部52が伸びることにより、回路基板30が上方向に移動してデバイス31が押さえ部40に押し付けられる。このとき、ストッパ91によって回路基板30の移動が規制されるため、デバイス31の破損を防止することができる。
【0067】
このように、ストッパ91を第1支持部51内ではなく箱20に取り付けることによっても、デバイス31の破損を確実に防止することができる。
【0068】
ここで、上記では、「課題を解決するための手段」で説明した電子機器の一例として通信機器が示されているが、この電子機器は、屋外に設置されることが想定されるサーバ装置などであってもよい。
【0069】
また、上記では、バネの中心や筐体に伸縮が少ない棒状のストッパを備える例を示したが、このストッパとしては、支持部材の伸縮量を規制するためのバネなどであってもよい。
【0070】
また、上記では、バイメタルでコイルバネを形成する例について説明したが、バイメタルをリーフスプリング形状に形成してたわみを利用するものであってもよい。
【0071】
また、上記では、筐体に冷却フィンを設ける例について説明したが、放熱機構としては、筐体にヒートパイプを備えたり、空冷ではなく水冷を利用するものであってもよい。
【0072】
以下、発明の実施の形態について付記する。
【0073】
(付記1)
稼動状態で発熱するデバイスが搭載された回路基板を収容する筐体であって、前記デバイスに接して該デバイスから吸熱する押さえ部を有し該デバイスからの熱を放射する筐体と、
所定温度以下の温度では前記デバイスが前記押さえ部から離間し該所定温度を超える温度では該デバイスが該押さえ部に接触するように、温度に応じて伸縮する温度変化素子とを備えたことを特徴とする電子機器。
【0074】
(付記2)
前記回路基板を表裏から挟むように支持する一対の支持部材を備え、
前記一対の支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材が温度に応じて伸縮する温度変化素子であることを特徴とする付記1記載の電子機器。
【0075】
(付記3)
前記温度変化素子は、温度に応じて湾曲するバイメタルであることを特徴とする付記1または2記載の電子機器。
【0076】
(付記4)
前記温度変化素子は、バイメタルで構成された複数のコイルバネが伸縮方向に積み重ねられたものであることを特徴とする付記3記載の電子機器。
【0077】
(付記5)
前記温度変化素子は、形状記憶合金であることを特徴とする付記1または2記載の電子機器。
【0078】
(付記6)
前記温度変化素子は、形状記憶合金で構成されたバネであることを特徴とする付記5記載の電子機器。
【0079】
(付記7)
前記一対の支持部材は温度に応じて互いに逆方向に伸縮する温度変化素子であることを特徴とする付記2記載の電子機器。
【0080】
(付記8)
前記一対の支持部材のうちの一方の支持部材が温度に応じて伸縮する温度変化素子であり、該一方に対する他方の支持部材が該温度変化素子における伸縮を吸収する弾性部材であることを特徴とする付記2または3に記載の電子機器。
【0081】
(付記9)
前記温度変化素子の伸縮量を規制するストッパを備えたことを特徴とする付記1記載の電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】通信機器の外観図である。
【図2】箱の内部を示す透過図である。
【図3】第1支持部および第2支持部の構成を示す図である。
【図4】第1支持部および第2支持部の、温度変化による伸縮を示す図である。
【図5】高温状態において箱を上下方向に切断したときの断面図である。
【図6】低温状態において箱を上下方向に切断したときの断面図である。
【図7】低温状態における箱の内部を示す透過図である。
【図8】第2実施形態における第1支持部および第2支持部の構成を示す図である。
【図9】第3実施形態における第1支持部の構成を示す図である。
【図10】第3実施形態における箱を上下方向に切断したときの断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 通信機器
10 冷却フィン
20 箱
21 上蓋部
22 底部
30 回路基板
31 デバイス
40 押さえ部
51 第1支持部
52 第2支持部
63 コイルバネ
70 ヒータ
80 放熱用ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼動状態で発熱するデバイスが搭載された回路基板を収容する筐体であって、前記デバイスに接して該デバイスから吸熱する押さえ部を有し該デバイスからの熱を放射する筐体と、
所定温度以下の温度では前記デバイスが前記押さえ部から離間し該所定温度を超える温度では該デバイスが該押さえ部に接触するように、温度に応じて伸縮する温度変化素子とを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記回路基板を表裏から挟むように支持する一対の支持部材を備え、
前記一対の支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材が温度に応じて伸縮する温度変化素子であることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記一対の支持部材は温度に応じて互いに逆方向に伸縮する温度変化素子であることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記一対の支持部材のうちの一方の支持部材が温度に応じて伸縮する温度変化素子であり、該一方に対する他方の支持部材が該温度変化素子における伸縮を吸収する弾性部材であることを特徴とする請求項2または3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記温度変化素子の伸縮量を規制するストッパを備えたことを特徴とする請求項1記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−194203(P2009−194203A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34394(P2008−34394)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】