説明

電子機器

【課題】ディスクトレイの排出に連動して扉を回動させることが可能な電子機器であって、扉を開放位置で安定的に保持することが可能な電子機器を提供すること。
【解決手段】扉200は、挿脱口303を閉塞する閉塞位置と挿脱口303を開放する開放位置との間で本体100に対して回動可能である。反転バネ500は、扉200の閉塞位置と開放位置との間で予め決められた位置を中間位置として、中間位置と閉塞位置との間の第1の範囲にあるとき、扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢し、扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、扉200を中間位置から開放位置へ向けて付勢する。回動規制片413は、扉200が第2の範囲にあるとき、扉200に干渉して扉200が開放位置から中間位置へ移動するのを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状記録媒体を挿抜可能であり、このディスク状記録媒体に対して情報を記録及び/又は再生することが可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
BD(Blue-ray Disc(登録商標))、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等のディスク状記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う電子機器装置本体のフロントパネルには、一般に、ディスク状記録媒体を装置本体の内外に亘って搬送するディスクトレイの挿脱口や、各種操作ボタン等が設けられる。装置本体には、フロントパネルに対して回動可能な扉が設けられる。扉の一端(例えば、下端)を回動の中心としてこの扉を回動させることにより、フロントパネルが外方に開放されたり閉塞されたりする。
【0003】
近年、ディスクトレイの装置本体の内外に亘る排出に連動して自動的に扉を回動させ、フロントパネルを開放させる電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1によれば、一端が扉に、他端がフロントパネルにそれぞれ支持されたバネの付勢力を用いて、ディスクトレイの排出に連動してフロントパネルの開放が行われる。具体的には、バネは、扉を閉塞方向に常時付勢している。ディスクトレイは、装置本体から排出されるとき、フロントパネルを閉塞している扉に干渉し、バネの付勢力に抗して扉を回動させてフロントパネルを開放させる。
【0004】
また、扉が閉塞位置から開放位置に移動する初期には扉を閉塞方向に付勢して扉を付勢力に抗して移動させ、その後扉を開放方向に付勢して扉を自然に移動させ、開放位置に達した扉の移動を規制して扉の開放状態を維持する機構を有する電子機器も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−198701号公報(段落[0066]〜[0069]、図12、図19)
【特許文献2】特開2005−194840号公報(段落[0086]〜[0096]、図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、支持点の位置関係が変化することを利用して付勢力の方向を切り替え可能な反転バネが知られている。この反転バネを用いれば、特許文献2のように閉塞方向の付勢力と開放作用方向の付勢力とを連続的に付与し、開放位置にある扉の移動を規制して扉の開放状態を維持することが可能な機構を、特許文献1のようにバネの付勢力のみで実現できると考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1によれば、ディスクトレイは装置本体から排出されるときにフロントパネルを閉塞している扉に干渉する。このため、扉を閉塞方向に付勢するバネの付勢力は、ディスクトレイの排出及び扉の回動を阻害しないように、ディスクトレイが扉を開放方向に押圧し扉を回動させる力よりも弱く設定されている。
【0008】
このように、付勢力が弱い反転バネを用いると、扉が反転バネにより開放方向に付勢されることで扉の開放状態が維持されていても、ユーザがフロントパネルを操作する際等に誤って扉に触れてしまうと、扉が意図せず付勢方向の切替ポイントに移動するおそれがある。そして、扉が付勢方向の切替ポイントを超えると、扉が閉塞方向に付勢され、扉が意図せず閉塞してしまう。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ディスクトレイの排出に連動して扉を回動させることが可能な電子機器であって、扉を開放位置で安定的に保持することが可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、開口を有する本体と、扉と、付勢手段と、トレイと、第1の規制部とを有する。
上記扉は、上記開口を閉塞する閉塞位置と上記開口を開放する開放位置との間で上記本体に対して回動可能である。
上記付勢手段は、上記扉の上記閉塞位置と上記開放位置との間で予め決められた位置を中間位置として、上記中間位置と上記閉塞位置との間の第1の範囲にあるとき、上記扉を上記中間位置から上記閉塞位置へ向けて付勢し、上記扉が上記中間位置と上記開放位置との間の第2の範囲にあるとき、上記扉を上記中間位置から上記開放位置へ向けて付勢する。
上記トレイは、記録媒体を着脱可能であり、上記本体に対して上記開口を通じて排出及び挿入可能であり、上記本体から排出される際上記閉塞位置にある上記扉に干渉して上記扉を回動させる。
上記第1の規制部は、上記扉が上記第2の範囲にあるとき、上記扉に干渉して上記扉が上記開放位置から上記中間位置へ移動するのを規制する。
【0011】
本形態によれば、付勢手段は、扉が第1の範囲にあるときには扉を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢し、扉が第2の範囲にあるときには扉を中間位置から開放位置へ向けて付勢する。このような付勢手段を用いると、例えば、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、扉が開放位置にある際に、開口が設けられた本体のフロントパネルをユーザが操作しようしたとき、ユーザが扉に誤って触れてしまうと、扉がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうことがある。その結果、中間位置に回動した扉が、付勢手段により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまう。
特に、本形態では、本体から排出されたトレイが扉に干渉し、付勢手段の付勢力に抗して扉を回動させる構成としている。このため、扉を閉塞方向に付勢する付勢手段の付勢力は、トレイの排出及び扉の回動を阻害しないように、トレイが扉を開放方向に押圧し扉を回動させる力よりも弱く設定されている。仮に、付勢力の強い付勢手段を用いれば、扉が開放位置にある際にユーザが扉に誤って触れても、扉が開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動し難いので、扉が閉塞位置まで回動してしまうのを防ぐことができる。しかしながら、付勢手段の付勢力が弱い場合はそうはいかない。
そこで、本形態によれば、扉が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、第1の規制部が扉に干渉することで、扉が開放位置から中間位置へ移動するのを規制することができる。これにより、付勢力の弱い付勢手段を用いているにも拘らず、扉が開放位置にある際にユーザが扉に誤って触れたときに、扉がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうのを防ぐことができる。その結果、中間位置に回動した扉が、付勢手段により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまうのを防ぐことができる。
【0012】
上記扉の上記本体に対する回動軸をさらに有してもよい。
上記回動軸及び上記第1の規制部は一体に形成されてもよい。
【0013】
扉の回動の中心としての回動軸と、扉と干渉する第1の規制部とが一体に形成される。これにより、回動軸と第1の規制部とを別個の部品とする構成で生じうる誤差の発生を防止することができる。例えば、回動軸と第1の規制部とを別個の部品とすると、第1の規制部の回動軸に対する位置関係に個々の電子機器によって誤差がある場合、回動軸を中心として扉が回動する際に扉と第1の規制部とが適切に干渉しない電子機器が生じるおそれがある。これに対して、本形態では、第1の規制部の回動軸に対する位置関係が個々の電子機器によらず一定であるので、回動軸を中心として扉が回動する際に扉と第1の規制部とが適切に干渉する。
【0014】
上記電子機器は、上記扉が上記開放位置にあるとき、上記扉が上記開放位置から上記中間位置と反対の方向へ移動するのを規制する第2の規制部をさらに有してもよい。
【0015】
第2の規制部により、扉が開放位置で定位される。
【0016】
上記中間位置にある上記扉の垂線に対する角度は、70度以上85度以下の範囲内に設定されてもよい。
【0017】
本形態では、トレイの排出により扉が閉塞位置から中間位置に向けて回動し、トレイの挿入により扉が付勢手段により閉塞位置へ向けて付勢されて閉塞位置に自然に回動する構成としている。この構成とするためには、トレイが扉に干渉している間は常に付勢手段が扉を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢する必要がある。このため、付勢方向の切替ポイントである中間位置をある程度低い位置(垂線に対して90度に近い位置)に設定する必要がある。このように、中間位置が低い位置(垂線に対して90度に近い位置)に設定されると、付勢力の弱い付勢手段を用いた場合、扉が開放位置にある際にユーザがフロントパネルを操作しようしたとき、ユーザが扉に誤って触れてしまうと、扉がユーザの意図に反して開放位置から回動して中間位置(付勢方向の切替ポイント)に到達し易い。その結果、中間位置に回動した扉が、付勢手段により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまう。
しかしながら、本形態によれば、扉が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、第1の規制部が扉に干渉するので、扉が開放位置から中間位置へ移動するのを規制することができる。これにより、中間位置が低い位置(垂線に対して90度に近い位置)に設定されているにも拘らず、扉が開放位置にある際にユーザが扉に誤って触れたときに、扉がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうのを防ぐことができる。その結果、中間位置に回動した扉が、付勢手段により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまうのを防ぐことができる。
【0018】
上記開放位置にある上記扉の垂線に対する角度は、87度以上91度以下の範囲内に設定されてもよい。
【0019】
本形態のように、開放位置が低い位置(垂線に対して90度に近い位置)に設定されると、扉が開放位置にある際にユーザがフロントパネルを操作し易いという利点がある。一方、付勢力の弱い付勢手段を用いた場合、扉が載置面に干渉してしまうと、扉がユーザの意図に反して開放位置から回動して中間位置(付勢方向の切替ポイント)に到達し易い。その結果、中間位置に回動した扉が、付勢手段により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまう。
しかしながら、本形態によれば、扉が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、第1の規制部が扉に干渉するので、扉が開放位置から中間位置へ移動するのを規制することができる。これにより、開放位置が低い位置(垂線に対して90度に近い位置)に設定されているにも拘らず、扉が開放位置にある際に扉が載置面に干渉したときに、扉がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうのを防ぐことができる。その結果、中間位置に回動した扉が、付勢手段により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまうのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ディスクトレイの排出に連動して扉を回動させることが可能な電子機器において、扉を開放位置で安定的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
【図2】本体の内部構造を示す斜視図である。
【図3】プリント配線板近傍を示す模式図である。
【図4】本体のフロントパネル近傍及び扉を示す模式図である。
【図5】フロントパネル及びフロントパネルに取り付けられたパネルベースの背面図である。
【図6】図5の部分拡大図であり、円Aで囲われた領域(回動機構)を示す。
【図7】扉が開放位置にある際の回動機構を示す斜視図である。
【図8】扉が開放位置にある際の回動機構を示すY−Z面断面図である。
【図9】扉軸部材を示す斜視図である。
【図10】扉軸部材を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は左側面図である。
【図11】扉を背面側から示す斜視図である。
【図12】扉を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は左側面図である。
【図13】扉が開放位置にある際の扉と扉軸部材との関係を示す斜視図である。
【図14】反転バネを示す斜視図である。
【図15】反転バネを示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は左側面図である。
【図16】扉が閉塞位置にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
【図17】扉が閉塞位置と中間位置との間の第1の範囲にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
【図18】扉が第1の範囲にあるときの回動機構を模式的に示す別の断面図である。
【図19】扉が中間位置にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
【図20】扉が開放位置にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[1.電子機器の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器を示す斜視図である。
本発明の一実施形態に係る電子機器1は、BD、DVD、CD等のディスク状記録媒体に対して記録及び/又は再生を行う記録装置、再生装置又は記録再生装置である。電子機器1は、本体100と、この本体100に対して回動機構2(後で説明する)を介して回動可能な扉200とを有する。
【0024】
本体100は、例えば略直方体状の筐体110と、この筐体110の一側面に設けられたフロントパネル300とを有する。フロントパネル300は、本体100に対して排出/挿入可能であり、ディスク状記録媒体(図示せず)を本体100の内外に亘って搬送するディスクトレイ301の挿脱口303と、各種操作ボタン302と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示画面304と、各種端子305と、LED(Light Emitting Diode)等の発光部306等が設けられたユーザインタフェース面であり、例えばアルミニウム等で形成される意匠パネルである。本体100を載置面に載置した際、フロントパネル300の表面316は載置面(水平面)に対して例えば垂直である。フロントパネル300の背面309の下端部307を除く領域には、各種部品を組み付けるためのシャーシとしてのパネルベース310が取り付けられる(図5、図8等参照)。
【0025】
扉200は、フロントパネル300を閉塞するカバー203を有し、フロントパネル300の下端部307に対して回動可能に取り付けられる。フロントパネル300の下端部307に取り付けられるカバー203の下端部201を回動の中心として扉200を本体100に対して回動させることにより、フロントパネル300が開放/閉塞される。カバー203には、フロントパネル300の閉塞時に表示画面304を露出するための開口202が設けられる。
【0026】
ディスクトレイ301が本体100の挿脱口303から排出すると、ディスクトレイ301はフロントパネル300を閉塞する扉200に干渉し、扉200を本体100に対して回動させることにより、フロントパネル300を開放する。
【0027】
以下の説明において、ディスクトレイ301の排出/挿入方向を「Y方向」、本体100の高さ方向を「Z方向」、フロントパネル300及びカバー203の長手方向を「X方向」と呼ぶ。上記3方向は互いに略直交する。扉200がフロントパネル300を完全に閉塞する状態での扉200の位置を「閉塞位置」、扉200がフロントパネル300を開放し、それ以上回動不可能な状態での扉200の位置を「開放位置」と呼ぶ。扉200が閉塞位置から開放位置へと回動する際の回動の方向を「開放方向」、扉200が開放位置から閉塞位置へと回動する際の回動の方向を「閉塞方向」と呼ぶ。本体100のフロントパネル300側を「正面」、その反対を「背面」、本体100の正面を視認した際の右手を「右」、左手を「左」、本体100を載置面に載置する際この載置面に対向する面を「底面」、その反対を「上面」と呼ぶ。
【0028】
図2は、本体の内部構造を示す斜視図である。
本体100は、筐体110内に、シャーシ111と、シャーシ111に搭載されたプリント配線板112及び電子デバイスと、ファンモータ113等を収容する。
【0029】
図3は、プリント配線板近傍を示す模式図である。
プリント配線板112には、LSI(Large Scale Integration)114が実装される。LSI114は、熱伝導シート116を介してヒートシンク115に接続される。ヒートシンク115の近傍のシャーシ111には通風穴117が設けられ、外気を取り入れてヒートシンク115の周囲を通過し、ファンモータ113によって筐体110外部へ排出される。また、ヒートシンク115とシャーシ111の空間118は狭いため、ヒートシンク115の放射熱によってシャーシ111を介して外部へ排熱し、全体の放熱を補助する。ヒートシンク115とシャーシ111を直接接触させず空間118を設けることにより、通風穴117から流入する空気の流路を確保するとともに、シャーシ111に伝導する熱量を抑えてシャーシの過剰な温度上昇を防止できる。例えば、熱伝導シート116の厚さは約0.5mm、ヒートシンク115の厚さは約1mm、ヒートシンク115とシャーシ111との空間118は約1mmである。これにより、放熱構造の省スペース化(薄型化)を実現できる。
【0030】
図4は、本体のフロントパネル近傍及び扉を示す模式図である。
扉200のカバー203には、半透過層207が蒸着等により形成される。このため、(a)の扉200が閉塞した状態では、発光部306の光を透過して、電子機器1の状態を表示することができる。非通電時は、発光部306は消灯し、半透過層207により発光部306は完全に隠蔽されて視認できなくなる。一方、(b)の扉200が開放した状態では、発光部306の光により電子機器1の状態を表示すると共に、照明効果によりフロントパネル300の視認性が向上する。
【0031】
[2.回動機構の構成]
次に、扉200の本体100に対する回動機構2の構成について説明する。
【0032】
図5は、フロントパネル及びフロントパネルに取り付けられたパネルベースの背面図である。
回動機構2は、フロントパネル300の下端部307の左右一方の端部に設けられる。本実施形態では、本体100をフロントパネル300側から視認したとき、フロントパネル300の下端部307の右端部308(図1参照)の円Aで囲われた領域に、回動機構2が設けられる。
【0033】
図6は、図5の部分拡大図であり、円Aで囲われた領域(回動機構)を示す。図7は、扉が開放位置にある際の回動機構を示す斜視図である。図8は、扉が開放位置にある際の回動機構を示すY−Z面断面図である。
回動機構2は、扉200を本体100に対して回動可能に連結するとともに、所定の回動位置において扉200の回動を規制し、開放/閉塞方向において扉200に所定の付勢力を付与する機構である。回動機構2は、扉200と、扉軸部材400と、反転バネ500(図8では図示せず)とを有する。扉軸部材400は、ネジ600によりパネルベース310に固定され、扉200を本体100に対して回動可能に連結するとともに、所定の回動位置において扉200の回動を規制する。反転バネ500は、開放/閉塞方向において扉200に所定の付勢力を付与する。以下、同図及び以下に示す図面を参照しながら各部材の構成や組み合わせ等について説明する。
【0034】
[(1)扉軸部材の構成]
図9は、扉軸部材を示す斜視図である。図10は、扉軸部材を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は左側面図である。
扉軸部材400は、扉軸本体410と、扉軸本体410に設けられたネジ穴411、回動軸412及び回動規制片413とを有する。
【0035】
扉軸部材400は、扉軸本体410に設けられたネジ穴411を介して、ネジ600によりパネルベース310の背面312に設けられたネジ穴311に固定される(図8参照)。これにより、扉軸部材400が本体100に固定される。
【0036】
回動軸412は、円筒状であり、扉軸部材400がパネルベース310に固定された際、扉軸本体410からX方向に突出する(図8参照)。回動軸412は、扉200の軸穴(後で説明する)に挿入され、これにより扉200がフロントパネル300に対して回動可能となる。
【0037】
回動規制片413は、扉軸部材400がパネルベース310に固定された際、扉軸本体410からパネルベース310に向けてY方向に突出する。回動規制片413は、扉軸本体410に比較してX方向の幅が狭く且つZ方向の厚みが薄く形成された板バネ状の部材であり、扉軸本体410から連続する基部414を支点として主にZ方向に弾性を有する。基部414に比較してより大きな弾性を有する、回動規制片413の先端415側の所定位置には、扉ロック部420が設けられる。
【0038】
扉ロック部420は、回動規制片413をZ方向下方に「く」字状に湾曲させることで形成される。扉ロック部420は、頂点部421と、開放方向規制部422と、閉塞方向規制部423とを有する。頂点部421は、Z方向最下方に位置する「く」字状の湾曲の頂点を構成する。開放方向規制部422は、回動規制片413の基部414側から頂点部421に向かって傾斜する傾斜面を構成する。閉塞方向規制部423は、回動規制片413の先端415側から頂点部421に向かって傾斜する傾斜面を構成する。
【0039】
[(2)扉の構成]
図11は、扉を背面側から示す斜視図である。図12は、扉を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は左側面図である。
扉200は、カバー203と、複数の軸受部204と、回動機構軸受部210とを有する。複数の軸受部204は、カバー203の背面206の下端部201に設けられ、本体100に設けられる回動軸(図示せず)を挿入可能な軸穴を有する。回動機構軸受部210は、カバー203の背面206の下端部201に略垂直に設けられ、回動機構2を構成する。本実施形態では、カバー203の下端部201の右端部205に回動機構軸受部210が設けられる。
【0040】
図13は、扉が開放位置にある際の扉と扉軸部材との関係を示す斜視図である。
回動機構軸受部210は、軸受本体211と、軸受本体211に設けられた軸穴212、バネ穴213及び係合突起220とを有する。
【0041】
軸穴212は、回動軸412の直径よりわずかに大きい直径に形成される。軸穴212には、本体100(図13では図示せず)に固定された扉軸部材400からX方向に突出する回動軸412が挿入される。これにより、扉200が本体100に対して回動自在に支持される。この際軸穴212は、Y−Z面に配置された軸受本体211をX方向に貫通する。
【0042】
バネ穴213は、貫通方向が軸穴212と同じX方向であり、カバー203に対して軸穴212よりも離れた位置に設けられる。バネ穴213には反転バネ500の一端が挿入され(図7等参照)、反転バネ500が扉200に対して支持される。
【0043】
係合突起220は、軸穴212の中心点とバネ穴213の中心点とを結んだ直線の延長線と略等しい方向に突出し、且つ軸穴212よりもバネ穴213に近い位置に設けられる。係合突起220は、軸穴212に回動軸412が挿入されて扉200が開放位置にある際、扉ロック部420の閉塞方向規制部423の傾斜面に当接するようにして、閉塞方向規制部423に係合する。係合突起220の先端224は、略半球形に形成される。
【0044】
図8を参照して、このように扉200が開放位置にある際、軸受本体211において、カバー203の背面206から略垂直に立ち上がる部位215は、フロントパネル300の背面309の下端部307に対向する。軸受本体211のこの部位215をフロントパネル係合部215と呼ぶ。フロントパネル係合部215のカバー203から最も離れた部位には切欠き部216が設けられる。この切欠き部216から係合突起220に向けて立ち上がる部位217は、パネルベース310の背面312に当接する。軸受本体211のこの部位217をパネルベース係合部217と呼ぶ。上述のように、パネルベース310はフロントパネル300の背面309の下端部307を除く領域に取り付けられている。このため、フロントパネル係合部215がフロントパネル300の背面309の下端部307に対向し、切欠き部216を介してフロントパネル係合部215に隣り合うパネルベース係合部217がパネルベース310の背面312に当接する構成となる。
【0045】
係合突起220と、パネルベース係合部217のカバー203から最も離れた部位とは、なだらかな斜辺を構成する傾斜部218により連結されている。この傾斜部218の傾斜角は、扉ロック部420の開放方向規制部422の傾斜角と略等しい。一方、係合突起220とパネルベース係合部217に対向する部位219とを連結する連結部214は、係合突起220及び部位219に対して略垂直に形成される。係合突起220の頂点221から、傾斜部218から連続する係合突起220の基部222までの距離は、係合突起220の頂点221から、連結部214から連続する係合突起220の基部223までの距離より小さい。
【0046】
[(3)反転バネの構成]
図14は、反転バネを示す斜視図である。図15は、反転バネを示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は左側面図である。
反転バネ500は、一端部501から渦巻状に巻かれた第1のコイル部502と、第1のコイル部502の終端から直線的に延びる中間部503と、中間部503の終端から渦巻状に巻かれた第2のコイル部504と、第2のコイル部504の終端から直線的に延びる腕部505と、腕部505の終端から略垂直に折り曲げられ、他端部506まで直線的に延びる折曲部507とを有する。すなわち、第1のコイル部502及び第2のコイル部504の渦巻きはY−Z面に沿って巻かれ、中間部503及び腕部505はY−Z面に沿って延び、折曲部507はX方向に延びる。
【0047】
図6及び図7を参照して、パネルベース310の背面312からY方向に突出する右側板313の内側面314すなわち筐体110の内部側を向く面には、X方向に突出する円筒状のバネ支持部315が設けられる。バネ支持部315の直径は、第1のコイル部502の内径よりわずかに小さく形成される。第1のコイル部502は、バネ支持部315に挿入される。これにより、反転バネ500の一端部501側が、バネ支持部315により回動自在に支持される。
【0048】
折曲部507は、パネルベース310に固定された扉軸部材400に回動可能に支持された扉200の軸受本体211に設けられたバネ穴213に挿入される。これにより、反転バネ500の他端部506側が、扉200の軸受本体211に対して回動自在に支持される。
【0049】
反転バネ500は、扉200の開放/閉塞方向の回動に伴って、支持点すなわち第1のコイル部502及び折曲部507の位置関係が変化することを利用して、扉200の閉塞位置と開放位置との間の回動範囲の中間位置で付勢力の方向が切り替えられるようになっている。ここで、閉塞位置と開放位置との中間位置は距離的に厳密な意味での中間であってもよいが、閉塞位置と開放位置との間に設定上任意に決められた位置であってもよい。これらを含めて、ここでは中間位置と呼ぶこととする。
【0050】
扉200が閉塞位置と中間位置との間の第1の範囲にあるときには、反転バネ500は、扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢する。扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるときには、反転バネ500は、扉200を中間位置から開放位置へ向けて付勢する。一方、上述のように、本体100から排出されたディスクトレイ301が閉塞位置にある扉200に干渉し、扉200を回動させる。このため、扉200を閉塞方向に付勢する反転バネ500の付勢力は、ディスクトレイ301の排出及び扉200の回動を阻害しないように、ディスクトレイ301が扉200を開放方向に押圧し扉200を回動させる力よりも弱く設定される。
【0051】
[3.回動機構の動作]
次に、以上のように構成された回動機構2の動作について説明する。動作の説明は、以下の順に行うものとする。
(1)扉が閉塞位置から開放位置まで開放方向に回動する際の回動機構の動作
(2)扉が開放位置から閉塞位置まで閉塞方向に回動する際の回動機構の動作
【0052】
[(1)扉が閉塞位置から開放位置まで開放方向に回動する際の回動機構の動作]
図16は、扉が閉塞位置にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
扉200が閉塞位置にある状態において、ディスクトレイ301が本体100の挿脱口303から排出されると、ディスクトレイ301は扉200のカバー203の背面206に干渉する。
【0053】
図17は、扉が閉塞位置と中間位置との間の第1の範囲にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
ディスクトレイ301の排出によって扉200を排出方向へ移動させようとする力が加えられることにより、扉200が閉塞位置から中間位置に向けて回動する。上述のように、扉200が閉塞位置と中間位置との間の第1の範囲にあるときには、反転バネ500は、扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢する。このため、開放方向に閉塞位置から中間位置に扉200が回動するときには、反転バネ500による力に抗して扉200が回動する。このとき、扉200のカバー203はZ1方向(Z方向下方)に移動し、一方、カバー203に略垂直に設けられた回動機構軸受部210は回動軸412が挿入された軸穴212を支点としてZ2方向(Z方向上方)に移動する。その結果、回動機構軸受部210の係合突起220は扉軸部材400の扉ロック部420に接近する方向に移動する。
【0054】
なお、ディスクトレイ301が完全に排出した際、扉200のカバー203の上端部208はディスクトレイ301の底面317に干渉しており、反転バネ500は扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢する。この状態からディスクトレイ301を本体100に挿入すると、扉200は反転バネ500により閉塞位置へ向けて付勢され、閉塞位置に自然に回動する。
【0055】
なお、ここではディスクトレイ301の排出によって扉200を排出方向へ移動させようとする力が加えられることにより扉200が回動するものとした。しかしながら、ユーザの指による操作によって扉200をフロントパネル300から離間させようとする力が加えられることにより、扉200が閉塞位置から中間位置に向けて回動する場合にも、回動機構2は上記と同様に動作する。
【0056】
図18は、扉が第1の範囲にあるときの回動機構を模式的に示す別の断面図である。
さらに、ユーザによる操作により扉200を閉塞位置から中間位置に向けて回動させようとする力が加えられると、扉200の係合突起220が扉軸部材400の扉ロック部420の開放方向規制部422に干渉する。上述のように、係合突起220は、開放方向規制部422の傾斜角と略等しい傾斜角を有する傾斜部218から連続して形成されている。このため、係合突起220が開放方向規制部422に干渉するまで、ユーザは抵抗感を殆ど感じることなく、係合突起220を開放方向規制部422に沿わせるようにして、スムースに扉200を回動させることができる。なお、係合突起220が開放方向規制部422に干渉し始める際、扉200のカバー203の背面206とフロントパネル300の表面316とで構成される角θ1は、例えば80.6度である。
【0057】
図19は、扉が中間位置にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
係合突起220が開放方向規制部422に干渉している際、さらに、ユーザによる操作により扉200を閉塞位置から中間位置に向けて回動させようとする力が加えられる。ユーザからの圧力が所定値を超えると、扉200がさらに回動し、係合突起220はY1方向に移動し始める。扉200が回動を始めると、係合突起220は、係合突起220の略半球形の先端224と開放方向規制部422の傾斜面との干渉により、回動規制片413の付勢力に抗いつつ開放方向規制部422を押上げる。その結果、扉200の中間位置において、係合突起220の先端224は扉ロック部420の頂点部421に干渉する。扉200が中間位置に位置するときには、反転バネ500(図19では図示省略)による閉塞方向への付勢力と開放方向への付勢力とが略釣り合って、扉200の回動を付勢する力はほとんど発生しない。なお、扉200が中間位置に位置する際、扉200のカバー203の背面206とフロントパネル300の表面316とで構成される角θ2は、例えば70度以上85度以下であり、より具体的には、例えば84.3度である。
【0058】
図20は、扉が開放位置にあるときの回動機構を模式的に示す断面図である。
さらに、ユーザによる操作により扉200を中間位置から開放位置に向けて回動させようとする力が加えられると、係合突起220は、扉ロック部420の閉塞方向規制部423との干渉位置に達する。すると、回動規制片413の付勢力によって、係合突起220は閉塞方向規制部423に沿って引き込まれる。上述のように、扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるときには、反転バネ500(図20では図示省略)は、扉200を中間位置から開放位置へ向けて付勢する。このため、開放方向に中間位置から開放位置に扉200が回動するときには、扉200は中間位置から開放位置に自然に回動する。そして、扉200のパネルベース係合部217は、フロントパネル300の背面309に設けられたパネルベース310の背面312に干渉する。これにより、扉200は開放位置で定位される。なお、扉200が開放位置に位置する際、扉200のカバー203の背面206とフロントパネル300の表面316とで構成される角θ3は、例えば87度以上91度以下であり、より具体的には、例えば88.5度である。
【0059】
このように、本実施形態の回動機構2では、扉200の開放方向への移動範囲において、閉塞位置から中間位置までユーザが意図して回動させれば、中間位置から開放位置までは、反転バネ500の作用で、扉200は自然にユーザの意図する開放方向へ回動する。そして、反転バネ500の開放方向への付勢力と、扉200の係合突起220の扉軸部材400の閉塞方向規制部423への干渉と、扉200のパネルベース係合部217のパネルベース310への干渉により、扉200が開放位置で定位される。
【0060】
[(2)扉が開放位置から閉塞位置まで閉塞方向に回動する際の回動機構の動作]
扉200が開放位置(図20参照)にある状態において、ユーザによる操作により扉200を開放位置から中間位置に向けて回動させようとする力が加えられることにより、扉200が開放位置から中間位置に向けて回動する。扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるときには、反転バネ500は、扉200を中間位置から開放位置へ向けて付勢する。このため、閉塞方向に開放位置から中間位置に扉200が回動するときには、反転バネ500による力に抗して扉200が回動する。このとき、扉200のカバー203はZ2方向に移動し、一方、カバー203に略垂直に設けられた回動機構軸受部210は回動軸412が挿入された軸穴212を支点としてZ1方向に移動する。その結果、扉200の係合突起220が扉軸部材400の扉ロック部420の閉塞方向規制部423に干渉する。上述のように、係合突起220は、係合突起220に対して略垂直に形成された連結部214から連続して形成されている。このため、係合突起220が閉塞方向規制部423に干渉するまで、ユーザはほとんど全く抵抗感を感じることなくスムースに扉200を回動させることができる。
【0061】
係合突起220が閉塞方向規制部423に干渉している際、さらに、ユーザによる操作により扉200を開放位置から中間位置に向けて回動させようとする力が加えられる。ユーザからの圧力が所定値を超えると、扉200がさらに回動し、係合突起220はY2方向に移動し始める。扉200が回動を始めると、係合突起220は、係合突起220の略半球形の先端224と閉塞方向規制部423の傾斜面との干渉により、回動規制片413の付勢力に抗いつつ閉塞方向規制部423を押上げる。その結果、扉200の中間位置(図19参照)において、係合突起220の先端224は扉ロック部420の頂点部421に干渉する。扉200が中間位置に位置するときには、反転バネ500による閉塞方向への付勢力と開放方向への付勢力とが略釣り合って、扉200の回動を付勢する力はほとんど発生しない。
【0062】
さらに、ユーザによる操作により扉200を中間位置から閉塞位置に向けて回動させようとする力が加えられると、係合突起220は、扉ロック部420の開放方向規制部422との干渉位置に達する。すると、回動規制片413の付勢力によって、係合突起220は開放方向規制部422に沿って引き込まれる(図18参照)。扉200が閉塞位置と中間位置との間の第1の範囲にあるときには、反転バネ500は、扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢する。このため、閉塞方向に中間位置から閉塞位置に扉200が回動するときには、扉200は中間位置から閉塞位置に自然に回動する。そして、扉200のカバー203の背面206は、ディスクトレイ301が挿入されている場合には、フロントパネル300の表面316に干渉する。これにより、扉200は閉塞位置(図16参照)で定位される。
【0063】
このように、本実施形態の回動機構2では、扉200の閉塞方向への移動範囲において、開放位置から中間位置までユーザが意図して回動させれば、中間位置から閉塞位置までは、反転バネ500の作用で、扉200は自然にユーザの意図する閉塞方向へ回動する。そして、反転バネ500の閉塞方向への付勢力と、扉200のカバー203のフロントパネル300への干渉とにより、扉200が閉塞位置で定位される。
【0064】
本実施形態によれば、反転バネ500は、扉200が第1の範囲にあるときには扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢し、扉200が第2の範囲にあるときには扉200を中間位置から開放位置へ向けて付勢する。このような反転バネ500を用いると、例えば、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、扉200が開放位置にある際にユーザがフロントパネル300を操作しようしたとき、ユーザが扉200に誤って触れてしまうと、扉200がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうことがある。その結果、中間位置に回動した扉200が、反転バネ500により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまう。
【0065】
特に、本実施形態では、本体100から排出されたディスクトレイ301が扉200に干渉し、反転バネ500の付勢力に抗して扉200を回動させる構成としている。このため、扉200を閉塞方向に付勢する反転バネ500の付勢力は、ディスクトレイ301の排出及び扉200の回動を阻害しないように、ディスクトレイ301が扉200を開放方向に押圧し扉200を回動させる力よりも弱く設定されている。仮に、付勢力の強い反転バネを用いれば、扉200が開放位置にある際にユーザが扉200に誤って触れても、扉200が開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動し難いので、扉200が閉塞位置まで回動してしまうのを防ぐことができる。しかしながら、反転バネ500の付勢力が弱い場合はそうはいかない。
【0066】
そこで、本実施形態によれば、扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、閉塞方向規制部423が扉200の係合突起220に干渉することで、扉200が開放位置から中間位置へ移動するのを規制することができる。これにより、付勢力の弱い反転バネ500を用いているにも拘らず、扉200が開放位置にある際にユーザが扉200に誤って触れたときに、扉200がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうのを防ぐことができる。その結果、中間位置に回動した扉200が、反転バネ500により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまうのを防ぐことができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、扉200の回動の中心としての回動軸412と、扉200の係合突起220と干渉する回動規制片413とが、扉軸部材400として一体に形成される。これにより、回動軸412と回動規制片413とを別個の部品とする構成で生じうる誤差の発生を防止することができる。例えば、回動軸412と回動規制片413とを別個の部品とすると、回動規制片413の回動軸412に対する位置関係に個々の電子機器によって誤差がある場合、回動軸412を中心として扉200が回動する際に係合突起220が扉ロック部420に適切に干渉しない電子機器が生じるおそれがある。これに対して、本実施形態では、回動規制片413の回動軸412に対する位置関係が個々の電子機器によらず一定であるので、回動軸412を中心として扉200が回動する際に係合突起220が扉ロック部420に適切に干渉する。
【0068】
また、本実施形態によれば、扉200が中間位置に位置する際、扉200のカバー203の背面206と、載置面(水平面)に対して例えば垂直であるフロントパネル300の表面316とで構成される角θ2は、例えば70度以上85度以下である。本実施形態では、ディスクトレイ301の排出により扉200が閉塞位置から中間位置に向けて回動し、ディスクトレイ301の挿入により扉200が反転バネ500により閉塞位置へ向けて付勢されて閉塞位置に自然に回動する構成としている。この構成とするためには、ディスクトレイ301が扉200に干渉している間は常に反転バネ500が扉200を中間位置から閉塞位置へ向けて付勢する必要がある。このため、付勢方向の切替ポイントである中間位置をある程度低い位置(90度に近い位置)に設定する必要がある。このように、中間位置が低い位置(90度に近い位置)に設定されると、付勢力の弱い反転バネ500を用いた場合、扉200が開放位置にある際にユーザがフロントパネル300を操作しようしたとき、ユーザが扉200に誤って触れてしまうと、扉200がユーザの意図に反して開放位置から回動して中間位置(付勢方向の切替ポイント)に到達し易い。その結果、中間位置に回動した扉200が、反転バネ500により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまう。
【0069】
しかしながら、本実施形態によれば、扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、閉塞方向規制部423が扉200の係合突起220に干渉するので、扉200が開放位置から中間位置へ移動するのを規制することができる。これにより、中間位置が低い位置(90度に近い位置)に設定されているにも拘らず、扉200が開放位置にある際にユーザが扉200に誤って触れたときに、扉200がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうのを防ぐことができる。その結果、中間位置に回動した扉200が、反転バネ500により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまうのを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、扉200が開放位置に位置する際、扉200のカバー203の背面206と、載置面(水平面)に対して例えば垂直であるフロントパネル300の表面316とで構成される角θ3は、例えば87度以上91度以下である。このように、開放位置が低い位置(90度に近い位置)に設定されると、扉200が開放位置にある際にユーザがフロントパネル300を操作し易いという利点がある。一方、付勢力の弱い反転バネ500を用いた場合、扉200が載置面に干渉してしまうと、扉200がユーザの意図に反して開放位置から回動して中間位置(付勢方向の切替ポイント)に到達し易い。その結果、中間位置に回動した扉200が、反転バネ500により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまう。
【0071】
しかしながら、本実施形態によれば、扉200が中間位置と開放位置との間の第2の範囲にあるとき、閉塞方向規制部423が扉200の係合突起220に干渉するので、扉200が開放位置から中間位置へ移動するのを規制することができる。これにより、開放位置が低い位置(90度に近い位置)に設定されているにも拘らず、扉200が開放位置にある際に扉200が載置面に干渉したときに、扉200がユーザの意図に反して開放位置から中間位置(付勢方向の切替ポイント)まで回動してしまうのを防ぐことができる。その結果、中間位置に回動した扉200が、反転バネ500により中間位置から閉塞位置へ向けて付勢され、ユーザの意図に反して中間位置から閉塞位置に自然に回動してしまうのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0072】
1…電子機器
100…本体
200…扉
301…ディスクトレイ
413…回動規制片
500…反転バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する本体と、
前記開口を閉塞する閉塞位置と前記開口を開放する開放位置との間で前記本体に対して回動可能な扉と、
前記扉の前記閉塞位置と前記開放位置との間で予め決められた位置を中間位置として、前記中間位置と前記閉塞位置との間の第1の範囲にあるとき、前記扉を前記中間位置から前記閉塞位置へ向けて付勢し、前記扉が前記中間位置と前記開放位置との間の第2の範囲にあるとき、前記扉を前記中間位置から前記開放位置へ向けて付勢する付勢手段と、
記録媒体を着脱可能であり、前記本体に対して前記開口を通じて排出及び挿入可能であり、前記本体から排出される際前記閉塞位置にある前記扉に干渉して前記扉を回動させるトレイと、
前記扉が前記第2の範囲にあるとき、前記扉に干渉して前記扉が前記開放位置から前記中間位置へ移動するのを規制する第1の規制部と
を具備する電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記扉の前記本体に対する回動軸をさらに具備し、
前記回動軸及び前記第1の規制部は一体に形成される
電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記扉が前記開放位置にあるとき、前記扉が前記開放位置から前記中間位置と反対の方向へ移動するのを規制する第2の規制部をさらに具備する
電子機器。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の電子機器であって、
前記中間位置にある前記扉の垂線に対する角度は、70度以上85度以下の範囲内に設定される
電子機器。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の電子機器であって、
前記開放位置にある前記扉の垂線に対する角度は、87度以上91度以下の範囲内に設定される
電子機器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−123863(P2012−123863A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272748(P2010−272748)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】