説明

電子機器

【課題】回動操作部材の回動操作によって発生する衝突音や振動音を軽減することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、カバー20に組み付けられる回動操作部材5と、回動操作部材5と一体回動し、回動方向両側が開口する保持部13aを有するホルダ13と、カバー20のボス20aに嵌め込まれるコイル部9a、及びコイル部9aから延出して保持部13aに対してホルダ13の回動方向に挟むように掛止される一対の先端部9b,9cを有し、回動操作部材5を初期位置へ戻すトーションばね9と、先端部9b,9cに挟まれる位置で外装カバー20に設けられ、回動操作部材5を位置決めする位置決め部20bと、保持部13aに嵌め込まれ、回動操作部材5が初期位置に位置決めされた際に、先端部9b,9cに挟み込まれて弾性変形する弾性部材10と、を備える。弾性部材10は、保持部13aに対して相対移動が可能に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の電子機器に関し、特に所定の角度範囲内で回動操作が可能な回動操作部材を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子機器では、図8に示すように、回動操作によりズーム機構を作動させるズームレバー206の中央部に、レリーズボタン205を配置したものがある。
【0003】
図9は、ズームレバー206等の取付部の構造を示す斜視図である。図9において、レバーホルダ256は、金属等の導電性部材で形成され、ズームレバー206にビス等で固定されて、ズームレバー206と一体に回動する。トーションばね254は、コイル部254aが外装カバー220に設けられたボス220aに嵌め込まれ、一対の先端部254b,254cがホルダ256に設けられたT字引っ掛け部256aに掛止される。
【0004】
図10(a)はズームレバー206が初期位置あるときの状態を示す図、図10(b)はズームレバー206が回動位置にあるときの状態を示す図である。なお、図10(b)の矢印A方向は、ズームアウトの回動操作方向、矢印Aの反対方向は、ズームインの回動操作方向である。
【0005】
例えば、ズームアウト時にズームレバー206を図の矢印A方向へ回動操作すると、ズームレバー206と一体に回動するレバーホルダ256のT字引っ掛け部256aによりトーションばね254の先端部254cが矢印A方向に引っ張られる。
【0006】
この状態でズームレバー206から指を離すと、トーションばね254の先端部254cがばね力により外装カバー220に設けられた位置決めリブ220bまで戻り、ズームレバー206が初期位置に位置決めされる。
【0007】
このような構造を用いて、特許文献1では、導電性のズームレバー206、レバーホルダ256、及びトーションばね254を電気的に導通させて、外装で発生した静電気を内部のグラントパターンへ逃がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−203632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の技術では、ズームレバー206がトーションばね254のばね力により回動位置から初期位置に戻る際、トーションばね254の先端部254cが位置決めリブ220bに衝突して衝突音が発生する。また、ズームレバー206がトーションばね254のばね力により回動位置から初期位置に戻る際、コイル部9aが振動することによる振動音が発生する。そのため、例えば、動画撮影中にズーム操作が可能な電子機器の場合、ズームレバー206の衝突音や振動音といった操作音が録音されてしまうという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は、回動操作部材の回動操作によって発生する操作音を軽減することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、機器本体に対して回動可能に組み付けられる回動操作部材と、前記回動操作部材と一体に回動可能とされ、回動方向の両側が開口する保持部が設けられたレバーホルダと、前記機器本体に固定されたボスに嵌め込まれるコイル部、及び前記コイル部から延出して前記保持部に対して前記レバーホルダの回動方向に挟むように掛止される一対の先端部を有し、前記回動操作部材を回動位置から初期位置へ戻すための力を発生させるトーションばねと、前記トーションばねの前記一対の先端部に挟まれる位置で前記機器本体に固定され、前記回動操作部材を初期位置に位置決めする位置決め部と、前記保持部の内部に嵌め込まれ、前記位置決め部により前記回動操作部材が初期位置に位置決めされた際に、前記トーションばねの前記一対の先端部に挟み込まれて弾性変形する弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、前記保持部に対して前記レバーホルダの回動方向に相対移動が可能に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回動操作部材の回動操作によって発生する衝突音や振動音といった操作音を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の電子機器の実施形態の一例であるデジタルカメラを背面側から見た斜視図である。
【図2】トップカバーユニットの分解斜視図である。
【図3】(a)はレバーホルダの斜視図、(b)はレバーホルダとトーションばねとの関係を示す斜視図である。
【図4】トップカバーユニットにおけるズームレバーの組付部分を内部側から見た斜視図である。
【図5】ズームレバーが初期位置にある状態を示す図である。
【図6】ズームレバーがテレ位置にある状態を示す図である。
【図7】ズームレバーがワイド位置にある状態を示す図である。
【図8】従来のズームレバーを説明するための斜視図である。
【図9】ズームレバー等の取付部の構造を示す斜視図である。
【図10】(a)はズームレバーが初期位置あるときの状態を示す図、(b)はズームレバーが回動位置にあるときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の電子機器の実施形態の一例であるデジタルカメラを背面側から見た斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のデジタルカメラは、カメラ本体1の背面側に、液晶ディスプレイ等の表示部2が配置され、表示部2の右側には、操作ボタン群3a〜3e、及びモード切替スイッチ4が配置されている。また、カメラ本体1の上面部には、レリーズボタン5、ズームレバー6、及び電源ボタン7が配置されている。
【0017】
ズームレバー6、及び電源ボタン7の周囲を形成する外装カバーは、トップカバー20とされ、トップカバー20に、ズームレバー6及び電源ボタン7等の関連部品を組み込むことによって、トップカバーユニット30を形成する。ここで、トップカバー20は、本発明の外装カバーの一例に相当し、ズームレバー6は、本発明の回動操作部材の一例に相当する。
【0018】
図2〜図4を参照して、トップカバーユニット30について説明する。図2はトップカバーユニット30の分解斜視図、図3(a)はレバーホルダ13の斜視図、図3(b)はレバーホルダ13とトーションばね9との関係を示す斜視図、図4はトップカバーユニット30におけるズームレバー6の組付部分を内部側から見た斜視図である。
【0019】
まず、トップカバー20の外側から組み付ける部品について説明すると、図2に示すように、レリーズボタン5は、押し軸5aにコイルばね8がキートップに接触するように挿入された状態でズームレバー6に掛止される。レリーズボタン5が掛止されたズームレバー6は、トップカバー20に外側から組み付けられる。
【0020】
なお、トップカバー20におけるズームレバー6の組付部分には、ズームレバー6の回動方向に長い円弧状の長穴20cが周方向に互いに離間して3カ所形成されている。そして、ズームレバー6をトップカバー20に組み付ける際には、各長穴20cにズームレバー6の3つの位置決めピン6aが挿入され、これにより、デジタルカメラの機器本体に対してズームレバー6の回動操作が可能になる。
【0021】
次に、トップカバー20の内側から組み付ける部品について説明する。電源ボタン7は、トップカバー20に接着剤等を介して組み付けられる。トップカバー20の内側には、長穴20cからズームレバー6の位置決めピン6aが突出しており、この突出部分には、レバーホルダ13に形成された嵌合穴13bが嵌合固定される。これにより、レバーホルダ13がズームレバー6と一体に回動可能とされている。
【0022】
また、レバーホルダ13には、図2及び図3(a)に示すように、保持部13aが板金の曲げ成形等により一体に形成されている。
【0023】
保持部13aは、レバーホルダ13の外周部から回動軸方向に延びる外径壁13cと、外径壁13cの延出端から径方向内側に延びる天壁13dと、天壁13dの延出端から外径壁13cと平行に延びて外径壁13bと径方向に対向する内径壁13eとを備える。外径壁13c及び内径壁13eは、天壁13bより幅狭とされている。
【0024】
保持部13aは、レバーホルダ13の回動方向の両側が開口しており、この開口部分から弾性部材10が保持部13aの内部に嵌め込まれて保持される。かかる保持状態においては、弾性部材10は、保持部13aに対してレバーホルダ13の回動方向に相対移動が可能とされている。また、本実施形態では、弾性部材10は、保持部13a内でレバーホルダ13の回動軸方向に圧縮された状態で保持されている。
【0025】
トーションばね9は、コイル部9aがトップカバー20の内側に突設された位置決めボス20aに嵌め込まれる。このとき、トーションばね9の一対の先端部9b,9cは、図3(b)及び図4に示すように、保持部13aに保持された弾性部材10のレバーホルダ13の回動方向の両側部を挟み込んで弾性変形させた状態で保持部13aに掛止されて電気的に導通する。
【0026】
また、トーションばね9の先端部9b,9cは、トップカバー20に形成された位置決めリブ20bによって定められた初期位置にズームレバー6を保持しており、位置決めリブ20bは、保持部13aの外径壁13c(図3(a)参照)と略同一幅とされている。また、ズームレバー6の初期位置においては、保持部13a内の弾性部材10は、トーションばね9の先端部9b,9cに対する付勢力が均等になる位置に保持される。ここで、位置決めリブ20bは、本発明の位置決め部の一例に相当する。
【0027】
図2に戻って、フレキシブルプリント基板14には、電源ボタン7、レリーズボタン5及びズームレバー6の操作信号を送る為のスイッチ(不図示)が実装されており、不図示のメインシャーシに組み付けられる。ばねホルダ11は、トーションばね9に接触した状態でビス12によりトップカバー20に固定される。
【0028】
ばねホルダ11の先端部11aは、メインシャーシに接触しており、メインシャーシは、不図示のメイン基板に接続されている。これにより、ばねホルダ11とメイン基板のグランドパターンとを電気的に導通させることができ、ズームレバー6、レリーズボタン5及びトーションばね9付近の静電気をばねホルダ11を通じてメイン基板のグランドパターンに逃がすことが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、ズームレバー6を非導電性部材としているため、ズームレバー6の電気的導通を強化する必要はないが、ズームレバー6が導電性部材の場合には、弾性部材10を導電性部材として、ズームレバー6の電気的導通を強化してもよい。
【0030】
次に、図5〜図7を参照して、ズームレバー6及びレバーホルダ13の回動動作とトーションばね9との関係について説明する。
【0031】
図5はズームレバー6が初期位置にある状態を示す図、図6はズームレバー6がテレ位置にある状態を示す図、図7はズームレバー6がワイド位置にある状態を示す図である。
図5の状態からズームレバー6をテレ位置方向(図5の反時計回り方向)に回動操作すると、図6に示すように、レバーホルダ13の保持部13aによってトーションばね9の先端部9bが開かれ、変形していた弾性部材10が元の形状に戻る。この状態でズームレバー6から指を離しても、弾性部材10がある為、トーションばね9の先端部9bおよび9cは、先に弾性部材10に当接して弾性部材10を弾性変形させることで勢いを弱めてから位置決めリブ20bに当接する。
【0032】
また、図5の状態からズームレバー6をテレ位置方向(図5の時計回り方向)に回動操作すると、図7に示すように、レバーホルダ13の保持部13aによってトーションばね9の先端部9cが開かれ、変形していた弾性部材10が元の形状に戻る。この状態でズームレバー6から指を離しても、弾性部材10がある為、トーションばね9の先端部9cおよび9bは、先に弾性部材10に当接して弾性部材10を弾性変形させることで勢いを弱めてから位置決めリブ20bに当接する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、ズームレバー6が回動位置から初期位置に戻る際に、トーションばね9の先端部9b,9cが弾性部材10に先に衝突して弾性部材10を弾性変形させることで勢いを弱めてから位置決めリブ20bに当接する。また、トーションばね9の先端部9b,9cが位置決めリブ20bに当接した状態では、弾性部材10を弾性的に押圧して変形させるため、コイル部9aが振動しにくくなる。これにより、ズームレバー6の回動操作によって発生するトーションばね9の先端部9b,9cと位置決めリブ20bとの衝突音やコイル部9aの振動音を軽減することができる。
【0034】
また、本実施形態では、弾性部材10は、保持部13aに対してレバーホルダ13の回動方向に相対移動が可能とされている。そのため、保持部13a内で弾性部材10がズームレバー6の初期位置に組み込まれていなくても、ズームレバー6をワイド側やテレ側へ数回回動操作することで、トーションばね9の先端部9b,9cにより弾性部材10を初期位置に移動させることができる。これにより、作業者による弾性部材10の貼りズレ等の組み立て誤差をなくすことができる。
【0035】
なお、本発明の構成は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では、デジタルカメラのズームレバーに適用した場合を説明したが、その他の機能の操作に用いる、中立位置から予め決められた回転角度の間で回動操作が可能な回動操作部材に適用しても構わない。例えば、記録媒体に記録された複数の画像のうちの1つを画像表示部に表示させる再生モードにおいて、表示させる画像を次の画像に変更する画像送り操作に用いる回動操作部材に適用しても構わない。
【0037】
また、上述した画像送り操作のような、撮像装置以外の電子機器でも実行可能な機能の操作に用いる回動操作部材にも適用可能である。すなわち、中立位置から予め決められた回転角度の間で回動操作が可能な回動操作部材を有する電子機器であれば本発明を適用することができる。
【0038】
また、トーションばね9のコイル部9aは、トップカバー20の内側に突設された位置決めボス20aに嵌め込まれるのではなく、デジタルカメラの機器本体に固定されたボスであれば、他の部材に設けられたボスに嵌め込まれる構成であってもよい。
【0039】
また、ズームレバー6の初期位置をトップカバー20に形成された位置決めリブ20bで定めるのではなく、デジタルカメラの機器本体に固定されたボスであれば、他の部材に設けられた位置決めリブで定める構成であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
6 ズームレバー
9 トーションばね
9a コイル部
9b,9c 一対の先端部
10 弾性部材
13 レバーホルダ
13a 保持部
20 トップカバー
20a 位置決めボス
20b 位置決めリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に対して回動可能に組み付けられる回動操作部材と、
前記回動操作部材と一体に回動可能とされ、回動方向の両側が開口する保持部が設けられたレバーホルダと、
前記機器本体に固定されたボスに嵌め込まれるコイル部、及び前記コイル部から延出して前記保持部に対して前記レバーホルダの回動方向に挟むように掛止される一対の先端部を有し、前記回動操作部材を回動位置から初期位置へ戻すための力を発生させるトーションばねと、
前記トーションばねの前記一対の先端部に挟まれる位置で前記機器本体に固定され、前記回動操作部材を初期位置に位置決めする位置決め部と、
前記保持部の内部に嵌め込まれ、前記位置決め部により前記回動操作部材が初期位置に位置決めされた際に、前記トーションばねの前記一対の先端部に挟み込まれて弾性変形する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記保持部に対して前記レバーホルダの回動方向に相対移動が可能に保持されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記トーションばねの前記一対の先端部は、前記回動操作部材が回動位置から前記初期位置へ戻る際に、前記位置決め部よりも先に前記弾性部材に当接し、前記弾性部材を弾性変形させてから前記位置決め部に当接することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記トーションばねの前記一対の先端部を前記レバーホルダの前記保持部に掛止させることで、前記トーションばねと前記レバーホルダとを電気的に導通させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記保持部の内部で前記レバーホルダの回動軸方向に圧縮された状態で保持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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