説明

電子歯ブラシ

【課題】フッ素イオンの導入効果がきわめて高いものとする。
【解決手段】柄1の先端に導電性のブラシ2が植設されているともに、上記導電性ブラシ2と柄1に設けた電極10と間に電圧を印加する電源部を備えた電子歯ブラシであり、上記導電性のブラシと電極間に供給する電流をパルス電流とする制御部を備える。パルス電流を供給して歯牙における脱分極制御を行うことで歯牙におけるフッ素イオン導入を阻害する分極の問題を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙へのフッ素イオン導入を効果的に行うための電子歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯牙のう蝕予防のためにフッ素イオンを歯牙に導入することを家庭内で行うには、電子歯ブラシと称されているものが多用されている。この電子歯ブラシは歯ブラシのブラシ部をマイナス極(またはプラス極)に、歯ブラシの柄部をプラス極(またはマイナス極)に帯電させることで、例えば歯磨き剤に添加されたフッ化物によるフッ素イオンの歯牙への導入を促すようにしたものである。
【0003】
しかし、従来の電子歯ブラシでは、フッ素イオンの導入効果がさほど高くなく、より効果的にフッ素イオンの導入を行うことができる電子歯ブラシが求められている。
【特許文献1】特許第2717843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、フッ素イオンの導入効果がきわめて高い電子歯ブラシを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る電子歯ブラシは、柄の先端に導電性のブラシが植設されているともに、上記導電性ブラシと柄に設けた電極と間に電圧を印加する電源部を備えた電子歯ブラシであって、上記導電性のブラシと電極間に供給する電流をパルス電流とする制御部を備えていることに特徴を有している。
【0006】
上記パルス電流としては、休止時間が通電時間よりも短いものが、ある時間当たりの総通電時間を長くすることができる点で好適であり、特に通電時間が約1ms、休止時間が約0.1msの矩形波パルス電流を導電性のブラシと電極間に供給するものであることが好ましい。
【0007】
また、上記制御部は供給する電流の極性を一時的に反転させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、常時電流を流すのではなく、パルス電流を供給するために、歯牙における脱分極制御を行うことができるものであり、歯牙におけるフッ素イオン導入を阻害する分極の問題を除去することができるために、きわめて高いフッ素イオン導入効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、この電子歯ブラシは図2に示すように柄部1の先端にブラシ2を植設したものであるとともに、柄部1内に電池である電源部3とパルス発生部31とパルス制御部32とを設けたものであり、さらに上記ブラシ2は毛束群の中央部に導電性を有する毛束20を有しており、柄部1の外周面には導電材で形成された電極部10が設けられ、上記パルス制御部32から供給されるパルス電流が上記毛束20と電極部10との間に供給される。
【0010】
ここにおいて、歯磨きのために歯ブラシを使用する際に使用者が手で掴む柄部1に設けられて手に接触する電極部10がプラス、他方の電極を構成する導電性を有した毛束20がマイナスとなる極性のパルス電流が供給される。毛束20に代えて、歯ブラシにおけるブラシ2が植設された先端部に突起電極を設けたものであってもよい。
【0011】
上記パルス電流としては、電圧が3V程度でたとえば通電時間が1ms〜10ms、休止時間が0.1ms〜10msの矩形波乃至台形波のもの、特に図2に示すように通電時間よりも休止時間が短いパルス電流を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。なお、休止時間の設定はデューティ比制御で行うことが簡便でよい。
【0012】
従来の電子歯ブラシではブラシ2側と柄1側とに常時電圧を印加していたのに対して、本発明に係る電子歯ブラシではパルス電流を印加することに特徴を有しているが、これは次の理由による。
【0013】
すなわち、電子歯ブラシでは上述のように人体を通じて電流を流すわけであるが、この電流経路中において、歯牙は主として抵抗成分として働くものとの実験結果を得ることができるとともに、フッ素イオンの導入のためにブラシ2側と柄1側とに常時電圧を印加した場合、マイナスの電荷によってフッ素イオンが歯牙に入った時、フッ素のマイナスの電荷によって歯牙内において分極が発生し、この分極のために他のフッ素イオンの歯牙への導入が妨げられ、この結果、フッ素イオンの導入量が制限されてしまっているとの考察を得ることができた。
【0014】
本発明は、上記分極を無くす脱分極制御を目的としてパルス電流を流すことにより、より多くのフッ素イオンを歯牙内に導入させることができるようにしたものであり、この点は図3に示すテスト結果からその効果を確認することができた。
【0015】
上記テストは、歯治療のために人体から摘出された歯牙をフッ化ナトリウムの4%溶液に浸漬するとともに、歯牙にプラス電極を接続し、溶液中にマイナス電極を配した状態で電圧3Vの微少電流を1日2回の歯磨き30日分に相当する1時間流した後に、歯牙表面のフッ素量(分析エリア中の全原子中のフッ素原子の割合)を測定したものであり、図3から明らかなように、常時電流を流した場合はフッ素量が3at.%に満たなかったのに対して、通電10ms休止10msの矩形波パルス電流を流した場合にはフッ素量が8at.%ほどに、また通電1ms休止0.1msの矩形波パルス電流を流した場合にはフッ素量が24at.%を越える値となった。パルス電流とすることが有効であることがわかるとともに、通電1ms休止0.1msの矩形波パルス電流を流す場合、特に顕著な効果を得られることがわかる。これは通電時間が長ければ分極によるフッ素イオン導入量の制限が始まってしまうことと、脱分極には0.1msほどの休止時間があればよい上に休止時間が短い方が全体としての通電時間が長くなるためと考えられる。
【0016】
また、図4に示すように、所定数のパルス電流を流した時点で逆極性の電流を一時的に流すことも、脱分極制御に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の一例の概略ブロック図である。
【図2】同上におけるタイムチャートである。
【図3】同上のテスト結果を示す説明図である。
【図4】他例のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 柄
2 ブラシ
10 電極
20 導電性毛束
31 パルス発生部
32 パルス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄の先端に導電性のブラシが植設されているともに、上記導電性ブラシと柄に設けた電極と間に電圧を印加する電源部を備えた電子歯ブラシであって、上記導電性のブラシと電極間に供給する電流をパルス電流とする制御部を備えていることを特徴とする電子歯ブラシ。
【請求項2】
制御部は休止時間が通電時間よりも短いパルス電流を導電性のブラシと電極間に供給するものであることを特徴とする請求項1記載の電子歯ブラシ。
【請求項3】
制御部は通電時間が約1ms、休止時間が約0.1msの矩形波パルス電流を導電性のブラシと電極間に供給するものであることを特徴とする請求項2記載の電子歯ブラシ。
【請求項4】
制御部は供給する電流の極性を一時的に反転させるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−223369(P2006−223369A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38034(P2005−38034)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】