説明

電子的に駆動される連続流におけるトランスフェクション

生体細胞およびその他の膜性構造体が、貫流式システム中で、チャンネルの長手方向の壁上の移動帯電パターンを使用して、細胞とこの移動帯電パターン間の静電的相互作用に基づいてチャンネルを通過するように細胞を進行させることによって、トランスフェクションされる。細胞がチャンネルを通過するに伴って、この細胞はトランスフェクションエネルギーを放出する伝達体を通過する。このトランスフェクションエネルギーは、細胞膜を透過性にして、細胞を懸濁する流体中の外因種が細胞内に入り込むようにするために充分な大きさのエネルギーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体細胞、リポソームおよび、構造体にとって外因性である種を有するベクシルのような、膜性構造体のトランスフェクションの分野に関する。特に、本発明は、連続流トランスフェクションシステムを形成するための、膜性構造体の可動化に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスフェクションは、生物学および生化学の研究者が、siRNA実験およびcDNAライブラリを使用する研究を含む、種々の研究および処置、さらに種々の臨床および研究的処置を実行する上で有益である。もっとも先進的なトランスフェクション技術は、エレクトロポレーション、即ち、構造体の懸濁液を通して外因性の種の溶液中に電場パルスを印加することにより膜性構造体を一時的に多孔性とし、その結果、種がその膜を通過するようにすること、を含んでいる。トランスフェクションの価値はますます認識されその使用が拡大するにつれて、ある問題がその応用範囲を限定している。このような問題の一つは手法の効率性であり、一般にその効率は低く、そして、膜性構造体が凝縮し易いこと、構造体の方向性の相違、異なる方向を有する電場へ構造体を暴露する場合の暴露の相違、および、遮蔽された構造体が電場と外因種に対して暴露されることを限定する個々の構造体の遮蔽効果に基づいて、大きく変化する。
【0003】
別の問題は処理能力、特に、トランスフェクションが多くの細胞またはその他の膜性構造体に対して実施される場合の処理能力である。高い処理能力を有する応用として、多くのサンプルを含むものがあり、この場合、異なるタイプの細胞あるいは異なる外因種、またはその両者が同時に処置される。これを遂行するために、多くのサンプルに適合するエレクトロポレーションプレートが設計されている。このようなプレートは、特許協力条約に従って2004年6月17日に公開された“Large−Scale Electroporation Plates, Systems, and Methods of Use”(出願人Genetronics,Inc:発明者Gamelin,A等)と題された国際特許出願WO2004/050866A1、および2006年2月10日に出願された共通の出願人による、“Apparatus for High−Throughput Electroporation”(発明者Ragsdale,C.W.等)と題された米国仮特許出願No.60/771,994に記載されている。別の高い処理能力を有する応用としては、例えば、単一のエレクトロポレーションキュベットに適合可能なものよりも更に多くの膜性構造体に関与するものである。
【0004】
一般に、エレクトロポレーションおよびトランスフェクションに関する文献の多く、および商業的に入手可能なエレクトロポレーションシステムにおいては、バッチ式構成のキュベット中で処理が実施される。典型的なキュベットのサイズにおける限界と共に、バッチ式処置に含まれる高度な操作および反復によって、多量のサンプルおよび多量の構造体の処理は、コストがかかりかつエラーを起こしやすい。バッチ式使用のために設計されたエレクトロポレーションチャンバを連続して使用することにより、チャンバのオーバーヒーティングおよび膜の修復不能な破裂のリスクが発生する。限定された応用にのみ、連続流システムが意図されている。連続流システムは、Nicolau等(CRB Laboratories,Inc.)による1997年3月18日発行の“Method and Apparatus for Encapsulation of Biologically−Active Substances in Cells”と題された米国特許第5,612,207号、およびMeserol,P(EntreMed,Inc)による2000年7月18日発行の“Flow Electroporation Chamber With Electrodes Having a Crystalline Metal Nitride Coating”と題された米国特許第6,090,617号に記載されている。これらの特許における電極は細長いストリップ状の電極であり、エレクトロポレーションは単純な機械的ポンプを用いて、電極間の空間を通して細胞をポンピングすることによって達成される。エレクトロポレーション速度はポンプ速度によって限定され、例えば、流路中のある特定のポイントにおける懸濁液の濃度、および個々の細胞の場暴露における相違等の因子によって、殆ど規制されることはない。別の移動システムが、Acker,J.L.等による、2004年2月12日公開の、米国特許公開第2004/0029240号A1に記載されている。Acker等によって使用されたシステムは移動電極を含み、貫流(フロースルー)システムではない。移動電極の目的は、細胞にすべり歪を与え、細胞が連続的にその方向を変えるようにすることである。
【0005】
例えば光パルスのような電磁放射を利用してトランスフェクションを遂行することが、本発明の背景に更に潜在的に関連している。エレクトロポレーションと同様の方法で、膜性構造体を光エネルギーパルスに暴露することによって、膜を破壊することなく過渡的に透過性とする。エレクトロポレーションの場合と同様に、これは、細胞に対して外因性である分子の溶液中に細胞を懸濁している間に行われる。その結果、分子が透過性の膜を通過して細胞中に入りこむことが可能となる。このことは、Loller,M.R等(OncosisLLC)による、2006年6月22日発行の、米国特許第6,753,161号“Optoinjection Methods”に記載されている。この過渡的な透過効果は、細胞が“実質的に動かない”間に達成される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、帯電された膜性構造体の貫流形式におけるトランスフェクションのためのシステムおよび方法に関し、この場合、構造体がチャンネルを通過し更にチャンネル中のトランスフェクションエネルギー伝達体を通過して運搬されるように、構造体上の電荷を利用する。構造体は、その電荷によって、チャンネル内の長手方向の壁の上の反対の極性を有する電荷に引き付けられる。この反対極性を有する電荷は、壁に沿って移動帯電パターンを生成するために、線形アレイの形状に配置されかつ連続して帯電された帯電可能な表面領域上に、付与される。移動帯電パターンは、膜性構造体が壁に移動して接触し、あるいは近接し、更に一列でトランスフェクションエネルギー伝達体を通過して進行する程度に、膜性構造体の進行を制御する。通常のトランスフェクションにおいて、構造体は外因種の溶液中に懸濁され、かつ移動帯電パターンは更に構造体の凝縮を伴うことなく、あるいは一個の構造体によって他の構造体が遮蔽されること無く、各構造体を同じ電場に暴露することを可能とする。このようにして、全ての構造体間で実質的に均一で効率の高いトランスフェクションが、伝達体からの過剰なエネルギーに基づく構造体の破壊を完全に取り除かないにしても最小であるように、トランスフェクション条件を充分に制御しながら達成される。壁上の帯電可能な表面領域の電荷を自動的にかつ電子的に制御することにより、システムがサイズおよび大きさの異なる膜性構造体に適応することが可能となる。これは、隣接する膜性構造体間の間隔を変更し、更に、いずれかの時点、即ち、トランスフェクションが一度に一個のみの構造体上にあるいはそれ以上の構造体に実施される限りにおいて、伝達体に暴露される構造体の数を変化させるために、移動パターンにおける帯電されるべき領域の数および間隔を選択することによって達成される。
【0007】
本発明の、これらおよびその他の操作、機能および効果を、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るトランスフェクションチャンネルの透視図であって、チャンネルの壁の一部を切り欠いてその内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を適用することが可能な膜性構造体は、少なくとも高分子の大きさであり、通常の状態で興味のある種に対して不可入性の囲いのある膜を含む小体である。このような膜性構造体の一例は、リポソーム、ベシクル、細胞小器官および生体細胞である。生体細胞は、原核および真核細胞の両者を含み、動物細胞、植物細胞、酵母細胞、ヒト細胞、バクテリアまたはその他の同様の構造体である。膜性構造体上への帯電は自然に発生したものでも、あるいは表面機能化または錯体形成によって付加されたものでも良い。多くの生体細胞が、例えば自然の状態で負の表面電荷を有している。
【0010】
“外因種”と言う用語は、ここでは、固有のものではなくあるいは膜性構造体にとにかく存在していたものではない、あるいは構造体の中に存在するがしかし限定された数量、あるいは限定された濃度であって構造体中でのその数量または濃度がこの発明に係るトランスフェクションによって増加するような、全ての分子あるいは分子クラスターを意味するものとして使用される。外因種のクラスの一例として、一般に、核酸、ポリペプチド、炭水化物、脂質および小分子がある。核酸の一例として、RNA、発現プラスミド、発現カセットおよび他の発現DNAがある。ポリペプチドの一例として、一般に、抗体、抗体フラグメント、酵素、およびタンパク質がある。炭水化物の一例として、例えば、同位体標識した糖類のような自然に発生したものではない代謝物および標識したデキストランのような多糖類がある。リポソームは、膜性構造体がリポソームよりも大きな小体である場合に、外因種として作用する。小分子の一例として、薬、染料および内因性受容体がある。
【0011】
“トランスフェクションエネルギー”と言う用語は、ここでは、膜性構造体に印加された場合、懸濁液中の外因種が膜を透過し構造体中に入りこみ、かつそうする場合に膜を修復不可能なまでに破壊せず、さもなければ構造体に永久的な損傷を与えないことを充分に可能とする、限られた期間にわたって、膜を可逆的に多孔性としさもなければ浸透性とするエネルギーの全ての形態を意味する。トランスフェクションエネルギーの一例として、(エレクトロポレーションを起こす)電気的エネルギー、光エネルギー(レーザおよび非レーザ源の両方から)、熱エネルギー、RFエネルギー、超音波および電子ビームエネルギーがある。トランスフェクションエネルギーの好ましい形は、個々にあるいは組み合わせて印加される、電気エネルギーおよびレーザ光エネルギーである。電気エネルギー(エレクトロポレーション)は特に好ましい。“トランスフェクションエネルギー伝達体”は、好ましくは、予め選択された数の膜性構造体に対してトランスフェクションを達成するために、限定された大きさの空間容積内に収束するトランスフェクションエネルギーフィールドを形成するような、全ての装置あるいは部品である。この場は、一度に1個の構造体のみに適合するように充分に小さいか、あるいは、限られた複数、例えば2個またはそれ以上の構造体に適合するに充分な程度に広い。あるいは、1個のみの構造体を照射するために充分に狭いエネルギー光線である。各エネルギーのタイプに対してこの分野で既知である伝達体を使用することができる。エレクトロポレーションのためには、この伝達体は電極である。光または熱エネルギーに対してはこの伝達体はレーザダイオードである。トランスフェクションエネルギーのこれらおよび他の形状に対して、他の伝達体が当業者に対して明らかであろう。
【0012】
チャンネルの長手方向の壁上の帯電可能な表面領域は特定され固定された領域であり、これらは個々にかつ選択的に帯電可能である、即ち、壁またはチャンネルの外部のスイッチング手段によって、帯電および電気的に中性の間で、あるいは正電荷、負電荷および中性の間で迅速にスイッチされる。それぞれの領域は壁の、ある特定の位置を占め、壁の表面に電極を取り付けること、壁の構造物中に電極材料を組み込むこと、あるいは、一般的な半導体製造技術のように壁のなかにイオン性種をドーピングすることによって、形成することが可能である。ある実施形態では、この壁はシリコンあるいはその他の半導体材料で形成することができ、その領域は帯電可能なイオンをドープした壁の細長い領域である。
【0013】
壁の上の移動帯電パターンは好ましくは2個以上の、膜性構造体を引き付ける電荷を担う領域からなっており、更に、膜性構造体を引き付けるよりもむしろ反発する1個以上の帯電領域に加えて、2個以上のこのような領域からなることがより好ましい。反発する電荷を担う領域は、吸引性の電荷を担う領域の上流(即ち、末端)に位置し、膜性構造体がチャンネルを通過し進行方向に前進するのを助ける。これによって、2個の電荷は、通過するそれぞれの構造体との組み合わせにおいて、押す力と引く力の両者を付与する。帯電パターンにおいて吸引電荷を有する2個の領域を使用することによって、膜性構造体がチャンネルを通って移動する間に、全てのポイントにおいて膜性構造体の位置を追加的に制御することが可能となり、帯電領域間の間隔がほぼ等しいかあるいは膜性構造体の長さあるいは直径よりも僅かに小さい場合、構造体は帯電領域の全域で安定する。ある実施形態では、サイズの異なる膜性構造体に適合させるために、オペレータが異なる帯電パターンを選択することを許されている場合、このシステムは調節可能である。誘引電荷を担う2つの領域は、従って、帯電パターンにおける1個またはそれ以上の非帯電領域によって分離されうる。中間に介在するこの非帯電領域の数は帯電領域の間隔を決定する。殆どの場合、誘引電荷を担う領域間で、約0.1ミクロンから約10ミクロン、更に好ましくは、約0.3ミクロンから約3ミクロンの中心間隔を有する場合に、最も良い結果を得ることができる。
【0014】
膜性構造体を移動させる同じ表面領域をトランスフェクションのために使用することもできる。以下にこの詳細を説明する。表面領域は、膜性構造体のサイズの検出体として動作することもできる。膜性構造体が隣接する表面領域間を横切って移動することによって、これらの領域を通って電流が流れ、その結果、電流に対する抵抗が測定される。細胞あるいはその他の膜性構造体が所定の表面領域に接触する場合、その抵抗は、構造体がその領域に接触しない場合の抵抗とは異なったものとなる。構造体が、ある所定の位置である時間内に接触する隣接した領域の数が、従って、その構造体のサイズを示すことになる。サイズはまた、例えばLED(発光ダイオード)とこのLEDからの光を膜性構造体の移動経路を通して受信する位置にあるホトダイオードとの組み合わせのような、光学センサによって検出することができる。メカニズムの相違に関係なく、個々の膜性構造体のサイズが決定されると、帯電パターンは構造体のサイズに適合するように調節され、その結果、構造体の移動に対して最適な制御が可能となる。
【0015】
以上に示したように、帯電可能な表面領域は、例えば、半導体表面にエッチングされたメタライゼーションへのドーピングのような、集積回路技術によって形成することができる。帯電パターンおよびその移動を支配する電子ドライバは、トランジスタ、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)およびパワーFET(電界効果トランジスタ)のような周知の部品であり得る。移動帯電パターンを生成するための帯電プロトコルの一例として、表面領域の第1のシリーズ、例えば、チャンネルへの入り口における4つのこのような領域を、生体細胞を誘引するために正とすることができる。この生体細胞は本来、負に帯電している。上述の段落で記載したような電気的または光学的手段によって、細胞が検出された場合、即ち、ある特定の時間の経過後、第1の領域がオフとされ(電気的に中性にスイッチされる)、その後、第5の領域(その前は中性)が正に帯電されるので、負に帯電される。これを、表面領域アレイに沿って連続して続ける。
【0016】
“線形アレイ”と言う用語は、ここでは、一列に配置された帯電可能な領域を示す。この一列とは、直線あるいは曲線であってもよく、例えば、このような列に沿って帯電パターンが移動する場合、それらは一定方向の進行方向に沿って膜性構造体を案内する。殆どの場合、直線的なアレイがもっとも便利である。2個以上の平行な線形アレイも存在し、チャンネルの容量およびトランスフェクション速度を2倍にあるいはそれ以上とする。
【0017】
このシステムは、チャンネルを通過するに当たって、単一の構造体に適合するようにもあるいは複数の構造体に適合するようにも、何れにも設計することができる。チャンネルが2個以上の構造体に適合するように充分に長い場合、帯電プロトコルは、構造体の数に等しい数の移動帯電パターンを含んでいる。隣接する帯電パターンの間隔は、チャンネルを通って移動中の、連続する構造体間での干渉を防ぐために、充分なことが望ましい。10以上、好ましくは50以上の構造体の直径に等しい間隔が殆どの場合、最も良い結果を提供する。
【0018】
帯電パターンは、膜性構造体が単一のファイル(列)、二重のファイルあるいはそれ以上で進行するように設計することも可能である。単一のファイルにおける進行は、一般に殆どの適用事例で充分であり、帯電領域の大きさ、チャンネルの大きさあるいはその両方を限定することによって達成することが可能である。チャンネルを通過する構造体の進行速度および単位時間当たりの数も同様に変化する。進行速度は、秒当たり10個以上、好ましくは100個から10、000個、更に好ましくは300個から3、000個の構造体がトランスフェクションエネルギー伝達体を通過できる程度に、充分に速いほうが好ましい。
【0019】
チャンネルの大きさは、構造体がチャンネルの目詰まりを起こすことなく自由にチャンネルを通過できるように、充分に大きくなければ成らない。殆どの場合、約10ミクロン、好ましくは20ミクロンかそれよりも大きいチャンネル幅あるいは直径が、特に生体細胞において適切である。
【0020】
トランスフェクションエネルギー伝達体はチャンネルの一定の場所に位置しており、そのため、膜性構造体はチャンネルを進行する途中でこの伝達体の範囲内に到達する。伝達体が一対の電極でありエレクトロポレーションによってトランスフェクションを起こす場合、この電極はチャンネルの同じ側あるいは対向する側の専用の電極対である。チャンネルの同じ側の電極の場合、隣接するかまたは近接する2個の帯電可能な表面領域もまた、それらの間にエレクトロポレーションのための高電圧を付与することによって、エレクトロポレーション電極として動作する。例えば、構造体を単純に進行させる場合、2個の表面領域は、ミリボルトの範囲で帯電によって同じ極性に帯電され、この構造体がエレクトロポレーションに対して最適な位置にある場合、この2個の領域はボルトの範囲で帯電によって反対の極性に帯電される。システムの大きさが非常に小さいことおよび膜性構造体が電極に近接していることを考慮すると、エレクトロポレーションのための典型的な電圧範囲は0.3−30V、好ましくは1−5Vの範囲内であり、これは典型的には進行のための電圧の10から1000倍である。移動帯電パターン表面領域とは違ったエレクトロポレーション電極を使用した場合、前者は後者の隣接対の間に配置されうる。温度または光誘起のポレーションを生成するレーザダイオードまたはその他の伝達体が使用された場合、それらは同様にチャンネルの一方の側あるいは対向する側に、最も効率的には、帯電可能な表面領域の隣接対間に、配置可能である。レーザダイオードは、膜性構造体に近接していることを考慮して、殆どか全く光学系を必要としない。
【0021】
本発明によって定義される特徴は種々の構造によって実現可能であるが、本発明は全体として特定の実施形態の詳細な検証によって最もよく理解されるであろう。このような実施形態の一つが貼付の図面に示されている。
【0022】
図1は、連続流トランスフェクション装置11を示し、この装置11は、チャンネルの内部を見ることができるようにその壁の一部を取り除いて示してある、チャンネル12を含んでいる。チャンネルはその両端で開放されており、一方は入り口13であり他方は出口14である。長手方向の壁の内面15は、一定間隔の一連の領域16を含んでおり、これらは帯電可能な領域として作動し、隣接する領域は互いに離れている。トランスフェクションエネルギー伝達体17、18はチャンネルの対向する側に配置されており、伝達体17は帯電可能領域と同じ壁上でかつ隣接する2個の帯電可能領域の間にあり、かつ他方の伝達体18は対向する壁の上で直接対向している。3個の膜性構造体(負に帯電された生体細胞)21、22、23が矢印によって示される方向にチャンネルを通って移動するように示されている。この場合、移動帯電パターンは3つの隣接する表面領域からなっており、その第1は入り口13の近くに位置し細胞を反発させる負の帯電を担っている。第2および第3のものは細胞を引き付ける正の帯電を担っている。チャンネル内に細胞を引き込むために、入り口に最も近い領域24は正に帯電されている。第2および第3の領域が正に帯電するにつれて、入り口に最も近い領域24には負の帯電が与えられ、細胞がよりチャンネルの中に入るように促す。帯電パターンはこのようにしてチャンネルを通過し、細胞を引き付け、伝達体17、18を通り過ぎる。
【0023】
上記の説明では図示した要素に対して種々の代替物を記載しているが、更なる代替物がこの発明の範囲内で当業者にとって自明である。
【0024】
請求の範囲において、“一つ”と言う用語は、“一つまたはそれ以上”を意味する。“含む”と言う用語およびその変形は、ステップまたは要素の記載が先行する場合、更なるステップまたは要素の追加が選択的であって、排他的であることを意味するものではない。全ての特許、特許出願、およびこの明細書に引用したその他の公開文献は、参照によってその全体をここに組み込む。ここに引用した参照文献とこの明細書における明示の教唆間の全ての不一致は、この明細書の教唆に賛成することによって解決されるものと考えられる。これは、ある言葉または句のこの技術分野で理解されている定義と、同じ言葉または句に対するこの明細書で明示的に提供されている定義、との間の全ての不一致を含んでいる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した複数の膜性構造体を前記構造体に外因性である種によってトランスフェクションするための方法であって、
(a)前記外因種の溶液中の前記膜性構造体の分散を、トランスフェクションエネルギー伝達体がマウントされかつ帯電可能な表面領域の直線的アレイを有する長い壁を有したチャンネル中に導入し、
(b)帯電された前記表面領域と前記膜性構造体間に静電力を形成し、それによって前記膜性構造体が前記長手方向の壁に沿って進行し、かつ前記トランスフェクションエネルギー伝達体を通過するように、前記表面領域を連続して帯電し、
(c)前記それぞれの膜性構造体が前記トランスフェクションエネルギー伝達体を通過する場合に、前記トランスフェクションエネルギー伝達体を起動して、前記トランスフェクションを遂行する、各ステップを含む、トランスフェクション方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(b)は、前記表面領域上に移動静電的帯電パターンを付与することを含み、前記帯電パターンは、第1の数の表面領域上の膜性構造体誘引電荷と、前記進行方向に対して前記第1の数の表面領域よりも上流の第2の数の表面領域上の膜性構造体反発電荷とを含む、トランスフェクション方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記第1の数の表面領域は2個またはそれ以上であり、前記第1の数の前記表面領域は隣接している、トランスフェクション方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記第1の数の表面領域は2個またはそれ以上であり、前記帯電パターンは、帯電されていない領域によって分離された2個の表面領域上の膜性構造体誘引電荷を含む、トランスフェクション方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記表面領域は、前記膜性構造体が単一の列で前記トランスフェクションエネルギー伝達体を通過して進行するように、充分に小さい、トランスフェクション方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記膜性構造体は負に帯電された生体細胞であり、前記ステップ(b)は前記表面領域に連続して正の電荷を付与することを含む、トランスフェクション方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、前記膜性構造体は負に帯電された生体細胞であり、前記膜性構造体誘引電荷は正の電荷であり、かつ前記膜性構造体反発電荷は負電荷である、トランスフェクション方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記トランスフェクションエネルギー伝達体は、一対のエレクトロポレーション電極である、トランスフェクション方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記エレクトロポレーション電極は、選択された一対の前記帯電可能な表面領域であり、前記ステップ(c)は前記選択された一対間にエレクトロポレーションポテンシャルを付与することを含む、トランスフェクション方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記エレクトロポレーションポテンシャルは、前記選択された電極対に、ステップ(b)で付与される電荷より少なくとも10倍の電荷を付与することによって達成される、トランスフェクション方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記エレクトロポレーション電極は、前記チャンネルの対向する側に位置している、トランスフェクション方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記トランスフェクションエネルギー伝達体はレーザダイオードである、トランスフェクション方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記トランスフェクションエネルギー伝達体は、一対のエレクトロポレーション電極とレーザダイオードの組み合わせである、トランスフェクション方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(b)は前記表面領域をある速度で連続して帯電することを含み、前記帯電速度は前記膜性構造体が前記トランスフェクションエネルギー伝達体を秒当たり10個の構造体を超える速度で一個ずつ通過して進行する速度である、トランスフェクション方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記表面領域において電流に対する抵抗を測定することによって前記構造体の位置およびサイズを検出することを含む、トランスフェクション方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記チャンネルを通過する光ビームを遮断することによって前記構造体の位置とサイズを検出することを含む、トランスフェクション方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、ステップ(b)は、前記膜性構造体が一個ずつ、前記トランスフェクションエネルギー伝達体を、秒当たり100個の構造体から10、000個の構造体の速度で通過して進行する速度で、前記表面領域を連続して帯電させることを含む、トランスフェクション方法。
【請求項18】
複数の帯電した小体を連続してトランスフェクションさせる装置であって、
トランスフェクションエネルギー伝達体を設けたチャンネルであって、帯電可能な表面領域の線形アレイを有する長い壁によって境界されるチャンネルと、
前記小体がエネルギーフィールド内にある場合に、前記帯電した小体のトランスフェクションを遂行するために充分な前記エネルギーフィールドを生成するために、前記トランスフェクションエネルギー伝達体を励起するためのトランスフェクション手段と、
前記帯電した小体を引き付ける静電力移動帯電パターンを生成するために、前記表面領域を連続して帯電させることによって、前記静電的に帯電した小体を連続して前記エネルギーフィールドを通して運搬するための運搬手段、を備える装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置であって、前記トランスフェクションエネルギー伝達体はエレクトロポレーション電極であり、前記エネルギーフィールドは電場である、装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、前記エレクトロポレーション電極は前記帯電可能な表面領域の選択された一対であり、前記トランスフェクション手段は前記表面領域の選択された一対を前記運搬手段によって印加される電荷の少なくとも10倍の電荷に帯電するための手段である、装置。
【請求項21】
請求項19に記載の装置であって、前記トランスフェクションエネルギー伝達体はレーザダイオードであり、前記エネルギーフィールドは光のエネルギーフィールドである、装置。
【請求項22】
請求項19に記載の装置であって、前記トランスフェクションエネルギー伝達体はエレクトロポレーション電極とレーザダイオードとの組み合わせであり、さらに前記エネルギーフィールドは電場と光エネルギーフィールドとの組み合わせである、装置。
【請求項23】
請求項18に記載の装置であって、前記帯電可能な表面領域は前記小体が前記エネルギーフィールドを通って一個ずつ進行するように充分に小さい、装置。
【請求項24】
請求項18に記載の装置であって、長手方向の壁は半導体材料の表面であり、かつ前記帯電可能な表面領域は前記半導体材料中の不連続なドープされたドメインである、装置。
【請求項25】
請求項24に記載の装置であって、前記ドープされたドメインは、約0.1ミクロンから10ミクロンの中心間隔を有する、装置。
【請求項26】
請求項24に記載の装置であって、前記ドープされたドメインは、約0.3ミクロンから約3ミクロンの中心間隔を有する、装置。

【公表番号】特表2010−512150(P2010−512150A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540364(P2009−540364)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/084428
【国際公開番号】WO2008/112030
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】