説明

電子看板装置

【課題】電子看板装置において、個人のプライバシーを保護しつつ、人が居るか否かに応じてディスプレイの明るさを変更する。
【解決手段】電子看板装置1は、ディスプレイ2と、赤外サーモパイルアレイセンサ4と、演算処理部5とを備える。ディスプレイ2は、液晶パネル21にバックライト22からの光を透過させることにより画像を表示し、この画像によって、広告、宣伝する各種情報を表示する。演算処理部5は、第1の演算処理部51と、第2の演算処理部52とを備える。第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力に基いて、電子看板装置1の前の人体の有無を判断する。第2の演算処理部52は、第1の演算処理部51における人体の有無の判断結果に応じて、ディスプレイ2の明るさを変更する。第2の演算処理部52は、ディスプレイ2のバックライト22の光の強さを変更することにより、ディスプレイ2の明るさを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種情報を広告、宣伝するために用いられる電子看板装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子看板装置は、各種情報をディスプレイに表示することにより、各種情報を広告、宣伝するようになっている。電子看板装置は、例えば、大規模小売店等において設置され、商品やサービス等の各種情報を広告、宣伝するために用いられる。
【0003】
このような電子看板装置において、常時、ディスプレイを点灯しているものがある。しかしながら、このような電子看板装置は、電子看板装置の近くに人が居ない場合でもディスプレイを点灯しているため、省電力の観点からは、好ましくない。
【0004】
また、電子看板装置において、カメラを搭載し、このカメラによって、電子看板装置の近くに人が居るか否かを検出して、電子看板装置の近くに人が居る場合にだけ、ディスプレイを点灯するようにしたものがある。しかしながら、このような電子看板装置は、人の検出にカメラを用いているため、個人のプライバシー保護の観点からは、好ましくない。
【0005】
一方、パーソナルコンピュータにおいては、ディスプレイのバックライトの自動パワーオフ機能を有するものが多い。しかしながら、この自動パワーオフ機能は、マウスやキーボード等の操作入力がない状態から、一定時間経過すると、バックライトを消灯するというものである。従って、パーソナルコンピュータにおけるディスプレイのバックライトの自動パワーオフ機能は、マウスやキーボード等の操作入力を行う手段を持たない電子看板装置には、適用できない。
【0006】
そこで、電子看板装置において、赤外センサや遮光センサによって、近くに人が居るか否かを検出して、近くに人が居るか否かに応じて、ディスプレイの明るさを変更するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。また、電子看板装置において、焦電形の赤外線センサによって、近くに人が居るか否かを検出して、近くに人が居るか否かに応じて、ディスプレイの明るさを変更するようにしたものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−15665号公報
【特許文献2】実開平5−59494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている赤外センサ及び遮光センサや、特許文献2に開示されている焦電形の赤外線センサでは、人体の接近等の人の動きを検知することができるが、動きのない人体の滞在を検出することはできない。つまり、特許文献1の電子看板装置や特許文献2の電子看板装置では、近くに人が居るか否かに応じてディスプレイの明るさを変更することができるとは言い難い。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、個人のプライバシーを保護しつつ、人が居るか否かに応じてディスプレイの明るさを変更することができる電子看板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の電子看板装置は、明るさの変更が可能なディスプレイを備える電子看板装置において、赤外サーモパイルアレイセンサと、赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて人体の有無を判断し、この人体の有無の判断結果に応じてディスプレイの明るさを変更する演算処理部とを備える、ものである。
【0011】
本発明の電子看板装置において、演算処理部は、赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて人体の有無を判断し、人体の有無の判断結果の情報を送信する第1の演算処理部と、第1の演算処理部から送信される人体の有無の判断結果の情報を受信し、人体の有無の判断結果に応じてディスプレイの明るさを変更する第2の演算処理部とを備える、ものが好ましい。
【0012】
また、本発明の電子看板装置において、第1の演算処理部は、赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて本装置周辺の放射温度を測定して、測定した本装置周辺の放射温度とこの放射温度の変化に基いて人体の有無の判断として本装置の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を判断し、人体の有無の判断結果の情報として本装置の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の情報を送信する、ものが好ましい。
【0013】
また、本発明の電子看板装置において、第2の演算処理部は、第1の演算処理部から送信される本装置の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の情報を受信し、本装置の前の人体が不在の状態のときは、ディスプレイの明るさを最低レベルに設定し、本装置の前の人体が接近又は滞在の状態のときは、ディスプレイの明るさを標準レベル又は最高レベルに設定する、ものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて人体の有無が判断されて、ディスプレイの明るさが変更されるため、個人のプライバシーを保護しつつ、人が居るか否かに応じてディスプレイの明るさを変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る電子看板装置の構成を示す斜視図、(b)は同電子看板装置の検出領域を説明する図。
【図2】同電子看板装置の電気的ブロック構成図。
【図3】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作を示すフローチャート。
【図4】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、初期背景温度画像取得処理を示すフローチャート。
【図5】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、測定温度画像取得処理を示すフローチャート。
【図6】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、物体検出処理を示すフローチャート。
【図7】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、物体検出処理で行われる特徴量計算処理を示すフローチャート。
【図8】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、状態識別処理を示すフローチャート。
【図9】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、物体検出処理で求められる人体面積値の変化と状態識別処理で識別される現在の状態の推移との関係を示す図。
【図10】同電子看板装置の第1の演算処理部の動作における、背景温度画像更新処理を示すフローチャート。
【図11】同電子看板装置の第2の演算処理部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態による電子看板装置について図面を参照して説明する。図1(a)(b)は、本実施形態による電子看板装置の構成を示す。電子看板装置1は、各種情報を広告、宣伝するために用いられる装置である。電子看板装置1は、例えば、店舗等の入口付近において、テーブルの上や地面の上などに設置され、店舗における商品やサービス等の各種情報を広告、宣伝するために用いられる。
【0017】
電子看板装置1は、広告、宣伝する各種情報を表示するためのディスプレイ2と、電子看板装置1を設置するための基台部3とを備える。また、電子看板装置1は、電子看板装置1の周辺の放射温度を測定するための赤外サーモパイルアレイセンサ4と、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力に基いてディスプレイ2の明るさを制御する演算処理部5とを備える。
【0018】
ディスプレイ2は、液晶パネル21を用いて画像を表示する液晶ディスプレイであり、液晶パネル21及びバックライト22がディスプレイ筐体23内に収納され、液晶パネル21がディスプレイ筐体23の表示開口23aに臨んだ構成となっている。ディスプレイ2は、液晶パネル21にバックライト22からの光を透過させることにより画像を表示し、この画像によって、広告、宣伝する各種情報を表示する。ディスプレイ2は、バックライト22の光の強さを変更することにより、ディスプレイ2の明るさ(表示する画像の明るさ)が変更可能になっている。
【0019】
基台部3は、設置板31と、支柱32とを有している。設置板31と支柱32は、一体的に構成されている。支柱32は、ディスプレイ2の背面部分(ディスプレイ筐体23の背面部分であって、表示開口23aと反対側の部分)に接続されている。すなわち、ディスプレイ2は、背面部分を支柱32側に向けて、支柱32に取付けられている。電子看板装置1は、設置板31の底面をテーブルの上面や地面などに向かい合わせるようにして、テーブルの上や地面の上などに置くことにより、テーブルの上や地面の上などに設置される。
【0020】
赤外サーモパイルアレイセンサ4は、サーモパイルアレイ41によって赤外線を検出するセンサであり、サーモパイルアレイ41及び受光レンズ42がセンサ筐体43に収納され、受光レンズ42がセンサ筐体43の受光窓43aに臨んだ構成となっている。赤外サーモパイルアレイセンサ4は、検出領域R内から放射される赤外線を、センサ筐体43の受光窓43a及び受光レンズ42を介して、サーモパイルアレイ41によって受光する。
【0021】
サーモパイルアレイ41は、縦横(u行×v列)に配列された複数個(u×v個)のサーモパイル44xy(x=1,2,・・・,u:y=1,2,・・・,v)を備えている。本実施形態では、サーモパイルアレイ41は、8行×8列(u=8、v=8)に配列された64個のサーモパイル44xyを備えている。
【0022】
サーモパイル44xyは、検出領域Rをサーモパイル44xyの配列に対応して縦横(u行×v列)に分割した部分小領域Rxy(x=1,2,・・・,u:y=1,2,・・・,v)内から放射される赤外線を受光する。すなわち、サーモパイル4411、4412、・・・、44uvは、各々、部分小領域R11、R12、・・・、Ruvから放射される赤外線を受光する。
【0023】
赤外サーモパイルアレイセンサ4は、各サーモパイル44xyによる赤外線の受光強度に対応した値、すなわち、検出領域Rの各部分小領域Rxyの温度に対応する値、を示す検出温度画像T(x,y)(x=1,2,・・・,u:y=1,2,・・・,v)を出力する。つまり、各部分小領域R11、R12、・・・Ruvの温度に対応する値を、各々、T(1,1)、T(1,2)、・・・、T(u,v)とすると、赤外サーモパイルアレイセンサ4は、これらT(1,1)、T(1,2)、・・・、T(u,v)を検出温度画像T(x,y)として出力する。検出温度画像T(x,y)の(x,y)=(1,1)、(1,2)、・・・、(u,v)における値が、各々、T(1,1)、T(1,2)、・・・、T(u,v)である。
【0024】
赤外サーモパイルアレイセンサ4は、ディスプレイ2の上方に位置するように、連結体49を介して、基台部3の支柱32に取付けられている。また、赤外サーモパイルアレイセンサ4は、検出領域Rがディスプレイ2の正面方向に存在する空間(ディスプレイ筐体23の表示開口23a側に存在する空間)を含むように、取付けられている。
【0025】
演算処理部5は、ディスプレイ筐体23内に設けられている。演算処理部5は、不図示の電気配線及び電気コネクタを介して、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力を受信する。演算処理部5は、第1の演算処理部51と、第2の演算処理部52とを備える。演算処理部5は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力に基いて、検出領域R内の人体の有無(すなわち、電子看板装置1の周辺であって、ディスプレイ2の正面付近に、人が居るか否か)を判断する。そして、演算処理部5は、この人体の有無の判断結果に応じて、ディスプレイ2の明るさ(ディスプレイ2の表示する画像の明るさ)を制御する。
【0026】
図2は、電子看板装置1の電気的ブロック構成を示す。ディスプレイ2は、バックライト22を点灯すると共に、液晶パネル21の各画素を駆動することにより、液晶パネル21にバックライト22からの光を透過させて、画像を表示する。ディスプレイ2が表示する画像(すなわち、広告、宣伝する各種情報)は、事前に、例えばパソコンなどの外部装置から任意のものが入力される。すなわち、例えばパソコンなどの外部装置からの事前の入力によって、任意の画像(情報)がディスプレイ2に表示される。
【0027】
赤外サーモパイルアレイセンサ4は、検出領域R内から放射される赤外線をサーモパイルアレイ41によって受光して、検出温度画像T(x,y)を出力する。検出温度画像T(x,y)のx=i、y=jにおける値T(i,j)(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)は、サーモパイルアレイ41の各サーモパイル44ijによる赤外線の受光強度に対応し、検出領域Rの各部分小領域Rijの温度に対応する。検出温度画像T(x,y)は、部分小領域Rxyを単位とした検出領域Rの温度分布を示す。
【0028】
第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力基いて、検出領域R内の人体の有無を判断し、人体の有無の判断結果の情報を第2の演算処理部52に送信する。
【0029】
このとき、第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力に基いて、検出領域Rの放射温度(すなわち、電子看板装置1の周辺の放射温度であって、ディスプレイ2の正面付近の放射温度)を測定する。そして、第1の演算処理部51は、測定した放射温度とこの放射温度の変化に基いて、人体の有無の判断として、電子看板装置1の前(電子看板装置1の周辺であって、ディスプレイ2の正面付近)の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を判断する。第1の演算処理部51は、人体の有無の判断結果の情報として、電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の情報を第2の演算処理部52に送信する。
【0030】
第2の演算処理部52は、第1の演算処理部51から送信される人体の有無の判断結果の情報を受信し、人体の有無の判断結果に応じてディスプレイ2の明るさを変更する。
【0031】
このとき、第2の演算処理部52は、第1の演算処理部51から送信される電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の情報を受信する。そして、第2の演算処理部52は、電子看板装置1の前の人体が不在の状態のときは、ディスプレイ2の明るさを最低レベルに設定する。また、第2の演算処理部52は、電子看板装置1の前の人体が接近の状態のときは、ディスプレイ2の明るさを標準レベルに設定し、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態のときは、ディスプレイ2の明るさを最高レベルに設定する。第2の演算処理部52は、ディスプレイ2のバックライト22の光の強さを変更(設定)することにより、ディスプレイ2の明るさを変更(設定)する。なお、ディスプレイ2の明るさを最低レベルに設定するとは、ディスプレイ2を消灯(ディスプレイ2のバックライト22を消灯)することを含んでいる。
【0032】
図3は、電子看板装置1の第1の演算処理部51の動作のフローチャートを示す。第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力に基いて検出領域R内の人体の有無を判断するために、以下のように動作する。
【0033】
第1の演算処理部51は、電子看板装置1の電源が投入されると、まず、初期背景温度画像取得処理を行う(S1)。初期背景温度画像取得処理とは、初期時(電子看板装置1の電源の投入時)における背景温度画像TB(x,y)を取得する処理である。背景温度画像TB(x,y)とは、検出領域R内の人体を検出するための基準となる温度画像(検出領域Rの各部分小領域Rxyの背景温度に対応する値)である。初期背景温度画像取得処理において、第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力である検出温度画像T(x,y)に基いて、初期時における背景温度画像TB(x,y)を取得する。電子看板装置1の電源の投入は、電子看板装置1を設置した状態で、かつ、検出領域R内に人が居ない状態で行われる。
【0034】
続いて、第1の演算処理部51は、測定温度画像取得処理を行う(S2)。測定温度画像取得処理とは、測定温度画像Tave(x,y)を取得する処理である。測定温度画像Tave(x,y)とは、検出領域R内の人体を検出するために、背景温度画像TB(x,y)と比較する温度画像(検出領域Rの各部分小領域Rxyの測定温度に対応する値)である。測定温度画像取得処理において、第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力である検出温度画像T(x,y)に基いて、測定温度画像Tave(x,y)を取得する。
【0035】
続いて、第1の演算処理部51は、物体検出処理を行う(S3)。物体検出処理とは、検出領域R内の人体を検出し、検出した人体の人体面積値Sを求める処理である。人体面積値Sとは、検出した人体の赤外サーモパイルアレイセンサ4からの見かけ上の面積に対応する値である。物体検出処理において、第1の演算処理部51は、背景温度画像TB(x,y)と測定温度画像Tave(x,y)との差から、検出領域R内の人体を検出し、検出した人体の人体面積値Sを求める。
【0036】
続いて、第1の演算処理部51は、状態識別処理を行う(S4)。状態識別処理とは、検出領域R内の人体の有無の判断として、電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を識別する処理である。状態識別処理において、第1の演算処理部51は、人体面積値Sに基いて、検出領域R内の人体の有無の判断として、電子看板装置1の前(電子看板装置1の周辺であって、ディスプレイ2の正面付近)の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を識別する。第1の演算処理部51は、状態識別処理により検出領域R内の人体の有無を判断したとき、その人体の有無の判断結果(電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の識別結果)の情報を第2の演算処理部52に送信する。
【0037】
続いて、第1の演算処理部51は、背景温度更新処理を行う(S5)。背景温度更新処理とは、検出領域Rの(各部分小領域Rxyの)背景温度が時間の経過につれて変化することに対応するために、背景温度画像TB(x,y)を更新する処理である。背景温度更新処理において、第1の演算処理部51は、そのときの背景温度画像TB(x,y)と測定温度画像Tave(x,y)に基いて、背景温度画像TB(x,y)を更新する。背景温度更新処理の後、第1の演算処理部51は、上記S2以降の処理を繰り返す。S2、S3、S4、S5の処理は、例えば0.1秒程度の周期で、繰り返される。
【0038】
図4は、上記初期背景温度画像取得処理のフローチャートを示す。初期背景温度画像取得処理では、第1の演算処理部51は、まず、検出温度画像積算値ST(x,y)を0にクリアする(S1−1)。すなわち、第1の演算処理部51は、検出温度画像積算値ST(1,1)、ST(1,2)、・・・、ST(u,v)を、それぞれ、0にクリアする。
【0039】
続いて、第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4から、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力である検出温度画像T(x,y)を取得する(S1−2)。
【0040】
そして、第1の演算処理部51は、検出温度画像積算値ST(x,y)を計算する(S1−3)。すなわち、第1の演算処理部51は、検出温度画像積算値ST(x,y)に検出温度画像T(x,y)を加算する。つまり、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、ST(i,j)にT(i,j)を加算する。ST(i,j)は、検出温度画像積算値ST(x,y)のx=i、y=jにおける値であり、T(i,j)は、検出温度画像T(x,y)のx=i、y=jにおける値である。従って、第1の演算処理部51は、ST(1,1)にT(1,1)を加算し、ST(1,2)にT(1,2)を加算し、・・・、ST(u,v)にT(u,v)を加算する。
【0041】
ここで、第1の演算処理部51は、平均値計算カウンタの値が所定の設定値K(例えばK=10)に達しているか否かを判断する(S1−4)。なお、平均値計算カウンタの値は、初期時(電子看板装置1の電源の投入時)に0にセットされる。
【0042】
平均値計算カウンタの値が設定値Kに達していなければ(S1−4でNO)、第1の演算処理部51は、平均値計算カウンタの値を1加算して(S1−5)、上記S1−2以降の処理を繰り返す。S1−2〜S1−5の処理は、例えば0.1秒程度の周期で、繰り返される。S1−2〜S1−5の処理が繰り返されることにより、検出温度画像積算値ST(x,y)は、赤外サーモパイルアレイセンサ4から異なる時刻(例えば、0.1秒間隔の異なる時刻)出力された複数の検出温度画像T(x,y)を積算したものとなる。
【0043】
そして、平均値計算カウンタの値が設定値Kに達していれば(S1−4でYES)、第1の演算処理部51は、背景温度画像TB(x,y)を計算する(S1−6)。すなわち、第1の演算処理部51は、検出温度画像積算値ST(x,y)/設定値Kを背景温度画像TB(x,y)とする。つまり、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、ST(i,j)/KをTB(i,j)とする。TB(i,j)は、背景温度画像TB(x,y)のx=i、y=jにおける値である。従って、第1の演算処理部51は、ST(1,1)/KをTB(1,1)とし、ST(1,2)/KをTB(1,2)とし、・・・ST(u,v)/KをTB(u,v)として、背景温度画像TB(x,y)を求める。
【0044】
背景温度画像TB(x,y)は、赤外サーモパイルアレイセンサ4から異なる時刻に出力された(上記S1−2〜S1−5の処理が繰り返される時間間隔で出力された)設定回数K回分の検出温度画像T(x,y)の平均値である。背景温度画像TB(x,y)のx=i、y=jにおける値TB(i,j)は、検出領域Rの各部分小領域Rijの背景温度に対応する。S1−6の処理の後、第1の演算処理部51は、平均値計算カウンタの値を0にクリアして(S1−7)、初期背景温度画像取得処理を終了する。
【0045】
初期背景温度画像取得処理では、第1の演算処理部51は、このようにして背景温度画像TB(x,y)を取得する。すなわち、第1の演算処理部51は、赤外サーモパイルアレイセンサ4から異なる時刻に出力された複数(設定回数K回分)の検出温度画像T(x,y)の平均値を背景温度画像TB(x,y)とする。複数の検出温度画像T(x,y)の平均値を背景温度画像TB(x,y)とするため、ノイズの影響が軽減される。
【0046】
図5は、上記測定温度画像取得処理のフローチャートを示す。測定温度画像取得処理では、第1の演算処理部51は、まず、赤外サーモパイルアレイセンサ4から、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力である検出温度画像T(x,y)を取得する(S2−1)。
【0047】
続いて、第1の演算処理部51は、温度ログデータTlog[N-1](x,y)、Tlog[N-2](x,y)、・・・、Tlog[1](x,y)(Nは例えば10)を更新する(S2−2)。すなわち、第1の演算処理部51は、Tlog[N-2](x,y)をTlog[N-1](x,y)とし、Tlog[N-3](x,y)をTlog[N-2](x,y)とし、・・・、Tlog[1](x,y)をTlog[0](x,y)とする。
【0048】
また、第1の演算処理部51は、温度ログデータTlog[0](x,y)を更新する(S2−3)。すなわち、第1の演算処理部51は、今回の測定温度画像取得処理で赤外サーモパイルアレイセンサ4から取得した検出温度画像T(x,y)をTlog[0](x,y)とする。
【0049】
S2−2、S2−3の処理により、温度ログデータTlog[n](x,y)(n=0、1、2、・・・、N−1)は、n回前の測定温度画像取得処理で赤外サーモパイルアレイセンサ4から取得した検出温度画像T(x,y)となる。但し、温度ログデータTlog[0](x,y)は、今回の測定温度画像取得処理)で赤外サーモパイルアレイセンサ4から取得した検出温度画像T(x,y)である。従って、温度ログデータTlog[n](x,y)は、上記S2〜S5の処理(上記図3参照)が繰り返されることにより赤外サーモパイルアレイセンサ4から取得した時系列の複数の検出温度画像T(x,y)である。
【0050】
そして、第1の演算処理部51は、測定温度画像Tave(x,y)を計算する(S2−4)。すなわち、第1の演算処理部51は、(Tlog[0](x,y)+Tlog[1](x,y)+Tlog[2](x,y)+・・・+Tlog[N-1](x,y))/Nを測定温度画像Tave(x,y)とする。つまり、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、(Tlog[0](i,j)+Tlog[1](i,j)+Tlog[2](i,j)+・・・+Tlog[N-1](i,j))/NをTave(i,j)とする。Tlog[0](i,j)、Tlog[1](i,j)、Tlog[2](i,j)、・・・、Tlog[N-1](i,j)は、それぞれ、各温度ログデータTlog[0](x,y)、Tlog[1](x,y)、Tlog[2](x,y)、・・・、Tlog[N-1](x,y)のx=i、y=jにおける値である。Tave(i,j)は、測定温度画像Tave(x,y)のx=i、y=jにおける値である。従って、第1の演算処理部51は、(Tlog[0](1,1)+Tlog[1](1,1)+・・・+Tlog[N-1](1,1))/NをTave(1,1)とする。同様に、(Tlog[0](1,2)+Tlog[1](1,2)+・・・+Tlog[N-1](1,2))/NをTave(1,2)とし、・・・、(Tlog[0](u,v)+Tlog[1](u,v)+・・・+Tlog[N-1](u,v))/NをTave(u,v)とする。第1の演算処理部51は、このようにして、測定温度画像Tave(x,y)を求める。
【0051】
測定温度画像Tave(x,y)は、温度ログデータTlog[n](x,y)(n=0、1、2、・・・、N−1)の平均値であって、上記S2〜S5の処理が繰り返されることにより赤外サーモパイルアレイセンサ4から出力された時系列の複数の検出温度画像T(x,y)の平均値である。測定温度画像Tave(x,y)のx=i、y=jにおける値Tave(i,j)は、検出領域Rの各部分小領域Rijの測定温度に対応する。S2−4の処理の後、第1の演算処理部51は、測定温度画像取得処理を終了する。
【0052】
測定温度画像取得処理では、第1の演算処理部51は、このようにして測定温度画像Tave(x,y)を取得する。すなわち、第1の演算処理部51は、温度ログデータTlog[n](x,y))(n=0、1、2、・・・、N−1)の平均値、従って、時系列の複数の検出温度画像T(x,y)の平均値を測定温度画像Tave(x,y)とする。時系列の複数の検出温度画像T(x,y)の平均値を測定温度画像Tave(x,y)とするため、ノイズの影響が軽減される。
【0053】
図6は、上記物体検出処理のフローチャートを示し、図7は、物体検出処理で行われる特徴量計算処理のフローチャートを示す。物体検出処理では、第1の演算処理部51は、まず、差分画像Tdiff(x,y)を計算する(S3−1)。すなわち、第1の演算処理部51は、Tave(x,y)−TB(x,y)をTdiff(x,y)とする。つまり、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、Tave(i,j)−TB(i,j)をTdiff(i,j)とする。Tave(i,j)は、測定温度画像Tave(x,y)のx=i、y=jにおける値であり、TB(i,j)は、背景温度画像TB(x,y)のx=i、y=jにおける値であり、Tdiff(i,j)は、Tdiff(x,y)のx=i、y=jにおける値である。従って、第1の演算処理部51は、Tave(1,1)−TB(1,1)をTdiff(1,1)とし、Tave(1,2)−TB(1,2)をTdiff(1,2)とし、・・・、Tave(u,v)−TB(u,v)をTdiff(u,v)として、差分画像Tdiff(x,y)を計算する。
【0054】
差分画像Tdiff(x,y)は、背景温度画像TB(x,y)と測定温度画像Tave(x,y)との差分である。差分画像Tdiff(x,y)のx=i、y=jにおける値Tdiff(i,j)は、検出領域Rの各部分小領域Rijにおける背景温度と測定温度との差分に対応する。
【0055】
続いて、第1の演算処理部51は、物体検出画像Idiff(x,y)を作成する(S3−2)。すなわち、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、Tdiff(i,j)が設定しきい値よりも大きければ、Idiff(i,j)を1とし、Tdiff(i,j)が設定しきい値よりも大きくなければ、Idiff(i,j)を0として、物体検出画像Idiff(x,y)とする。Idiff(i,j)は、Idiff(x,y)のx=i、y=jにおける値である。従って、第1の演算処理部51は、Tdiff(1,1)が設定しきい値よりも大きければ、Idiff(1,1)を1とし、Tdiff(1,1)が設定しきい値よりも大きくなければ、Idiff(1,1)を0とする。同様に、Tdiff(1,2)が設定しきい値よりも大きければ、Idiff(1,2)を1とし、Tdiff(1,2)が設定しきい値よりも大きくなければ、Idiff(1,2)を0とする。また、同様に、Tdiff(1,3)、・・・、Tdiff(u,v)についても、それぞれ、設定しきい値よりも大きければ、1とし、大きくなければ、0とする。第1の演算処理部51は、このようにして、物体検出画像Idiff(x,y)を作成する。
【0056】
物体検出画像Idiff(x,y)は、差分画像Tdiff(x,y)を2値化した画像である。物体検出画像Idiff(x,y)のx=i、y=jにおける値Idiff(i,j)は、検出領域Rの各部分小領域Rijにおける背景温度と測定温度との差分を2値化した値に対応する。
【0057】
そして、第1の演算処理部51は、特徴量計算処理を行う(S3−3)。特徴量計算処理は、物体検出画像Idiff(x,y)に基いて人体面積値Sを求める処理である。
【0058】
図7に示すように、特徴量計算処理では、第1の演算処理部51は、まず、物体面積値S(m)(m=1、2、・・・、M)(Mは例えば10)の値を0に設定する(S3−3−1)。すなわち、第1の演算処理部51は、物体面積値S(1) 、S(2) 、・・・、S(M)を、それぞれ、0に設定する。
【0059】
続いて、第1の演算処理部51は、物体検出画像Idiff(x,y)をラベリング処理する(S3−3−2)。すなわち、第1の演算処理部51は、物体検出画像Idiff(x,y)の中から、Idiff(i,j)が1である部分の塊を検出する。Idiff(i,j)が1である部分の塊とは、物体検出画像Idiff(x,y)がx行×y列に配列された画素から成る画像であり、Idiff(i,j)がIdiff(x,y)のi行×j列における画素の値であると考えた場合に、Idiff(i,j)が1である画素が連続している領域のことである。そして、第1の演算処理部51は、この検出したIdiff(i,j)が1である部分の塊を物体画像(熱を有する物体の画像)とし、物体画像にラベル番号Lを付与する。このとき、物体検出画像Idiff(x,y)の中に、物体画像(Idiff(i,j)が1である部分の塊)が1つだけ存在する場合には、その物体画像にラベル番号L=1を付与する。また、物体検出画像Idiff(x,y)の中に、物体画像が複数存在する場合には、それらの各物体画像にラベル番号L=1、ラベル番号L=2、・・・を付与する。
【0060】
続いて、第1の演算処理部51は、物体画像の面積を物体面積値S(m)として、物体面積値S(m)を計算する(S3−3−3)。すなわち、第1の演算処理部51は、ラベル番号L=1の物体画像の面積を物体面積値S(1)、ラベル番号L=2の物体画像の面積を物体面積値S(2)、・・・、ラベル番号L=Mの物体画像の面積を物体面積値S(M)として、物体面積値S(m)を計算する。物体面積値S(m)は、物体画像(Idiff(i,j)が1である部分の塊)を構成しているIdiff(i,j)の個数である。例えば、物体画像がIdiff(4,4)、Idiff(4,5)、Idiff(5,4)、Idiff(5,5)の4つのIdiff(i,j)で構成されているとすると、その物体面積値S(m)は4となる。物体面積値S(m)は、物体の赤外サーモパイルアレイセンサ4からの見かけ上の面積に対応する。
【0061】
続いて、第1の演算処理部51は、物体面積値S(m)の中から、物体面積値S(m)の最大値である最大物体面積値Smaxを求める(S3−3−4)。すなわち、第1の演算処理部51は、物体面積値S(1)、S(2)、・・・、S(M)を比較して、物体面積値S(1)、S(2)、・・・、S(M)のうちの最大値を最大物体面積値Smaxとする。物体画像が1つだけ検出された場合には、その物体画像の物体面積値S(1)が最大物体面積値Smaxとなり、物体画像が複数検出された場合には、それら複数の物体画像の物体面積値S(m)のうちの最大値が最大物体面積値Smaxとなる。
【0062】
そして、第1の演算処理部51は、最大物体面積値Smaxの物体画像が人体の画像であるとみなして、検出領域R内の人体を検出し、最大物体面積値Smaxを人体面積値Sとする。人体面積値Sは、赤外サーモパイルアレイセンサ4からの人体の見かけ上の面積に対応する。その後、第1の演算処理部51は、特徴量計算処理を終了する。特徴量計算処理の後(S3−3の処理の後)、第1の演算処理部51は、物体検出処理を終了する。
【0063】
物体検出処理では、第1の演算処理部51は、このようにして検出領域R内の人体を検出し、検出した人体の人体面積値S(最大物体面積値Smax)を求める。すなわち、第1の演算処理部51は、背景温度画像TB(x,y)と測定温度画像Tave(x,y)との差分である差分画像Tdiff(x,y)を計算し、この差分画像Tdiff(x,y)を0と1で2値化した物体検出画像Idiff(x,y)を作成する。そして、物体検出画像Idiff(x,y)の中のIdiff(i,j)が1である部分の塊を物体画像とし、物体面積値S(m)が最大の物体画像が人体の画像であるとみなして、検出領域R内の人体を検出する。また、物体面積値S(m)が最大の物体画像の面積(最大物体面積値Smax)を人体面積値Sとする。
【0064】
図8は、上記状態識別処理のフローチャートを示し、図9は、最大物体面積値Smax(人体面積値S)の変化と状態識別処理で識別される現在の状態の推移との関係を示す。なお、図9の各物体検出画像Idiff(x,y)において、Idiff(i,j)が1である部分を白色で示し、Idiff(i,j)が0である部分を灰色で示している。状態識別処理では、第1の演算処理部51は、まず、「現在の状態」を判断する(S4−1)。ここで、「現在の状態」とは、その時点での「電子看板装置1の前の人体の状態の識別結果」のことであって、前回の状態識別処理における「電子看板装置1の前の人体の状態の識別結果」である。つまり、S4−1の処理では、その時点での「電子看板装置の前の人体の状態の識別結果」が、「電子看板装置の前の人体が不在の状態」「電子看板装置の前の人体が接近の状態」「電子看板装置の前の人体が滞在の状態」のいずれであるかを判断する。なお、「電子看板装置の前の人体の状態の識別結果」は、初期時(電子看板装置1の電源の投入時)に、「電子看板装置の前の人体が不在の状態」にセットされる。
【0065】
そして、「現在の状態」が「電子看板装置の前の人体が不在の状態」である場合(S4−1で不在)、第1の演算処理部51は、最大物体面積値Smaxが第1の接近判定しきい値Z(例えばZ=5)よりも大きいか否かを判断する(S4−2)。
【0066】
ここで、最大物体面積値Smaxが第1の接近判定しきい値Zよりも大きければ(S4−2でYES)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が接近の状態」に更新して(S4−3)、状態識別処理を終了する。最大物体面積値Smaxが第1の接近判定しきい値Zよりも大きくなければ(S4−2でNO)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が不在の状態」に維持して、状態識別処理を終了する。
【0067】
また、「現在の状態」が「電子看板装置の前の人体が接近の状態」である場合(S4−1で接近)、第1の演算処理部51は、最大物体面積値Smaxが滞在判定しきい値Z(例えばZ=15)よりも大きいか否かを判断する(S4−4)。
【0068】
ここで、最大物体面積値Smaxが滞在判定しきい値Zよりも大きければ(S4−4でYES)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が滞在の状態」に更新して(S4−5)、状態識別処理を終了する。最大物体面積値Smaxが滞在判定しきい値Zよりも大きくなければ(S4−4でNO)、第1の演算処理部51は、最大物体面積値Smaxが不在判定しきい値Z(例えばZ=5)よりも小さいか否かを判断する(S4−6)。
【0069】
ここで、最大物体面積値Smaxが不在判定しきい値Zよりも小さければ(S4−6でYES)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が不在の状態」に更新して(S4−7)、状態識別処理を終了する。最大物体面積値Smaxが不在判定しきい値Zよりも小さくなければ(S4−6でNO)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が接近の状態」に維持して、状態識別処理を終了する。
【0070】
また、「現在の状態」が「電子看板装置の前の人体が滞在の状態」である場合(S4−1で滞在)、第1の演算処理部51は、最大物体面積値Smaxが第2の接近判定しきい値Z(例えばZ=15)よりも小さいか否かを判断する(S4−8)。
【0071】
ここで、最大物体面積値Smaxが第2の接近判定しきい値Zよりも小さければ(S4−8でYES)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が接近の状態」に更新して(S4−9)、状態識別処理を終了する。最大物体面積値Smaxが第2の接近判定しきい値Zよりも小さくなければ(S4−8でNO)、第1の演算処理部51は、「現在の状態」を「電子看板装置の前の人体が滞在の状態」に維持して、状態識別処理を終了する。
【0072】
状態識別処理では、第1の演算処理部51は、このようにして電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を識別する。すなわち、第1の演算処理部51は、人体面積値S(人体面積値Sは、電子看板装置1から人体までの距離に対応する)に基いて、検出領域R内の人体の有無を判断する。このとき、第1の演算処理部51は、検出領域R内の人体の有無の判断として、電子看板装置1の前(電子看板装置1の周辺であって、ディスプレイ2の正面付近)の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を識別する。すなわち、第1の演算処理部51は、「現在の状態」に応じて、最大物体面積値Smax(人体面積値S)を第1の接近判定しきい値Z、滞在判定しきい値Z、不在判定しきい値Z、第2の接近判定しきい値Zと比較する。そして、その比較結果に基いて、電子看板装置1の前の人体の状態が、電子看板装置1の前の人体が不在の状態、電子看板装置1の前の人体が接近の状態、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態、のいずれであるかを判断する。つまり、第1の演算処理部51は、最大物体面積値Smaxに基いて、電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を識別し、最大物体面積値Smaxの増減によって、電子看板装置1の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態間の推移を判断する。
【0073】
また、第1の演算処理部51は、この状態識別処理における識別結果を示す情報を、人体の有無の判断結果の情報として、第2の演算処理部52に送信する。すなわち、第1の演算処理部51は、人体の有無の判断結果の情報として、電子看板装置1の前の人体が不在の状態、電子看板装置1の前の人体が接近の状態、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態、のいずれであるかを示す情報を送信する。
【0074】
図10は、上記背景温度画像更新処理のフローチャートを示す。背景温度画像更新処理では、第1の演算処理部51は、まず、背景温度更新時間カウンタの値が所定の設定値W(例えば15分に相当する値)を超えているか否か、すなわち、背景温度更新時間(例えば15分)経過しているか否かを判断する(S5−1)。なお、背景温度更新時間カウンタの値は、上記S1の初期背景温度画像取得処理の終了時に0にセットされる。
【0075】
背景温度更新時間カウンタの値が設定値Wを超えていなければ、すなわち、背景温度更新時間経過していなければ(S5−1でNO)、第1の演算処理部51は、背景温度更新時間カウンタの値を加算して(S5−2)、背景温度画像更新処理を終了する。
【0076】
背景温度更新時間カウンタの値が設定値Wを超えていれば、すなわち、背景温度更新時間経過していれば(S5−1でYES)、第1の演算処理部51は、背景温度画像TB(x,y)、測定温度画像Tave(x,y)、物体検出画像Idiff(x,y)を取得する(S5−3)。また、第1の演算処理部51は、背景温度更新時間カウンタの値を0にクリアする(S5−4)。
【0077】
続いて、第1の演算処理部51は、背景温度画像TB(x,y)、測定温度画像Tave(x,y)、及び物体検出画像Idiff(x,y)に基いて、新背景温度画像TBNEW(x,y)を作成する(S5−5)。すなわち、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、Idiff(i,j)が1であれば、(1−α)×TB(i,j)+α×Tave(i,j)をTBNEW(i,j)とし、Idiff(i,j)が0であれば、TB(i,j)をTBNEW(i,j)とする。ここで、αは、背景温度更新係数であり、0<α<1の実数(例えばα=0.5)である。Idiff(i,j)は、Idiff(x,y)のx=i、y=jにおける値であり、TB(i,j)は、TB(x,y)のx=i、y=jにおける値であり、Tave(i,j)は、Tave(x,y)のx=i、y=jにおける値であり、TBNEW(i,j)は、TBNEW(x,y)のx=i、y=jにおける値である。従って、第1の演算処理部51は、Idiff(1,1)が1であれば、(1−α)×TB(1,1)+α×Tave(1,1)をTBNEW(1,1)とし、Idiff(1,1)が0であれば、TB(1,1)をTBNEW(1,1)とする。同様に、Idiff(1,2)が1であれば、(1−α)×TB(1,2)+α×Tave(1,2)をTBNEW(1,2)とし、Idiff(1,2)が0であれば、TB(1,2)をTBNEW(1,2)とする。(i,j)= (1,3),・・・,(u,v)についても同様である。第1の演算処理部51は、このようにして、新背景温度画像TBNEW(x,y)を求める。
【0078】
新背景温度画像TBNEW(x,y)は、物体検出画像Idiff(x,y)のx=i、y=jにおける値Idiff(i,j)が1であるとすると、背景温度画像TB(x,y)のx=i、y=jにおける値TB(i,j)を、(1−α)×TB(i,j)+α×Tave(i,j)に置き換えたものである。
【0079】
そして、第1の演算処理部51は、新背景温度画像TBNEW(x,y)を更新する(S5−6)。すなわち、第1の演算処理部51は、新背景温度画像TBNEW(x,y)を背景温度画像TB(x,y)とする。つまり、第1の演算処理部51は、各i、j(i=1,2,・・・,u:j=1,2,・・・,v)について、TBNEW(i,j)をTB(i,j)とする。従って、第1の演算処理部51は、TBNEW(1,1)をTB(1,1)とし、TBNEW(1,2)をTB(1,2)とし、・・・、TBNEW(u,v)をTB(u,v)とする。S5−6の処理の後、第1の演算処理部51は、背景温度画像更新処理を終了する。
【0080】
背景温度画像更新処理では、第1の演算処理部51は、このようにして背景温度画像TB(x,y)を更新する。すなわち、第1の演算処理部51は、背景温度更新時間経過すると(背景温度更新時間経過する都度)、背景温度画像TB(x,y)を更新する。このとき、物体検出画像Idiff(x,y)のx=i、y=jにおける値Idiff(i,j)が1であるとすると、背景温度画像TB(x,y)のx=i、y=jにおける値TB(i,j)を(1−α)×TB(i,j)+α×Tave(i,j)に置き換えることにより、背景温度画像TB(x,y)を更新する。ここで、αは、背景温度更新係数(0<α<1の実数)であり、Tave(i,j)は、Tave(x,y)のx=i、y=jにおける値である。
【0081】
図11は、電子看板装置1の第2の演算処理部52の動作のフローチャートを示す。第2の演算処理部52は、第1の演算処理部51における人体の有無の判断結果に応じてディスプレイ2の明るさを変更するために、第1の演算処理部51から受信した人体の有無の判断結果の情報に基いて、以下のように動作する。
【0082】
第2の演算処理部52は、まず、第1の演算処理部51から受信した人体の有無の判断結果の情報に基いて、電子看板装置1の前の人体の状態を判断する(S6)。第2の演算処理部52は、第1の演算処理部51から、人体の有無の判断結果の情報として、電子看板装置1の前の人体が不在の状態、電子看板装置1の前の人体が接近の状態、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態、のいずれであるかを示す情報を受信する。すなわち、S6の処理では、この情報に基いて、電子看板装置1の前の人体の状態が、電子看板装置1の前の人体が不在の状態、電子看板装置1の前の人体が接近の状態、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態のいずれであるかを判断する。
【0083】
そして、電子看板装置1の前の人体の状態が、電子看板装置1の前の人体が不在の状態のときは(S6で不在)、第2の演算処理部52は、ディスプレイ2の明るさを最低レベルに設定する(S7)。すなわち、第2の演算処理部52は、ディスプレイ2のバックライト22の光の強さを最低レベルに設定する。なお、ディスプレイ2のバックライト22の光の強さを最低レベルに設定するとは、ディスプレイ2のバックライト22を消灯することを含んでいる。
【0084】
また、電子看板装置1の前の人体の状態が、電子看板装置1の前の人体が接近の状態のときは(S6で接近)、第2の演算処理部52は、ディスプレイ2の明るさを標準レベルに設定する(S8)。すなわち、第2の演算処理部52は、ディスプレイ2のバックライト22の光の強さを標準レベルに設定する。
【0085】
また、電子看板装置1の前の人体の状態が、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態のときは(S6で滞在)、第2の演算処理部52は、ディスプレイ2の明るさを最高レベルに設定する(S9)。すなわち、第2の演算処理部52は、ディスプレイ2のバックライト22の光の強さを最高レベルに設定する。
【0086】
このような構成の電子看板装置1によれば、赤外サーモパイルアレイセンサ4の出力に基いて、検出領域R内の人体の有無(すなわち、電子看板装置1の周辺であって、ディスプレイ2の正面付近に、人が居るか否か)が判断される。そして、この人体の有無の判断結果に応じて、ディスプレイ2の明るさ(ディスプレイ2の表示する画像の明るさ)が変更される。
【0087】
赤外サーモパイルアレイセンサ4を用いることで、赤外線(温度)によって人体の有無が判断されて、ディスプレイ2の明るさが変更されるため、個人のプライバシーを保護しつつ、人が居るか否かに応じてディスプレイ2の明るさを変更することができる。また、赤外サーモパイルアレイセンサ4を用いることで、可視光カメラでは判断が困難な暗視下においても、人体の有無を判断することができる。
【0088】
また、検出領域R内の人体の有無の判断として、電子看板装置1の前(電子看板装置1の周辺であって、ディスプレイ2の正面付近)の人体の接近、滞在、及び不在の各状態が判断される。すなわち、電子看板装置1の前の人体の状態が、電子看板装置1の前の人体が不在の状態、電子看板装置1の前の人体が接近の状態、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態のいずれであるかが判断される。そして、電子看板装置1の前の人体が不在の状態のときは、ディスプレイ2の明るさが最低レベルに設定される。また、電子看板装置1の前の人体が接近の状態のときは、ディスプレイ2の明るさが標準レベルに設定される。また、電子看板装置1の前の人体が滞在の状態のときは、ディスプレイ2の明るさが最高レベルに設定される。
【0089】
従って、電子看板装置1の前に人が居ないときに、電子看板装置1のディスプレイ2の明るさが最低レベルになることにより、各種情報を広告、宣伝する必要がないときに、ディスプレイ2での消費電力を抑えることができ、省電力化することができる。しかも、電子看板装置1の前に人が来たときに、ディスプレイ2の明るさが明るくなる(ディスプレイ2の明るさが最低レベルから標準レベルになる)ことにより、人目を引くことができ、各種情報を効果的に広告、宣伝することができる。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、第2の演算処理部は、電子看板装置の前の人体の状態が滞在の状態のときに、ディスプレイの明るさを標準レベルに設定するようにしてもよい。また、電子看板装置の前の人体の状態が接近の状態のときに、ディスプレイの明るさを最高レベルに設定するようにしてもよい。また、ディスプレイは、液晶ディスプレイに限られず、明るさ(広告、宣伝する各種情報として表示する画像の明るさ)が変更可能なものであれば、どのようなものであってもよい。また、電子看板装置は、広告、宣伝する各種情報をディスプレイに(画像によって)表示することに加え、広告、宣伝する各種情報を音声によって出力するようにし、人体の有無の判断結果に応じて、出力する音声の大きさを変更するようにしてもよい。また、電子看板装置は、テーブルの上や地面の上などに設置されるものに限られず、建物の壁面に取付けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 電子看板装置
2 ディスプレイ
3 基台部
4 赤外サーモパイルアレイセンサ
5 演算処理部
21 液晶パネル
22 バックライト
23 ディスプレイ筐体
23a 表示開口
31 設置板
32 支柱
41 サーモパイルアレイ
42 受光レンズ
43 センサ筐体
43a 受光窓
44 サーモパイル
49 連結体
51 第1の演算処理部
52 第2の演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明るさの変更が可能なディスプレイを備える電子看板装置において、
赤外サーモパイルアレイセンサと、
前記赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて人体の有無を判断し、この人体の有無の判断結果に応じて前記ディスプレイの明るさを変更する演算処理部とを備える、ことを特徴とする電子看板装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、
前記赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて人体の有無を判断し、人体の有無の判断結果の情報を送信する第1の演算処理部と、
前記第1の演算処理部から送信される人体の有無の判断結果の情報を受信し、人体の有無の判断結果に応じて前記ディスプレイの明るさを変更する第2の演算処理部とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の電子看板装置。
【請求項3】
前記第1の演算処理部は、前記赤外サーモパイルアレイセンサの出力に基いて本装置周辺の放射温度を測定して、測定した本装置周辺の放射温度とこの放射温度の変化に基いて人体の有無の判断として本装置の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態を判断し、人体の有無の判断結果の情報として本装置の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の情報を送信する、ことを特徴とする請求項2に記載の電子看板装置。
【請求項4】
前記第2の演算処理部は、前記第1の演算処理部から送信される本装置の前の人体の接近、滞在、及び不在の各状態の情報を受信し、本装置の前の人体が不在の状態のときは、前記ディスプレイの明るさを最低レベルに設定し、本装置の前の人体が接近又は滞在の状態のときは、前記ディスプレイの明るさを標準レベル又は最高レベルに設定する、ことを特徴とする請求項3に記載の電子看板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−44881(P2013−44881A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181700(P2011−181700)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】