説明

電子秤量装置

【課題】従来の電子秤量装置は測定時に試料汚染の可能性があり精度の高い水素吸着および水素吸蔵データが得にくいという問題があった。
これは試料容器に試料を充填した後も水素以外の様々な気体を吸着あるいは吸蔵する可能性が残されていたからである。
【解決手段】試料容器の一部を水素透過膜で作ることにより試料充填後の試料容器を外気に曝しても酸素や水蒸気あるいは一酸化炭素、亜硫酸ガス等の汚染物質の試料容器内侵入を防止できる。
さらに測定中も圧力容器内に残留している水素以外のガスの吸着を阻止することが可能である。
結果としてさまざまな試料にたいして高精度な水素吸着量あるいは水素吸蔵量の測定データが得られることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石と電磁石により容器とともに試料を浮上させかつ試料と浮上のための永久磁石、電磁石その他の構成部品の重さをまとめて電子秤で正確に量ることで試料に吸着または吸蔵された微量の気体重量を計量する電子秤量装置に関する。
【技術背景】
【0002】
従来の電子秤量装置には試料容器材質や構造を特に指定していないものがある。
これは開放型の試料容器を想定していて外気に曝すことによる試料表面の汚染を考慮していないことによる。
【0003】
【特許文献1】特許公開2003−307451
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来の試料容器では試料容器への試料充填から電子秤量装置への試料容器装着までに試料容器内部の試料が外気に曝され試料表面が汚染され正確なデータが取りにくいといった問題があった。
また電子秤量装置への試料容器装着後も圧力容器内部の微量な残留気体が試料に吸着あるいは吸蔵される可能性があり水素のみの重量増加分を測定したという保証はない。
本発明はこのような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり試料の汚染を防止し水素のみの吸着量あるいは吸蔵量のデータを得る事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして本発明は特に水素の吸着量あるいは吸蔵量を測定する場合上記目的を達成するために試料容器の一部を水素のみを透過させる水素透過膜で構成したものである。
【0006】
また水素透過膜の水素透過能力は一般に温度により異なるので水素透過膜の温度を任意に設定出来るようにした。
吸着量あるいは吸蔵量測定の目的からして試料容器内部の試料温度も任意に設定出来るようにした。
さらに水素透過膜と試料容器は水素導入パイプを介して十分に離してあるため水素透過膜加熱用ヒーターの熱が試料容器まで影響することはない。
逆に試料容器用の加熱冷却器により水素透過膜の温度が影響を受けることもない。
【0007】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。
すなわちアルゴンガスや窒素ガスで満たされたグローブボックス等外気と遮断された環境下で試料を水素透過膜と水素導入パイプを介して一体に構成された試料容器に充填し密封したあとでグローブボックスから取り出しても試料容器内には水素しか侵入できないので空気中に含まれる他の気体では汚染されないことになる。電子秤量装置にこの試料容器を装着して圧力容器内部を真空引きした後は圧力容器内部に水蒸気、酸素等若干の汚染ガスが残留していてもこれらガスの試料への吸着あるいは吸蔵の可能性はない。
電子秤量装置に試料容器を装着し真空引き後水素を圧力容器内に導入すると水素透過膜を通して水素のみが試料容器内部に侵入し試料に吸着または吸蔵されることになる。こうして試料への水素以外の物質の吸着または吸蔵の可能性はほぼ完全に排除できる。
【発明の課題】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0009】
図1において水素透過膜1、水素導入パイプ4、試料容器5、試料6、ドグ8、上部永久磁石11、下部永久磁石13、からなる磁気浮上体は上側永久磁石11と上部永久磁石12間の磁気的吸引反発力および下部永久磁石13と浮上位置制御電磁石14との磁気的吸引力の釣り合いで周囲と接触することなく浮上保持されている。
【0010】
ドグ8の位置を筒状気密容器10を介してセンサー9で常時検出し浮上体の位置が所定の位置より上方向に移動すると浮上位置制御用電磁石14に流す電流値を大きくして磁気浮上体を下方に引き下げその結果浮上体の位置が所定の位置より下に移動すると浮上位置制御用電磁石14に流す電流値を小さくし結果として浮上体は所定の位置近辺で浮上保持されることになる。
【0011】
この浮上保持された磁気浮上体と上側永久磁石11、外筒14、浮上位置制御用電磁石15の重量を電子秤16で精密に測ることにより試料6に吸着あるいは吸蔵された水素の重量を測定できる。
逆に試料6から放出され水素透過膜1を通して出ていく水素放出量も測定できる。
電子秤16の性能にもよるが現在市販されている標準的な電子秤では最大秤量320gにたいし最小表示値は0.1mgで実用的な水素吸蔵物質の測定には十分対応出来る。
【0012】
水素透過膜1はヒーター2により所定の温度に保持されている。
水素透過膜はその種類により最適な透過能力を発揮する温度域が異なると考えられるので水素透過膜1の温度を変えられるようにしておく事は重要である。
さらに試料6の温度設定も重要である
吸着量の測定時は比較的低温で測定し、吸蔵量の測定時は比較的高温で測定する場合が多いので加熱冷却機能を備えておく必要がある。
【0013】
吸着の場合は水素は試料6の表面の吸着サイトに水素ガス分子の状態で付着する。
吸蔵の場合は試料6の内部にまで水素が侵入し金属原子の隙間に水素原子の形で存在する。
【産業上の利用可能性】
【0014】
上述したように本発明の電子秤量装置では水素吸着量あるいは水素吸蔵量測定において試料の汚染を防ぎ秤量誤差の少ない正確な測定の可能な電子秤量装置を提供できる。
とくに汚染に敏感なカーボンナのチューブの吸着量測定では純粋に水素のみの吸着量が測定可能となり吸着量の正確な評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す電子秤量装置の縦断面図
【符号の説明】
1 水素透過膜
2 ヒーター
3 圧力容器
4 水素導入パイプ
5 試料容器
6 試料
7 加熱冷却器
8 ドグ
9 センサー
10 筒状気密容器
11 上側永久磁石
12 上部永久磁石
13 下部永久磁石
14 外筒
15 浮上位置制御電磁石
16 電子秤
17 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に置かれた外筒の最下部に浮上位置制御電磁石を設け外筒の最上部に上側永久磁石を装着した状態で下部が電子秤に取り付けられた外筒内部に下部を塞いだ筒状気密容器を外筒と接触しないよう固定配置しさらに筒状気密容器内部に水素透過膜、水素導入パイプ、試料容器、試料、ドグ、上部永久磁石、下部永久磁石からなる磁気浮上体を浮上位置制御電磁石、下部永久磁石間の磁気的吸引力、上側永久磁石と上部永久磁石間の磁気的吸引反発力で釣り合い浮上させた状態で外筒、上側永久磁石、浮上位置制御電磁石、磁気浮上体の重量を電子秤でまとめて量ることにより試料が吸着あるいは吸蔵した微量の水素重量を測定できる電子秤量装置において密封可能な試料容器上部に水素導入パイプを介して水素透過膜を配置したことを特徴とする電子秤量装置。
【請求項2】
試料容器および水素透過膜はそれぞれ独立に温度制御可能な請求項1記載の電子秤量装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−215009(P2006−215009A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58154(P2005−58154)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(502129162)