電子秤
【課題】筐体7等と、その内部にある計量機構3との間に設けられた防水・防塵用のジャバラ13が外気温度の変化等による影響を受けにくく、計量精度の低下が少ない電子秤1を提供する。
【解決手段】 電子秤は、被計量物の荷重が加わる受け部8と、これを収納する筐体7を有している。両者の隙間は、第1固定部18と第2固定部19をジャバラ部20で連結した円筒形のジャバラ13が覆っており、受け部材にはジャバラの第1固定部が固定され、筐体には第2固定部が固定される。第1固定部には突起部22に近接して周状の溝23が形成されているため、温度変化による変形等の影響が溝を通過して一方から他方に伝達しにくく、ゼロ値の変動が抑えられて計量精度の低下が少なくなる。
【解決手段】 電子秤は、被計量物の荷重が加わる受け部8と、これを収納する筐体7を有している。両者の隙間は、第1固定部18と第2固定部19をジャバラ部20で連結した円筒形のジャバラ13が覆っており、受け部材にはジャバラの第1固定部が固定され、筐体には第2固定部が固定される。第1固定部には突起部22に近接して周状の溝23が形成されているため、温度変化による変形等の影響が溝を通過して一方から他方に伝達しにくく、ゼロ値の変動が抑えられて計量精度の低下が少なくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計量物の質量を測定する電子秤に係り、特に筐体等と内部の計量機構との間に設けられた防水・防塵用の分離部材が、外気温度の変化等による影響を受けて計量精度を低下させることを防止した電子秤に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、本体ケースの側面側にダイヤフラムを配置した場合においても計量精度と応答性が維持可能であることを目指した計量装置が開示されている。この計量装置によれば、本体ケース内のロードセルに連結された支柱54の前端部を、本体ケースの側面の円形開口3a′から突出させ、この前端部に計量ホッパを支持させている。そして、外周部56aと内周部56bを薄膜蛇腹状の連結部56cで一体につないだダイヤフラム56を、開口3a′の縁部と支柱54の外縁部に取り付けて両者間の隙間を閉鎖する。ここで、外周部56aと内周部56bとを水平方向にオフセットさせると共に、連結部56cにある3つの湾曲部を、湾曲方向が水平方向となるように配置する。係る構造によれば、支柱54が下方に変位したとき、該支柱54の左右両側部において前記変位に対するダイヤフラムの抵抗が軽減されるので、計量装置の計量精度と応答性が維持されるものとされている。
【0003】
下記特許文献2には、計量機構を覆う筐体の開口部に防水・防塵用の密封部材を適正な状態で取り付けた電子天秤が開示されている。この発明によれば、荷重の受け部41,42 を上面に備えた計量機構(10,2,4,40) が底板67の上にあり、計量機構を覆う筐体60には、受け部41,42 を外部に表出する開口61,62 がある。じゃばら部材90の下端は開口の周囲に固定され、じゃばら部材90の上端はじゃばら受け80の上面に固定される。受け部の支持軸43は、じゃばら受け80の大径の通孔82を余裕を以って挿通する。じゃばら部材が変形しないように受け部に対してじゃばら受けの位置を定め、ねじでじゃばら受けを受け部に固定する。筐体自体や筐体と本体の組み立てに誤差等があっても、じゃばら部材を無理な力が加えられた状態で取り付けなくてすむので測定に誤差が生じるおそれがなく、水分や塵埃の多い使用環境であっても安定して高い信頼性をもって使用できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−21554号公報
【特許文献2】特開2002−107218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の発明によれば、本体ケースと、本体ケースの開口を挿通する支柱との間に設けられるダイヤフラム56は、外周部と内周部を蛇腹状の連結部で一体につないだ構成であり、一般にゴムで構成されているため、外気温度の変化によってゴムの硬度が変化してゼロ値に変動を与えて質量の測定精度が低下することがあり、これが高速高精度の測定を実現する上での障害になるという問題があった。
【0006】
また、上述した特許文献2に記載の発明によれば、筐体と、筐体の開口を挿通する荷重の受け部との間に設けられるじゃばら部材90は、上部と下部の間がじゃばら状となった部材であり、一般にゴムで構成されているため、特許文献1記載の発明の場合と同様の問題があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、非負荷側部材である筐体等と、その内部にある負荷側部材である計量機構との間に設けられた防水・防塵用の分離部材が外気温度の変化等による影響を受けにくく、計量精度の低下が少ない電子秤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された電子秤1は、
被計量物の荷重が加わる負荷側部材6,8,11と、
前記負荷側部材6,8,11の少なくとも一部を内部に収納する非負荷側部材7と、
前記負荷側部材6,8,11の側に接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部22を備えた相対的に肉厚の第1固定部18と、前記非負荷側部材7と接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部25を備えた相対的に肉厚の第2固定部19と、前記第1固定部18と前記第2固定部19を周状の一体構造で接続する相対的に薄肉の可変形部20を備えた分離部材13と、
を有する電子秤1において、
前記第1固定部18と前記第2固定部19の少なくとも一方に、前記突起部22,25に近接して周状の溝23,33,43,53,63,73,83,93を形成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された電子秤1は、請求項1記載の電子秤1において、
前記第1固定部18に設けられた前記突起部22の径と、前記第2固定部19に設けられた前記突起部25の径が互いに異なり、前記負荷側部材6,8,11の側及び前記非負荷側部材7に両突起部22,25が同等の力で固定されており、前記第1固定部18と前記第2固定部19のうち、径が小さい前記突起部22,25を有する方に前記溝23,33,43,53,63,73,83,93が形成されたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された電子秤1は、請求項2記載の電子秤1において、
前記溝53,63,73,93が、前記突起部22,25が形成されている側とは反対側の面に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された電子秤1によれば、負荷側部材6,8,11の側と非負荷側部材7の間を塞いでいる分離部材13は、負荷側部材6,8,11の側及び非負荷側部材7に固定された第1固定部18及び第2固定部19が、可変形部20によって一体構造で連続した構成とされているが、第1固定部18及び第2固定部19には固定用の各突起部22,25に近接して周状の溝23,33,43,53,63,73,83,93が形成されているので、外気温度の変化によって分離部材13の硬度等の特性が変化しても、これによる変形等の影響が各部の間で伝達されにくい。また、負荷側部材6,8,11の側と非負荷側部材7に対し、肉厚が大きい第1乃至第2固定部18,19及びその突起部22,25が圧縮されて固定されたことにより、分離部材13には歪や変形が生じるが、これらの歪や変形は突起部22,25の近傍に形成された溝23,33,43,53,63,73,83,93によって可変形部20には伝わりにくくなる。従って、この電子秤1によれば、分離部材13が受ける外気温度の変化や取付け時に生じる変形等の影響が可及的に減少し、そのためにゼロ値の変動が抑えられて計量精度の低下が少なくなるという効果が得られる。
【0012】
請求項2に記載された電子秤1によれば、請求項1記載の電子秤1による効果において、さらに次のような効果が得られる。すなわち、第1固定部18に設けられた突起部22の径と、第2固定部19に設けられた突起部25の径が互いに異なり、負荷側部材6,8,11の側及び非負荷側部材7に両突起部22,25が同等の力で固定されている場合には、第1固定部18と第2固定部19のうち、径が小さい方の突起部22,25に生じる応力が他方に比べて大きくなる。そこで、特に径が小さい方の突起部22,25に近接して第1固定部18又は第2固定部19に溝23,33,43,53,63,73,83,93を設けることとすれば、取り付け時に当該突起部22,25や当該突起部22,25が設けられた第1固定部18又は第2固定部19が圧縮されて他方より大きな応力を発生した場合、これにより生じる歪、変形を直近の溝で効果的に緩衝して他部に伝達しないようにすることができる。
【0013】
請求項3に記載された電子秤1によれば、請求項2記載の電子秤1による効果において、前記溝53,63,73,93を、突起部22,25が形成されている側ではなく、これとは反対側の面に形成することにより、溝内にごみ等の異物が堆積しにくく、また洗浄時の水が溜まらないので黴が生じず衛生的であり、食品の計量等の用途に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態である電子秤の分解拡散斜視図である。
【図2】第1実施形態の電子秤において分離部材の取り付け構造を示す分解拡散斜視図である。
【図3】第1実施形態の電子秤の外観斜視図である。
【図4】第1実施形態の電子秤の分離部材付近における組み立て途中の状態を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の電子秤の分離部材付近における組み立て状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図7】第2実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図8】第3実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図9】第4実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図10】第5実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図11】第6実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図12】第7実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図13】第8実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図14】第9実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係る電子秤について説明する。
まず図1〜図3を参照して本実施形態に係る電子秤1の概要構成について説明する。図1に示すように、ベース板2の上には、被計量物の荷重が加わる負荷側部材としてのロバーバル機構3が固定されている。ロバーバル機構3の内部には、レバー4と、レバー4を平衡状態に制御する電磁コイル5からなる平衡駆動手段と、位置検出手段(不図示)が設けられている。またロバーバル機構3の可動部には、前記負荷側部材として、鞍状の荷重受け部材6が固定されており、この荷重受け部材6上に図示しないコンベアを載置すれば動秤を構成することができる。
【0016】
図2及び図3に示すように、これら負荷側部材からなる機構は、被計量物の荷重が加わらない非負荷側部材としての筐体7内に収納される。図1乃至図2に示すように、荷重受け部材6と一体の部位であり、従って負荷側部材である受け部8と、これに設けられた支持軸9は、組み立て途中の状態において筐体7の開口10から上方外側に突出している。図2に示すように、受け部8の上方から、受け部8に一体に取り付けられて負荷側部材となる円盤状のジャバラ受け11と、非負荷側部材である筐体7に一体に取り付けられる環状のジャバラ取付部材12と、筐体7内を外界から遮断する分離部材としてのジャバラ13と、蓋状のカバー14とを順に組み付け、最後に支持軸9にナット15をねじ込んでカバー14を固定すれば、図3に示すように電子秤1として完成する。そして、図示はしないが、カバー14上に見えている支持軸9に梁16を介してコンベアが取り付けられる。なお、梁16はコンベアに加わる荷重を秤に正確に伝達するための剛体部品である。このように、非負荷側部材としての筐体7と、筐体7の開口10内にある負荷側部材としての受け部8との間に、分離部材であるジャバラ13が取り付けられているので、負荷側部材が収納された筐体7の内部を外部に対して閉鎖し、水分や塵埃が筐体7の内部に入らないようにした状態で、前記コンベアにより被計量物を搬送させながら図示しない制御部によって被計量物の質量を測定することができる。
なお、本実施形態では、非負荷側部材である筐体7と、その開口10から突出している負荷側部材であるジャバラ受け11との間に分離部材としてのジャバラ13を設けたが、要するに、非負荷側部材の内部に少なくとも一部が収納されている負荷側部材の何れかの部分と、非負荷側部材との間に分離部材を配置することにより、負荷側部材が収納された非負荷側部材の内部空間について、分離部材が固定された部位よりも内側を外部に対して閉鎖できるようになっていればよい。
【0017】
次に前記ジャバラ13の構造と、その取付構造の詳細について図2及び図4〜図6を参照して説明する。
このジャバラ13は、前述したように、非負荷側部材である筐体7の円形の開口10と、この開口10を貫通して配置される負荷側部材としての受け部8との間に取り付けられる全体として円筒形でゴム等の可撓性部材乃至弾性部材からなる部材であり、筐体7内を外界に対して防水・防塵するために設けられる。
【0018】
図2及び図6に示すように、本実施形態のジャバラ13は、負荷側部材であるジャバラ受け11に取り付けられる環状の第1固定部18と、非負荷側部材である筐体7の開口10に取り付けられる環状の第2固定部19と、第1及び第2固定部18,19を一体構造で連結しているジャバラ状の可変形部20とを有している。第1及び第2固定部18,19は、可変形部20と比較した場合には相対的に肉厚であり、逆に可変形部20は、第1及び第2固定部18,19と比較した場合には相対的に肉薄である。例えば第1固定部18は、直径が65mm程度のサイズの場合には厚さが2.5乃至3mm程度であり、第2固定部19は、直径が80mm程度のサイズの場合には厚さが1乃至1.5mm程度であるが、その場合には可変形部20の厚さは0.5mm程度である。なお、可変形部20との名称は、ジャバラ受け11が移動しても可変形部20がジャバラ状構造によって当該移動に追従しうることを示すものであり、これに対して第1及び第2固定部18,19が変形しないことを示すものではなく、可変形部20と同様にゴム等からなる第1及び第2固定部18,19も取付時には後述するように圧縮されて変形する。
【0019】
図6に示すように、周状の第1固定部18の下面内縁には、下方に突出した周状の係合突起21が形成されている。また、係合突起21に近接する第1固定部18の上面内縁には、上方に突出した断面半円形で周状の突起部22が形成されている。そして、第1固定部18の上面側には、周状の突起部22の外側の直近位置に、周状の溝23が形成されている。この溝23は、断面U字形であり、その深さは第1固定部18の厚さの1/3程度よりも小さくすることが好ましい。このような構造は、型に溶融したゴム材を流し込んで成形することができる。
【0020】
図6に示すように、周状の第2固定部19は第1固定部18よりも外径が大きく、内方側が開口した断面コ字形の袋状になっており、その下面には孔24が要所(本実施形態では等角度間隔で3箇所)に形成されるとともに、その下面の孔24よりも外方には、下方に突出した断面半円形で周状の突起部25が形成されている。
【0021】
図2、図4及び図5に示すように、ジャバラ受け11には受け部8の支持軸9よりも大径の貫通孔26が形成されており、ジャバラ受け11は貫通孔26に支持軸9を貫通させて受け部8の上に載置される。またジャバラ受け11には、上面の外縁に沿って周状の係合溝27が形成されている。そして図4及び図5に示すように、ジャバラ13の第1固定部18は、その係合突起21をジャバラ受け11の係合溝27に係合させて負荷側部材に取り付けられている。そして図4に示すように、第1固定部18及びジャバラ受け11の上からカバー14を被せて支持軸9をカバー14の孔に挿通させ、図5に示すように、支持軸9にナット15をねじ込んでカバー14をジャバラ受け11に固定する。これによって、図5に示すようにジャバラ13の第1固定部18はジャバラ受け11とカバー14の間に挟まれて圧縮され、突起部22は潰されて両者に密着し、防水・防塵機能を発揮するようになる。
【0022】
図2、図4及び図5に示すように、環状のジャバラ取付部材12の下面には、複数箇所(本実施形態では等角度間隔で3箇所)にジャバラ固定用のねじ棒28が下方に向けて突出して固定されている。また、筐体7の開口10の周縁には、複数箇所(本実施形態では等角度間隔で3箇所)に孔29が形成されている。図4及び図5に示すように、断面コ字形の袋状であるジャバラ13の第2固定部19でジャバラ取付部材12を挟み込み、ジャバラ取付部材12のねじ棒28を第2固定部19の孔24に挿通させるとともに、さらにねじ棒28を筐体7の開口10の周縁に形成された孔29を挿通させ、筐体7の内側に突出したねじ棒28にナット30をねじ込んで第2固定部19を筐体7側に固定する。これによって、図5に示すようにジャバラ13の第2固定部19はジャバラ取付部材12と筐体7の間に挟まれて圧縮され、突起部25は潰されて両者に密着し、防水・防塵機能を発揮するようになる。
【0023】
以上の構成における作用・効果について説明する。
本実施形態の電子秤1によれば、負荷側であるジャバラ受け11及び受け部8と、非負荷側である筐体7との間はゴム等からなる一体構造のジャバラ13によって塞がれており、第1固定部18がジャバラ受け11とカバー14の間で固定されている部分と、第2固定部19が筐体7とジャバラ取付部材12との間で固定されている部分には、いずれも開口10に近接して配置された周状の突起部22,25があって、これが圧縮されて潰れることで高い防水性及び防塵性が達成されている。従って、筐体7の内部に水分や塵埃が浸入する恐れは小さい。
【0024】
また本実施形態では、ジャバラ13は全体として一体構造であり、取付部分である肉厚の第1及び第2固定部18,19と、薄肉でジャバラ状の可変形部20とは連続的につながっている。このため、環境温度が変化してジャバラ13を構成するゴムの硬度等の特性が変化すると、これによってジャバラ13の一部に生じた変形が他部に伝達されて質量の測定に誤差をもたらし、秤としてのゼロ値に変動が生じてしまうため、高速高精度の実現に障害となる。しかしながら、本実施形態におけるジャバラ13は、第1固定部18の突起部22の外側の直近位置に、筐体7の開口部に沿うように断面U字形の溝23を周状に形成している。従って、温度変化によってジャバラ13の一部に応力や当該応力等に起因する変形等の不都合が生じても、これが他部分に伝達することはなく、溝23がこれらの不都合な要因を緩和・吸収するので、電子秤1のゼロ値に有害な程度の変動が生じることが防止され、高速高精度の側手が実現できる。
【0025】
また本実施形態では、負荷側の受け部8と、非負荷側の筐体7に対し、肉厚が大きい第1乃至第2固定部18,19及び各突起部22,25が圧縮されて固定されているため、ジャバラ13には歪や変形が生じ、その程度は特に変形量が大きい突起部22,25の部分で著しい。しかし、これらの歪や変形のうち、少なくとも突起部22の変形に起因して生じた変形等は、突起部22の近傍に形成された溝23によって可変形部20には伝わりにくいため、取付け状態下で生じる前記変形等の可変形部20への影響は可及的に減少し、そのために、この点においても電子秤1のゼロ値に有害な程度の変動が生じることが防止され、高速高精度の側手が実現できるという効果が得られる。
【0026】
また本実施形態では、第1固定部18に設けられた周状の突起部22の径は、第2固定部19に設けられた周状の突起部25の径よりも小さい。従って、ジャバラ受け11や筐体7に対して両突起部22,25が同等の力で固定されている場合には、径が小さい第1固定部18の突起部22に生じる応力は、径が大きい第2固定部19の突起部25に生じる応力に比べて大きくなる。しかし、本実施形態では、特に径が小さい方の突起部22に近接して第1固定部18に溝23を設けたので、取り付け時に第1固定部18とその突起部22が圧縮されて他方より大きな応力を発生した場合、これにより生じる歪、変形を直近の溝23で効果的に緩衝して他部に伝達しないようにすることができる。
【0027】
また本実施形態では、第1固定部18に設けられた周状の溝23は、その断面形状がU字形であるため、その内部にごみや埃等が入った場合にも掃除しやすく、また溝23に力が加わった場合にも溝23内に応力が集中するような角部がないため、破損しにくいという利点もある。
【0028】
本発明の第2実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13aを図7を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図7に示すように、このジャバラ13aは、第1実施形態のジャバラ13に比べて第1固定部18の突起部22からより離れた位置により深い溝33が形成されている。第1実施形態のジャバラ13では、第1固定部18の係合突起21に近接して溝23が形成されることとなるため、溝23を形成した部分では素材の肉厚が極端に薄くなり、前述した有害な変形は伝達しにくくなるものの、予期しない何らかの力が加わった場合に破損しやすい。しかし、このジャバラ13aによれば、第1実施形態より深い溝33を第1実施形態より突起部22(従って係合突起21)から離して形成しているので、前述した有害な変形が伝達しにくくい効果は確保しつつ、破損しにくい頑丈さも確保される。
【0029】
本発明の第3実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13bを図8を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図8に示すように、このジャバラ13bの第1固定部18には、突起部22に近接して断面形状がV字形の溝43が形成されている。第1実施形態では溝23の形状はU字形であったが、加工上の都合等に応じて本実施形態のような形状を選択することも可能である。
【0030】
本発明の第4実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13cを図9を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図9に示すように、このジャバラ13cの第1固定部18には、突起部22に近接して2つの溝23,33が並べて形成されている。第1実施形態では溝23は1本であったが、このように2本並べて配置すれば、1本の場合に比べて有害な応力や変形の伝達を一層効果的に遮断することができる。
【0031】
本発明の第5実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13dを図10を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図10に示すように、このジャバラ13dは、第1固定部18の裏側に、突起部22及び係合突起21に近接して断面U字形の溝53が形成されている。溝53が、突起部22が形成されている上面側ではなく、下面側に形成されているので、溝53内にごみ等の異物が堆積しにくく、また洗浄時の水が溜まらないので黴が生じず衛生的であり、食品の計量等の用途に特に適している。
【0032】
本発明の第6実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13eを図11を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図11に示すように、このジャバラ13eは、第1固定部18の表側と裏側の両方に、突起部22に近接して幅狭の溝63a,63bがそれぞれ形成されている。溝63a,63bが、第1固定部18の両面に形成されているので、第1固定部18はクランク状の断面となり、有害な応力や変形の伝達を一層効果的に遮断することができる。
【0033】
本発明の第7実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13fを図12を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図12に示すように、このジャバラ13fは、第1固定部18の表側と裏側の両方に、それぞれ2本ずつの溝73a,c及び73b,dが互い違いになるように交互に形成されている。このような構成によれば、第6実施形態に比べ、有害な応力や変形の伝達をさらに一層効果的に遮断することができる。
【0034】
本発明の第8実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13gを図13を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図13に示すように、このジャバラ13gは、筐体7側に固定される下側の第2固定部19の下面に、突起部25に近接して溝83が形成されている。このような構成によれば、第2固定部19と可変形部20との間における有害な応力や変形の伝達を効果的に遮断することができる。
【0035】
本発明の第9実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13hを図14を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図14に示すように、このジャバラ13hは、筐体7側に固定される下側の第2固定部19の上面に、突起部25に近接して溝93が形成されている。このような構成によれば、第2固定部19と可変形部20との間における有害な応力や変形の伝達を効果的に遮断することができる。
【0036】
なお、以上説明した各実施形態において、第1又は第2固定部18,19に形成された突起部22,25は、第1又は第2固定部18,19の表面から突出した断面半球形の周状の凸条であったが、突起部22,25の形状としてはこれに限定するものではなく、第1又は第2固定部18,19の表面との間に高さの違いが認められるような部分であって、固定時に負荷側部材又は非負荷側部材に押し付けられて圧縮され、潰されることにより、防水・防塵等の機能を発揮しうるような部位であればよく、例えば単なる肉厚部乃至段差部のような構造であっても本発明における突起部の定義に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0037】
1…電子秤
3…負荷側部材としてのロバーバル機構
6…負荷側部材としての荷重受け部材
7…非負荷側部材としての筐体
8…負荷側部材としての受け部
11…負荷側部材としてのジャバラ受け
13,13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h…分離部材としてのジャバラ
18…ジャバラの第1固定部
19…ジャバラの第2固定部
20…ジャバラの可変形部
22…第1固定部の突起部
25…第2固定部の突起部
23,33,43,53,63,73,83,93…溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計量物の質量を測定する電子秤に係り、特に筐体等と内部の計量機構との間に設けられた防水・防塵用の分離部材が、外気温度の変化等による影響を受けて計量精度を低下させることを防止した電子秤に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、本体ケースの側面側にダイヤフラムを配置した場合においても計量精度と応答性が維持可能であることを目指した計量装置が開示されている。この計量装置によれば、本体ケース内のロードセルに連結された支柱54の前端部を、本体ケースの側面の円形開口3a′から突出させ、この前端部に計量ホッパを支持させている。そして、外周部56aと内周部56bを薄膜蛇腹状の連結部56cで一体につないだダイヤフラム56を、開口3a′の縁部と支柱54の外縁部に取り付けて両者間の隙間を閉鎖する。ここで、外周部56aと内周部56bとを水平方向にオフセットさせると共に、連結部56cにある3つの湾曲部を、湾曲方向が水平方向となるように配置する。係る構造によれば、支柱54が下方に変位したとき、該支柱54の左右両側部において前記変位に対するダイヤフラムの抵抗が軽減されるので、計量装置の計量精度と応答性が維持されるものとされている。
【0003】
下記特許文献2には、計量機構を覆う筐体の開口部に防水・防塵用の密封部材を適正な状態で取り付けた電子天秤が開示されている。この発明によれば、荷重の受け部41,42 を上面に備えた計量機構(10,2,4,40) が底板67の上にあり、計量機構を覆う筐体60には、受け部41,42 を外部に表出する開口61,62 がある。じゃばら部材90の下端は開口の周囲に固定され、じゃばら部材90の上端はじゃばら受け80の上面に固定される。受け部の支持軸43は、じゃばら受け80の大径の通孔82を余裕を以って挿通する。じゃばら部材が変形しないように受け部に対してじゃばら受けの位置を定め、ねじでじゃばら受けを受け部に固定する。筐体自体や筐体と本体の組み立てに誤差等があっても、じゃばら部材を無理な力が加えられた状態で取り付けなくてすむので測定に誤差が生じるおそれがなく、水分や塵埃の多い使用環境であっても安定して高い信頼性をもって使用できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−21554号公報
【特許文献2】特開2002−107218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の発明によれば、本体ケースと、本体ケースの開口を挿通する支柱との間に設けられるダイヤフラム56は、外周部と内周部を蛇腹状の連結部で一体につないだ構成であり、一般にゴムで構成されているため、外気温度の変化によってゴムの硬度が変化してゼロ値に変動を与えて質量の測定精度が低下することがあり、これが高速高精度の測定を実現する上での障害になるという問題があった。
【0006】
また、上述した特許文献2に記載の発明によれば、筐体と、筐体の開口を挿通する荷重の受け部との間に設けられるじゃばら部材90は、上部と下部の間がじゃばら状となった部材であり、一般にゴムで構成されているため、特許文献1記載の発明の場合と同様の問題があった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、非負荷側部材である筐体等と、その内部にある負荷側部材である計量機構との間に設けられた防水・防塵用の分離部材が外気温度の変化等による影響を受けにくく、計量精度の低下が少ない電子秤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された電子秤1は、
被計量物の荷重が加わる負荷側部材6,8,11と、
前記負荷側部材6,8,11の少なくとも一部を内部に収納する非負荷側部材7と、
前記負荷側部材6,8,11の側に接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部22を備えた相対的に肉厚の第1固定部18と、前記非負荷側部材7と接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部25を備えた相対的に肉厚の第2固定部19と、前記第1固定部18と前記第2固定部19を周状の一体構造で接続する相対的に薄肉の可変形部20を備えた分離部材13と、
を有する電子秤1において、
前記第1固定部18と前記第2固定部19の少なくとも一方に、前記突起部22,25に近接して周状の溝23,33,43,53,63,73,83,93を形成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された電子秤1は、請求項1記載の電子秤1において、
前記第1固定部18に設けられた前記突起部22の径と、前記第2固定部19に設けられた前記突起部25の径が互いに異なり、前記負荷側部材6,8,11の側及び前記非負荷側部材7に両突起部22,25が同等の力で固定されており、前記第1固定部18と前記第2固定部19のうち、径が小さい前記突起部22,25を有する方に前記溝23,33,43,53,63,73,83,93が形成されたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された電子秤1は、請求項2記載の電子秤1において、
前記溝53,63,73,93が、前記突起部22,25が形成されている側とは反対側の面に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された電子秤1によれば、負荷側部材6,8,11の側と非負荷側部材7の間を塞いでいる分離部材13は、負荷側部材6,8,11の側及び非負荷側部材7に固定された第1固定部18及び第2固定部19が、可変形部20によって一体構造で連続した構成とされているが、第1固定部18及び第2固定部19には固定用の各突起部22,25に近接して周状の溝23,33,43,53,63,73,83,93が形成されているので、外気温度の変化によって分離部材13の硬度等の特性が変化しても、これによる変形等の影響が各部の間で伝達されにくい。また、負荷側部材6,8,11の側と非負荷側部材7に対し、肉厚が大きい第1乃至第2固定部18,19及びその突起部22,25が圧縮されて固定されたことにより、分離部材13には歪や変形が生じるが、これらの歪や変形は突起部22,25の近傍に形成された溝23,33,43,53,63,73,83,93によって可変形部20には伝わりにくくなる。従って、この電子秤1によれば、分離部材13が受ける外気温度の変化や取付け時に生じる変形等の影響が可及的に減少し、そのためにゼロ値の変動が抑えられて計量精度の低下が少なくなるという効果が得られる。
【0012】
請求項2に記載された電子秤1によれば、請求項1記載の電子秤1による効果において、さらに次のような効果が得られる。すなわち、第1固定部18に設けられた突起部22の径と、第2固定部19に設けられた突起部25の径が互いに異なり、負荷側部材6,8,11の側及び非負荷側部材7に両突起部22,25が同等の力で固定されている場合には、第1固定部18と第2固定部19のうち、径が小さい方の突起部22,25に生じる応力が他方に比べて大きくなる。そこで、特に径が小さい方の突起部22,25に近接して第1固定部18又は第2固定部19に溝23,33,43,53,63,73,83,93を設けることとすれば、取り付け時に当該突起部22,25や当該突起部22,25が設けられた第1固定部18又は第2固定部19が圧縮されて他方より大きな応力を発生した場合、これにより生じる歪、変形を直近の溝で効果的に緩衝して他部に伝達しないようにすることができる。
【0013】
請求項3に記載された電子秤1によれば、請求項2記載の電子秤1による効果において、前記溝53,63,73,93を、突起部22,25が形成されている側ではなく、これとは反対側の面に形成することにより、溝内にごみ等の異物が堆積しにくく、また洗浄時の水が溜まらないので黴が生じず衛生的であり、食品の計量等の用途に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態である電子秤の分解拡散斜視図である。
【図2】第1実施形態の電子秤において分離部材の取り付け構造を示す分解拡散斜視図である。
【図3】第1実施形態の電子秤の外観斜視図である。
【図4】第1実施形態の電子秤の分離部材付近における組み立て途中の状態を示す断面図である。
【図5】第1実施形態の電子秤の分離部材付近における組み立て状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図7】第2実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図8】第3実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図9】第4実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図10】第5実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図11】第6実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図12】第7実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図13】第8実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【図14】第9実施形態の電子秤における分離部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係る電子秤について説明する。
まず図1〜図3を参照して本実施形態に係る電子秤1の概要構成について説明する。図1に示すように、ベース板2の上には、被計量物の荷重が加わる負荷側部材としてのロバーバル機構3が固定されている。ロバーバル機構3の内部には、レバー4と、レバー4を平衡状態に制御する電磁コイル5からなる平衡駆動手段と、位置検出手段(不図示)が設けられている。またロバーバル機構3の可動部には、前記負荷側部材として、鞍状の荷重受け部材6が固定されており、この荷重受け部材6上に図示しないコンベアを載置すれば動秤を構成することができる。
【0016】
図2及び図3に示すように、これら負荷側部材からなる機構は、被計量物の荷重が加わらない非負荷側部材としての筐体7内に収納される。図1乃至図2に示すように、荷重受け部材6と一体の部位であり、従って負荷側部材である受け部8と、これに設けられた支持軸9は、組み立て途中の状態において筐体7の開口10から上方外側に突出している。図2に示すように、受け部8の上方から、受け部8に一体に取り付けられて負荷側部材となる円盤状のジャバラ受け11と、非負荷側部材である筐体7に一体に取り付けられる環状のジャバラ取付部材12と、筐体7内を外界から遮断する分離部材としてのジャバラ13と、蓋状のカバー14とを順に組み付け、最後に支持軸9にナット15をねじ込んでカバー14を固定すれば、図3に示すように電子秤1として完成する。そして、図示はしないが、カバー14上に見えている支持軸9に梁16を介してコンベアが取り付けられる。なお、梁16はコンベアに加わる荷重を秤に正確に伝達するための剛体部品である。このように、非負荷側部材としての筐体7と、筐体7の開口10内にある負荷側部材としての受け部8との間に、分離部材であるジャバラ13が取り付けられているので、負荷側部材が収納された筐体7の内部を外部に対して閉鎖し、水分や塵埃が筐体7の内部に入らないようにした状態で、前記コンベアにより被計量物を搬送させながら図示しない制御部によって被計量物の質量を測定することができる。
なお、本実施形態では、非負荷側部材である筐体7と、その開口10から突出している負荷側部材であるジャバラ受け11との間に分離部材としてのジャバラ13を設けたが、要するに、非負荷側部材の内部に少なくとも一部が収納されている負荷側部材の何れかの部分と、非負荷側部材との間に分離部材を配置することにより、負荷側部材が収納された非負荷側部材の内部空間について、分離部材が固定された部位よりも内側を外部に対して閉鎖できるようになっていればよい。
【0017】
次に前記ジャバラ13の構造と、その取付構造の詳細について図2及び図4〜図6を参照して説明する。
このジャバラ13は、前述したように、非負荷側部材である筐体7の円形の開口10と、この開口10を貫通して配置される負荷側部材としての受け部8との間に取り付けられる全体として円筒形でゴム等の可撓性部材乃至弾性部材からなる部材であり、筐体7内を外界に対して防水・防塵するために設けられる。
【0018】
図2及び図6に示すように、本実施形態のジャバラ13は、負荷側部材であるジャバラ受け11に取り付けられる環状の第1固定部18と、非負荷側部材である筐体7の開口10に取り付けられる環状の第2固定部19と、第1及び第2固定部18,19を一体構造で連結しているジャバラ状の可変形部20とを有している。第1及び第2固定部18,19は、可変形部20と比較した場合には相対的に肉厚であり、逆に可変形部20は、第1及び第2固定部18,19と比較した場合には相対的に肉薄である。例えば第1固定部18は、直径が65mm程度のサイズの場合には厚さが2.5乃至3mm程度であり、第2固定部19は、直径が80mm程度のサイズの場合には厚さが1乃至1.5mm程度であるが、その場合には可変形部20の厚さは0.5mm程度である。なお、可変形部20との名称は、ジャバラ受け11が移動しても可変形部20がジャバラ状構造によって当該移動に追従しうることを示すものであり、これに対して第1及び第2固定部18,19が変形しないことを示すものではなく、可変形部20と同様にゴム等からなる第1及び第2固定部18,19も取付時には後述するように圧縮されて変形する。
【0019】
図6に示すように、周状の第1固定部18の下面内縁には、下方に突出した周状の係合突起21が形成されている。また、係合突起21に近接する第1固定部18の上面内縁には、上方に突出した断面半円形で周状の突起部22が形成されている。そして、第1固定部18の上面側には、周状の突起部22の外側の直近位置に、周状の溝23が形成されている。この溝23は、断面U字形であり、その深さは第1固定部18の厚さの1/3程度よりも小さくすることが好ましい。このような構造は、型に溶融したゴム材を流し込んで成形することができる。
【0020】
図6に示すように、周状の第2固定部19は第1固定部18よりも外径が大きく、内方側が開口した断面コ字形の袋状になっており、その下面には孔24が要所(本実施形態では等角度間隔で3箇所)に形成されるとともに、その下面の孔24よりも外方には、下方に突出した断面半円形で周状の突起部25が形成されている。
【0021】
図2、図4及び図5に示すように、ジャバラ受け11には受け部8の支持軸9よりも大径の貫通孔26が形成されており、ジャバラ受け11は貫通孔26に支持軸9を貫通させて受け部8の上に載置される。またジャバラ受け11には、上面の外縁に沿って周状の係合溝27が形成されている。そして図4及び図5に示すように、ジャバラ13の第1固定部18は、その係合突起21をジャバラ受け11の係合溝27に係合させて負荷側部材に取り付けられている。そして図4に示すように、第1固定部18及びジャバラ受け11の上からカバー14を被せて支持軸9をカバー14の孔に挿通させ、図5に示すように、支持軸9にナット15をねじ込んでカバー14をジャバラ受け11に固定する。これによって、図5に示すようにジャバラ13の第1固定部18はジャバラ受け11とカバー14の間に挟まれて圧縮され、突起部22は潰されて両者に密着し、防水・防塵機能を発揮するようになる。
【0022】
図2、図4及び図5に示すように、環状のジャバラ取付部材12の下面には、複数箇所(本実施形態では等角度間隔で3箇所)にジャバラ固定用のねじ棒28が下方に向けて突出して固定されている。また、筐体7の開口10の周縁には、複数箇所(本実施形態では等角度間隔で3箇所)に孔29が形成されている。図4及び図5に示すように、断面コ字形の袋状であるジャバラ13の第2固定部19でジャバラ取付部材12を挟み込み、ジャバラ取付部材12のねじ棒28を第2固定部19の孔24に挿通させるとともに、さらにねじ棒28を筐体7の開口10の周縁に形成された孔29を挿通させ、筐体7の内側に突出したねじ棒28にナット30をねじ込んで第2固定部19を筐体7側に固定する。これによって、図5に示すようにジャバラ13の第2固定部19はジャバラ取付部材12と筐体7の間に挟まれて圧縮され、突起部25は潰されて両者に密着し、防水・防塵機能を発揮するようになる。
【0023】
以上の構成における作用・効果について説明する。
本実施形態の電子秤1によれば、負荷側であるジャバラ受け11及び受け部8と、非負荷側である筐体7との間はゴム等からなる一体構造のジャバラ13によって塞がれており、第1固定部18がジャバラ受け11とカバー14の間で固定されている部分と、第2固定部19が筐体7とジャバラ取付部材12との間で固定されている部分には、いずれも開口10に近接して配置された周状の突起部22,25があって、これが圧縮されて潰れることで高い防水性及び防塵性が達成されている。従って、筐体7の内部に水分や塵埃が浸入する恐れは小さい。
【0024】
また本実施形態では、ジャバラ13は全体として一体構造であり、取付部分である肉厚の第1及び第2固定部18,19と、薄肉でジャバラ状の可変形部20とは連続的につながっている。このため、環境温度が変化してジャバラ13を構成するゴムの硬度等の特性が変化すると、これによってジャバラ13の一部に生じた変形が他部に伝達されて質量の測定に誤差をもたらし、秤としてのゼロ値に変動が生じてしまうため、高速高精度の実現に障害となる。しかしながら、本実施形態におけるジャバラ13は、第1固定部18の突起部22の外側の直近位置に、筐体7の開口部に沿うように断面U字形の溝23を周状に形成している。従って、温度変化によってジャバラ13の一部に応力や当該応力等に起因する変形等の不都合が生じても、これが他部分に伝達することはなく、溝23がこれらの不都合な要因を緩和・吸収するので、電子秤1のゼロ値に有害な程度の変動が生じることが防止され、高速高精度の側手が実現できる。
【0025】
また本実施形態では、負荷側の受け部8と、非負荷側の筐体7に対し、肉厚が大きい第1乃至第2固定部18,19及び各突起部22,25が圧縮されて固定されているため、ジャバラ13には歪や変形が生じ、その程度は特に変形量が大きい突起部22,25の部分で著しい。しかし、これらの歪や変形のうち、少なくとも突起部22の変形に起因して生じた変形等は、突起部22の近傍に形成された溝23によって可変形部20には伝わりにくいため、取付け状態下で生じる前記変形等の可変形部20への影響は可及的に減少し、そのために、この点においても電子秤1のゼロ値に有害な程度の変動が生じることが防止され、高速高精度の側手が実現できるという効果が得られる。
【0026】
また本実施形態では、第1固定部18に設けられた周状の突起部22の径は、第2固定部19に設けられた周状の突起部25の径よりも小さい。従って、ジャバラ受け11や筐体7に対して両突起部22,25が同等の力で固定されている場合には、径が小さい第1固定部18の突起部22に生じる応力は、径が大きい第2固定部19の突起部25に生じる応力に比べて大きくなる。しかし、本実施形態では、特に径が小さい方の突起部22に近接して第1固定部18に溝23を設けたので、取り付け時に第1固定部18とその突起部22が圧縮されて他方より大きな応力を発生した場合、これにより生じる歪、変形を直近の溝23で効果的に緩衝して他部に伝達しないようにすることができる。
【0027】
また本実施形態では、第1固定部18に設けられた周状の溝23は、その断面形状がU字形であるため、その内部にごみや埃等が入った場合にも掃除しやすく、また溝23に力が加わった場合にも溝23内に応力が集中するような角部がないため、破損しにくいという利点もある。
【0028】
本発明の第2実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13aを図7を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図7に示すように、このジャバラ13aは、第1実施形態のジャバラ13に比べて第1固定部18の突起部22からより離れた位置により深い溝33が形成されている。第1実施形態のジャバラ13では、第1固定部18の係合突起21に近接して溝23が形成されることとなるため、溝23を形成した部分では素材の肉厚が極端に薄くなり、前述した有害な変形は伝達しにくくなるものの、予期しない何らかの力が加わった場合に破損しやすい。しかし、このジャバラ13aによれば、第1実施形態より深い溝33を第1実施形態より突起部22(従って係合突起21)から離して形成しているので、前述した有害な変形が伝達しにくくい効果は確保しつつ、破損しにくい頑丈さも確保される。
【0029】
本発明の第3実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13bを図8を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図8に示すように、このジャバラ13bの第1固定部18には、突起部22に近接して断面形状がV字形の溝43が形成されている。第1実施形態では溝23の形状はU字形であったが、加工上の都合等に応じて本実施形態のような形状を選択することも可能である。
【0030】
本発明の第4実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13cを図9を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図9に示すように、このジャバラ13cの第1固定部18には、突起部22に近接して2つの溝23,33が並べて形成されている。第1実施形態では溝23は1本であったが、このように2本並べて配置すれば、1本の場合に比べて有害な応力や変形の伝達を一層効果的に遮断することができる。
【0031】
本発明の第5実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13dを図10を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図10に示すように、このジャバラ13dは、第1固定部18の裏側に、突起部22及び係合突起21に近接して断面U字形の溝53が形成されている。溝53が、突起部22が形成されている上面側ではなく、下面側に形成されているので、溝53内にごみ等の異物が堆積しにくく、また洗浄時の水が溜まらないので黴が生じず衛生的であり、食品の計量等の用途に特に適している。
【0032】
本発明の第6実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13eを図11を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図11に示すように、このジャバラ13eは、第1固定部18の表側と裏側の両方に、突起部22に近接して幅狭の溝63a,63bがそれぞれ形成されている。溝63a,63bが、第1固定部18の両面に形成されているので、第1固定部18はクランク状の断面となり、有害な応力や変形の伝達を一層効果的に遮断することができる。
【0033】
本発明の第7実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13fを図12を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図12に示すように、このジャバラ13fは、第1固定部18の表側と裏側の両方に、それぞれ2本ずつの溝73a,c及び73b,dが互い違いになるように交互に形成されている。このような構成によれば、第6実施形態に比べ、有害な応力や変形の伝達をさらに一層効果的に遮断することができる。
【0034】
本発明の第8実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13gを図13を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図13に示すように、このジャバラ13gは、筐体7側に固定される下側の第2固定部19の下面に、突起部25に近接して溝83が形成されている。このような構成によれば、第2固定部19と可変形部20との間における有害な応力や変形の伝達を効果的に遮断することができる。
【0035】
本発明の第9実施形態に係る電子秤1に用いられるジャバラ13hを図14を参照して説明する。電子秤1のその他の構成は第1実施形態と同一である。
図14に示すように、このジャバラ13hは、筐体7側に固定される下側の第2固定部19の上面に、突起部25に近接して溝93が形成されている。このような構成によれば、第2固定部19と可変形部20との間における有害な応力や変形の伝達を効果的に遮断することができる。
【0036】
なお、以上説明した各実施形態において、第1又は第2固定部18,19に形成された突起部22,25は、第1又は第2固定部18,19の表面から突出した断面半球形の周状の凸条であったが、突起部22,25の形状としてはこれに限定するものではなく、第1又は第2固定部18,19の表面との間に高さの違いが認められるような部分であって、固定時に負荷側部材又は非負荷側部材に押し付けられて圧縮され、潰されることにより、防水・防塵等の機能を発揮しうるような部位であればよく、例えば単なる肉厚部乃至段差部のような構造であっても本発明における突起部の定義に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0037】
1…電子秤
3…負荷側部材としてのロバーバル機構
6…負荷側部材としての荷重受け部材
7…非負荷側部材としての筐体
8…負荷側部材としての受け部
11…負荷側部材としてのジャバラ受け
13,13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13h…分離部材としてのジャバラ
18…ジャバラの第1固定部
19…ジャバラの第2固定部
20…ジャバラの可変形部
22…第1固定部の突起部
25…第2固定部の突起部
23,33,43,53,63,73,83,93…溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物の荷重が加わる負荷側部材(6,8,11)と、
前記負荷側部材の少なくとも一部を内部に収納する非負荷側部材(7)と、
前記負荷側部材の側に接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部(22)を備えた相対的に肉厚の第1固定部(18)と、前記非負荷側部材と接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部(25)を備えた相対的に肉厚の第2固定部(19)と、前記第1固定部と前記第2固定部を周状の一体構造で接続する相対的に薄肉の可変形部(20)を備えた分離部材(13)と、
を有する電子秤(1)において、
前記第1固定部と前記第2固定部の少なくとも一方に、前記突起部に近接して周状の溝(23,33,43,53,63,73,83,93)を形成したことを特徴とする電子秤(1)。
【請求項2】
前記第1固定部(18)に設けられた前記突起部(22)の径と、前記第2固定部(19)に設けられた前記突起部(25)の径が互いに異なり、前記負荷側部材(11)及び前記非負荷側部材(7)に両突起部が同等の力で固定されており、前記第1固定部と前記第2固定部のうち、径が小さい前記突起部を有する方に前記溝が形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子秤(1)。
【請求項3】
前記溝(53,63,73,93)が、前記突起部(22,25)が形成されている側とは反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項2記載の電子秤。
【請求項1】
被計量物の荷重が加わる負荷側部材(6,8,11)と、
前記負荷側部材の少なくとも一部を内部に収納する非負荷側部材(7)と、
前記負荷側部材の側に接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部(22)を備えた相対的に肉厚の第1固定部(18)と、前記非負荷側部材と接触して圧縮された状態で固定される周状の突起部(25)を備えた相対的に肉厚の第2固定部(19)と、前記第1固定部と前記第2固定部を周状の一体構造で接続する相対的に薄肉の可変形部(20)を備えた分離部材(13)と、
を有する電子秤(1)において、
前記第1固定部と前記第2固定部の少なくとも一方に、前記突起部に近接して周状の溝(23,33,43,53,63,73,83,93)を形成したことを特徴とする電子秤(1)。
【請求項2】
前記第1固定部(18)に設けられた前記突起部(22)の径と、前記第2固定部(19)に設けられた前記突起部(25)の径が互いに異なり、前記負荷側部材(11)及び前記非負荷側部材(7)に両突起部が同等の力で固定されており、前記第1固定部と前記第2固定部のうち、径が小さい前記突起部を有する方に前記溝が形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子秤(1)。
【請求項3】
前記溝(53,63,73,93)が、前記突起部(22,25)が形成されている側とは反対側の面に形成されていることを特徴とする請求項2記載の電子秤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−149730(P2011−149730A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9208(P2010−9208)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
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