説明

電子筆記装置

【課題】表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態で被筆記体が使用される場合であっても、正しいストロークデータを確実に生成する。
【解決手段】折り曲げ部10Tを備えたシート体10、電子ペン2、及び、センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnを有し、電子ペン2による筆記方向に関する設定入力を行い、センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データを用いて、電子ペン2がノート30に記載した文字列に対応したストロークデータを生成し、生成されたストロークデータの時系列変化に基づき算出された算出筆記方向と、設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定し、算出筆記方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合、算出筆記方向に対応したストロークデータを保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の手書きによる筆記内容に対応したデータを入力可能な電子筆記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手書きによる筆記内容に対応したデータを入力可能な技術が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
この従来技術のタブレットには、ループコイル群が設けられている。このループコイル群により位置指示器の位置検出エリアが構成されている。電子筆記具としての位置指示器がタブレット上の位置検出エリア内に置かれていると、タブレットのCPUは、送受信動作をループコイル群の中から位置指示器が置かれている近傍の複数本のループコイルについて行い、検出されたこれらの信号レベル分布より、位置指示器の位置情報である指示位置の座標値を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−69898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、折り曲げ可能な折り曲げ部を備え、略ノート形状の被筆記体を覆うように所定の方向に見開き可能な形状に構成されたシート体を用いた電子筆記装置においては、上記略ノート形状の被筆記体に対し、使用者は、通常の見開き状態よりもさらに上記所定の方向に開いていき、表紙と裏表紙とがほぼ近接した裏返し状態として使用する場合があり得る。
【0006】
この裏返し状態では、上記シート体のうち、上記折り曲げ部を挟んで上記所定の方向の一方側の領域と他方側の領域とは、裏側同士を背中合わせにする形で、比較的近い距離に位置することとなる。そのため、使用者が被筆記体の上記一方側の領域に対して筆記動作を行ったとき、上記従来技術のようにコイルの信号の受信結果に基づき電子筆記具の位置情報を取得し、使用者が筆記した文字列に対応したストロークデータを生成すると、上記一方側の領域に備えられるコイルのみならず、反対側である上記他方側の領域に備えられるコイルが信号を受信するおそれがあり、誤って当該他方側の領域のコイルの信号の受信結果に対応してストロークデータが生成される場合がある。この場合には、当該ストロークデータに基づく文字列データは、本来使用者が筆記した文字列の鏡像文字のデータとなるおそれがある。以上のように、表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態で被筆記体が使用される場合には、正しいストロークデータを生成することができないおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態で被筆記体が使用される場合であっても、正しいストロークデータを確実に生成することができる電子筆記装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、略ノート形状の被筆記体を覆うように所定の第1方向に見開き可能な形状に構成されるとともに、前記第1方向の中央部に位置し前記第1方向と直交する第2方向に沿った折り曲げ中心線を有する折り曲げ部、を備えたシート体と、前記被筆記体への筆記内容に対応したデータ入力を行うための、位置検出用の筆記信号を生成して送信する電子筆記具と、前記電子筆記具による筆記方向に関する設定入力を行うための筆記方向設定手段と、前記電子筆記具から送信された前記筆記信号を受信可能な複数のコイルと、前記複数のコイルでの所定値以上の前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報を取得する位置取得手段と、前記位置取得手段で取得された前記位置情報を用いて、前記電子筆記具による前記被筆記体への記載に対応したストロークデータを生成するストロークデータ生成手段と、前記ストロークデータ生成手段により生成された前記ストロークデータの時系列変化に基づき、前記電子筆記具による筆記方向を算出する筆記方向算出手段と、前記筆記方向算出手段により算出された算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する筆記方向判定手段と、前記筆記方向判定手段により、前記算出筆記方向と前記設定筆記方向とが一致すると判定された場合、前記算出筆記方向に対応したストロークデータを蓄積する、データ記憶手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本願第1発明においては、電子筆記具から送信される筆記信号が複数のコイルで受信され、その受信結果に基づき位置取得手段が電子筆記具の位置情報を取得する。使用者が電子筆記具を用いて被筆記体に対し所望の文字の筆記を行うと、その使用者の筆記動作により電子筆記具の位置が変化し、その変化に応じた電子筆記具の位置情報が位置取得手段により取得される。ストロークデータ生成手段は、取得された位置情報を用いて、ストロークデータを生成する。これにより、使用者が被筆記体に記載した文字列に対応したストロークデータが生成される。
【0010】
ここで、本願第1発明の対象となる被筆記体は略ノート形状となっており、これに対応して被筆記体を覆うシート体は、折り曲げ部を備え第1方向に見開き可能な形状となっている。このような被筆記体に対し、使用者は、通常の見開き状態よりもさらに第1方向に開いていき、表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態として使用する場合があり得る。この裏返し状態では、シート体のうち、折り曲げ部を挟んで第1方向一方側の領域と第1方向他方側の領域とは、裏側同士を背中合わせにする形で、比較的近い距離に位置することとなる。そのため、使用者が上記一方側領域に対して筆記動作を行ったとき、当該シート体の一方側領域に備えられるコイルのみならず、反対側である上記他方側領域に備えられるコイルが所定値以上のレベルの筆記信号を受信するおそれがある。この場合に、例えば、誤って当該他方側領域のコイルの筆記信号の受信結果に対応したストロークデータにより文字列データが作成されると、当該文字列データは、本来使用者が筆記した文字列の鏡像文字のデータとなるおそれがある。
【0011】
そこで本願第1発明においては、筆記方向設定手段を設け、使用者が、当該筆記方向設定手段を用いて、電子筆記具による筆記方向に関する設定入力を行う。上記のようにしてコイルの筆記信号の受信結果に基づくストロークデータがストロークデータ生成手段によって順次生成されたら、そのストロークデータの時系列変化に基づき、筆記方向算出手段が電子筆記具の筆記方向を算出する。そして、筆記方向判定手段が、上記のようにして算出された算出筆記方向と、上述のようにして設定入力された設定筆記方向とが一致するか否かを判定する。
【0012】
算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しないと判定された場合には、本来の側とは反対側のコイルにおける受信結果に基づき、誤ったストロークデータが生成されたことになる。一方、算出筆記方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合には、本来の側のコイルにおける受信結果に基づき、正しいストロークデータが生成されたことになる。したがって、データ記憶手段が、このときのストロークデータを蓄積する。
【0013】
以上のように、本願第1発明においては、表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態で被筆記体が使用される場合であっても、正しいストロークデータを確実に生成することができる。
【0014】
第2の発明は、上記第1発明において、前記シート体は、前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の一方側に設けられた第1シート部と、前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の他方側に設けられた第2シート部と、を備え、前記複数のコイルは、前記第1シート部に設けられた第1コイルと、前記第2シート部に設けられた第2コイルとを含み、前記位置取得手段は、前記第1コイル及び前記第2コイルでの前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報をそれぞれ取得し、前記ストロークデータ生成手段は、前記第1コイル及び前記第2コイルでの前記筆記信号の受信に基づき前記位置取得手段で取得された前記位置情報をそれぞれ用いて、前記第1コイルに対応した第1ストロークデータと前記第2コイルに対応した第2ストロークデータとを生成し、前記筆記方向算出手段は、前記ストロークデータ生成手段により生成された前記第1ストロークデータ及び前記第2ストロークデータにそれぞれ対応した第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向を算出し、前記筆記方向判定手段は、前記筆記方向算出手段により算出された前記第1算出筆記方向及び前記第2算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かをそれぞれ判定し、前記データ記憶手段は、前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第1ストロークデータを蓄積し、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第2ストロークデータを蓄積し、かつ、前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第2ストロークデータを消去処理するとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第1ストロークデータを消去処理する、データ消去手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
本願第2発明に備えられたシート体は、第1シート部、折り曲げ部、第2シート部を備えている。被筆記体が裏返し状態として使用される場合、第1シート部と第2シート部とが近接する。このため、例えば本来第1シート部の第1コイルで受信されるべき信号が第2シート部の第2コイルで受信されたり、第2コイルで受信されるべき信号が第1コイルで受信されるおそれがある。
【0016】
本願第2発明においては、上記に対応し、第1コイル及び第2コイルでの受信結果に対応してそれぞれ生成された第1ストロークデータ及び第2ストロークデータのうち、算出筆記方向が設定筆記方向と一致したストロークデータを、データ記憶手段が記憶する。第1ストロークデータ及び第2ストロークデータのうち、算出筆記方向が設定筆記方向と一致しないストロークデータを、データ消去手段が消去処理する。
【0017】
このように、本願第2発明においては、正しいストロークデータと誤ったストロークデータとの両方を生成した後、誤ったストロークデータを消去する。これにより、正しいストロークデータを確実に生成することができる。また、誤ったストロークデータを修正して用いる場合に比べ、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0018】
第3の発明は、上記第1発明において、前記シート体は、前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の一方側に設けられた第1シート部と、前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の他方側に設けられた第2シート部と、を備え、前記複数のコイルは、前記第1シート部に設けられた第1コイルと、前記第2シート部に設けられた第2コイルとを含み、前記位置取得手段は、前記第1コイルでの前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報を取得するか、若しくは、前記第2コイルでの前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報を取得し、前記ストロークデータ生成手段は、前記第1コイルでの前記筆記信号の受信に基づき前記位置取得手段で取得された前記位置情報を用いて、前記第1コイルに対応した第1ストロークデータを生成するか、若しくは、前記第2コイルでの前記筆記信号の受信に基づき前記位置取得手段で取得された前記位置情報を用いて、前記第2コイルに対応した第2ストロークデータを生成し、前記筆記方向算出手段は、前記ストロークデータ生成手段により生成された前記第1ストロークデータに対応した第1算出筆記方向を算出するか、若しくは、前記ストロークデータ生成手段により生成された前記第2ストロークデータに対応した第2算出筆記方向を算出し、前記筆記方向判定手段は、前記筆記方向算出手段により算出された前記第1算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定するか、若しくは、前記筆記方向算出手段により算出された前記第2算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定し、かつ、前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記第1ストロークデータを前記第1算出筆記方向のうち前記第1方向に係わる前記第1算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行うとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記第2ストロークデータを前記第2算出筆記方向のうち前記第1方向に係わる前記第2算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行う、変換手段を設け、前記データ記憶手段は、前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第1ストロークデータを蓄積するとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第2ストロークデータを蓄積し、前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記変換手段による鏡像変換処理後の前記第1ストロークデータを蓄積するとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記変換手段による鏡像変換処理後の前記第2ストロークデータを蓄積することを特徴とする。
【0019】
前述したように、第1コイルでの受信結果に対応して生成された設定筆記方向と一致しない第1ストロークデータ、若しくは、第2コイルでの受信結果に対応して生成された設定筆記方向と一致しない第2ストロークデータは、本来使用者が筆記した文字列の鏡像文字のデータとなっている。本願第3発明は、上記に対応し、変換手段が、算出筆記方向が設定筆記方向と一致しないストロークデータを、鏡像変換処理する。これにより、誤ったストロークデータを削除せず正しく修正する形で、正しいストロークデータを確実に生成することができる。
【0020】
第4の発明は、上記第1又は第2発明において、前記筆記方向判定手段は、前記筆記方向算出手段により算出された前記算出筆記方向のうち前記第1方向に係わる前記算出筆記方向と、前記設定筆記方向とが、一致するか否かを判定することを特徴とする。
【0021】
前述したように、誤った文字列生成が行われうるのは、表紙と背表紙とが折り曲げ線を介した裏返し状態で近接していることが原因である。この場合、電子筆記具及び第1コイル間の距離と、電子筆記具及び第2コイル間の距離との違いが少なく、使用者が筆記している被筆記体の領域に対応したコイルが、第1コイル及び第2コイルのいずれであるのかわからない。
【0022】
ここで、第1方向に沿って第1シート部、折り曲げ部、第2シート部の順で配列された見開き可能な形状の場合、第1シート部と第2シート部とは、折り曲げ部の折り曲げ線に関して、線対称な位置関係となる。したがって、使用者の筆記動作に基づき筆記方向算出手段により算出される筆記方向のうち、折り曲げ線の方向すなわち第1方向と直交する方向に係わる筆記方向は、第1コイルの受信結果に基づき算出される場合でも第2コイルの受信結果に基づき算出される場合でも同じ方向となる。これに対して、筆記方向算出手段により算出される算出筆記方向のうち、折り曲げ線に直交する方向すなわち第1方向に係わる算出筆記方向は、第1コイルの受信結果に基づき算出される場合と第2コイルの受信結果に基づき算出される場合とで、互いに逆方向となる。
【0023】
そこで本願第4発明においては、筆記方向判定手段は、上記第1方向における算出筆記方向と、設定筆記方向とが一致するか否かを判定する。これにより、正しい文字列の生成に係わるコイルがいずれのコイルであるのかを、確実に識別することができる。
【0024】
第5の発明は、上記第4発明において、前記ストロークデータ生成手段により生成される前記ストロークデータに対し、ページ番号を付与するページ付与手段と、前記筆記方向算出手段により算出された、前記第1方向に係わる前記筆記方向が変化したか否かを判定する筆記変化判定手段と、前記筆記変化判定手段により前記第1方向に係わる筆記方向が変化したと判定された場合、前記付与されるページ番号を切り替えるように、前記ページ付与手段を制御する、ページ切替手段と、を有することを特徴とする。
【0025】
使用者が被筆記体に対し文字列の筆記を行う際には、例えば、略ノート形状の見開きの一方側のページにおいて文字列を記載していき、当該ページが文字列で埋まり記載箇所がなくなった場合には、他方側のページに文字列を新たに記載していくのが通常である。したがって、ストロークデータ生成手段により順次生成されデータ記憶手段に蓄積されるストロークデータも、上記被筆記体と同様に、ページごとに整理可能な態様とすると使用者にとって便利である。
【0026】
本願第5発明では、上記に対応してページ付与手段が設けられており、このページ付与手段がストロークデータに対しページ番号を付与する。ここで、使用者が上記裏返し状態として使用しつつ実際の筆記が1つのページから次のページに移った場合、ストロークデータの上記第1方向に係わる筆記方向は、当該ページ以降時に逆方向に切り替わる。そこで、本願第5発明では、このような挙動に対応し、筆記方向算出手段により算出された第1方向に係わる筆記方向が変化したか否かを筆記変化判定手段が判定する。第1方向に係わる筆記方向が変化したと判定された場合には、上記のような実際の筆記におけるページ移行が行われたとみなし、ページ切替手段がページ付与手段を制御する。これにより、ストロークデータに付与するページ番号が切り替えられる。
【0027】
以上のようにして、本願第5発明においては、筆記動作に伴うストロークデータの変化挙動を利用し、ストロークデータに付与されるページ番号を自動的に切り替えることができる。
【0028】
第6の発明は、上記第5発明において、前記ページ切替手段により前記ページ番号の切り替えの制御が行われたとき、前記筆記方向算出手段は、当該筆記方向が変化する前までの前記ストロークデータについて、前記筆記方向の算出を行い、前記筆記方向判定手段は、前記筆記方向算出手段により算出された、当該筆記方向が変化する前までの前記ストロークデータの算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定し、前記データ記憶手段は、前記筆記方向判定手段により、前記算出筆記方向と前記設定筆記方向とが一致すると判定された場合、前記算出筆記方向に対応した、前記筆記方向が変化する前までのストロークデータを蓄積することを特徴とする。
【0029】
これにより、ストロークデータに付与するページ番号が切り替えられるごと、すなわちいわゆる改ページ動作がされるごとに、正しいストロークデータを生成して蓄積することができる。また、これにより、全ページ分のストロークデータを一度に処理する場合と異なり、あるページと次のページとで筆記方向が異なる場合、すなわち、筆記方向が互いに異なるページが被筆記体中に混在する場合であっても、各ページごとにストロークデータを正しい向きで処理することができる。
【0030】
第7の発明は、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記ストロークデータ生成手段により生成された前記ストロークデータを、当該ストロークデータに含まれる文字データごとに区別して認識する文字認識手段を有し、前記筆記方向算出手段は、前記文字認識手段により認識される前記文字データの追加挙動に基づき、前記電子筆記具による筆記方向を算出することを特徴とする。
【0031】
本願第7発明においては、ストロークデータに含まれる文字データを切り出し、新たな文字データがどの向きに追加されていくかを認識することにより、筆記方向を確実に算出することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態で被筆記体が使用される場合であっても、正しいストロークデータを確実に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態の手書き入力装置の使用時の様子を表す、外観斜視図、概念的平面図、及び概念的側面図である。
【図2】手書き入力装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】左側コイルシート及び右側コイルシートの内部構成を表す概念的平面図である。
【図4】座標検出装置の縦置き状態及び横置き状態を表す概念的平面図である。
【図5】縦置きでの右縦書きの筆記方向、及び、縦置きでの左縦書きの筆記方向を説明する説明図である。
【図6】縦置きでの左横書きの筆記方向、及び、縦置きでの右横書きの筆記方向を説明する説明図である。
【図7】横置きでの右縦書きの筆記方向、及び、横置きでの左縦書きの筆記方向を説明する説明図である。
【図8】横置きでの左横書きの筆記方向、及び、横置きでの右横書きの筆記方向を説明する説明図である。
【図9】裏返し状態で使用されるときの、使用態様を表す説明図である。
【図10】裏返し状態で使用されるときの、生成されるストロークデータを表す説明図である。
【図11】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図12】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図13】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図14】コイルシートを用いて電子ペンの座標を検出する原理を説明する説明図及びグラフである。
【図15】電子ペンの座標を検出する原理を説明するためのグラフ及びテーブルである。
【図16】電子ペン2による筆記方向を算出する原理を説明する説明図である。
【図17】誤ったストロークデータを反転して蓄積する変形例において、座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図18】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図19】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図20】ページ切り替えを自動で行う変形例において、座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図21】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図22】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図23】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0035】
本実施形態の電子筆記装置である手書き入力装置1は、図1(a)に示すように、電子筆記具である電子ペン2と、座標検出装置3とを有する。手書き入力装置1では、使用者が電子ペン2を持つ。電子ペン2は、筆記具としての機能に加え、入力される位置情報すなわち座標データの入力手段として機能する。
【0036】
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示すように、座標検出装置3は、ノート30を略覆うように所定の第1方向(図1(b)中左右方向)に見開き可能な形状に構成されたシート体10を有している。なお、以下の説明においては、上記の見開き形状にシート体10が設置された状態(図1(b)の状態)を基準として、第1方向(図1(b)中左右方向)を第1方向4と定義し、第1方向と直行する第2方向(図1(b)中上下方向)を第2方向5と定義する。
【0037】
シート体10は、第1シート部である左側シート部10Lと、第2シート部である右側シート部10Rと、上記第1方向4の中央部に位置する折り曲げ部10Tとを備えている。左側シート部10Lは、上記第1方向4に沿って折り曲げ部10Tの一方側(図1(b)中左側)に設けられ、左側コイルシート100Lを備えている。右側シート部10Rは、上記第1方向4に沿って折り曲げ部10Tの他方側(図1(b)中右側)に設けられ、右側コイルシート100Rを備えている。折り曲げ部10Tは、使用者により折り曲げ可能な部分であり、図1(b)に示すように、上記第2方向5に沿った折り曲げ中心線Tを有している。
【0038】
そして、略ノート形状の被筆記体である上記第1方向4に見開き可能な形状のノート30が、上記シート体10に重なるように配置されている。なお、上記左側シート部10L及び右側シート部10Rに、図1(a)に示すようなノート保持部11をそれぞれ設けてもよい。これにより、座標検出装置3を容易かつ確実にノート30と一体化することができ、使用者による取り扱い性を向上することができる。
【0039】
使用者は、電子ペン2を用いてノート30の左筆記面31Lや右筆記面31Rに手書きの所望の文字列等を筆記する。この筆記動作に対応した電子ペン2の移動により、筆記された文字列等に対応した後述のペン位置データ列Dに基づくストロークデータが電子ファイルに保存される。その際、実際にインクを用いてノート30の左筆記面31Lや右筆記面31R等にページを切り替えながら筆記が行われるのと同様、使用者が図示しないページ切替ボタンを操作することにより、電子ファイルのページを切り替えながら保存することができる(後述)。
【0040】
使用者が手書き入力装置1を使用する際には、電子ペン2に備えられた図示しない電源スイッチがオンされる。電子ペン2は、筆記面31への筆記内容に対応したデータ入力を行うための、位置検出用の筆記信号として、この例では所定の周波数の交番磁界を生成して送信する、すなわち発生する。この電子ペン2は、図2に示すように、先端スイッチ42と、LC発振回路41と、電池43とを有する。
【0041】
先端スイッチ42は、使用者が、電子ペン2を用いて、文字等を筆記するために電子ペン2の先端2aを筆記面31に押しつけたときにオンとなり、LC発振回路41に対して指令信号S0を出力する。一方、先端スイッチ42は、使用者が、文字等の筆記を止め、電子ペン2の先端2aを筆記面31から離したときにオフとなる。この場合には、上記指令信号S0は出力されない。
【0042】
LC発振回路41は、先端スイッチ42から上記指令信号S0が入力されることによって、上記所定の周波数の交番磁界(以下適宜、単に「磁界」と称する)を発生する回路である。このLC発振回路41は、図示しないコンデンサ及びコイルを含む。
【0043】
電池43は、電子ペン2の電源スイッチがオンにされることで、LC発振回路41に電力を供給する。
【0044】
座標検出装置3は、図2に示すように、上記左側コイルシート100L及び右側コイルシート100Rと、マイコン80と、マルチプレクサ62(以下適宜、「MUX62」と称する)と、増幅回路64と、整流回路66と、フラッシュメモリ72と、通信インターフェース74と、表示部76と、電池21とを有する。
【0045】
上記左側シート部10Lに設けられた左側コイルシート100Lは、図3(a)に示すように、左側センスコイル部110Lを含む。すなわち、図3(a)に示すように配置された左側センスコイル部110Lが、例えば外形が長方形の薄板状に樹脂成形されて、左側コイルシート100Lが構成されている。
【0046】
左側センスコイル部110Lは、図3(a)に示すように、電子ペン2から発生された磁界を受信可能な、上記第1方向4に対応したx軸方向に配列されたm個のループ状の左側センスコイルLX1〜LXmと、上記第2方向5に対応したy軸方向に配列されたn個のループ状の左側センスコイルLY1〜LYnとによって構成されている。左側センスコイルLX1〜LXmと、左側センスコイルLY1〜LYnとは、直交した位置関係で配置されている。左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnは、例えば表面に絶縁被膜層が形成された銅線によって形成されている。
【0047】
左側センスコイルLX1〜LXmは、それぞれ、x軸方向の幅P1の辺とP1より長いy軸方向の長さP2の辺とを備えた、略長方形状に形成されている。左側センスコイルLX1〜LXmのそれぞれは、所定の一定ピッチでx軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接する左側センスコイルLX1〜LXmは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。
【0048】
左側センスコイルLY1〜LYnは、それぞれ、x軸方向の幅P3の辺とP3より短いy軸方向の長さP1の辺とを備えた、略長方形状に形成されている。左側センスコイルLY1〜LYnのそれぞれは、所定の一定ピッチでy軸方向に連続して配列されている。例えば、隣接する左側センスコイルLY1〜LYnは、P1の2分の1のピッチでそれぞれ重ねられている。
【0049】
上記右側シート部10Rに設けられた右側コイルシート100Rは、図3(b)に示すように、右側センスコイル部110Rを含む。すなわち、図3(b)に示すように配置された右側センスコイル部110Rが、上記左側センスコイル部110Lと同様、例えば外形が長方形の薄板状に樹脂成形されて、右側コイルシート100Rが構成されている。
【0050】
右側センスコイル部110Rは、図3(b)に示すように、電子ペン2から発生された磁界を受信可能な、上記第1方向4に対応したx軸方向に配列されたm個のループ状の右側センスコイルRX1〜RXmと、上記第2方向5に対応したy軸方向に配列されたn個のループ状の右側センスコイルRY1〜RYnとによって構成されている。右側センスコイルRX1〜RXmと、右側センスコイルRY1〜RYnとは、直交した位置関係で配置されている。右側センスコイルRX1〜RXmは、上記左側センスコイルLX1〜LXmと同一の構造ある。右側センスコイルRY1〜RYnは、上記左側センスコイルLY1〜LYnと同一の構造ある。
【0051】
なお、図3(a)及び図3(b)では、視覚的にわかりやすくするため、便宜上、左側センスコイルLX1〜LXmと左側センスコイルLY1〜LYnとの各辺、及び、右側センスコイルRX1〜RXmと右側センスコイルRY1〜RYnとの各辺が、それぞれ重ならないようにしており、上記ピッチで配列された状態では図示されていない。
【0052】
また、これらセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnは、電子ペン2によって発生された磁界に対応して、電子ペン2から座標検出装置3に信号S1(図2参照)を発生する。また、これらセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnは、MUX62に接続されている。
【0053】
なお、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnのそれぞれ、及び、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnのそれぞれは、各請求項記載のコイルに相当する。そのうち、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnのそれぞれは、第1コイルに相当し、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnのそれぞれは、第2コイルに相当する。
【0054】
図2に戻り、マイコン80は、CPU80aと、ROM80bと、RAM80cと、その他のA/D変換機能部や割り込み機能部等とを、一つの集積回路として構成したものである。マイコン80は、座標検出装置3で実行される各種の処理を制御する。
【0055】
MUX62は、マイコン80からのコイル選択信号S3に基づき、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn、及び、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnのうち、1つのセンスコイルを順番に選択する。そして、MUX62は、選択されたセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnにおいて、電子ペン2のLC発振回路41から発生される磁界との磁気誘導によって発生した上記信号S1を入力し、対応する信号S11を増幅回路64へ出力する。なお、電子ペン2から発生された磁界と磁気誘導することが、実質的には、磁界を受信することに相当する。
【0056】
増幅回路64は、MUX62から入力される信号S11を増幅する。増幅回路64で増幅された信号S13は、整流回路66に入力される。
【0057】
整流回路66は、増幅回路64から入力された信号S13を振幅検波した後、平滑化して直流信号に変換する。整流回路66で振幅検波された信号S14は、マイコン80に入力される。
【0058】
マイコン80は、前述したようにA/D変換機能を備えており、上記入力された振幅検波後の信号S14をデジタル信号に変換する。このとき、マイコン80の上記ROM80bには、後述の位置座標テーブルが記憶されている。マイコン80は、上記デジタル信号に対し、位置座標テーブルを適用することにより、電子ペン2の座標データ、すなわち、x軸方向のx座標及びy軸方向のy座標を算出する。なお、算出された座標データはフラッシュメモリ72に記憶される。この座標データの算出手法の詳細は、後述する。
【0059】
フラッシュメモリ72には、電子ファイルが予め用意されており、マイコン80で算出された座標データ等が、上記電子ファイルに書き込まれ、保存される。
【0060】
通信インターフェース74は、フラッシュメモリ72に保存された複数の座標データを含む後述のペン位置データ列Dに基づくストロークデータを、パーソナルコンピュータなどの外部装置に提供するためのインターフェースである。具体的には、通信インターフェース74は、例えばUniversal Serial Bus(USB)接続のためのUSBインターフェースや、SDカードなどのメモリカードスロットや、無線又は有線のネットワークインターフェースである。
【0061】
表示部76は、例えばLiquid Crystal Display(LCD)によって構成され、所定の情報を表示する(詳細は後述)。
【0062】
電池21は、座標検出装置3に備えられた図示しない電源スイッチがオンにされることで、マイコン80等に電力を供給する。
【0063】
上記構成の本実施形態の特徴は、マイコン80により算出された電子ペン2による筆記方向と、予め設定された電子ペン2による筆記方向とが一致するか否かを判定し、一致すると判定された場合、上記マイコン80により算出された電子ペン2による筆記方向に対応したストロークデータを蓄積すること、にある。
【0064】
ここで、本実施形態の対象となる被筆記体は、前述したように、略ノート形状のノート30であるので、使用者は、ノート30を縦置きで使用したり横置きで使用したりすることができる。図4(a)に示すように、使用者がノート30を縦置きで使用する場合、すなわち座標検出装置3が縦置きで使用される場合には、上記第1方向4は図示左右方向となり、上記第2方向5は図示上下方向となる。なお、以下適宜、座標検出装置3が縦置きで使用される場合の、第1方向4(図示左右方向)を「縦置きの第1方向4」と称し、第2方向5(図示上下方向)を「縦置きの第2方向5」と称する。一方、図4(b)に示すように、使用者がノート30を横置きで使用する場合、すなわち座標検出装置3が横置きで使用される場合には、上記第1方向4は図示上下方向となり、上記第2方向5は図示左右方向となる。なお、以下適宜、座標検出装置3が横置きで使用される場合の、第1方向4(図示上下方向)を「横置きの第1方向4」と称し、第2方向5(図示左右方向)を「横置きの第2方向5」と称する。
【0065】
また、一般に、ノート30の筆記面31に対し文字を筆記する場合、その筆記態様は、右縦書き、左縦書き、右横書き、及び、左横書きの4つの態様が考えられる。以下、縦置きで使用されるノート30の筆記面31、及び、横置きで使用されるノート30の筆記面31に対し、上記4つの筆記態様で文字が筆記される場合の、電子ペン2による筆記方向を順次説明する。なお、本実施形態においては、電子ペン2による筆記方向を、文字を書き進む方向である書字方向と、行の進行する方向である行進行方向との総称として定義している。
【0066】
まず、座標検出装置3が縦置きで使用される場合の筆記方向を説明する。
【0067】
図5(a)に示すように、縦置きのノート30の筆記面31に対して右縦書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の右上隅から下へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の下端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち左側に隣接する行の上隅から再度下へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記縦置きの第2方向5(図示上下方向)に沿って上から下へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記縦置きの第1方向4(図示左右方向)に沿って右から左へ進行する方向となる。
【0068】
図5(b)に示すように、縦置きのノート30の筆記面31に対して左縦書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の左上隅から下へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の下端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち右側に隣接する行の上隅から再度下へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記縦置きの第2方向5(図示上下方向)に沿って上から下へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記縦置きの第1方向4(図示左右方向)に沿って左から右へ進行する方向となる。
【0069】
図6(a)に示すように、縦置きのノート30の筆記面31に対して左横書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の左上隅から右へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の右端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち当該筆記面31の一段下に下がった領域における左端から再度右へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記縦置きの第1方向4(図示左右方向)に沿って左から右へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記縦置きの第2方向5(図示上下方向)に沿って上から下へ進行する方向となる。
【0070】
図6(b)に示すように、縦置きのノート30の筆記面31に対して右横書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の右上隅から左へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の左端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち当該筆記面31の一段下に下がった領域における右端から再度左へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記縦置きの第1方向4(図示左右方向)に沿って右から左へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記縦置きの第2方向5(図示上下方向)に沿って上から下へ進行する方向となる。
【0071】
次に、座標検出装置3が横置きで使用される場合の筆記方向を説明する。
【0072】
図7(a)に示すように、横置きのノート30の筆記面31に対して右縦書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の右上隅から下へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の下端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち左側に隣接する行の上隅から再度下へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記横置きの第1方向4(図示上下方向)に沿って上から下へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記横置きの第2方向5(図示左右方向)に沿って右から左へ進行する方向となる。
【0073】
図7(b)に示すように、横置きのノート30の筆記面31に対して左縦書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の左上隅から下へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の下端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち右側に隣接する行の上隅から再度下へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記横置きの第1方向4(図示上下方向)に沿って上から下へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記横置きの第2方向5(図示左右方向)に沿って左から右へ進行する方向となる。
【0074】
図8(a)に示すように、横置きのノート30の筆記面31に対して左横書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の左上隅から右へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の右端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち当該筆記面31の一段下に下がった領域における左端から再度右へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記横置きの第2方向5(図示左右方向)に沿って左から右へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記横置きの第1方向4(図示上下方向)に沿って上から下へ進行する方向となる。
【0075】
図8(b)に示すように、横置きのノート30の筆記面31に対して右横書きの筆記方向にて筆記を行う場合、使用者は、1つの筆記面31の右上隅から左へ向かって筆記を行う。そして、当該筆記面31の左端近くまで到達したら、使用者は、次の行、すなわち当該筆記面31の一段下に下がった領域における右端から再度左へ向かって筆記を行う。したがって、この場合の、書字方向WDは、上記横書きの第2方向5(図示左右方向)に沿って右から左へ書き進む方向となり、行進行方向LDは、上記横書きの第1方向4(図示上下方向)に沿って上から下へ進行する方向となる。
【0076】
ここで、座標検出装置3が備えるシート体10は、前述したように、第1方向4に見開き可能な形状となっているので、使用者は、シート体10すなわちノート30を見開き状態(図1(b)及び図1(c)の状態)とすることができる。そして、このようなノート30に対し、使用者は、通常の見開き状態(図1(b)及び図1(c)の状態)よりもさらに第1方向4(図1(b)及び図1(c)中左右方向)に開いていき、図9(a)及び図9(b)に示すような、左側シート部10L及び右側シート部10Rが近接した裏返し状態として使用する場合があり得る。
【0077】
ノート30が上記裏返し状態で使用される場合、シート体10の左側シート部10L及び右側シート部10Rが近接する。この場合には、電子ペン2及び左側シート部10Lに設けられた左側コイルシート100Lの間の距離と、電子ペン2及び右側シート部10Rに設けられた右側コイルシート100Rの間の距離との違いが少なくなる。そのため、使用者が電子ペン2を用いて一方の筆記面31に対し文字列を筆記したとき、電子ペン2から発生される磁界が、上記左側コイルシート100L側の左側センスコイル部110Lと、上記右側コイルシート100R側の右側センスコイル部110Rとの両方で受信される場合がある。
【0078】
上記のように、左側センスコイル部110Lと右側センスコイル部110R、との両方で磁界が受信される場合、使用者が筆記している筆記面31に対応したセンスコイル部110が、どちらであるのかわかならない。このため、使用者が筆記している筆記面31に対応したセンスコイル部110とは反対のセンスコイル部110での磁界の受信結果に対応してストロークデータが作成されると、当該ストロークデータは、誤ったストロークデータとなってしまう。具体的には、当該ストロークデータは、本来使用者が筆記した文字列を第1方向4に沿って反転した鏡像文字のデータとなってしまう。
【0079】
図9(a)及び図9(b)に示す例では、上記裏返し状態として使用される縦置きのノート30の左筆記面31Lに対し、上述した左横書きの筆記方向にて、1行目に「あ」「い」「う」「え」「お」の文字列が筆記され、2行目に「か」「き」「く」「け」「こ」の文字列が筆記されている。そして、当該文字列の筆記動作に対応し電子ペン2から発生される磁界が、上記文字列が筆記された左筆記面31Lに対応した左側コイルシート100L側の左側センスコイル部110Lと、反対側の右側コイルシート100R側の右側センスコイル部110Rとの両方で受信されている場合を示している。
【0080】
このような場合、上記文字列が筆記された左筆記面31Lに対応した左側センスコイル部110Lでの磁界の受信結果に基づき生成されるストロークデータは、図10(a)に示すように、正しいストロークデータとなる。これに対し、上記文字列が筆記された左筆記面31Lに対応した左側センスコイル部110Lとは反対の右側センスコイル部110Rでの磁界の受信結果に基づき生成されるストロークデータは、図10(b)に示すように、誤ったストロークデータとなる。具体的には、上記筆記された文字列を上記縦置きの第1方向4(図9(a)中左右方向)に沿って反転した鏡像文字のデータとなる。
【0081】
そこで、本実施形態においては、上記に対応し、手書き入力装置1を使用する際に、電子ペン2による筆記方向に関する設定入力を行う。その後、左側センスコイル部110Lでの磁界の受信結果に基づき生成されたストロークデータ、すなわち後述の第1ストロークデータに対応した筆記方向、すなわち後述の第1算出筆記方向と、右側センスコイル部110Rでの磁界の受信結果に基づき生成されたストロークデータ、すなわち後述の第2ストロークデータに対応した筆記方向、すなわち後述の第2算出筆記方向とを算出する。そして、それら算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向と、上記設定された筆記方向、すなわち後述の設定筆記方向とが、一致するか否かをそれぞれ判定して、上記設定筆記方向と一致すると判定された算出筆記方向に対応したストロークデータを蓄積し、上記設定筆記方向と一致しないと判定された算出筆記方向に対応したストロークデータをクリアする。このような機能を実現するために、座標検出装置3のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図11〜図16により順を追って説明する。
【0082】
図11、図12、及び図13において、この処理は、使用者が座標検出装置3の電源をオンした場合に開始される。まず、図11に示すように、CPU80aは、ステップSS10で、後述のエラーとしてみなされた回数を表すエラー変数Ceを0に初期化する。
【0083】
その後、ステップSS20で、CPU80aは、使用者による適宜の操作手段を介した入力操作に基づき、ノート30への筆記態様を、右縦書き、左縦書き、右横書き、及び、左横書きの中から設定入力する。これは実質的には、電子ペン2による筆記方向、すなわち上述の書字方向WD及び行進行方向LDに関する設定入力を行うことに相当する。なお、このステップSS20の手順が、各請求項記載の筆記方向設定手段として機能する。また、本実施形態においては、予め、座標検出装置3の縦置き(図4(a)の置き方)による使用がデフォルトとして設定されている。なお、このステップSS20で、使用者による操作手段を介した入力操作に基づき、座標検出装置3を縦置きで使用するのか横置き(図4(b)の置き方)で使用するかを設定入力するようにしてもよい。
【0084】
そして、ステップSS30に移り、CPU80aは、左側シート部10Lに対応した左側センスコイル部110L、及び、右側シート部10Rに対応した右側センスコイル部110Rのスキャン処理を開始する。センスコイル部110L,110Rのスキャン処理が実行されている間は、CPU80aは、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnのいずれか1つのセンスコイルと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnのいずれか1つのセンスコイルとを、交互に選択するコイル選択信号S3(図2参照)を、MUX62に出力する。これにより、電子ペン2の先端スイッチ42がオンの状態でLC発振回路41から発生された所定の周波数の磁界と、センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnとの磁気誘導によって信号S1(図2参照)が発生される。そして、信号S1が発生している状態においてMUX62により選択されたセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnからの信号S1は、増幅回路64で増幅され、整流回路66で振幅検波され、信号S14(図2参照)となってマイコン80に入力される。
【0085】
その後、ステップSS40で、CPU80aは、電子ペン2から発生された磁界と、センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnとの磁気誘導に基づく信号S14から、一定値以上のコイル出力が得られたかどうかを判定する。一定値以上のコイル出力が得られるまで、ステップSS40の判定が満たされず、ループして待機し、一定値以上のコイル出力が得られたら、ステップSS40の判定が満たされて、ステップSS50に移る。
【0086】
ステップSS50では、CPU80aは、電子ペン2から発生された磁界と左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnとの磁気誘導に基づく信号S14から一定値以上のコイル出力が得られ、かつ、電子ペン2から発生された磁界と右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとの磁気誘導に基づく信号S14から一定値以上のコイル出力が得られたかどうかを判定する。言い換えれば、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとの両方で、電子ペン2から発生された磁界が受信されたかどうかを判定する。すなわち、このステップSS50では、ノート30が上記裏返し状態(図9(a)及び図9(b)の状態)で使用されているかどうかを判定している。
【0087】
ステップSS50において、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとのうち、どちらか一方のみで、電子ペン2から発生された磁界が受信された場合には、ノート30が上記裏返し状態で使用されていない、すなわち上記見開き状態(図1(a)及び図1(b)の状態)で使用されているとみなされ、ステップSS50の判定が満たされず、ステップSS60に移る。
【0088】
ステップSS60では、CPU80aは、左側シート部10L側の左筆記面31L、及び、右側シート部10R側の右筆記面31Rうち、電子ペン2から発生された磁界が受信されたセンスコイル側の筆記面31を、使用者により筆記が行われているページ、すなわちアクティブページとして認識する。そして、後述のステップSS190に移る。
【0089】
一方、ステップSS50において、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとの両方で、電子ペン2から発生された磁界が所定値以上のレベルで受信された場合には、ノート30が上記裏返し状態で使用されているとみなされ、ステップSS50の判定が満たされて、ステップSS70に移る。
【0090】
ステップSS70では、CPU80aは、上記ステップSS30で開始されたセンスコイル部110L,110Rのスキャン結果に基づく電子ペン2の座標データの取得すなわち算出を行う。この座標データの算出の詳細を、以下、順を追って説明する。
【0091】
(1)位置座標テーブル
前述したように、座標データの算出には、マイコン80のROM80bに記憶された位置座標テーブルを用いる。この位置座標テーブルについて、図14(a)、図14(b)、図14(c)、図15(a)、及び図15(b)を参照して説明する。なお、図14(a)では、左側センスコイルLX1〜LX3の配置を分かり易くするために、左側センスコイルLX1〜LX3の各辺が重ならないように図示している。
【0092】
図14(a)において、3つの左側センスコイルLX1,LX2,LX3の中心線をそれぞれC1,C2,C3とする。これら左側センスコイルLX1,LX2,LX3にそれぞれ発生する電圧値ex1,ex2,ex3は、図14(b)に示すように、左側センスコイルLX1〜LX3の中心C1〜C3においてそれぞれ最大になる。このとき、左側センスコイルLX1〜LX3は、自己のヌル点が隣接するセンスコイルの中心の外側となるように、前述したように、x軸方向の幅P1の2分の1の幅で重ねられている。
【0093】
このとき、図14(c)に示すように、左側センスコイルLX1〜LX3の相互に隣接するセンスコイル間の電圧差は、左側センスコイルLX1〜LX3の中心C1〜C3上においてそれぞれ最大値となる。また、当該電圧差は、左側センスコイルLX1〜LX3の中心と、隣接する左側センスコイルLX1〜LX3が重なった部分との中間点において、それぞれ最小値となる。例えば、図14(c)において、(ex1−ex2)のグラフの右半分つまり実線で示す部分は、左側センスコイルLX1の中心C1から、左側センスコイルLX2が重ねられた部分の中間点Q1までの距離、すなわち重ねピッチの2分の1であるP1の4分の1における、ex1−ex2の挙動を示している。
【0094】
仮に電子ペン2が中間点Q2に存在したとすると、(ex1−ex2)を検出すれば、中心C1から中間点Q2点までの距離△X1を検出でき、その結果中間点Q2のx座標が求められる。仮に左側センスコイルLX1〜LX3の幅P1が50mmであるとすれば、△X=P1/4=12.5mmである。したがって、例えば、図14(c)における上記(ex1−ex2)の特性を示す実線部分を8bitのデジタルデータに変換すると、図15(a)に示すグラフが得られる。このグラフをテーブル形式に変換することにより、図15(b)に示す位置座標テーブルが得られる。
【0095】
(2)コイル電圧値を用いた座標決定
前述したように、電子ペン2から発生された磁界とセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnとの磁気誘導によって発生した信号S1は、増幅回路64で増幅され、整流回路66で振幅検波され、信号S14(図2参照)となってマイコン80に入力される。マイコン80は、入力された信号S14を、振幅つまり電圧値に対応したデジタル信号に変換する。CPU80aは、このデジタル信号の表す電圧値を用いて、前述の位置座標テーブルを用いて電子ペン2の座標を決定する。以下、センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnのうち、左側センスコイルLX1〜LXmを例にとって上記座標決定の詳細手順を説明する。
【0096】
まず、CPU80aは、上記信号S14から変換されたデジタル信号によって示される電圧値e1〜emを、左側センスコイルLX1〜LXmのコイル番号と対応付けて、RAM80cの電圧値記憶エリアに順次記憶する。
【0097】
その後、CPU80aは、左側センスコイルLX1〜LXmのコイル番号に対応付けて、電圧値記憶エリアに記憶されている電圧値e1〜emの中で最大の電圧値emaxを選択する。そして、CPU80aは、電圧値emaxを発生した左側センスコイルX1〜Xmのコイル番号XmaxをRAM80cに記憶する。
【0098】
次に、CPU80aは、電圧値emaxを発生した左側センスコイルLX1〜LXmの両隣の左側センスコイルLX1〜LXmの電圧値e1〜emのうちいずれか大きい方を決定する。そして、CPU80aは、決定された電圧値e1〜emを発生した左側センスコイルLX1〜LXmのコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAM80cに記憶する。例えば、電圧値emaxが左側センスコイルLX2によって発生されていた場合、CPU80aは、その両隣の左側センスコイルLX1の電圧値e1及び左側センスコイルLX3の電圧値e3を比較し、大きい電圧値e1又は電圧値e3を決定する。そして、CPU80aは、決定された電圧値e1を発生した左側センスコイルLX1のコイル番号又は電圧値e3を発生した左側センスコイルLX3のコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAM80cに記憶する。
【0099】
その後、CPU80aは、RAM80cに記憶されたコイル番号max及びコイル番号max2を比較して、コイル番号max2はコイル番号maxからx軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているかを判定する。なお、x軸の+方向とは図3(a)のx軸を示す矢印の方向であり、x軸の−方向とはその逆の方向である。判定の結果、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して+方向である場合、CPU80aは、変数SIDEを1に設定する。一方、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して−方向である場合、CPU80aは、変数SIDEを−1に設定する。例えば、電圧値emaxが左側センスコイルLX2で発生され、コイル番号Xmaxとして左側センスコイルLX2を示すコイル番号がRAM80cに記憶され、左側センスコイルLX3のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、CPU80aは、変数SIDEを1に設定する。一方、電圧値emaxが左側センスコイルLX2で発生され、コイル番号Xmaxとして左側センスコイルLX2を示すコイル番号がRAM80cに記憶され、左側センスコイルLX1のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、CPU80aは、変数SIDEを−1に設定する。
【0100】
そして、変数SIDEを設定したCPU80aは、下記(式1)により、変数DIFFを算出する。
DIFF=e(max)−e(max2)・・・(式1)
CPU80aは、算出されたDIFFに最も近い位置座標を、ROM80bに予め記憶されている前述の位置座標テーブル(図15(b)参照)から読み出す。そして、CPU80aは、位置座標テーブルから読み出した位置座標を、変数OFFSETとする。
【0101】
その後、CPU80aは、上記のようにして算出された変数SIDE及び変数OFFSETを用いて、下記(式2)により、電子ペン2のx軸方向の位置を示すx座標を求める。
X1=(P1/2)×max+OFFSET×SIDE・・・(式2)
ここで、(P1/2)×maxは、コイル番号maxの中心のx座標を示す。
【0102】
なお、以上は、x軸方向の左側センスコイルLX1〜LXmでの磁気誘導に基づく信号S14による電子ペン2のx座標の算出を例に説明した。電子ペン2のy座標についても、y軸方向の左側センスコイルLY1〜LYnでの磁気誘導に基づく信号S14により、同様の手法により算出される。また、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁気誘導に基づく信号S14による電子ペン2のx座標及びy座標についても、同様の手法により算出される。
【0103】
以上説明したように、ステップSS70においては、CPU80aは、センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき、上記(1)(2)の手法により電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。具体的には、CPU80aは、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとでの磁界の受信結果に基づき、電子ペン2の座標データ(x,y)をそれぞれ算出する。このようにしてステップSS70が終了した後、ステップSS80に移る。
【0104】
ステップSS80では、CPU80aは、上記ステップSS70で算出された座標データ(x,y)を用いてペン位置データ列D1,D2を生成する。詳細には、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnでの磁界の受信結果に基づき算出された複数の座標データ(x,y)により構成される第1ペン位置データ列D1の最後に、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)を追加し、新たな第1ペン位置データ列D1とする。なお、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)が最初の座標データであった場合には、当該1つの座標データにより新規に第1ペン位置データ列D1を生成する。またこれと共に、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき算出された複数の座標データ(x,y)により構成される第2ペン位置データ列D2の最後に、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)を追加し、新たな第2ペン位置データ列D2とする。なお、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)が最初の座標データであった場合には、当該1つの座標データにより新規に第2ペン位置データ列D2を生成する。このようにして生成したペン位置データ列D1,D2は、それぞれ、マイコン80のRAM80cに一時的に保存される。
【0105】
なお、ペン位置データ列Dによって、電子ペン2が筆記面31に記載した文字列に対応したストロークデータを取得可能である。すなわち、ペン位置データ列Dの生成は、言い換えれば、ストロークデータの生成と同等である。具体的には、第1ペン位置データ列D1によって、電子ペン2が左筆記面31Lに記載した文字列に対応したストロークデータ、すなわち左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnに対応した第1ストロークデータを取得可能である。すなわち、第1ペン位置データ列D1の生成は、言い換えれば、第1ストロークデータの生成と同等である。また、第2ペン位置データ列D2によって、電子ペン2が右筆記面31Rに記載した文字列に対応したストロークデータ、すなわち右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnに対応した第2ストロークデータを取得可能である。すなわち、第2ペン位置データ列D2の生成は、言い換えれば、第2ストロークデータの生成と同等である。
【0106】
そして、ステップSS90に移り、CPU80aは、上記ステップSS80でペン位置データ列D1,D2が生成されてから所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過するまではステップSS90の判定が満たされず、上記ステップSS70及びステップSS80を繰り返し実行し、ペン位置データ列D1,D2をRAM80cに蓄積する。そして、所定時間が経過したら、ステップSS90の判定が満たされて、ステップSS100に移る。
【0107】
ステップSS100では、CPU80aは、上記ステップSS80で生成されRAM80cに蓄積された第1ペン位置データ列D1に基づく第1ストロークデータを、公知の適宜の手法を用いて、当該第1ストロークデータに含まれる文字データごとに区別して認識する。またこれと共に、CPU80aは、上記ステップSS80で生成されRAM80cに蓄積された第2ペン位置データ列D2に基づく第2ストロークデータを、公知の適宜の手法を用いて、当該第2ストロークデータに含まれる文字データごとに区別して認識する。なお、このステップSS100の手順が、各請求項記載の文字認識手段として機能する。
【0108】
その後、ステップSS110で、CPU80aは、上記ステップSS80で生成されRAM80cに蓄積されたペン位置データ列Dに基づくストロークデータの時系列変化、具体的には上記ステップSS100で認識される文字データの追加挙動に基づき、電子ペン2による筆記方向を算出する。さらに具体的に言うと、CPU80aは、上記ステップSS100で認識される複数の文字データの、新たに文字データとして追加される方向に基づき、電子ペン2による筆記方向、すなわち上述の書字方向WD及び行進行方向LDを算出する。以下、その算出手法の一例を、図16(a)及び図16(b)により説明する。
【0109】
CPU80aは、まず、上記ステップSS100で認識された複数の文字データのうち、1文字目に対応した文字データの中心座標と、2文字目に対応した文字データの中心座標とを比較する。これにより、2文字目に対応した文字データの中心座標が、1文字目に対応した文字データの中心座標から、x軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているか、及び、y軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているかを検出する。そして、その検出結果に基づき、書字方向WD及び行進行方向LDを算出する。すなわち、前述したように、x軸方向は第1方向4に対応し、y軸方向は第2方向5に対応しているので、1文字目に対応した文字データに対する2文字目に対応した文字データの追加挙動により、上述の書字方向WD及び行進行方向LDを算出することができる。
【0110】
図16(a)では、使用者がノート30のある筆記面31に左縦書きの筆記方向にて「本日は晴天なり」の文字列を筆記したことに対応し、RAM80cに蓄積された対応するストロークデータ「本日は晴天なり」が、公知の適宜の手法によって、当該ストロークデータに含まれる文字データ「本」「日」「は」「晴」「天」「な」「り」ごとに区別され認識された状態を図示している。なお、認識された7つの文字データ「本」「日」「は」「晴」「天」「な」「り」の中心座標を、それぞれ(x1,y1)(x2,y2)(x3,y3)(x4,y4)(x5,y5)(x6,y6)(x7,y7)としている。
【0111】
このような場合には、CPU80aは、まず、上記認識された7つの文字データ「本」「日」「は」「晴」「天」「な」「り」のうち、1文字目の文字データに対応した文字データ「本」の中心座標(x1,y1)と、2文字目に対応した文字データ「日」の中心座標(x2,y2)とを取得する。そして、文字データ「日」の中心座標(x2,y2)が、文字データ「本」の中心座標(x1,y1)から、x軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているか、及び、y軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているかを検出する。
【0112】
例えば、図14(b)では、文字データ「本」の中心座標(x1,y1)を点aとし、文字データ「日」の中心座標(x2,y2)を点bとして、それら点a及び点bのxy座標系での位置関係を図示している。なお、この例では、座標検出装置3の縦置きによる使用を前提としているため、x軸方向(図示左右方向)は上記縦置きの第1方向4に対応し、y軸方向(図示上下方向)は上記縦置きの第2方向5に対応している。この例では、点bは点aからx軸の+方向(図示右方向)に存在するので、文字データの追加挙動は、左から右へ文字データが追加される挙動となっている。すなわち、左横書きとなっている。このような場合には、CPU80aは、電子ペン2の筆記方向を、縦置きでの左横書きに対応した、上記縦置きの第1方向4に沿って左から右へ進む書字方向WD、及び、上記縦置きの第2方向5(図示上下方向)に沿って上から下へ進行する行進行方向LDとして算出する。
【0113】
以上説明したように、ステップSS110においては、CPU80aは、上記のような手法により電子ペン2による筆記方向、すなわち算出筆記方向を算出する。具体的には、CPU80aは、上記ステップSS80で生成されRAM80cに蓄積された、上記第1ペン位置データ列D1に基づく第1ストロークデータに対応した算出筆記方向、すなわち第1算出筆記方向を算出すると共に、上記第2ペン位置データ列D2に基づく第2ストロークデータに対応した算出筆記方向、すなわち第2算出筆記方向を算出する。このようにしてステップSS110が終了した後、ステップSS120に移る。なお、このステップSS110の手順が、各請求項記載の筆記方向算出手段として機能する。
【0114】
ステップSS120では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが、上記第1方向4に沿った方向であるかどうかを判定する。第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向である場合には、ステップSS120の判定が満たされて、ステップSS130に移る。
【0115】
ステップSS130では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された、第1算出筆記方向に係わる書字方向WD、及び、第2算出筆記方向に係わる書字方向WDをそれぞれ判別する。すなわち、このステップSS130では、上記ステップSS110で算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向である書字方向WDをそれぞれ判別しているのである。その後、後述のステップSS150に移る。
【0116】
一方、ステップSS120において、第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向でなかった場合、すなわち第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが上記第2方向5に沿った方向であった場合には、ステップSS120の判定が満たされず、ステップSS140に移る。
【0117】
ステップSS140では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された、第1算出筆記方向に係わる行進行方向LD、及び、第2算出筆記方向に係わる行進行方向LDをそれぞれ判別する。すなわち、このステップSS140では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向である行進行方向LDをそれぞれ判別しているのである。
【0118】
そして、ステップSS150に移り、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された第1算出筆記方向と、上記ステップSS20で設定された筆記方向、すなわち設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。具体的には、CPU80aは、上記第1算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向と、上記設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS150の判定が満たされて、ステップSS160に移る。
【0119】
ステップSS160では、CPU80aは、左側シート部10L側の左筆記面31Lを、前述のアクティブページとして認識する。その後、後述のステップSS190に移る。
【0120】
一方、ステップSS150において、第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しない場合には、ステップSS150の判定が満たされず、ステップSS170に移る。
【0121】
ステップSS170では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された第2算出筆記方向と、上記ステップSS20で設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。具体的には、CPU80aは、上記第2算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向と、上記設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS170の判定が満たされて、ステップSS180に移る。
【0122】
ステップSS180では、CPU80aは、右側シート部10R側の右筆記面31Rを、前述のアクティブページとして認識する。
【0123】
その後、ステップSS190で、CPU80aは、この時点でRAM80cに蓄積されているペン位置データ列D1,D2のうち、上記ステップSS60、ステップSS160、又はステップSS180でアクティブページとして認識されなかった筆記面31、すなわちノンアクティブページ側のセンスコイルに対応したペン位置データ列Dを消去処理、すなわちクリアする。具体的には、上記ステップSS150において上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、左筆記面31Lがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、反対側の右筆記面31R側の右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnに対応した第2ペン位置データ列D2をクリアする。一方、上記ステップSS170において上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、右筆記面31Rがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、反対側の左筆記面31L側の左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnに対応した第1ペン位置データ列D1をクリアする。なお、第2ペン位置データ列D2をクリアすることは、言い換えれば、第2ストロークデータをクリアすることと同等である。また、第1ペン位置データ列D1をクリアすることは、言い換えれば、第1ストロークデータをクリアすることと同等である。すなわち、このステップSS190の手順が、各請求項記載のデータ消去手段として機能する。そして、このステップSS190が終了したら、図12に示すステップSS200に移る。
【0124】
図12に示すように、ステップSS200では、CPU80aは、上記ステップSS60、ステップSS160、又はステップSS180でアクティブページとして認識されなかった筆記面31側のセンスコイル部110のスキャン処理を停止し、上記ステップSS60、ステップSS160、又はステップSS180でアクティブページとして認識された筆記面31側のセンスコイル部110のスキャン処理のみ継続する。
【0125】
その後、ステップSS210で、CPU80aは、上記ステップSS60、ステップSS160、又はステップSS180でアクティブページとして認識された筆記面31側のセンスコイル部110のスキャン結果、すなわち当該センスコイル部110のセンスコイルでの磁界の受信結果に基づき、上述した(1)(2)の手法により電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。
【0126】
そして、ステップSS220に移り、CPU80aは、上記ステップSS210で算出された座標データ(x,y)を用いてペン位置データ列Dを生成する。詳細には、上記アクティブページとして認識された筆記面31側のセンスコイルでの磁界の受信結果に基づき算出された複数の座標データ(x,y)により構成されるペン位置データ列Dの最後に、当該筆記面31側のセンスコイルでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)を追加し、新たなペン位置データ列Dとして、RAM80cに一時的に保存する。
【0127】
その後、ステップSS230で、CPU80aは、使用者により前述のページ切替ボタンを用いたページ送り操作がなされたかどうかを判定する。使用者によるページ切り替え操作がなされない間はステップSS230の判定が満たされず、上記ステップSS210及びステップSS220を繰り返し実行し、ペン位置データ列DをRAM80cに蓄積する。そして、使用者によるページ切り替え操作がなされたら、ステップSS230の判定が満たされて、ステップSS240に移る。
【0128】
ステップSS240では、CPU80aは、この時点で生成済みでかつ上記RAM80cに保存されたペン位置データ列Dを、前述のフラッシュメモリ72(図2参照)に蓄積すなわち保存する。具体的には、上記ステップSS150において上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、左筆記面31Lがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、当該第1算出筆記方向に対応した、すなわち当該左筆記面31L側の左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnに対応した第1ペン位置データ列D1をフラッシュメモリ72に保存する。一方、上記ステップSS170において上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、右筆記面31Rがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、当該第2算出筆記方向に対応した、すなわち当該右筆記面31R側の右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnに対応した第2ペン位置データ列D2をフラッシュメモリ72に保存する。このように、連続的な複数の座標データ(x,y)からなるペン位置データ列Dを保存することにより、結果的に、当該ペン位置データ列Dに対応したストロークデータを電子ファイルに保存することができる。すなわち、第1ペン位置データ列D1を保存することにより、結果的に、当該第1ペン位置データ列D1に対応した第1ストロークデータを電子ファイルに保存することができ、第2ペン位置データ列D2を保存することにより、結果的に、当該第2ペン位置データ列D2に対応した第2ストロークデータを電子ファイルに保存することができる。そして、上記図11に示すステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。なお、このステップSS240の手順が、各請求項記載のデータ記憶手段として機能する。
【0129】
なお、上記ステップSS240においてフラッシュメモリ72の電子ファイルに保存されたペン位置データ列D(ストロークデータ)は、使用者による適宜の操作によって、前述の表示部76(図2参照)において、使用者が筆記した文字列として表示し、利用することができる。あるいは、前述の通信インターフェース74(図2参照)を介してパーソナルコンピュータなどの外部装置に提供され、当該外部装置によって、使用者が筆記した文字列として表示し、利用することができる。
【0130】
図11に戻り、ステップSS170において、第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しない場合には、ステップSS170の判定が満たされず、図13に示すステップSS250に移る。
【0131】
図13に示すように、ステップSS250では、CPU80aは、ノート30すなわち座標検出装置3を縦置き(図4(a)の置き方)で使用しているかどうかを確認する確認画面用の表示信号を生成し、表示部76へ出力する。これにより、表示部76において、上記確認画面が表示され、使用者に対し確認が促される。そして、CPU80aは、表示部76に表示された上記確認画面を見た使用者による適宜の操作手段を介した操作に基づき、座標検出装置3が縦置きで使用されているかどうかを判定する。座標検出装置3が縦置きで使用されていない場合、すなわち座標検出装置3が横置き(図4(b)の置き方)で使用されている場合には、ステップSS250の判定が満たされず、ステップSS260に移る。
【0132】
ステップSS260では、CPU80aは、座標検出装置3を横置きによる使用に設定変更し、上記図11に示すステップSS20に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0133】
一方、ステップSS250において、座標検出装置3が縦置きで使用されている場合には、エラーとみなされ、ステップSS250の判定が満たされて、ステップSS270に移る。
【0134】
ステップSS270では、CPU80aは、前述のエラー変数Ceの値に1を加え、ステップSS280に移る。
【0135】
ステップSS280では、CPU80aは、この時点でのエラー変数Ceの値が3であるかどうかを判定する。Ce<3である場合には、ステップSS280の判定が満たされず、上記図11のステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、Ce=3となっている場合には、ステップSS280の判定が満たされて、ステップSS290に移る。
【0136】
ステップSS290では、CPU80aは、所定のエラー画面用の表示信号を生成し、表示部76へ出力する。これにより、表示部76において、所定のエラー画面が表示される。
【0137】
そして、ステップSS300に移り、CPU80aは、センスコイル部110L,110Rのスキャン結果、すなわち当該センスコイル部110L,110RのセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき、上述した(1)(2)の手法により電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。
【0138】
その後、ステップSS310で、CPU80aは、上記ステップSS300で算出された座標データ(x,y)を用いて上述のペン位置データ列D1,D2を生成して、RAM80cに一時的に保存する。
【0139】
そして、ステップSS320に移り、CPU80aは、使用者により上記ページ切替ボタンを用いたページ送り操作がなされたかどうかを判定する。使用者によるページ切り替え操作がなされない間はステップSS320の判定が満たされず、上記ステップSS300及びステップSS310を繰り返し実行し、ペン位置データ列D1,D2をRAM80cに蓄積する。そして、使用者によるページ切り替え操作がなされたら、ステップSS320の判定が満たされて、ステップSS330に移る。
【0140】
ステップSS330では、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存されたペン位置データ列D1,D2を、フラッシュメモリ72に保存する。このように、連続的な複数の座標データ(x,y)からなるペン位置データ列D1,D2を保存することにより、結果的に、当該ペン位置データ列D1,D2に対応した第1ストロークデータ及び第2ストロークデータを電子ファイルに保存することができる。その後、上記図11に示すステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0141】
なお、上記ステップSS330においてフラッシュメモリ72の電子ファイルに保存されたペン位置データ列D1,D2(第1ストロークデータ及び第2ストロークデータ)のうち、一方のペン位置データ列Dに基づくストロークデータは、誤ったストロークデータとなっている。しかしながら、使用者による適宜の操作によって、表示部76において、これら第1ストロークデータ及び第2ストロークデータを表示し、使用者に筆記した文字列等に対応した正しいストロークデータを選択させることで、使用者は当該正しいストロークデータを利用することができる。あるいは、通信インターフェース74を介してパーソナルコンピュータなどの外部装置に提供され、当該外部装置によって、これら第1ストロークデータ及び第2ストロークデータを表示し、使用者に筆記した文字列等に対応した正しいストロークデータを選択させることで、使用者は当該正しいストロークデータを利用することができる。なお、このフローは、例えば使用者が座標検出装置3の電源をオフにした場合に終了する。
【0142】
なお、上記において、図11のステップSS30及びステップSS70と、図12のステップSS210と、図13のステップSS300との手順が、各請求項記載の位置取得手段として機能する。また、図11のステップSS80と、図12のステップSS220と、図13のステップSS310との手順が、ストロークデータ生成手段として機能する。さらに、図11のステップSS150及びステップSS170の手順が、筆記方向判定手段として機能する。
【0143】
以上説明したように、本実施形態の手書き入力装置1においては、使用者による適宜の操作手段を介した入力操作に基づき、電子ペン2による筆記方向に関する設定入力が行われる(図11のステップSS20を参照)。その後、使用者が電子ペン2を用いて筆記面31に対し所望の文字の筆記を行うと、その使用者の筆記動作により電子ペン2の位置が変化し、電子ペン2から発生される磁界とセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnとの磁気誘導に基づき、上記の変化に応じた電子ペンの座標データが算出される。そして、その取得された座標データを用いて、使用者が筆記面31に記載した文字列に対応したペン位置データ列Dに基づくストロークデータが順次生成されたら、そのストロークデータの時系列変化に基づき、電子ペン2の筆記方向が算出される(図11のステップSS110を参照)。そして、上記のようにして算出された算出筆記方向と、上述のようにして設定入力された設定筆記方向とが一致するか否かが判定される(図11のステップSS150及びステップSS170を参照)。算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しないと判定された場合には、本来のシート部側とは反対側のセンスコイルにおける受信結果に基づき、誤ったストロークデータが生成されたことになる。一方、算出筆記方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合には、本来のシート部側のセンスコイルにおける受信結果に基づき、正しいストロークデータが生成されたことになるので、このときのストロークデータがフラッシュメモリ72に蓄積される(図12のステップSS240を参照)。
【0144】
以上のように、本実施形態においては、表紙と背表紙とがほぼ近接した裏返し状態でノート30が使用される場合であっても、正しいストロークデータを確実に生成することができる。
【0145】
また、本実施形態では特に、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnと磁界との磁気誘導に対応してそれぞれ生成された、ペン位置データ列D1,D2のうち、算出筆記方向が設定筆記方向と一致したペン位置データ列Dがフラッシュメモリ72に記憶される。またこれと共に、ペン位置データ列D1,D2のうち、算出筆記方向が設定筆記方向と一致しないペン位置データ列Dがクリアされる(図11のステップSS190を参照)。すなわち、正しいストロークデータと誤ったストロークデータとの両方を生成した後、誤ったストロークデータが消去される。これにより、正しいストロークデータを確実に生成することができる。また、誤ったストロークデータを修正して用いる場合に比べ、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0146】
また、前述したように、誤ったストロークデータの生成が行われうるのは、表紙と背表紙とが折り曲げ線Tを介した裏返し状態(図9(a)及び図9(b)の状態)で近接していることが原因である。この場合、電子ペン2及び左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn間の距離と、電子ペン2及び右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYn間の距離との違いが少なく、使用者が筆記しているノート30の筆記面31に対応したセンスコイルが、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn及び右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnのいずれであるのかわからない。
【0147】
ここで、上記第1方向4に沿って左側シート部10L、折り曲げ部10T、右側シート部10Rの順で配列された見開き可能な形状の場合、左側シート部10Lと右側シート部10Rとは、折り曲げ部10Tの折り曲げ線Tに関して、線対称な位置関係となる。したがって、使用者の筆記動作に基づき算出される筆記方向のうち、折り曲げ線Tの方向すなわち上記第1方向Tと直交する方向に係わる筆記方向は、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnの受信結果に基づき算出される場合でも、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnの受信結果に基づき算出される場合でも同じ方向となる。これに対して、使用者の筆記動作に基づき算出される算出筆記方向のうち、折り曲げ線Tに直交する方向すなわち上記第1方向4に係わる算出筆記方向は、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnの受信結果に基づき算出される場合と、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnの受信結果に基づき算出される場合とで、互いに逆方向となる。
【0148】
そこで本実施形態では特に、図11のステップSS150及びステップSS170で、上記第1方向4における算出筆記方向と、設定筆記方向とが一致するか否かを判定する。これにより、正しい文字列の生成に係わるセンスコイルがいずれのセンスコイルであるのかを、確実に識別することができる。
【0149】
また、本実施形態では特に、上記のようにして生成されたペン位置データ列Dに基づくストロークデータを、当該ストロークデータに含まれる文字データごとに区別して認識する(図11のステップSS100を参照)。そして、このようにして認識される文字データの追加挙動に基づき、電子ペン2による筆記方向を算出する。すなわち、ストロークデータに含まれる文字データを切り出し、新たな文字データがどの向きに追加されていくかを認識することにより、筆記方向を確実に算出することができる。
【0150】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0151】
(A)誤ったストロークデータを反転して蓄積する場合
上記実施形態においては、算出筆記方向が設定筆記方向と一致しない誤ったストロークデータについては保存せずクリアしていたが、これに限られない。すなわち、誤ったストロークデータを鏡像変換処理して正しく修正する形で保存するようにしてもよい。
【0152】
本変形例において、座標検出装置3のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図17、図18、及び図19により順を追って説明する。なお、前述の図11〜図13と同等の手順には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0153】
図17、図18、及び図19において、この処理は、使用者が座標検出装置3の電源をオンした場合に開始される。まず、図17に示すように、CPU80aは、前述の図11と同様のステップSS10及びステップSS20を経て電子ペン2による筆記方向に関する設定入力を行った後、ステップSS25に移る。
【0154】
ステップSS25では、CPU80aは、後述の鏡像フラグFmを0に初期化する。その後のステップSS30及びステップSS40は、前述の図11と同様であり、前述の信号S14(図2参照)から一定値以上のコイル出力得られたら、ステップSS55に移る。
【0155】
ステップSS55では、CPU80aは、前述のステップSS30でセンスコイル部110L,110Rのスキャン処理を開始してから、最初に、一定値以上のコイル出力を得られた上記信号S14に対応したセンスコイル、言い換えれば、最初に、電子ペン2から発生された磁界を受信したセンスコイル、を含むセンスコイル部110が、左側センスコイル部110L及び右側センスコイル部110Rのうち、どちらであるかを検出する。そして、磁界を受信したセンスコイルを含むセンスコイル部110とは反対側のセンスコイル部110のスキャン処理を停止し、磁界を受信したセンスコイルを含むセンスコイル部110のスキャン処理のみ継続する。
【0156】
その後、ステップSS72で、CPU80aは、この時点でスキャン処理が実行されているセンスコイル部110のスキャン結果、すなわち当該センスコイル部110のセンスコイルでの磁界の受信結果に基づき、前述した(1)(2)の手法により電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、当該左側センスコイル部110Lの左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnでの磁界の受信結果に基づき、電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、当該右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき、電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。
【0157】
そして、ステップSS82に移り、CPU80aは、上記ステップSS72で算出された座標データ(x,y)を用いてペン位置データ列Dを生成する。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続されている場合には、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)を用いて、前述の第1ペン位置データ列D1を生成する。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続されている場合には、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に基づき算出された座標データ(x,y)を用いて、前述の第2ペン位置データ列D2を生成する。このようにして生成した第1ペン位置データ列D1若しくは第2ペン位置データ列D2は、マイコン80のRAM80cに一時的に保存される。
【0158】
その後、ステップSS92で、CPU80aは、上記ステップSS82でペン位置データ列Dが生成されてから所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過するまではステップSS92の判定が満たされず、上記ステップSS72及びステップSS82を繰り返し実行し、第1ペン位置データ列D1若しくは第2ペン位置データ列D2をRAM80cに蓄積する。そして、所定時間が経過したら、ステップSS92の判定が満たされて、ステップSS102に移る。
【0159】
ステップSS102では、CPU80aは、上記ステップSS82で生成されRAM80cに蓄積されたペン位置データ列Dに基づくストロークデータを、公知の適宜の手法を用いて、当該ストロークデータに含まれる文字データごとに区別して認識する。なお、このステップSS102の手順が、各請求項記載の文字認識手段として機能する。
【0160】
そして、ステップSS112に移り、CPU80aは、前述した手法により、上記ステップSS82で生成されRAM80cに蓄積されたペン位置データ列Dに基づくストロークデータに対応した算出筆記方向を算出する。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、第1ペン位置データ列D1に基づく第1ストロークデータに対応した第1算出筆記方向を算出する。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、第2ペン位置データ列D2に基づく第2ストロークデータに対応した第2算出筆記方向を算出する。なお、このステップSS112の手順が、各請求項記載の筆記方向算出手段として機能する。
【0161】
その後、ステップSS122で、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向に係わる書字方向WDが、上記第1方向4に沿った方向であるかどうかを判定する。算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向である場合には、ステップSS122の判定が満たされて、ステップSS132に移る。
【0162】
ステップSS132では、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向に係わる書字方向WDを判別する。すなわち、このステップSS132では、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる算出筆記方向である書字方向WDを判別しているのである。その後、後述のステップSS152に移る。
【0163】
一方、ステップSS122において、算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向でなかった場合、すなわち算出筆記方向係わる書字方向WDが上記第2方向5に沿った方向であった場合には、ステップSS122の判定が満たされず、ステップSS142に移る。
【0164】
ステップSS142では、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向に係わる行進行方向LDを判別する。すなわち、このステップSS142では、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる算出筆記方向である行進行方向LDを判別しているのである。
【0165】
そして、ステップSS152に移り、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる算出筆記方向と、前述のステップSS20で設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向と、前述の設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向と、前述の設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合、若しくは、第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS152の判定が満たされて、後述のステップSS212に移る。一方、第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しない場合、若しくは、第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しない場合には、ステップSS152の判定が満たされず、ステップSS172に移る。
【0166】
ステップSS172では、CPU80aは、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる算出筆記方向の反対方向と、前述のステップSS20で設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向の反対方向と、前述の設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続されている場合には、CPU80aは、上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向の反対方向と、前述の設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。
【0167】
ステップSS172において、第1方向4に係わる第1算出筆記方向の反対方向と設定筆記方向とが一致する場合、若しくは、第1方向4に係わる第2算出筆記方向の反対方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS172の判定が満たされて、ステップSS174に移る。
【0168】
ステップSS174では、CPU80aは、生成されるストロークデータが鏡像文字のデータとなっていることを表す鏡像フラグFmを1とする。その後、図18に示すステップSS212に移る。
【0169】
図18に示すように、ステップSS212では、CPU80aは、上記ステップSS72と同様に、この時点でスキャン処理が実行されているセンスコイル部110のスキャン結果に基づき、電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。
【0170】
そして、ステップSS222に移り、CPU80aは、上記ステップSS82と同様に、上記ステップSS212で算出された座標データ(x,y)を用いてペン位置データ列Dを生成する。
【0171】
その後のステップSS230は、前述の図12とほぼ同様であり、CPU80aは、使用者により前述のページ切替ボタンを用いたページ送り操作がなされたかどうかを判定する。使用者によるページ切り替え操作がなされない間はステップSS230の判定が満たされず、上記ステップSS212及びステップSS222を繰り返し実行し、第1ペン位置データ列D1若しくは第2ペン位置データ列D2をRAM80cに蓄積する。そして、使用者によるページ切り替え操作がなされたら、ステップSS230の判定が満たされて、ステップSS235に移る。
【0172】
ステップSS235では、CPU80aは、上記鏡像フラグFmが1であるかどうかを判定する。Fm=0である場合には、ステップSS235の判定が満たされず、ステップSS240Aに移る。
【0173】
ステップSS240Aでは、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存されたペン位置データ列Dを、フラッシュメモリ72に保存する。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続され、上記ステップSS152において第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合には、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存された第1ペン位置データ列D1を、フラッシュメモリ72に保存する。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続され、上記ステップSS152において第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合には、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存された第2ペン位置データ列D2を、フラッシュメモリ72に保存する。その後、上記図17のステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0174】
一方、ステップSS235において、Fm=1である場合には、ステップSS235の判定が満たされて、ステップSS237に移る。
【0175】
ステップSS237では、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存されたペン位置データ列Dに基づくストロークデータを、上記ステップSS112で算出された算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行う。具体的には、左側センスコイル部110Lのスキャン処理が継続され、上記ステップSS172において第1方向4に係わる第1算出筆記方向の反対方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合には、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存された第1ペン位置データ列D1に基づく第1ストロークデータを、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行う。一方、右側センスコイル部110Rのスキャン処理が継続され、上記ステップSS172において第1方向4に係わる第2算出筆記方向の反対方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合には、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存された第2ペン位置データ列D2に基づく第2ストロークデータを、上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行う。なお、このステップSS237の手順が、各請求項記載の変換手段として機能する。
【0176】
そして、ステップSS240Bに移り、CPU80aは、上記ステップSS237で鏡像変換処理後の第1ストロークデータ若しくは第2ストロークデータを、フラッシュメモリ72に保存する。その後、上記図17のステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0177】
図17に戻り、ステップSS172において、第1方向4に係わる第1算出筆記方向の反対方向と設定筆記方向とが一致しない場合、若しくは、第1方向4に係わる第2算出筆記方向の反対方向と設定筆記方向とが一致しない場合には、ステップSS172の判定が満たされず、図19に示すステップSS250に移る。
【0178】
図19に示すように、ステップSS250、ステップSS260、ステップSS270、ステップSS280、ステップSS290は、前述の図13と同様である。ステップSS290において、CPU80aが所定のエラー画面用の表示信号を生成し、表示部76へ出力したら、ステップSS295に移る。
【0179】
ステップSS295では、CPU80aは、前述のステップSS30と同様に、センスコイル部110L,110Rのスキャン処理を開始すなわち再開する。
【0180】
その後のステップSS300、ステップSS310、ステップSS320、及びステップSS330は、前述の図13と同様であるので、説明を省略する。なお、このフローは、例えば使用者が座標検出装置3の電源をオフにした場合に終了する。
【0181】
なお、上記において、図17のステップSS30及びステップSS72と、図18のステップSS212と、図19のステップSS295及びステップSS300との手順が、各請求項記載の位置取得手段として機能する。また、図17のステップSS82と、図16のステップSS222と、図19のステップSS310との手順が、ストロークデータ生成手段として機能する。さらに、図17のステップSS152及びステップSS172の手順が、筆記方向判定手段として機能する。またさらに、図18のステップSS240A及びステップSS240Bの手順が、データ記憶手段として機能する。
【0182】
ここで、前述したように、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnでの磁界の受信結果に対応して生成された上記設定筆記方向と一致しない第1ペン位置データ列D1(第1ストロークデータ)、若しくは、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnでの磁界の受信結果に対応して生成された上記設定筆記方向と一致しない第2ペン位置データ列D2(第2ストロークデータ)は、本来使用者が筆記した文字列の鏡像文字のデータとなっている。本変形例においては、上記に対応し、上記のように算出筆記方向が設定筆記方向と一致しないペン位置データ列を、鏡像変換処理する(図18のステップSS237を参照)。これにより、誤ったストロークデータを削除せず正しく修正する形で、正しいストロークデータを確実に生成することができる。
【0183】
(B)ページ切り替えを自動で行う場合
以上においては、使用者によりページ切替ボタンを用いたページ送り操作がなされることによって、電子ファイルのページを切り替えていたが、これに限られず、ページ移行を検出して、電子ファイルのページを切り替えるようにしてもよい。
【0184】
本変形例において、座標検出装置3のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図20、図21、図22、及び図23により順を追って説明する。なお、前述の図11〜図13と同等の手順には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0185】
図20、図21、図22、及び図23において、この処理は、使用者が座標検出装置3の電源をオンした場合に開始される。まず、図20に示すように、CPU80aは、ステップSS10′で、前述のエラー変数Ceを0に初期化するとともに、電子ファイルのページ番号を表す変数Pn(以下適宜、単に「ページ番号Pn」と称する)を1に初期化する。
【0186】
その後のステップSS20、ステップSS30、及びステップSS40は、前述の図11と同様である。ステップSS40において、前述の信号S14から一定値以上のコイル出力が得られたら、ステップSS50に移る。
【0187】
ステップSS50は、前述の図11と同様であり、CPU80aは、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとの両方で、電子ペン2から発生された磁界が受信されたかどうかを判定する。ステップSS50において、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとのうち、どちらか一方のみで、電子ペン2から発生された磁界が受信された場合には、ステップSS50の判定が満たされず、ステップSS60に移る。
【0188】
ステップSS60は、前述の図11と同様であり、CPU80aは、電子ペン2から発生された磁界が受信されたセンスコイル側の筆記面31を、前述のアクティブページとして認識する。そして、図21に示すステップSS62に移る。
【0189】
図21に示すように、ステップSS62では、CPU80aは、上記ステップSS60でアクティブページとして認識されなかった筆記面31側のセンスコイル部110のスキャン処理を停止し、上記ステップSS60でアクティブページとして認識された筆記面31側のセンスコイル部110のスキャン処理のみ継続する。
【0190】
その後、ステップSS64で、CPU80aは、上記ステップSS60でアクティブページとして認識された筆記面31側のセンスコイル部110のスキャン結果、すなわち当該センスコイル部110のセンスコイルでの磁界の受信結果に基づき、前述した(1)(2)の手法により電子ペン2の座標データ(x,y)を算出する。
【0191】
そして、ステップSS66に移り、CPU80aは、上記ステップSS64で算出された座標データ(x,y)を用いて、前述のペン位置データ列Dを生成して、RAM80cに一時的に保存する。
【0192】
ステップSS68では、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存されたペン位置データ列Dを、フラッシュメモリ72に保存する。その後、上記図20に示すステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0193】
図20に戻り、ステップSS50において、左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnと、右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnとの両方で、電子ペン2から発生された磁界が受信された場合には、ステップSS50の判定が満たされて、ステップSS70に移る。
【0194】
ステップSS70及びステップSS80は、前述の図11と同様である。ステップSS80において、前述のステップSS70で算出された座標データ(x,y)を用いてペン位置データ列D1,D2を生成して、マイコン80のRAM80cに一時的に保存したら、ステップSS85に移る。
【0195】
ステップSS85では、CPU80aは、上記ステップSS80で生成されたペン位置データ列D1,D2、言い換えれば、第1ストロークデータ及び第2ストロークデータに対し、電子ファイルの各ページに対応したページ番号Pnを付与する。なお、このステップSS85の手順が、各請求項記載のページ付与手段として機能する。
【0196】
その後のステップSS90、ステップSS100、ステップSS110は、前述の図11と同様である。ステップSS110において、第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向を算出したら、ステップSS113に移る。
【0197】
ステップSS113では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された算出筆記方向に係わる書字方向WDが、上記第1方向4に沿った方向であるかどうかを判定する。算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向である場合には、ステップSS113の判定が満たされて、ステップSS114に移る。
【0198】
ステップSS114では、CPU80aは、今回のステップSS110で算出された算出筆記方向に係わる書字方向WDが、前回のステップSS110で算出された算出筆記方向に係わる書字方向WDと逆方向であるか否かを判定する。これは実質的には、ステップSS110で算出された第1方向4に係わる筆記方向が変化したか否かを判定することに相当する。今回の算出筆記方向に係わる書字方向WDが前回の算出筆記方向に係わる書字方向WDと同一の方向である場合には、筆記面31すなわちページ移行が行われていないとみなされ、ステップSS114の判定が満たされず、上記ステップSS70に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、今回の算出筆記方向に係わる書字方向WDが前回の算出筆記方向に係わる書字方向WDと逆方向である場合には、ページ移行が行われたとみなされ、ステップSS114の判定が満たされて、後述のステップSS117に移る。
【0199】
一方、ステップSS113において、算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向でなかった場合には、ステップSS113の判定が満たされず、ステップSS115に移る。
【0200】
ステップSS115では、CPU80aは、上記ステップSS110で算出された算出筆記方向に係わる行進行方向LDが、上記第1方向4に沿った方向であるかどうかを判定する。算出筆記方向に係わる行進行方向LDが第1方向4に沿った方向でない場合には、ステップSS115の判定が満たされず、後述の図23のステップSS250に移る。一方、算出筆記方向に係わる行進行方向LDが第1方向4に沿った方向である場合には、ステップSS115の判定が満たされて、ステップSS116に移る。
【0201】
ステップSS116では、CPU80aは、今回のステップSS110で算出された算出筆記方向に係わる行進行方向LDが、前回のステップSS110で算出された算出筆記方向に係わる行進行方向LDと逆方向であるか否かを判定する。これは実質的には、ステップSS110で算出された第1方向4に係わる筆記方向が変化したか否かを判定することに相当する。今回の算出筆記方向に係わる行進行方向LDが前回の算出筆記方向に係わる行進行方向LDと同一の方向である場合には、ページ移行が行われていないとみなされ、ステップSS116の判定が満たされず、上記ステップSS70に戻り、同様の手順を繰り返す。一方、今回の算出筆記方向に係わる行進行方向LDが前回の算出筆記方向に係わる行進行方向LDと逆方向である場合には、ページ移行が行われたとみなされ、ステップSS116の判定が満たされて、ステップSS117に移る。
【0202】
ステップSS117では、CPU80aは、上記ページ番号Pnに1を加える。これは実質的には、上記ステップSS85で付与されるページ番号を切り替えるように、制御することに相当する。これにより、この後に生成されるペン位置データ列Dは、電子ファイルにおける次のページへ記録される。その後、図22に示すステップSS118に移る。なお、このステップSS117の手順が、各請求項記載のページ切替手段に相当する。
【0203】
図22に示すように、ステップSS118では、CPU80aは、前述した手法により、上記ステップSS114又はステップSS116で筆記方向が変化したと判定される前までに、上記ステップSS80で生成されRAM80cに蓄積されたペン位置データ列D1,D2、すなわち当該筆記方向が変化する前までのペン位置データ列D1,D2について、当該第1ペン位置データ列D1に基づく第1ストロークデータに対応した第1算出筆記方向を算出すると共に、当該第2ペン位置データ列D2に基づく第2ストロークデータに対応した第2算出筆記方向を算出する。
【0204】
そして、ステップSS124に移り、CPU80aは、上記ステップSS118で算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが、上記第1方向4に沿った方向であるかどうかを判定する。第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向である場合には、ステップSS124の判定が満たされて、ステップSS134に移る。
【0205】
ステップSS134では、CPU80aは、上記ステップSS118で算出された、第1算出筆記方向に係わる書字方向WD、及び、第2算出筆記方向に係わる書字方向WDをそれぞれ判別する。すなわち、このステップSS134では、上記ステップSS118で算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向である書字方向WDをそれぞれ判別しているのである。その後、後述のステップSS154に移る。
【0206】
一方、ステップSS124において、第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが第1方向4に沿った方向でなかった場合、すなわち第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向に係わる書字方向WDが上記第2方向5に沿った方向であった場合には、ステップSS124の判定が満たされず、ステップSS144に移る。
【0207】
ステップSS144では、CPU80aは、上記ステップSS118で算出された、第1算出筆記方向に係わる行進行方向LD、及び、第2算出筆記方向に係わる行進行方向LDをそれぞれ判別する。すなわち、このステップSS144では、上記ステップSS118で算出された第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向である行進行方向LDをそれぞれ判別しているのである。
【0208】
そして、ステップSS154に移り、CPU80aは、上記ステップSS118で算出された第1算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向と、前述のステップSS20で設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS154の判定が満たされて、ステップSS164に移る。
【0209】
ステップSS164では、CPU80aは、左側シート部10L側の左筆記面31Lを、前述のアクティブページとして認識する。その後、後述のステップSS194に移る。
【0210】
一方、ステップSS154において、第1方向4に係わる第1算出筆記方向と設定筆記方向とが一致しない場合には、ステップSS154の判定が満たされず、ステップSS174に移る。
【0211】
ステップSS174では、CPU80aは、上記ステップSS118で算出された第2算出筆記方向のうち、上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向と、前述のステップSS20で設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する。第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS174の判定が満たされて、ステップSS184に移る。
【0212】
ステップSS184では、CPU80aは、右側シート部10R側の右筆記面31Rを、前述のアクティブページとして認識する。
【0213】
その後、ステップSS194で、CPU80aは、この時点でRAM80cに蓄積されているペン位置データ列D1,D2のうち、上記ステップSS164又はステップSS184でアクティブページとして認識されなかったノンアクティブページ側のセンスコイルに対応したペン位置データ列Dをクリアする。具体的には、上記ステップSS154において上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、左筆記面31Lがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、反対側の右筆記面31R側の右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnに対応した第2ペン位置データ列D2をクリアする。一方、上記ステップSS174において上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、右筆記面31Rがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、反対側の左筆記面31L側の左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnに対応した第1ペン位置データ列D1をクリアする。このステップSS194の手順が、各請求項記載のデータ消去手段として機能する。
【0214】
そして、ステップSS244に移り、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存されたペン位置データ列D、すなわち上記ステップSS114又はステップSS116で筆記方向が変化したと判定される前までにRAM80cに保存されたペン位置データ列Dを、フラッシュメモリ72に保存する。具体的には、上記ステップSS154において上記第1方向4に係わる第1算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、左筆記面31Lがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、当該第1算出筆記方向に対応した、すなわち当該左筆記面31L側の左側センスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYnに対応した第1ペン位置データ列D1をフラッシュメモリ72に保存する。一方、上記ステップSS174において上記第1方向4に係わる第2算出筆記方向が設定筆記方向と一致すると判定され、右筆記面31Rがアクティブページとして認識された場合には、CPU80aは、当該第2算出筆記方向に対応した、すなわち当該右筆記面31R側の右側センスコイルRX1〜RXm,RY1〜RYnに対応した第2ペン位置データ列D2をフラッシュメモリ72に保存する。そして、上記図20に示すステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。なお、このステップSS244の手順が、各請求項記載のデータ記憶手段として機能する。
【0215】
一方、ステップSS174において、第1方向4に係わる第2算出筆記方向と設定筆記方向とが一致する場合には、ステップSS174の判定が満たされず、図23に示すステップSS250に移る。
【0216】
ステップSS250、ステップSS260、ステップSS270、ステップSS280、ステップSS290、ステップSS300、ステップSS310は、前述の図13と同様である。ステップSS310において、前述のステップSS300で算出された座標データ(x,y)を用いてペン位置データ列D1,D2を生成し、RAM80cに一時的に保存したら、ステップSS334に移る。
【0217】
ステップSS334では、CPU80aは、この時点で生成済みでかつRAM80cに保存されたペン位置データ列D1,D2を、フラッシュメモリ72に保存する。その後、上記図20に示すステップSS30に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0218】
なお、上記において、図20のステップSS30及びステップSS70と、図21のステップSS64と、図23のステップSS300との手順が、各請求項記載の位置取得手段として機能する。また、図20のステップSS80と、図21のステップSS66と、図23のステップSS310との手順が、ストロークデータ生成手段として機能する。さらに、図20のステップSS110と、図22のステップSS118との手順が、筆記方向算出手段として機能する。またさらに、図22のステップSS154及びステップSS174の手順が、筆記方向判定手段として機能する。そして、図20のステップSS114及びステップSS116の手順が、筆記変化判定手段として機能する。
【0219】
ここで、使用者がノート30の筆記面31に対し文字列の筆記を行う際には、例えば、左筆記面31Lのページにおいて文字列を記載していき、当該ページが文字列で埋まり記載箇所がなくなった場合には、右筆記面31Rのページに文字列を新たに記載していくのが通常である。したがって、順次生成されフラッシュメモリ72に保存されるペン位置データ列D(ストロークデータ)も、上記ノート30と同様に、ページごとに整理可能な態様とすると使用者にとって便利である。
【0220】
本変形例では、上記に対応して、ペン位置データ列Dに対しページ番号Pnを付与する。ここで、使用者が上記裏返し状態として使用しつつ実際の筆記が1つのページから次のページに移った場合、ペン位置データ列Dの上記第1方向4に係わる筆記方向は、当該ページ以降時に逆方向に切り替わる。そこで、本変形例では、図20のステップSS114及びステップSS116で、このような挙動に対応し、第1方向4に係わる算出筆記方向が変化したか否かを判定する。第1方向4に係わる筆記方向が変化したと判定された場合には、上記のような実際の筆記におけるページ移行が行われたとみなし、ペン位置データ列Dに付与するページ番号Pnが切り替えられる。
【0221】
以上のようにして、本変形例においては、筆記動作に伴うペン位置データ列Dの変化挙動を利用し、ペン位置データ列Dに付与されるページ番号を自動的に切り替えることができる。
【0222】
また特に、図20のステップSS117でページ番号の切り替えの制御が行われたときに、上記筆記方向が変化する前までのペン位置データ列D(ストロークデータ)について、筆記方向の算出を行う(図22のステップSS118を参照)。その後、その算出された、上記筆記方向が変化する前までのペン位置データ列Dの算出筆記方向と、前述の設定筆記方向とが一致するか否かを判定する。そして、算出筆記方向と設定筆記方向とが一致すると判定された場合に、当該算出筆記方向に対応した、上記筆記方向が変化する前までのペン位置データ列Dをフラッシュメモリ72に保存する。これにより、ペン位置データ列Dに付与するページ番号が切り替えられるごと、すなわちいわゆる改ページ動作がされるごとに、正しいストロークデータを生成して保存することができる。またこの結果、全ページ分のストロークデータを一度に処理する場合と異なり、あるページと次のページとで筆記方向が異なる場合、すなわち、筆記方向が互いに異なるページがノート30中に混在する場合であっても、各ページごとにストロークデータを正しい向きで処理することができる。
【0223】
(C)その他
なお、以上においては、ペン位置データ列Dに基づくストロークデータに含まれる文字データを切り出して、最初に切り出された文字データの中心座標と、次に切り出された文字データの中心座標とを比較して、電子ペン2の筆記方向を算出していたが、これに限られない。すなわち、最初に切り出された文字データの中心座標と、直前の文字データの中心座標からx座標又はy座標が大きく変化した文字データ(2行目の最初の文字に対応した文字データ)の、直前の文字データ(1行目の最後の文字に対応した文字データ)の中心座標とを比較して、電子ペン2の筆記方向を算出するようにしてもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0224】
なお、以上においては、算出された電子ペン2の座標データに基づき生成されたペン位置データ列Dを、座標検出装置3が、電子ファイルにおける各ページに記録したが、これに限られない。すなわち、電子ファイルの生成は行わず、単にペン位置データ列Dに対し、ページ番号のみを割り当てて付与し、フラッシュメモリ72に記憶するようにしてもよい。この場合は、電子ファイルの生成は、座標検出装置3に接続される適宜の外部装置によって行えば足りる。
【0225】
また、以上においては、電子ペン2が自己電源としての電池43を備え、この電池43の起電力によりLC発振回路41が発生した磁界をセンスコイルLX1〜LXm,LY1〜LYn,RX1〜RXm,RY1〜RYnで受信し、電子ペン2の座標データの算出を行ったが、これに限られない。すなわち、電子ペン側に自己電源を設けず、装置側のコイルからの磁気誘導により電子ペンの共振回路に起電力を誘起して電子ペンのコンデンサに電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を用いて電子ペンが発生した磁界を装置側のコイルで受信し、座標データの算出すなわち位置検出を行ってもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0226】
なお、以上において、図3中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0227】
また、図11、図12、図13等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0228】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0229】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0230】
1 手書き入力装置(電子筆記装置)
2 電子ペン(電子筆記具)
3 座標検出装置
4 第1方向
5 第2方向
10 シート体
10L 左側シート部
10M 折り曲げ部
10R 右側シート部
30 ノート(被筆記体)
31L 左筆記面
31R 右筆記面
LX1〜LXm,LY1〜LYn 左側センスコイル(第1コイル、コイル)
LD 行進行方向
RX1〜RXm,RY1〜RYn 右側センスコイル(第2コイル、コイル)
T 折り曲げ中央線
WD 書字方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略ノート形状の被筆記体を覆うように所定の第1方向に見開き可能な形状に構成されるとともに、前記第1方向の中央部に位置し前記第1方向と直交する第2方向に沿った折り曲げ中心線を有する折り曲げ部、を備えたシート体と、
前記被筆記体への筆記内容に対応したデータ入力を行うための、位置検出用の筆記信号を生成して送信する電子筆記具と、
前記電子筆記具による筆記方向に関する設定入力を行うための筆記方向設定手段と、
前記電子筆記具から送信された前記筆記信号を受信可能な複数のコイルと、
前記複数のコイルでの所定値以上の前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段で取得された前記位置情報を用いて、前記電子筆記具による前記被筆記体への記載に対応したストロークデータを生成するストロークデータ生成手段と、
前記ストロークデータ生成手段により生成された前記ストロークデータの時系列変化に基づき、前記電子筆記具による筆記方向を算出する筆記方向算出手段と、
前記筆記方向算出手段により算出された算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する筆記方向判定手段と、
前記筆記方向判定手段により、前記算出筆記方向と前記設定筆記方向とが一致すると判定された場合、前記算出筆記方向に対応したストロークデータを蓄積する、データ記憶手段と
を有することを特徴とする電子筆記装置。
【請求項2】
前記シート体は、
前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の一方側に設けられた第1シート部と、
前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の他方側に設けられた第2シート部と、
を備え、
前記複数のコイルは、
前記第1シート部に設けられた第1コイルと、
前記第2シート部に設けられた第2コイルと
を含み、
前記位置取得手段は、
前記第1コイル及び前記第2コイルでの前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報をそれぞれ取得し、
前記ストロークデータ生成手段は、
前記第1コイル及び前記第2コイルでの前記筆記信号の受信に基づき前記位置取得手段で取得された前記位置情報をそれぞれ用いて、前記第1コイルに対応した第1ストロークデータと前記第2コイルに対応した第2ストロークデータとを生成し、
前記筆記方向算出手段は、
前記ストロークデータ生成手段により生成された前記第1ストロークデータ及び前記第2ストロークデータにそれぞれ対応した第1算出筆記方向及び第2算出筆記方向を算出し、
前記筆記方向判定手段は、
前記筆記方向算出手段により算出された前記第1算出筆記方向及び前記第2算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かをそれぞれ判定し、
前記データ記憶手段は、
前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第1ストロークデータを蓄積し、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第2ストロークデータを蓄積し、
かつ、
前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第2ストロークデータを消去処理するとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第1ストロークデータを消去処理する、データ消去手段
を設けたことを特徴とする請求項1記載の電子筆記装置。
【請求項3】
前記シート体は、
前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の一方側に設けられた第1シート部と、
前記第1方向に沿って前記折り曲げ部の他方側に設けられた第2シート部と、
を備え、
前記複数のコイルは、
前記第1シート部に設けられた第1コイルと、
前記第2シート部に設けられた第2コイルと
を含み、
前記位置取得手段は、
前記第1コイルでの前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報を取得するか、若しくは、前記第2コイルでの前記筆記信号の受信結果に基づき、前記電子筆記具の位置情報を取得し、
前記ストロークデータ生成手段は、
前記第1コイルでの前記筆記信号の受信に基づき前記位置取得手段で取得された前記位置情報を用いて、前記第1コイルに対応した第1ストロークデータを生成するか、若しくは、前記第2コイルでの前記筆記信号の受信に基づき前記位置取得手段で取得された前記位置情報を用いて、前記第2コイルに対応した第2ストロークデータを生成し、
前記筆記方向算出手段は、
前記ストロークデータ生成手段により生成された前記第1ストロークデータに対応した第1算出筆記方向を算出するか、若しくは、前記ストロークデータ生成手段により生成された前記第2ストロークデータに対応した第2算出筆記方向を算出し、
前記筆記方向判定手段は、
前記筆記方向算出手段により算出された前記第1算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定するか、若しくは、前記筆記方向算出手段により算出された前記第2算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定し、
かつ、
前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記第1ストロークデータを前記第1算出筆記方向のうち前記第1方向に係わる前記第1算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行うとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記第2ストロークデータを前記第2算出筆記方向のうち前記第1方向に係わる前記第2算出筆記方向に沿って反転する鏡像変換処理を行う、変換手段
を設け、
前記データ記憶手段は、
前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第1ストロークデータを蓄積するとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致すると判定された場合、前記第2ストロークデータを蓄積し、
前記筆記方向判定手段により前記第1算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記変換手段による鏡像変換処理後の前記第1ストロークデータを蓄積するとともに、前記筆記方向判定手段により前記第2算出筆記方向が前記設定筆記方向と一致しないと判定された場合、前記変換手段による鏡像変換処理後の前記第2ストロークデータを蓄積する
ことを特徴とする請求項1記載の電子筆記装置。
【請求項4】
前記筆記方向判定手段は、
前記筆記方向算出手段により算出された前記算出筆記方向のうち前記第1方向に係わる前記算出筆記方向と、前記設定筆記方向とが、一致するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の電子筆記装置。
【請求項5】
前記ストロークデータ生成手段により生成される前記ストロークデータに対し、ページ番号を付与するページ付与手段と、
前記筆記方向算出手段により算出された、前記第1方向に係わる前記筆記方向が変化したか否かを判定する筆記変化判定手段と、
前記筆記変化判定手段により前記第1方向に係わる筆記方向が変化したと判定された場合、前記付与されるページ番号を切り替えるように、前記ページ付与手段を制御する、ページ切替手段と、
を有することを特徴とする請求項4記載の電子筆記装置。
【請求項6】
前記ページ切替手段により前記ページ番号の切り替えの制御が行われたとき、前記筆記方向算出手段は、当該筆記方向が変化する前までの前記ストロークデータについて、前記筆記方向の算出を行い、
前記筆記方向判定手段は、
前記筆記方向算出手段により算出された、当該筆記方向が変化する前までの前記ストロークデータの算出筆記方向と、前記筆記方向設定手段により設定された設定筆記方向とが、一致するか否かを判定し、
前記データ記憶手段は、
前記筆記方向判定手段により、前記算出筆記方向と前記設定筆記方向とが一致すると判定された場合、前記算出筆記方向に対応した、前記筆記方向が変化する前までのストロークデータを蓄積する
ことを特徴とする請求項5記載の電子筆記装置。
【請求項7】
前記ストロークデータ生成手段により生成された前記ストロークデータを、当該ストロークデータに含まれる文字データごとに区別して認識する文字認識手段を有し、
前記筆記方向算出手段は、
前記文字認識手段により認識される前記文字データの追加挙動に基づき、前記電子筆記具による筆記方向を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の電子筆記装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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