説明

電子装置

【課題】1チップマイコンにCMOSメモリを接続した電子装置において、1チップマイコンのアドレスバスのプルアップ抵抗による消費電力を低減する。
【解決手段】リセット信号がラッチ7に入力されると、そのローレベル出力によりトランジスタTR0〜TR20がオンするので、バス2及びラインLiはプルアップ抵抗RA0乃至RA20によりプルアップされる。アドレスデコーダ5で生成されたCS信号がラッチ7に入力されると、ラッチ7のハイレベル出力によりトランジスタTR0〜TR20がオフするので、バス2及びラインLiは電源から切り離される。CS信号生成後はプルアップ抵抗RA0乃至RA20の電流は0になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルチップマイクロコンピュータ(以下、1チップマイコンという)にCMOSメモリを接続した電子装置に関し、詳細には、1チップマイコンがリセットされ、アドレスバスがハイインピーダンスになったときのアドレスバスの電位を固定するために設けられているプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗による消費電力を低減できる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1チップマイコンは、CPU、RAM、ROM、I/O(入出力装置)を1チップ化してあるので、応用装置を安価に製造できること、実装面積を小さくできることなどの特徴がある。また、1チップマイコンにおいては、例えば内部のメモリの容量が不十分な場合に外部にメモリを接続することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
このような1チップマイコンの外部にメモリを接続する構成として、文献に記載されたものではないが、図3に示すように、1チップマイコンにROMを接続した電子装置がある。この電子装置は、1チップマイコン1及びROM3を備えており、1チップマイコン1のアドレス出力端子A0〜A19とROM3のアドレス入力端子AD0〜AD19とがアドレスバス2により接続されている。また、1チップマイコン1で生成されたアドレスをデコードしてCS(チップセレクト)信号を生成し、ROM3のCS端子に供給するアドレスデコーダ5を備えている。アドレスデコーダ5のCE(チップ・イネーブル)端子には、1チップマイコン1で生成されたAS(アドレス・ストローブ)がAS端子からラインLiを介して入力される。
【0004】
さらに、アドレスバス2の個々のラインはプルアップ抵抗RA0乃至RA19を介して電源に接続されている。また、1チップマイコン1のAS端子とアドレスデコーダ5のCE端子とを結ぶラインLiもプルアップ抵抗RA20を介して電源に接続されている。これらのプルアップ抵抗RA0乃至RA20は、1チップマイコン1がリセット信号の入力によりリセットされ、その全アドレス出力端子及びAS端子がハイインピーダンスとなったとき、アドレスバス2の電位及びラインLiの電位を固定するために設けられたものである。これにより、アドレスバス2及びラインLiがハイインピーダンスとなり、ROM3及びアドレスデコーダ5を構成するCMOSデバイスの入力がオープンとなることによる誤動作(ラッチアップ)を防止している。
【0005】
しかしながら、図3に示す構成の場合、1チップマイコン1のリセットが完了し、アドレス出力端子A0〜A19のレベルがアドレスに対応してハイ又はローのレベルになると、電源からプルアップ抵抗RA0乃至RA19を通り、ローレベルの端子に電流が流れるため、プルアップ抵抗にて電力が消費され続けることになり、無駄な電力が消費される。同様にASのレベルがローになると、電源からプルアップ抵抗RA20を通り、AS端子に電流が流れるため、無駄な電力が消費される。
【0006】
【特許文献1】特開平5−12456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、1チップマイコンにCMOSメモリを接続した電子装置において、1チップマイコンがリセットされ、1チップマイコンのアドレスバスがハイインピーダンスとなったときのアドレスバスの電位を固定するために設けられたプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗による消費電力を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、1チップマイコンと、該1チップマイコンに接続されたCMOSメモリと、前記1チップマイコンのアドレスバスと電源又はグランドとの間に接続された抵抗及びスイッチング素子の直列回路と、前記アドレスバスがハイインピーダンスのときに前記スイッチング素子をオンにし、前記アドレスバスがハイインピーダンスでないときに前記スイッチング素子をオフにする制御手段とを備えたことを特徴とする電子装置である。
請求項2の発明は、請求項1記載の電子装置において、前記制御手段は、前記1チップマイコンに対するリセット信号に基づいて前記アドレスバスがハイインピーダンスであると判断し、前記CMOSメモリに対するチップセレクト信号に基づいて前記アドレスバスがハイインピーダンスでないと判断することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2記載の電子装置において、前記1チップマイコンはリセットが解除されたときに前記アドレスバスに最初に出力するアドレス信号のレベルが全て“ロー”であり、前記直列回路はアドレスバスとグランドとの間に接続されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2記載の電子装置において、 前記1チップマイコンはリセットが解除されたときに前記アドレスバスに最初に出力するアドレス信号のレベルが全て“ハイ”であり、前記直列回路はアドレスバスと電源との間に接続されていることを特徴とする。
【0009】
(作用)
本発明によれば、1チップマイコンのアドレスバスがハイインピーダンスのときは、スイッチング素子がオンになることで、アドレスバスが抵抗を介して電源又はグランドに接続されるため、アドレスバスの電位が固定され、1チップマイコンのアドレスバスがハイインピーダでないときは、スイッチング素子がオフになることで、アドレスバスと電源又はグランドとは電気的に遮断される。
また、1チップマイコンのリセットが解除され、アドレス信号のレベルが全て“ロー”になるタイミングより、スイッチング素子がオフになりアドレスバスとグランドとが電気的に遮断されるタイミングが遅れても、アドレスバスの電位とグランドの電位とが等しいため、アドレスバスから抵抗及びスイッチング素子の直列回路を通ってグランドに流れる電流はゼロである。同様に、アドレス信号のレベルが全て“ハイ”になるタイミングより、スイッチング素子がオフになりアドレスバスと電源とが電気的に遮断されるタイミングが遅れても、アドレスバスの電位と電源電位とが等しいため、電源から抵抗及びスイッチング素子の直列回路を通ってアドレスバスに流れる電流はゼロである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1チップマイコンにCMOSメモリを接続した電子装置において、1チップマイコンがリセットされ、アドレスバスがハイインピーダンスとなったときのアドレスバスの電位を固定するために設けられた抵抗による消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態の電子装置の構成のブロック及び回路構成を示す図である。この図において、図3と同一又は対応する構成要素には図3と同じ符号を付した。
【0012】
本実施形態の電子装置では、プルアップ抵抗RA0乃至RA20の各々と電源との間にスイッチングトランジスタTR0乃至TR20を接続した。詳細には、スイッチングトランジスタTR0乃至TR20のエミッタを電源に接続し、コレクタをプルアップ抵抗RA0乃至RA20に接続した。つまり、アドレスバス2の個々のラインと電源との間、及び1チップマイコン1のAS端子とアドレスデコーダ5のCE端子とを結ぶラインLiと電源との間に、プルアップ抵抗RA0乃至RA20とスイッチングトランジスタTR0乃至TR20の直列回路が接続されている。
【0013】
また、スイッチングトランジスタTR0乃至TR20のベースに抵抗RB0乃至RB20を接続し、ラッチ7の出力をそれらの抵抗を介してスイッチングトランジスタTR0乃至TR20のベースに供給することにより、スイッチングトランジスタTR0乃至TR20をオン/オフ制御するように構成した。
【0014】
ラッチ7には、外部で生成される1チップマイコン1のリセット信号と、アドレスデコーダ5で生成されるROM3のCS信号とが入力される。そして、リセット信号が入力されたときにローレベルを保持し、リセット信号が入力された後にROM3のCS信号が入力されたときにハイレベルを保持し、それらの保持レベルを抵抗RB0乃至RB20を介してトランジスタTR0乃至TR20のベースに供給する。
【0015】
以上の構成以外は図3に示す従来装置と同じである。次に、図2に示すタイミングチャートを参照しながら、本実施形態の電子装置において、1チップマイコン1がリセットされてから、ROM3にアクセスするまでの動作を説明する。ここで、1チップマイコン1のCPUのリセットベクタ、即ちリセットが解除されたときにCPUが最初にアクセスするROM3のアドレスは “FFFFh”である。
【0016】
まずユーザによるリセット指示の操作などにより1チップマイコン1及びラッチ7にリセット信号が入力される。1チップマイコン1はリセット信号の入力によりリセットされると、そのアドレス出力端子A0〜A19はハイインピーダンスとなる。ラッチ7はリセット信号が入力されたときに“ロー”レベルとなり、そのレベルを保持してスイッチングトランジスタTR0乃至TR20のベースに供給するので、スイッチングトランジスタTR0乃至TR20はオンになる。従って、図1におけるトランジスタと抵抗からなる回路は図3における抵抗からなる回路と等価となるから、アドレスバス2の各ライン、及びラインLiの電位は固定される。これにより、ROM3及びアドレスデコーダ5を構成するCMOSデバイスの入力がオープンとなることによる誤動作(ラッチアップ)を防止することができる。
【0017】
リセットの後、時刻t0にてリセットが解除されると、1チップマイコン1はリセットベクタであるROM3の “FFFFh”のアドレスにアクセスする。従って、アドレス出力端子A0〜A19からアドレスバス2の各ラインに出力されるアドレス信号のレベルは、時刻t1に全て電源電位と同じ“ハイ”となる。また、AS端子から出力されるASのレベルは時刻t2に“ロー”に変化する。
【0018】
このとき、時刻t2は時刻t1よりアドレス有効期間だけ遅れる。アドレスデコーダ5はASが“ロー”のときにROM3のCS信号を生成するので、CS信号が“ハイ”レベルに立ち上がるタイミング及びラッチ7の出力が“ハイ”レベルに立ち上がるタイミングも時刻t2となる。スイッチングトランジスタTR0乃至TR20は、ラッチ7の出力が“ハイ”レベルのときにオフとなるので、時刻t2になるまではオンになっている。
【0019】
従って、時刻t1からt2までの期間は、スイッチングトランジスタTR0乃至TR19はオンであるため、アドレスバス2の各ラインと電源とは電気的に接続されている。しかし、アドレスバス2の各ラインのレベルは電源電位と同じ“ハイ”であるから、電源からプルアップ抵抗RA0乃至RA19及びスイッチングトランジスタTR0乃至TR19の直列回路を通ってアドレスバス2に流れる電流はゼロである。
【0020】
時刻t2以降はスイッチングトランジスタTR0乃至TR20はオフになる。その後、時刻t3になると、ROM3内のプログラムを読み出すため、所定のアドレスにアクセスする。このとき、1チップマイコン1のアドレス出力端子A0〜A19から出力されるアドレス信号のレベルは、1チップマイコン1がアクセスするROM3のアドレスに応じて“ハイ”又は“ロー”のレベルに変化するため、アドレスバス2と電源との間には電位差が発生する。しかしながら、既にスイッチングトランジスタTR0乃至TR19はオフになっており、電源とアドレスバス2とは電気的に遮断されているので、電源からプルアップ抵抗RA0乃至RA19及びスイッチングトランジスタTR0乃至TR19の直列回路を通ってアドレスバス2に流れる電流はゼロである。
【0021】
なお、ラインLiについては、ASのレベルが“ハイ”になるタイミングが時刻t2であり、スイッチングトランジスタTR20がオフになるタイミングと同じであるから、時刻t2より前の期間は問題にならない。
【0022】
このように、本実施形態によれば、1チップマイコン1のリセットが解除され、スイッチングトランジスタTR0乃至TR20がオフになった後には、プルアップ抵抗RA0乃至RA20に流れる電流はゼロになるため、1チップマイコン1のリセットが解除された後にもプルアップ抵抗RA0乃至RA20に電流が流れ続ける従来装置と比べると、プルアップ抵抗による無駄な消費電力を低減することができる
【0023】
また、本実施形態によれば、1チップマイコン1のリセットベクタが “FFFFh”に設定されており、アドレスバス2にプルアップ抵抗RA0乃至RA19とスイッチングトランジスタTR0乃至TR19の直列回路が接続されているので、アドレス信号のレベルが全て“ハイ”であるにもかかわらず、スイッチングトランジスタTR0乃至TR19がオンである期間(図2の時刻t1からt2まで)においても、プルアップ抵抗RA0乃至RA19に流れる電流をゼロにすることができる。
【0024】
なお、本発明は下記(1)〜(4)のような変形が可能である。
(1)図1では、プルアップ抵抗RA0乃至RA20と電源との間にスイッチングトランジスタTR0乃至TR20を接続したが、プルアップ抵抗RA0乃至RA20とアドレスバス2及びラインLiとの間にスイッチングトランジスタTR0乃至TR20を接続する。つまり、プルアップ抵抗RA0乃至RA20とスイッチングトランジスタTR0乃至TR20の接続順序を反対にする。
【0025】
(2)図1において、1チップマイコン1のリセットベクタを“0000h”とし、かつプルアップ抵抗RA0乃至RA19とスイッチングトランジスタTR0乃至TR19の直列回路に代えて、プルダウン抵抗とスイッチングトランジスタの直列回路を設ける。この構成の場合、図2の時刻t1からt2に対応する期間は、アドレスバス2のレベルは全て“ロー”となり、グランドのレベルと等しいから、図1の装置と同様、プルダウン抵抗に流れる電流はゼロである。
【0026】
(3)図1において、1チップマイコン1のリセットベクタの“FFFFh”は変えずに、プルアップ抵抗RA0乃至RA19とスイッチングトランジスタTR0乃至TR19の直列回路に代えて、プルダウン抵抗とスイッチングトランジスタの直列回路を設ける。この構成の場合は、図2の時刻t1からt2に対応する期間は、プルダウン抵抗の電流はゼロにはならないので、消費電力の低減効果は図1の装置より小さい。
【0027】
(4)図1において、1チップマイコン1のリセットベクタを“0000h”とする。この構成の場合は、図2の時刻t1からt2に対応する期間は、プルアップ抵抗RA0乃至RA19の電流はゼロにはならないので、消費電力の低減効果は図1の装置より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の電子装置の構成のブロック及び回路構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の電子装置において、1チップマイコンがリセットされてからROMにアクセスするまでの動作を示すタイミングチャートである。
【図3】従来の電子装置の構成のブロック及び回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・1チップマイコン、2・・・アドレスバス、3・・・ROM、5・・・アドレスデコーダ、7・・・ラッチ、RA0〜RA20・・・プルアップ抵抗、TR0〜TR20・・・スイッチングトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルチップマイクロコンピュータと、該シングルチップマイクロコンピュータに接続されたCMOSメモリと、前記シングルチップマイクロコンピュータのアドレスバスと電源又はグランドとの間に接続された抵抗及びスイッチング素子の直列回路と、前記アドレスバスがハイインピーダンスのときに前記スイッチング素子をオンにし、前記アドレスバスがハイインピーダンスでないときに前記スイッチング素子をオフにする制御手段とを備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子装置において、
前記制御手段は、前記シングルチップマイクロコンピュータに対するリセット信号に基づいて前記アドレスバスがハイインピーダンスであると判断し、前記CMOSメモリに対するチップセレクト信号に基づいて前記アドレスバスがハイインピーダンスでないと判断することを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項2記載の電子装置において、
前記シングルチップマイクロコンピュータは、リセットが解除されたときに前記アドレスバスに最初に出力するアドレス信号のレベルが全て“ロー”であり、前記直列回路は前記アドレスバスとグランドとの間に接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項2記載の電子装置において、
前記シングルチップマイクロコンピュータはリセットが解除されたときに前記アドレスバスに最初に出力するアドレス信号のレベルが全て“ハイ”であり、前記直列回路は前記アドレスバスと電源との間に接続されていることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−83998(P2008−83998A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263144(P2006−263144)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】