説明

電子部品とフレキシブルプリント基板の接続装置

【課題】 電子部品と外部回路との異方性導電膜を用いた接続の際に、電子部品や接続装置などの平面精度の問題で発生する接続不良を解消し、外観損傷や静電気損傷などによる不良品の発生を防ぎ、かつ製造効率を高める異方性導電膜を介して小型電子部品とフレキシブルプリント基板を接続した電子モジュールを形成するための製造装置を提供する。
【解決手段】 接続作業に際して電子部品を保持する2層構造のキャリアと、そのキャリア内に配置された部品支持板と、このキャリアを載置して、付設の調整台座が備える緩衝機構と部品支持板とにより電子部品の平面度調整を行う接続ステージとからなることを特徴とするフレキシブルプリント基板と電子部品の接続装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
撮像装置や表示装置などの電子部品と、駆動回路やフレキシブルプリント基板などの外部回路との電気的、物理的接続を行う接続装置および組立装置に関するもので、特に、携帯電話のカメラモジュールなどの小型の電子部品の製造に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや携帯電話のカメラなどの撮像装置や表示装置と、駆動回路やフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC、以下FPCと称す)などの外部回路との物理的、および電気的接続には、ソケットを用いて接続する方法(例えば、特許文献1、2参照)、半田ボールを用いた半田付けによる接続方法(例えば、特許文献3、4参照)、さらには、金属粒子あるいは金属メッキを施した樹脂粒子を分散させた樹脂膜、すなわち異方性導電膜を介して両者間を熱圧着によって機械的、電気的接続をとる方法(例えば、特許文献3、5〜7)が広く知られている。
【0003】
特に、カメラモジュールは、ノートPCや携帯電話といったモバイル機器から自動車やセキュリティ用途までその搭載が急速に進んでいる。カメラモジュールには、小型化や低背化はもちろんのこと、高画質化とカメラ機能の高性能化、オートフォーカスや光学ズーム、手ブレ補正などの多機能化、さらには、高速化などが求められ、そのため、イメージセンサやカメラモジュールの設計・製造は、ますます高度なものとなっている。特に携帯電話向けのカメラモジュールでは、カスタマイズ化による少量多品種生産に伴い、レンズをはじめとする部品の低コスト化が不可欠で、カメラモジュールの標準化、薄型化が進められている。
【0004】
そこで、従来金属ソケットや半田ボール等による電気的、物理的接続が、カメラモジュールとFPCとの接続には主に用いられていたが、カメラ性能の向上による低温度化、低コスト、品種多様対応、薄型化などを理由に、異方性導電膜(Anisotropic Conductive Film:ACF、以下ACFと称す)を用いた接続方法が主流になりつつある。
【0005】
このACFは、金属粒子あるいは金属メッキを施した樹脂粒子からなる導電粒子を、分散させたバインダーと呼ばれる接着剤の中に混在させて、圧縮することにより、この導電粒子を変形せしめることで、導電粒子間の接触をはかり、電子部品と外部回路の端子間を接続する接合材料である。
【0006】
図9に、ACFを使用した電子部品とFPCの接続方法を示す。
図9(a)に示すように、端子55aを露出する形でキャリア50に固定された電子部品55(カメラなど)に、テープ状のACF51を図9(a)に示すように載せ、その上に接続する端子55aと接続するように端子52aを配するようにFPC51を所定位置に載せて、その上にFPC52に対する物理的な緩衝材であるシリコンゴム53を配し、その上部から所定温度のヒーター54を押圧して、図9(b)のようにACF51の導電粒子51aを押しつぶし、両端子間(52a、55a)を導通し、ACF51を構成するバインダー51bによりその接続強度を保持するものである。
【0007】
しかしながら、ACFを使用してカメラモジュールなどの小型電子部品とFPCなど外部回路を接続する際には、次のような問題が生じていた。
〔a〕電子部品、接続装置などの平面精度の問題で、接続不良が発生する。
〔b〕電子部品のセット作業に時間が掛かる。
〔c〕キャリアによる押さえによって電子部品への傷が発生する。
〔d〕キャリアからの取り出し時に、電子部品、特にカメラなどではレンズ面への傷が発生する。
〔e〕取り出し時にFPCの位置決め穴、およびFPCが変形する。
〔f〕キャリア材質によっては、電子部品の静電気破損の可能性がある。
〔g〕金属製のキャリアではアルミ製であっても重く、その取扱いに際して作業者の負担を増大させ、かつ落下した場合などの衝撃を受けた時には、その平坦度の劣化が生じてしまう。
【0008】
特に、〔a〕の接続不良の問題は、カメラモジュールなどの電子部品と回路を一体化した電子モジュールの信頼性に大きく影響する問題であり、例えば、携帯電話機用のカメラモジュールの場合では、通常カメラの部品厚みには最大80μm程度の差があると言われ、FPCとの接続において、このカメラを押さえるキャリアの厚み方向の平行度は、400×250程度の平面サイズのキャリアにおいては、加工時の残留応力や熱膨張など差の影響から最大100μm程度の開きがあるとされる。さらに、キャリア裏面とステージが平面で受ける構造になっているためにゴミ等が入るとキャリアが傾き圧着時に平面にならないことを挙げられる。
【0009】
一方、ACFによって導通を図るためには、異方性導電膜の導電粒子を70%以上変形させることが要求されている。それ未満の変形では、導電粒子間の接触が完全でなくなり接触不良による断線が生じ、製品不良となってしまう。
【0010】
そこで、このような電子部品と支持するキャリアによる平面問題およびACFの変形不足による接続不良を回避するために、図9に示した緩衝材のシリコンゴム53の厚みを厚く、ヒーターとFPC間に挿入して均一な押圧力が得られる方法が提案されている。しかし、この方法ではシリコンゴムの厚みを厚くしたことによって当然熱伝導が悪くなることから、ヒーターのセット温度はより高くする必要があり、押圧力も高くする必要が生じている。したがって、製造コストの上昇は免れなくなっている。
【0011】
また、〔d〕の傷の問題においては、例えば、図10に見られるようにキャリア50からカメラ55を取り出す場合に、樹脂製のピン56を挿入して直接カメラ55を突き上げて取り出す構造であるため、レンズ面55b(製品として外から見える箇所)に傷が付く恐れがある。
さらに、〔e〕のFPCの変形の問題では、FPCの位置決めピン19は、カメラ55のセンターよりずれている上に、FPC52はフィルム状で薄いため、抜けにくいことから、図11に見られるようにカメラ55を押し上げる際に、FPCの位置決めピン19がFPC52にひっかかり、FPC52が屈曲変形してしまうなどのFPCの変形、位置決め穴の変形などの恐れもある。
静電気破損の問題〔f〕は、キャリアに主に用いられるアルミニウムは、表面処理(導電性アルマイト)を行い、電気的表面抵抗値を10〜10にしているが、キャリアに傷が付いて素地が現れている場合に、カメラに溜まった静電気が、そのアルミ素地部分に放電してカメラが破損する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−289612号公報
【特許文献2】特開2009−43638号公報
【特許文献3】特開2004−215223号公報
【特許文献4】特開2007−36058号公報
【特許文献5】特開平5−196952号公報
【特許文献6】特開平11−284030号公報
【特許文献7】特開2001−267372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記問題に鑑み、電子部品と外部回路との異方性導電膜を用いた接続の際に、電子部品や接続装置などの平面精度の問題で発生する接続不良を解消し、外観損傷や静電気損傷などによる不良品の発生を防ぎ、かつ製造効率を高める異方性導電膜を介して小型電子部品とフレキシブルプリント基板を接続した電子モジュールを形成するための製造装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の発明は、フレキシブルプリント基板と電子部品の接続装置であって、接続作業に際して電子部品を保持する2層構造のキャリアと、そのキャリア内に配置された部品支持板と、キャリアを載置して、付設の調整台座が備える緩衝機構と部品支持板とにより電子部品の平面度調整を行う接続ステージとからなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第2の発明は、第1の発明における2層構造のキャリアが、上層を構成する上層キャリアと下層を構成する下層キャリアとからなり、その上層キャリアは、接続の際の電子部品の挿入、保持および位置決めする貫通した電子部品挿入孔と、フレキシブルプリント基板の位置決めを行うための位置決め部を備え、下層キャリアは、電子部品挿入孔と中心線を同じくする連通した開口部と、フレキシブルプリント基板を前記位置決めピンより外すための解除孔を備えることを特徴とする接続装置で、さらに、そのフレキシブルプリント基板の位置決めを行うための位置決め部が、フレキシブルプリント基板の位置決めピンと、その位置決めピンの挿入孔からなることを特徴とする。
【0016】
本発明の第3の発明は、第1および第2の発明における部品支持板が、下層キャリアの開口部より脱落しない大きさの平板であって、空気穴を備え、上層キャリアの電子部品挿入孔の直下で、かつ支持板の重心の鉛直線が電子部品挿入孔および開口部の中心線と同一になるようにキャリア内に配置されることを特徴とする接続装置である。
【0017】
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明おける接続ステージが、下層キャリアの開口部に挿入される調整台座と、電子部品の吸着用エアーおよび装置冷却用エアーを供給するエアー供給部を備え、その調整台座は、調整台座の挿入側先端に在って、部品支持板の重心直下に部品支持板との接触点を有して、部品支持板をキャリアと非接触状態になるように配する調整ボールを備えたボール型緩衝機構を有することを特徴とする接続装置である。
【0018】
本発明の第5の発明は、異方性導電膜を介して電子部品とフレキシブルプリント基板を接続する電子モジュールの組立装置であって、電子部品を接続の際に保持する2層構造のキャリアと、そのキャリア内に配置された部品支持板と、このキャリアを載置する接続ステージと、キャリアからフレキシブルプリント基板が接続された電子部品を取り出すアンロード治具を少なくとも備える。
この2層構造のキャリアの上層を構成する上層キャリアは、電子部品を挿入、保持および位置決めする貫通した電子部品挿入孔と、接続に際してのフレキシブルプリント基板の位置決めを行うための位置決め部を備え、キャリアの下層を構成する下層キャリアは、電子部品挿入孔と中心線を同じくする連通した開口部と、フレキシブルプリント基板を位置決めピンより外すための解除孔を備える。
この部品支持板は、下層キャリアの開口部から脱落しない大きさの平板であって、空気穴を備え、電子部品挿入孔の直下、かつ支持板の重心の鉛直線が電子部品挿入孔および開口部の中心線と同一になるようにキャリア内に配置されている。
この接続ステージは、下層キャリアの開口部に挿入される調整台座と、電子部品の吸着用エアーおよび装置冷却用エアーを供給するエアー供給部を備え、その調整台座が、調整台座の挿入側先端に在って、部品支持板の重心直下に部品支持板との接触点を有して、その部品支持板をキャリアと非接触状態になるように配する調整ボールを備えるボール型緩衝機構を有している。
このアンロード治具は、アンロード上治具とアンロード下治具の2層構造からなり、アンロード上治具は、下層キャリアの解除孔に挿入されて上層キャリアを持ち上げるリフトアップ部を備え、アンロード下治具は、下層キャリアの開口部に挿入可能で、異方性導電膜を介して接続された電子部品とフレキシブルプリント基板の接続体を、下方より部品支持板を介して電子部品を押し上げることで、キャリアから取り出す押出部を有するものである。
【0019】
本発明の第6の発明は、電子部品を挿入、保持、位置決めする貫通した電子部品挿入孔と、フレキシブル基板の位置決めを行うための位置決め部を有する上層キャリアと、電子部品挿入孔と連通し、かつ中心線を同じくする開口部と、フレキシブルプリント基板を前記位置決めピンより外すための解除孔を有する下層キャリアと、下層キャリアの開口部より脱落しない大きさの平板であって、空気穴を備え、電子部品挿入孔の直下、かつ重心の鉛直線が電子部品挿入孔および開口部の中心線と同一になるようにキャリア内に配置される部品支持板とを備え、異方性導電膜を介した電子部品とフレキシブルプリント基板との接続に用いられる接続用キャリアである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、
(1)電子部品の寸法製品精度、接続ステージやキャリアの精度、ステージとキャリア間の侵入するゴミなどの介在物に影響されることなく、電子部品端子部の平面が確保、維持できるために異方性導電膜を均一に変形して接続不良を解消できる。
(2)電子部品のFPCとの接続の際のセッティングは、電子部品挿入孔に挿入するだけで容易となる。
(3)電子部品の挿入、保持、位置決めに特定の押さえを必要としないことで、電子部品本体の外観損傷を防ぐことができる。
(4)電子部品は、キャリア内に組み込まれた部品支持板上にセットされるために、電子部品の損傷を抑制できる。特にカメラモジュールにおいては、レンズ面への傷を回避できる。
(5)アンロード治具を用いることにより、FPCを平行に保ったまま、FPC位置決め部から抜くことができるために、FPCの損傷を大きく抑制する。
(6)静電気に対応した材質のキャリアを用いることにより。静電気損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の2層構造キャリアの一例を示す断面図で、部品支持板が組込まれた状態を示すものである。
【図2】本発明の部品支持板の形状の一例を示す図で、(a)は平面図、(b)はa−a’線における断面図である。
【図3】本発明の接続ステージを一例を示す断面図で、電子部品とFPCの接続直後の状態を示すもので、キャリアが所定位置に載置されている。部品支持板とボール型緩衝装置により電子部品が支持されている様子が示されている。
【図4】本発明のボール型緩衝機構の構造を示す模式図である。
【図5】ボール型緩衝機構と部品支持板との組み合わせによる異方性導電膜の変形圧力を均一にする調整機構を説明する図である。
【図6】本発明のアンロード治具の一例を示す断面図で、アンロード治具によるキャリアからの電子部品の取り外し動作が示されている。
【図7】接続ステージ、キャリアの平面調整を行うための基準ブロックの形状及び判定用紙による圧力判定結を示す図である。
【図8】実施例で用いたブロック試料の形状並びに実施例の判定用紙の圧力判定結果を示す図である。
【図9】従来のACFを使用した電子部品とFPCの接続方法を説明する図である。
【図10】従来のキャリアからの電子部品の取り出し方法を示す説明図である。
【図11】電子部品のキャリアからの取り出す際に起こるFPCの変形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、異方性導電膜を介して電子部品とフレキシブルプリント基板を接続した電子モジュールを形成するための製造装置で、電子部品を挿入、保持、位置決めする2層構造のキャリアと、そのキャリア内に組み込まれた部品支持板と、キャリアを載置する接続ステージと、キャリアからフレキシブルプリント基板が接続された電子モジュールを取り出すアンロード治具を少なくとも有するものである。
【0023】
以下、各構成要素ごとに詳細する。
〔キャリア〕
図1に本発明のキャリアの一例を示す断面図である。
図1において、10はキャリア、11は上層キャリア、15は下層キャリア、12は電子部品挿入孔、13はFPC位置決め部で、ここでは位置決めピンの挿入孔となっている。16は開口部、17はFPC位置決めピンの挿入孔、18解除孔である。
【0024】
本発明のキャリア10は、電子部品とFPCを接続する際に、電子部品を保持し、さらにFPCを接続の所定位置に配置するためのもので、上層キャリア11と下層キャリア15の2層構造から構成されている。
その上層キャリア11は、電子部品を挿入、保持および位置決めする貫通した電子部品挿入孔12と、フレキシブル基板の位置決め行うFPC位置決め部13(図1では位置決めピンの挿入孔14および位置決めピン19で示される)を備える。
電子部品挿入孔12は、接続を行う電子部品の寸法に合わせて適宜選択したサイズの貫通孔である。FPC位置決めピンの挿入孔14は、接続に際してフレキシブルプリント基板の位置合わせを行うFPC位置決めピン19が挿入される孔である。なお、FPC位置決め部13は、図1のような位置決めピン19と挿入孔14の組合せの他に、挿入孔の位置に位置決めピンの役割を担うピン状突起を、上層キャリア11の上面所定位置に設けても良い。
【0025】
一方、2層構造の下層キャリア15は、上層キャリア11の電子部品挿入孔12と連通し、かつ中心線を同じくする開口部16と、FPC位置決めピンの挿入孔17と、フレキシブルプリント基板をFPC位置決めピンより外すための解除孔18を備える構造である。
この下層キャリア15には、開口部16の所定位置に部品支持部20が載置され、キャリア10に組み込まれた形となっている。
【0026】
キャリア10は、上層キャリア11と下層キャリア15を電子部品挿入孔12と開口部16の中心線を一致させる形で組合せ、その内部に部品支持板20を配置し、FPC位置決めピン19を挿入孔14、17に挿入して組み立てられる。
なお、接続に際してFPCの位置決めを行うFPC位置決め部13に位置決めピン19と挿入孔14、17を用いる代わりに、上層キャリア11の所定位置(FPC位置決めピン19が挿入される位置、すなわち挿入孔14の位置)にピン状突起を予め設けることにより、FPCの位置決めを行うこともできる。その場合、挿入孔14、17は設けなくても良い。
【0027】
このキャリア10の材質は、アルミニウム合金あるいはステンレスが通常使用されるが、体積固有抵抗値が大きなエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂とガラスファイバーなどを組み合わせた絶縁性を有する繊維強化複合材は、耐熱性、耐摩耗性に優れると共に、固体全体において体積固有抵抗値が高いために傷などの欠陥を付けた場合でも、静電気による放電を起こし難く、また重量の点でも強度を落とさずにアルミニウム合金製のキャリアより軽量にすることができる点で、より好ましい。
【0028】
〔部品支持板〕
次に、部品支持板20は、図1に示すようにキャリア10内に組み込まれ、電子部品を支持する底板と、図3に示す接続ステージ30のボール調整機構32の調整ボール33と組み合わせて電子部品やキャリアなどの平面度の調整を行い、良好な異方導電膜接続を与える役目を担っている。
【0029】
図2は、この部品支持板の一例を示す図で、(a)は平面図、(b)はa−a線断面図である。この部品支持板20は、電子部品の吸着、および冷却するためのエアーが通る空気穴21を有し、さらに図2に示すようなFPC位置決めピンの挿入孔22を備えていても良い。なお、この挿入孔は、孔に限らず溝状であっても構わない。
この部品支持板20は、上層キャリア11の電子部品挿入孔12の直下、かつ支持板の重心の鉛直線が電子部品挿入孔12および下層キャリア15の開口部16の中心線と同一になるように下層キャリア15上面に載置され、部品支持板20の底面では、図3に示す接続ステージ30に設けられているボール型調整機構32の調整ボール33と、通常支持板の重心直下の底面で接触してキャリア10とは非接触状態となり、電子部品とFPCの異方性導電膜による接続に際しての異方性導電膜への変形圧力の均一調整を行うものである。
【0030】
空気穴22は、電子部品の吸着固定に用いられるほかに、異方性導電膜による接続作業中の温度上昇を抑えるための冷却用エアーの吹き出し口としての役割も果たしている。
【0031】
この部品支持板20は、ステンレスなどの剛性の高い金属製品を用いるが、電子部品の種類によっては、調整ボール33と合わせてセラミックスなどの部材を用いることもでき、扱う電子部品によって適宜選択する。
【0032】
〔接続ステージ〕
図3は本発明の接続ステージの一例を示す断面図で、電子部品とFPCの接続直後の状態を示し、キャリア10が接続ステージ30の所定位置に載置され、部品支持板20とボール型緩衝装置32により電子部品55が支持されている様子も示している。
図3おいて、1は接続装置を示し、キャリア10、部品支持板20と接続ステージ30から構成されている。30は接続ステージ、31は調整台座、32はボール型緩衝機構、33は調整ボール、35は電子部品の吸着用エアーおよび装置冷却用エアーを供給するエアー供給部、36はOリングである。
接続ステージ30は、キャリア10を支える台座の役割を担うと共に、キャリア10の開口部16に挿入される調整台座31の挿入側先端に設けられたボール型緩衝機構32によって異方性導電膜の熱圧着時に、異方性導電膜に掛かる圧力を均一になるように調整して、異方導電膜による接続不良を抑制する大きな働きを有している。
【0033】
このボール型緩衝機構32と部品支持板20の組合せによる異方性導電膜の接続不良の解消は、本発明の特長とするものである。
すなわち、部品支持板20の重心直下に部品支持板20との接触点を有するように配置されるボール型緩衝機構32と部品支持板20の組合せによる働きにより、電子部品55の形状が厚み方向において「いびつ」であっても、接続において均一な圧力を異方性導電膜(図示せず)に与えるものである。このボール型緩衝機構32の構造、および部品支持板20と組み合わせによる圧力を均一にする調整機構を図4および図5により説明する。
【0034】
図4は、ボール型緩衝機構32を示す模式断面図で、電子部品(電子モジュールを含む)55を受ける部品支持板20の重心直下の底面で調整ボール33が接触し、支持することによって、下層キャリア15から部品支持板20が浮いていることがわかる。
【0035】
この部品支持板20が、下層キャリア15から浮いている量(フローティング量:h)は、1.0mm以下、望ましくは0.2〜0.5mmになるようにボール型緩衝機構32を配置する。このフローティング量が1.0mmを超える値を必要とする場合では、電子部品そのものが大きく歪んでいると考えられ、電子モジュールを形成したとしても、筐体への組み込み過程において組立精度が大きく劣化することが予想され、製品歩留まりの低下を招くだけであることから限定している。
【0036】
図5は、厚みの異なる電子部品55を用いて異方性導電膜51によるFPC52との接続の様子を模式的に示した図で、ボール型緩衝機構の動作機構を説明する図で、(a)は熱圧着による接続開始直前の状態を示し、(b)は、本発明の接続装置によって正常に異方性導電膜が均一に変形した状態を示すもので、正常に接続されて導通が保たれている場合である。(c)は、比較例としたボール型緩衝機構を用いなかった場合で、異方性導電膜が不均一に変形している様子がわかる。
図5(b)では、熱圧着の圧力によって異方性導電膜51が均一に変形できるように、電子部品55を載せた部品支持板20を支える調整ボール33が必要量回転することによって、部品支持板を傾け、均一に圧力が加わるように調整している様子を示している。
【0037】
〔アンロード治具〕
図6に本発明のアンロード治具の一例を示す断面図である。図6(a)は上層キャリアを持ち上げた状態を示すもので、(b)は電子部品を押し上げてキャリアから取り外す状態を示す図である。
図6において、40はアンロード治具、41はアンロード上治具、42はリフトアップ部、45はアンロード下治具、46は押出部である。
【0038】
アンロード治具40は、アンロード上治具41とアンロード下治具45の2層から構成されている。
アンロード上治具は、図6(a)に示すように、下層キャリア15の解除孔18に挿入されて上層キャリア11を持ち上げるリフトアップ部42を備えている。このリフトアップ部42は、異方性導電膜を介した電子部品とフレキシブルプリント基板の接続体(電子モジュール)を形成した後に、上層キャリア11を持ち上げることにより、FPC52をFPC位置決めピン19からストレスを掛けずに抜くことでき、FPCの変形やFPC位置決め孔(FPCに設けられている、図示せず)の変形を無くすことが可能となる。
【0039】
一方、アンロード下治具45は、下層キャリア15の開口部16に挿入可能な押出部46を備え、異方性導電膜を介した小型電子部品とフレキシブルプリント基板の接続体(電子モジュール)の形成後に、下層キャリア15の開口部16に挿入して、下方より電子部品55を、部品支持板20を介して押し上げることで、電子モジュール(電子部品55)をキャリア10から取り出すものである。
なお、本発明における組立装置は、以上述べてきたキャリア10、部品支持板20、接続ステージ30、アンロード治具40から構成される集合装置である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
実施例では、本発明の装置の接続不良を抑制する平面調整度を測定した。
まず、接続ステージ、キャリアの平面調整を行うために、図3の接続ステージのボール型緩衝機構を除いた状態で、電子部品の代わりに図7(a)、(b)に示す基準ブロック試料100を用い、その底面のマーカー部101にインクを塗り、部品支持板上に判定用紙を載せたキャリア(接続ステージに装着済みの状態、図2参照)に装着し、均一に圧力がかかるように接続ステージ、ヒーターヘッドを調節して、0.032MPaの圧力を2秒間掛けて解除した。判定用紙は、図7(c)の転写マーカー201に見られるように、マーカー部101は均一に転写されており、圧力が均一にかかる状態をあることを示している。
【0041】
次に、平面調整された状態を維持しつつ、ボール型緩衝機構を配置して調整可能状態とし、この状態で、以下の実施例、比較例を行い、その平面調整度を測定した。
【実施例1】
【0042】
電子部品の代わりに図8(a)に外形形状、寸法を示すブロック試料を用いて、平面調整度の測定を行った。圧力0.032MPaを2秒間掛けて解除した。判定用紙の転写パターンの模式図を図8(b)に示した。
図8(b)に示すように、マーカー部101が転写マーカー201として、きれいに転写されており、圧力が均一にかかっていることがわかる。
【0043】
(比較例1)
接続装置の平面調整と同様に、ボール型緩衝機構が働かない状態として、平面調整度の測定を行った。測定条件は実施例1と同条件で行い、その結果を図8(c)に示した。
図8(c)に示すように、転写マーカー202は均一に転写されておらず、マーカー部101には不均一に圧力がかかっている状態を示しており、平面調整ができていないことがわかる。
【実施例2】
【0044】
図1から図6に示した本発明の組立装置を使用し、異方性導電膜を用いて電子部品とFPCを接続して、電子モジュールを作製した。
先ず、平面調整が済んだ図1、2、3、6に示すキャリア10、部品支持板20、接続ステージの30、およびアンロード治具40の組立装置を用意した。
電子部品およびFPCには、厚み6mmの携帯電話用カメラ55と、このカメラに対応した端子を持つFPC52を用い、接続を行う異方性導電膜51には、異方性導電テープ(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製、DP3342MS)を用いた。
【0045】
カメラ55のレンズ面を下向きにして電子部品挿入孔12に挿入して、キャリア10内にセットされている部品支持板20上にカメラ55を載置した。次に異方性導電テープ51をカメラの端子上に載せ、カメラの端子と接続する位置になるようにFPC52の端子を合わせて、FPCを異方性導電テープ上に載せた。
その上から温度190℃に保持したヒーターヘッドを合わせ、所定の圧力まで加圧した。次いで、その状態を6秒間保持し、その経過後に圧力を解除する接続処理を行い、カメラモジュールを作製した。
【0046】
その後、常温まで冷めてから作製したカメラモジュールごとキャリアを、アンロード治具の所定位置である、リフトアップ部42が下層キャリア15の解除孔18に挿入可能な位置で、押出部46が開口部16に挿入可能な位置で、アンロード治具上41にキャリア10を取り付けた。次いで、アンロード上治具41を空気圧により上方に移動させ、リフトアップ部42を解除孔18に挿入して上層キャリア11を持ち上げ、FPC位置決めピン19からFPC52を抜いた。その次に、アンロード下治具45の押出部46を開口部16に挿入して部品支持板20を持ち上げると共に、部品支持板20に載っているカメラモジュール55を持ち上げてキャリア10から取り出した。
【0047】
作製したカメラモジュールの外観には傷は無くきれいで、FPCやFPC位置決め孔にも変形は見られなかった。
接続状態を知るために、導通テストを行ったが、断線はなく安定した値が継続して得られた。
【符号の説明】
【0048】
1 接続装置
10、50 キャリア
11 上層キャリア
12 電子部品挿入孔
13 FPC位置決め部
14、17 FPC位置決めピンの挿入孔
15 下層キャリア
16 開口部
18 解除孔
19 FPC位置決めピン
20 部品支持板
21 空気穴
22 FPC位置決めピンの挿入孔(挿入溝)
30 接続ステージ
31 調整台座
32 ボール型緩衝装置
33 調整ボール
33a 接触点
35 エアー供給部
36 Oリング
40 アンロード治具
41 アンロード上治具
42 リフトアップ部
45 アンロード下治具
46 押出部
51 異方性導電膜
51a 導電粒子
51b バインダー
52 FPC(フレキシブルプリント基板)
52a FPC端子
53 シリコンゴム
54 ヒーターヘッド(セラミック製)
55 電子部品
55a 電子部品端子
55b カメラレンズ
56 樹脂製ピン
100 基準ブロック試料
101 マーカー部
201 転写マーカー:良好
202 転写マーカー:不良

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント基板と電子部品の接続装置であって、
接続作業に際して電子部品を保持する2層構造のキャリアと、
前記キャリア内に配置された部品支持板と、
前記キャリアを載置して、付設の調整台座が備える緩衝機構と前記部品支持板とにより前記電子部品の平面度調整を行う接続ステージとからなることを特徴とする。
【請求項2】
前記2層構造のキャリアが、上層を構成する上層キャリアと下層を構成する下層キャリアとからなり、
前記上層キャリアは、接続の際の前記電子部品の保持、位置決めする貫通した電子部品挿入孔と、接続に際してフレキシブルプリント基板の位置決めをする位置決め部を備え、
前記下層キャリアは、前記電子部品挿入孔と中心線を同じくする連通した開口部と、前記フレキシブルプリント基板を前記位置決め部より外すための解除孔を備えることを特徴とする請求項1記載の接続装置。
【請求項3】
前記位置決め部が、フレキシブルプリント基板の位置決めピンと前記位置決めピンの挿入孔からなることを特徴とする請求項2記載の接続装置。
【請求項4】
前記部品支持板が、前記開口部より脱落しない大きさの平板であって、空気穴を備え、前記電子部品挿入孔の直下かつ支持板の重心の鉛直線が前記電子部品挿入孔および開口部の中心線と同一になるように前記キャリア内に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の接続装置。
【請求項5】
前記接続ステージが、前記開口部に挿入される調整台座と、電子部品の吸着用エアーおよび装置冷却用エアーを供給するエアー供給部を備え、
前記調整台座は、前記調整台座の挿入側先端に在って、前記部品支持板の重心直下に前記部品支持板との接触点を有して前記部品支持板を前記キャリアと非接触状態になるように配される調整ボールを備えたボール型緩衝機構を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の接続装置。
【請求項6】
異方性導電膜を介して電子部品とフレキシブルプリント基板を接続する電子モジュールの組立装置であって、
前記電子部品を接続の際に保持する2層構造のキャリアと、前記キャリア内に配置された部品支持板と、前記キャリアを載置する接続ステージと、前記キャリアからフレキシブルプリント基板が接続された電子部品を取り出すアンロード治具を少なくとも備え、
前記2層構造のキャリアの上層を構成する上層キャリアは、前記電子部品を挿入、保持および位置決めする貫通した電子部品挿入孔と、前記フレキシブルプリント基板の位置決め行うための位置決め部を備え、
前記2層構造のキャリアの下層を構成する下層キャリアは、前記電子部品挿入孔と中心線を同じくする連通した開口部と、前記フレキシブルプリント基板を前記位置決めピンより外すための解除孔を備え、
前記部品支持板は、前記開口部から脱落しない大きさの平板であって、空気穴を備え、前記電子部品挿入孔の直下、かつ支持板の重心の鉛直線が前記電子部品挿入孔および開口部の中心線と同一になるように前記キャリア内に配置され、
前記接続ステージは、前記開口部に挿入される調整台座と、電子部品の吸着用エアーおよび装置冷却用エアーを供給するエアー供給部を備え、
前記調整台座が、前記調整台座の挿入側先端に在って、前記部品支持板の重心直下に前記部品支持板との接触点を有して前記部品支持板を前記キャリアと非接触状態になるように配した調整ボールを備えるボール型緩衝機構を有し、
前記アンロード治具は、アンロード上治具とアンロード下治具の2層構造からなり
前記アンロード上治具は、前記下層キャリアの解除孔に挿入されて前記上層キャリアを持ち上げるリフトアップ部を備え、
前記アンロード下治具は、前記開口部に挿入可能で、異方性導電膜を介して接続された電子部品とフレキシブルプリント基板の接続体を、下方より前記部品支持板を介して電子部品を押し上げることで、前記キャリアから取り出す押出部を有することを特徴とする。
【請求項7】
電子部品を保持する貫通した電子部品挿入孔と、前記フレキシブル基板の位置決めを行うための位置決め部を有する上層キャリアと、
前記電子部品挿入孔と連通し、かつ中心線を同じくする開口部と、前記フレキシブルプリント基板を前記位置決めピンより外すための解除孔を有する下層キャリアと、
前記開口部より脱落しない大きさの平板であって、空気穴を備え、前記電子部品挿入孔の直下、かつ重心の鉛直線が前記電子部品挿入孔および開口部の中心線と同一になるように前記キャリア内に配置される部品支持板とを備え、
異方性導電膜を介した電子部品とフレキシブルプリント基板との接続に用いられることを特徴とする接続用キャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−198648(P2011−198648A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64876(P2010−64876)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(597165685)株式会社イトー (3)
【Fターム(参考)】