説明

電子部品の本体筐体部材、電子部品、および電子部品の製造方法

【課題】保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止する。
【解決手段】水晶振動子1の本製造方法は、ベース3と蓋4とが接合材を介して接合し、水晶振動片2を気密封止する方法である。当該製造方法は、ベース3と蓋4とを少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて共晶接合して、本体筐体11を構成する本接合工程を有し、ベース3と蓋4との共晶接合により接合材を、金リッチ相の金錫接合材5として生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の本体筐体部材、電子部品、および電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品は、その内部空間に搭載した電子部品素子の特性が劣化するのを防ぐために内部空間を気密封止する。この気密封止を必要とする電子部品素子として、例えば、半導体素子や圧電振動素子などが挙げられる。
【0003】
ここでいう電子部品は、例えば、その本体筐体がパッケージと金属蓋とから構成されたものであり、その内部空間に半導体素子や圧電振動素子などが搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的に、この特許文献1に記載の電子部品は、パッケージにセラミック容器(ベース)を用い、金属蓋にコバール製のシールキャップを用いている。なお、シールキャップは、シールキャップ本体に、電解バレルメッキにより金メッキを行い、これにベースへの接合材となる金錫ろう材を融着して製造する。
【特許文献1】特開2003−224223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献1に記載の電子部品では、シールキャップに形成した金錫ろう材は露出した状態となっており、保管環境や製造環境によっては露出した金錫ろう材は酸化する。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止する電子部品の本体筐体部材、電子部品、および電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品の製造方法は、複数の本体筐体部材を接合材を介して接合し、電子部品素子を気密封止する電子部品の製造方法において、前記複数の本体筐体部材を、少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて接合して本体筐体を構成する本接合工程を有し、前記複数の本体筐体部材の接合により前記接合材を、金リッチ相の金錫接合材として生成することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止することが可能となる。具体的に、前記本接合工程を有し、前記複数の本体筐体部材の接合により前記接合材を、金リッチ相の金錫接合材として生成するので、前記金リッチ相の金錫接合材による酸化を防止することが可能となる。さらに、前記複数の本体筐体部材の接合により前記接合材を、前記金リッチ相の金錫接合材として生成するので、クラックなどの発生を抑制することが可能となる。具体的に、異なる熱膨張係数の金属材料によって接合材を生成した場合、熱履歴(製造工程および製造工程後の外部環境変化)によって金錫中に存在する金の凝集(固まり)がクラックの起点(クラックの原因)となる。さらに、他の電子部品の本体筐体部材との接合について、前記複数の本体筐体部材の接合により前記接合材を、前記金リッチ相の金錫接合材として生成するので、別途コバールリングや金錫リングを用いた接合と比較して小型化に好適である。例えば、前記金リッチ相の金錫接合材を、メッキ形成すなわち層状態で形成することで、リング状体の接合材と比較して小型化に有利である。
【0009】
また、本発明によれば、前記複数の本体筐体部材の接合により前記接合材を、金リッチ相の金錫接合材として生成するので、共晶結合後に金比率の高い(金リッチ相状態の)接合材を生成することができる。この接合後に接合材の金比率が高くなる(金リッチ相状態になる)ことによって接合材の融点が上昇する。そのため、この接合材の融点の上昇により、リフローソルダリングによる外部実装基板への当該電子部品の搭載時の気密性低下を防ぐことが可能となり、その結果、当該電子部品の取り扱いがよくなる。
【0010】
前記方法において、前記本接合工程を行う前に、前記接合材を用いて前記複数の本体筐体部材の仮止を行う仮止工程を有し、前記仮止工程では、前記複数の本体筐体部材それぞれの表面に金を形成し、前記複数の本体筐体部材それぞれに形成する金金間による拡散接合を行ってもよい。
【0011】
この場合、前記複数の本体筐体部材それぞれの表面に形成する金によって酸化を防止することができ、さらに、前記拡散接合に、同一金属かつ軟質金属である金が用いられているため、確実な仮止が可能となる。また、前記仮止工程を有するので、接合位置のアライメントを行うことが可能となり、接合位置のずれを抑制することが可能となる。なお、前記仮止工程において画像認識手段を用いると、さらに接合位置のアライメントを向上させることが可能となる。
【0012】
前記方法において、前記本接合工程は、約350℃以上の温度で行ってもよい。
【0013】
この場合、前記本接合工程は、約350℃以上の温度で行うので、接合による前記金リッチ相の金錫接合材の生成を好適に行うことが可能となる。
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品の本体筐体部材は、複数の本体筐体部材から本体筐体が構成される電子部品の本体筐体部材において、他の電子部品の本体筐体部材と接合するために、少なくとも、金錫からなる金錫部もしくは錫からなる錫部と、金からなる金部が設けられ、前記金部に前記金錫部または前記錫部が内包されたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止することが可能となる。具体的に、酸化し易い材料である前記金錫部または前記錫部を前記金部で内包しているので、前記金錫部または前記錫部の酸化を防止することが可能となる。さらに、前記金部と、前記金錫部または前記錫部とは、他の金属との接合に好適であり、他の電子部品の本体筐体部材との接合に好ましい形態である。さらに、他の電子部品の本体筐体部材との接合について、前記金部と、前記金錫部または前記錫部とを用いているので、別途コバールリングや金錫リングを用いた接合と比較して小型化に好適である。
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品は、複数の本体筐体部材が接合材を介して接合されて本体筐体が構成され、この本体筐体の内部空間に電子部品素子が気密封止される電子部品において、前記複数の本体筐体部材が、少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて接合され、前記接合材は金リッチ相の金錫接合材として生成されたことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止することが可能となる。具体的に、前記接合材は金リッチ相の金錫接合材として生成されるので、前記金リッチ相の金錫接合材による酸化を防止することが可能となる。さらに、前記複数の本体筐体部材が接合材を用いて接合されて、前記接合材は前記金リッチ相の金錫接合材として生成されるので、クラックなどの発生を抑制することが可能となる。具体的に、異なる熱膨張係数の金属材料によって接合材を生成した場合、熱履歴(製造工程および製造工程後の外部環境変化)によって金錫中に存在する金の凝集(固まり)がクラックの起点(クラックの原因)となる。さらに、他の電子部品の本体筐体部材との接合について、前記複数の本体筐体部材が接合材を用いて接合されて、前記接合材は前記金リッチ相の金錫接合材として生成されるので、別途コバールリングや金錫リングを用いた接合と比較して小型化に好適である。
【0018】
また、本発明によれば、前記複数の本体筐体部材が、少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて接合され、前記接合材は金リッチ相の金錫接合材として生成されるので、共晶結合後に金比率の高い(金リッチ相状態)接合材が生成される。この接合後に接合材の金比率が高くなる(金リッチ相状態になる)ことによって接合材の融点が上昇する。そのため、この接合材の融点の上昇により、リフローソルダリングによる外部実装基板への当該電子部品の搭載時の気密性低下を防ぐことが可能となり、その結果、当該電子部品の取り扱いがよくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる電子部品の本体筐体部材、電子部品、および電子部品の製造方法によれば、保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、電子部品として圧電振動デバイスであるATカット水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0021】
本実施例にかかるATカット水晶振動子1(以下、水晶振動子という)では、図1に示すように、圧電振動素子であるATカット水晶振動片2(本発明でいう電子部品素子であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を保持するパッケージとしてのベース3と、ベース3に保持した水晶振動片2を気密封止するための金属蓋4(以下、蓋という)と、が設けられている。
【0022】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋4とが接合されて本体筐体11が構成されている。これらベース3と蓋4とが、金リッチ相の金錫接合材5により接合され、この接合により本体筐体11の内部空間12が形成されている。なお、ここでいうベース3と金属蓋4とが、本発明でいう本体筐体部材である。
【0023】
この本体筐体11の内部空間12のベース3上に導電性バンプ6を介して水晶振動片2が保持接合されているとともに、この水晶振動片2が搭載された本体筐体11の内部空間12が気密封止されている。この際、図1に示すように、ベース3と水晶振動片2とは導電性バンプ6を用いてFCB(Flip Chip Bonding)法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。
【0024】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。なお、ここでは、接合前のベース3と蓋4について説明する。
【0025】
ベース3は、セラミック材料からなり、図2に示すように、底部31とこの底部31から上方に延出した堤部32とから構成される箱状体に形成されている。堤部32は、底部31の平面視外周縁に沿って形成されている。このベース3の堤部32の端面33には、蓋4との接合領域となるメタライズ層が設けられている。具体的に、本実施例にかかるメタライズ層は、タングステン層34上にニッケル層35,金層36の順で積層されて構成される。なお、タングステン層34のかわりにモリブデン層を用いてもよい。
【0026】
また、ベース3の内部空間12の底面には、図1,2に示すように、複数の電極パッド(図示省略)が形成され、これら電極パッド上に水晶振動片2が片保持して設けられる。これら電極パッドは、それぞれに対応した引回電極(図示省略)を介して、ベース3の裏面などの外周面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド、引回電極、端子電極は、タングステンやモリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド、引回電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0027】
なお、ベース3の外形寸法は、1.6×1.2×0.36mmに設定され、その堤部32の端面の幅は0.15mmに設定されている。また、ベース3のメタライズ層を構成するタングステン層34,ニッケル層35,金層36の厚み寸法は、それぞれ8〜22,2.3〜8.1,0.3〜1.0μmに設定されている。
【0028】
蓋4は、コバールからなり、図2に示すように、平面視矩形状の一枚板からなる。この蓋4の一主面(図2では下面)の外周縁に沿って、ベース3との接合領域となるメタライズ層が形成されている。具体的に、本実施例にかかるメタライズ層は、ニッケル層41上に,金部42の順で積層されて構成される。また、本実施例にかかる蓋4の金部42には、その内部に金錫部43が内包されている。すなわち、金部42内部に金錫部43が設けられている。この金錫部43の構成は、Au:Sn=8:2であり、金の比率が80wt%以下であることが好ましい(例えば、金の比率が70〜79wt%)。なお、本実施例では、蓋4の金部5の内部に金錫部43を設けているが、蓋4の金部5の内部に設けるものは錫からなる錫部であってもよい。また、蓋4のメタライズ層を構成するニッケル層41は、メタライズ層の構成から外してもよい。
【0029】
なお、蓋4の外形寸法は、1.6×1.2×0.12mmに設定されている。また、蓋4のメタライズ層を構成する金部42の厚み寸法は、10.8μmに設定されている。また、金部42を更に詳説すると、内包している金錫部43の厚み寸法は5〜15μm(本実施例では10μm)に設定され、金錫部43とニッケル層41の間に介在する金部42の該当箇所の厚み寸法(すなわち、金錫部43とニッケル層41の間の寸法)は0.2μmに設定され、金錫部43からメタライズ層(金部42)の端面までの金部42の厚み寸法は1μm未満(本実施例では0.6μm)に設定されている。
【0030】
また、本実施例では、ベース3と蓋4との接合に用いる接合材は、上記したベース3の金層36と、蓋4の金部42および金錫部43とから構成される(図1,2参照)。
【0031】
次に、ベース3に接合材(ベース3と蓋4との接合後に生成される金リッチ相の金錫接合材5)を介して蓋4を接合する水晶振動子1の製造工程(製造方法)について説明する。
【0032】
まず、多段多行(マトリックス状)に並べられた複数個のベース3のシートに対して、セラミック多層技術を用いて外形を形成し、メタライズ印刷技術を用いてタングステン層34のパターンニングを行ない、この状態でシートを焼成成形した後、メタライズ層をメッキ形成する。具体的に、ベース3上にタングステン層34を形成し、このタングステン層34上にニッケル層35をメッキ形成し、このニッケル層35上に金層36をメッキ形成して、メタライズ層を形成する。
【0033】
メタライズ層のメッキ形成後に水晶振動片2を導電性バンプ6を介してFCB法により電気機械的に超音波接合して、ベース3に水晶振動片2を配する(搭載する)。
【0034】
また、マトリックス状に並べられた複数個の蓋4のシート(図示省略)に対して、メタライズ層をメッキ形成する。この際、蓋4にニッケル層41をメッキ形成し、このニッケル層41上に金錫部43とニッケル層41に介在する金部42の一部分(本実施例では厚さ0.2μm)をメッキ形成し、この金部42上に金錫部43をメッキ形成する。金錫部43をメッキ形成した後に金錫部43を覆うように金部42の残りの部分(本実施例では厚さ0.6μm)をメッキ形成し、金部42により金錫部43を内包したメタライズ層を形成する。すなわち、この金部42による金錫部43の内包により金錫部43の酸化を防止することができる。
【0035】
次に、多段多行に並べられたメタライズ層を形成した複数個の蓋4のシート上に、水晶振動片2を搭載した複数個のベース3のシートを、それぞれに個別対向させて配する。
【0036】
蓋4とベース3とを対向配置させた後に、超音波接合により蓋4の金部42と、ベース3の金層36とのAu−Au間(金金間)による金属間拡散接合を行い、蓋4とベース3との仮溶融接合を行う(本発明でいう仮止工程)。なお、この時、図示しない画像認識装置により蓋4とベース3との接合位置のアライメントを行い、誤差±15μm以下の仮止搭載を行う。また、この仮止工程は、150℃以下の温度環境で超音波を印加して行う。
【0037】
仮止工程後に、接合環境の温度を、金錫部43の共晶点(例えば、金錫部の構成がAu:Sn=8:2の時の共晶点は278℃)以上の温度(本実施例では約350℃以上)に上昇させて、接合材の加熱を行なう。この加熱により、蓋4とベース3との接合材による接合を行ない、図3に示す金比率の高い金リッチ相の金錫接合材5(具体的に、金が80wt%以上の金リッチ相状態の金錫接合材5)を生成し(設け)、蓋4とベース3との接合が完了する(本発明でいう本接合工程)。ここでいう接合材による接合とは、ベース3の金(金層36)と、蓋4の金および錫(金部42と金錫部43)との接合のことをいう。本接合工程の後、ダイシングによって複数個の水晶振動子1を個別に分割する。
【0038】
なお、上記した本接合工程での実際の温度と時間は、パルスヒート方式を用いて350〜420℃、30〜120secに設定されている。
【0039】
また、参考例として、蓋4とベース3との接合の際に、接合を行なわない場合、図4に示すように、接合材は、図4上方の金リッチの金錫接合材と図4下方の金メッキ層とからなる構造になる。この構造によれば、金リッチの金錫接合材と金メッキ層との熱膨張係数が異なるために、熱履歴(製造工程および製造工程後の外部環境変化)によって金錫中に存在する金の凝集(固まり)がクラックの起点(クラックの原因)となる。
【0040】
上記したように、本実施例によれば、保管環境や製造環境に関係なく、接合材(金リッチ相の金錫接合材5)の酸化を防止することができる。具体的に、接合材を介した蓋4とベース3との接合を行う本接合工程を有し、複数の本体筐体部材(本実施例ではベース3と蓋4)の接合により接合材を、金リッチ相の金錫接合材5として生成するので、金リッチ相の金錫接合材5による酸化を防止することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施例によれば、ベース3と蓋4の接合により接合材を、金リッチ相の金錫接合材5として生成するので、クラックなどの発生を抑制することができる。具体的に、異なる熱膨張係数の金属材料によって接合材を生成した場合、熱履歴(製造工程および製造工程後の外部環境変化)によって金錫中に存在する金の凝集(固まり)がクラックの起点(クラックの原因)となる。
【0042】
さらに、本実施例によれば、ベース3と蓋4との接合について、ベース3と蓋4との接合により接合材を、金リッチ相の金錫接合材5として生成するので、別途コバールリングや金錫リングを用いた接合と比較して小型化に好適である。具体的に、金リッチ相の金錫接合材5を、メッキ形成すなわち層状態で形成するため、リング状体の接合材と比較して小型化に有利である。なお、ここでいうコバールリングとして、例えばそのシールパス幅を200μmとし、金錫層を35μmとしたものが挙げられる。
【0043】
また、本実施例によれば、複数の本体筐体部材(ベース3と蓋4)が、少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて接合され、接合材は金リッチ相の金錫接合材5として生成されるので、共晶結合後に金比率の高い(金リッチ相状態の)接合材が生成される。この接合後に接合材の金比率が高くなる(金リッチ相状態になる)ことによって接合材(金リッチ相の金錫接合材5)の融点が上昇する。そのため、この接合材(金リッチ相の金錫接合材5)の融点の上昇により、リフローソルダリングによる外部実装基板への当該水晶振動子1の搭載時の気密性低下を防ぐことができ、その結果、当該水晶振動子1の取り扱いがよくなる。
【0044】
また、本実施例によれば、複数の本体筐体部材(ベース3と蓋4)それぞれの表面に形成する金層36と金部42によって酸化を防止することができ、さらに、拡散接合に、同一金属かつ軟質金属である金が用いられているため、確実な仮止ができる。また、蓋4の金部42とベース3の金層36との金金間による金属間拡散接合を行う仮止工程を有するので、ベース3と蓋4との接合位置のアライメントを行うことができ、ベース3と蓋4との接合位置のずれを抑制することができる。なお、仮止工程において画像認識手段を用いると、さらに接合位置のアライメントを向上させることができる。
【0045】
また、本実施例によれば、本接合工程は、約350℃以上の温度で行うので、接合による金リッチ相の金錫接合材5の生成を好適に行うことができる。
【0046】
また、本実施例によれば、保管環境や製造環境に関係なく、接合材の酸化を防止することができる。具体的に、酸化し易い材料である金錫部43を金部42で内包しているので、金錫部43の酸化を防止することができる。さらに、金部42と金錫部43は、他の金属との接合に好適であり、接合領域にそれぞれメタライズ層を形成したベース3と蓋4と接合に好ましい。さらに、ベース3と蓋4との接合について、蓋4に金部42と金錫部43を用いているので、別途コバールリングや金錫リングを用いた接合と比較して小型化に好適である。
【0047】
なお、本実施例では、電子部品としてATカット水晶振動子1を適用した場合を示すが、これに限定されるものではなく、ベース3と蓋4とが金リッチ相の金錫接合材5を介して接合され、内部空間12に配された(搭載された)電子部品素子が気密封止されている電子部品であれば他の形態であってもよい。例えば、本実施例とは異なる他の圧電振動デバイスである、音叉型水晶振動片を搭載した水晶振動子や、ATカット水晶振動片およびICチップを搭載した発振器などであってもよい。
【0048】
また、本実施例では、導電性バンプ6を1つとしているが、これに限定されるものではなく、図5に示すように複数個(図5では2つ)であってもよい。さらに導電性バンプ6としてメッキ状のものを用いてもよい。
【0049】
また、本実施例では、図1に示すような形状の水晶振動片2を採用しているが、これに限定されるものではなく、図5に示すように逆メサ形状の水晶振動片2であってもよい。
【0050】
なお、上記した図5に示す形態について、図5に示すように、上記した実施例(図1参照)との差異は、内部空間12の水晶振動片2の形状および、導電性バンプ6の数だけであり、他の構成やその作用効果は上記した実施例と同じである。
【0051】
また、本実施例では、蓋4とベース3との接合の際に、ベース3と蓋4に対してマトリックス状に並べられた複数個の蓋4のシートとベース3のシートを用いているが、これに限定されるものではなく、それぞれシートを用いずに蓋4単体もしくはベース3単体を接合対象としてもよい。
【0052】
また、本実施例では、蓋4に金属材料のコバールを用い、ベース3にセラミックを用いているが、これに限定されるものではなく、水晶やシリコンを用いてもよい。なお、この場合、金属材料と接合材との接着を良好にするためにその間にニッケルなどを介在させたり、水晶と金との接合を良好にするためにクロムを間に介在させるなど、当業者が想到し得る設計的変更を行う必要があることは言うまでもない。
【0053】
また、本実施例では、ベース3が箱状体に形成され、蓋4が平面視矩形状の一枚板からなるが、これに限定されるものではなく、内部空間12が形成され、この内部空間12に水晶振動子2が設けられていればよい。例えば、ベース3が平面視矩形状の一枚板からなり、蓋4が箱状体に形成されてもよい。
【0054】
また、本実施例では、ベース3の側面とそのメタライズ層の側面とが面一に形成され、蓋4の側面とそのメタライズ層の側面とが面一に形成されているが、これに限定されるものではなく、メタライズ層が幅広に形成されて、ベース3や蓋4に対してその側面が突出する形態となってもよい。また、ベース3と蓋4とを接合材を用いて接合した際の接合材の側面とベース3の側面と蓋4の側面とが面一に形成されているが、これに限定されるものではなく、接合材が幅広に形成されて、ベース3や蓋4に対してその側面が突出する形態となってもよい。
【0055】
また、上記した本実施例および他の例によれば、電子部品素子である水晶振動片2自体が内部空間12に設けられている(配されている)が、これに限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、水晶振動片2の両主面21,22が内部空間12内に配されている2つの本体筐体部材81,82の間に水晶振動片2が介在されたサンドイッチ構造であってもよい。なお、2つの本体筐体部材81,82は、ともに水晶からなる。この図6における2つの本体筐体部材81,82と水晶振動片2との接合前の各構成を図7に示す。
【0056】
図7に示すように、上記した実施例との差異は、2つの本体筐体部材81,82にそれぞれに、クロム層83,内部に金錫部84(または錫部)が設けられた(内包された)金部85の順で積層されたメタライズ層が形成されたことと、水晶振動片2の堤部23に、蒸着によってクロム層86,金層87の順で積層されたメタライズ層が形成されたことであり、他の構成やその作用効果は上記した実施例と同じである。なお、図7では、2つの本体筐体部材81,82と水晶振動片2が、本発明でいう本体筐体部材に対応する。
【0057】
この図7に示す実施例の具体的な製造方法の例として、図8に示すように多段多行に並べられた複数個の本体筐体部材82のウエハ7を使用し、このウエハ7から多数個の本体筐体部材82を製造することが挙げられる。なお、本体筐体部材81についても同様に複数個の本体筐体部材81のウエハを使用してもよい。
【0058】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電子部品素子を気密封止する電子部品に適用でき、特に、電子部品素子に圧電振動素子を用いた圧電振動デバイスに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶振動子の蓋とベースとの接合前の概略構成図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる金リッチ相の金錫接合材の断面図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる金リッチ相の金錫接合材との比較例として用いた従来の金と錫からなる接合材の断面図である。
【図5】図5は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図6】図6は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の内部空間を公開した概略構成図である。
【図7】図7は、本実施例の他の例にかかる水晶振動子の本体筐体部材の接合前の概略構成図である。
【図8】図8は、本実施例の他の例にかかる、複数個の本体筐体部材をマトリックス状に並べたウエハの概略構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1 水晶振動子
11 本体筐体
12 内部空間
2 水晶振動片
21,22 両主面
23 堤部
3 ベース
31 底部
32 堤部
33 堤部の端面
34 タングステン層
35 ニッケル層
36 金層
4 金属蓋
41 ニッケル層
42 金部
43 金錫部
5 金リッチの金錫接合材
6 導電性バンプ
7 本体筐体部材のウエハ
81,82 2つの本体筐体部材
83 クロム層
84 金錫部
85 金部
86 クロム層
87 金層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の本体筐体部材を接合材を介して接合し、電子部品素子を気密封止する電子部品の製造方法において、
前記複数の本体筐体部材を、少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて接合して本体筐体を構成する本接合工程を有し、
前記複数の本体筐体部材の接合により前記接合材を、金リッチ相の金錫接合材として生成することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品の製造方法において、
前記本接合工程を行う前に、前記接合材を用いて前記複数の本体筐体部材の仮止を行う仮止工程を有し、
前記仮止工程では、前記複数の本体筐体部材それぞれの表面に金を形成し、前記複数の本体筐体部材それぞれに形成する金金間による拡散接合を行うことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品の製造方法において、
前記本接合工程は、約350℃以上の温度で行うことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項4】
複数の本体筐体部材から本体筐体が構成される電子部品の本体筐体部材において、
他の電子部品の本体筐体部材と接合するために、少なくとも、金錫からなる金錫部もしくは錫からなる錫部と、金からなる金部が設けられ、
前記金部に前記金錫部または前記錫部が内包されたことを特徴とする電子部品の本体筐体部材。
【請求項5】
複数の本体筐体部材が接合材を介して接合されて本体筐体が構成され、この本体筐体の内部空間に電子部品素子が気密封止される電子部品において、
前記複数の本体筐体部材が、少なくとも金と錫とからなる接合材を用いて接合され、前記接合材は金リッチ相の金錫接合材として生成されたことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−170748(P2009−170748A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8785(P2008−8785)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)