説明

電子部品素子

【課題】透明導電膜を保護し、さらに透明導電膜の保護だけでなく、透明導電膜を保護することで新たに発生した不具合も防止する。
【解決手段】電子部品素子1では、基板2と、この基板2上に形成されたITO膜3と、このITO膜3上に形成され前記ITO膜3の表面を保護する保護膜4とが設けられている。保護膜4は、少なくとも、SiOx膜41と、Nを含むSi化合物からなるSiN膜12とからなり、ITO膜3上にSiN膜42、SiOx膜41の順に積層形成されて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に透明導電膜を形成した電子部品素子に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に透明導電膜を形成した電子部品素子の従来技術に、基板の両面にSiO2膜を形成し、基板の一表面に形成したSiO2膜上に透明導電膜を形成するものがある(例えば、特許文献参照)。
【0003】
この特許文献に記載の電子部品素子は、ディスプレイの表示部に用いられ、特許文献によれば、基板上に形成したSiO2膜上に透明導電膜を形成することで、反射防止効果を有する高透過率の電子部品素子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−194783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した特許文献では、透明導電膜が最上位層となり露出した状態となるため、透明導電膜にキズがついたりする。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、透明導電膜を保護し、さらに透明導電膜の保護だけでなく、透明導電膜を保護することで新たに発生する不具合も防止する電子部品素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品素子は、基板と、この基板上に形成された透明導電膜と、この透明導電膜上に形成され前記透明導電膜の表面を保護する保護膜とが設けられ、前記保護膜は、少なくとも、SiOx膜と、Nを含むSi化合物からなるSiN膜とからなり、前記透明導電膜上に前記SiN膜、前記SiOx膜の順に積層形成されて構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、前記基板と前記透明導電膜と前記保護膜とが設けられ、前記保護膜は、少なくとも前記SiOx膜と前記SiN膜とからなり、前記透明導電膜上に前記SiN膜、前記SiOx膜の順に積層形成されて構成されるので、前記透明導電膜を保護し、さらに前記透明導電膜の保護だけでなく、前記透明導電膜を保護することで新たに発生した不具合も防止することが可能となる。
【0009】
具体的に、前記透明導電膜上に前記SiN膜、前記SiOx膜の順に形成されるので、前記保護膜により前記透明導電膜を保護するとともに、前記SiN膜により前記透明導電膜と前記SiOx膜との密着強度を高めることが可能となる。また、透過率などの光学特性も劣化しない。さらに、本発明によれば、前記透明導電膜上に前記SiN膜を介在させて前記SiOx膜が形成されるので、当該電子部品素子の耐摩耗性や耐食性を向上させることが可能となる。特に、前記基板に前記透明導電膜と前記保護膜を形成した後に当該電子部品素子をアルコール洗浄した場合であっても、前記透明導電膜から前記保護膜が剥がれ難くなる。
【0010】
前記構成において、前記SiOx膜は、SiO2からなり、前記SiN膜は、SiN、SiON、Si34のいずれかからなってもよい。
【0011】
この場合、前記SiN膜は、SiN、SiON、Si34のいずれかからなっても、色度に影響をしない膜構成とすることが可能となる。これは、SiO2からなる前記SiOx膜を前記透明導電膜に密着強度良くさせるためであっても薄膜の前記SiN膜で足りるためである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明導電膜を保護し、さらに透明導電膜の保護だけでなく、透明導電膜を保護することで新たに発生した不具合も防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる電子部品素子の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明の実施の形態にかかる電子部品素子1は、ディスプレイの電子部品素子のディスプレイ部に用いられる。
【0016】
具体的に、この電子部品素子1では、図1に示すように、ガラス基板からなる基板2の一表面21上に、無機材料の導電膜であるITO膜3と、このITO膜3の表面を保護する保護膜4とが順に積層されている。なお、本実施の形態では、導電膜として透明導電膜であるITO膜3を用いている。
【0017】
また、基板2の他表面22上に、透明導電膜であるITO膜3が形成され、このITO膜3上に、電極となるメタル部5(図1の記号M参照)と、ITO膜3およびメタル部5の一部の表面を保護する保護膜4とが積層形成されている。
【0018】
保護膜4は、少なくとも、SiOx膜41と、Nを含むSi化合物からなるSiN膜42とから構成され、ITO膜3の一表面21上にSiN膜42、SiOx膜41の順に積層形成されている。
【0019】
具体的に、本実施の形態にかかる保護膜4では、SiOx膜41はSiO2からなり、その膜厚は50〜100nmに設定されている。また、SiN膜42はSiNからなり、その膜厚は1〜5nmに設定されている。なお、本実施の形態にかかるSiN膜42の膜厚は、透過率を85%以上に保つことができる設定となっている。また、透過率は90%以上であることがより好ましい。
【0020】
上記した構成からなる電子部品素子1では、基板2の両表面(一表面21,他表面22)に、プラズマを使ったスパッタリング法によりITO膜3を形成する。ITO膜3形成後、基板2の他表面22にメタル部5を形成して電極のパターンニングを行い、電極を構成する。メタル部5の形成後、基板の両表面21,22のITO膜3およびメタル部5上に、プラズマを使ったスパッタリング法により保護膜4のうち、SiN膜42を形成し、さらにSiN膜42上にSiOx膜41を形成する。すなわち、基板の両表面21,22のITO膜3およびメタル部5上に、SiN膜42、SiOx膜41を順に積層形成して、メタル部5の電極による配線パターンを形成した基板2を構成する。
【0021】
上記したように、本実施の形態にかかる電子部品素子1によれば、基板2とITO膜3と保護膜4とが設けられ、保護膜4はSiOx膜41とSiN膜42とから構成され、ITO膜3上にSiN膜42、SiOx膜41の順に積層形成されるので、ITO膜3を保護し、さらにITO膜3の保護だけでなく、ITO膜3を保護することで新たに発生した不具合も防止することができる。
【0022】
具体的に、ITO膜3上にSiN膜42、SiOx膜41の順に形成されるので、保護膜4によりITO膜3を保護するとともに、SiN膜42によりITO膜3とSiOx膜41との密着強度を高めることができる。また、透過率などの光学特性も劣化しない。さらに、本実施の形態によれば、ITO膜3上にSiN膜42を介在させてSiOx膜41が形成されるので、当該電子部品素子1の耐摩耗性や耐食性を向上させることができる。特に、基板2にITO膜3と保護膜を形成した後に当該電子部品素子1をアルコール洗浄した場合であっても、ITO膜3から保護膜4が剥がれ難くなる。
【0023】
また、SiOx膜41はSiO2からなり、SiN膜42はSiNからなるので、色度に影響をしない膜構成とすることができる。これは、SiO2からなるSiOx膜41をITO膜3に密着強度良くさせるためであっても薄膜のSiN膜42で足りるためである。
【0024】
なお、本実施の形態では、基板2にガラス基板を用いているが、これに限定されるものではなく、セラミックなどの他の材料であってもよい。
【0025】
また、本実施の形態では、基板2の一表面21上に、ITO膜3と保護膜4とが順に積層されているが、これに限定されるものではなく、基板2の他表面22上にITO膜3と保護膜4が積層形成されてもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、ディスプレイの電子部品素子のディスプレイ部に本発明を適用しているが、これに限定されるものではなく、配線パターンを形成する電子部品素子であれば他の形態ものであってもよい。例えば、他の電子回路に用いる半導体素子や、太陽電池モジュールなどの屋外で用いられる電子部品素子などであってもよい。
【0027】
また、本実施の形態では、SiN膜42としてSiNを材料としているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、Nを含むSi化合物からなるものであれば、他にSiON、Si34であってもよい。なお、本実施の形態では、便宜上SiN膜という用語を用いているが、これはNを含むSi化合物からなる膜のことをいう。
【0028】
また、本実施の形態では、SiOx膜41としてSiO2を材料としているが、これは好適な例であり、これに限定されるものではなく、SiO3などの他のSiOxであってもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、保護膜4がSiN膜42とSiOx膜41とを積層した構成からなるが、これに限定されるものではなく、SiOx膜41に更に別の膜が積層形成されてもよい。すなわち、保護膜4は、少なくともSiN膜42とSiOx膜41とが基板2上に順に積層されていれば、その上にさらに膜が積層されてもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、導電膜としてITO膜3を用いているが、これに限定されるものではなく、無機材料の導電膜であってその上層に積層するSiOx膜との密着性をSiN膜を介在させることで強めるITO膜と同等の成分からなる材料であればよい。
【0031】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明では、電子部品に用いられる電子部品素子(配線パターンを施した素子)に有用であり、具体的に、半導体素子やディスプレイ用素子、太陽電池モジュールなどの屋外で用いられる電子部品素子などが挙げられる。
【符号の説明】
【0033】
1 電子部品素子
2 基板
21 一表面
22 他表面
3 ITO膜
4 保護膜
41 SiOx膜
42 SiN膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素子において、
基板と、この基板上に形成された透明導電膜と、この透明導電膜上に形成され前記透明導電膜の表面を保護する保護膜とが設けられ、
前記保護膜は、少なくとも、SiOx膜と、Nを含むSi化合物からなるSiN膜とから構成され、
前記透明導電膜上に前記SiN膜、前記SiOx膜の順に積層形成されたことを特徴とする電子部品素子。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品素子において、
前記SiOx膜は、SiO2からなり、
前記SiN膜は、SiN、SiON、Si34のいずれかからなることを特徴とする電子部品素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−148405(P2012−148405A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121205(P2009−121205)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(391006429)三容真空工業株式会社 (13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】