電子銃の脱ガス方法、電子銃、並びに電子線照射装置
【課題】構造物にイオン照射によるダメージを与えずに、また、ボンバード処理の効率を向上させることにより、生産工程の短縮およびメンテナンス時間を短縮させることができる。
【解決手段】電子線発生部に対向して配置された引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去する電子銃の脱ガス方法を提供する。
【解決手段】電子線発生部に対向して配置された引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去する電子銃の脱ガス方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃の脱ガス方法、電子銃、並びに電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡に代表される電子線照射装置において、荷電粒子線を細く絞るためには光源となる電子源を先鋭化する必要があり、現在電子源を加熱して使用するショットキー型電子銃と電子源を室温で使用する電界放出型電子銃が広く用いられている。しかしながらこれらの電子銃はその他の熱電子放出型電子銃よりも低い圧力環境を必要とし、特に電子源周囲では10-7Pa〜10-8Paの超高真空に達する圧力環境を必要とする。このような超高真空を得るため、電子源室および電子源の周囲は加熱処理によって放出ガスを減じる処理が行われる。
【0003】
この加熱処理に伴い電子放出が行われ、さらにこの電子放出が行われることによって脱離するガス(電子励起脱離ガス(ESD)という)がある。このガスの離脱、すなわち、ガスの放出は、電子源室の到達圧力が十分低くても電子ビームの安定性を損ねる原因となる。この電子励起脱離ガスは一次電子による電子ビーム通路付近から発生するもののみならず、反射電子や二次電子に励起されるものも含まれるため、電子ビーム通路から離れていて一次電子が当たらない部分からも放出される。この一次電子が当たらない部分、特に二次電子や反射電子によって放出されるガスは、そのエネルギーや電流密度が小さいために微量のガスを長期にわたって放出し続ける。
【0004】
立ち上げ工程において、前記加熱処理は真空排気工程と合わせて立ち上げ時間の約半分の時間を占めるが、残りの時間は電子ビームを安定化させるためのボンバード処理やエージング処理に費やされる。これらの処理は、電子銃立上げ時にESDを低減しておくことを目的として行われる。
【0005】
超高真空を必要とする電子銃でも特に電界放出型電子銃は電子源を加熱していないために放出ガスの影響に敏感であり、電子銃の立ち上げ作業の際に電子ビームによる電子励起脱離を加速させるボンバード処理が必要である。このボンバード処理は反射電子や二次電子を用いるため、数10時間を必要とされることがあり、新規に製作する電子銃やメンテナンスのために大気にさらした電子銃の立ち上げ作業に必要な時間の10〜50%におよぶ時間を占めていた。
【0006】
一方、イオン銃の内部の汚れを除去する手段として、特許文献1には、各電極に印加する電圧を変えてイオンを照射し、所定電極のみを選択的にスパッタさせることができる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−257328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の上述した技術では、ガス導入式のイオン銃が対象であり、スパッタされた構造物起因による汚染物質を取り除くことを主目的としており、また、超高真空領域での使用が考慮されていないため、構造物にイオン照射によるダメージを与えずに脱ガスさせることができないという課題があった。
【0009】
本発明は、構造物にイオン照射によるダメージを与えずに、また、ボンバード処理の効率を向上させることにより、生産工程の短縮およびメンテナンス時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、電子線発生部に対向して配置された引出電極と前記電子線発生部との間の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去する電子銃の脱ガス方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、構造物にイオン照射によるダメージを与えずに、また、ボンバード処理の効率を向上させることにより、生産工程の短縮およびメンテナンス時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における電界放出型電子銃の一例を示す概略構成図である。
【図2a】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+3kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2b】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2c】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+1kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2d】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+0.5kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2e】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧0kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2f】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧−2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2g】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧−7kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図3】従来例としての電界放出型電子銃の概念構成図である。
【図4】本発明の実施形態と従来技術とのボンバード処理による圧力変化を表したグラフである。
【図5】本発明の実施形態における電子銃の概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態における加速電圧と追い返し電圧の印加電源を兼用とし、モード切替スイッチで切り替える例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈本発明の第一の実施形態〉
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態は例示として挙げるものであり、これにより本発明を限定的に解釈するものではない。
【0014】
また、以下に説明する実施の形態では、電界放出型電子銃を例にとって説明するが、これに限られることはなく、ショットキー型電子銃に適用することも可能である。
【0015】
図1は本発明の第一の実施形態における電界放出型電子銃の一例を示す概略構成図である。
【0016】
引出電極2に印加された引出電圧により電子線発生部としてのエミッタ1から放射した一次電子3は、エミッタ1に対向した配置された引出電極2に照射される分と引出電極2のオリフィスを通過する分に分かれ、引出電極2に照射された一次電子3は反射電子5と二次電子6を発生させる。通常、引出電極2のオリフィスを通過した一次電子3は、引出電極2からみてエミッタ1とは反対側に配置された加速電極4に印加された加速電圧によってさらに加速あるいは減速され、加速電極4に照射される分と加速電極4のオリフィスを通過する分とに分かれる。図1に示す実施形態では加速電圧を0Vとし加速電極には追い返し電圧として0Vまたは負の電圧としている。このとき加速電極4に負の電圧を印加すると引出電極2のオリフィスを通過した一次電子3は、加速電極4に到達する前に引出電極2と加速電極4の間の電界によって引出電極2側に引き戻される。これにより、通常は反射電子5や二次電子6のみが当たる引出電極2下面(引出電極2の加速電極4対向面)にエネルギーの高い一次電子3が当たることになり、ボンバード処理による電子励起脱離を促進させることが可能となる。
【0017】
図2aから図2gまでは、引出電圧を3kVに固定して追い返し電圧を変化させたときの一次電子3の軌道をシミュレーションした図である。図2aは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+3kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2bは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2cは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+1kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2dは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+0.5kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2eは、引出電圧+3kV、追い返し電圧0kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2fは、引出電圧+3kV、追い返し電圧−2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2gは、引出電圧+3kV、追い返し電圧−7kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2aから図2gに示されるように、追い返し電圧を変化させることで一次電子3を当てる範囲を変えることが可能であり、引出電圧も変化させることによって電流密度を変えることが可能である。
【0018】
図3は従来例としての電界放出型電子銃の概念構成図である。
【0019】
この従来例によれば、引出電極2から電子励起脱離ガスを放出させるために一次電子3を使用することができず、エネルギーと電子密度が低い二次電子6や反射電子5を使用していた。この方法ではそのエネルギーと電子密度の低さから十分な電子励起ができず、実際の装置使用状況で電子励起脱離ガスの影響を受け、安定な電子ビームを得るまでに長時間を要していた。しかし本実施形態によれば、エネルギーと電子密度が高い一次電子を電子励起に使用することが可能であり、電圧を変化させることで一次電子3の当てる範囲を変える、あるいは引出電圧を変化させることによって電流密度を変えることも可能となり、電子励起脱離ガスを効率放出させ、初期の電子銃の立ち上げやメンテナンスで電子銃を大気開放した後の立ち上げを短時間で実施することが可能となる。
【0020】
例えば、本実施形態においては、構造物の脱ガスを目的としているため、効率よく脱ガスが行われれば、脱ガス中の圧力は上昇する。よって、電子源付近の圧力を監視しながら電子照射範囲や電流密度・照射エネルギーを変えることによって、脱離ガスが多い部分に対し、集中的にボンバード処理をすることが可能となる。
【0021】
図4は本発明の第一の実施形態と従来技術とのボンバード処理による圧力変化を表したグラフである。本発明の第一の実施形態は従来技術と比較してエネルギーの高い一次電子を使い、圧力を監視してガス放出が多い部分を中心に電流密度を調整しながら効率良く脱ガスが行えるため、一定圧力に達するまでの時間を短縮できる効果がある。
【0022】
図5は本発明の第一の実施形態における電子銃の概略構成図であり、電界放出型電子銃を実施例としている。図1に示した概念図に対し、電子銃室101を真空排気するイオンポンプ8およびイオンポンプ8に高電圧を印加してイオン電流を測定・表示できるイオンポンプ電源9を備え、引出電極2に一次電子3を追い返す電圧を印加できる構成となっている。電子銃室101は、少なくとも引出電極2、加速電極4、エミッタ1を収容するように構成されている。
【0023】
高電圧電源ユニット10は、フラッシング電源、引出電圧、加速電圧を調整可能なように構成されている。
【0024】
イオンポンプ8をチップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間、加速電極4−区画壁間に個別に設ける構成となっている。このようチップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間、加速電極4−区画壁間に個別に設けることで、脱ガスされている部位を認識しやすく、適切に、圧力を調整することが可能となる。すなわち、電子源付近の圧力を監視しながら電子照射範囲や電流密度・照射エネルギーを変えることによって、脱離ガスが多い部分に対し、集中的にボンバード処理をすることが可能となる。なお、本実施形態では、チップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間、加速電極4−区画壁間にそれぞれ、合計3つのイオンポンプを設けるようにしているが、例えば、チップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間の2つのイオンポンプを設けるようにしても良い。また、上述した圧力調整をするためにイオンポンプ8自身にそれぞれ圧力計を設けても良いし、図5に示すようにイオンポンプ8とは個別に圧力計100を設けてこの圧力計100の検出する値に基づき、電子照射範囲や電流密度・照射エネルギーを変える。また、好適には、イオンポンプ8の出力電流値を検出可能な電流計をイオンポンプ8若しくはイオンポンプ電源9に設け、この電流計の検出するイオンポンプ8の出力電流値に基づき前記真空状態を監視するように構成されても良い。
【0025】
なお、イオンポンプ電源9、圧力計100、高電圧電源ユニット10、加速電極4(追い返し電圧)等、電子銃内の動作を行うものは全て制御部100と電気的に接続され、制御部100により制御されるように構成されている。
【0026】
引出電極2に通常使用条件での電圧を印加して電子ビームを放出させた状態で、0V(GND)あるいは正の電位が与えられる加速電極4に電子源(カソード)よりも低い電位として、特に負の電位を印加する。加速電極に正の電位が印加されたことによって一次電子は減速・方向転換して引出電極2の裏側に照射される。
【0027】
好適には、加速電極4に負電位を与えることにより、負の電位差を形成し、脱ガス処理の開始時に電子銃室101の真空(圧力)を監視し、加速電極4に与える負電圧を監視される圧力に応じて調整するように制御するとより一層効率の良い脱ガス処理が可能となる。また、好適には、脱ガス処理の開始時に電子銃室101の真空(圧力)を監視し、引出電極2に与える正電圧を監視される圧力に応じて調整するように制御することとより一層効率の良い脱ガス処理が可能となる。さらに、脱ガス処理の継続中に電子銃室101の圧力を監視し、電子銃室101の圧力が所定値以下になった場合に前記脱ガスを終了すると無駄に時間を費やすことなく、より一層効率の良い脱ガス処理が可能となる。その際、予め圧力値がどの程度となれば、脱ガス処理がなされていると判断できるかを求めておき、所定値を制御部100に記憶しておくと良い。
【0028】
本実施形態によれば、電子励起脱離を促進することが可能となり、従来の二次電子や反射電子を使った電子励起脱離よりも短時間でボンバード処理を終了させることができ、ひいては電子銃の立ち上げ時間の短縮につながる(構造物や付着した汚れをイオンスパッタリングで削り取る)。本実施形態ではスパッタリングによる構造物へのダメージが考慮されており、超高真空領域で構造物を使用するための効率が良い脱ガスを実現することができる。
【0029】
〈本発明の第二の実施形態〉
図6に本発明の第二の実施形態を示す。第一の実施形態と異なる点は、加速電圧印加電源と追い返し電圧印加電源とを兼用とし、引出電極と加速電圧の間に形成する電位差の正負を切り替える切替部としても機能するモード切替スイッチ11を備える形態となっている点であり、その他は同様としている。電子銃が、エミッタ1と、引出電極2と、加速電極4と、電子銃室101と、引出電極2および加速電極4との間に形成する第一の電位差を与える電源と、引出電極2と加速電極4の間に形成する第二の電位差の正負をモード切替スイッチ11と、引出電極2とエミッタ1との間の電位差および加速電極4と引出電極2との間に電子線に対する負の電位差を形成するよう少なくともモード切替スイッチ11を制御する制御部100と、を備えるように構成されている。さらに、制御部100は、第一の電位差によりエミッタ1から放出された電子線が、引出電極2を通過し、第二の電位差を形成し、引出電極2から加速電極4側に放出される電子線を引出電極2側に引き戻し、引き戻された電子線により引出電極2の加速電極4対向面に吸着したガス分子を除去するようにモード切替スイッチ11を少なくとも制御するように構成されている。
【0030】
モード切替スイッチ11の切替操作により、加速電圧への印加と、追い返し電圧への印加を切り替えることができるため、加速電圧印加電源と追い返し電圧印加電源とを共通化することができ、余計な電源を設けなくてすむ。なお、上述した形態は、電子線を放出する電子銃と、放出された電子線を試料上に導く電子光学系とを備え、電子線を試料に照射することにより得られる二次電子ないし透過電子を検出して、電子線の照射位置の画像を取得する画像取得部を備える電子線照射装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 エミッタ
2 引出電極
3 一次電子
4 加速電極
5 反射電子
6 二次電子
7 絶縁碍子
8 イオンポンプ
9 イオンポンプ電源
10 高電圧電源ユニット
11 モード切替スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃の脱ガス方法、電子銃、並びに電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡に代表される電子線照射装置において、荷電粒子線を細く絞るためには光源となる電子源を先鋭化する必要があり、現在電子源を加熱して使用するショットキー型電子銃と電子源を室温で使用する電界放出型電子銃が広く用いられている。しかしながらこれらの電子銃はその他の熱電子放出型電子銃よりも低い圧力環境を必要とし、特に電子源周囲では10-7Pa〜10-8Paの超高真空に達する圧力環境を必要とする。このような超高真空を得るため、電子源室および電子源の周囲は加熱処理によって放出ガスを減じる処理が行われる。
【0003】
この加熱処理に伴い電子放出が行われ、さらにこの電子放出が行われることによって脱離するガス(電子励起脱離ガス(ESD)という)がある。このガスの離脱、すなわち、ガスの放出は、電子源室の到達圧力が十分低くても電子ビームの安定性を損ねる原因となる。この電子励起脱離ガスは一次電子による電子ビーム通路付近から発生するもののみならず、反射電子や二次電子に励起されるものも含まれるため、電子ビーム通路から離れていて一次電子が当たらない部分からも放出される。この一次電子が当たらない部分、特に二次電子や反射電子によって放出されるガスは、そのエネルギーや電流密度が小さいために微量のガスを長期にわたって放出し続ける。
【0004】
立ち上げ工程において、前記加熱処理は真空排気工程と合わせて立ち上げ時間の約半分の時間を占めるが、残りの時間は電子ビームを安定化させるためのボンバード処理やエージング処理に費やされる。これらの処理は、電子銃立上げ時にESDを低減しておくことを目的として行われる。
【0005】
超高真空を必要とする電子銃でも特に電界放出型電子銃は電子源を加熱していないために放出ガスの影響に敏感であり、電子銃の立ち上げ作業の際に電子ビームによる電子励起脱離を加速させるボンバード処理が必要である。このボンバード処理は反射電子や二次電子を用いるため、数10時間を必要とされることがあり、新規に製作する電子銃やメンテナンスのために大気にさらした電子銃の立ち上げ作業に必要な時間の10〜50%におよぶ時間を占めていた。
【0006】
一方、イオン銃の内部の汚れを除去する手段として、特許文献1には、各電極に印加する電圧を変えてイオンを照射し、所定電極のみを選択的にスパッタさせることができる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−257328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の上述した技術では、ガス導入式のイオン銃が対象であり、スパッタされた構造物起因による汚染物質を取り除くことを主目的としており、また、超高真空領域での使用が考慮されていないため、構造物にイオン照射によるダメージを与えずに脱ガスさせることができないという課題があった。
【0009】
本発明は、構造物にイオン照射によるダメージを与えずに、また、ボンバード処理の効率を向上させることにより、生産工程の短縮およびメンテナンス時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、電子線発生部に対向して配置された引出電極と前記電子線発生部との間の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去する電子銃の脱ガス方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、構造物にイオン照射によるダメージを与えずに、また、ボンバード処理の効率を向上させることにより、生産工程の短縮およびメンテナンス時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態における電界放出型電子銃の一例を示す概略構成図である。
【図2a】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+3kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2b】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2c】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+1kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2d】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧+0.5kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2e】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧0kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2f】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧−2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図2g】本発明の実施形態における引出電圧+3kV、追い返し電圧−7kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。
【図3】従来例としての電界放出型電子銃の概念構成図である。
【図4】本発明の実施形態と従来技術とのボンバード処理による圧力変化を表したグラフである。
【図5】本発明の実施形態における電子銃の概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態における加速電圧と追い返し電圧の印加電源を兼用とし、モード切替スイッチで切り替える例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈本発明の第一の実施形態〉
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施の形態は例示として挙げるものであり、これにより本発明を限定的に解釈するものではない。
【0014】
また、以下に説明する実施の形態では、電界放出型電子銃を例にとって説明するが、これに限られることはなく、ショットキー型電子銃に適用することも可能である。
【0015】
図1は本発明の第一の実施形態における電界放出型電子銃の一例を示す概略構成図である。
【0016】
引出電極2に印加された引出電圧により電子線発生部としてのエミッタ1から放射した一次電子3は、エミッタ1に対向した配置された引出電極2に照射される分と引出電極2のオリフィスを通過する分に分かれ、引出電極2に照射された一次電子3は反射電子5と二次電子6を発生させる。通常、引出電極2のオリフィスを通過した一次電子3は、引出電極2からみてエミッタ1とは反対側に配置された加速電極4に印加された加速電圧によってさらに加速あるいは減速され、加速電極4に照射される分と加速電極4のオリフィスを通過する分とに分かれる。図1に示す実施形態では加速電圧を0Vとし加速電極には追い返し電圧として0Vまたは負の電圧としている。このとき加速電極4に負の電圧を印加すると引出電極2のオリフィスを通過した一次電子3は、加速電極4に到達する前に引出電極2と加速電極4の間の電界によって引出電極2側に引き戻される。これにより、通常は反射電子5や二次電子6のみが当たる引出電極2下面(引出電極2の加速電極4対向面)にエネルギーの高い一次電子3が当たることになり、ボンバード処理による電子励起脱離を促進させることが可能となる。
【0017】
図2aから図2gまでは、引出電圧を3kVに固定して追い返し電圧を変化させたときの一次電子3の軌道をシミュレーションした図である。図2aは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+3kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2bは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2cは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+1kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2dは、引出電圧+3kV、追い返し電圧+0.5kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2eは、引出電圧+3kV、追い返し電圧0kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2fは、引出電圧+3kV、追い返し電圧−2kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2gは、引出電圧+3kV、追い返し電圧−7kVとした場合の電子軌道のシミュレーション図である。図2aから図2gに示されるように、追い返し電圧を変化させることで一次電子3を当てる範囲を変えることが可能であり、引出電圧も変化させることによって電流密度を変えることが可能である。
【0018】
図3は従来例としての電界放出型電子銃の概念構成図である。
【0019】
この従来例によれば、引出電極2から電子励起脱離ガスを放出させるために一次電子3を使用することができず、エネルギーと電子密度が低い二次電子6や反射電子5を使用していた。この方法ではそのエネルギーと電子密度の低さから十分な電子励起ができず、実際の装置使用状況で電子励起脱離ガスの影響を受け、安定な電子ビームを得るまでに長時間を要していた。しかし本実施形態によれば、エネルギーと電子密度が高い一次電子を電子励起に使用することが可能であり、電圧を変化させることで一次電子3の当てる範囲を変える、あるいは引出電圧を変化させることによって電流密度を変えることも可能となり、電子励起脱離ガスを効率放出させ、初期の電子銃の立ち上げやメンテナンスで電子銃を大気開放した後の立ち上げを短時間で実施することが可能となる。
【0020】
例えば、本実施形態においては、構造物の脱ガスを目的としているため、効率よく脱ガスが行われれば、脱ガス中の圧力は上昇する。よって、電子源付近の圧力を監視しながら電子照射範囲や電流密度・照射エネルギーを変えることによって、脱離ガスが多い部分に対し、集中的にボンバード処理をすることが可能となる。
【0021】
図4は本発明の第一の実施形態と従来技術とのボンバード処理による圧力変化を表したグラフである。本発明の第一の実施形態は従来技術と比較してエネルギーの高い一次電子を使い、圧力を監視してガス放出が多い部分を中心に電流密度を調整しながら効率良く脱ガスが行えるため、一定圧力に達するまでの時間を短縮できる効果がある。
【0022】
図5は本発明の第一の実施形態における電子銃の概略構成図であり、電界放出型電子銃を実施例としている。図1に示した概念図に対し、電子銃室101を真空排気するイオンポンプ8およびイオンポンプ8に高電圧を印加してイオン電流を測定・表示できるイオンポンプ電源9を備え、引出電極2に一次電子3を追い返す電圧を印加できる構成となっている。電子銃室101は、少なくとも引出電極2、加速電極4、エミッタ1を収容するように構成されている。
【0023】
高電圧電源ユニット10は、フラッシング電源、引出電圧、加速電圧を調整可能なように構成されている。
【0024】
イオンポンプ8をチップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間、加速電極4−区画壁間に個別に設ける構成となっている。このようチップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間、加速電極4−区画壁間に個別に設けることで、脱ガスされている部位を認識しやすく、適切に、圧力を調整することが可能となる。すなわち、電子源付近の圧力を監視しながら電子照射範囲や電流密度・照射エネルギーを変えることによって、脱離ガスが多い部分に対し、集中的にボンバード処理をすることが可能となる。なお、本実施形態では、チップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間、加速電極4−区画壁間にそれぞれ、合計3つのイオンポンプを設けるようにしているが、例えば、チップ−引出電極2間、引出電極2−加速電極4間の2つのイオンポンプを設けるようにしても良い。また、上述した圧力調整をするためにイオンポンプ8自身にそれぞれ圧力計を設けても良いし、図5に示すようにイオンポンプ8とは個別に圧力計100を設けてこの圧力計100の検出する値に基づき、電子照射範囲や電流密度・照射エネルギーを変える。また、好適には、イオンポンプ8の出力電流値を検出可能な電流計をイオンポンプ8若しくはイオンポンプ電源9に設け、この電流計の検出するイオンポンプ8の出力電流値に基づき前記真空状態を監視するように構成されても良い。
【0025】
なお、イオンポンプ電源9、圧力計100、高電圧電源ユニット10、加速電極4(追い返し電圧)等、電子銃内の動作を行うものは全て制御部100と電気的に接続され、制御部100により制御されるように構成されている。
【0026】
引出電極2に通常使用条件での電圧を印加して電子ビームを放出させた状態で、0V(GND)あるいは正の電位が与えられる加速電極4に電子源(カソード)よりも低い電位として、特に負の電位を印加する。加速電極に正の電位が印加されたことによって一次電子は減速・方向転換して引出電極2の裏側に照射される。
【0027】
好適には、加速電極4に負電位を与えることにより、負の電位差を形成し、脱ガス処理の開始時に電子銃室101の真空(圧力)を監視し、加速電極4に与える負電圧を監視される圧力に応じて調整するように制御するとより一層効率の良い脱ガス処理が可能となる。また、好適には、脱ガス処理の開始時に電子銃室101の真空(圧力)を監視し、引出電極2に与える正電圧を監視される圧力に応じて調整するように制御することとより一層効率の良い脱ガス処理が可能となる。さらに、脱ガス処理の継続中に電子銃室101の圧力を監視し、電子銃室101の圧力が所定値以下になった場合に前記脱ガスを終了すると無駄に時間を費やすことなく、より一層効率の良い脱ガス処理が可能となる。その際、予め圧力値がどの程度となれば、脱ガス処理がなされていると判断できるかを求めておき、所定値を制御部100に記憶しておくと良い。
【0028】
本実施形態によれば、電子励起脱離を促進することが可能となり、従来の二次電子や反射電子を使った電子励起脱離よりも短時間でボンバード処理を終了させることができ、ひいては電子銃の立ち上げ時間の短縮につながる(構造物や付着した汚れをイオンスパッタリングで削り取る)。本実施形態ではスパッタリングによる構造物へのダメージが考慮されており、超高真空領域で構造物を使用するための効率が良い脱ガスを実現することができる。
【0029】
〈本発明の第二の実施形態〉
図6に本発明の第二の実施形態を示す。第一の実施形態と異なる点は、加速電圧印加電源と追い返し電圧印加電源とを兼用とし、引出電極と加速電圧の間に形成する電位差の正負を切り替える切替部としても機能するモード切替スイッチ11を備える形態となっている点であり、その他は同様としている。電子銃が、エミッタ1と、引出電極2と、加速電極4と、電子銃室101と、引出電極2および加速電極4との間に形成する第一の電位差を与える電源と、引出電極2と加速電極4の間に形成する第二の電位差の正負をモード切替スイッチ11と、引出電極2とエミッタ1との間の電位差および加速電極4と引出電極2との間に電子線に対する負の電位差を形成するよう少なくともモード切替スイッチ11を制御する制御部100と、を備えるように構成されている。さらに、制御部100は、第一の電位差によりエミッタ1から放出された電子線が、引出電極2を通過し、第二の電位差を形成し、引出電極2から加速電極4側に放出される電子線を引出電極2側に引き戻し、引き戻された電子線により引出電極2の加速電極4対向面に吸着したガス分子を除去するようにモード切替スイッチ11を少なくとも制御するように構成されている。
【0030】
モード切替スイッチ11の切替操作により、加速電圧への印加と、追い返し電圧への印加を切り替えることができるため、加速電圧印加電源と追い返し電圧印加電源とを共通化することができ、余計な電源を設けなくてすむ。なお、上述した形態は、電子線を放出する電子銃と、放出された電子線を試料上に導く電子光学系とを備え、電子線を試料に照射することにより得られる二次電子ないし透過電子を検出して、電子線の照射位置の画像を取得する画像取得部を備える電子線照射装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 エミッタ
2 引出電極
3 一次電子
4 加速電極
5 反射電子
6 二次電子
7 絶縁碍子
8 イオンポンプ
9 イオンポンプ電源
10 高電圧電源ユニット
11 モード切替スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線発生部に対向して配置された引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去する電子銃の脱ガス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記加速電極に負電位を与えることにより、前記負の電位差を形成し、
前記脱ガスの開始時に前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する前記電子銃室の圧力を監視し、
前記加速電極に与える負電圧を前記監視される圧力に応じて調整する電子銃の脱ガス方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記脱ガスの開始時に前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する前記電子銃室の圧力を監視し、
前記引出電極に与える正電圧を前記監視される圧力に応じて調整する電子銃の脱ガス方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記脱ガスの継続中に前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する前記電子銃室の圧力を監視し、
当該電子銃室の圧力が所定値以下になった場合に前記脱ガスを終了する電子銃の脱ガス方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記電子銃室に備えられたイオンポンプの出力電流値に基づき前記圧力監視を行う電子銃の脱ガス方法。
【請求項6】
電子線を発生する電子線発生部と、該電子線発生部に対向して配置された引出電極と、該引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と、前記引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差および前記加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成するよう制御する制御部とを備え、
前記制御部は、第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去するように制御する電子銃。
【請求項7】
請求項6に記載の電子銃において、
前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する電子銃室と、
前記電子銃室に備えられたイオンポンプと、
当該イオンポンプの出力電流を計測する電流計と、を備え、
前記制御部は、当該電流計の計測値により前記電子銃室内の真空度をする電子銃。
【請求項8】
電子線を放出する電子銃と、前記放出された電子線を試料上に導く電子光学系とを備え、前記電子線を前記試料に照射することにより得られる二次電子ないし透過電子を検出して、前記電子線の照射位置の画像を取得する画像取得部とを備えた電子線照射装置であって、
前記電子銃が、
電子線を発生する電子線発生部と、
当該電子線発生部に対向して配置された引出電極と、
当該引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と、
前記電子線発生部、前記引出電極および前記加速電極を収納する電子銃室と、
前記引出電極および前記加速電極との間に形成する電位差を与える電源と、
前記引出電極と前記加速電圧の間に形成する電位差の正負を切り替える切替部と、
前記引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差および前記加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成するよう少なくとも前記切替部を制御する制御部と、
を備え、前記制御部は、第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去するように前記切替部を少なくとも制御する電子線照射装置。
【請求項1】
電子線発生部に対向して配置された引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去する電子銃の脱ガス方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記加速電極に負電位を与えることにより、前記負の電位差を形成し、
前記脱ガスの開始時に前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する前記電子銃室の圧力を監視し、
前記加速電極に与える負電圧を前記監視される圧力に応じて調整する電子銃の脱ガス方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記脱ガスの開始時に前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する前記電子銃室の圧力を監視し、
前記引出電極に与える正電圧を前記監視される圧力に応じて調整する電子銃の脱ガス方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記脱ガスの継続中に前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する前記電子銃室の圧力を監視し、
当該電子銃室の圧力が所定値以下になった場合に前記脱ガスを終了する電子銃の脱ガス方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の電子銃の脱ガス方法において、
前記電子銃室に備えられたイオンポンプの出力電流値に基づき前記圧力監視を行う電子銃の脱ガス方法。
【請求項6】
電子線を発生する電子線発生部と、該電子線発生部に対向して配置された引出電極と、該引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と、前記引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差および前記加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成するよう制御する制御部とを備え、
前記制御部は、第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去するように制御する電子銃。
【請求項7】
請求項6に記載の電子銃において、
前記引出電極、前記加速電極、前記電子線発生部を収容する電子銃室と、
前記電子銃室に備えられたイオンポンプと、
当該イオンポンプの出力電流を計測する電流計と、を備え、
前記制御部は、当該電流計の計測値により前記電子銃室内の真空度をする電子銃。
【請求項8】
電子線を放出する電子銃と、前記放出された電子線を試料上に導く電子光学系とを備え、前記電子線を前記試料に照射することにより得られる二次電子ないし透過電子を検出して、前記電子線の照射位置の画像を取得する画像取得部とを備えた電子線照射装置であって、
前記電子銃が、
電子線を発生する電子線発生部と、
当該電子線発生部に対向して配置された引出電極と、
当該引出電極からみて前記電子線発生部とは反対側に配置された加速電極と、
前記電子線発生部、前記引出電極および前記加速電極を収納する電子銃室と、
前記引出電極および前記加速電極との間に形成する電位差を与える電源と、
前記引出電極と前記加速電圧の間に形成する電位差の正負を切り替える切替部と、
前記引出電極と前記電子線発生部との間の第一の電位差および前記加速電極と前記引出電極との間に前記電子線に対する負の第二の電位差を形成するよう少なくとも前記切替部を制御する制御部と、
を備え、前記制御部は、第一の電位差により前記電子線発生部から放出された電子線が、前記引出電極を通過し、前記第二の電位差を形成し、前記引出電極から前記加速電極側に放出される電子線を前記引出電極側に引き戻し、当該引き戻された電子線により前記引出電極の加速電極対向面に吸着したガス分子を除去するように前記切替部を少なくとも制御する電子線照射装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−65486(P2013−65486A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204061(P2011−204061)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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