電子銃及び電子管
【課題】アノード電圧によって電子ビームのON/OFFを制御する場合に、電源装置の大型化を招くことなく、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させることが可能な電子銃及びそれを備えた電子管を提供する。
【解決手段】電子銃が備えるウェネルトをカソードの電位を基準とする負の直流電圧であるヒータ電圧が供給されるヒータと接続し、該ウェネルトにヒータ電圧を供給する。
【解決手段】電子銃が備えるウェネルトをカソードの電位を基準とする負の直流電圧であるヒータ電圧が供給されるヒータと接続し、該ウェネルトにヒータ電圧を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェネルトを備えたピアス型の電子銃及びそれを有する電子管に関する。
【背景技術】
【0002】
進行波管やクライストロン等は電子銃から放出された電子ビームと高周波回路との相互作用によりRF(Radio Frequency)信号の増幅や発振等を行うために用いる電子管である。進行波管1は、例えば図12に示すように、電子ビーム50を放出する電子銃10と、電子銃10から放出された電子ビーム50とRF信号とを相互作用させる高周波回路であるヘリックス20と、ヘリックス20から出力された電子ビームを捕捉するコレクタ30と、電子銃10から電子を引き出すと共に電子銃10から放出された電子ビーム50をスパイラル状のヘリックス20内に導くアノード40とを有する構成である。
【0003】
電子銃10は、熱電子を放出するカソード11と、カソード11に熱電子を放出させるための熱エネルギーを与えるヒータ12と、熱電子を集束して電子ビーム50を形成するためのウェネルト13とを備えている。
【0004】
カソード11及びウェネルト13には、電源装置(不図示)からヘリックス20の電位(HELIX)を基準に負の直流電圧であるヘリックス電圧(Ebody)が供給され、アノード40にはカソード11の電位(H/K)を基準に正の直流電圧であるアノード電圧(Ea)が供給される。また、コレクタ30にはカソード11の電位(H/K)を基準に正の直流電圧であるコレクタ電圧(Ecol)が供給され、ヒータ12にはカソード11の電位(H/K)を基準に負の直流電圧であるヒータ電圧(Ef)が供給される。ヘリックス20は、通常、進行波管1のケースに接続されて接地される。なお、図12はコレクタ30を1つ備えた進行波管1の構成例を示しているが、進行波管1には複数のコレクタ30を備える構成もある。
【0005】
進行波管1は、通常、カソード11の電位(H/K)を基準にして各電極に供給する電圧を規定するため、以下では、カソード11の電位(H/K)を「0V」と称する。また、カソード11の電位(H/K)を基準とする正の直流電圧を単に「正電圧」と称し、カソード11の電位(H/K)を基準とする負の直流電圧を単に「負電圧」と称する。
【0006】
電子銃10から放出された電子ビーム50は、カソード11とへリックス20の電位差によって加速されてヘリックス20内に導入され、ヘリックス20の一端(RF入力)から入力されたRF信号と相互作用しながらヘリックス20の内部を進行する。ヘリックス20の内部を通過した電子ビーム50はコレクタ30で捕捉される。このとき、ヘリックス20の他端(RF出力)からは電子ビーム50との相互作用によって増幅されたRF信号が出力される。
【0007】
ところで、図12に示した進行波管1では、図13に示すようにアノード電圧(Ea)を0Vにしても、カソード11から電子ビーム50がわずかに放出される。これは、アノード40を挟んでカソード11と対向して配置される電極(例えば、ヘリックス20)とカソード11との電位差によって発生する電界のエネルギーがアノード40を通過してカソード11の表面にまで到達し(図13の電気力線を参照)、該エネルギーによってカソード11から電子が引き出されることによる。この2つの電極の電位差によって発生する電界のエネルギーのことを、以下では「電位差エネルギー」と称す。
【0008】
アノード電圧(Ea)を0Vにしてもカソード11から放出される電子ビーム50は熱雑音として観測される。したがって、背景技術の電子管では、カソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させる場合、アノード40に負電圧(通常、数Vから数百V程度)を供給している。
【0009】
カソード11から放出される電子の量は、ウェネルト13に印加する電圧(ウェネルト電圧(Ew))でも制御することが可能である。但し、その場合でもカソード11から放出される電子ビーム50を完全に停止させるには、ウェネルト13に負電圧を供給する必要がある。
【0010】
なお、ウェネルト13によって電子を集束するピアス型の電子銃10を備えた進行波管1の構成については、例えば特許文献1にも記載されている。特許文献1では、アノードとヘリックス間に電流抑制素子(例えば、抵抗器)を挿入した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−116355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、背景技術の電子管では、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させる場合、アノードに負電圧を供給する必要がある。一方、進行波管の通常動作時、アノードには正電圧を供給する。
【0013】
したがって、アノード電圧(Ea)によって電子ビーム50のON/OFFを制御したい場合、アノード電圧(Ea)を生成する回路(以下、アノード電圧生成回路と称す)では、正電圧/負電圧をそれぞれ生成する必要がある。そのため、アノード電圧生成回路の構成が複雑になり、大型化する問題がある。
【0014】
同様に、ウェネルト電圧(Ew)によって電子ビームのON/OFFを制御する場合でも、ウェネルト電圧(Ew)を生成する回路(以下、ウェネルト電圧生成回路と称す)の構成が複雑になり、大型化する。特に、ウェネルト電圧(Ew)によって電子ビームのON/OFFを制御する場合は、アノード電圧生成回路に加えてウェネルト電圧生成回路も必要になるため、これらの回路を含む電源装置全体が大型になってしまう。
【0015】
本発明は上記したような従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、アノード電圧によって電子ビームのON/OFFを制御する場合に、電源装置の大型化を招くことなく、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させることが可能な電子銃及びそれを備えた電子管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため本発明の電子銃は、電子を放出するカソードと、
前記カソードの電位を基準とする負の直流電圧であるヒータ電圧が供給されるヒータと、
前記ヒータと接続され、前記ヒータ電圧が供給される、前記カソードから放出された電子を集束して電子ビームを形成するためのウェネルトと、
を有する。
【0017】
一方、本発明の電子管は、上記電子銃と、
前記電子銃から電子を引き出すアノードと、
を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アノード電圧によって電子ビームのON/OFFを制御する構成において、回路の大型化を招くことなく、電子ビームをOFFする場合に、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態の電子銃及びそれを備える電子管の一構成例を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態の電子銃及びそれを備える電子管の一構成例を示す模式図である。
【図3】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図5】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図6】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図7】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図10】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図12】背景技術の電子銃及びそれを備える電子管の構成を示す模式図である。
【図13】背景技術の電子銃及びそれを備える電子管の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明について図面を用いて説明する。
【0021】
以下では、ウェネルト13によって電子を集束するピアス型の電子銃10を備えた進行波管1(図12及びB参照)を例にして本発明について説明するが、本発明は、ピアス型の電子銃を備える電子管であれば、どのような電子管にも適用できる。
(第1の実施の形態)
図1及び図2は第1の実施の形態の電子銃及びそれを備える電子管の一構成例を示す模式図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の電子銃10は、ウェネルト13にヒータ電圧(Eh)の出力端が接続された構成である。そのため、本実施形態のウェネルト13には、カソード11と同電位(=0V)ではなく、負電圧であるヒータ電圧(Ef)が供給される。
【0023】
このような構成では、カソード11の表面を取り囲むウェネルト13に負電圧であるヒータ電圧(Ef)が常時供給されるため、図2に示すように、アノード電圧(Ea)を0Vにするだけで、電位差エネルギーがカソード11の表面に到達するのを抑制できる。
【0024】
但し、カソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させるには、比較的高い値の負電圧(数Vから数百V程度)をウェネルト13に供給する必要がある。しかしながら、その場合でもウェネルト13に供給する負電圧に応じて該負電圧で最適に動作するヒータ12を選択すれば、電子銃10としては何ら問題なく動作する。
【0025】
第1の実施の形態の電子銃によれば、アノード電圧(Ea)を0Vにするだけで、カソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させることができる。一方、アノード40に正電圧を供給すれば、該正電圧によって発生する電界が支配的になるため、カソード11から電子ビーム50が出射される。したがって、アノード40に正電圧または0Vを供給するだけで電子ビーム50のON/OFFを制御することが可能であり、電子ビーム50のOFF時にカソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させることできる。アノード電圧(Ea)を0Vにするには、スイッチ等を用いてアノード電圧(Ea)の出力端をカソード11の電位(H/K)と接続すればよい。そのため、アノード電圧生成回路を簡易に構成することが可能であり、回路の大型化を招くことがない。
【0026】
また、ウェネルト13には既存のヒータ電圧(Eh)を供給するため、ウェネルト電圧生成回路が不要である。そのため、新たな電圧発生回路を設ける必要がなく、アノード電圧生成回路を含む電源装置の大型化を防止できる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、電位差エネルギーがカソード11の表面に到達するのをより効果的に抑制できる電子管を提案する。電子銃10の構成及び進行波管1の構成は第1の実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0027】
図3〜図11は第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【0028】
図13に示したように、電子ビーム50のOFF時、電位差エネルギーはアノード40に設けられた電子ビーム50が通過する空孔を介してヘリックス20等からカソード11の表面に到達する。
【0029】
したがって、カソード11の表面に電位差エネルギーが到達し難いようにウェネルト13あるいはアノード40の形状を工夫すれば、ウェネルト13に供給する負電圧の値が比較的低くても電位差エネルギーがカソード11の表面に到達するのを防止できる。
【0030】
このような効果が得られるウェネルト13の具体的な形状例としては、図3及び図4に示すようにウェネルト13の端部を電子ビーム50の進行方向に延伸した形状、あるいは図5及び図6に示すようにカソード11の側面を覆う部位を電子ビーム50の進行方向に延伸した形状が考えられる。
【0031】
一方、上記の効果が得られるアノード40の具体的な形状例としては、図7に示すように電子ビーム50が通過する空孔の周縁部をカソード11(電子銃10)の方向へ延伸した形状、図8に示すように電子ビーム50が通過する空孔の周縁部をヘリックス20の方向(電子ビーム50の進行方向)に延伸した形状、あるいはそれらを併用した形状(図9及び図10参照)が考えられる。また、図11に示すようにアノード40自体を厚く形成しても同様の効果が得られる。なお、これらのアノード形状を採用する場合は、空孔内を電子ビーム50がより通過し易いように、電子銃10側の空孔径がヘリックス20側の空孔径よりも大きくなるように形成することが望ましい。
【0032】
第2の実施の形態によれば、図3〜図11に示した形状のウェネルト13あるいはアノード40を採用することで、電位差エネルギーがカソード11の表面により到達し難くなるため、ウェネルト13に供給する負電圧の値を低くできる。そのため、第1の実施の形態の電子銃に比べてヒータ電圧を低くすることが可能であり、ウェネルト13に供給する負電圧に応じたヒータ12を選択する等の、ヒータ12に対する制約を無くすことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 進行波管
10 電子銃
11 カソード
12 ヒータ
13 ウェネルト
20 へリックス
30 コレクタ
40 アノード
50 電子ビーム
【技術分野】
【0001】
本発明はウェネルトを備えたピアス型の電子銃及びそれを有する電子管に関する。
【背景技術】
【0002】
進行波管やクライストロン等は電子銃から放出された電子ビームと高周波回路との相互作用によりRF(Radio Frequency)信号の増幅や発振等を行うために用いる電子管である。進行波管1は、例えば図12に示すように、電子ビーム50を放出する電子銃10と、電子銃10から放出された電子ビーム50とRF信号とを相互作用させる高周波回路であるヘリックス20と、ヘリックス20から出力された電子ビームを捕捉するコレクタ30と、電子銃10から電子を引き出すと共に電子銃10から放出された電子ビーム50をスパイラル状のヘリックス20内に導くアノード40とを有する構成である。
【0003】
電子銃10は、熱電子を放出するカソード11と、カソード11に熱電子を放出させるための熱エネルギーを与えるヒータ12と、熱電子を集束して電子ビーム50を形成するためのウェネルト13とを備えている。
【0004】
カソード11及びウェネルト13には、電源装置(不図示)からヘリックス20の電位(HELIX)を基準に負の直流電圧であるヘリックス電圧(Ebody)が供給され、アノード40にはカソード11の電位(H/K)を基準に正の直流電圧であるアノード電圧(Ea)が供給される。また、コレクタ30にはカソード11の電位(H/K)を基準に正の直流電圧であるコレクタ電圧(Ecol)が供給され、ヒータ12にはカソード11の電位(H/K)を基準に負の直流電圧であるヒータ電圧(Ef)が供給される。ヘリックス20は、通常、進行波管1のケースに接続されて接地される。なお、図12はコレクタ30を1つ備えた進行波管1の構成例を示しているが、進行波管1には複数のコレクタ30を備える構成もある。
【0005】
進行波管1は、通常、カソード11の電位(H/K)を基準にして各電極に供給する電圧を規定するため、以下では、カソード11の電位(H/K)を「0V」と称する。また、カソード11の電位(H/K)を基準とする正の直流電圧を単に「正電圧」と称し、カソード11の電位(H/K)を基準とする負の直流電圧を単に「負電圧」と称する。
【0006】
電子銃10から放出された電子ビーム50は、カソード11とへリックス20の電位差によって加速されてヘリックス20内に導入され、ヘリックス20の一端(RF入力)から入力されたRF信号と相互作用しながらヘリックス20の内部を進行する。ヘリックス20の内部を通過した電子ビーム50はコレクタ30で捕捉される。このとき、ヘリックス20の他端(RF出力)からは電子ビーム50との相互作用によって増幅されたRF信号が出力される。
【0007】
ところで、図12に示した進行波管1では、図13に示すようにアノード電圧(Ea)を0Vにしても、カソード11から電子ビーム50がわずかに放出される。これは、アノード40を挟んでカソード11と対向して配置される電極(例えば、ヘリックス20)とカソード11との電位差によって発生する電界のエネルギーがアノード40を通過してカソード11の表面にまで到達し(図13の電気力線を参照)、該エネルギーによってカソード11から電子が引き出されることによる。この2つの電極の電位差によって発生する電界のエネルギーのことを、以下では「電位差エネルギー」と称す。
【0008】
アノード電圧(Ea)を0Vにしてもカソード11から放出される電子ビーム50は熱雑音として観測される。したがって、背景技術の電子管では、カソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させる場合、アノード40に負電圧(通常、数Vから数百V程度)を供給している。
【0009】
カソード11から放出される電子の量は、ウェネルト13に印加する電圧(ウェネルト電圧(Ew))でも制御することが可能である。但し、その場合でもカソード11から放出される電子ビーム50を完全に停止させるには、ウェネルト13に負電圧を供給する必要がある。
【0010】
なお、ウェネルト13によって電子を集束するピアス型の電子銃10を備えた進行波管1の構成については、例えば特許文献1にも記載されている。特許文献1では、アノードとヘリックス間に電流抑制素子(例えば、抵抗器)を挿入した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−116355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、背景技術の電子管では、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させる場合、アノードに負電圧を供給する必要がある。一方、進行波管の通常動作時、アノードには正電圧を供給する。
【0013】
したがって、アノード電圧(Ea)によって電子ビーム50のON/OFFを制御したい場合、アノード電圧(Ea)を生成する回路(以下、アノード電圧生成回路と称す)では、正電圧/負電圧をそれぞれ生成する必要がある。そのため、アノード電圧生成回路の構成が複雑になり、大型化する問題がある。
【0014】
同様に、ウェネルト電圧(Ew)によって電子ビームのON/OFFを制御する場合でも、ウェネルト電圧(Ew)を生成する回路(以下、ウェネルト電圧生成回路と称す)の構成が複雑になり、大型化する。特に、ウェネルト電圧(Ew)によって電子ビームのON/OFFを制御する場合は、アノード電圧生成回路に加えてウェネルト電圧生成回路も必要になるため、これらの回路を含む電源装置全体が大型になってしまう。
【0015】
本発明は上記したような従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、アノード電圧によって電子ビームのON/OFFを制御する場合に、電源装置の大型化を招くことなく、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させることが可能な電子銃及びそれを備えた電子管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため本発明の電子銃は、電子を放出するカソードと、
前記カソードの電位を基準とする負の直流電圧であるヒータ電圧が供給されるヒータと、
前記ヒータと接続され、前記ヒータ電圧が供給される、前記カソードから放出された電子を集束して電子ビームを形成するためのウェネルトと、
を有する。
【0017】
一方、本発明の電子管は、上記電子銃と、
前記電子銃から電子を引き出すアノードと、
を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アノード電圧によって電子ビームのON/OFFを制御する構成において、回路の大型化を招くことなく、電子ビームをOFFする場合に、カソードからの電子ビームの放出を完全に停止させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態の電子銃及びそれを備える電子管の一構成例を示す模式図である。
【図2】第1の実施の形態の電子銃及びそれを備える電子管の一構成例を示す模式図である。
【図3】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図5】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図6】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図7】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図9】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図10】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図11】第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【図12】背景技術の電子銃及びそれを備える電子管の構成を示す模式図である。
【図13】背景技術の電子銃及びそれを備える電子管の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明について図面を用いて説明する。
【0021】
以下では、ウェネルト13によって電子を集束するピアス型の電子銃10を備えた進行波管1(図12及びB参照)を例にして本発明について説明するが、本発明は、ピアス型の電子銃を備える電子管であれば、どのような電子管にも適用できる。
(第1の実施の形態)
図1及び図2は第1の実施の形態の電子銃及びそれを備える電子管の一構成例を示す模式図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の電子銃10は、ウェネルト13にヒータ電圧(Eh)の出力端が接続された構成である。そのため、本実施形態のウェネルト13には、カソード11と同電位(=0V)ではなく、負電圧であるヒータ電圧(Ef)が供給される。
【0023】
このような構成では、カソード11の表面を取り囲むウェネルト13に負電圧であるヒータ電圧(Ef)が常時供給されるため、図2に示すように、アノード電圧(Ea)を0Vにするだけで、電位差エネルギーがカソード11の表面に到達するのを抑制できる。
【0024】
但し、カソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させるには、比較的高い値の負電圧(数Vから数百V程度)をウェネルト13に供給する必要がある。しかしながら、その場合でもウェネルト13に供給する負電圧に応じて該負電圧で最適に動作するヒータ12を選択すれば、電子銃10としては何ら問題なく動作する。
【0025】
第1の実施の形態の電子銃によれば、アノード電圧(Ea)を0Vにするだけで、カソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させることができる。一方、アノード40に正電圧を供給すれば、該正電圧によって発生する電界が支配的になるため、カソード11から電子ビーム50が出射される。したがって、アノード40に正電圧または0Vを供給するだけで電子ビーム50のON/OFFを制御することが可能であり、電子ビーム50のOFF時にカソード11からの電子ビーム50の放出を完全に停止させることできる。アノード電圧(Ea)を0Vにするには、スイッチ等を用いてアノード電圧(Ea)の出力端をカソード11の電位(H/K)と接続すればよい。そのため、アノード電圧生成回路を簡易に構成することが可能であり、回路の大型化を招くことがない。
【0026】
また、ウェネルト13には既存のヒータ電圧(Eh)を供給するため、ウェネルト電圧生成回路が不要である。そのため、新たな電圧発生回路を設ける必要がなく、アノード電圧生成回路を含む電源装置の大型化を防止できる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、電位差エネルギーがカソード11の表面に到達するのをより効果的に抑制できる電子管を提案する。電子銃10の構成及び進行波管1の構成は第1の実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0027】
図3〜図11は第2の実施の形態の電子管の要部を拡大した様子を示す断面図である。
【0028】
図13に示したように、電子ビーム50のOFF時、電位差エネルギーはアノード40に設けられた電子ビーム50が通過する空孔を介してヘリックス20等からカソード11の表面に到達する。
【0029】
したがって、カソード11の表面に電位差エネルギーが到達し難いようにウェネルト13あるいはアノード40の形状を工夫すれば、ウェネルト13に供給する負電圧の値が比較的低くても電位差エネルギーがカソード11の表面に到達するのを防止できる。
【0030】
このような効果が得られるウェネルト13の具体的な形状例としては、図3及び図4に示すようにウェネルト13の端部を電子ビーム50の進行方向に延伸した形状、あるいは図5及び図6に示すようにカソード11の側面を覆う部位を電子ビーム50の進行方向に延伸した形状が考えられる。
【0031】
一方、上記の効果が得られるアノード40の具体的な形状例としては、図7に示すように電子ビーム50が通過する空孔の周縁部をカソード11(電子銃10)の方向へ延伸した形状、図8に示すように電子ビーム50が通過する空孔の周縁部をヘリックス20の方向(電子ビーム50の進行方向)に延伸した形状、あるいはそれらを併用した形状(図9及び図10参照)が考えられる。また、図11に示すようにアノード40自体を厚く形成しても同様の効果が得られる。なお、これらのアノード形状を採用する場合は、空孔内を電子ビーム50がより通過し易いように、電子銃10側の空孔径がヘリックス20側の空孔径よりも大きくなるように形成することが望ましい。
【0032】
第2の実施の形態によれば、図3〜図11に示した形状のウェネルト13あるいはアノード40を採用することで、電位差エネルギーがカソード11の表面により到達し難くなるため、ウェネルト13に供給する負電圧の値を低くできる。そのため、第1の実施の形態の電子銃に比べてヒータ電圧を低くすることが可能であり、ウェネルト13に供給する負電圧に応じたヒータ12を選択する等の、ヒータ12に対する制約を無くすことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 進行波管
10 電子銃
11 カソード
12 ヒータ
13 ウェネルト
20 へリックス
30 コレクタ
40 アノード
50 電子ビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出するカソードと、
前記カソードの電位を基準とする負の直流電圧であるヒータ電圧が供給されるヒータと、
前記ヒータと接続され、前記ヒータ電圧が供給される、前記カソードから放出された電子を集束して電子ビームを形成するためのウェネルトと、
を有する電子銃。
【請求項2】
前記ウェネルトは、
端部が前記電子ビームの進行方向に延伸した形状である請求項1記載の電子銃。
【請求項3】
前記ウェネルトは、
前記カソードの側面を覆う部位が前記電子ビームの進行方向に延伸した形状である請求項1記載の電子銃。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の電子銃と、
前記電子銃から電子を引き出すアノードと、
を有する電子管。
【請求項5】
前記アノードは、
前記電子ビームが通過する空孔の周縁部が前記電子銃の方向へ延伸した形状である請求項4記載の電子管。
【請求項6】
前記アノードは、
前記電子ビームが通過する空孔の周縁部が該電子の進行方向へ延伸した形状である請求項4記載の電子管。
【請求項1】
電子を放出するカソードと、
前記カソードの電位を基準とする負の直流電圧であるヒータ電圧が供給されるヒータと、
前記ヒータと接続され、前記ヒータ電圧が供給される、前記カソードから放出された電子を集束して電子ビームを形成するためのウェネルトと、
を有する電子銃。
【請求項2】
前記ウェネルトは、
端部が前記電子ビームの進行方向に延伸した形状である請求項1記載の電子銃。
【請求項3】
前記ウェネルトは、
前記カソードの側面を覆う部位が前記電子ビームの進行方向に延伸した形状である請求項1記載の電子銃。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の電子銃と、
前記電子銃から電子を引き出すアノードと、
を有する電子管。
【請求項5】
前記アノードは、
前記電子ビームが通過する空孔の周縁部が前記電子銃の方向へ延伸した形状である請求項4記載の電子管。
【請求項6】
前記アノードは、
前記電子ビームが通過する空孔の周縁部が該電子の進行方向へ延伸した形状である請求項4記載の電子管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−232045(P2010−232045A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79057(P2009−79057)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(396007982)株式会社ネットコムセック (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(396007982)株式会社ネットコムセック (13)
【Fターム(参考)】
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