説明

電撃防止具

【課題】コンベア上を流れる印刷物等のワークを手で束状にして採取するときに受ける電撃を、高いコストを掛けずに簡単にかつ確実に防止することのできる電撃防止具を提供すること。
【解決手段】プレート1と、そのプレート1に取り付けられた取っ手2と、取っ手2とともに取り付けられたアース線3とを備え、プレート1と取っ手2の少なくとも一方が導電性物質からなり、アース線3は導電性物質からなるプレート1と取っ手2のいずれかに接続されている。プレート1と取っ手2のいずれかに、吊るすためのばね4が取り付けられていることが好ましい。束を押さえる方の手に装着するが、事前に素手と接触状態にすることで簡単に人体を接地することができるので、人体に発生した静電気は瞬間的に接地側へ移動することにより束からの誘導による人体帯電が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気による電撃を防止する技術分野に属し、詳しくは、印刷現場での排紙工程等にて使用される電撃防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より様々なタイプの印刷機が知られているが、それらの中でもオフセット輪転機は、新聞用、電話帳用、書籍出版印刷を含む一般商業用、ビジネスフォーム用などに広く使用されている。このオフセット輪転機では、印刷された印刷物(刷本)が折り機にて切断及び折り加工が施されコンベア上に刺身状になって排出される。そして、作業員は、印刷の出来具合を見るため、コンベア上を刺身状に流れてくる印刷物(折丁)を手でせき止め、束状にして印刷サンプルを採取する。このとき、作業員は静電気による電撃を受けて不快感を感じることが多い。
【0003】
作業員が印刷サンプルを採取するときは、まず片手で刺身状の印刷物をせき止め、その手の上に印刷物を束状に溜めていき、もう一方の手で束を上から押さえてから束を上に持ち上げるという動作を行う。このときに電撃を受けるのであるがその原因は3つある。1つ目は、コンベア上において手で印刷物をせき止めて束状にしているときに、束状印刷物の帯電電位が上昇し、人体が誘導帯電して同時に近くの導体に放電して電撃を受けるというケースである。2つ目は、1つ目と同様なプロセスで人体が誘導帯電するが、近くに導体がないとそのまま静電気が人体に留まり、コンベアから離れて別の導体に近づいたときに放電して電撃を受けるというケースである。3つ目は、コンベア上において手で印刷物をせき止めて束状にしているときに、束状印刷物の帯電電位が上昇し、その束状印刷物が30kV程度以上になったときに人体と束との間で直接放電が起こって電撃をうけるというケースである。
【0004】
以上のことから、コンベア上において手で印刷物をせき止めて束状にしているときに電撃を受けないためには、人体を接地し、かつ、束状印刷物に接近する手などの露出箇所をカバーする必要がある。また、事前に除電器で印刷物を除電しても、印刷物を束状にするときに印刷物同士が擦れて摩擦帯電することで電位が上昇するため、電撃ショックは低減はできるが完全に防止することはできない。
【0005】
現状では、電撃防止のためにいくつかの方法が採られている。例えば、人体接地を目的としたリストバンドを使用し、直接人体に電極を取り付けて接地する方法を採ることもあるし、また、同じく人体接地を目的とした導電床を採用したり、導電性靴を履く方法を採ることもある。或いは、電撃防止を目的とした手袋を使用する方法も採られている。
【0006】
【特許文献1】特開平1−63098号公報
【特許文献2】特開2006−63456号公報
【特許文献3】特開2003−153703号公報
【特許文献4】特開2003−230402号公報
【特許文献5】実用新案登録第2558491号公報
【特許文献6】特開2006−63456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リストバンドにより直接人体に電極を取り付けて接地する方法によれば、人体の静電気は接地により無くなりはするが、この方法では装着や取外しの動作が必要であるため作業性に問題がある。また、導電床はそこに乗るだけで人体を除電できはするが、人体が装着する靴や下着類を静電対応とすることが必要で、コストがかかるという問題がある。また、靴や導電床は、インキや汚れが付着すると効果がなくなるため定期的に清掃や導電チェックが必要となる。また、手袋を使用する方法は、コンベア等の回転体が多い印刷現場では安全衛生上好ましくないし、装着や取外しの手間がかかる。また、片手を金属に触れたまま印刷物等のワークを束状に採取する方法もあるが、片手作業となり安全衛生上や作業性の観点からも好ましくない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンベア上を流れる印刷物等のワークを手で束状にして採取するときに受ける電撃を、高いコストを掛けずに簡単にかつ確実に防止することのできる電撃防止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、コンベア上のワークを手で束状にして集める際に使用する電撃防止具であって、プレートと、そのプレートに取り付けられた取っ手と、取っ手とともに取り付けられたアース線とを備え、プレートと取っ手の少なくとも一方が導電性物質からなり、アース線は導電性物質からなるプレートと取っ手のいずれかに接続されていることを特徴としている。
【0010】
そして、上記の構成からなる電撃防止具において、プレートと取っ手のいずれかに、吊るすためのばねが取り付けられている構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電撃防止具は、束を押さえる方の手に装着して使用するが、事前に素手と接触状態にすることで簡単に人体を接地することができるので、人体に発生した静電気は瞬間的に接地側へ移動することにより束からの誘導による人体帯電が防止される。また、ばねで上から吊るすことにより、アース線がコンベアに接近せず、巻込み等の事故の発生を防ぐことができる。また、取っ手を握ったり取っ手に手を通すだけで使用できるので、装置や取外しが手袋やリストバンドよりも簡単であるあり、制作コストや保守コスト、保守の手間が掛からないとうい利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、具体例を挙げて本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は本発明に係る電撃防止具の一例を手とともに示す平面図、図2は図1の平面図、図3は使用状態を示す説明図である。
【0014】
図1の電撃防止具は、サイズが手のひらよりやや大きくコーナーが丸くなった四角状のプレート1と、そのプレート1に留め具により取り付けられた取っ手2と、取っ手2とともにプレート1に取り付けられたアース線3とを備えている。また、アース線3と同じところに吊るすためのバネ4が取り付けられている。
【0015】
プレート1と取っ手2は、少なくとも一方を導電性物質で構成する。導電性物質としては、鉄、アルミニウム、銅などの金属が用いられる。そして、プレート1と取っ手2の両方が導電性物質からなる場合は、アース線3はいずれに接続させて取り付けてもよく、プレート1と取っ手2のいずれかが導電性物質からなる場合は、アース線3をその導電性物質からなる方に接続させて取り付ける。
【0016】
アース線3とバネ4は、図3に示すように、使用時にはその反対側を折り機等の装置のフレーム10にボルトで固定される。このとき、アース線3がコンベアベルト等に巻き込まれるのを防ぐため、アース線3とバネ4は印刷物Sを搬送するコンベアベルト11及びそれを支持するコンベア板12よりも上方に取り付ける。また、ばね4としては、電撃防止具から手を離したときに下に落ちないように、かつ、引っ張ったときにある程度伸びるようなものを選択する。このようにアース線3の取付け高さに依存するため、周りの状況を勘案してばね4の長さやばね定数を適宜決定する。なお、上部に適当な接地できる装置のフレームがない場合は、コンベア上部に接地用の金属棒などを別途設け、それにアース線3とバネ4を取り付けるようにする。
【0017】
この電撃防止具は、図3に示すように、オフセット輪転機の折り機の排出コンベア上において使用する。そして、実際に使用するに際しては、取っ手2に手を通したり、取っ手2を握ったりして電撃防止具を保持する。このとき導電性物質からなるプレート1もしくは取っ手2に素手を接触させる。また、電撃防止具は、印刷物Sをせき止める方の手には装着せずに、束を押さえる方の手に装着する。そして、印刷物Sを集めるに際しては、電撃防止具を装着していない手で印刷物Sをせき止めて束状にし、目的の束の量になったら電撃防止具を装着したもう一方の手で電撃防止具ごと束を押さえて採取する。このとき電撃防止具のプレート1で印刷物Sの束を上から押し付けている状態となる。
【0018】
このように、電撃防止具を事前に素手で持って導電性物質からなるプレート1もしくは取っ手2に接触することで、人体を接地状態とすることができ、印刷物Sの束からの誘導による人体帯電を防止できる。すなわち、人体に発生した静電気は瞬間的に接地側へ移動するので、放電による電撃を受けることがない。そして、ばね4で吊るした状態で電撃防止具を使用するので、アース線3がコンベアベルト11に近接せず巻込み等の事故が発生しない。
【0019】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による電撃防止具は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電撃防止具の一例を手とともに示す平面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1及び図2に示す電撃防止具の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 プレート
2 取っ手
3 アース線
4 バネ
10 フレーム
11 コンベアベルト
12 コンベア板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア上のワークを手で束状にして集める際に使用する電撃防止具であって、プレートと、そのプレートに取り付けられた取っ手と、取っ手とともに取り付けられたアース線とを備え、プレートと取っ手の少なくとも一方が導電性物質からなり、アース線は導電性物質からなるプレートと取っ手のいずれかに接続されていることを特徴とする電撃防止具。
【請求項2】
プレートと取っ手のいずれかに、吊るすためのばねが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の電撃防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−231156(P2009−231156A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77037(P2008−77037)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】