説明

電柱取付ウインチの遠隔操作装置

【課題】電柱に取り付けられるウインチについて、安全を確保して確実な作業を行うことを可能にする遠隔操作装置を提供すること。
【解決手段】電柱2に取り付けられたウインチ3の本体フレーム31に、パイプ部材11の一端を連結し、パイプ部材11の他端のハンドル連結部14にハンドル13を連結する。パイプ部材11を、接続部材18を介して支持ロッド17と電柱固定構造16で支持する。操作者がハンドル13で入力した回転力を、ハンドル連結部14内の回転力伝達機構と、パイプ部材11内の回転軸21を介して、ウインチ3の駆動軸342に伝達する。ハンドル13の操作位置を、パイプ部材11の長さに相当する距離だけウインチ3から離すことができるので、ウインチ3の真上に上昇する荷物が落下しても、操作者への荷物の直撃を防止して安全を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱の工事に使用されるウインチに用いられて、安全を確保して確実な作業を行うことを可能にする遠隔操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、架空電線路等の工事を行う際、電柱の上部に工事用荷物を揚げるために、電柱に取り付けられる手巻式のウインチが用いられている。
【0003】
この種のウインチとしては、本体フレームと、本体フレームに回動自在に支持されてワイヤが巻回されたドラムと、ドラムの回転軸に連結された歯車伝達機構と、歯車伝達機構に連結された入力軸を備えたものがある。このウインチを電柱の下部に取り付けると共に滑車を電柱の上部に取り付け、ドラムから引き出したワイヤを電柱沿いに上方に引き延ばして滑車に掛け回し、この後、電柱沿いに下方に引き延ばして下端にフックを取り付ける。このフックに碍子等の工事用荷物を掛け、入力軸にウインチハンドルを連結して、このウインチハンドルを操作者が回転操作する。これにより、ドラムにワイヤを巻き取ってワイヤのフックを滑車側に巻き上げて、工事用荷物を電柱の上部に揚げるようにしている。
【0004】
しかしながら、このウインチは、操作者の安全確保が不十分であるという問題がある。詳しくは、ウインチハンドルをウインチの入力軸に直結するので、操作者は電柱のウインチに近接してハンドルを回転操作することになる。工事用荷物は、電柱の上部の滑車に向って電柱に沿って上昇するから、ウインチに近接した操作者の略直上に位置することになる。したがって、工事用荷物が、上昇途中に振動や荷崩れ等によって落下した場合、落下した荷物が操作者を直撃する恐れがある。
【0005】
このような電柱取付ウインチに関して、荷物の落下に伴う危険を防止する装置は存在せず、特許文献又は非特許文献の調査においても、その存在を発見することはできなかった。したがって、電柱取付ウインチの遠隔操作装置に関する先行技術文献情報の開示を行うことはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、電柱に取り付けられるウインチについて、安全を確保して確実な作業を行うことを可能にする遠隔操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の電柱取付ウインチの遠隔操作装置は、電柱に取り付けられるウインチを遠隔操作する遠隔操作装置であって、ウインチの本体フレームに一端が連結されるパイプ部材と、パイプ部材の内側に軸回りに回転自在に収容され、ウインチの駆動軸に一端が連結される回転軸と、パイプ部材の他端に設けられ、回転力を入力する入力具が連結される入力具連結部と、入力具連結部に連結された入力具によって入力された回転力を回転軸の他端に伝達する回転力伝達機構と、電柱に巻き締め固定される電柱固定構造と、電柱固定構造に下端が支持される支持ロッドと、支持ロッドの上端に連結されると共に、パイプ部材の一端と他端の間に取り付けられて、支持ロッドとパイプ部材とを接続する接続部材とを備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、電柱に取り付けられたウインチの本体フレームに、パイプ部材の一端が連結されると共に、ウインチの駆動軸に回転軸の一端が連結される。パイプ部材の他端の入力具連結部に、入力具が連結される。操作者の操作によって入力具に回転力が入力されると、この回転力が回転力伝達機構によって回転軸の他端に伝達され、パイプ部材内の回転軸を介してウインチの駆動軸に伝達される。駆動軸への回転力の伝達によってウインチが駆動され、ウインチが荷物の揚上動作を行う。ここで、操作者の入力具の操作位置は、ウインチから少なくともパイプ部材の軸方向長さ相当の距離だけ離れた位置である。したがって、ウインチの概ね鉛直上方に揚上される荷物が上昇の途中に落下しても、落下した荷物が操作者を直撃することがないので、操作者の安全を確保することができる。
【0009】
また、上記パイプ部材は、接続部材を介して支持ロッドで支持され、この支持ロッドが電柱に固定された電柱固定構造で支持されるので、操作者による入力具の操作位置がウインチから離れていても、パイプ部材の振動や振れ回り等が防止されて、入力具の安定した操作が可能となる。したがって、この遠隔操作装置によってウインチを安定して駆動することができる。また、比較的長いパイプ部材を操作者が支持する必要が無いので、容易に入力具を操作することができる。
【0010】
上記遠隔操作装置は、電柱の上部に滑車を配置し、この滑車に掛け回したワイヤの一端に荷物を吊る一方、このワイヤの他端側を巻き取って荷物の揚上を行うウインチに用いられる場合に、特に効果的に安全確保を行うことができる。
【0011】
一実施形態の電柱取付ウインチの遠隔操作装置は、上記パイプ部材は、このパイプ部材の一端に設けられ、ウインチの本体フレームに設けられたスリーブ内に収容される収容部と、この収容部の外周面に突設され、ウインチのスリーブの先端から本体フレーム側に延設された切り欠き溝に案内される突起部と、この突起部に進退自在に外嵌し、パイプ部材の径方向の内側に付勢され、スリーブの切り欠き溝の終端に形成された拡幅部に係止可能なロックボタンとを有する。
【0012】
上記実施形態によれば、パイプ部材の収容部がウインチの本体フレームのスリーブ内に収容されて、この遠隔操作装置がウインチに取り付けられる。このとき、収容部の突起部がスリーブの切り欠き溝に案内されることにより、パイプ部材の取り付け姿勢が適切に定められる。また、切り欠き溝の終端の拡幅部にロックボタンが係止することにより、パイプ部材がスリーブから抜け止めされる。一方、ロックボタンが付勢力に抗して操作されて、パイプ部材の径方向外側に退去すると、このロックボタンと切り欠き溝との係止が解除されて、パイプ部材をスリーブから抜き出し可能となる。
【0013】
一実施形態の電柱取付ウインチの遠隔操作装置は、上記接続部材は、パイプ部材に固定される接続本体と、この接続本体の下側に連結され、パイプ部材と直角の回動軸回りに回動可能な回動部材と、この回動部材の下側に連結され、回動軸と直角の揺動軸回りに揺動可能な揺動部材とを有し、この揺動部材に支持ロッドの上端が固定されている。
【0014】
上記実施形態によれば、下端が電柱固定構造に支持される支持ロッドは、電柱固定構造が固定される電柱の径や、電柱固定構造の電柱への固定位置等に応じて、電柱毎に異なる傾斜角度となる場合がある。ここで、回動部材がパイプ部材と直角の回動軸回りに回動可能であり、かつ、揺動部材が回動軸と直角の揺動軸回りに揺動可能であるので、パイプ部材の姿勢を、支持ロッドの傾斜角度に応じて安定した姿勢に設定できる。したがって、この遠隔操作装置は、多種類の径の電柱に取り付けられたウインチに用いることができる。
【0015】
ここで、パイプ部材の姿勢を固定するために、接続本体に対して回動部材を固定する固定具を用いるのが好ましい。
【0016】
一実施形態の電柱取付ウインチの遠隔操作装置は、上記パイプ部材の外周面の接続部材と入力具連結部との間に、ローレット加工が施されている。
【0017】
上記実施形態によれば、パイプ部材のローレット加工が施された部分が操作者によって把持されることにより、パイプ部材の姿勢が安定に保持される。したがって、操作者によって入力具が安定して効率良く操作されるので、ウインチを安定して駆動することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明によれば、遠隔操作装置は、ウインチの本体フレームに一端が連結されるパイプ部材と、パイプ部材の内側に軸回りに回転自在に収容され、ウインチの駆動軸に一端が連結される回転軸と、パイプ部材の他端に設けられ、回転力を入力する入力具が連結される入力具連結部と、入力具連結部に連結された入力具によって入力された回転力を回転軸の他端に伝達する回転力伝達機構とを備えるので、操作者による入力具の操作位置を、電柱に取り付けられたウインチから離すことができる。したがって、ウインチによって上方に揚げられる途中に荷物が落下しても、荷物が操作者を直撃する危険を防止できて、操作者の安全を確保できる。また、電柱に巻き締め固定される電柱固定構造と、電柱固定構造に下端が支持される支持ロッドと、支持ロッドの上端に連結されると共に、パイプ部材の一端と他端の間に取り付けられて、支持ロッドとパイプ部材とを接続する接続部材とを備えるので、操作者による操作位置が離れていても、ウインチを安定して駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、電柱に取り付けられたウインチに、本発明の実施形態の遠隔操作装置を連結した様子を示す斜視図であり、図2は図1のウインチ及び遠隔操作装置を示す正面図であり、図3は図1のウインチ及び遠隔操作装置を示す平面図である。
【0020】
この遠隔操作装置1は、電柱2の下部に取り付けられたウインチ3に連結され、このウインチ3から離れて駆動操作を行うことを可能とするものである。先ず、遠隔操作装置1が用いられるウインチ3について説明する。
【0021】
このウインチ3は、操作者によるウインチハンドルの手回しで駆動されてワイヤ35の巻き取り動作を行う手巻型のウインチであり、電柱2の上部に配置された図示しない滑車にワイヤ35を掛け回し、このワイヤ35の先端に設けたフックに荷物を掛けて、この荷物を電柱2の上部に揚上するものである。このウインチ3は、本体フレーム31と、本体フレーム31に回転自在に支持されたドラム32と、本体フレーム31の側部に設けられたギヤボックス33で大略構成されている。本体フレーム31は、背面側の上端と下端に夫々連結されたチェーン37(簡略化して図示している)が電柱2に巻き締めされて固定されていると共に、上端が電柱2の上部に固定された支持ワイヤ38に吊り下げられている。ドラム32は、回転軸まわりに回転駆動されて、胴部にワイヤ35を巻き取るように形成されている。ギヤボックス33は、回転力が入力される入力部34を側面に有し、この入力部34に入力された回転力をドラム32の回転軸に伝達する歯車伝達機構と、ドラム32の逆回転を防止するブレーキ機構を収容している。入力部34は、ギヤボックス33の側面の法線方向に突設されたスリーブ341と、このスリーブ341の内側に同軸に配置された駆動軸342を有する。スリーブ341には、先端から本体フレーム31側に向って延びる切り欠き溝344が設けられている。駆動軸342は、先端部分の表面にセレーションが施されている。この入力部34に、本実施形態の遠隔操作装置1が連結されている。
【0022】
本実施形態の遠隔操作装置1は、ウインチ3の本体フレーム31の入力部34に一端が連結されたパイプ部材11と、パイプ部材11の他端に設けられてハンドル13が連結されるハンドル連結部14と、電柱2に巻き締め固定された電柱固定構造16と、電柱固定構造16に下端が支持された支持ロッド17と、支持ロッド17の上端に連結されて支持ロッド17とパイプ部材11とを接続する接続部材18を備える。
【0023】
図4は、パイプ部材11、ハンドル連結部14及び接続部材18の水平方向の断面を示す平断面図であり、図5は、パイプ部材11の一部と接続部材18の縦方向断面を示すと共に、ハンドル連結部の正面を示す図である。
【0024】
図4に示すように、パイプ部材11の内側には、ウインチの駆動軸342に一端が連結される回転軸21がパイプ部材11と同軸に回転自在に収容されている。
【0025】
パイプ部材11は、一端にウインチの入力部34と連結される連結金具111が固定されている一方、他端にハンドル連結部14の筒状部141が固定されている。パイプ部材11の接続部材18と筒状部141との間は、外周面にローレット加工が施された把持部11aになっている。
【0026】
パイプ部材11の連結金具111の先端部分には、他の部分よりも小径に形成され、ウインチのスリーブ341内に収容される収容部111aが設けられている。この連結金具111の収容部111aの先端に、径方向に突出する突起部としてのボルト112が固定されている。このボルト112は、パイプ部材11を入力部34に連結する際、スリーブ341の切り欠き溝344に案内される。このボルト112には、略円筒形状のロックボタン113が径方向に進退自在に外嵌している。このロックボタン113は、内周面とボルト112の外周面との間に収容されたコイルバネ114によって、パイプ部材11の径方向内側に付勢されている。スリーブ341に形成された切欠き溝344の終端は、先端側よりも幅広であって径方向視において概ね円形状の拡幅部335に形成されており、この拡幅部335に、ロックボタン113の収容部111a側の部分が嵌合可能になっている。パイプ部材11を入力部34に連結するとき、ボルト112を切り欠き溝344の先端側に位置合わせし、ロックボタン113を付勢力に抗して径方向外側に移動させた状態で、収容部111aをスリーブ341内に挿入する。これによりボルト112が切欠き溝344の拡幅部335に達すると、ロックボタン113を付勢力で収容部111a側に戻して拡幅部335に嵌合させる。この拡幅部335へのロックボタン113の嵌合により、パイプ部材11の本体フレーム31からの抜け止めをしている。
【0027】
回転軸21は、一端に、ウインチの駆動軸342を受け入れる受入金具211が固定されている。この受入金具211は、駆動軸342の先端部分を内嵌する凹部212が形成されていて、外周面がパイプ部材11の内周面によって周方向に摺動自在に支持されている。受入金具211の凹部212の内周面には、駆動軸342の先端部分に施されたセレーションと噛み合うセレーション212aが施されている。回転軸21の他端には歯車軸212が固定されており、この歯車軸220の外周面が筒状部141の内周面によって摺動自在に支持されている。この歯車軸220の先端に、かさ歯車213が固定されている。このかさ歯車213は、回転軸21と直角に延びるハンドル接続軸214に固定されたかさ歯車215に噛合している。ハンドル接続軸214の端面は、ハンドル連結部14の正面に露出していて、このハンドル接続軸214の端面に開口した凹部216内に、入力具としてのウインチハンドルの回転軸の先端部分を挿入するようになっている。ハンドル連結部14内に収容された歯車軸220の先端部分及びかさ歯車213と、ハンドル接続軸214及びかさ歯車215によって、回転力伝達機構を構成している。
【0028】
接続部材18は、パイプ部材11の長手方向中央からハンドル連結部14寄りに固定されている。この接続部材18は、パイプ部材11と略直角の軸を有する概ね円筒形状の接続本体181と、接続本体181の下面に回転可能に連結されて接続本体181と同軸の円筒形状を有する回動部材182と、この回動部材182の下面に連結され、回動部材182の回動軸と直角の揺動軸回りに揺動自在に支持ロッド17を接続する揺動金具183とを有する。図5には、揺動金具183の構成部品のうち、回動部材182の下面に固定された上側ヒンジ183aが図示されている。円筒形状の接続本体181は、径方向に延びる貫通穴が側面に形成されており、この貫通穴内にパイプ部材が挿通されている。接続本体181は、側面及び上端面から挿入されたボルト184,184でパイプ部材に固定されている。回動部材182は上端が開口した有底円筒形状を有し、接続部材181の下面に突設された凸部181aに外嵌している。また、回動部材182の側面に設けられたボルト穴から固定具としてのボルト185を挿入し、回動部材182を凸部181aに固定するようになっている。これにより、回動部材182の凸部181a回りの位相角度を調整し、この調整した位相角度に回動部材182を固定可能になっている。揺動金具183は、回動部材182の底面に固定される上側ヒンジ183aと、支持ロッド17の上端に固定される下側ヒンジ183bと、この上側ヒンジ183aに対して下側ヒンジ183bを揺動自在に接続する揺動軸183cとを有する。この揺動金具183により、接続本体181の中心軸に対する角度が調整される。上記回動部材182の接続部材181に対する位相角度と、揺動金具183の上側ヒンジ183aに対する下側ヒンジ183bの揺動角度とを調整して、支持ロッド17の傾斜姿勢を調整するようになっている。
【0029】
支持ロッド17は、上端が接続部材18の揺動金具183によって揺動自在に支持されていると共に、下端が電柱固定構造16によって揺動自在に支持されている。
【0030】
電柱固定構造16は、支持ロッド17の下端を揺動自在に支持する支持金具161と、この支持金具161の一方の側部の上端に一端が連結されて電柱2に巻き回される合成繊維製の電柱固定用のバンド162と、このバンド162の他端に接続され、バンド162に引張力を与えて電柱2への巻き締めを行うクランプ163とを有する。クランプ163は、支持金具161の他方の側部の上端に連結されている。上記支持金具161は、下部に揺動軸の支持部161aを有し、この支持部161aに支持された揺動軸161bに、支持ロッド17の下端に固定された揺動ヒンジ161cが揺動自在に接続されている。クランプ163は、支持金具161に連結された内側金具163aと、この内側金具163aの支持金具161と反対側に回動軸163bを介して接続された外側金具163cとを有する。外側金具163cは、回動軸163bと偏心した位置にバンド162の他端を接続するように形成されている。外側金具163cが開いた状態でバンド162を接続した後、外側金具163cを回動軸163b回りに回動させて、内側金具163aと重なり合う閉じ位置に保持する。これにより、バンド162の他端を支持金具161側に引き寄せ、バンド162に引張力を与えて、電柱固定構造16を電柱2周りに巻き締めした状態に保持するようにしている。
【0031】
上記構成の遠隔操作装置1を用いて、以下のようにウインチ3を駆動操作する。まず、パイプ部材11の把持部11aを一方の手で把持し、他方の手でハンドル連結部14に連結されたハンドル13を把持してハンドル13の回転操作を開始する。操作者によってハンドル13が回転されると、このハンドル13からの回転力が、ハンドル連結部14内の回転力伝達機構を介して回転軸21に伝達されて、ウインチの駆動軸342に伝達される。ウインチ3では、駆動軸342の回転力がギヤボックス33内の歯車伝達機構によってドラム32の回転軸に伝達され、ドラム32がワイヤ35の巻き取りを行う。ワイヤ35が巻き取られるに伴い、ワイヤ35の端に吊り下げられた荷物が電柱2に沿って上方に引き上げられる。引き上げられる荷物は、電柱2の上部の滑車に向って上昇するので、ウインチ3の略真上に位置するが、操作者はウインチ3から少なくともパイプ部材11の軸方向長さに相当する距離だけ離れた位置で駆動操作を行うことができる。したがって、ウインチ3の鉛直上方に揚上される荷物が上昇途中に落下しても、落下した荷物が操作者を直撃することがない。したがって、操作者の安全を効果的に確保することができる。
【0032】
また、上記パイプ部材11は支持ロッド17で支持され、この支持ロッド17が電柱固定構造16で支持されるので、操作者によるハンドル13の操作位置がウインチ3から離れていても、パイプ部材11に振動や振れ回りが生じることなく、ハンドル13を安定して回転操作することができる。また、操作者はパイプ部材11を支持する必要が無いので、容易にハンドル13操作を行うことができる。その結果、この遠隔操作装置1によってウインチ3を安定して容易に駆動することができる。
【0033】
また、上記支持ロッド17を支持する電柱固定構造16を、バンド162をクランプ163で巻き締めして電柱2に固定し、支持ロッド17とパイプ部材11との間の角度を接続部材18の回動部材182と揺動金具183で設定するので、直径や傾斜角度が異なる多種類の電柱2にあわせてパイプ部材11を適切な姿勢に調節できる。なお、電柱固定構造16は、合成繊維製のバンド162以外にチェーン等で電柱2に巻き締め固定してもよい。
【0034】
また、上記実施形態において、入力具連結部に連結する入力具として、荷物の重量や作業環境に応じて、種々のアーム長のハンドルを用いることができる。また、クランク形状のハンドル以外に、ラチェット機構を有するスパナを入力具に用いて、このスパナを往復操作して回転軸21を回転駆動してもよい。
【0035】
また、本実施形態の遠隔操作装置1を用いて、ウインチ3によるワイヤ35の巻き取り動作以外に、ワイヤ35の繰り出し動作を行ってもよい。すなわち、電柱2の上部から部品を下ろしてもよく、この荷物を下ろすときにも操作者の安全確保を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態の遠隔操作装置1は、ハンドル連結部14にハンドル13を連結する側をウインチ3の正面側にしたが、図6及び図7に示すように、ウインチ3の背面側にハンドル13を連結してもよい。図6及び7の遠隔操作装置は、ハンドル連結部14のハンドル接続軸214の凹部216がウインチ3の背面側に露出している以外は、図4及び5と同一の構成を有する。図6及び7において、図4及び5の構成部分に対応する部分には同一の参照番号を付している。この遠隔操作装置を用いることにより、ウインチ3の背面側からハンドル13を回転操作することができるので、操作者の利き手や作業環境に応じてウインチ3の駆動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の遠隔操作装置を電柱に取り付けられたウインチに連結した様子を示す斜視図である。
【図2】図1のウインチ及び遠隔操作装置を示す正面図である。
【図3】図1のウインチ及び遠隔操作装置を示す平面図である。
【図4】パイプ部材、ハンドル連結部及び接続部材を示す平断面図である。
【図5】パイプ部材の一部と接続部材の断面と、ハンドル連結部の正面を示す図である。
【図6】他の実施形態の電柱取付ウインチの遠隔操作装置を示す平断面図である。
【図7】図6の遠隔操作装置について、パイプ部材の一部と接続部材の断面と、ハンドル連結部の正面を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 遠隔操作装置
2 電柱
3 ウインチ
11 パイプ部材
13 ウインチハンドル
14 ハンドル連結部
16 電柱固定構造
17 支持ロッド
18 接続部材
21 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱に取り付けられるウインチを遠隔操作する遠隔操作装置であって、
ウインチの本体フレームに一端が連結されるパイプ部材と、
パイプ部材の内側に軸回りに回転自在に収容され、ウインチの駆動軸に一端が連結される回転軸と、
パイプ部材の他端に設けられ、回転力を入力する入力具が連結される入力具連結部と、
入力具連結部に連結された入力具によって入力された回転力を回転軸の他端に伝達する回転力伝達機構と、
電柱に巻き締め固定される電柱固定構造と、
電柱固定構造に下端が支持される支持ロッドと、
支持ロッドの上端に連結されると共に、パイプ部材の一端と他端の間に取り付けられて、支持ロッドとパイプ部材とを接続する接続部材と
を備えることを特徴とする電柱取付ウインチの遠隔操作装置。
【請求項2】
上記パイプ部材は、このパイプ部材の一端に設けられ、ウインチの本体フレームに設けられたスリーブ内に収容される収容部と、この収容部の外周面に突設され、ウインチのスリーブの先端から本体フレーム側に延設された切り欠き溝に案内される突起部と、この突起部に進退自在に外嵌し、パイプ部材の径方向の内側に付勢され、スリーブの切り欠き溝の終端に形成された拡幅部に係止可能なロックボタンとを有することを特徴とする請求項1に記載の電柱取付ウインチの遠隔操作装置。
【請求項3】
上記接続部材は、パイプ部材に固定される接続本体と、この接続本体の下側に連結され、パイプ部材と直角の回動軸回りに回動可能な回動部材と、この回動部材の下側に連結され、回動軸と直角の揺動軸回りに揺動可能な揺動部材とを有し、この揺動部材に支持ロッドの上端が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電柱取付ウインチの遠隔操作装置。
【請求項4】
上記パイプ部材の外周面の接続部材と入力具連結部との間に、ローレット加工が施されている請求項1に記載の電柱取付ウインチの遠隔操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−222384(P2008−222384A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63762(P2007−63762)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)