説明

電柱間架設線の張替え工法及び係る工法に用いる張替え工具

【課題】新線への張替え時に旧線や新線等が電柱間に垂れ下がることがなく、交通量が多い道路横断箇所や民地の上空であっても何不自由なく張替え作業できるのに加え、安全性や作業効率にも優れた電柱間架設線の張替え工法と、係る工法を実行可能な張替え工具とを提供する。
【解決手段】撤去すべき旧線16に、送り柱24側から受け柱26側に向けてプラスチック製の筒状のカバー部材10を順次被着させ、このカバー部材10の内部を通して旧線16と新線30との張替えを行なうので、電柱24、26間に電柱間架設線等が垂れ下がることがなく、旧線16と同じ位置に新線30を張替えることができる。また、カバー部材10は軽量なプラスチック製であり、電柱24の上まで比較的容易に持ち上げることができるので、張替え作業の安全に資することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱間に架設された水平支線や電線などの電柱間架設線の旧線を新線に張替える工法と係る工法を施工するための張替え工具とに関する。
【背景技術】
【0002】
電柱間に架設された水平支線や電線などの電柱間架設線は、屋外の厳しい環境に長期間曝され続けている。係る環境下にある電柱間架設線には劣化や破損などが生じる虞があり、劣化や破損が生じたものは交換(張替え)が必要である。
【0003】
例えば、電線の張力を打ち消す目的で電柱間に張られている水平支線は、大略、亜鉛めっき鋼より線と玉碍子と支線バンドとで構成されており、経年と共に(主として亜鉛めっき鋼より線における)発錆の拡大や素線切れ等の劣化が生じ、係る劣化が著しいものは張替えが必要になる。
【0004】
ここで、著しい劣化が生じた水平支線等の電柱間架設線の旧線を新線に張替える方法として、従来より以下の工法が行われている。すなわち、まず始めに、電柱間架設線両端の電柱に新線用の支線バンドを取り付け、新線が電柱間に架設されている引込線などと交差しないように、地上より導綱を投げて引込線を交わす。続いて、先端を支持バンドの位置まで持ち上げた導綱の後端と新線の先端とをつなぎ、導綱を手繰り寄せることにより新線を地上から電柱の支線バンドの位置まで引き上げる。そして、新線が所定のテンションと成るように張線して支持バンドに固定し、引込線などと接触しないようにしながら旧線を撤去して張替え作業が完了する。
【0005】
このような従来の電柱間架設線の張替え工法には以下のような問題があった。すなわち、上記従来の工法では、新線への張替え時に導綱や新線を電柱間に垂れ下げる必要があったため、交通量の多い道路横断箇所や民地の上空等では張替え作業が困難になると云う問題があった。又、引込線毎に導綱を交わす必要があり作業が非効率となるのに加え、張替える電柱間架設線の上昇や降下時に、張替え対象の電柱間架設線の下に施設されている低圧電線や引込線或いは通信線や家屋等に接触し、これらを破損させる虞もあった。
【0006】
そこで、以上のような問題を解決し得る技術として、張替え対象の旧線に滑車ローラーを多数設置したり、吊り金車とロープを敷設するための自走機を走らせたりして新線が旧線に沿うようにして送り出す技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0007】
係る技術を用いれば、新線への張替え時に旧線や新線等を電柱間に垂れ下げる必要がなくなり、交通量が多い道路横断箇所や民地の上空であっても何不自由なく張替え作業を行なうことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−161910号公報
【特許文献2】特開昭60−118006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、張替え対象の旧線に滑車ローラーを多数設置したり自走機を走らせる上記技術では、ある程度の重量がある滑車ローラーや自走機等を旧線が架設されている電柱の高い位置まで持ち上げなければならないが、滑車ローラーや自走機と云った重量物を電柱の上まで持ち上げることは極めて重労働であり、依然として安全性や作業効率の点で問題があった。
【0010】
また、例えば電柱間架設線の1つである水平支線には、上述したように玉碍子が取り付けられているが、滑車ローラーや自走機はこの玉碍子を乗り越えて通過することができないか、或いは通過が極めて困難であることから、水平支線の張替えにはこれらの工法が使えないか、或いは使い辛いと云う問題もあった。
【0011】
さらに、張替えの対象が大型の鉄塔間に架設された送電線であれば何ら問題はないが、街中の比較的小さな電柱間に架設された水平支線などを張替える際に、ある程度の重量がある滑車ローラーを多数設置したり、自走機等を走行させたりすると、電柱間架設線を介して電柱に過大且つ不所望なテンションが掛かるようになり、最悪の場合には係るテンションによって電柱が傾倒するようになると云った問題も生じ得る。
【0012】
それゆえに、本発明の主たる課題は、新線への張替え時に旧線や新線等が電柱間に垂れ下がることがなく、交通量が多い道路横断箇所や民地の上空であっても何不自由なく張替え作業できるのに加え、安全性や作業効率にも優れた電柱間架設線の張替え工法と、係る工法を実行可能な張替え工具とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における第1の発明は、電柱間架設線の旧線16を新線30に張替える電柱間架設線の張替え工法であって、
(a)撤去すべき前記旧線16に、送り柱24側から、長手方向全長に亘りスリット18が設けられたプラスチックからなる筒状のカバー部材10を順次被着させると共に、前記カバー部材10の長手方向端部にて前記スリット18が閉じた状態を保持するように取り付けた吊金具12にパイロットロープ14を係止或いは挿通させて前記カバー部材10と同時にパイロットロープ14を前記受け柱26側へと送り出すカバー部材取付工程と、
(b)前記受け柱26に前記パイロットロープ14の先端を固定すると共に、前記パイロットロープ14の根元側を前記送り柱24に固定するパイロットロープ張線工程と、
(c)前記送り柱24における前記旧線16の固定を解くと共に、解いた前記旧線16の端部に新設する新線30の先端を連結し、前記カバー部材10の内部を通して前記旧線16を前記受け柱26側に引き抜くと同時に、前記新線30を前記受け柱26側へと送り出し、前記受け柱26に前記新線30の先端を固定した後、所定のテンションに張線した前記新線30の後端を前記送り柱24に固定する架設線取替工程と、
(d)前記受け柱26及び送り柱24におけるパイロットロープ14の固定を解いた後、カバー部材10、吊金具12及びパイロットロープ14を撤去する張替え工具撤去工程とで構成されている
(e)ことを特徴とする電柱間架設線の張替え工法、である。
【0014】
この発明では、撤去すべき旧線16に、送り柱24側から受け柱26側に向けてプラスチック製の筒状のカバー部材10を順次被着させ、このカバー部材10の内部を通して旧線16と新線30との張替えを行なうので、電柱24、26間に電柱間架設線等を垂れ下げることなく、旧線16を新線30に張替えることができる。また、旧線16に被着させるカバー部材10は、軽量なプラスチック製であり、電柱24の上まで比較的容易に持ち上げることができるので、張替え作業の安全に資することができる。
【0015】
本発明における第2の発明は、上記第1の発明における「前記パイロットロープ張線工程において、前記パイロットロープ14を、前記受け柱26及び前記送り柱24に固定する際に、前記旧線16よりも上方であって、前記カバー部材10の内部底面に前記旧線16が接する高さに固定する」ことを特徴とするもので、これにより、新線30を旧線16と略同じ高さ位置にて簡単に架設することができるようになる。
【0016】
本発明における第3の発明は、上記第1又は第2の発明に係る電柱間架設線の張替え工法を実行可能な張替え工具、すなわち電柱間架設線の張替えに用いる張替え工具に関するもので、
(1)プラスチックからなり長手方向全長に亘りスリット18が設けられ、電柱間に張設された旧線16に前記スリット18を通って取り付けられる筒状の本体10aと、前記本体10aの長手方向両端部において前記スリット18に沿って前記本体10aの径方向に突出すると共に前記スリット18を介して対面する一対の舌片部20と、前記一対の舌片部20を前記本体10aの周方向にて貫通する貫通孔22とを有するカバー部材10、
(2)電柱間に架設されるパイロットロープ14、及び
(3)前記貫通孔22に着脱可能で、電柱間に架設されたパイロットロープ14が挿通され、カバー部材10をパイロットロープ14に吊り下げる吊金具12とで構成された
(4)ことを特徴とする張替え工具、である。
【0017】
本発明における第4の発明は、上記第3の発明において、「前記吊金具12は、カラビナ構造を有する上下2段の環状部12a、12bからなり、一方の環状部12aは貫通孔22に着脱され、他方の環状部12bには前記パイロットロープ14が係止或いは挿通される」ことを特徴とする。
【0018】
本発明における第5の発明は、上記第3又は第4の発明において「前記パイロットロープ14がスーパー繊維で構成されている」ことを特徴とするもので、これによりパイロットロープ14をワイヤ製のものに比べて軽量にできるので、電柱24の上まで比較的容易且つ安全に持ち上げることができると共に、その機械的強度がワイヤ製のものと同等以上になることから、このパイロットロープ14を電柱24、26に固定する際、張替え対象である旧線16のテンションと略同じテンションで固定することができるようになる。つまり、このパイロットロープ14が仮支線(旧線から新線への張替えの間、電柱間の張力が変化しないように張られる仮設の支線)として機能するようになることから、わざわざ別途仮支線を架設する必要がなくなり、工事時間の短縮を図ることができるようになる。
【0019】
なお、パイロットロープ14を構成する「スーパー繊維」とは、単糸強度で約2GPa以上、弾性率で約50GPa以上の高強度・高弾性率の性能を有する繊維を云い、具体的には、パラ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維及びPBO繊維などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、新線への張替え時に旧線や新線等が電柱間に垂れ下がることがなく、交通量が多い道路横断箇所や民地の上空であっても何不自由なく張替え作業できるのに加え、安全性や作業効率にも優れた電柱間架設線の張替え工法と、係る工法を実行可能な張替え工具とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の電柱間架設線の張替え工法に用いるカバー部材を示すもので、(a)は部分省略正面図、(b)は(a)におけるA矢視図、(c)は(a)におけるX−X断面図、(d)は(a)におけるB矢視図である。
【図2】本発明の電柱間架設線の張替え工法に用いる吊金具とその適用方法を示す説明図である。
【図3】本発明の電柱間架設線の張替え工法(前半)の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の電柱間架設線の張替え工法(後半)の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に従って詳述する。図1及び図2は、本発明の電柱間架設線の張替え工法に用いる張替え工具のうち、カバー部材10(図1)及び吊金具12(図2)を示すものである。なお、本発明の電柱間架設線の張替え工法に用いる張替え工具は、上記カバー部材10及び吊金具12に加えてパイロットロープ14(図3参照)で構成されている。
【0023】
カバー部材10は、張替え対象となる旧線16を被覆する管状部材で、プラスチックからなり長手方向全長に亘ってスリット18が設けられた筒状の本体10aを有する。この本体10aの長手方向一端側には雄型継手部10bが形成されており、長手方向他端側には雌型継手部10cが形成されている。
【0024】
雄型継手部10bは、本体10aの長手方向一端側の外径が一段小さくなるように形成された細径部10b1と、この細径部10b1の先端で外径が拡大した基部からさらに先端に向けて(その外径が)テーパー状に縮径したテーパー部10b2とを有する。
【0025】
雌型継手部10cは、本体10aの長手方向他端がフレア状に開口し、隣接するカバー部材10の雄型継手部10bを挿入する際に、当該雄型継手部10bを本体10aの内部へとスムーズに案内するフレア部10c1と、本体10aの内径が環状に拡大し、隣接するカバー部材10の雄型継手部10bを嵌め込んだ際に、該雄型継手部10bのテーパー部10b2が簡単に抜け出ないようにこれを収容する凹条が内周面全周に形成された収容部10c2とを有する。
【0026】
なお、図1中の符号11は、カバー部材10の軽量化を図るために穿設された開孔である。
【0027】
また、本体10aの雄型継手部10b及び雌型継手部10cのそれぞれには、スリット18に沿って本体10aの径方向に突出すると共にスリット18を介して対面する一対の舌片部20が設けられている。この舌片部20は、隣接するカバー部材10の雄型継手部10bと雌型継手部10cとを係合させた際、4枚の舌片部20全てが本体10aの周方向で重なり合うように構成されており、これら4枚の舌片部20の全てを本体10aの周方向にて貫通するように長孔状の貫通孔22が形成されている。なお、この貫通孔22には、後述するように吊金具12が着脱される。
【0028】
ここで、このカバー部材10を構成するプラスチックとしては、耐候性や機械的強度に優れ且つ低比重のポリエチレンを用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0029】
また、このカバー部材10は、電柱の高い位置にまで持ち上げて使用するものであることから、カバー部材10の本体10aは、図1(a)で示すようにメッシュ構造にして軽量化を図るのが好ましい。
【0030】
さらに、このカバー部材10の内径は、水平支線Hに取り付けられている玉碍子G(図3及び4参照)の外径よりも若干大きくなるような寸法、例えば95±2mm前後に形成するのが好ましい。このような内径とすることによって、玉碍子Gがカバー部材10内部を簡単に通り抜けできるようになり、玉碍子Gが取り付けられた水平支線Hの張替えもストレスなく実施することができるようになる。
【0031】
吊金具12は、カラビナ構造を有する上下2段の環状部12a、12bからなり、一方の環状部12aは、図2に示すように三角形状に形成されており、隣接するカバー部材10の雄型継手部10bと雌型継手部10cとを係合させて両者を連結する際に、スリット18が閉じた状態を保持するようにして貫通孔22に取り付けられ、カバー部材10の連結部分の抜け落ちを防止する。本実施例の吊金具12では、三角形状に形成された環状部12aの底辺12a2内側の長さが、雄型継手部10bと雌型継手部10cとを連結して重ね合わせた4枚の舌片部20の幅と略等しくなるように形成されているので、雄型継手部10bと雌型継手部10cとを連結して4枚重ね合わせた舌片部20の貫通孔22に、カラビナ構造のゲート12a1を開けてこの環状部12aの底辺12a2を挿通して取り付けると、スリット18が閉じた状態で保持されるようになる。
【0032】
一方、他方の環状部12bは楕円形状或いは円形状に形成されており、カラビナ構造のゲート12b1を介してパイロットロープ14が係止或いは挿通される。
【0033】
なお、吊金具12の形状は、上述のものに限定されるものではなく、電柱間に架設されたパイロットロープ14が挿通され、カバー部材10をパイロットロープ14に吊り下げる形状の物であれば如何なるもの(例えば、単一のリング或いはカラビナからなるもの等)であってもよい。
【0034】
パイロットロープ14は、吊金具12を介して旧線16を被覆したカバー部材10を電柱24、26の所定高さに吊持すると共に、電柱24、26間に所定の張力を与える仮支線としても機能する線材で、スーパー繊維からなる引張強さ30kN以上のものを用いるのが好ましい。
【0035】
ここで、パイロットロープ14を構成するスーパー繊維とは、上述したように、単糸強度で約2GPa以上、弾性率で約50GPa以上の高強度・高弾性率の性能を有する繊維を云い、具体的には、パラ系アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維及びPBO繊維などを挙げることができる。
【0036】
以上のように構成された張替え工具を用いて施工する本発明の電柱間架設線の張替え工法は、「カバー部材取付工程」「パイロットロープ張線工程」「架設線取替工程」及び「張替え工具撤去工程」がこの順に実行される。以下、本発明の電柱間架設線の張替え工法の一例について、図3及び4に示す水平支線Hの張替えを例にして詳細に説明する。なお、図3及び4中の符号Gは玉碍子であり、符号Lは支線バンドである。
【0037】
「カバー部材取付工程」は、撤去すべき電柱間架設線、具体的には水平支線Hの旧線16に、送り柱24側から、長手方向にスリット18を有するカバー部材10を順次被着させ、隣接するカバー部材10端部の雄型継手部10bと雌型継手部10cとを嵌め合せて連結させながら受け柱26側へと送り出す工程である(図3(a)参照)。この際、カバー部材10の長手方向両端部は、スリット18が閉じた状態を保持するよう貫通孔22に吊金具12の一方の環状部12aを取り付ける。又、最も受け柱26側にあるカバー部材10先端F側の貫通孔22に取り付けられた吊金具12の他方の環状部12bには、(図示しないが)環状に形成されたパイロットロープ14の先端が係止されており、これ以外の吊金具12の他方の環状部12bには、カラビナ構造のゲート12b1を介してパイロットロープ14が挿通されている。これにより、カバー部材10の受け柱26側への送り出しと同時に、パイロットロープ14も受け柱26側へと送り出されるようになっている。なお、パイロットロープ14の先端を環状とせず、最も受け柱26側にある吊金具12にパイロットロープ14の先端を結び付けるようにしてもよい。
【0038】
「パイロットロープ張線工程」は、受け柱26の旧線16よりも上方にパイロットロープ14の先端を固定すると共に、旧線16のテンションと略等しくなるよう張線したパイロットロープ14の根元側を送り柱24の旧線16よりも上方に固定する工程である。
【0039】
具体的には、カバー部材10と共に受け柱26側へと到達したパイロットロープ14の先端と吊金具12との係合を解き、他の吊金具12と同様に環状部12bにパイロットロープ14を挿通させた上で(図3(b)参照)、このパイロットロープ14の先端を、受け柱26の旧線16よりも高い位置に固定する。一方、送り柱24側では、受け柱26側と同様に旧線16よりも高い位置に張線器28を取り付けた後、この張線器28にパイロットロープ14の根元側を取り付け、該パイロットロープ14のテンションが旧線16のテンションと略等しくなるように張線して固定する(図3(c)参照)。
【0040】
「架設線取替工程」は、送り柱24における旧線16の固定を解くと共に、解いた旧線16の端部に新設する新線30の先端を連結し、カバー部材10の内部を通して旧線16を受け柱26側に引き抜くと同時に新線30を受け柱26側へと送り出し、受け柱26に新線30の先端を固定すると共に、所定のテンションに張線した新線30の後端を送り柱24に固定する工程である。
【0041】
具体的には、送り柱24及び受け柱26における支線バンドLと旧線16との固定を解くと共に、旧線16の送り柱24側の端部に新設する新線30の先端を連結し、カバー部材10の内部を通して旧線16を受け柱26側に引き抜くと同時に新線30を受け柱26側へと送り出す(図4(a)参照)。そして、受け柱26の旧線16が取り付けられていた支線バンドLに新線30の先端を固定すると共に(尤も支線バンドLが劣化している場合にはこれを交換する。)、送り柱24の支線バンドL近傍に張線器32を取り付けた後、この張線器32を用いて新線30が所定のテンションとなるように張線し、送り柱24の支線バンドLに張線した新線30を固定する。
【0042】
なお、旧線16の引き抜きと新線30の送り出しを行なう際に、(図示しないが)送り柱24及び受け柱26における支線バンドL近傍の旧線16取付高さと同等かやや高い位置に直付ローラを取り付けるのが作業効率の点でより好適である。
【0043】
「張替え工具撤去工程」は、受け柱26及び送り柱24におけるパイロットロープ14の固定を解くと共に、カバー部材10、吊金具12及びパイロットロープ14を送り柱24側へと引き戻しつつ撤去する工程であり、これにより本実施例の電極間架設線の張替え工法が完了する。このように、「カバー部材10、吊金具12及びパイロットロープ14を送り柱24側へと引き戻しつつ撤去する」ことにより、長尺のパイロットロープ14を切断することなく繰り返し使用することができるが、パイロットロープ14の余尺が少ない場合やパイロットロープ14の再使用が不要である場合等には、カバー部材10、吊金具12及びパイロットロープ14と云った張替え工具を受け柱26側で引き取るようにしてもよい。
【0044】
以上のように、本実施例の電柱間架設線の張替え工法によれば、撤去すべき旧線16に、送り柱24側から受け柱26側に向けてプラスチック製の筒状のカバー部材10を順次被着させ、このカバー部材10の内部を通して旧線16と新線30との張替えを行なうので、電柱24、26間に電柱間架設線等が垂れ下がることがなく、旧線16と同じ位置に新線30を張替えることができるのに加え、旧線16に被着させるカバー部材10は、軽量なプラスチック製であり、電柱24の上まで比較的容易に持ち上げることができるので、張替え作業の安全に資することができる。
【0045】
また、カバー部材10の長手方向両端部には吊金具12が取り付けられており、この吊金具12を介してカバー部材10と共にパイロットロープ14が受け柱26側へと送り出されるようになっている。そして、この受け柱26側へと送り出されたパイロットロープ14は旧線16よりも上方で電柱に固定される。このため、受け柱26及び送り柱24間にパイロットロープ14が架設された状態では、カバー部材10のスリット18が上方に配置されるようになる。そうすると、カバー部材10の内部を通して旧線16を引き抜き、或いは新線30を送り出す際に、これら張替え対象の電柱間架設線がスリット18に引っ掛かって作業効率が低下するのを防止することができる。
【0046】
さらに、このパイロットロープ14を電柱24、26に固定する際に、張替え対象である旧線16のテンションと略同じテンションとなるように固定しているので、このパイロットロープ14が仮支線としても機能するようになる。その結果、わざわざ別途仮支線を架設する必要がなくなり、工事時間の短縮を図ることができるようになる。
【0047】
なお、上述の実施例では、張替えられる電柱間架設線が水平支線Hの場合を例示したが、電柱間架設線はこの水平支線に限定されるものではなく、柱間支線や引留支線(Y支線)或いは電線や通信線などであってもよい。
【0048】
また、上述の例では、カバー部材10として本体10aの長手方向端部に雄型継手部10b及び雌型継手部10cが形成されている物を示したが、カバー部材10にこのような継手部10b、10cが設けられていない物を用いるようにしてもよい。但し、本体10aの長手方向端部に雄型継手部10b及び雌型継手部10cを設けることによって、隣接するカバー部材10同士の継ぎ目を解消することができ、張替え対象の電柱間架設線がカバー部材10の内部をスムーズに通過することができるようになる。
【符号の説明】
【0049】
10…カバー部材
10a…本体
10b…雄型継手部
10c…雌型継手部
12…吊金具
12a,12b…環状部
14…パイロットロープ
16…旧線
18…スリット
20…舌片部
22…貫通孔
24…送り柱(電柱)
26…受け柱(電柱)
28…張線器(パイロットロープ用)
30…新線
32…張線器(新線用)
H…水平支線
L…支線バンド
G…玉碍子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱間架設線の旧線を新線に張替える電柱間架設線の張替え工法であって、
撤去すべき前記旧線に、送り柱側から、長手方向全長に亘りスリットが設けられたプラスチックからなる筒状のカバー部材を順次被着させると共に、前記カバー部材の長手方向端部にて前記スリットが閉じた状態を保持するように取り付けた吊金具にパイロットロープを係止或いは挿通させて前記カバー部材と同時にパイロットロープを前記受け柱側へと送り出すカバー部材取付工程と、
前記受け柱に前記パイロットロープの先端を固定すると共に、前記パイロットロープの根元側を前記送り柱に固定するパイロットロープ張線工程と、
前記送り柱における前記旧線の固定を解くと共に、解いた前記旧線の端部に新設する新線の先端を連結し、前記カバー部材の内部を通して前記旧線を前記受け柱側に引き抜くと同時に、前記新線を前記受け柱側へと送り出し、前記受け柱に前記新線の先端を固定した後、所定のテンションに張線した前記新線の後端を前記送り柱に固定する架設線取替工程と、
前記受け柱及び送り柱におけるパイロットロープの固定を解いた後、カバー部材、吊金具及びパイロットロープを撤去する張替え工具撤去工程とで構成されていることを特徴とする電柱間架設線の張替え工法。
【請求項2】
前記パイロットロープ張線工程において、前記パイロットロープを、前記受け柱及び前記送り柱に固定する際に、前記旧線よりも上方であって、前記カバー部材の内部底面に前記旧線が接する高さに固定することを特徴とする請求項1に記載の電柱間架設線の張替え工法。
【請求項3】
電柱間架設線の張替えに用いる張替え工具であって、
プラスチックからなり長手方向全長に亘りスリットが設けられ、電柱間に張設された旧線に前記スリットを通って取り付けられる筒状の本体と、前記本体の長手方向両端部において前記スリットに沿って前記本体の径方向に突出すると共に前記スリットを介して対面する一対の舌片部と、前記一対の舌片部を前記本体の周方向にて貫通する貫通孔とを有するカバー部材、
電柱間に架設されるパイロットロープ、及び
前記貫通孔に着脱可能で、電柱間に架設されたパイロットロープが挿通され、カバー部材をパイロットロープに吊り下げる吊金具とで構成されたことを特徴とする張替え工具。
【請求項4】
前記吊金具は、カラビナ構造を有する上下2段の環状部からなり、一方の環状部は前記貫通孔に着脱され、他方の環状部には前記パイロットロープが係止或いは挿通されることを特徴とする請求項3に記載の張替え工具。
【請求項5】
前記パイロットロープがスーパー繊維で構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の張替え工具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228001(P2012−228001A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91257(P2011−91257)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 電気新聞 平成22年10月27日付け 電気現場技術 第50巻、第585号、平成23年2月10日発行
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000141015)株式会社かんでんエンジニアリング (16)