説明

電極リードシステム

電極リードアセンブリーが、カフ電極、第1のリード部、およびアンカーを含んでおり、第1のリード部が、神経、カフ電極、または第1のリード部への張力の緩和をもたらすように構成された長さおよび形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年5月2日付の米国特許仮出願第61/049,927号について、米国特許法第119条(e)に規定の優先権を主張し、これを参照することにより、その内容は、本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、広くには、患者の軟組織を刺激および監視するための埋め込み式の刺激システムに関し、さらに詳しくは、本発明は、体内埋め込み式の刺激システムの電極およびリード本体を配置するためのリードシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
睡眠時無呼吸とは、一般に、睡眠の最中に呼吸が中断することを指す。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と称される睡眠時無呼吸の一種は、上気道の閉塞および/またはつぶれに起因して睡眠の最中に呼吸が反復的に中断することを特徴とし、通常は、血中酸素飽和度の低下を伴う。
【0004】
閉塞性睡眠時無呼吸の1つの治療方法として、顎の下方の首領域に位置する舌下神経へと電気刺激をもたらすことが挙げられる。そのような刺激療法は、上気道の筋肉を活発にして、上気道の開通性を維持する。睡眠時無呼吸の治療においては、閉塞した気道を通って呼吸をすることの困難性ゆえの呼吸の苦労の増大が、呼吸の吸気段階に同期して気道を開いた状態に保持する上気道の筋肉または筋肉群を刺激することによって回避される。例えば、頤舌筋が、睡眠時無呼吸の治療において舌下神経の周囲に配置されたカフ電極によって刺激される。
【0005】
顎の下方においてかなりの運動が多数の方向に生じる可能性があるため、舌下神経の刺激を可能にするように電極を配置することは、かなりの難題となる。一方では、電極およびリードを舌下神経のすぐ近くに配置することが、顎および首の通常の運動の結果として、神経への刺激につながる可能性があり、他方では、神経への密着を欠くと、神経および電極カフおよびリードとの間の接続組織が増加し、しきい値を低くして、装置によってもたらされる刺激の有効性を減じる可能性がある。同様に、電極の適切な配置の維持に関係する課題として、電極から埋め込み式のパルス発生器(典型的には、患者の胸部の領域に配置される)まで延びるリード本体を適切に配置することが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施の形態による埋め込み式の刺激システムの概略図である。
【図2】本発明の実施の形態による埋め込み式の刺激システムにおいて利用されるリードシステムの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態による拡張可能なカフ電極の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態によるカフ電極について、図3の線4−4に沿って得た断面図である。
【図5】本発明の実施の形態によるより大きな直径の完全に係合した位置にある拡張可能な電極カフの断面図である。
【図6】カフ電極およびリード本体を含んでいる本発明の実施の形態によるリードアセンブリーの側面図である。
【図7】本発明の実施の形態による図6のリードアセンブリーの配置を概略的に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の態様および特徴は、それらが本発明の実施の形態についての以下の詳細な説明を参照し、添付の図面と併せて検討することによってよりよく理解されたときに、正当に評価されるであろう。
【0008】
以下の詳細な説明は、あくまでも例示にすぎず、本発明または本発明の実施の形態の応用および用途を限定しようとするものではない。さらに、上述の技術分野、背景、要約、または以下の詳細な説明に明示的または暗示的に提示されるいかなる理論にも縛られるものではない。
【0009】
本発明の実施の形態は、神経に固定されるように構成されたカフ電極と、カフ電極から延び、神経の位置から離れて位置する埋め込み式のパルス発生器につながっているリード本体と、を備えているリードシステムを提供する。一実施の形態においては、リード本体が、第1のリード部、アンカー、および第2のリード部を備えている。アンカーが、神経上のカフ電極の位置のすぐ近くの腱などの神経以外の解剖学的構造に対して固定される。一態様においては、第1のリード本体が、固定されたカフ電極と固定されたアンカーとの間の距離よりも実質的に大きい長さを有するように構成される。別の態様においては、第1のリード部が、弾性材料で形成されたおおむね蛇行の構成を備えている。
【0010】
この構成によって、張力緩和の機構が確立され、カフ電極の神経からの脱離が防止され、あるいは神経、カフ電極、および/またはリード本体に過度の応力が加わることがなくなる。アンカーを固定されたカフ電極の近くの神経以外の解剖学的構造へと固定し、おおむね蛇行の構成を有する比較的長い第1のリード部を用意することによって、リードシステムは、アンカーとカフ電極との間にたっぷりとした長さの第1のリード部を提供し、リード本体、カフ電極、および/または神経に負担が加わることがなく、あるいはわずかな負担しか加わらないように保証する。
【0011】
これらの実施の形態および他の実施の形態を、図1〜7に関連して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態による埋め込み式の刺激システム12の概略図である。図1に示されているように、本発明の一実施の形態による埋め込み式の刺激システム12の実施例は、患者10の胸部に外科的に配置することができる埋め込み式のパルス発生器(IPG)55と、IPG55の接続ポートに配置されたコネクター(図示されていない)を介してIPG55に電気的に接続される刺激リード52とを備えている。リード52は、電極または電極システム65を備えており、詳しくは後述されるように、神経53の刺激を可能にするために、電極システム65を所望の神経(患者10の舌下神経53など)の周囲に位置させるようにIPG55から延びている。リード52を利用することができる典型的な埋め込み式の刺激システムは、例えばChristophersonらの米国特許第6,572,543号(その全体が、これを参照することにより、本明細書に含まれる)に記載されており、呼吸の努力を検出すべくセンサーまたはトランスデューサ60を患者10に配置できるよう、IPG55に電気的に接続されてIPG55から延びているセンサーリード57をさらに備えている。
【0013】
センサー60は、頸切痕または気管と食道との間の空間など、胸膜内の空間との圧力の連続性を有している領域に外科的に埋め込まれ、あるいは気管または食道のいずれかに取り付けられる圧力センサーであってよい。さらには、センサー60を、肋間に配置しても、あるいは胸骨柄の後ろ側の圧力を検出するための位置に固定してもよい。胸骨64の頸切痕62および胸骨柄63は、胸膜内の空間に解剖学的に連続している胸郭上部の周知の構造体である。さらには、胸膜内の圧力の変化が、特徴的な呼吸の努力の波形をもたらすことも周知である。
【0014】
センサー60を配置するための場所は、少なくとも部分的には、遅延(すなわち、呼吸の発生点からセンサー位置へと伝播する呼吸の努力に特徴的な圧力波形に関する伝播時間)の関数として選択される。選択される位置は、特定の位置において有用な検出信号を実現するために必要なフィルター処理の量(すなわち、例えば心臓の波形の活動を取り除くために必要とされるフィルター処理など、所望される検出対象の特徴に関する波形以外の波形を除去するために必要なフィルター処理の量)の関数でもある。センサー60を配置することで、IPG55が、呼吸の苦労の増大を判断するために利用される呼吸の努力の波形情報を受け取ることができ、IPG55が、この情報を使用して判断される呼吸の苦労の増大に応答して、治療の提供を制御することができる。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態による埋め込み式の刺激システムにおいて利用されるリードシステム80の側面図であり、リードシステム80は、図1のリード52の代わりに使用される。一実施の形態においては、図2に示されるように、リードシステム80が、リード本体82、コネクター88、および拡張可能なカフ電極90を備えている。リード本体82が、近位端84から遠位端86まで延びており、コネクター88が、リード本体82をIPG55へと電気的に接続するために、リード本体82の近位端84に配置されている。拡張可能な電極カフ90が、リード本体82の遠位端86に位置しており、舌下神経または他の神経など、対象となる神経の周囲に配置されるように構成されている。電極カフ90は、1つ以上の電極92を、電極カフ90が神経の周囲に配置されたときにそれぞれの電極92が神経に接するように、電極カフ90の壁に埋め込んで備えている。一態様において、リード本体82は、この技術分野において公知のとおり、電極92がコネクター88のそれぞれのコネクターピン94を介してIPG55へと電気的に接続されるよう、電極92とコネクター88とを電気的に接続するために、リード本体82の内部に延びる導体(図示されていない)を備えている。
【0016】
図3は、リードシステム80のカフ電極90に代えて配置することができる本発明の一実施の形態による拡張可能な電極カフ100の斜視図である。図3に示されるとおり、カフ100は、カフ本体101および電極103のアレイ102を備えている。一般に、対象とする神経が通過して延びる管腔140は、カフ本体101によって画成される。他の特徴の中でもとりわけ、カフ本体101は、1対の弾性フィンガー134、150(例えば、フランジ部材)を備えており、弾性フィンガー134、150は、おおむねアーチ形の形状を有し、カフ本体101のベース部120から延びている。大まかには、弾性的に付勢されたフィンガー134、150の端部を互いに引き離すことによって、対象とする神経を係合させるための管腔140へのアクセスがもたらされる。フィンガー134、150を解放すると、カフ本体101は、図3に示されている形状に復帰する。さらに後述されるとおり、ひとたび神経に配置されると、フィンガー134、150の材料および構造ゆえに、カフ本体101によって囲まれた神経のサイズの拡大に対応するように、管腔140のサイズが自動的に拡張可能である。このやり方で、電極103が、フィンガー134、150とベース120との間に定められる管腔140の直径の拡大を可能にしつつ、神経にぴったりと接触した状態に保持される。
【0017】
一実施の形態において、電極103のアレイ102は、それぞれの電極103をカフ本体101の長さに沿って互いに離間させつつ、カフ本体101の壁に埋め込まれている。いくつかの実施の形態においては、電極103が、カフ本体101の共通の側または部位に位置する1本の長手軸に沿って直列に整列している。
【0018】
いくつかの実施の形態においては、カフ100が、少なくとも図4および5に関してさらに詳しく説明されるように、カフ本体101の外表面の少なくとも一部分およびフィンガー134、150の遠位端の間の再閉鎖可能な開口109を開放可能に覆うように付勢および構成された外側のフラップまたはフランジ部材をさらに備えている。しかしながら、他の実施の形態においては、この外側フラップが省略される。いずれの場合も、図3は、外側フラップが存在することによって見えなくなってしまうと考えられるカフ本体101の特徴および属性を明瞭に見えるように示すために、外側フラップを有しないカフ本体101を図示している。
【0019】
図4は、本発明の一実施の形態による拡張可能な電極カフ100について、図3の線4−4に沿って得た断面図である。図4に示されているように、一実施の形態においては、拡張可能な電極カフ100のカフ本体101が、ベース部120、第1のフランジ部材130、第2のフランジ部材134、および第3のフランジ部材150を備えている。
【0020】
さらに図4は、すでに図3に示したようにカフ本体101に埋め込まれた電極103のうちの1つを示している。図4に示されているように、電極103は、近位トランク部110、本体部111、および遠位フック部112を備えており、遠位フック部112が、遠位端部分115と本体部111との間に延びる凹所114を定めている。近位トランク部110が、カフ本体101のベース部120に埋め込まれ、ベース部120の内部に延びている一方で、本体部111は、管腔140内に露出されるように第2のフランジ部材134に埋め込まれている。
【0021】
図4に示されるとおり、ベース部102は、上壁122、底壁124、第1の側壁126、および第2の側壁128を備えている。第2のフランジ部材134および第3のフランジ部材150は、おおむね円形の管腔140を定めるように形作られ、付勢され、長さを有しているアーチ形のフィンガーを備えている。第2のフランジ部材134は、ベース部120の第2の側壁128および上壁122からおおむね外方向に延びており、第2のフランジ部材134の少なくとも一部分が、ベース部120の上壁122から離れて位置している。他方で、第3のフランジ部材150は、ベース部120の第1の側壁126および上壁122からおおむね外方向に延びている。
【0022】
いくつかの実施の形態においては、第1のフランジ部材130が、近位端131ならびに遠位端または遠位部分132を備えており、近位端131が、第3のフランジ部材150の外壁152の一部分に沿って第3のフランジ部材150へと貼り付けられている。第1のフランジ部材130は、第3のフランジ部材150および第2のフランジ部材134の長さの大部分の両方の外周または外表面を巡って延びて解放可能に接触するために充分な長さを有している。この構成において、第1のフランジ部材130が第2のフランジ部材134のアーチ形の長さの大部分と同じ程度まで延びた状態(さらには、第1のフランジ部材130が第2のフランジ部材134のアーチ形の長さの大部分に解放可能に接触した状態)で、第1のフランジ部材130は、(第2および第3のフランジ部材134、150のそれぞれの遠位端136、152の間の)実質的に再閉鎖可能な開口109を横切るカバー範囲を維持するように付勢されている。
【0023】
一態様において、第1のフランジ部材130の自由な遠位部分(遠位端132を含む)は、第2のフランジ部材134の自由な遠位部分(遠位端136を含む)が延びている方向(または、向き)とは反対の第1の方向または向きに延びている。この構成において、第1のフランジ部材130および第2のフランジ部材134が重なり合って解放可能に接触する関係に付勢された状態で、第1および第2のフランジ部材130、134のそれぞれの遠位端132、136の各々は、少なくとも図5に関してさらに説明されるように、神経の膨張に応答して管腔140が広がり、あるいは神経の周囲にカフ100を配置する際に管腔140が広げられるときに、反対の方向に移動する。
【0024】
神経の周囲への挿入前の通常の付勢されていない状態において、電極カフ100は、完全に係合した位置(図4に示されている)にある。第2および第3のフランジ部材134、150のそれぞれの遠位端136、152が協働して、管腔140への選択的なアクセスを提供し、電極カフ100を神経から取り外すための積極的な工程が行われない限りは、神経を管腔140内におおむね確実に保持する実質的に再閉鎖可能な開口109を形成している。
【0025】
カフ100が周囲に取り付けられる神経のサイズに応じて、電極カフ100は、図5の完全に係合した位置か、より大きなサイズの直径の神経または膨らんだ神経に適合するようにカフのサイズが自動的に拡張する場合に生じる部分的に完全に係合した位置(図5)か、のいずれかとなることができる。図5に示した部分的に完全に係合した位置において、電極カフ100の全体的な構成は、完全に係合した位置とおおむね同じままであるが、第1のフランジ部材130が第2のフランジ部材134に対して摺動しつつ移動可能であり、かつ第2のフランジ部材134のおおむね可撓な遠位部分が、第3のフランジ部材150から離れようとする第2のフランジ部材134の回転移動を許容するため、第1のフランジ部材130の遠位端132が、第2のフランジ部材134の外側の側壁146に沿って、図4に示されているよりも第2の側壁128からさらに離れた位置に位置する。同様に、第2のフランジ部材134が第3のフランジ部材150から離れるように回転することで、第2のフランジ部材134の遠位端136と第3のフランジ部材150の遠位端152との間の実質的に再閉鎖可能な開口109が、図5に示されるとおりに遠位端136、152の間のすき間として少なくとも部分的に開く。しかしながら、このすき間にもかかわらず、この部分的に完全に係合した位置において、第1のフランジ部材130が、依然としてそれぞれの遠位端136、152の間の(実質的に再閉鎖可能な開口109の)すき間を横切って延び、第2のフランジ部材134のかなりの残りの部分を覆って(第2のフランジ部材134のかなりの残りの部分に解放可能に接触して)さらに延びるための充分な長さを有しているため、管腔140はおおむね閉じられたままである。
【0026】
図6は、本発明の実施の形態によるリードシステムの側面図である。図6に示されるように、一実施の形態においては、リードシステム200が、カフ電極202、第1のリード部204、第2のリード部208、アンカー206、およびコネクター210を備えている。一実施の形態においては、リードシステム850のカフ電極202が、図2〜5に関してすでに述べたカフ電極100の実施の形態と実質的に同じ特徴および特質を有するカフ電極を備えている。しかしながら、他の実施の形態においては、カフ電極202が、従来からの電極カフの他の特徴および特質を有する。
【0027】
一態様においては、第1のリード部204が、カフ電極202から近位方向に延びており、あらかじめ形成されたおおむね蛇行の構成を有するように、弾性材料で形成されている。別の態様においては、第2のリード部208も、あらかじめ形成されたおおむね蛇行の構成を有するように、弾性材料で形成されている。しかしながら、第2のリード部208は、第1のリード部204の長さよりも実質的に大きい長さを有している。例えば、一実施例(ただし、これに限られるわけではない)においては、第2のリード部208が、第1のリード部204の長さの約7倍の長さを有している。この構成において、第2のリード部208は、対象の神経(例えば、舌下神経)におけるカフ電極202の配置の位置から胸部のIPG55(図1)の配置の位置まで延びるために充分な長さを有している。
【0028】
一実施の形態においては、第1および第2のリード部204、208のそれぞれのおおむね蛇行の構成が、一連のS字形の曲線を含んでいるおおむね正弦波のパターンを備えている。しかしながら、他の実施の形態においては、第1および第2のリード部204、208のそれぞれのおおむね蛇行の構成が、他の起伏する形状およびパターン、あるいは他の曲線状の形状およびパターンを備えている。いくつかの実施の形態においては、第1および第2のリード部204、208のうちの一方が、第1の種類の起伏するパターンまたは曲線状のパターンを有する一方で、第1および第2のリード部204、208のうちの他方が、第2の別の種類の起伏するパターンまたは曲線状のパターンを有する。
【0029】
一態様においては、アンカー206が、第1のリード部と第2のリード部208との間に介装され、カフ電極202の取り付け先の対象の神経の付近の体構造に対して固定されるように構成される。コネクター210が、第2のリード部208から近位方向に延び、埋め込み式のパルス発生器(図1のIPG55など)へと電気的につながるように構成されている。したがって、この実施の形態においては、第1のアンカー204にリード本体に沿った第2のアンカーが付随していない。
【0030】
しかしながら、いくつかの実施の形態においては、リードシステム200が、参照番号220によって指し示されている位置(または、第1のアンカー204により近い別の位置)において第2のリード部208とコネクター210との間に介装された第2のアンカーをさらに備えている。この第2のアンカーは、体構造に対して固定されるように構成され、リードシステムにIPG55および(カフ電極および神経に近接して固定されるときの)第1のアンカー204に対する張力の緩和をもたらすために設けられる。
【0031】
図7が、リードアセンブリー850の配置または配達の方法300を概略的に示している。この方法において、方法300は、最初に、図6に関してすでに説明したリードアセンブリー200のようなリードアセンブリーを用意することを含んでいる。カフ電極202を舌下神経310(または、他の対象とする神経)の周囲に解放可能に固定したあとで、第1のリード部204が、カフ電極202から舌下神経310の近傍に位置する神経以外の体構造330(顎二腹筋の腱、他の腱、または骨組織、など)へと近位方向に、顎舌骨筋(図示されていない)を通って延びるように操られ、配置される。第1のアンカー206が、(縫合糸333または他の生体適合性の固定具によって)対象の神経310の近傍の神経以外の体構造330へと固定される一方で、第1のリード部204の少なくとも一部分341が、カフ電極202とアンカー206との間でおおむね蛇行または起伏した構成に保たれる。この構成において、第1のリード部204の他の部分340は、もはやあらかじめ成形されたおおむね蛇行の形状を保っていない。
【0032】
いくつかの実施の形態においては、方法300が、固定されたカフ電極202と固定されたアンカー206とを、第1のリード部204の大部分が垂直面に対しておおむね垂直に延びるように、実質的に同じ垂直面に配置することを含んでいる。一態様において、この構成は、さらに詳しく後述される張力緩和の提供の役に立つ。
【0033】
次いで、第2のリード部208が、この技術分野において公知のトンネリングツールを使用し、アンカーから埋め込み式のパルス発生器に向かって近位方向に延びるように操られ、配置される。最後に、コネクターが、IPG55への電気的な連絡および機械的な接続を確立するために使用される。
【0034】
この構成において、対象の神経310へのカフ電極202の固定の位置のすぐ近くで、アンカー206を神経以外の解剖学的構造330へと固定することによって、第1のリード部204のうちのかなりの長さまたは部分341が、蛇行または他の起伏した構成のままとなり、結果として神経310と腱330との間の相対移動の際に張力緩和がもたらされる。換言すると、神経310が動くことによってカフ電極202が動くときに、アンカー206がすぐ近くに位置していること、ならびに第1のリード部204の充分な長さおよびおおむね蛇行した構成の組み合わせ(カフ電極202にかなりの移動の余地を許すことができるように保証する)ゆえに、リード部204、カフ電極202、および/または神経310に加わる張力が最小限または皆無である。
【0035】
一実施の形態においては、図6に示されるように、第1のリード部204が、約3インチというアーチ形の長さ(L1)および約1インチという休止時の端部−端部の長さ(L2)を有している。アーチ形の長さは、第1のリード部204が湾曲した部分をなくすように引き伸ばされた場合の第1のリード部204の端部から端部までの長さに相当する。端部−端部の長さ(L2)は、第1のリード部204のそれぞれの端部の間の湾曲した部分の長さを計上しない第1のリード部204の近位端(アンカー206に位置する)から遠位端(カフ電極202に位置する)までの長さに相当する。しかしながら、他の実施の形態においては、第1のリード部204が、選択される長さが対象の神経310について予想される近傍の神経以外の解剖学的構造330に対する移動の程度または運動の範囲に比べて大幅に長い限りにおいて、上述の寸法よりも大きく、あるいは上述の寸法よりも小さい他の長さを有する。
【0036】
いくつかの実施の形態においては、図6に示されるように、第2のリード部208が、約10〜12インチというアーチ形の長さ(L3)(すなわち、湾曲した部分の長さを含む)および約7インチという端部−端部の長さ(すなわち、湾曲した部分の長さを除く)を有している。しかしながら、他の実施の形態においては、第2のリード部208が、選択される長さがアンカー206の固定の地点とIPG55(図1)の位置との間の或る程度の体の動きについて補償をもたらすために充分に長い限りにおいて、上述の寸法よりも大きく、あるいは上述の寸法よりも小さい他の長さを有する。
【0037】
方法300のこれらの行為のうちの少なくともいくつかを、必ずしも特定の順序で実行する必要がないことを、理解すべきである。
【0038】
本発明の実施の形態は、リードシステムによる神経へのカフ電極の長期にわたるしっかりとした配置を保証する。いくつかの実施の形態において、このしっかりとした係合は、比較的長くかつおおむね蛇行しているリード部を、固定されたカフ電極と、カフ電極および神経の近くの神経以外の解剖学的構造へと固定されたアンカーと、の間に配置することによって達成される。
【0039】
以上の詳細な説明において、少なくとも1つの典型的な実施の形態を提示したが、変種が存在することを理解すべきである。また、典型的な実施の形態が、あくまでも例にすぎず、決して本発明の技術的範囲、応用可能性、または構成を限定しようとするものではないことを、理解すべきである。むしろ、以上の詳細な説明は、当業者に典型的な実施の形態を実施するための好都合な道筋を提供するものである。添付の特許請求の範囲に記載される本発明の技術的範囲およびその均等物から離れることなく、各構成要素の機能および構成についてさまざまな変更が可能であることを、理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフ電極と、
前記カフ電極から延びており、おおむね蛇行した構成を有している第1のリード部と、
おおむね蛇行した構成を有しており、前記第1のリード部の長さよりも実質的に大きい長さを有している第2のリード部と、
前記第1のリード部と前記第2のリード部との間に介装され、神経以外の身体構造に対して固定されるように構成されている第1のアンカーと、
前記第2のリード部から近位方向に延びており、埋め込み式のパルス発生器へと電気的に接続されるように構成されたコネクターと、
を備えており、
前記第1のリード部が、該第1のリード部の少なくとも一部分がおおむね蛇行した構成のままであるように、前記カフ電極が取り付けられる神経と前記第1のアンカーが固定される前記神経以外の身体構造との間の距離よりも、実質的に大きい長さを有しているリードシステム。
【請求項2】
前記第1および第2のリード部のそれぞれの前記おおむね蛇行した構成が、おおむね正弦波のパターンを含んでいる請求項1に記載のリードシステム。
【請求項3】
前記第2のリード部が、前記第1のリード部の長さの約7倍の長さを有している請求項1に記載のリードシステム。
【請求項4】
前記第2のリード部へと接続され、前記アンカーと前記コネクターとの間に介装された第2のアンカー、をさらに備えており、該第2のアンカーが、第2の神経以外の身体構造に対して固定されるように構成されている請求項1に記載のリードシステム。
【請求項5】
前記第1のリード部の長さが、おおむね蛇行した構成の湾曲した部分の長さを含むアーチ形の長さに相当する請求項1に記載のリードシステム。
【請求項6】
前記カフ電極が、
細長いカフ本体と、
前記カフ本体に埋め込まれ、前記カフ本体の長さに沿って互いに間隔を空けて位置している3つのおおむね剛な電極部材からなる列と、
を備えており、
前記細長いカフ本体が、ベースと、第2のフランジ部材および第3のフランジ部材を含んでいる1対のアーチ形の弾性フランジ部材と、を含んでおり、前記それぞれのフランジ部材の各々が、近位部および遠位部を含んでおり、前記近位部が、前記ベースから外方向に、他方のフランジ部材の近位部から離れるように延びるとともに、前記遠位部が、他方のフランジ部材の遠位部に向かって延びており、前記ベースおよび前記2つのフランジ部材が管腔を定めており、前記遠位部が、実質的に再閉鎖可能な開口を定めており、前記両方のフランジ部材が、前記カフ本体の長さまで延びている請求項1に記載のリードシステム。
【請求項7】
各々の電極部材が、
前記管腔に露出されるように前記それぞれのフランジ部材の少なくとも一方の内表面に沿って延びているおおむねアーチ形の第1の部位と、
前記ベースの中へと前記第1の部位から離れるように前記第1の部位に対しておおむね鈍角で延びているおおむね真っ直ぐな第2の部位と、
を含んでおり、
前記電極部材の前記露出された第1の部位が、前記カフ本体の前記実質的に再閉鎖可能な開口のおおむね反対側に位置している請求項6に記載のリードシステム。
【請求項8】
前記第2のフランジ部材の外表面へと固定された第1の端部を備えており、該固定された第1の端部から前記第2のフランジ部材の一部分、前記実質的に再閉鎖可能な開口、および前記第3のフランジ部材に重なりかつ解放可能に接触しつつ延びており、前記第3のフランジ部材を覆う位置に位置する第2の端部を終端としている第1のフランジ部材、をさらに備えており、該第1のフランジ部材の前記第2の端部が、前記カフ本体の前記実質的に再閉鎖可能な開口のおおむね反対側に位置している請求項1に記載の電極アセンブリー。
【請求項9】
当該電極アセンブリーが完全に係合した状態にあるときに、前記第1のフランジ部材が、該第1のフランジ部材の少なくとも一部分が前記実質的に再閉鎖可能な開口を横切って延びて該開口を覆うよう、前記第2のフランジ部材に対して摺動移動可能であり、かつ前記第2のフランジ部材に解放可能に接している請求項6に記載の電極アセンブリー。
【請求項10】
睡眠時無呼吸を治療するためにリードアセンブリーを配置する方法であって、
カフ電極と、おおむね蛇行した構成を有している第1のリード部と、アンカーと、おおむね蛇行した構成を有している第2のリード部と、コネクターと、を含んでおり、前記第1のリード部の長さが、舌下神経と該神経に隣接する神経以外の身体構造との間の距離よりも実質的に大きいリードアセンブリーを用意するステップと、
前記カフ電極を前記舌下神経の周囲に解放可能に固定するステップと、
前記カフ電極から前記神経以外の身体構造に向かって近位方向に延びるように前記第1のリード部を操って配置するステップと、
前記カフ電極と前記アンカーとの間に延びるときの前記第1のリード部の少なくとも一部分をおおむね蛇行した構成に保ちつつ、前記アンカーを前記対象の神経に隣接する前記神経以外の身体構造に固定するステップと、
前記アンカーから埋め込み式のパルス発生器に向かって近位方向に延びるように前記第2のリード部を操って配置するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記第1および第2のリード部のおおむね蛇行した構成を、おおむね正弦波のパターンを定めるように構成するステップ、を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のリード部を、前記第1のリード部の長さの約7倍の長さを有するように構成するステップ、を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のリード部へと接続され、前記アンカーと前記コネクターとの間に介装される第2のアンカーを含むように、前記リードアセンブリーを構成するステップと、
前記第2のアンカーを、前記神経以外の身体構造と胸部との間に位置する第2の神経以外の身体構造へと固定するステップと、
をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記固定されたカフ電極および前記固定されたアンカーを、前記第1のリード部の大部分が垂直面に対しておおむね垂直に延びるように、実質的に同じ垂直面に配置するステップ、を含む請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−519630(P2011−519630A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507688(P2011−507688)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042546
【国際公開番号】WO2009/135142
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】