説明

電極巻回体の製造方法及びその製造装置

【課題】基材搬送経路の短縮可能な電極巻回体の製造方法、及び電極巻回体の製造装置の提供。
【解決手段】幅広の幅広電極W1をスリッタ10で搬送方向に切断して第1電極板W11及び第2電極板W12を形成し、電極板の品質を検査装置にて検査する、電極巻回体の製造方法において、第1電極板W11と第2電極板W12の表面検査を第1搬送ローラ21及び第2搬送ローラ22上で対向搬送して行う事で、第1表面検査カメラ51及び第2表面検査カメラ52の位置を上下に振り分け、第1搬送ローラ21と第2搬送ローラ22の間に第1断面検査カメラ41及び第2断面検査カメラ42を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極基材の検査装置に関して、電極基材を箔材に対して複数条塗工した状態で電極基材送り方向に切断し、その切断面の外観欠陥を連続検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に鑑みて自動車に駆動用のモータを搭載するケースが多くなってきている。車載される駆動用のモータを駆動するためには、大容量の電池が必要となる。しかし、搭載スペースが限られるために、車載する電池は省スペースであることが求められる。特にハイブリッド車はエンジンと駆動用モータを用いるので、ガソリンタンクと電池の両方を搭載しなければならない。この結果、スペース的な制約は一層厳しく、電池の小型化が求められている。また、従来の車両との価格差を抑えたいという要望も強いため、低コスト化も求められている。このような事情から、車載用の電池は様々な検討がなされてきている。
【0003】
特許文献1には、非水電解二次電池用電極板およびその製造方法並びに非水電解二次電池の技術について開示されている。電極板を形成するにあたって、1枚の幅広の電極板を、複数のガイドロールを介して搬送するスリッタにおいて、刃物により複数の幅狭の電極板に裁断した後、さらに前記幅狭の電極板を個別に複数のガイドロールを介して搬送する裁断工程を有する非水電解質リチウム二次電池用電極板の製造方法を採用する。この裁断工程において、幅狭の電極板の個々の両縁部のみを押圧ロールで押圧する。このことで、裁断後における電極板断面の周縁部に発生する尖ったバリを抑制することが可能となる。
【0004】
幅広の電極板に正極活性物質を複数条塗布した後に、幅狭の電極板にスリッタを用いてカットする手法によって、製造コストを低減させることが可能であるが、スリッタで使用する刃物での切断面に発生するバリの処理が問題となる。特許文献1では押圧ロールで抑えることで電極板端面から飛び出すバリを抑制し、電極板とセパレータを巻回して電池とした際に短絡することを防ぐ効果が得られる。またバリの脱落による裁断くずの発生を抑えることができる。しかし、これらの外観欠陥については、検査して万が一NG品が出たら、排除する事がより好ましい。よって、検査手法も必要となる。
【0005】
特許文献2には、連続する多孔質電極基材の外観欠陥自動検査法とその記録媒体を有する多孔質電極材の巻体に関する技術が開示されている。多孔質電極基材の表面に検査光を照射し、その透過光、正反射光及び散乱光を撮像し、それらの撮像データを画像処理部にて解析し、その欠陥の種類、存在位置を記録媒体に記録しつつ連続して巻き取る。巻き取られた巻体に、外観欠陥自動検査による検査結果を記録した記録媒体が添付される。具体的には、検査に3種類の異なる検査手段を採用して、その各検査結果を組み合わせて総合的な判定を行っている。この結果、目視では検査が困難な極めて薄手で且つ他種類で多様な大きさの欠陥を含む多孔質電極基材の色調変化や欠陥寸法をも同時に的確に特定することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−176939号公報
【特許文献2】特開2010−272250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術を用いて巻回体を製造するには以下に説明する課題があると考えられる。
【0008】
特許文献2に記載の技術を用いて電極板を製造した場合、スリッタで電極板をカットする工程の後、検査装置を用いて3種類の外観欠陥検査を行っている。しかし、製造ラインにこのような検査に用いるカメラを複数備えることは、電極板の搬送工程を延長することに繋がる。これは、製造設備にカメラを設置するスペースを必要とし、その分だけ搬送工程は長くなるためである。特許文献2のように3種類のカメラを用意すれば、外観欠陥検査の精度は上げられるものの、搬送工程が長くなることで歩留まりが悪化する虞がある。例えば検査でNGが出た場合や、異なる製品を製造するための設備の段取り換え、或いは点検のために設備を一時停止する場合などは、製造ラインの電極板の一部を廃棄する必要がある為である。
【0009】
これは、段替え時点で電極板の端材が発生するなどの事情や、長時間のライン停止で電極板の塗工部分の品質に影響するなどの事情によるもので、電極板廃棄部分は搬送工程が短くなるほど少なくすることが可能である。そしてもう一点、電極材の搬送工程の内、スリッタで電極材を切断した後、幅狭電極材が併走している区間が存在するが、電極材を併走させる区間が長いと搬送位置の管理が困難になるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、基材搬送経路を短縮可能な電極巻回体の製造方法、及び電極巻回体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による電極巻回体の製造方法は以下のような特徴を有する。
【0012】
(1)幅広の電極板をスリッタで搬送方向に切断して幅狭な電極板を形成し、電極板の品質を検査装置にて検査する、電極巻回体の製造方法において、前記スリッタで切断され形成された幅狭な電極板のうちの第1電極板は、第1搬送ローラの下側を通って上方に搬送し、前記第1電極板と隣り合う幅狭な電極板である第2電極板は、前記第1搬送ローラの上側を通って下方に搬送し、前記第1電極板と前記第2電極板とに上下に挟まれる位置に配置される第1表面検査装置で、前記第1搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査し、前記第2電極板の上方であって、前記第1電極板の側方に配置される第1切断部検査装置で、前記第1電極板を検査し、前記第1電極板の下方であって、前記第2電極板の側方に配置される第2切断部検査装置で、前記第2電極板を検査し、前記第1電極板を、第2搬送ローラの下側を通るよう搬送し、前記第2電極板を、前記第2搬送ローラの上側を通るよう搬送し、前記第1電極板と前記第2電極板とに上下に挟まれる位置に配置される第2表面検査装置で、前記第2搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査することを特徴とする。
【0013】
また、目的を達成するために、本発明の一態様による電極巻回体の製造装置は以下のような特徴を有する。
【0014】
(2)幅広の電極板を搬送方向に切断して幅狭な電極板を形成するスリッタと、前記電極板の品質を検査する検査装置と、を備える電極巻回体の製造装置において、前記スリッタの下工程に配置され、前記スリッタで切断され形成された幅狭な電極板である第1電極板が下側から上方に向かって通され、前記第1電極板と隣り合う幅狭な電極板である第2電極板が上側から下方に向かって通される第1搬送ローラと、前記第1搬送ローラの下工程に配置され、前記第1電極板がかけられる上側ローラと、前記第1搬送ローラの下工程に配置され、前記第2電極板がかけられる下側ローラと、前記上側ローラと前記下側ローラの間に配置され、前記第1搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査する第1表面検査装置と、前記第2電極板の上方であって、前記第1電極板の側方に配置され、前記第1電極板を検査する第1切断部検査装置と、前記第1電極板の下方であって、前記第2電極板の側方に配置され、前記第2電極板を検査する第2切断部検査装置と、前記第1切断部検査装置と前記第2切断部検査装置との下工程に配置され、前記第1電極板が上側から下方に向かって通され、前記第2電極板が下側から上方に向かって通される第2搬送ローラと、前記上側ローラと前記下側ローラの間に配置され、前記第2搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査する第2表面検査装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような特徴を有する本発明の一態様による電極巻回体の製造方法及びその製造装置により、以下のような作用、効果が得られる。
【0016】
上記(1)に記載の態様により、電極巻回体の製造方法において電極板の搬送距離を短くすることが可能となる。表面検査装置は、第1電極板と第2電極板とを併走した状態で検査することが望ましく、表と裏を検査する必要があるため最低限二カ所に設けられる必要がある。そして、切断部検査装置は、第1電極板と第2電極板が併走している状態では使用が出来ない。これは、スリッタで切断した切断面を切断部検査装置で見るためである。電極板の検査装置はこのような条件を満たす必要があるため、第1表面検査装置と第2表面検査装置とで続けて検査する構成とすると、第1電極板と第2電極板の併走距離が長くなる。これは、第1表面検査装置と第2表面検査装置との間は第1電極板と第2電極板とを併走させる必要があるためである。この結果、電極板の搬送距離が長くなる。
【0017】
しかし、スリッタの後に第1搬送ローラ上の第1電極板と第2電極板を検査する第1表面検査装置を設け、上側ローラに第1電極を、下側ローラに第2電極を搬送させる構成とすることで、それぞれ切断部検査装置を配置可能となり、第2搬送ローラ上で再び第1電極板と第2電極板とを併走させて第2表面検査装置によって検査させる構成とすることで、第1表面検査装置と第2表面検査装置との間は第1電極板と第2電極板とを併走させる必要が無い。結果、併走距離の短縮と、搬送距離の短縮を図ることが可能となる。
【0018】
また、上記(2)に記載の態様の電極板の製造装置を用いて電極板を製造した場合も、(1)に記載の製造方法同様に、第1電極板と第2電極板の併走距離の短縮と、電極板の搬送距離の短縮を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の、製造ラインの概略図である。
【図2】本実施形態の、ワークの概略図である。
【図3】本実施形態の、巻回体の斜視図である。
【図4】本実施形態の、対向搬送する第1搬送ローラの斜視図である。
【図5】本実施形態の、第1表面検査カメラで得られた画像についての概略図である。
【図6】本実施形態の、断面検査カメラの校正方法についての模式図である。
【図7】従来技術における、製造ラインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1に、電極板の製造ライン100の概略図を示す。図2に、ワークの概略図を示す。図3に、巻回体の斜視図を示す。巻回体B1は図3に示すように正極電極板Sh1と負極電極板Sh2を備え、それぞれの間にセパレータSpを挟んで形成されている。したがって、巻回体B1は、正極電極板Sh1が1枚と、負極電極板Sh2が1枚と、セパレータSpが2枚と、が図3に示される様に巻き重ねられた状態となる。本実施形態の製造ライン100は、巻回体B1に用いられる正極電極板Sh1又は負極電極板Sh2の製造に用いられるものである。
【0022】
正極電極板Sh1及び負極電極板Sh2は、図2に示すように幅広の金属箔の両面に活物質が塗工された状態でスリッタ10によって送り方向に切断され、形成される。正極電極板Sh1はアルミニウム箔の両面に正極活物質が、負極電極板Sh2は銅箔の両面に負極活物質が塗布されている。正極電極板Sh1及び負極電極板Sh2の何れも、図2に図示するように幅広電極W1の中央に活物質W20が帯状に塗布される。これをカットラインCに沿ってスリッタ10を用いて切断し、第1電極板W11と第2電極板W12を得る。なお、コスト的には、図2に示すような1条の塗工ではなく2〜3条の複数条塗工することが望ましいが、本実施例では説明の都合上一条塗工したケースを想定している。
【0023】
製造ライン100には、図1に示すように幅広電極W1をカットするためのスリッタ10と、対向搬送機能を備える第1搬送ローラ21を備える。また、第1電極板W11を搬送する上側第1ローラ31及び上側第2ローラ32と、第2電極板W12を搬送する下側第1ローラ33及び下側第2ローラ34と、を備える。また、第1電極板W11の断面を検査する第1断面検査カメラ41と、第2電極板W12の断面を検査する第2断面検査カメラ42と、を備える。また、対向搬送機能を備える第2搬送ローラ22を備え、第1表面検査カメラ51と第2表面検査カメラ52を備える。第1表面検査カメラ51は第1電極板W11及び第2電極板W12の表面を検査し、第2表面検査カメラ52は第1電極板W11及び第2電極板W12の裏面を検査する。
【0024】
スリッタ10は、幅広電極W1を搬送方向に切断する機能を有している。第1搬送ローラ21及び第2搬送ローラ22は対向搬送が可能である。図4に、対向搬送する第1搬送ローラ21の斜視図を示す。図5に、第1表面検査カメラ51で得られた画像について示す。第1搬送ローラ21は、図4に示すように第1電極板W11と第2電極板W12を異なる方向に搬送可能なようにフリーローラーが備えられている。第1表面検査カメラ51及び第2表面検査カメラ52は、第1電極板W11及び第2電極板W12の表面を検査し、表面欠陥やスリッタ10で切断した際に発生するバリや切塵の有無を確認する目的で備えられている。第1表面検査カメラ51は、第1搬送ローラ21の表面を撮影可能なように図4に示されるような配置で備えられる。第2表面検査カメラ52に関しても第2搬送ローラ22の表面を撮影可能なように配置される。
【0025】
第1表面検査カメラ51及び第2表面検査カメラ52は、図1に示される様に、上側第1ローラ31及び上側第2ローラ32と、下側第1ローラ33及び下側第2ローラ34の間に配置される。上側第1ローラ31及び上側第2ローラ32は、第1電極板W11を搬送するローラである。下側第1ローラ33及び下側第2ローラ34は、第2電極板W12を搬送するローラである。上側第1ローラ31と上側第2ローラ32の間には、第1断面検査カメラ41が設けられ、下側第1ローラ33と下側第2ローラ34の間には、第2断面検査カメラ42が設けられている。第1断面検査カメラ41は第1電極板W11の断面を検査し、第2断面検査カメラ42は第2電極板W12の断面を検査することで、幅広電極W1の切断面の状態を確認することが出来る。
【0026】
図6に、断面検査カメラの校正方法についての模式図を示す。背光用照明L11及び背光用照明L21は、第1断面検査カメラ41から見て第1電極板W11の後ろ側に配置される。又、背光用照明L12及び背光用照明L22は第2断面検査カメラ42から見て第2電極板W12の後ろ側に配置される。背光用照明L11、L21、L12、L22を用いることで、第1断面検査カメラ41及び第2断面検査カメラ42の校正をすることが可能である。
【0027】
電極板の流れとしては、上工程から幅広電極W1を搬送し、スリッタ10にて第1電極板W11と第2電極板W12とに切断する。そして、第1電極板W11は第1搬送ローラ21の下側を通されて、第1搬送ローラ21より上に配置される上側第1ローラ31に渡され、上側第2ローラ32の上部を通って第2搬送ローラ22の下側に通される。一方、第2電極板W12は第1搬送ローラ21の上側を通されて、第1搬送ローラ21の下側に配置される下側第1ローラ33の下側を通され、下側第2ローラ34の下側を通って第2搬送ローラ22の上側に通される。そして、最終的に第1電極板W11及び第2電極板W12は、それぞれセパレータSpと、別ラインで製造される負極電極板Sh2と共に巻回され、巻回体B1の作成に用いられる。
【0028】
本実施形態の製造ライン100は上記構成であるため、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0029】
まず、本実施形態の製造ライン100の構成を採ることで、製造ライン100における電極板の搬送距離を短くすることが可能となる。本実施形態の製造ライン100を用いた電極巻回体の製造方法は、幅広電極W1をスリッタ10で搬送方向に切断して第1電極板W11及び第2電極板W12を形成し、第1電極板W11及び第2電極板W12の品質を検査装置にて検査する、巻回体B1の製造方法において、スリッタ10で切断され形成された第1電極板W11及び第2電極板W12のうちの第1電極板W11は、第1搬送ローラ21の下側を通って上方に搬送し、第1電極板W11と隣り合う第2電極板W12は、第1搬送ローラ21の上側を通って下方に搬送する。
【0030】
そして、第1電極板W11と第2電極板W12とに上下に挟まれる位置に配置される第1表面検査カメラ51で、第1搬送ローラ21上であって第1電極板W11と第2電極板W12とが並ぶ位置を検査し、第2電極板W12の上方であって、第1電極板W11の側方に配置される第1断面検査カメラ41で、第1電極板W11を検査し、第1電極板W11の下方であって、第2電極板W12の側方に配置される第2断面検査カメラ42で、第2電極板W12を検査し、第1電極板W11を、第2搬送ローラ22の下側を通るよう搬送し、第2電極板W12を、第2搬送ローラ22の上側を通るよう搬送し、第1電極板W11と第2電極板W12とに上下に挟まれる位置に配置される第2表面検査カメラ52で、第2搬送ローラ22上であって第1電極板W11と第2電極板W12とが並ぶ位置を検査するものである。
【0031】
図7に、従来の製造ライン200についての概略図を示す。なお、従来技術による製造ライン200は、製造ライン100と同じ機能を有する部分は同じ符号を用いて説明している。製造ライン200は、スリッタ10を備えて、幅広電極W1を第1電極板W11と第2電極板W12に切断している。第1電極板W11は、第1ローラ111の上側を通り、第2電極板W12は、第1ローラ111の下側に配置される第2ローラ112の下側を通り搬送される。そして、第3ローラ113、第4ローラ114、第5ローラ115、第6ローラ116、第7ローラ117では、第1電極板W11と第2電極板W12は併走して搬送される。
【0032】
第2表面検査カメラ52は、第4ローラ114の上で併走する第1電極板W11及び第2電極板W12の表面を検査しており、第1表面検査カメラ51は、第5ローラ115の上で併走する第1電極板W11と第2電極板W12の表面を検査している。そして、第7ローラ117以降は、第1電極板W11と第2電極板W12は単独搬送となり、第1電極板W11は、第8ローラ118の上を通り、第2電極板W12は第9ローラ119の下を通って搬送される。第1断面検査カメラ41は第7ローラ117と第8ローラ118との間に配置され、第1電極板W11の断面を検査する。第2断面検査カメラ42は第7ローラ117と第9ローラ119の間に配置され、第2電極板W12の断面を検査する。
【0033】
製造ライン200はこのような構成となっており、第1表面検査カメラ51と第2表面検査カメラ52を続けて配置するとなると、製造ライン200の様な構成が必要となる。この場合、製造ライン200は製造ライン100に比べて電極板の搬送経路が6〜8m長くなる。これは、第1表面検査カメラ51と第2表面検査カメラ52を連続して配置していることで、必要とする搬送用のローラが増え、結果的に搬送経路が延長しているためである。
【0034】
このような搬送経路延長を回避するために、第1表面検査カメラ51及び第2表面検査カメラ52を、第1電極板W11及び第2電極板W12のそれぞれに設けてやる事も考えられる。この場合は、製造ライン100及び製造ライン200で1台ずつ使用される第1表面検査カメラ51と第2表面検査カメラ52を2台ずつ用意する必要がある。しかしながら、第1表面検査カメラ51及び第2表面検査カメラ52を含めた表面検査装置は高価であるため、製造ラインのコストアップに繋がり望ましくない。
【0035】
そこで、製造ライン100のように、第1表面検査カメラ51と第2表面検査カメラ52の間に第1断面検査カメラ41及び第2断面検査カメラ42を配置することで、搬送用のローラを減らす事ができ、搬送経路の短縮も可能となる。第1表面検査カメラ51又は第2表面検査カメラ52を用いて、第1電極板W11と第2電極板W12の対向搬送している状態での表面検査は可能であることは出願人が確認している。搬送経路の延長は設備の大型化や不良発生時の廃棄する電極板の延長等によって巻回体B1のコストアップに繋がり望ましくないので、搬送経路の短縮によって巻回体B1のコストダウンを図ることが可能となる。
【0036】
また、その他の効果として第1電極板W11と第2電極板W12を併走搬送する区間が短くすることが出来る点が挙げられる。図7に三重線で示す第3ローラ113から第7ローラ117までの間が、第1電極板W11と第2電極板W12の併走区間である。一方、製造ライン100では第1電極板W11と第2電極板W12とが併走するのは第1搬送ローラ21と第2搬送ローラ22の上のみである。電極板の併走搬送は、第1表面検査カメラ51や第2表面検査カメラ52で図5に示すように並べて撮影し、欠陥を判断している関係上、僅かな隙間で併走させる必要がある。このため、シビアな蛇行管理が必要となり、図示しないエッジセンサーを複数取り付ける必要がある。また、蛇行管理も技術的に難しい。
【0037】
さらに、第1電極板W11と第2電極板W12が僅かな間隔を維持して併走搬送されている場合、設備の段取り換えの際に第1電極板W11及び第2電極板W12を製造ライン100に通すことが難しくなるが、製造ライン100のように併走区間を第1搬送ローラ21と第2搬送ローラ22上だけに抑えることが出来れば、段取り換え時の作業性は格段に向上する。また、本実施形態では2条搬送について説明しているが、3条以上の搬送を行う場合は、これらの事情が更に複雑化する。複数条の搬送はコストダウンに有効であるため、本発明のような蛇行管理の容易化や段取り換えの簡素化等は有益である。このような理由により、併走搬送が極力減らされている製造ライン100によって、巻回体B1のコストを抑えることが期待出来る。
【0038】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。例えば、本実施形態では説明の都合上2条搬送を行っているが、3条以上の搬送の場合に本発明を用いることを妨げない。また、本実施形態では、巻回体B1の製造工程についてスリッタ10の周辺の説明を行っているが、その他の部分は従来開示されている製造方法に準拠する。
【符号の説明】
【0039】
10 スリッタ
21 第1搬送ローラ
22 第2搬送ローラ
31 上側第1ローラ
32 上側第2ローラ
33 下側第1ローラ
34 下側第2ローラ
41 第1断面検査カメラ
42 第2断面検査カメラ
51 第1表面検査カメラ
52 第2表面検査カメラ
100 製造ライン
200 製造ライン
B1 巻回体
C カットライン
Sh1 正極電極板
Sh2 負極電極板
Sp セパレータ
W1 幅広電極
W11 第1電極板
W12 第2電極板
W20 活物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅広の電極板をスリッタで搬送方向に切断して幅狭な電極板を形成し、電極板の品質を検査装置にて検査する、電極巻回体の製造方法において、
前記スリッタで切断され形成された幅狭な電極板のうちの第1電極板は、第1搬送ローラの下側を通って上方に搬送し、前記第1電極板と隣り合う幅狭な電極板である第2電極板は、前記第1搬送ローラの上側を通って下方に搬送し、
前記第1電極板と前記第2電極板とに上下に挟まれる位置に配置される第1表面検査装置で、前記第1搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査し、
前記第2電極板の上方であって、前記第1電極板の側方に配置される第1切断部検査装置で、前記第1電極板を検査し、
前記第1電極板の下方であって、前記第2電極板の側方に配置される第2切断部検査装置で、前記第2電極板を検査し、
前記第1電極板を、第2搬送ローラの下側を通るよう搬送し、前記第2電極板を、前記第2搬送ローラの上側を通るよう搬送し、
前記第1電極板と前記第2電極板とに上下に挟まれる位置に配置される第2表面検査装置で、前記第2搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査することを特徴とする電極巻回体の製造方法。
【請求項2】
幅広の電極板を搬送方向に切断して幅狭な電極板を形成するスリッタと、前記電極板の品質を検査する検査装置と、を備える電極巻回体の製造装置において、
前記スリッタの下工程に配置され、前記スリッタで切断され形成された幅狭な電極板である第1電極板が下側から上方に向かって通され、前記第1電極板と隣り合う幅狭な電極板である第2電極板が上側から下方に向かって通される第1搬送ローラと、
前記第1搬送ローラの下工程に配置され、前記第1電極板がかけられる上側ローラと、
前記第1搬送ローラの下工程に配置され、前記第2電極板がかけられる下側ローラと、
前記上側ローラと前記下側ローラの間に配置され、前記第1搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査する第1表面検査装置と、
前記第2電極板の上方であって、前記第1電極板の側方に配置され、前記第1電極板を検査する第1切断部検査装置と、
前記第1電極板の下方であって、前記第2電極板の側方に配置され、前記第2電極板を検査する第2切断部検査装置と、
前記第1切断部検査装置と前記第2切断部検査装置との下工程に配置され、前記第1電極板が上側から下方に向かって通され、前記第2電極板が下側から上方に向かって通される第2搬送ローラと、
前記上側ローラと前記下側ローラの間に配置され、前記第2搬送ローラ上であって前記第1電極板と前記第2電極板とが並ぶ位置を検査する第2表面検査装置と、
を備えることを特徴とする電極巻回体の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114864(P2013−114864A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259149(P2011−259149)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】