説明

電極材料としてのビスマス酸化フッ化物系ナノコンポジット

本発明は、一次および充電式電気機械エネルギー貯蔵システムで正極として使用されるビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年10月1日出願の米国仮出願第60/615480号の優先権を主張する、Amatucciらの2005年9月30日出願のPCT/US2005/35625、名称「電極材料としてのビスマス酸化フッ化物系ナノコンポジット」の一部継続である、2006年2月16日出願の米国特許出願第 号の出願日の利益を主張する。これらの出願のそれぞれの全体の開示は参照として組み込まれる。
【0002】
本発明は連邦政府の援助で為されたものである。したがって、政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、電気エネルギーを貯蔵および供給する手段として、イオンを吸収および放出する材料を使用する、一次および二次電気化学エネルギー貯蔵システム、特にバッテリーセル等のシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
リチウム−イオンバッテリーセルは、今日の主要な高エネルギー充電式エネルギー貯蔵技術である。残念ながら、その高性能は、電気通信から生物医学の範囲に亘る用途において目標とするエネルギー密度に今なお達していない。セル内の多数の要因がこの性能パラメータに寄与するが、最も重要なことは、如何に多くのエネルギーをセルの電極材料が貯蔵できるかに関わるものである。
【0005】
充電式電気化学セル、例えば、リチウム(Li)およびリチウムイオンバッテリーセル等の開発の過程にあって、リチウムイオンを可逆的に適応させることのできる多数の材料が研究されてきた。これらの中で、吸蔵および内位添加材料、例えば、炭素質化合物、層状化遷移金属酸化物、および三次元経路スピネル等は、その様な用途に特によく適合することが証明されている。しかし、相当な容量をもつ電気貯蔵システムをリサイクルするのに適当であるとはいえ、これらの材料の多くは環境適合性や安全性が不十分であるなどの、充電式セルの根本的な許容性を失わせるような不都合な特性を示す。更に、より見込みのある材料の幾つかは、広範囲の使用を制限するような価格でしか利用できない。しかし、最も重要なことは、現在の最新技術の材料でさえも、材料の重量または容積に対して相対的に低い充電容量を貯蔵する能力(例えば、比容量、(mAh/g);重量エネルギー密度(Wh/kg−1);容積エネルギー密度(Wh/l−1))しか有していないという事実である。
【0006】
充電式バッテリーセル、特に、より好適で、広く実施されているリチウム―イオンセルの製造における材料選択は、かなりの期間、300mAh/gの範囲という十分な容量水準を与えるグラファイト負極組成物に集中していた。しかし残念ながら、現在では、セルの相補的正極材料としては有効性の低い層状化内位添加化合物、例えば、通常150mAh/g程度の範囲の容量しか与えないLiCoO等しか使用されない。
【0007】
内位添加化合物は、内位添加方法が理想的なエネルギー貯蔵メカニズムではないため、高度な有効性を示さない。この状態は、リチウムにとって利用できる空きの数が制限されており、ホスト金属の酸化状態の活用が限定されているために生じる。代替プロセスの1つである可逆的転換は、利用される化合物の全ての酸化状態に対して使用可能である。可逆的転換反応は、次の様に進行する:
【数1】

(ここで、Meは金属であり、XはO−2、S2−、NまたはFである)。この反応は、挿入反応よりも更に高い容量、したがって、更に高いエネルギー密度をもたらすことができる。
【0008】
例えば、Badwayら(Journal of The Electrochemical Society、150(9)A1209−A1218(2003年))は、可逆的転換反応により高比容量を有する電極材料を記載している。彼らは、4.5〜1.5V領域でその理論容量(>600mAh/g)の>90%の回復を有する、この反応に対して活性な炭素金属フッ化物ナノコンポジット、例えば、炭素FeFナノコンポジットの比容量を報告している。彼らは、FeFの粒径を、高度な導電性を有する炭素と組み合わせてナノ寸法水準まで減少させることによりこの比容量の大きな改良を達成した。
【0009】
その他の金属フッ化物は同様に可逆的転換ができる。例えば、BiFなどのビスマス金属フッ化物は次式により可逆的転換ができる:
【数2】

(例えば、参照として本明細書に組み込まれる、2005年9月30日出願の、AmatucciらによるPCT/US2005/35625、名称「電極材料としてのフッ化ビスマスをベースとするナノコンポジット」を参照されたい)。
【0010】
上述の通り、可逆的転換反応は、また、金属酸化物ならびに金属フッ化物でも観察されている。金属フッ化物は金属酸化物よりも更にイオン的であるので、所与のフッ化物化合物の放電電圧は、常に、相当する酸化物の放電電圧よりも高く、これによって、大きな比エネルギーをもたらし、将来の正極材料として魅力的である。一方で、金属酸化物に対して金属フッ化物はイオン性が高いため、一般的にバンドギャップが低い酸化物が相対的に良好な電子導電性を有するのに対し、バンドギャップが高いフッ化物は電気絶縁体となる。そのため、酸化物はマクロ状態のままで利用できるのに対し、高電圧金属フッ化物の電気化学的活性を利用可能とするためには金属フッ化物/導電性マトリックスナノコンポジットの調整が必要である。
【0011】
酸化物およびフッ化物の両方を組み合わせたビスマス化合物は、理論的には、酸化物の良好な電子導電性とフッ化物の高電圧との組合せであるという点で金属フッ化物に対する魅力的な代替物であり得る。しかし、現在まで、ビスマス酸化フッ化物は、リチウム−イオンバッテリーセルの正極材料として利用されてきてはいない。
【0012】
したがって、当該技術分野においては、良好な電子導電性および同様に高い電圧能力の両方を組み合わせるために、ビスマス酸化フッ化物を使用できる電気エネルギー貯蔵および伝達システムに対する要望が存在する。
【特許文献1】米国仮出願第60/615480号
【特許文献2】PCT/US2005/35625
【非特許文献1】Badway et al.(Journal of The Electrochemical Society、150(9)A1209−A1218(2003))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、バッテリー成分、特に、一次および充電式バッテリーセルの正極のための改良された材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態においては、本発明の組成物はナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物を含む。その他の実施形態によれば、本発明の組成物はナノ結晶ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットを含む。その他の実施形態によれば、本発明の組成物は、ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットを含む。その他の実施形態によれば、本発明の電気化学セルは:負極;ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットを含む正極;ならびに負極および正極の間に配置されたセパレーターを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、バッテリー成分、特に、一次および充電式バッテリーセルの正極のための改良された材料を提供する。
【0016】
この研究で、本発明者らは、可逆的転換反応が、2つの異なるタイプのアニオン、即ち、O2−およびFを有する化合物を用いるシステムで可能かどうかを調査した。本明細書で定義される「酸化フッ化物化合物」という用語(フッ素および酸素アニオンの両方が共存する化合物を意味する)は、任意の少量のフッ素(F)または酸素(O)を含む酸化フッ化物化合物を含む。金属酸化フッ化物では、還元および酸化反応中のLiOおよびLiFの相対的形成に関する転換メカニズムの過程は不明である。
【0017】
本発明者らは、広範囲のO2-およびF-を含み、かつ中間体の内位添加反応の可能性がほとんどない組成物である、ビスマス酸化フッ化物化合系に研究の焦点を絞った
【0018】
フッ素を含まない純粋な酸化ビスマス(Bi)から酸素を含まない純粋なフッ化ビスマス(BiF)の範囲を網羅するビスマス酸化フッ化物BiOz−2x群の4つの化合物を検討した。本発明者らは、この群の一方の端に位置するBiFが活性な可逆的転換化合物であることを既に実証している(参考文献として本明細書に組み込まれる、2005年9月30日出願の、AmatucciらによるPCT/US2005/35625、名称「電極材料としてのフッ化ビスマスをベースとするナノコンポジット」を参照されたい)。両端に位置する化合物であるBiおよびBiFを、酸化フッ化物中間体と結合させた。本発明者らは、新規なビスマス酸化フッ化物ナノ結晶化合物、およびこれらの化合物のその他の新規な実施形態が、可逆的転換反応できることを実証することができた。本明細書で、これらの発明が提供される。
【0019】
一実施形態では、組成物は、ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物を含むものとして提供される。「ビスマス酸化フッ化物化合物」という用語は、ビスマス(Bi)、酸素(O)およびフッ素(F)の元素を含む任意の化合物を含む。ビスマス酸化フッ化物化合物の例としては、BiOFが挙げられるがこれに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される「ナノ結晶サイズ」または「ナノ結晶」は互換的に使用され、約100nm以下の微結晶を意味する。当該技術分野でよく知られている様に、微結晶サイズは、X線回折(XRD)でのピーク幅分析および高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)等の通常の方法で決定され得る。
【0021】
好ましい実施形態では、ナノ結晶サイズのビスマス酸化フッ化物化合物は、ビスマスがBi5+のイオン電荷を有するビスマス酸化フッ化物化合物を含む。その他の好ましい実施形態では、ビスマスはBi3+のイオン電荷を有する。
【0022】
好ましくは、ナノ結晶サイズのビスマス酸化フッ化物化合物は、式BiOz−2x(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)を有するビスマス酸化フッ化物化合物を含む。なお更に好ましくは、BiOz−2x(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)のBiカチオンはBi5+の電荷を有する。
【0023】
その他の好ましい実施形態では、ナノ結晶サイズのビスマス酸化フッ化物化合物はBiOFを含む。なおその他の好ましい実施形態では、ナノ結晶サイズのビスマス酸化フッ化物化合物はBiO0.5を含む。
【0024】
その他の実施形態では、ビスマス酸化フッ化物化合物のビスマスカチオンの電荷は、金属カチオンで部分的に置換されていてもよい。本明細書で使用される「部分的置換」とは、代替カチオンがビスマス化合物の原子結晶構造内に配置されている状態を意味する。電荷補償は、Biカチオンの電荷の変化またはアニオン含有量の変化、例えば、Fの損失またはO2−の獲得等により生じ得る。
【0025】
ビスマスカチオンの電荷を部分的に置換できる本発明の結晶ビスマス酸化フッ化物化合物に含まれてもよい電荷を有する適当な金属元素としては、非遷移金属および遷移金属、好ましくは遷移金属、更に好ましくは、第一列の遷移金属が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物での使用のための金属の特定の例としては、Fe、B、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、MoおよびCuが挙げられる。その様な化合物が電気伝導性およびイオン伝導性の両方を保持することは、望ましいが必要とされるものではない。
【0026】
本明細書で使用される「元素」とは、通常の化学的手段で単純な物質へ分解できない単一物質を意味する。
【0027】
理論的には、本発明の材料の電気化学的性能はナノ粒子を離散して使用すること改善できるが、充填密度および液体電解質と接触する表面積が減少するため好ましくはない。したがって、本発明は、また、ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットを含む組成物を提供する。本明細書で使用される「ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジット」という用語は、マトリックス内に少なくとも一種のビスマス酸化フッ化物化合物を含むナノ微結晶を意味する。
【0028】
一実施形態では、マトリックスはナノ結晶サイズの粒子または微結晶からなる。
【0029】
その他の実施形態では、マトリックスはマクロ寸法サイズの粒子からなる。本明細書で使用される「マクロ寸法サイズ」または「マクロ結晶サイズ」は互換的に使用され、100nmを超える粒子を意味する。
【0030】
非導電性マトリックスは好ましくないが、ホウ素の酸化物、ケイ素および金属フッ化物は使用可能である。好ましい実施形態では、マトリックスは導電性マトリックスである。本明細書で使用される「導電性マトリックス」という用語は、導電性材料であって、その幾つかはイオン導電体および/または電子導電体であってもよいようなマトリックスを意味する。好ましくは、マトリックスは、イオン導電性および電気導電性の両方を保持し、その様な材料は、通常、「混合導電体」と称される。
【0031】
一実施形態では、導電性マトリックスは炭素である。好ましくは、50重量%未満の炭素が使用される。更に好ましくは、25重量%未満の炭素が使用される。なお更に好ましくは、5重量%未満の炭素が使用される。その他の実施形態では、導電性マトリックスは金属硫化物である。更なる実施形態では、導電性マトリックスは金属窒化物である。好ましくは、導電性マトリックスは金属酸化物である。その他の好ましい実施形態では、導電性マトリックスは金属フッ化物である。なお、更に好ましい実施形態では、導電性マトリックスは金属酸化フッ化物である。好ましくは、金属酸化物、金属フッ化物または金属酸化フッ化物に使用される金属は、Fe、B、Bi、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnである。
【0032】
適当な金属硫化物導電性マトリックスとしては、硫化モリブデン、酸化硫化モリブデン、および硫化チタンが挙げられるがこれらに限定されない。適当な金属窒化物導電性マトリックスとしては、窒化銅、窒化モリブデン、および窒化チタンが挙げられるがこれらに限定されない。適当な金属酸化物導電性マトリックスとしては、VO、MoO、NiO、V、V13、CuO、MnO、酸化クロムおよびMoOが挙げられるがこれらに限定されない。適当な金属フッ化物導電性マトリックスとしては、MoF、MoF、AgFが挙げられるがこれらに限定されない。適当な金属酸化フッ化物導電性マトリックスとしては、MoO(ここで、xは、0≦x≦3であり、zは、0≦z≦5であり、Moカチオンの有効電荷が6+以下である様に組み合わせされる)が挙げられるがこれに限定されない。好ましくは、導電性マトリックスはMoOである。
【0033】
好ましい実施形態では、導電性マトリックスは、ナノコンポジットの約50重量%未満の量で存在する。
【0034】
なおその他の実施形態では、本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物は炭素を含む。好ましくは、50重量%未満の炭素が使用される。更に好ましくは、25重量%未満の炭素が使用される。なお更に好ましくは、5重量%未満の炭素が使用される。
【0035】
その他の実施形態では、本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマスフッ化物化合物は、直径が約100nm未満、好ましくは、直径が約50nm未満、なお更に好ましくは、直径が約20nm未満である微結晶を含む。
【0036】
本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物は、好ましくは、上述の通りBi5+またはBi3+を含む。なお更に好ましくは、本発明のナノコンポジットの化合物はBiOz−2x(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)である。なお更に好ましくは、BiOz−2x(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)はBiOFまたはBiO0.5である。更に、ナノコンポジットのビスマス酸化フッ化物化合物は上述の通り、部分的に金属カチオンによって置換されているBiカチオンを含むことができる。
【0037】
その他の実施形態では、ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットの比容量は可逆的である。本明細書で使用される「比容量」という用語は、ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットが単位重量当りのミリアンペア時間(mAh)中に含むエネルギーの量を意味する。本明細書で使用される「可逆的比容量」という用語は、本発明のナノコンポジットが、放電方向とは逆の方向で電流をナノコンポジットに通すことにより充電され得ることを意味する。
【0038】
その他の実施形態では、本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物は転換反応を示す。本明細書で使用される「転換反応」という用語は、本発明のナノコンポジットのビスマス酸化フッ化物化合物が、バッテリーセル放電中に、同時にリチウム、マグネシウムまたはカルシウム化合物の形成を伴ってBiまで完全に還元される分解反応を意味する。
【0039】
好ましくは、本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物はBiO0.5であり、転換反応ができる。理論に制約されることなく、転換反応の化学式は、2工程で生起する次の化学反応に相当する:
工程1:BiO0.5+2Li → (2/3)Bi+2LiF+(1/6)δ−Bi
工程2:(2/3)Bi+2LiF+(1/6)δ−Bi+Li → Bi+LiF+Li
(ここで、Biは中間酸化体としての形態である)。
【0040】
その他の好ましい実施形態では、本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物はBiOFであり、転換反応ができる。理論に制約されることなく、転換反応の化学式は、2工程で生起する次の化学反応に相当する:
工程1:BiOF+Li → (1/3)Bi+LiF+(2/3)BiO1.5
工程2:(1/3)Bi+LiF+(2/3)Bi1.5+2LI → Bi+LiF+Li
【0041】
その他の実施形態では、本発明のビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットの転換反応は可逆的である。本明細書で使用される「可逆的転換反応」という用語は、本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマスフッ化物化合物がバッテリーセル充電中に改編することのできる反応を意味する。
【0042】
好ましくは、可逆的転換反応ができる本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマスフッ化物化合物はBiO0.5である。理論に制約されることなく、この実施形態では、可逆的転換反応の化学式は、
【数3】

である。
【0043】
その他の好ましい実施形態では、可逆的転換ができる本発明のナノコンポジットのナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物はBiOFである。理論に制約されることなく、相当する化学式は、
【数4】

である。
【0044】
本発明のナノコンポジットは、ビスマス酸化フッ化物化合物および、場合により、MoOおよび/または炭素等の導電性マトリックスを含む混合物の超高衝撃エネルギー摩砕により調製することができる。つまり、本発明のナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットは、市販のSPEX 8000装置(SPEX Industries、Edison N.J.、USA)等の衝撃ミキサー/ミルを使用して調製することができる。従来のプラネタリ、ローラー、またはボールミルの剪断作用が、せいぜいマイクロメートル範囲までしか微結晶粒子のサイズ減少を可能にし得ないのに対し、衝撃ミルにより成分混合物に印加される非常に高いエネルギー衝撃作用は、約10分という短い摩砕期間内で、約100nm未満のナノ寸法範囲まで、加工処理された材料の粒径減少を与える。僅か30分から、約4時間程度までの更なる摩砕を加えることによって、微結晶粒径は約40nm未満まで減少する。
【0045】
本発明のナノコンポジットを形成するのに上記以外の方法を使用してもよい。当業者には明らかな様に、ナノコンポジットの製造のために溶液またはゲル技術を使用することができる。
【0046】
ビスマス酸化フッ化物は、他の成分と一緒に摩砕される場合、化学変化を受けて、そのX線回折の特性が新規に、電気化学的に極めて活性な材料の特徴を呈する様になる。ただし、ビスマス酸化フッ化物の主たる特性はそのまま保持される。そして、ナノ微結晶形成は、X線回折でのブラッグピークの広がりや透過型電子顕微鏡等による顕微鏡観察などの、よく知られた方法により、容易に確認することができる。
【0047】
一実施形態では、ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物を得るために摩砕を約1時間行う。好ましくは、この摩砕により、マトリックス中にナノ構造化したビスマス酸化フッ化物微結晶が形成される。なお更に好ましくは、マトリックスは導電性である。この形態では、電解質と接触する表面積は、サイクル寿命性能を改善することができるように、標準的な個々のナノ粒子の接触表面領域よりも小さくされる。ナノ結晶化度に影響を及ぼさずにナノコンポジットのサイズおよび密度を高めるために、短時間の熱アニールが利用されてもよく、またはガラス融剤等の焼結助剤が利用されてもよい。
【0048】
本発明のその他の態様では、ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットを含む組成物が提供される。本発明のこの態様の一実施形態では、本発明のナノコンポジットは、マトリックス中にナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物を含む。その他の実施形態では、本発明のコンポジットは、ナノ結晶マトリックス中にナノ結晶粒子のビスマス酸化フッ化物化合物を含む。その他の実施形態では、本発明のナノコンポジットは、ナノ結晶マトリックス中のビスマス酸化フッ化物化合物を含む。
【0049】
本発明のその他の態様では、本明細書に記載されている本発明のビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットまたは本発明のナノ結晶ビスマス酸化フッ化ナノコンポジットをカソード材料として使用する電気化学セル、好ましくは、一次または、更に好ましくは、充電式バッテリーセルが提供される。セルは任意の公知の方法で調製されてもよい。本発明のナノコンポジット電極(カソード)材料は、ポリマーマトリックスおよび付加化合物を含む、殆どのその他の公知の一次または二次セル組成物成分、ならびに一般的に使用されるセパレーターとの組み合わせにおいてよく機能する。
【0050】
従来の電解質塩、例えば、LiPF6、LiBF4およびLiClO等は使用されてもよい。しかし、高酸素含有量ビスマス酸化フッ化物にとっては、HFを加水分解的に形成しないLiClO等の塩を使用することが好ましい。一般的な環式および非環式有機溶剤、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびこれらの混合物に溶解したLiClOはなお更に好ましい。更に、なお更に好ましくは、LiClOは、0.4Mの、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)(1:1の容量比)溶剤の混合物中で本発明のカソードと一緒に使用される。
【0051】
更に、本発明のナノコンポジットは、ポリエチレンオキシド(PEO)等の化合物から得られる固体状態のイオン的導電性マトリックスを利用する固体状態ポリマーセルに組み込まれてもよい。ナノコンポジットは、また、薄膜堆積方法で製造されてもよく、ガラス質電解質を利用する固体状態薄膜リチウムバッテリーへ組み込まれてもよい。最後に、その様な電極材料は、電解質としてイオン液体溶剤を利用するセルへ組み込まれてもよい。
【0052】
同様に、電気化学セルの負極部材は、任意の広く使用されている公知のイオン源、例えば、リチウム金属およびリチウム合金、例えば、リチウム・スズ、リチウム・ケイ素、リチウム・アルミニウムからなる合金等、リチウム化炭素、例えば、コークス、硬質炭素、グラファイト、ナノチューブまたはC60系等、およびリチウム化金属窒化物等を適当な形で含んでもよい。
【0053】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものに類似のまたは同等の任意の方法および材料は本発明の実施または試験でも使用することができるが、好ましい方法および材料は今ここで説明される。本明細書で言及された全ての刊行物は、引用される方法および/または材料を開示および説明するために参照として本明細書に組み込まれる。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形“a”、“and”および“the”は、文脈が別途明確に指示しない限り複数形指示を含むことに留意されなければならない。本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は同じ意味を有する。
【0055】
本明細書で検討された刊行物は、本出願の出願日前に開示された内容についてのみ提供される。先行発明の存在によって、本発明がそれらの刊行物の内容より先になされたものではないことを認めるものとして解釈すべき部分は、本明細書には存在しない。また、提示された刊行物の日付が実際の刊行日と異なることがあり得るので、それらはそれぞれ確認を要する場合がある。
【0056】
[実施例]
以下の実施例は、本発明の実施および使用の方法を完全な開示および説明を以って当業者に提供するために提示されるもので、発明者が自らの発明とみなす範囲を記載された範囲に限定することを意図するものでも、記載されたもののみが本発明の実施例であることを意図するものでもない。
【実施例1】
【0057】
本発明のナノ結晶ビスマス酸化フッ化化合物の調製
【0058】
Bi(Aldrich)を販売先から入手した。BiOFおよびBi0.5を、参照として本明細書に組み込まれる、M.Bervas、B.Yakshinsky、L.C.Klein and G.G.Amatucci、“Soft−Chemistry Synthesis and Characterization of Bismuth Oxyfluorides and Ammonium Bismuth Fluorides”、J.American Ceramic Society、(2005年)で与えられる方法により、飽和NHF水溶液でのBiのフッ素化により合成した。BiOz−2x/C(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)ナノコンポジットを、85重量%のBiOz−2x/C(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)と15重量%のカーボンブラック(Super P(MMM))または活性炭(Asupra(Norit))とを、Spex 8000ミル中で1時間、高エネルギー摩砕することにより調製した。高エネルギー摩砕セル、ならびにボールは硬化スチールであった。高エネルギー摩砕セルを密閉し、−80℃の露点の、He充填グローブボックスの内側で再開して、粉末を水分または酸素汚染から隔離した。
【0059】
BiOz−2x/Cマクロコンポジット(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)を、85重量%のマクロBiOz−2x/C(ここで、0<x<1.5および3≦z≦5である)、および15重量%のカーボンSuper Pを、瑪瑙乳鉢および乳棒で以って手作業で混合して調製した。
【実施例2】
【0060】
電極調製
【0061】
電極を、活性材料、フッ化ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(Kynar 2801、Elf Atochem)バインダー、カーボンブラック(Super P、MMM)およびフタル酸ジブチル(Aldrich)可塑剤を39/21/8/32の比率で含む、アセトン系スラリーを利用して製造した。次いで、スラリーをテープに成型した。乾燥後に、自立テープを99.8%無水エーテル(Aldrich)中に入れてフタル酸ジブチル(DBP)を抽出した。DBPの抽出後、テープの活性材料負荷は57±%であった。このテープから打ち抜いた約1cmの円盤を、リチウム金属(Johnson Matthey)と比べてコインセル中でテストした。本明細書で示されるデータは制御された温度で得た。バッテリー・サイクラーは、ArbinまたはMac Pil(Biologic)であり、全てのセルを一定電流下でサイクルに掛けた。電解質は、0.4MのEC/DMC(1:1の容量比)中のLiClOからなっていた。
【実施例3】
【0062】
ビスマス酸化フッ化ナノコンポジットの物理的特徴付け
【0063】
本発明のビスマス酸化フッ化ナノコンポジットの構造を特徴付けするために、Cu Kα放射線を使用して、Sintag X2でXRD分析を行った。ex−situ分析される本発明のナノコンポジットをガラススライド上に置き、空気露出を最小限にするためにグローブボックスの内側で、ケイ素系真空グリースで密閉したKaptonフィルムで被覆した。in−situ XRD分析では、電極をin−situセル内に置いた。絶縁されたベリリウムの窓を作動電極の頂部に置き、電極を大気から隔離して、x線吸収による損失が最小となる様にx線を浸透させた。
【0064】
材料のナノ結晶性を評価するためにTEM分析を行った。明視野(BF)、暗視野(DF)および選択面電子回折(Selected Area Electron Diffraction)(SAED)像を、Topcon 002B透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した。この目的のために、粉末サンプルを、初めに無水ジメチルカーボネート(DMC)に分散し、次いで、その2〜3滴をレーシー・カーボン・グリッド上に並べ、グローブボックス内で一晩中乾燥した。分析されるグリッドを、グローブボックス内で密閉したポリアミネートバッグ中に入れ、TEMカラム中にグリッドを置くためにだけ再開し、それによって大気への暴露を2〜3秒まで最小化した。SAEDパターンを、Process Diffractionソフトウエアを使用して解釈した。
【0065】
未処理のマクロBiOF粉末、未処理のマクロBiO0.5、ならびに15重量%のカーボンSuper Pの存在下で1時間、He中で高エネルギー摩砕したBiOFおよびBiO0.5のXRDパターンは図1で示される。材料の全ては、摩砕処理中これらの元の結晶相を保持する。
【0066】
XRDの結果は、未処理のビスマス酸化フッ化化合物に比べて、2つの本発明のナノコンポジットにおけるブラッグ反射の顕著な広がりを示す。この広がりは、高エネルギー摩砕によりもたらされる。ピーク幅の広がりは、微結晶サイズの劇的な減少(<100nm)が生起する場合に生み出され得る。本発明のコンポジットは、約35nmの平均活性材料微結晶サイズを伴う、約31〜約36nmの範囲の平均活性材料微結晶サイズを持つナノ微結晶からなると結論することができる。
【0067】
15重量%のカーボンと一緒に1時間、高エネルギー摩砕されたBiOおよびBiO0.5のTEM分析からの暗視野像は図2で示される。粒径は、約10nm未満〜約35nmの範囲に広く分布しているように見える。
【実施例4】
【0068】
幾つかの電解質は酸素含有ビスマス化合物と非相溶性である
【0069】
電解質の非相溶性を、酸化物含有ビスマス化合物ナノコンポジットで確認した。この発生は図3で例示される。この図は、LiPF EC:DMC(1:1の容量比)およびLiClO EC:DMC中でサイクルに掛けられたBi/Cナノコンポジット(実施例3で記載された様に得られた)の最初の2サイクルを示す。2つのセルは、最初の充電の最後まで同様に挙動する。充電の最後で、LiClO EC:DMC電解質中でサイクルに掛けられたセルの電圧は、約80mAh/gに対して4.3Vで一定しているのに反して、LiPF系セルの電圧は、4.3Vに達した直後に3.8Vまで急激に低下し、次いで、再び4.5Vまで上昇する。その様な反応は、用途によっては望ましいものと見なし得る。例えば、このタイプの反応は、電解質塩とのin−situ反応によりin−situでビスマスフッ化物を形成する機会を与える。
【0070】
それらの2つの異なる電解質中で、4,5Vで最初のサイクルの最後で撮影されたex−situ XRDパターンは図4で示される。LiClO EC:DMC中でサイクルに掛けられたセルのパターンは、26℃辺りの例外的に広いピークを除いて完全に特徴のないものである。反対に、チソナイト(Tysonite)相は、ピークは広いものの、LiPF EC:DMC中でサイクルに掛けられたセルのパターンで明確に確認できる。存在するビスマス化合物は高度にフッ素化されていて、LiPF EC:DMC電解質が、充電の最後の化学反応に何らかの形で含まれることを示す。LiPF系電解質は、その本来の不安定性により少量のHFを常に含む。したがって、ビスマスのフッ素化を誘発するのはLiPF塩それ自体よりもむしろHFであると思われる。理論に制約されることなく、LiPF EC:DMCおよびLiCl EC:DMC電解質の両方での電圧プロファイルは4.3V対Li+/Li+までは互いに非常に似ているので、データは、BiがBiへ再変換すること、およびBiそれ自体よりもむしろ新たに再形成された高度にナノ結晶化されたBiが、LiPF EC:DMC電解質中で高電圧でフッ素化されることを示唆する。したがって、Biは、理論的には、以下の式により、純酸化の存在しない、HFとの標準的酸塩基反応を介してフッ素化できる:
Bi+(6−4δ)HF → 2BiOδ3−2δ+(3−2δ)H
【0071】
このフッ化物相の形成は、LiPF EC:DMC中でサイクルに掛けられたセルの二次放電において3Vで開始する、BiFからBi+3LiFへの転換反応に相当する新たな形態をもたらす。酸化物結合に比べてフッ化物結合は高いイオン性をもつため、フッ化物化合物の還元は、対応する酸化化合物の還元よりも高い電圧で生起する。その後の充電で3.3Vでの水平域は、フッ化物相のBiFへの再転換反応によるものである。これらの形態のどれ1つとして、LiClO塩でサイクルに掛けられたセルの二次サイクルには存在しない。この挙動は、この系において、LiPF電解質塩生成物は、ビスマス化合物と反応する傾向があり、セルで生起する電気化学反応に関与することができることを証明する。この反応を避けるために、LiPF塩は、ビスマス酸化フッ化物やその他の酸化物を含むビスマス化合物と一緒に使用されない。LiClO EC:DMC(1:1の容積比)電解質が好ましい電解質である。
【実施例5】
【0072】
BiOz−2x/Cナノコンポジットは可逆的転換反応ができる
【0073】
a.BiOF
【0074】
リチウム化中にBiOF/Cナノコンポジットで生起する転換反応は、in−situ XRDにより図6に表わされる。in−situでの実行中に得られた定電流曲線は図5で示される。図6のXRDパターンは、Biのブラッグ反射の漸進的増加およびBiOF反射の漸進的減少を示す。BiOFピークでのシフトの不存在は、リチウム内位添加反応がナノコンポジットでは生起しないこと、および転換反応がリチウム化の最初から開始することを示す。LiOおよびLiF反射は、これらの非常に小さい微結晶サイズにより、およびBiに対してLi、OおよびFの非常に低いx線散乱係数によりこのXRDパターンでは見ることができない。
【0075】
図5の定電流曲線は、転換反応が可逆的であることを示す。脱リチウム化中に観察された充電容量が、BiOFをもたらすBi、LiFおよびLiOの酸化に由来するものか、またはBi+BiFの2相コンポジットからなるのかを検証するために、充電中のBiOF/Cナノコンポジットについてのex−situ XRD分析を行った。初期状態、1.8Vまでリチウム化された状態、そして1.8V〜4.5Vの範囲で1サイクル行われた後のBiOF/Cのex−situでの XRDパターンを図6に示す。これらのパターンで使用されたコインセルは、22.72mA/gの電流密度でサイクルに掛けられた。いずれのパターンでも、全てのピークは非常に広く、リチウム化中に生起することが知られている極微細ナノコンポジットと一致する。それにもかかわらず、リチウム化の最後で得られたパターンのピークは全てBi金属の特徴であり、4.5Vで得られたパターン全てのピークはBiOFの特徴であることは一見して明らかである。これは、Biがリチウム化中に形成されたこと、およびそれが脱リチウム化中に酸化されたことを証明する。この化合物の最も強力な反射であるBiOF(101)およびBi(012)反射は、殆どまったく同じ位置を有し、区別することは難しい。BiOF(110)反射は、反対に、任意のBi反射から十分に分離し、その位置でのピークは、唯一BiOF由来のものである。したがって、BiOFで生起する転換反応は可逆的であり、BiおよびBiFの組合ではなくむしろBiOFこそが充電中に再形成されている。理論に制約されることなく、可逆的転換反応は次の様に書かれる:
【数5】

【0076】
b.BiO0.5
【0077】
図8(a)および8(b)で示されるXRDパターンは、2V〜4.5Vの間で7.58mA/gの電流密度でサイクルに掛けられたBiO0.5/Cナノコンポジットのin−situ XRD分析中に収集された。相当する定電流曲線は図7で示される。BiO0.5ブラッグ反射は、最初のリチウム化(図13a)中にナノコンポジットのパターンからx軸にしたがって漸進的に消滅し、x=1.43辺りで完全に姿を消す。定電流曲線から分かる様に、これは、ほぼ最初のリチウム化水平域の最後におけるx値である。したがって、リチウム化中の第一および第二水平域の発生は、リチウム化生成物がナノコンポジットの主要な成分となる場合に、分極増加から生じる純粋な動的効果であると思われる。Bi反射は、リチウム化の極めて初期に、x=0.27で出現し始める。これらのBi反射および、BiO0.5ピークのシフトの不存在とは、転換反応が、いかなる事前のリチウム内位添加反応をも必要とせず、まさにリチウム化の極めて初期に開始することを示す。
【0078】
脱リチウム化中に収集されたパターンは図8(b)に示される。BiO0.5ブラッグ反射は、x=1.2辺りのXRDパターンで再出現し始める。最も強力なBiおよびBiO0.5ピークの相対的強度から、BiO0.5は、再び、x=0.8辺りで材料中の主要相となることが推察できる。この値は、出力電圧が、図7の定電流曲線で急激に増加を開始する辺りの値と一致する。したがって、BiO0.5の再形成はセルで突然の分極増大を引き起すものと思われる。Biピークは約x=0.32まで見ることができる。4.5Vでナノコンポジットはそのリチウム化前の状態に完全に戻ったが、ただしBiO0.5ブラッグ反射は、おそらくは小さい微結晶サイズのため、未処理の材料よりも広い。理論に制約されることなく、可逆的転換反応は次の通りである:
【数6】

理論に制約されることなく、リチウム化および脱リチウム化反応の両方での2工程転換反応は、相当するビスマスフッ化物反応よりも低い電圧におけるビスマス酸化物転換の理論的還元反応の相違により生起する。
【0079】
本発明は、この特定の実施形態への参照を以って説明されたが、種々の変更は為し得るものであり、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく均等物に置換され得ることが当業者により理解されるべきである。更に、特定の状態、材料、物質の組成、方法、1つまたは複数の方法の工程を本発明の目的の趣旨および範囲に取り入れるため、多数の改良を為し得る。全てのその様な改良はここに添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】2つのビスマス酸化フッ化物化合物の、15重量%活性炭の存在下での高エネルギー摩砕前および後のXRDパターンの図である。
【図2】a)15重量%のカーボンSuper Pと共に高エネルギー摩砕されたBiおよび(b)15重量%のカーボンSuper Pと共に高エネルギー摩砕されたBiO0.5の暗視野TEM像の図である。
【図3】LiClO−EC/DMCおよびLiPF−EC/DMC電解質における7.57mA/gの電流密度でのBi/Cナノコンポジットの最初の2サイクルの図である。
【図4】(a)7.58mA/gで、サイクル前およびLi/Li+対1.5V〜4.5Vの1サイクル後の、(b)LiClO−EC/DMCおよび(c)LiPF−EC/DMVにおけるBi/Cナノコンポジットのex−situ XRDパターンの図である。パターン(c)上でのブラッグ反射はBiOδ3−2δの特性である(但しδ<0.1)。
【図5】BiOF/Cナノコンポジットの最初の5サイクルおよび定電流曲線の図である。
【図6】BiOF/Cナノコンポジットのex−situ XRDパターンの図である。
【図7】BiOF/Cナノコンポジットのex−situ XRDパターンの図である。
【図8】BiO0.5/Cナノコンポジットの最初の3サイクルおよび定電流曲線の図である。
【図9(a)】最初のリチウム化中のBiO0.5/Cナノコンポジットのin−situ XRDパターンの図である。
【図9(b)】最初の脱リチウム化中のBiO0.5/Cナノコンポジットのin−situ XRDパターンの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物を含む組成物。
【請求項2】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物が、BiOz−2xを含み、0<x<1.5および3≦z≦5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiOFである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiO0.5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi3+からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiカチオンを更に含み、前記Biカチオンが部分的に金属カチオンによって置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属カチオンが、本質的にFe、B、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属元素である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記金属カチオンが、CuおよびMoからなる群から選択される金属元素である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物が、直径約100nm未満のナノ微結晶を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットを含む組成物。
【請求項13】
前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットが、BiOz−2xを含み、0<x<1.5および3≦z≦5である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiOFである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiO0.5である、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiカチオンを更に含み、前記Biカチオンが部分的に金属カチオンによって置換されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記金属カチオンが、本質的にFe、B、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属元素である、請求項18に記載の組成物。
【請求項18】
前記金属カチオンが、CuおよびMoからなる群から選択される金属元素である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ナノコンポジットの前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
前記ナノコンポジットの前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
前記ナノコンポジットの前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物がBi3+からなる、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
導電性マトリックスを更に含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項23】
前記導電性マトリックスが、金属酸化物、金属フッ化物および金属酸化フッ化物からなる群から選択される導電性マトリックスである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記金属酸化物、前記金属フッ化物および前記金属酸化フッ化物の金属が、Fe、B、Bi、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記導電性マトリックスが、前記ナノコンポジットの約50重量%未満である量で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記導電性マトリックスが炭素である、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記炭素が、前記ナノコンポジットの約5重量%未満である量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項28】
前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットが炭素を更に含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項29】
前記炭素が、前記ナノコンポジットの約50重量%未満である量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記ナノコンポジットの前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物が、直径約100nm未満の微結晶を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項31】
前記ナノコンポジットが、放電方向と反対の方向で電流が前記ナノコンポジットを通過する場合に充電可能な比容量を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が充電式バッテリーの電極で利用される、請求項12に記載の組成物。
【請求項33】
前記ナノコンポジットの前記ナノ結晶ビスマス酸化フッ化物化合物が転換反応できる、請求項12に記載の組成物。
【請求項34】
前記転換反応が可逆的である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットを含む組成物。
【請求項36】
前記ナノコンポジットが、BiOz−2xを含み、0<x<1.5および3≦z≦5である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiOFである、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiO0.5である、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiカチオンを更に含み、前記Biカチオンが部分的に金属カチオンによって置換されている、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記金属カチオンが、本質的にFe、B、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属元素である、請求項45に記載の組成物。
【請求項41】
前記金属カチオンが、CuおよびMoからなる群から選択される金属元素である、請求項45に記載の組成物。
【請求項42】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項35に記載の組成物。
【請求項43】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項36に記載の組成物。
【請求項44】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi3+からなる、請求項35に記載の組成物。
【請求項45】
導電性マトリックスを更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項46】
前記導電性マトリックスが、金属酸化物、金属フッ化物および金属酸化フッ化物からなる群から選択される導電性マトリックスである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記金属酸化物、前記金属フッ化物および前記金属酸化フッ化物の金属が、Fe、B、Bi、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記導電性マトリックスが、前記ナノコンポジットの約50重量%未満である量で存在する、請求項45に記載の組成物。
【請求項49】
前記導電性マトリックスが炭素である、請求項45に記載の組成物。
【請求項50】
前記炭素が、前記ナノコンポジットの約5重量%未満である量で存在する、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットが炭素を更に含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項52】
前記炭素が、前記ナノコンポジットの約50重量%未満である量で存在する、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物が、直径約100nm未満の微結晶を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項54】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物が、約100nmを超える直径の微結晶を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項55】
前記ナノコンポジットが、放電方向と反対の方向で電流が前記ナノコンポジットを通過する場合に充電可能な比容量を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項56】
充電式バッテリーの電極で利用される、請求項35に記載の組成物。
【請求項57】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物が転換反応できる、請求項35に記載の組成物。
【請求項58】
前記転換反応が可逆的である、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
負極、
ビスマス酸化フッ化物化合物ナノコンポジットを含む正極、および
前記負極および正極の間に配置されたセパレーター
を含む電気化学セル。
【請求項60】
前記ナノコンポジットが、BiOz−2xを含み、0<x<1.5および3≦z≦5である、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項61】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiOFである、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項62】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiO0.5である、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項63】
前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBiカチオンを更に含み、前記Biカチオンが部分的に金属カチオンによって置換されている、請求項58に記載の電気化学セル。
【請求項64】
前記金属カチオンが、本質的にFe、B、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属元素である、請求項63に記載の電気化学セル。
【請求項65】
前記金属カチオンが、CuおよびMoからなる群から選択される金属元素である、請求項63に記載の電気化学セル。
【請求項66】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項67】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi5+からなる、請求項60に記載の電気化学セル。
【請求項68】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物がBi3+からなる、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項69】
導電性マトリックスを更に含む、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項70】
前記導電性マトリックスが、金属酸化物、金属フッ化物および金属酸化フッ化物からなる群から選択される導電性マトリックスである、請求項69に記載の電気化学セル。
【請求項71】
前記金属酸化物、前記金属フッ化物および前記金属酸化フッ化物の金属が、Fe、B、Bi、Co、Ni、Mn、V、Mo、Pb、Sb、Cu、Sn、Nb、Cr、AgおよびZnからなる群から選択される金属である、請求項70に記載の電気化学セル。
【請求項72】
前記導電性マトリックスが、前記ナノコンポジットの約50重量%未満である量で存在する、請求項69に記載の電気化学セル。
【請求項73】
前記導電性マトリックスが炭素である、請求項69に記載の電気化学セル。
【請求項74】
前記炭素が、前記ナノコンポジットの約5重量%未満である量で存在する、請求項73に記載の電気化学セル。
【請求項75】
前記ビスマス酸化フッ化物ナノコンポジットが炭素を更に含む、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項76】
前記炭素が、前記ナノコンポジットの約50重量%未満である量で存在する、請求項75に記載の電気化学セル。
【請求項77】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物が、直径約100nm未満の微結晶を含む、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項78】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物が、約100nmを超える直径の微結晶を含む、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項79】
前記ナノコンポジットが、放電方向と反対の方向で電流が前記ナノコンポジットを通過する場合に充電可能な比容量を有する、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項80】
前記組成物が充電式バッテリーの電極で利用される、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項81】
前記ナノコンポジットの前記ビスマス酸化フッ化物化合物が転換反応できる、請求項59に記載の電気化学セル。
【請求項82】
前記転換反応が可逆的である、請求項81に記載の電気化学セル。
【請求項83】
電解質を更に含む、請求項59に記載の電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【公表番号】特表2009−526738(P2009−526738A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555217(P2008−555217)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/005908
【国際公開番号】WO2007/123503
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(507107534)ルトガース,ザ ステート ユニヴァーシティ オブ ニュージャーシィ (3)
【Fターム(参考)】