説明

電極製造装置

【課題】電極スラリ中に含まれる粗粒と気泡とを効率よく除去し、電極欠陥を抑制することができる電極製造装置を提供する。
【解決手段】複数の材料を混合して電極スラリSを製造する製造部10と、電極スラリSを基材Mに塗布する塗工部30と、製造部10及び塗工部30に接続され、電極スラリSを貯蔵する貯蔵部20とを備え、貯蔵部20には、貯蔵、貯留された電極スラリSを循環させる循環系50が設けられ、循環系50は、電極スラリSに含まれる粗粒を除去する粗粒除去フィルタ53A,53Bと、電極スラリSに含まれる気泡を除去する遠心脱泡器54とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池等の電極は、複数の材料(電極活物質と結着剤と溶媒等)を混合してスラリ化し、この電極スラリをアルミニウムや銅等を基材とした集電体へダイヘッドなどを用いて塗布し、この塗布された電極スラリを乾燥させて製造されている。
【0003】
ところで、上記の電極スラリ中に含まれる粗粒(凝集体)や気泡の除去が不十分である場合には、乾燥後の電極膜にスジや空隙、巣、脱落等の電極欠陥が生じ、電池性能低下の一因となる。
【0004】
従来の技術においては、電極スラリ中に含まれる気泡を除去するために、電極スラリの混合後に真空脱泡し、さらに真空脱泡したこのスラリに含まれる粗粒をフィルタでろ過して上記塗布を行っている(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−213990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術に従い実際に運用しようとすると、粗粒除去および真空脱泡したスラリの一時貯蔵や塗工工程への移送が伴うため、再凝集による粗粒の再発生や気泡の巻き込みによって再びスラリの性状が悪化してしまうという問題があった。また、真空脱泡器を塗工工程におけるフィード系に組み込むと、フィード系全体が減圧されることでダイヘッドでの流量変動が大きくなり、均一な膜厚でスラリを集電体に塗布することが困難であるため、真空脱泡を行う際は塗工を停止しなければならなかった。さらに、フィード系にフィルタを組み込むと、粗粒で目詰まりしたフィルタを交換するとき再び気泡を巻き込んでしまうため、結局、気泡を含む電極スラリが集電体に塗布されて電極欠陥が生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、電極スラリ中に含まれる粗粒と気泡とを効率よく除去し、電極欠陥を抑制することができる電極製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る電極製造装置は、複数の材料を混合して電極スラリを製造する製造部と、前記製造部に接続され、前記製造された電極スラリを貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクに接続され、前記貯留された電極スラリの粗粒を除去する粗粒除去フィルタと、前記粗粒除去フィルタに接続され、前記粗粒が除去された電極スラリの気泡を除去して、前記貯留タンクに貯留された電極スラリの液位よりも下方に前記気泡が除去された電極スラリを戻す脱泡器と、前記貯留タンクに接続され、前記貯留された電極スラリを基材に塗布する塗工部と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、粗粒除去フィルタと脱泡器とを有する循環系が貯留タンクに設けられているので、製造部から電極スラリを貯留タンクに移送する際あるいは貯留タンクに貯留している際に混入した気泡および貯留時に生成された粗粒を除去できるのみならず、この粗粒除去フィルタの交換時に発生する気泡も脱泡器により除去して貯留タンクに戻す(戻す際には気泡が新たに発生しないよう、貯蔵された電極スラリの液位よりも下方に戻される)ので、貯留された電極スラリは気泡と粗粒とが殆ど含まれない優れた性状の電極スラリとなる。
これらにより、電極スラリを循環させて気泡と粗粒とを連続的かつ繰り返し除去するので、気泡と粗粒とが殆ど含まれない優れた性状の電極スラリを基材に塗布することができ、スジや空隙、脱落等の電極欠陥を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電極製造装置によれば、電極を製造するための基材に塗布する電極スラリ中に含まれる粗粒と気泡とを効率よく除去し、電極欠陥を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る電極製造装置1の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電極製造装置1の概略構成図である。
まず最初に、電極製造装置1の基本構成について説明する。図1に示すように、電極製造装置1は、製造部10と、貯蔵部20と、塗工部30とを備えている。
【0012】
製造部10は、電極活物質、導電材および結着剤と溶媒を混合してスラリ化し、電極スラリSを製造する。この製造部10は、混合タンク11と、真空ポンプ12とを備えており、混合タンク11で製造した電極スラリSを真空ポンプ12によって真空脱泡する。
【0013】
貯蔵部20は、製造部10及び塗工部30に接続され、電極スラリSを貯蔵または貯留しており、貯留タンクとして、一次貯蔵タンク21とフィードタンク22とを備えている。
一次貯蔵タンク21は、管路13とポンプ14とを介して、混合タンク11と接続されており、混合タンク11から移送された電極スラリSを貯蔵する。
【0014】
フィードタンク22は、一次貯蔵タンク21(例えば、100リットル)と比べて小型のもの(例えば、10リットル)である。このフィードタンク22は、管路23とポンプ24と弁25とを介して、一次貯蔵タンク21に接続されており、一次貯蔵タンク21から電極スラリSが移送されるようになっている。このフィードタンク22に移送、貯留された電極スラリSが、後述の塗工ヘッド(ダイヘッドなど)を含む塗工部30により基材Mへ塗工されることとなる。
このフィードタンク22には、フィードタンク22内の液位を検出する液位センサ26が設けられており、電極スラリSの液位が所定の範囲になるように制御されている。具体的には、制御部(不図示)が、液位センサ26の検出結果に基づいて、ポンプ24の稼働・停止及び弁25の開・閉を制御し、塗工によりフィードタンク22内の電極スラリSの液位が低くなった場合には、一次貯蔵タンク21を介して製造部10で製造された粗粒または気泡を含む電極スラリSを適宜補充し、所定の範囲になるように制御されている。
なお、上記補充の際、一次貯蔵タンク21からフィードタンク22への電極スラリSの移送は、フィードタンク22内の電極スラリSの後述の塗工部への供給を停止した状態で行う。そして、フィードタンク22内の電極スラリSを後述の循環系で一定期間循環させた後、塗工部30へ供給を開始する。
【0015】
塗工部30は、電極スラリSを基材Mに塗布し、さらにその後に乾燥させるものであり、搬送装置31と、乾燥装置(不図示)と、膜厚センサ32と、塗工ヘッド33とを備えている。
搬送装置31は、二つの搬送ロール31a,31bを備えており、これら搬送ロール31a,31b間でシート状の基材Mを一方向に搬送する。
乾燥装置(不図示)は、基材Mに塗布された電極スラリSを乾燥させて基材Mの表面上に電極膜を形成する。
膜厚センサ32は、基材Mを巻き取る搬送ロール31b側に設けられており、電極膜の厚さを光で検出する。
【0016】
塗工ヘッド33は、基材Mを送り出す搬送ロール31a側に設けられており、基材Mに電極スラリSを塗布する。この塗工ヘッド33は、管路34とポンプ35とを介して、フィードタンク22と接続されている。
この塗工ヘッド33は、乾燥後の電極膜の厚さが所定の厚みとなるように、電極スラリSの吐出量が制御されている。具体的には、制御部(不図示)が、膜厚センサ32の検出結果に基づいて、ポンプ35の流量を制御して、電極スラリSの吐出量を制御している。
【0017】
上記の基本構成からなる電極製造装置1は、図1に示すように、循環系50を備えている。
循環系50は、貯蔵部20のフィードタンク22に設けられており、フィードタンク22に貯蔵された電極スラリSを循環させる。この循環系50は、管路51と、ポンプ52と、フィルタ部53と、遠心脱泡器54と、副循環部55とを有している。
この循環系50のうち、フィードタンク22、フィルタ部53および遠心脱泡器54とからなる循環系を、フィードタンク22に貯留された電極スラリSが循環すればするほど粗粒や気泡がより除去された性状のよい電極スラリとすることができる。このため、フィードタンク22に貯留された電極スラリSを一定期間(例えば30分間)、すなわち実質的に複数回、この循環系に通した後に塗工を行うことで、品質のよい電極を製造することができる。もちろん、この循環系に電極スラリSを通す回数は設計に応じて変更可能であり、場合によっては約1回だけ循環系を通すとしてもよい。
また、一定期間循環系を通した後、循環系の循環を止めて塗工をしてもよいし、循環系を通しつつ塗工をしてもよい。少なくとも設計で求められる回数だけ循環がなされていれば、設計された性状または設計より優れた性状のスラリを塗工部30で塗工することができるからである。
【0018】
管路51は、フィードタンク22の底面付近に配置される上流開口22aとポンプ52との間を接続する管路51aと、ポンプ52とフィルタ部53とを接続する管路51bと、フィルタ部53と遠心脱泡器54とを接続する管路51cと、遠心脱泡器54とフィードタンク22の壁面のうち底面から比較的離れた上部の位置に配置される下流開口22bとを接続する管路51dとを備えている。
なお、上流開口22aは、上述のとおりフィードタンク22の底部に開口している。一方、下流開口22bは、フィードタンク22の内側壁部のうち貯留された電極スラリSの液位(所定の範囲)よりも下方に開口している。
ただし、上記循環系50を経た電極スラリSがフィードタンク22に戻される際に、貯留された電極スラリSの液面に当たって新たな気泡が発生しなければよいので、下流開口22bはフィードタンク22の内側壁部のうち貯留された電極スラリSの液位よりも上方に開口していてもよい。この場合には、例えば、一方の開口が下流開口22bと接続され、他方の開口が貯留された電極スラリSの液位よりも下方となるよう配置された管がフィードタンク22の内部に設けられる。
【0019】
フィルタ部53は、並列的に配設された二つの粗粒除去フィルタ53A,53Bと、これら二つの粗粒除去フィルタ53A,53Bのそれぞれの上流及び下流に配設された切替部としての四つの弁53a〜53dとを備えている。この切替部を適宜調節することで、これら2つの粗粒除去フィルタ53A,53Bのいずれか一方のみを介して上記循環系50を形成することができる。例えば、粗粒除去フィルタ53Aを循環系50に組み込んで粗粒除去を行っていた際、目詰まりが生じて交換の必要が生じた場合に、切替部により直ちに粗粒除去フィルタ53Bに切替えて循環系50の流れを継続できるので、生産性向上を図ることができる。なお、この場合において、粗粒除去フィルタ53Aは上記切替えの後に交換される。
上記切替部は、図示しない制御部により一定時間経過後に自動的に切り替え制御されてもよい。
【0020】
粗粒除去フィルタ53A,53Bは、メッシュフィルタからなっており、電極スラリS中に含まれる粗粒を捕捉する。例えば、一般的には上記ダイヘッドのスロット幅が200〜500μmであるので、メッシュフィルタの目開きを約150μmとしておけば、粗粒を十分に補足できる。
【0021】
遠心脱泡器54は、回転することによって電極スラリSに遠心力を作用させ、この遠心力により脱泡する。より具体的には、電極スラリSに比べて比重が軽い気泡を回転の中心側に集めて、中心側に開口する中心側排出部から泡相を排出する一方、外周側に開口する外周側排出部から液相を排出するものである。電極スラリの約10ミリリットル当たりに1個の気泡、望ましくは約100ミリリットル当たりに1個の気泡程度になるように、脱泡が行われる。
なお、この遠心脱泡器54の回転数は、電極スラリSに含まれる電極活物質と、溶媒及び結着剤とが、遠心力によって分離しない程度の回転数が用いられる。
【0022】
副循環部55は、上述した遠心脱泡器54の中心側排出部から排出された気泡を含む電極スラリSを回収タンク55aに入れて気泡を回収し、気泡が回収された電極スラリSを管路51cに戻すものである。
【0023】
次に、上記の構成からなる電極製造装置1の動作について説明する。
まず、混合タンク11において、電極活物質と結着剤と溶媒を混合して電極スラリSを製造する。この際、混合によって電極スラリSに混入した気泡を、真空ポンプ12によって真空脱泡する。なお、上記の混合時の溶媒の量は、真空脱泡による気散を考慮した量となっている。
【0024】
次に、混合タンク11内の電極スラリSを、管路13とポンプ14とを介して、一次貯蔵タンク21に移送する。この移送において電極スラリSに気泡が僅かに混入する。
【0025】
そして、気泡が僅かに混入した電極スラリSは、一次貯蔵タンク21に貯蔵される。この貯蔵の際には、時間の経過と共に凝集が進行し、電極スラリS中に粗粒が生成される。また、外部振動等によって、電極スラリSに気泡が混入する。
【0026】
制御部(不図示)は、フィードタンク22の液位が所定の範囲を下回った場合に、ポンプ24の稼働・停止及び弁25の開・閉を制御して、一次貯蔵タンク21からフィードタンク22に電極スラリSを移送する。この移送においても電極スラリSに気泡が僅かに混入する。
そして、気泡が混入し、粗粒が含まれるようになった電極スラリSは、フィードタンク22に一旦貯留される。
【0027】
このようにしてフィードタンク22内に一旦貯留された電極スラリSは、上流開口22aから管路51aに流入し、ポンプ52を介してフィルタ部53の粗粒除去フィルタ53A,53Bのうちの一方を通過する。この通過の際に、粗粒除去フィルタ53A又は粗粒除去フィルタ53Bが、一次貯蔵タンク21で生成された粗粒を捕捉する。
【0028】
フィルタ部53により粗粒が除去された電極スラリSは、遠心脱泡器54に流入する。遠心脱泡器54は、電極スラリSに含まれる気泡を中央に集めて分離し、泡相を中心側排出部から、液相を外周側排出部から排出する。
中心側排出部から排出された電極スラリSは、回収タンク55aに集められた後に、管路51cに戻され、遠心脱泡器54に再度流入する。
一方、遠心脱泡器54の外周側排出部から排出され、気泡が除去された電極スラリSは、管路51dを介して下流開口22bからフィードタンク22に再流入する。
このようにして、電極スラリSが循環系50を連続して循環することにより、粗粒と気泡とが殆ど除去され、電極スラリSの性状が回復する。
【0029】
この性状が回復した電極スラリSは、塗工部30に供給されて基材Mに塗布される。塗布された電極スラリSには、粗粒及び気泡が殆ど含まれておらず、電極欠損が殆ど生じない。
また、この電極スラリSを基材Mに塗布する際には、塗工ヘッド33からの電極スラリSの吐出量が厳密に制御される。すなわち、フィードタンク22の液位が所定の範囲に制御されて、ヘッド圧の変動幅が制限されており、また、管路34及びポンプ35とは独立して循環系50を設けているために、ポンプ35の流量制御を介して、塗工ヘッド33の電極スラリSの吐出量の制御を厳密に制御される。このような厳密な制御により、電極膜の厚さが均一となった電極が得られる。
【0030】
以上説明したように、電極製造装置1によれば、粗粒除去フィルタ53A,53Bと遠心脱泡器54とを有する循環系50が貯蔵部20に設けられているので、混合タンク11から一次貯蔵タンク21への移送の際や一次貯蔵タンク21からフィードタンク22への移送の際、あるいは、一次貯蔵タンク21の貯蔵の際に電極スラリSに気泡が混入したとしても、遠心脱泡器54で気泡を除去することができる。
また、電極スラリSの一次貯蔵タンク21の貯蔵時に粗粒が生成されても、粗粒除去フィルタ53A,53Bで粗粒を除去することができる。
これらにより、電極スラリSを循環させて気泡と粗粒とを連続的かつ繰り返し除去するので、気泡と粗粒とが殆ど含まれない優れた性状の電極スラリSを基材Mに塗布することができ、スジや空隙、脱落等の電極欠陥を抑制することができる。
【0031】
ここで、脱泡器としては、減圧真空脱泡器、超音波脱泡器、遠心脱泡器などがあるが、減圧真空脱泡器では電極スラリSの溶媒が気散してしまう場合があり、超音波脱泡器では電極スラリSの温度が上昇してしまう場合がある。溶媒が気散してしまうと塗工に影響がありえ、また、電極スラリの温度上昇は化学物質である電極スラリの性状を変化させてしまう可能性があるので、これらの影響や可能性が少ない遠心脱泡器が望ましい。このため、本実施形態の電極製造装置1は、遠心脱泡器を採用している。
もちろん、遠心脱泡器以外の装置でも、塗工される電極スラリの性状に影響を与えるものでなければ、採用可能である。
【0032】
また、電極製造装置1によれば、塗工工程の連続運転時間の長時間化及び生産能力を向上させることができる。
すなわち、単純に、貯蔵部20から塗工部30に対して、電極スラリSを供給する管路34に粗粒除去フィルタを設けた場合には、メンテナンス時に塗工を停止しなければならず、生産能力が低下する。
また、仮に、同様の場所に粗粒除去フィルタを並列に設け、切り替え運用にすることにより、メンテナンス時に連続して塗工を行う構成にしたとしても、フィルタ切替時に管路34における弁開閉や呼び水・エア抜き等をしなければならず、塗工部30の電極スラリSの吐出量の厳密な制御ができなくなり、塗膜品質の劣化(電極膜の厚さの不均一等)を招いてしまう。
しかしながら、本実施形態の電極製造装置1によれば、管路34とは独立してフィードタンク22に循環系50が設けられているので、フィルタ部53のメンテナンス時も塗工を停止する必要がなく、連続運転時間の長時間化及び生産能力を向上させることができる。
さらに、本実施形態の電極製造装置1によれば、管路34とは独立してフィードタンク22に循環系50を設けているので、塗工部30の厳密な吐出量の制御に影響を与えることがなく、塗膜品質を一定に保つことができる。
【0033】
また、電極スラリSの混合工程において製造条件の適正化等により粗粒と気泡の除去を図ったとしても、実際の量産時においては混合タンクで大量に混合・製造された電極スラリが、複数存在する生産ラインの各々の最寄りに配置される小さなタンク(例えば、フィードタンク)に小分けされることから、気泡などが混入して電極スラリSの性状の安定性を厳密に制御することは容易ではない。
しかしながら、本実施形態の電極製造装置1によれば、実際に電極を製作する塗工工程直前のフィードタンクにおいて粗粒と気泡とを直接的に除去するので、実効性が高いものとなる。
【0034】
また、複数の粗粒除去フィルタ53A,53Bが切替可能であるので、清掃等のメンテナンス時においても貯留された電極スラリSの循環を継続することができ、常時、気泡と粗粒とを除去することができる。これにより、常時、性状の優れた電極スラリSを基材Mに塗布することができる。
【0035】
また、遠心脱泡器54が粗粒除去フィルタ53A,53Bの下流側に設けられているので、清掃した直後の粗粒除去フィルタ53A,53Bを通過した際に混入した気泡を含む電極スラリSをフィードタンク22に再度戻す前の段階で、当該気泡を除去することができ、作業性や運用性を向上させることができる。
【0036】
また、副循環部55を備えるので、除去された気泡を含む電極スラリSを廃棄することなく、有効に利用することができる。
【0037】
また、液位が制御されたフィードタンク22に循環系50が設けられているので、脱泡及び粗粒除去がされた電極スラリSをフィードタンク22に戻す際に気泡等が混入しないよう調整容易である。このため、循環系50を経た性状が優れた電極スラリSを基材Mに塗布することができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、製造部10においても真空脱泡する構成としたが、真空脱泡を行わなくても、気泡除去は遠心脱泡器54のみで行ってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…電極製造装置
10…製造部
20…貯蔵部
21…一次貯蔵タンク
22…フィードタンク
30…塗工部
33…塗工ヘッド
50…循環系
53A,53B…粗粒除去フィルタ
54…遠心脱泡器
55…副循環部
55a…回収タンク
M…基材
S…電極スラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の材料を混合して電極スラリを製造する製造部と、
前記製造部に接続され、前記製造された電極スラリを貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクに接続され、前記貯留された電極スラリの粗粒を除去する粗粒除去フィルタと、
前記粗粒除去フィルタに接続され、前記粗粒が除去された電極スラリの気泡を除去して、前記貯留タンクに貯留された電極スラリの液位よりも下方に前記気泡が除去された電極スラリを戻す脱泡器と、
前記貯留タンクに接続され、前記貯留された電極スラリを基材に塗布する塗工部と、
を有することを特徴とする電極製造装置。
【請求項2】
前記貯留タンク、前記粗粒除去フィルタ、および前記脱泡器を一定期間循環した前記貯留された電極スラリにより前記塗布を行うことを特徴とする請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
切替部をさらに有し、
前記粗粒除去フィルタは、前記切替部によりいずれか一方に切り替えられる第1および第2の粗粒除去フィルタを備え、
前記循環は前記切替部により切り替えられた前記第1または第2の粗粒除去フィルタのいずれか一方を介して行われることを特徴とする請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記貯留された電極スラリの液位を検出する液位センサと
前記液位センサによる前記検出の結果を受信する制御部とをさらに有し、
前記制御部は、前記液位が所定範囲より低下したことを示す前記検出の結果を受信した場合には、前記製造部により製造された電極スラリを前記貯留タンクへ補充して前記所定範囲とすることを特徴とする請求項3に記載の電極製造装置。

【図1】
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