説明

電気−光学的可変光フィルター

本発明は、光信号をフィルター処理する方法および装置を提供する。本方法は、少なくとも一つの入力光信号を受信し、その少なくとも一つの入力光信号を使用して第一および第二光信号を形成し、複数の非導波電気−光位相調節装置を使用して該第一光信号の少なくとも一部を修正することを含む。本方法は、信号の少なくとも一つが修正された第一光信号を、第二光信号と組み合わせることにより、出力光信号を形成することも含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、一般的には光伝送機構に関し、より詳細には、光伝送機構において使用する電気−光学的可変光フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニクス、すなわち情報を保存、伝送および/または処理するための光の使用は、日用品および高度な技術製品の市場に急速に浸透している。例えば、光学は、多くの都市および地方ネットワークに特に選ばれた伝送媒体である。帯域幅を維持し、光伝送ネットワークの様々な成分を一緒に作動させるために、光伝送ネットワークは、典型的には電力をネットワークの波長、または周波数、チャネルに動的に等化することができる高度な光フィルターを使用する。電力を広いスペクトル特性に基づき、動的に等化する代表的な光フィルターとしては、マッハツェンダーフィルター、音響−光フィルター、ホログラム、およびマイクロ−メカニカル駆動ミラーがある。チャネル毎に電力を動的に等化する代表的な光フィルターとしては、デマルチプレックサー、プログラム化できる減衰器列、マルチプレックサー等がある。
【0003】
光フィルターは、光伝送用の一個以上の導波管、及びそれらの導波管中で光伝搬の位相を調節できる一個以上の素子を包含することができる。伝統的な位相調節導波管では、ジュールヒーターを導波管の近くに配置し、光導波管の温度を変化させるのに使用する。光導波管の有効屈折率は、導波管の温度によって異なるので、温度を変えることにより、導波管の光路長が変化し、それによって光導波管中で移動する光の位相が変化する。熱−光学的位相調節を、光減衰器、スペクトル選択フィルター、干渉計等で使用する。例えば、ドウアー(米国特許第6,212,315号)は、複数の位相シフターで熱−光位相調節を使用するチャネルパワー等化器を記載している。
【0004】
しかし、熱−光位相調節を包含する、導波管中で光伝搬位相を変化させる伝統的な方法は、スペクトルフィルター処理用途にはあまり適していない場合がある。温度に依存する位相制御装置の感度は、シリカの比較的小さな熱−光学係数により制限されることがある。他の材料はより大きな熱−光学係数を示す場合もあるが、これらの材料は、低損失単一モード導波管に形成するのが困難な場合がある。さらに、位相制御の熱−光学方法は、光伝送ネットワークにおける他の電子装置と緊密に一体化できる程、十分急速に応答できない。
【0005】
さらに、光フィルターは、半導体基材導波管に形成されることが多く、同じ半導体基材導波管に形成された複数の温度依存性位相制御装置間の熱的クロストークが、温度依存性位相制御装置の正確さ、精細さ、および制御を低下させることがある。その結果、より温度依存性の少ない位相制御装置を単一の半導体基材導波管に包含することができる。熱的クロストークは、温度依存性位相制御装置の位相表示(expression)の範囲を小さくすることもある。位相表示範囲の低下は、位相制御装置に加えられる温度の範囲を増加することにより、少なくとも部分的に補償できるが、温度範囲を増加すると、典型的にはデバイスのパワー消費もそれに対応して増加する。さらに、正標準(orthonormal)モードの偏光独立性が熱的クロストークにより低下する場合がある。
【特許文献1】米国特許第6,212,315号
【発明の開示】
【0006】
本発明の一態様として、光信号をフィルター処理する方法を提供する。本方法は、少なくとも一つの入力光信号を受信し、その少なくとも一つの入力光信号を使用して第一および第二光信号を形成し、そして複数の非導波電気−光位相調節装置を使用して該第一光信号の少なくとも一部を修正することを含むものである。本方法は、第一光信号の少なくとも一つの修正部分を包含する該第一光信号を、第二光信号と組み合わせることにより、出力光信号を形成することも含む。
【0007】
本発明の別の態様としては、装置を提供する。この装置は、光デマルチプレックサー、光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた複数の非導波電気−光位相調節装置、および複数の非導波電気−光位相調節装置に光学的にカップリングされた光マルチプレックサーを包含する。
【0008】
本発明のさらに別の実施態様では、電気−光学的可変光フィルターを提供する。この電気−光学的可変光フィルターは、第一光伝送媒体、第二光伝送媒体、および第一および第二光伝送媒体の部分をカップリングするための第一光カプラーを包含する。電気−光学的可変光フィルターは、第二光伝送媒体にカップリングされた光デマルチプレックサー、光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた複数の非導波電気−光位相調節装置、および複数の非導波電気−光位相調節装置に光学的にカップリングされた光マルチプレックサーを包含する。電気−光学的可変光フィルターは、光マルチプレックサーに光学的にカップリングされた第三光伝送媒体および、第二および第三光伝送媒体の部分をカップリングするための第二光カプラーをさらに包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、添付図面を参照しながら行う下記の説明により理解することができる(図中の類似の番号は類似の部品を示す)。
【0010】
本発明には、様々な修正および代替形態が可能であるが、図面には本発明の具体的な実施態様を示し、ここで詳細に説明する。しかし、この具体的な実施態様の説明は、本発明をここに開示する特定の形態に限定するものではなく、反対に、請求項に規定する本発明の精神および範囲内に入るすべての修正、均等物および代替物を含むことは言うまでもない。
【0011】
本発明の代表的な実施態様を以下に説明する。明瞭にするために、本明細書では、現実的な実施態様のすべての特徴を説明してはいない。無論、そのようなすべての現実的な実施態様の展開では、開発者の特別な目標を達成するために、多くの実施態様に特別な決定を行うこと、例えば実施態様毎に異なる、装置や仕事に関する制約に従うことが必要である。その上、開発努力は複雑で時間を要するが、当業者が通常行うそのような開発に対して、本開示の有益性は評価されるであろう。
【0012】
図1Aは、動的および色彩的可変透過率装置、例えば動的利得均等化フィルター100、の代表的な第一実施態様を概念的に例示する。下記の説明は、図1Aおよび1Bに示す動的利得均等化フィルター100の実施態様に関して行うが、本発明は、それに限定されるものではない。別の実施態様で、可変透過率装置100は、当業者には公知の様々な光学素子の一つであってよい。例えば、可変透過率装置100は、波長分割多重方式におけるチャネルパワーを制御するためのチャネル等化器、マッハツェンダーフィルター、マイケルソン干渉計等でよい。
【0013】
動的利得均等化フィルター100の第一の代表的な実施態様として、第一および第二光伝送媒体101、102を含む。一実施態様では、第一および第二光伝送媒体101、102は、導波管である。本発明の実施に必要という訳ではないが、第一光信号は、非相互デバイス110中の第一ポート105を通して動的利得均等化フィルター100に入ることができる。一実施態様としては、非相互デバイス110は、当業者には明らかなように、高ベルデ定数を有する材料を使用して形成することができるサーキュレータ101である。
【0014】
非相互デバイス110は、第一光信号が導波管101に伝送され、次いで第一光カプラー120中の第一ポート115を通って動的利得均等化フィルター100に入るように、導波管101に光学的にカップリングすることができる。しかし、別の実施態様として、第一光信号は、非相互デバイス110を通過せずに、動的利得均等化フィルター100に入れてもよい。本発明の実施に必要という訳ではないが、導波管102に沿って伝搬する第二光信号は、第一光カプラー120中の第二ポート125を通って動的利得均等化フィルター100に入ることができる。一実施態様としては、第一光信号および、存在する場合、第二光信号は、波長分割多重化された光信号である。
【0015】
第一光カプラー120は、第一および第二光信号を分割および/または組み合わせて2つの信号成分を形成することができ、それらの成分は、導波管101、102の上側および下側アーム125、130にそれぞれ伝送される。例えば、第二光信号が導波管102を経由して動的利得均等化フィルター100に供給されない場合、第一光カプラー120は第一信号を2つの信号成分√Rおよびj√1−Rに分割するが、ここでRは第一光カプラー120の分割比である。2つの信号成分√Rおよびj√1−Rは、上側および下側アーム125、130にそれぞれ伝送される。一実施態様では、上側および下側アーム125、130の少なくとも一部は導波管である。例えば、上側アーム125が導波管でよい。別の例では、下側アーム130の第一部分133(1−2)が導波管でよい。
【0016】
下側アーム130の第一部分133(1)は、所望により、光デマルチプレックサー135に光学的にカップリングされている。一実施態様では、光デマルチプレックサー135は、下側アーム125から信号成分j√1−Rを受け取り、信号成分j√1−Rを、複数の選択された周波数および/または波長帯域に対応する部分に分割する。例えば、信号成分j√1−Rは帯域幅60nmを有し、帯域幅1nmを有する60部分に小分割(demultiplex)される。しかし、別の実施態様では、当業者には良く知られている様々なデバイスを使用し、信号成分j√1−Rを、複数の選択された周波数および/または波長帯域に対応する部分に分割することができる。これらのデバイスとしては、光学的分割装置、プリズム、格子、等があるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
光デマルチプレックサー135は、信号成分j√1−Rの部分を、対応する複数の、光デマルチプレックサー135に光学的にカップリングされている電気−光位相調節装置140に供給する。当業者には明らかなように、電気−光位相調節装置140の数は、設計に応じて選択する。従って、図1には3個の電気−光位相調節装置140を示しているが、本発明の別の実施態様としては、より多くの、またはより少ない電気−光位相調節装置140を含んでいてもよい。
【0018】
図1Aに示す動的利得均等化フィルター100の第一の代表的な実施態様としては、複数の電気−光位相調節装置140がミラー145に光学的にカップリングされている。上側アーム125もミラー145に光学的にカップリングされている。本発明の実施に必要という訳ではないが、ウエーブプレート150をミラー145に隣接して配置し、上側アーム125および電気−光位相調節装置140中をそれぞれ伝搬する2つの信号成分√Rおよびj√1−Rが、ウエーブプレート150を通過してから、ミラー145から反射するようにすることができる。例えば、4分の1ウエーブプレート150をミラーと、上側アーム125および電気−光位相調節装置140との間に配置することができる。4分の1ウエーブプレート150を取り入れることにより、信号成分j√1−Rの部分における複屈折を低減またはゼロにすることができる。
【0019】
上側および下側アーム125、130の光路長は、ある実施態様では、略等しい。例えば、上側アーム125、および光デマルチプレックサー135、電気−光位相調節装置140、およびウエーブプレート150を包含する下側アーム130の光路長は、第一と第二光信号(存在する場合)とのほぼ数波長以内でよい。以下に詳細に考察するように、電気−光位相調節装置140の有効光路長と、つづく下側アーム130の部分の光路長とを制御または調整して、信号成分j√1−Rの部分を修正することができる。一実施態様では、電気−光位相調節装置140の一個以上の有効光路長を、信号成分j√1−Rの部分間の一つ以上の相対的位相差が導入されるように、変えることができる。例えば、位相差π/4を信号成分j√1−Rの2つの部分間に導入することができる。
【0020】
2つの信号成分√Rおよびj√1−Rがミラー145から反射した後、ほぼ同じ光路に沿って第一光カプラー120に逆伝送される。その結果、電気−光位相調節装置140により導入された信号成分j√1−Rの部分間の一つ以上の相対的位相差は、約2倍になってもよい。例えば、電気−光位相調節装置140の一方が、1回の通過中に、信号成分j√1−Rの2つの部分間で約π/4の位相差を導入する場合、信号成分j√1−Rの2つの部分間で合計約π/2の位相差を導入することができる。
【0021】
第一の代表的な実施態様として、光デマルチプレックサー135は、信号成分j√1−Rの反射された部分に対して光マルチプレックサーとして機能することもできる。例えば、光デマルチプレックサー135は、信号成分j√1−Rの反射された部分と統合し、修正された信号成分j√1−Rを形成することができる。第一光カプラー120は信号成分√Rと、修正された信号成分j√1−Rとを組み合わせ、および/または分割し、出力信号を形成することができる。例えば、信号成分√Rおよび修正された信号成分j√1−Rは、破壊的に、および/または建設的に干渉し、フィルター処理された出力信号を形成することができる。一実施態様では、このフィルター処理された出力信号を非相互デバイス110に供給し、次いで、第二ポート155を経由して動的利得均等化フィルターから出ることができる。しかし、上で考察したように、非相互デバイス110は所望により使用するのであり、本発明の別の実施態様では、省略することができる。
【0022】
図1Bは、動的利得均等化フィルター100の第二の代表的な実施態様を示す。動的利得均等化フィルター100の第二の代表的な実施態様では、複数の電気−光位相調節装置140が光マルチプレックサー160に光学的にカップリングされている。信号成分j√1−Rの、すべての修正された部分を含む部分を、光マルチプレックサー160に供給することができる。一実施態様では、光マルチプレックサー160は、これらの部分を組み合わせ、修正された信号成分j√1−Rを形成することができる。
【0023】
動的利得均等化フィルター100の第二の代表的な実施態様では、上側および下側アーム125、130中をそれぞれ伝搬する信号成分√Rと、修正された信号成分j√1−Rとが、第二光カプラー165に供給され、この第二光カプラー165が信号成分√Rと修正された信号成分j√1−Rと分割する、および/または組み合わせることができる。例えば、信号成分√Rと修正された信号成分j√1−Rとは、破壊的に、および/または建設的に干渉し、フィルター処理された出力信号を形成することができる。一実施態様として、第一および第二光カプラー120、165は同じ分割比Rを有するが、これは、本発明の実施に必要という訳ではない。さらに、第二光カプラー165は、本発明の様々な別の実施態様で省略することができる。
【0024】
上側および下側アーム125、130の光路長は、ある実施態様では、略等しい。例えば、上側アーム125、および光デマルチプレックサー135、電気−光位相調節装置140、および光マルチプレックサー145を包含する下側アーム130の光路長は、第一と第二光信号(存在する場合)とのほぼ数波長以内でよい。以下に詳細に考察するように、電気−光位相調節装置140の有効光路長と、つづく下側アーム130の部分の光路長とを制御または調整して、信号成分j√1−Rの部分を修正することができる。一実施態様では、電気−光位相調節装置140の一個以上の有効光路長を、信号成分j√1−Rの部分間の一つ以上の相対的位相差が導入されるように、変えることができる。例えば、位相差π/4を信号成分j√1−Rの2つの部分間に導入することができる。
【0025】
図1Aおよび1Bにそれぞれ示す第一または第二の代表的な実施態様では、動的利得均等化フィルター100の一個以上の構成部品を単一の平らな導波管プラットホーム(図には示していない)上に形成することができる。例えば、光デマルチプレックサー135、複数の電気−光位相調節装置140、およびミラー150または光マルチプレックサー160を平らな導波管プラットホーム上に形成することができる。別の様々な実施態様で、平らな導波管プラットホームを重合体、シリコン上に形成したシリカ、半導体または類似の材料で形成することができる。
【0026】
少なくとも部分的に複数の電気−光位相調節装置140の応答時間が速いために、図1Aおよび1Bに示す動的利得均等化フィルター100の2つの実施態様では、他の電子デバイスと緊密に一体化することができる。さらに、多数の電気−光位相調節装置140間の熱的クロストークを、例えば複数の熱−光位相調節装置よりも低減できるので、単一のプラットホーム上に形成できる電気−光位相調節装置140の数を増加することができる。電気−光位相調節装置140は、例えば複数の熱−光位相調節装置と比較して、位相表示の範囲を増加し、パワー消費を下げることもできる。
【0027】
図2は、本発明の一実施態様による複数の電気−光位相調節装置140を概念的に例示する。上記のように、一実施態様では信号成分j√1−Rが、下側アーム130の第一部分133(1)を経由して光デマルチプレックサー135に供給される。例示する実施態様では、光デマルチプレックサー135は、複数の光伝送媒体、例えば導波管200に光学的にカップリングしており、これらの媒体は、対応する複数のスロット210の近くに配置することができる。一実施態様では、導波管200の末端はスロット210の近くに配置することができるので、導波管200が、スロット210に光学的にカップリングされ、信号成分j√1−Rの部分をスロット210に供給できる。例えば、導波管200のそれぞれは、選択された波長(または周波数)、帯域内にある波長(または周波数)を有する信号成分j√1−Rの一部を、複数のスロット210対応する一つに供給することができる。
【0028】
電気−光活性位相調節素子220をスロット210の少なくとも一部の中に配置することができる。一実施態様では、電気−光活性位相調節素子220は、スロット210の中に配置することができる電気−光活性材料、例えば液晶、高分子分散した液晶、複屈折材料等でよい。しかし、どのような、望ましい種類の電気−光活性位相調節素子220でも使用できる。例えば、別の一実施態様では、電気−光活性位相調節素子220は、電気−光活性材料で充填された開口部を有するシリコン基材でよい。この別の実施態様では、電気−光活性位相調節素子220を別に形成し、続いて電気−光活性位相調節装置140の中に挿入することができる。
【0029】
一個以上の電極230をスロット210の近くに配置する。例示する実施態様では、2個の電極230が、スロットの近くで、導波管200の少なくとも一部(破線で示す)の上に配置されている。しかし、本発明はそのように限定されるものではない。別の実施態様では、より多くの、またはより少ない電極230をスロット210の近くに配置することができる。さらに、別の実施態様では、電極230の少なくとも一部をスロット210の中に配置することができる。
【0030】
電極230は、線250を経由して制御装置240に接続される。様々な別の実施態様では、線250は、ワイヤ、導電性トレース等でよい。制御装置240は、選択された信号、例えば電圧および/または電流を電極230に供給することができる。当業者には明らかなように、制御装置240により供給される信号を使用し、電気−光活性位相調節素子220の光路長を変えることができる。例えば、電極230の一個以上に電圧を印加することにより、電界を造り出すことができ、その電界の少なくとも一部は、スロット210の中に浸透することができる。信号の強度、例えば電圧を変えることにより、電界の振幅および/または向きを変えることができ、それによって電気−光活性位相調節素子220の光路長を変えることができる。
【0031】
信号成分j√1−Rの一つ以上の部分の相は、信号成分j√1−Rの部分が電気−光活性位相調節素子220を通って伝搬する時に修正することができる。一実施態様では、信号成分j√1−Rの適切な部分に対応するスロット210の近くに配置された電極230に異なった信号を供給することにより、相対的な位相差を信号成分j√1−Rの部分間に導入することができる。例えば、信号成分j√1−Rの第一部分に対応するスロット210の光路長が、信号成分j√1−Rの第二部分に対応するスロット210の光路長と、信号成分j√1−Rの波長の約4分の1だけ異なるように、対応するスロット210に供給する信号の強度を変化させることにより、信号成分j√1−Rの2つの部分間に相対的な位相差を導入することができる。
【0032】
別の複数の光伝送媒体、例えば導波管260をスロット210の近傍に配置することができる。一実施態様では、導波管260がスロット210に光学的にカップリングされ、スロット210から信号成分j√1−Rの部分を受け取ることができるように、導波管260の末端をスロット210の近傍に配置することができる。一実施態様では、導波管260の一部(破線で示す)を一個以上の電極230の下に配置することができる。図1Aに示す動的利得均等化フィルター100の第一の代表的な実施態様では、導波管260をミラー145および/またはウエーブプレート150に光学的にカップリングすることができる。あるいは、図1Bに示す動的利得均等化フィルター100の第二の代表的な実施態様では、導波管260を、上記のように信号成分j√1−Rの部分を分割する、および/または組み合わせることができるマルチプレックサー160に光学的にカップリングすることができる。
【0033】
スロット210および電気−光活性位相調節素子220は、一実施態様では、非導波性である。従って、導波性素子、例えば導波管200、260、を複数の電気−光位相調節装置140中に含むことができるが、以下、電気−光位相調節装置140は「非導波性」電気−光位相調節装置140と呼ぶ。
【0034】
図3は、電気−光位相調節装置140の一実施態様の透視図を概念的に例示する。例示する実施態様では、半導体基材320、例えばシリコンの上に形成される、この分野で一般的にクラッド層310と呼ばれる誘電体層中に、一個以上の導波管部分305(1−2)が形成されている。無論、電気−光位相調節装置140の形状は一例であり、別の実施態様では、電気−光位相調節装置140は、図3に示していない他の部品を含むことができる。
【0035】
例示する実施態様に示す導波管部分305(1−2)は、クラッド層310の屈折率よりも大きい屈折率を有する材料から形成される。例えば、導波管部分305(1−2)は、屈折率が約1.4557であるドーピングしていないシリカから形成し、クラッド層310は、屈折率が約1.445である、ドーピングした、またはドーピングしていないシリカから形成することができる。別の実施態様では、導波管部分305(1−2)およびクラッド層310は、いずれかの望ましい材料から形成することができる。一実施態様では、クラッド層310は、少なくとも一部、導波管部分305(1−2)の下の区域315に形成された下側クラッド層(図には示していない)および少なくとも一部、導波管部分305(1−2)の上の区域320に形成された上側クラッド層(図には示していない)を含むことができる。一実施態様では、上側クラッド層および下側クラッド層の屈折率が等しくなくてよい。例えば、上側クラッド層の屈折率が約1.4448であり、下側クラッド層の屈折率が約1.4451であってよい。
【0036】
スロット330が、導波管部分305(1−2)の末端がスロット330の近くになるように、クラッド層310の中に切り込まれている。しかし、別の実施態様では、導波管部分305(1−2)の末端はスロット330の近くになくてもよい。例えば、導波管部分305(1−2)の一部がスロット330の近くにあり、導波管部分305(1−2)の末端がスロット330から離れた位置にあっでもよい。一実施態様では、スロット330の横縁部350(1−2)で導波管部分305(1−2)中を伝搬する信号によるエバネッセントフィールド振幅が、ピーク値の−40dB未満になるように、スロット330を切り込む。しかし、スロット330の正確な位置および横縁部350(1−2)における望ましいエバネッセントフィールド振幅は、設計で選択する事項である。さらに、図3ではスロット330を長方形として示してあるが、スロット330の幾何学的構造は、設計で、様々な幾何学的断面形状およびその長さに沿って変化する断面形状も考慮して、選択する事項である。
【0037】
図4は、例えば図1Aおよび1Bに示す動的利得均等化フィルター100を使用する光信号をフィルター処理する代表的な方法の一実施態様を例示する。例示する実施態様の方法は、少なくとも一つの入力光信号を受け取る(400で)ことを含む。次いで、この少なくとも一つの入力光信号を使用して第一および第二光信号を形成する(410で)。例えば、図1Aおよび1Bに示す光カプラー110が、この入力光信号を使用して2つの信号成分√Rおよびj√1−Rを形成することができる。上で詳細に考察したように、複数の電気−光位相調節装置、例えば図1Aおよび1Bに示す電気−光位相調節装置140を使用して第一光信号の少なくとも一部を修正することができる(420で)。次いで、第一光信号の少なくとも一つの修正された部分を含む第一光信号を、第二光信号と組み合わせることにより、出力光信号を形成することができる(430で)。
【0038】
電気−光位相調節装置140を包含する動的利得均等化フィルター100の一つ以上の実施態様を使用することにより、上で詳細に考察したように、動的利得均等化フィルター100の正確さ、精細さ、および制御を、例えば熱−光位相制御装置よりも高めることができる。例えば、多数の電気−光位相調節装置140を、単一の半導体基材上に形成された動的利得均等化フィルター100中に包含することができる。電気−光位相調節装置140の位相表示の範囲を、デバイスのパワー消費をそれに対応して増加させることなく、増加することができる。動的利得均等化フィルター100中を伝搬する信号の正標準モードの偏光独立性も改良することができる。
【0039】
さらに、適応(adaptive)フィルター、例えば可変透過率装置100における将来の開発も、少なくとも部分的に、アクセスおよび都市部ネットワーク、ならびに伝達主要要素に使用するように設計された信号化の例をより一層洗練することにより、加速されると考えられる。本発明は、恐らく予見される、そして予見されない他の開発と連係して、これらの用途範囲をはるかに大きく広げることができよう。特に、より高度の精細さ、およびより低いパワー消費により、この手法は、アクセスおよび都市部ネットワーク、ならびに伝達主要要素における高度に機能的な組立構造に十分に採用されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1A】動的および色彩的可変透過率装置、例えば動的利得均等化フィルター、の二つの代表的な実施態様を概念的に例示したものである。
【図1B】動的および色彩的可変透過率装置、例えば動的利得均等化フィルター、の二つの代表的な実施態様を概念的に例示したものである。
【図2】図1Aおよび1Bに示す動的および色彩的可変透過率装置に使用できる、複数の電気−光位相調節装置を概念的に例示したものである。
【図3】図2に示す電気−光位相調節装置の一実施態様の透視図を概念的に例示したものである。
【図4】図1Aおよび1Bに示す動的および色彩的可変透過率装置を使用する光信号をフィルター処理する代表的な方法の一実施態様を例示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号をフィルター処理する方法であって、
少なくとも一つの入力光信号を受信し、
その少なくとも一つの入力光信号を使用して第一および第二光信号を形成し、
複数の非導波電気−光位相調節装置を使用して、前記第一光信号の少なくとも一部を修正し、そして
前記第一光信号の少なくとも一つの修正部分を包含する前記第一光信号を、前記第二光信号と組み合わせて、出力光信号を形成する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記第一および第二光信号の形成が、光カプラーを使用して前記第一および第二光信号を形成することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一および第二光信号の形成が、前記第一および第二光信号をそれぞれ第一および第二導波管に供給することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一および第二光信号をそれぞれ第一および第二導波管に供給することが、前記第一および第二光信号を、略等しい光路長を有する第一および第二導波管に供給することを含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の非導波電気−光位相調節装置を使用して前記第一光信号の少なくとも一部を修正することが、光デマルチプレックサーを使用して前記入力光信号を小分割することを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記入力光信号の小分割が、前記入力光信号を、複数の波長帯域に小分割することを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一光信号の少なくとも一部を修正することが、前記小分割された入力光信号を、前記複数の非導波電気−光位相調節装置に供給することを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第一光信号の少なくとも一部を修正することが、前記複数の非導波電気−光位相調節装置の少なくとも一つを使用して、少なくとも一つの位相シフトを前記小分割された入力光信号の少なくとも一部に導入することを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一光信号の少なくとも一部を修正することが、前記第一光信号の少なくとも一つの修正部分が含まれる前記小分割された入力光信号を多重化することを含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出力光信号を形成することが、前記第一光信号の少なくとも一つの修正部分が含まれる前記第一光信号を、光カプラーを使用して前記第二光信号と組み合わせることを含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の非導波電気−光位相調節装置を使用した、前記第一光信号の少なくとも一部の修正が、前記第一光信号の少なくとも一部を、前記複数の非導波電気−光位相調節装置の少なくとも一つに供給し、前記第一光信号の少なくとも一つの反射された部分を、前記複数の非導波電気−光位相調節装置の少なくとも一つに供給することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
光デマルチプレックサー、
前記光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた複数の非導波電気−光位相調節装置、および
前記複数の電気−光位相調節装置にカップリングされた制御装置
を含んでなる、装置。
【請求項13】
前記光デマルチプレックサー、前記複数の非導波電気−光位相調節装置、および前記制御装置が、平坦な導波管プラットホーム上に形成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記平坦な導波管プラットホームが、重合体、シリコン上に形成されたシリカ、または半導体導波管プラットホームの少なくとも一つである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の非導波電気−光位相調節装置のそれぞれが、
第一光伝送媒体、
第二光伝送媒体、
前記第一および第二光伝送媒体の近傍に配置された、電気−光活性素子を受け入れるように設計されたスロット、および
前記スロットの近くに配置された少なくとも一個の、可変電界の少なくとも一部を前記スロット中に供給するように設計された電極、
を含んでなる、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記スロットが、少なくとも一つの湾曲した縁部を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第一光伝送媒体が導波管である、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記第二光伝送媒体が導波管である、請求項15〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記電気−光活性素子が、液晶および重合体分散した液晶の少なくとも一種である、請求項15〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記制御装置が、所望の位相変化を示す少なくとも一つの信号を、前記複数の非導波電気−光位相調節装置の少なくとも一つに供給することができる、請求項12〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記光デマルチプレックサーが、複数の選択された周波数帯域にある光を、対応する複数の非導波電気−光位相調節装置に供給するように設計されている、請求項12〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記光マルチプレックサーが、複数の選択された周波数帯域にある光を、対応する複数の非導波電気−光位相調節装置から受けるように設計されている、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記複数の電気−光位相調節装置に光学的にカップリングされた光マルチプレックサーをさらに含んでなる、請求項12〜22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記光マルチプレックサーが、前記複数の選択された周波数帯域で受けた光を組み合わせるように設計されている、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記光デマルチプレックサーおよび前記光マルチプレックサーが単一の装置である、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記複数の電気−光位相調節装置に光学的にカップリングされたミラーをさらに含んでなる、請求項12〜25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記ミラーの近傍で、前記ミラーと前記複数の電気−光位相調節装置との間に配置されたウエーブプレートをさらに含んでなる、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
第一光伝送媒体、
第二光伝送媒体、
前記第一および第二光伝送媒体の部分をカップリングするための第一光カプラー、
前記第二光伝送媒体にカップリングされた光デマルチプレックサー、
前記光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた複数の非導波電気−光位相調節装置、
前記複数の非導波電気−光位相調節装置に光学的にカップリングされた光マルチプレックサー、
前記光マルチプレックサーに光学的にカップリングされた第三光伝送媒体、および
前記第二および第三光伝送媒体の部分をカップリングするための第二光カプラー
を含んでなる、電気−光学的可変光フィルター。
【請求項29】
前記第一、第二、および第三伝送媒体が導波管である、請求項28に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項30】
干渉計が平坦な導波管プラットホーム上に形成される、請求項28または29に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項31】
前記平坦な導波管プラットホームが、重合体、シリコン上シリカ、半導体導波管プラットホームの少なくとも一つである、請求項30に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項32】
前記複数の非導波電気−光位相調節装置のそれぞれが、
前記光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた第一導波管、
前記光マルチプレックサーに光学的にカップリングされた第二導波管、
前記第一および第二導波管に隣接して配置された、電気−光活性素子を受け入れるように設計されたスロット、および
前記スロットの近くに配置された少なくとも一個の、可変電界の少なくとも一部を前記スロット中に供給するように設計された電極、
を含んでなる、請求項28〜31のいずれか一項に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項33】
前記電気−光活性素子が、液晶および重合体分散した液晶の少なくとも一種である、請求項32に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項34】
前記複数の非導波電気−光位相調節装置にカップリングされた制御装置をさらに含んでなる、請求項28〜33のいずれか一項に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項35】
前記制御装置が、少なくとも一つの選択された位相変化を示す少なくとも一つの信号を、前記複数の非導波電気−光位相調節装置の少なくとも一つに供給することができる、請求項34に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項36】
前記制御装置が、前記干渉計がフィルター処理された伝達関数を作るように、少なくとも一つの選択された位相変化を示す少なくとも一つの信号を供給することができる、請求項34に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項37】
第一光伝送媒体、
第二光伝送媒体、
前記第一および第二光伝送媒体の部分をカップリングするための第一光カプラー、
前記第二光伝送媒体にカップリングされた光デマルチプレックサー、
前記光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた複数の非導波電気−光位相調節装置、
前記複数の電気−光位相調節装置にカップリングされた制御装置、および
前記複数の電気−光位相調節装置に光学的にカップリングされたミラー
を含んでなる、電気−光学的可変光フィルター。
【請求項38】
前記第一および第二伝送媒体が導波管である、請求項37に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項39】
干渉計が平坦な導波管プラットホーム上に形成される、請求項37に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項40】
前記平坦な導波管プラットホームが、重合体、シリコン上シリカ、半導体導波管プラットホームの少なくとも一つである、請求項39に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項41】
前記複数の非導波電気−光位相調節装置のそれぞれが、
前記光デマルチプレックサーに光学的にカップリングされた第一導波管、
前記光マルチプレックサーに光学的にカップリングされた第二導波管、
前記第一および第二導波管に隣接して配置された、電気−光活性素子を受け入れるように設計されたスロット、および
前記スロットの近くに配置された少なくとも一個の、可変電界の少なくとも一部を前記スロット中に供給するように設計された電極、
を含んでなる、請求項37〜40のいずれか一項に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項42】
前記電気−光活性素子が、液晶および重合体分散した液晶の少なくとも一種である、請求項41に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項43】
前記制御装置が、少なくとも一つの選択された位相変化を示す少なくとも一つの信号を、前記複数の非導波電気−光位相調節装置の少なくとも一つに供給することができる、請求項37〜42のいずれか一項に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項44】
前記制御装置が、前記干渉計が、フィルター処理された伝達関数を作るように、少なくとも一つの選択された位相変化を示す少なくとも一つの信号を供給することができる、請求項43に記載の電気−光学的可変光フィルター。
【請求項45】
添付図面を参照しながら実質的に本明細書で説明された、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
添付図面を参照しながら実質的に本明細書で説明された、請求項12に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−530982(P2007−530982A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520009(P2006−520009)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003090
【国際公開番号】WO2005/011171
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(502053328)ダウ・コーニング・コーポレイション (12)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2200 West Salzburg Road, Midland, MI 48611ー0994, U.S.A.
【Fターム(参考)】