説明

電気かみそり

【課題】握力の弱い使用者や、指関節の自由が利きにくい使用者でも、かみそり本体を無理なく確実に握りしめることができ、しかも見た目がスリムで軽快な印象を発揮できるる電気かみそりを提供する。
【解決手段】かみそり本体(1)と、かみそりヘッド(2)とを備えており、かみそり本体(1)が、外突状に膨出形成される後湾曲面(11)を含んで形成されている。かみそり本体(1)の前後中心に沿う長手方向中心軸線(K)と、かみそりヘッド(2)の長手方向中心軸線(L)とが、平面視においてほぼ直交している。かみそりヘッド(2)の左右幅(D)が、かみそり本体(1)の左右幅(H)より大きく設定されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外郭構造がかみそり本体と、かみそりヘッドとを含んで構成してある電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電気かみそりは、電池やモーターなどを収容する本体ケースと、本体ケースの上部に設けられるかみそりヘッドとで外郭構造を構成しており、殆どの場合、縦長の本体ケースがグリップを兼ねている。より多様なグリップ形態を選択できるようにするために、本体ケースの左右中央に溝を設け、この溝に指を差し込んだ状態で本体ケースを握れるようにした電気かみそりが公知である(特許文献1)。グリップのしやすさに関して、特許文献2では本体ケースの上部にラウンド部を膨出形成し、その下縁に沿ってV字状の指受面を形成している。
【0003】
縦長の柄と、かみそりの刃を支持するヘッド部とで構成されるT字状のかみそりがあるが、この種のかみそりを模した電気かみそりが公知である(特許文献3参照)。そこではかみそりヘッドを、かみそり本体部分に連続するY字状の腕で連結している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−220380号公報(段落番号0012、図1)
【特許文献2】特開2004−222980号公報(段落番号0032、図1)
【特許文献3】意匠登録第1190080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、電気かみそりは縦長の本体ケースを片手でつかんで使用する。例えば、本体ケースの周囲を親指と他の4指とで握りしめ、あるいは親指と他の4指とで本体ケースを前後から挟むようにして使用する。いずれの場合にも本体ケースを問題なく支えることができる。しかし、モーターや電池などの機器を収容することを目的として本体ケースがデザインしてあるので、必ずしも握りやすいとは言えず、操作しやすいとも言い難い。とくに握力が弱く、あるいは指関節の自由が利きにくいなど、手や指に何らかの障害がある場合には、先のような握り方で電気かみそりを支えられないことがある。
【0006】
本発明の目的は、握力が弱い使用者や、指関節の自由が利きにくい使用者であっても、かみそり本体を無理なく確実に握りしめることができる電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気かみそりは、かみそり本体1と、かみそりヘッド2とを備えている。かみそり本体1は、外突状に膨出形成される後湾曲面11を含んで形成されている。かくして、図1に示すように、かみそり本体1の前後中心に沿う長手方向中心軸線Kと、かみそりヘッド2の長手方向中心軸線Lとを、平面視においてほぼ直交させ、かみそりヘッド2の左右幅Dは、かみそり本体1の左右幅Hより大きく設定している(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の本発明では、かみそり本体1およびかみそりヘッド2で電気かみそりの外郭構造を構成し、外突状に膨出形成される後湾曲面11を含んでかみそり本体1を形成した。そのうえで、かみそり本体1の前後中心に沿う長手方向中心軸線Kが、かみそりヘッド2の長手方向中心軸線Lと平面視においてほぼ直交しているので、かみそり本体1を片手で握った状態において、意識する必要もなく自然に外刃18を使用者と正対させることができる。一度握った後に手を握り換えて電気かみそりの姿勢を整える必要がなく、握力が弱い使用者や、指関節の自由が利きにくい使用者であっても、電気かみそりを確実に保持して楽にひげそりを行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施例) 図1ないし図9は本発明に係る電気かみそりの実施例を示す。なお、図6ないし図9は、この実施例に係る電気かみそりの外観図および斜視図であり、図8および図9はかみそりヘッド2以外の部分を破線で表現して、かみそりヘッド2のみを実線で強調表示している。図2において電気かみそりは、かみそり本体1と、かみそりヘッド2と、かみそり本体1の上部に突設されてかみそりヘッド2を支持するフレーム3とを備えている。
【0010】
かみそり本体1の内部には、前後一対の2次電池(電池)4と、制御基板5などが組み込まれ、かみそり本体1の前面上部には、モーター14の通電状態をオン状態とオフ状態とに切り換えるスイッチ6と、スイッチ6を切り換え操作するスイッチボタン7とが配置してある。符号8はかみそり本体1の底面に設けた充電用のプラグである。
【0011】
図3においてかみそり本体1は、フレーム3で前後に分割されており、フレーム3より前側の前ケース1aと、フレーム3より後側の後ケース1bと、前後ケース1a・1bに挟まれたフレーム基部3aとで構成する。前ケース1aは外形が花弁状に形成されるプラスチック成形品からなり、その前面に外突状に膨出する前湾曲面10が設けてある。
【0012】
後ケース1bは、フレーム3との接合面で開口する容器状のプラスチック成形品からなり、その周囲が後方へ向かって外突状に膨出形成される後湾曲面11で覆われ、図1に示すように横断面が放物線状に形成してある。こうしたケース構造を採ることにより、後ケース1bは全体としてキャノピー状(円蓋型風防状)に形成され、その前後幅は左右幅に比べて充分に大きい。かみそり本体1を握りやすくするために、前湾曲面10の湾曲半径は、後湾曲面11の湾曲半径に比べて充分に大きく設定してある。
【0013】
フレーム3と後ケース1bとは、フレーム3の側からねじ込んだビスで締結し、フレーム3の前面に前ケース1aを圧嵌係合することにより、かみそり本体1を左右が扁平な卵形状に構成できる。
【0014】
このように左右が扁平な卵形状に構成したかみそり本体1は、その周面を片手で握りしめた状態において、図4に示すごとく前湾曲面10を母指球で受け止め、後湾曲面11を第2指から第5指で包み込むように保持できるので、従来の電気かみそりに比べて握りやすさを格段に向上できる。したがって、握力が弱い使用者や、指関節の自由が利きにくい使用者であっても、かみそり本体を無理なく確実に握りしめることができる。
【0015】
図2において、かみそりヘッド2は、モーター14および減速ユニット15を収容するヘッドケース16と、ヘッドケース16の上部に立設した左右一対のブラケットで回転自在に軸支される内刃17と、内刃17に外接する外刃18と、外刃18をアーチ状に保形する外刃ホルダー19などで構成してある。
【0016】
外刃ホルダー19はヘッドケース16に対して着脱できる。減速ユニット15の回転動力は、タイミングベルト機構20を介して内刃17に伝動される。内刃17および外刃18によってロータリー式の切断構造を構成してある。
【0017】
かみそり本体1とかみそりヘッド2とは、図1に示すように、かみそり本体1の前後中心に沿う長手方向中心軸線Kと、かみそりヘッド2の長手方向中心軸線Lとが、平面視において直交するように配置する。これにより、左右横長のかみそりヘッド2に対して、グリップを兼ねるかみそり本体1の後湾曲面11を後方へ大きく突出させることができる。図4に示すように、かみそり本体1を片手で握った状態では、意識する必要もなく自然に外刃18が使用者と正対するので、ひげそりを楽に行える。なお、かみそり本体1の長手方向中心軸線Kと、かみそりヘッド2の長手方向中心軸線Lとは、平面視において概ね直交する状態で配置してあればよく、両軸線の交差角度は90度±15度の範囲内にあればよい。
【0018】
図2においてフレーム3は、かみそり本体1の前後ケース1a・1bで挟まれるフレーム基部3aと、フレーム基部3aの上部に連続して逆三角形状に形成される連結部3bとを一体に備えた中空板状のプラスチック成形品からなり、図3に示すように側面視形状が緩やかに湾曲するS字形状としてある。
【0019】
連結部3bの面壁には、逆三角形状の窓22を開口してあり、窓22を塞ぐ状態で透明の表示パネル(表示部)23を嵌め込んである。窓22を囲む周枠内の空間を利用してモーター14の給電リード26を配線している(図5参照)。フレーム3とかみそりヘッド2とは、かみそりヘッド2の側からねじ込んだビスで分離不能に締結固定する。
【0020】
表示パネル23には一群のドットで構成される運転表示24を彫刻してあり、表示パネル23の下端中央に配置したLED25で運転表示24を照射することにより、電気かみそりが運転状態であることを明確に表わすことができる。LED25はスイッチ6がオン操作された状態において点灯する。図2に示すように、運転表示24は文字または模様で形成する。
【0021】
このように、透明の表示パネル23に運転表示24を設けてあると、表示パネル23の表裏両面から運転表示24を見ることができるので、喉から顎にかけてひげそりを行うような場合でも、鏡に映った運転表示24によって電気かみそりの運転状態を確認することができる。
【0022】
窓22の周縁壁は前指受28として利用される。詳しくは図4および図5に示すように、かみそり本体1を片手で握った状態において、親指の指尖球を左右いずれかの前指受28にあてがい、その部分を押し込み操作することにより、かみそりヘッド2を容易に姿勢変更できる。
【0023】
図2および図3において各部の寸法A〜Iは以下のように設定した。かみそりヘッド2の前後幅をA、フレーム3の連結部3bの前後厚みをB、かみそり本体1の前後寸法をC、かみそりヘッド2の左右幅をD、連結部3bの上端の左右幅をE、窓22の上端の左右幅をF、連結部3bの基端に形成したくびれ部分の左右幅をG、かみそり本体1の左右幅をH、窓22の上下寸法をIとする。そのとき、B<A<Cとすることにより、電気かみそりの印象をスリムで軽快なものとすることができる。好ましくは、B寸法を5mmとするとき、A寸法をB寸法の2ないし4倍に設定する。
【0024】
D≒E、G<E、G>=H、D>Hとして、フレーム3の連結部3bがかみそり本体1の左右側面からかみそりヘッド2の下面両側に連続する状態で逆三角形状になるようにし、かみそり本体1を手で握りしめやすくする。同時に握りしめた手が連結部3bの上方へずれ動くのを防止する。
【0025】
F≒I>Hとして、表示パネル23を上拡がり状に形成し、その面積をできるだけ大きなものとし、運転表示24を見やすくした。親指の指尖球を左右いずれかの前指受28にあてがってかみそりヘッド2の姿勢変更するとき、前指受28の左右位置がフレーム3の縦中心軸からはなれる分だけ、フレーム3に作用するモーメントを大きくして、かみそりヘッド2の姿勢変更を、より小さな力で楽に行えるようにした。
【0026】
以上のように、かみそり本体1とかみそりヘッド2とを前後厚みが小さな連結部3bを介して繋ぎ、後ケース1bをキャノピー状に形成してあると、図4に示すように、後湾曲面11の上端と連結部3bの基端との間に、主として第2指の指先をかけるための後指受30が形成されるので、かみそり本体1をさらに安定した状態で握りしめることができる。さらに、連結部3bと後指受30との隣接隅部分に第2指をあてがった状態では、第2指を連結部3bと後指受30との両者で同時に受け止めてそのずれ動きを確実に規制できる。
【0027】
図10はかみそり本体1の一部を変更した実施例を示す。そこでは、後ケース1bの後面に沿って4個の滑り止め用の凹部32を形成し、第2〜第4指を各凹部32にあてがうことにより、かみそり本体1を握った状態を確実に保持できるようにした。他は先の実施例と同じであるので、下記の実施例も含めて、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図11はかみそりヘッド2をフロート機構で浮動支持できるようにした。具体的には、ヘッドケース16の下面左右に突設した連結脚34を、フレーム3の連結部3bの上端左右に設けたガイド穴35で上下動自在に案内支持し、連結脚34に嵌め込んだ圧縮コイル形のばね36でかみそりヘッド2の全体を押し上げ付勢した。このように、かみそりヘッド2を左右のばね36で浮動支持すると、かみそりヘッド3を上下動可能で、しかも左右傾動可能に支持できるので、外刃18を肌面に変化に追随して密着させることができる。
【0029】
上記の実施例以外に、フレーム3自体を透明なプラスチック板材で形成して、フレーム3が表示パネル23を兼ねることができる。連結部3bに拡大レンズを設けることができる。必要があれば、窓22を円形や楕円形、あるいは矩形などに形成することができる。表示パネル23は、液晶パネルや、ELパネルなどで構成でき、その場合には、電気かみそりの運転モード、電池残量表示、あるいはモーター14の駆動回転数などの運転状態を、文字、グラフ、ピクトグラフ等でより具体的に表示することができる。
【0030】
表示パネル23を省略して、窓22の開口内縁の全てを前指受28とすることができ、その場合にはフレーム3の表裏双方から指先を前指受28にあてがうことができる。表示パネル23の前面の一部、あるいは全体に摩擦層を形成して、窓22の内縁と摩擦層とで前指受28を構成することができる。もちろん、窓22の内縁に限って摩擦層を形成することができる。その場合には、表示パネル23を透明体で形成することができる。摩擦層はウレタン塗料を塗布して、あるいはゴム膜を装着して形成することができる。
【0031】
かみそり本体1は必ずしも扁平な卵形である必要はない。例えば、前ケース1aの前面形状を内凹み湾曲形状や、平坦形状に形成することができる。フレーム3は側面視においてS字とする必要はなく、平板状に形成することができる。フレーム基部3aは、かみそり本体1の前面に締結固定することができる。必要があれば、フレーム3を連結部3bのみで形成して、フレーム基部3aを省略することができる。その場合には、連結部3bをかみそり本体1と一体に成形することができる。
【0032】
切断構造はロータリー式である必要はなく、左右方向へ往復動する内刃17と外刃18とで往復動式に構成することができる。その場合には、モーター14の回転動力を往復動力に変換する振動子を、ヘッドケース16内に設けるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電気かみそりの平面図
【図2】電気かみそりの正面図
【図3】電気かみそりの右側面図
【図4】電気かみそりのグリップ態様を示す側面図
【図5】電気かみそりのグリップ態様を示す横断平面図
【図6】電気かみそりの外観を示す正面図、右側面図、背面図
【図7】電気かみそりの外観を示す正面図、平面図、底面図、斜視図
【図8】かみそりヘッドの外観を示す正面図、右側面図、背面図
【図9】かみそりヘッドの外観を示す正面図、平面図、底面図、斜視図
【図10】かみそり本体の別の実施例を示す側面図
【図11】かみそりヘッドの別の支持構造例を示す一部破断正面図
【符号の説明】
【0034】
1 かみそり本体
2 かみそりヘッド
3 フレーム
3a フレームのフレーム基部
3b フレームの連結部
4 電池
5 制御基板
6 スイッチ
10 かみそり本体の前湾曲面
11 かみそり本体の後湾曲面
14 モーター
17 内刃
18 外刃
23 表示部
28 前指受
D かみそりヘッドの左右幅
H かみそり本体の左右幅
K かみそり本体の長手方向中心軸線
L かみそりヘッドの長手方向中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かみそり本体(1)と、かみそりヘッド(2)とを備えており、
かみそり本体(1)が、外突状に膨出形成される後湾曲面(11)を含んで形成されており、
かみそり本体(1)の前後中心に沿う長手方向中心軸線(K)と、かみそりヘッド(2)の長手方向中心軸線(L)とが、平面視においてほぼ直交しており、
かみそりヘッド(2)の左右幅(D)が、かみそり本体(1)の左右幅(H)より大きく設定されている電気かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−7460(P2007−7460A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284433(P2006−284433)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【分割の表示】特願2004−337863(P2004−337863)の分割
【原出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】