説明

電気コネクタ

【課題】 2つの被接続部材に対して水平方向に電気接続する電気コネクタにおいて、簡素な構造であり安定し強固な接続を可能にする。
【解決手段】 絶縁ハウジング11に、第1の主面12と第2の主面13のうちの第1の主面12にスリット状の開口14をもつ第1コンタクト収容室が複数に配列される。第1コンタクト収容室に、第1弾性部と第2弾性部の先端につながる第1接触部163aと第2接触部163b、および上記弾性部をそれ等の基端で連結する連結部161をもつ第1コンタクト16が取り付けられる。第1接触部163aと第2接触部163bは開口14から突出し、並置される第1部材と第2部材の接続ランドにそれぞれ弾性的に接触する。連結部161は第1接触部163aと第2接触部163bが弾性変位する方向に第2の主面13側に圧入係合し保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並置される一対の部材にそれぞれ取り付けられた導体接続部の間を水平方向に電気接続する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子機器内部において、プリント配線基板(PCB:printed circuit board)のような平板状の部材(基板)が複数に配置され組み込まれる。これ等の基板が互いに対向配置される場合に、2つの基板を電気接続するための種々の電気コネクタが提示されている(例えば、特許文献1乃至3を参照)。これ等の電気コネクタは対向する被接続基板間に挟持される。そして、被接続基板面に対して略垂直方向に電気接続する構造になっている。
【0003】
この種の電気コネクタは、対向する2つの被接続基板間に挟持された状態で、それぞれの基板面に配設されている例えば回路配線における導体接続部(接続ランド)に弾性接触するように、弾性導体からなるコンタクトを所要数備えている。これ等のコンタクトは、絶縁ハウジングにおけるコンタクト収容室に所定のピッチに配列される。各コンタクトは絶縁ハウジングに固定される保持部、絶縁ハウジングの2つの主表面からそれぞれ2つの被接続基板面側に突出する2つの接触部を有する。そして、2つの接触部の一方が一の被接続基板面の接続ランドに、他方が他の被接続基板面の接続ランドにそれぞれ弾性接触することにより、これ等の被接続基板を電気的に接続するようになっている。ここで、コンタクトと接続ランドとの接続および分離の繰り返しは可能になる。
【0004】
ところで、電子機器によっては、例えば液晶バックライト用基板のように被接続基板が水平に並置され、それ等の接続ランドがその基板面に対して水平方向に電気接続される場合がある。このような水平接続用コネクタとして、種々の電気コネクタが提示されている(例えば、特許文献4,5参照)。しかし、この基板面に対して水平方向に電気接続する従来の電気コネクタは、それぞれの基板面に配設されている接続ランドにコンタクトがハンダ付けされ固着する構造になる。そして、このような電気コネクタは、そのコンタクトと接続ランドとの接続分離の繰り返しはできない。また、上述した対向配置される被接続基板に適用される電気コネクタに較べてその構造が複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5358411号明細書
【特許文献2】特開2000−208184号公報
【特許文献3】特許第4488237号公報
【特許文献4】特開2003−272734号公報
【特許文献5】特開2011−14365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、例えば被接続基板の基板面に対して水平方向に電気接続する電気コネクタにあって、そのコンタクトの接続ランドへの固着接続が不要になり、それ等の接続および分離が容易にできる構造の電気コネクタが望まれている。本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、2つの被接続部材に対して水平方向に電気接続する電気コネクタにおいて、上記コンタクトと接続ランドとの接続および分離の繰り返しを可能にする電気コネクタを提供する。そして、簡素な構造であり、安定した強固な接続を可能にする電気コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる電気コネクタは、対向する第1の主面と第2の主面のうち少なくとも第1の主面に開口を有するコンタクト収容室が複数に配列された絶縁ハウジングと、弾性変形可能な第1弾性部とその先端につながる第1接触部、および弾性変形可能な第2弾性部とその先端につながる第2接触部、並びに前記第1弾性部および前記第2弾性部の基端を連結する連結部を有し前記コンタクト収容室のそれぞれに受容されるコンタクトと、を備え、前記第1接触部および前記第2接触部が前記第1の主面の開口から突出しており、それぞれ、第1部材に形成された第1導体接続部および前記第1部材に並置される第2部材に形成された第2導体接続部に弾性的に接触することにより、前記コンタクトは前記第1部材および前記第2部材を前記第1の主面側で電気接続し、前記連結部は、前記第1接触部および前記第2接触部が弾性変位する方向に前記絶縁ハウジングに圧入係合し保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、2つの被接続部材に対して水平方向に電気接続する電気コネクタにおいて、その電気コネクタのコンタクトと被接続部材の接続ランドとの接続および分離の繰り返しが可能になる。そして、簡素な構造であり、安定した強固な接続を可能にする電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる電気コネクタの一例を示し、(a)はその側面図、(b)は(a)の第1の主面側からみた平面図である。
【図2】同上電気コネクタの断面図であり、(a)は図1(b)の線X−Xで切った断面図、(b)は図1(b)の線Y−Yで切った断面図である。
【図3】同上電気コネクタにより2つの被接続部材が水平方向に電気接続された状態の一例を示した断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる電気コネクタの一例を示し、(a)はその側面図、(b)は(a)の第1の主面側からみた平面図である。
【図5】同上電気コネクタの断面図であり、(a)は図4(b)の線X−Xで切った断面図、(b)は図4(b)の線Y−Yで切った断面図である。
【図6】同上電気コネクタの第1の主面側からみた斜視図である。
【図7】同上電気コネクタを用いた被接続部材の電気接続の説明に供するための電気コネクタの第1の主面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態のいくつかについて図面を参照して説明する。以下、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる。また、図面においては、その要部に符号が付され、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は一部省略される。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる電気コネクタについて図1ないし図3を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の電気コネクタ10では、例えば樹脂のような絶縁体からなる絶縁ハウジング11は、ほぼ扁平な直方体であり、その第1の主面12と第2の主面13が対向する構造になっている。そして、第1の主面12はハウジングの一つの面を形成しており、印刷配線回路などの2つの被接続部材が相互に突き合わせて配置されるようにこの第1の主面に当接される。第1の主面12は段差があってもよく、2つの被接続部材の配置位置は同一面または段差のある面であり、これらの配置は面一方向すなわち水平方向になる。第1の主面12側には、所要数(本実施形態では5個)の例えばライン状例えば直線状のスリット状の開口14が複数列、並置される。これ等の開口14は、図2に示すように、絶縁ハウジング11に設けられた第1コンタクト収容室15に連通している。これ等の第1コンタクト収容室15には、それぞれ導体からなる第1コンタクト16が収容室に沿って延びるように取り付けられている。
【0012】
第1コンタクト16は、板状ばねで連結部161、この連結部161の両側に連結された弾性変形可能な第1弾性部162aと第2弾性部162bからなる弾性部を有する。連結部161は、第1弾性部162aおよび第2弾性部162bのそれぞれの基端を連結している。連結部161は、絶縁ハウジング11の第2の主面13側へ延びる突設部161aを有している。上記弾性部162a,162bのそれぞれの先端には、一対の接触部163a,163bが連結している。すなわち、第1弾性部162aの先端に第1接触部163aがつながり、第2弾性部162bの先端に第2接触部163bがつながっている。また、第1接触部163aの肩部に突起部164が形成されていてもよい。なお、第1コンタクト収容室15は第1コンタクト16の板厚方向の撓みを制限し、板面方向の自由な可動ができるようにしている。突起部164は第1弾性部162aの先端部に位置し、収容室の内側壁に挟まれ上記可動を円滑にする。
【0013】
そして、第1コンタクト16は、第1コンタクト収容室15のほぼ中間部で絶縁ハウジング11の第2の主面13側に設けられた孔を有するコンタクト保持部17に固定されるようになっている。ここで、連結部161の突設部161aがコンタクト保持部17に圧入係合され保持される。また、第1接触部163aおよび第2接触部163bは、第1の主面12側の開口14から突出しており、それぞれ、並置される被接続部材の接続ランドに弾性的に接触するようになっている。なお、第1接触部163aは第1の主面12に設けられた突出部18の開口14から突出している。連結部161のコンタクト保持部17への圧入方向は、上記接触部163a,163bが被接続部材の接続ランドに弾性的に接触する際に弾性変位する変位方向Mになる。
【0014】
例えば、前記連結部161は、絶縁ハウジング11内でその第1の主面12から第2の主面13に向かう変位方向Mの方向に延びて、コンタクト保持部17の孔内に圧入係合される。その他に、例えば図2の場合とは逆に、連結部161が第2の主面13に向かって2つに分岐し、棒状に形成されているコンタクト保持部17が連結部161の分枝内に圧入され嵌合するようになっていても構わない。
【0015】
いずれにしても、コンタクト保持部17に対して連結部161の圧入方向が上記変位方向Mになることにより、各第1コンタクト16はコンタクト保持部17に安定的に保持される。これは、接触部163a,163bが被接続部材の接続ランドに弾性的に接触した状態において、接触部163a,163bの弾性的な接触力の反力が連結部161に作用し、連結部161のコンタクト保持部17への保持を強固にするように働くからである。逆に、第1コンタクト16の接触部163a,163bは、被接続部材の接続ランドに安定した弾性的な接触力を与え強固な接続を可能にする。
【0016】
このようにして、第1コンタクト16は絶縁ハウジング11に簡素な構造で取り付けられ、電気コネクタ10は極めて簡素な構造にすることが可能になる。そして、例えばPCBのような被接続部材に実装される電子部品の微細化が進んだ場合でも、電気コネクタにおけるコンタクトの狭ピッチ化あるいはその多芯化に充分に対応できるようになる。また、電気コネクタの小型化が容易になる。
【0017】
上記接触部163a,163bの接触力は弾性部162a,162bの弾性力に依存する。そこで、弾性部162a,162bは、図2に示すように例えばS字形湾曲あるいは逆S字形湾曲のように適宜な形状に形成され、その弾性力が調節できるようになっている。ここで、第1弾性部162aおよび第2弾性部162bの形状は、例えば第1接触部163aおよび第2接触部163bの弾性変位量に合わせ、それぞれ異なるようになっている。
【0018】
また、弾性部162a,162bは、各接触部163a,163bと各接続ランドとの接触を確実にするために、接続方向すなわち上述した変位方向Mに対して垂直方向になる変位(ワイピング)を接触部163a,163bに付与するようになっていてもよい。これは、被接続部材の接続ランド面に埃や酸化被膜等の異物が存在する場合であっても、第1コンタクト16が接続ランドに確実に電気接続できるようにするのに有効になる。なお、2つの接続ランドからワイピングにより受ける接触部163a,163bの摩擦力は、第1接触部163aと第2接触部163bで逆方向に働いてほぼ相殺される。それに伴い、連結部161は、その変位方向Mに対して垂直方向になる上記摩擦力が小さくなり、上述した接触部163a,163bの接続ランドへの弾性的な接触力の反力を受けることになる。
【0019】
絶縁ハウジング11には、その材料として9Tナイロン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のプラスチックが好適に使用される。その他に、高い剛性を示し成形加工の容易な絶縁性ポリマーであっても構わない。樹脂としては熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のどちらであってもよい。上記プラスチックからなる絶縁ハウジング11は所望の形状に一体成形するとよい。
【0020】
第1コンタクト16には、その材料として適度な弾性を示す金属材料が好適に用いられる。そのような金属材料として、リン青銅、ベリリウム銅等の銅合金が挙げられる。例えば、上記金属材料からなる金属板が板厚方向に打ち抜き加工され、連結部161、弾性部162a,162bおよび接触部163a,163bが一体構造に形成される。その他に、これ等が別の素材から作製され、その組み合わせ構造になっていてもよい。少なくとも接触部163a,163bには、その表面に酸化被膜が形成されないように例えば金、白金等からなるメッキ層を形成するとよい。
【0021】
次に、本実施形態の電気コネクタ10の製造方法の一例についてその主要のところを説明する。絶縁ハウジング11は例えばLCPのような熱可塑性樹脂の射出成形により作製する。第1コンタクト16はリン青銅の板金の打ち抜き加工により作製する。第1コンタクト16において、少なくとも接触部163a,163bに金メッキを施す。そして、絶縁ハウジング11の第1の主面12に形成されている開口14から、第1コンタクト16の連結部161を第1コンタクト収容室15に挿入する。この挿入では、図1,2に示したコンタクト保持部17の位置標示用の位置決め窪み部20に連結部161を位置合わせする。
【0022】
そして、この連結部161を押圧してコンタクト保持部17に圧入し、連結部161をコンタクト保持部17に圧入係合し、固定して保持する。このようにして、各第1コンタクト収容室15にそれぞれの第1コンタクト16が取り付けられ、電気コネクタ10が組み立てられる。
【0023】
次に、上記実施形態の電気コネクタ10を用いた2つの被接続部材の水平方向における電気接続の一例について図3を参照して説明する。図3に示すように、電気コネクタ10における第1接触部163aが例えばPCBからなる第1部材21の第1接続ランド22に弾性接触し、第2接触部163bが同様にPCBからなる第2部材23の第2接続ランド24に弾性接触する。そして、第1接触部163aおよび第2接触部163bをもつ第1コンタクト16により、第1接続ランド22と第2接続ランド24の間は第1の主面側の面方向に電気接続する。
【0024】
図3に示す場合には、被接続部材である第1部材21と第2部材23は第1の主面12において互いに水平方向に並置されているが、それ等の高さ位置は異なっている。そこで、第1接触部163aは、上記高さ位置の差に合わせて、第1の主面12からの突出量が第2接触部163bのそれより大きくなるように取り付けられている。あるいは、第2接触部163bの許容弾性変位量が第1接触部163aのそれよりも大きくなっている。なお、2つの被接続部材が同一平面に位置するように水平方向に並置される場合には、絶縁ハウジング10の第1コンタクト16において、第1接触部163aと第2接触部163bは同程度の突出量あるいは許容弾性変位量になるように取り付けられる。
【0025】
ここで、上記電気コネクタ10はコネクタホルダ25に取り付けられている。そして、第1部材21および第2部材23の所定の箇所には、図示しないが例えばボルト挿通孔が形成され、これ等の部材はそれぞれボルトとナットによりコネクタホルダ25に締結されている。
【0026】
このようにして電気コネクタ10は、並置されコネクタ側に押し付けられる2つの被接続部材にそれぞれ取り付けられた接続ランドの間を水平方向に電気接続する。また、上述したコネクタホルダ25をこれ等の被接続部材から取り外すことにより、電気コネクタ10の第1コンタクト16と被接続部材の接続ランドとの接続は容易に分離される。ここに接続ランドは配線のリード端子や回路基板の電極端子を含むものである。
【0027】
本実施形態では、電気コネクタは、そのコンタクトの弾性接触により、並置される被接続部材の接続ランド間を水平方向に簡便に電気接続することができる。このため、従来技術の水平接続用コネクタのようにコネクタのコンタクトを接続ランドに固着接続する必要がなくなる。そして、本実施形態の電気コネクタでは、そのコンタクトと接続ランドとの接続および分離の繰り返しが可能になる。
【0028】
また、本実施形態の電気コネクタは簡素な構造でありながら、安定した強固な接続を可能にする。そして、コネクタの小型化あるいは多芯化が容易になるとともに、その低コスト化が可能になる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる電気コネクタについて図4ないし図7を参照して説明する。第2の実施形態は、1つの絶縁ハウジングにおいて接触部の弾性変位量の異なる2種類のコンタクトを有する電気コネクタの場合である。
【0030】
図4に示すように、本実施形態の電気コネクタ30では、絶縁ハウジング31の対向する第1の主面12と第2の主面13のうち第1の主面12に、所要数(本実施形態では5個)の例えばスリット状の開口14が形成されている。また、第1の実施形態で説明したのと同様に、直線パターン形状の第1コンタクト収容室15が絶縁ハウジング31に1個設けられ、第1コンタクト収容室15に導体からなる第1コンタクト16が収容されている。
【0031】
更に、図4(b)に示すように、開口14の一部の開口幅が拡がった拡幅開口34が形成されている。そして、この拡幅開口34と開口14を有して第1コンタクト収容室15に平行に並置された4個の第2コンタクト収容室35に、それぞれ導体からなる第2コンタクト36が収容されている。ここで、電気コネクタ30の側面側に位置するコンタクト収容室35の拡幅開口34は、絶縁ハウジング31の中央側に開口の幅が拡がるように形成される。中央側に向けて開口の幅を広くすることで、所定の絶縁ハウジング31の幅内に効率良く開口14およびコンタクト収容室35を形成することができ、電気コネクタ30を小型化することができる。
【0032】
ここで、第1コンタクト収容室15および第1コンタクト16は第1の実施形態で説明したのと同様であるのに対して、第2コンタクト収容室35は、拡幅開口34の他にもコンタクト係合部37、コンタクト位置決め部38を有する。また、第2コンタクト36は、第1コンタクト16と同様に、連結部361、この連結部361の両側に連結された弾性変形可能な第1弾性部362aと第2弾性部362bからなる弾性部を有する。連結部361は第1弾性部362aおよび第2弾性部362bのそれぞれの基端で連結する。また、第1弾性部362aの先端に第1接触部363aがつながり、第2弾性部362bの先端に第2接触部363bがつながる。ここで、第1接触部363aの肩部に突起部364が形成されるとよい。
【0033】
第1コンタクト16と共に第2コンタクト36は、第1の実施形態で説明したのと同様に、絶縁ハウジング31の第2の主面13側に設けられた孔を有するコンタクト保持部17にそれぞれ固定されるようになっている。すなわち、第2コンタクト36では、連結部361がコンタクト保持部17に圧入係合され保持される。そして、第1接触部363aは第1の主面12の拡幅開口34から突出し、第2接触部363bは第1の主面12の開口14から突出する。これ等の接触部363a,363bは、並置される被接続部材の接続ランドにそれぞれ弾性的に接触するようになっている。そして、連結部361のコンタクト保持部17への圧入方向は、接触部363a,363bが被接続部材の接続ランドに弾性的に接触する際に弾性変位する変位方向Mになる。
【0034】
第2コンタクト36の弾性部362a,362bは、図2(a)に示した第1コンタクト16と同じように例えばS字形湾曲あるいは逆S字形湾曲のように適宜な形状に形成され、その弾性力が調節できるようになっている。この場合も、第1弾性部362aおよび第2弾性部362bの形状は、例えば第1接触部363aおよび第2接触部363bの接触力あるいは弾性変位量に合わせてそれぞれ異なるように形成されている。また、弾性部362a,362bには、第1コンタクト16の場合に説明したように、所望のワイピング量が接触部163a,163bに付与できるようになっている。
【0035】
なお、図4(a)に示すように、電気コネクタ30が被接続部材の接続ランドに接触していない状態では、第1コンタクト16の第1接触部163aは第2コンタクト36の第1接触部363aより第1の主面12からの突出量が大きくなる。他方、第1コンタクト16の第2接触部163bは第2コンタクト36の第2接触部363bとその突出量はほぼ同じである。
【0036】
図4および図5に示すように、上述したコンタクト係合部37は第2コンタクト収容室35の拡幅開口34の側壁に、拡幅開口34の一部を塞ぐように形成され、第2コンタクト36の第1弾性部362aに係合するようになっている。また、上述したコンタクト位置決め部38は拡幅開口34の他側壁に、拡幅開口34の一部を塞ぐように形成され、第2コンタクト36の例えば突起部364あるいは第1接触部363aを位置決めするようになっている。なお拡幅開口34は、コンタクト保持部17から上記コンタクト位置決め部38にかけて徐々に拡幅している。これ等のコンタクト係合部37およびコンタクト位置決め部38は、その詳細は後述されるが、第2コンタクト36を第2コンタクト収容室35内に案内できるようになっている。
【0037】
コンタクト係合部37は、第2コンタクト36の第1弾性部362aを第1の主面12側から第2の主面13側に加圧するように係合し、第1接触部363aを第2の主面13側に押し上げる。これにより、電気コネクタ30が例えば図3の被接続部材である第1部材21の接続ランド22に接触していない状態では、第1接触部363aの第1の主面12からの突出量が第1コンタクト16の第1接触部163aのそれよりも小さくなる。しかし、これ等の接触部が接続ランドに所定の接触力で接触した状態では、第1接触部163aと第1接触部363aの接触力は同じになる。
【0038】
コンタクト位置決め部38は、その側壁が第2コンタクト36の先端部である例えば第1接触部363aあるいは突起部364に当接し位置決めするように形成されている。このコンタクト位置決め部38により、第2コンタクトが板の面方向にのみ可動できるように案内され第2コンタクト36が板厚方向に撓んで反ることがなくなり、係合している第1弾性部362aのコンタクト係合部37からの外れが防止される。
【0039】
絶縁ハウジング31は、第1の実施形態で説明したように、例えばプラスチックにより所望の形状に一体成形されるとよい。なお、この絶縁ハウジング31では、例えば開口14、拡幅開口34、位置決め窪み部20等の縁辺の角部が面取り加工され面取り部33が形成されている。
【0040】
また、第1コンタクト16および第2コンタクト36は、第1の実施形態で説明したのと同様な弾性を有する金属材料からなる金属板により形成される。ここで、金属板が打ち抜き加工され、第1コンタクト16の連結部161、弾性部162a,162bおよび接触部163a,163bが一体構造に形成される。同様に、第2コンタクト36の連結部361、弾性部362a,362bおよび接触部363a,363bが一体構造に形成される。そして、第1コンタクト16および第2コンタクト36は全く同じ材料および同じ形状に作製されるとよい。また、少なくとも接触部163a,163b,363a,363bには、その表面に酸化被膜が形成されないように例えば金、白金等からなるメッキ層を形成するとよい。
【0041】
次に、本実施形態の電気コネクタ10の製造方法の一例についてその主要のところを説明する。第1の実施形態で説明したように、絶縁ハウジング31は例えばLCPのような熱可塑性樹脂の射出成形により低コストに作製する。第1コンタクト16および第2コンタクト36はリン青銅の板金の打ち抜き加工により同一形状に作製する。
【0042】
そして、第1の実施形態で説明したように、絶縁ハウジング31の第1の主面12に形成されている開口14から、第1コンタクト16の連結部161を第1コンタクト収容室15に挿入する。そして、この連結部161を押圧してコンタクト保持部17に圧入し、連結部161をコンタクト保持部17に圧入係合して固定し保持する。
【0043】
同様に、絶縁ハウジング31の第1の主面12に形成されている開口14および拡幅開口34から、第2コンタクト36の連結部361を第2コンタクト収容室35に挿入する。この挿入では、図4,5に示した位置決め窪み部20に連結部361を位置合わせする。
【0044】
ここで、図示しないが挿入補助用の治具により第1弾性部362aを第1の主面12側から第2の主面13側に向かって、挿入補助用の治具の先端が押圧ストッパ窪み部39に当接するまで押圧する。第1弾性部362aは、この押圧により少し弾性変形して、図6に示されるコンタクト係合部37の係合部傾斜面37aにより第2コンタクト収容室35内に案内される。同時に、第1弾性部362aの先端になる第1接触部363aおよび突起部364は、コンタクト位置決め部38のコンタクトガイド面38aの傾斜面により第2コンタクト収容室35内に案内される。このようにして、第2コンタクト36はコンタクト収容室35内に円滑に挿入される。ここで、係合部傾斜面37aおよびコンタクトガイド面38aは、図6に示すように、第1の主面12から第2の主面13に向かって拡幅開口34を狭めるように形成される傾斜面である。
【0045】
そして、第1コンタクト16の場合と同様に、第2コンタクト36の連結部361を押圧してコンタクト保持部17に圧入し、連結部361をコンタクト保持部17に圧入係合して固定し保持する。以上のようにして、第1コンタクト収容室15に第1コンタクト16が取り付けられ、各第2コンタクト収容室35に第2コンタクト36が取り付けられ、電気コネクタ10が組み立てられる。なお、上述したように開口14および拡幅開口34に面取り部33が形成されていると、各コンタクトのコンタクト収容室への取り付け作業が円滑に行える。コンタクトの開口14および拡幅開口34の縁辺への引っ掛かりが抑制されるからである。この効果は、コンタクト幅が開口幅に近接してくると共に顕著になる。
【0046】
次に、本実施形態の電気コネクタ30を用いた2つの被接続部材の水平方向における電気接続の一例について図7を参照して説明する。この電気接続では、被接続部材の第1部材は、例えばプリンタ装置のインクカートリッジのように接続と分離が自在に繰り返されるものである。そして、第2部材は、例えばプリンタ装置のキャリッジにおけるインクカートリッジ収納部であり、通常は電気コネクタ30のコンタクトに接続した状態にある。
【0047】
図7に示すように、例えばプリンタ装置におけるインクカートリッジ収納部の筐体部材41に複数のコネクタ収納部42が形成され、それぞれのコネクタ収容部42に本実施形態の電気コネクタ30が固定して取り付けられている。ここで、例えばインク色の数に合わせた複数のコネクタ収納部42が形成されている。
【0048】
そして、筐体部材41に設けられたボルト等の締結部43により、図示していないが第2部材が固定して取り付けられるようになり、その第2接続ランドが図7に示した電気コネクタ30の第2接触部163b、363bに弾性接触するようになっている。これ等の第2接触部163b、363bは装置のメンテナンス作業以外は常時第2部材の第2接続ランドに接続している。
【0049】
そして、例えばインクカートリッジのような第1部材がインクカートリッジ収納部に装着される場合に、その筐体部材41において、第1部材の第1接続ランドが図7に示した電気コネクタ30の第1接触部163a、363aに弾性接触するようになる。なお、例えば第1部材がインクカートリッジの場合には、この電気コネクタ30により第1部材と第2部材の接続ランドが水平方向の電気接続し、例えばインクの残量情報やカートリッジの識別情報が第2部材を通してプリンタ装置の本体側に送信されるようになる。
【0050】
上述したように、電気コネクタ30においては、第1接触部163aは第2接触部363aよりもその絶縁ハウジング31の第1の主面12からの突出量が大きい。このために、第1部材の装着において、初めに第1接触部163がそれに対応する第1接続ランドに接続し、少し遅れて第1接触部363aがそれに対応する第1接続ランドに接続する。逆に、第1部材の脱着においては、初めに第1接触部363aがそれに対応する第1接続ランドから分離し、少し遅れて第1接触部163aがそれに対応する第1接続ランドから分離する。
【0051】
ここで、第2接触部163bが第2部材の接地電位に固定された第2接続ランドに接続していると、第1部材の上記着脱において、例えばユーザが第1部材を掴むことにより第1部材に帯電する静電気が容易に接地電位に除電される。このように、第1部材と第2部材の水平方向すなわち同じ面方向の電気接続において、その接続と分離が自在に繰り返される場合に、ユーザにより帯電する静電気の影響を皆無にすることができる。
【0052】
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明したのと同様の効果が奏される。また、本実施形態では、電気コネクタに弾性変位量の異なる2種類のコンタクトが混在しても、簡便な方法により、被接続部材間の電気接続においてそれ等の接続ランドへの弾性的な接触力を同じに揃えることができる。このようにして、本実施形態の電気コネクタでは、簡素な構造を保持して安定した接続が可能になる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形、変更を加えることが可能である。
【0054】
例えば、本発明の電気コネクタにおける絶縁ハウジングでは、突出部18、コンタクト係合部37、コンタクト位置決め部38のような一部の構成部分は、別々に成形され絶縁ハウジング本体に固定して取り付けられても構わない。ここで、コンタクト係合部37あるいはコンタクト位置決め部38は、第2コンタクト36を第2コンタクト収容室35内に取り付けた後に、例えば接着等により所定位置に接合させてもよい。
【0055】
また、コンタクト係合部37によるコンタクトの接触部の弾性変位量あるいはその接触部の接触力の調節は、電気コネクタ内の所望のコンタクトに対して適宜に行うことができる。
【0056】
またコンタクト収容室やコンタクトを直線のライン状パターンで説明したが、曲線状のライン、例えばコンタクトの連結部で第1の主面の面方向に所定角度に折り曲げるパターンに形成することもできる。この例では第1部材と第2部材の接続ランドの配列ピッチが異なる場合などに好適である。
【符号の説明】
【0057】
10,30…電気コネクタ、11,31…絶縁ハウジング、12…第1の主面、13…第2の主面、14…開口、15…第1コンタクト収容室、16…第1コンタクト、161,361…連結部、161a…突設部、162a,362a…第1弾性部、162b,362b…第2弾性部、163a,363a…第1接触部、163b,363b…第2接触部、164,364…突起部、17…コンタクト保持部、18…突出部、20…位置決め窪み部、21…第1部材、22…第1接続ランド(第1導体接続部)、23…第2部材,24…第2接続ランド(第2導体接続部)、25…コネクタホルダ、33…面取り部、34…拡幅開口、35…第2コンタクト収容室、36…第2コンタクト、37…コンタクト係合部、37a…係合部傾斜面、38…コンタクト位置決め部、38a…コンタクトガイド面、39…押圧ストッパ窪み部、41…筐体部材(コネクタホルダ)、42…コネクタ収納部、43…締結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1の主面と第2の主面のうち少なくとも第1の主面に開口を有するコンタクト収容室が複数に配列された絶縁ハウジングと、
弾性変形可能な第1弾性部とその先端につながる第1接触部、および弾性変形可能な第2弾性部とその先端につながる第2接触部、並びに前記第1弾性部および前記第2弾性部の基端を連結する連結部を有し前記コンタクト収容室のそれぞれに受容されるコンタクトと、を備え、
前記第1接触部および前記第2接触部が前記第1の主面の開口から突出しており、それぞれ、第1部材に形成された第1導体接続部および前記第1部材に並置される第2部材に形成された第2導体接続部に弾性的に接触することにより、前記コンタクトは前記第1部材および前記第2部材を前記第1の主面側で電気接続し、
前記連結部は、前記第1接触部および前記第2接触部が弾性変位する方向に前記絶縁ハウジングに圧入係合し保持されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記第1弾性部あるいは前記第2弾性部は、前記コネクタ収容室に設けられた係合部によって、前記第1接触部あるいは前記第2接触部の弾性変位量、あるいは前記第1導体接続部および前記第2導体接続部への弾性的な接触力を調節するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記コンタクト収容室がライン状であり、その中間にコンタクト保持部が形成され、前記コンタクト収容部に沿って配置された前記コンタクトの連結部を支持していることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記係合部は、前記開口の一部を塞ぐように前記開口の一側壁に取り付けられて、前記第1弾性部あるいは前記第2弾性部を前記第1の主面側から前記第2の主面側に加圧するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記開口の一部を塞ぐように前記開口の他側壁に取り付けられたコンタクト位置決め部によって、前記第1弾性部あるいは前記第2弾性部の先端部を位置決めすることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記係合部は、前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって前記開口を狭める傾斜面を有し、
前記コンタクト位置決め部は、前記開口の他側壁に前記第1の主面側から前記第2の主面側に向かって前記開口を狭めるように傾斜するガイド面を有し、
前記コンタクトを前記コンタクト収容室に装着する際に、前記係合部の前記傾斜面は前記第1弾性部あるいは前記第2弾性部を前記コンタクト収容室に案内し、前記ガイド面は前記第1接触部あるいは前記第2接触部を前記コンタクト収容室に案内するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記第1接触部あるいは前記第2接触部の弾性変位量が異なる複数のコンタクトが混在していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−30434(P2013−30434A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167402(P2011−167402)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】