説明

電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー

【課題】ワークハンガーのクリップ部を、液切れが良く、製品挟持機能に優れ、製品への通電効率に優れ、絶縁キャップによるシール効果に優れ、厚さの異なる製品に対しても各接点の接触効率を一定にできるようにする。
【解決手段】ワークハンガー1の各ワーククリップ4は、固定側接点7を持つ固定側挟持杆5と、前記固定側接点に対して閉じる方向に付勢された可動側接点8を持つ可動側挟持杆6とを備え、前記各挟持杆の下端部に液切れ溝部15を形成し、この液切れ溝部を間にして離間された二股部に各接点7,8を形成した。各接点は縦方向を短径に横方向を長径にした長円若しくは楕円形状に形成した。各接点は、固定側接点を垂直な平面形状に、可動側接点をアール状に突起した円弧面形状に形成した。各ワーククリップの下部側は各接点を除いて絶縁キャップ20で着脱自在に被嵌した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ処理されるプリント基板などの平板状ワークの上部を懸垂状態に挟持するクリップ部を有し、このクリップ部の製品挟持部を前記ワークへの通電用の接点として構成した電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーに係り、このワークハンガーのクリップ部の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ処理されるプリント基板などの平板状ワークの上部を懸垂状態に挟持するクリップ部を有し、このクリップ部の製品挟持部を前記ワークへの通電用の接点として構成した電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーについて、本出願人は実用新案登録第3085849号及び特許第3677488号のワークハンガーを提供した。本出願人が提供したクリップ式のワークハンガーは、メッキ液中に入れられてメッキ処理される平板状のワークを懸垂状態に支持し、電流を移送レールとして機能する陰極バーから前記ワークへ通電する電気メッキ装置におけるワークハンガーであり、このワークハンガーは、前記陰極バーに横移動自在に吊り下げ支持される支持機能と該陰極バーに導電的に接続される接触機能とを併せ持つ支持部材と、この支持部材の下部に該支持部材と一体的に構成されるか又は前記支持部材の下部に導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記ワークの横長辺の方向に沿って延ばされた横長基板と、この横長基板にそれぞれ取付けられ、前記ワークの上部を挟持し、該ワークを懸垂状態に吊り下げ支持する複数の挟持用クリップとから構成され、電流を前記陰極バーから前記支持部材、前記横長基板、前記挟持用クリップを経て、各挟持用クリップから前記ワークへ通電されるように前記ワークハンガーの前記各構成部分である前記支持部材、前記横長基板及び前記挟持用クリップを導電性材料で形成してあり、前記挟持用クリップは、上部を前記横長基板に導電的に接続されるように面接触状態に固着され下部に固定側接点を設けた固定側挟持杆と、この固定側挟持杆の中間部に軸ピンを介してその中間部を枢着された可動側挟持杆とを備え、この可動側挟持杆の下部に前記固定側接点と対向する可動側接点を設け、前記固定側挟持杆の上部側と前記可動側挟持杆の上部側の間にコイルバネなどの弾性部材を介装し、この弾性部材の弾力によって前記軸ピンを支点として前記可動側接点を前記固定側接点に対して閉じる方向に付勢してあり、前記固定側接点に対して閉じられた前記可動側接点との間で前記ワークの上部を挟持できるように構成したものである。
【0003】
そして、前記特許第3677488号のクリップ式のワークハンガーでは、前記可動側挟持杆の下部に可動側接点として機能する矩形の可動体を設け、この可動体の矩形の対向面(可動側接点)が支持軸を介して上下方向に回動するように形成した。これにより、可動体の矩形の対向面(可動側接点)を厚さの異なる平板状のワークに対して面接触されるようにした。
【0004】
また、前記実用新案登録第3085849号のワークハンガーでは、固定側接点と可動側接点を突起部の頂部面で形成し、図示した実施例ではこの各接点として機能する頂部面を円形に形成した。また前記特許第3677488号のワークハンガーでは、前記したように可動体の矩形の対向面を可動側接点とし、固定側接点を突起部の矩形の頂部面で形成した。
【0005】
また、前記特許第3677488号のクリップ式のワークハンガーでは、前記固定側挟持杆と成る板状部材の下方部を接点部位を残して切削し、この接点部位を突設された前記固定側接点として形成した。
【0006】
また、前記特許第3677488号のクリップ式のワークハンガーでは、取り替え可能なゴム製(好ましくはシリコンゴム)の絶縁キャップを設け、この絶縁キャップによって、ワークと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ着脱自在に被覆できるようにした。この絶縁キャップには、矩形状の接点のみ露出させる開口部を形成し、この開口部を囲む突縁部を接点の突出位置よりわずかに突出させて形成した。この取り替え可能な絶縁キャップは形状を異にする前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下部側形状に合うそれぞれ専用の絶縁キャップとしていた。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3085849号公報
【特許文献2】特許第3677488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記した従来のクリップ式のワークハンガーは、クリップ部のワーク挟持部に液切れや清掃に対処した工夫を施してないため、液中から搬出されたクリップ部に付着された液の液切れが悪く、特にクリップ部のワーク挟持部の液切れが悪く、このワーク挟持部に液が残留する弊害があった。このため液中から搬出されたクリップ部が前の液を付着させた状態で次位の異なる液中に搬入される弊害があった。また、アンロードにおいてワークを取り外されたクリップ部のエアー清掃やスポンジ清掃に際しても、特にクリップ部のワーク挟持部の清掃が困難であった。
【0009】
また、前記した従来のクリップ式のワークハンガーは、各接点を円形または矩形に形成していた。円形接点では、円形接点の面積を大きくすると、平板状ワーク(例えば方形な基板製品)に対する縦方向(高さ方向)の接点挟持範囲も広くなってしまい、方形な基板製品に対する接点による上部掴みしろ範囲が広くなってしまう欠点があった。この欠点は、方形な基板製品に対する接点による上部掴みしろ範囲は基板製品にはならないため、上部掴みしろ範囲が広くなってしまうと、縦方向(高さ方向)の製品範囲が狭くなってしまう弊害を意味する。また、矩形接点では、角部のある突起部の周壁を絶縁キャップで確実にシールするのが難しく、接点周りに隙間ができやすい弊害がった。この接点周りの隙間にメッキ塊が生成され付着される弊害があり、接点周りに付着したメッキ塊(例えば貝殻形状のメッキ塊)によって、各接点が接触不良となり、確実な通電が行われない弊害があった。
【0010】
また、前記した従来のクリップ式のワークハンガーは、平板状ワーク(例えば基板製品)の厚さの変更に対処するために、可動側挟持杆の下部に支持軸を介して上下方向に回動される矩形の可動体を設け、この可動体の矩形の対向面を可動側接点とした。しかし、回動される前記可動体と可動側挟持杆との一体性がないため通電効率が劣る弊害があった。また、可動側挟持杆に上下方向に回動される可動体を設けるにはクリップ部の製造コストを上げてしまう欠点があり、このクリップは一つのハンガーに複数必要で、さらにメッキ装置全体としては多数のハンガーを用意しなければならないため、装置全体の製造コストを高くしてしまう弊害があった。
【0011】
また、前記した従来のクリップ式のワークハンガーは、クリップ部の固定側接点を一品ずつ切削加工して形成しているため、その加工には熟練を要し、同一精度の固定側接点を切削加工するのは難しいものであった。
【0012】
また、前記した従来のクリップ式のワークハンガーは、取り替え可能な絶縁キャップとして、形状を異にする前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下部側形状に合う専用の絶縁キャップを用いていた。このため、専用の絶縁キャップを2種類成形しなければならず、絶縁キャップの製造コストを高くしてしまう問題があった。また、絶縁キャップの取り替え作業に際しても、固定側と可動側にそれぞれ専用の絶縁キャップを嵌めていく必要があり、取り替え作業を煩わしくする弊害があった。
【0013】
このような実情に鑑み、本発明の課題は、前記した従来技術の弊害をことごとく改善したクリップ式のワークハンガーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーは、移送レール(B)に横移動自在に支持される支持部(2)と、該支持部に一体的に接続された横長のクリップ取付け基板部(3)と、このクリップ取付け基板部に該基板部の横幅方向に所定の間隔をおいて取付けられた複数のワーククリップ(4)を備え、前記支持部、前記クリップ取付け基板部及び前記ワーククリップを導電材で形成し、前記ワーククリップでメッキ処理されるプリント基板などの平板状ワーク(W)の上部を懸垂状態に挟持すると共に、このワーククリップの挟持部位を前記平板状ワークへの通電用の接点として構成したのであり、前記ワーククリップ(4)を、前記クリップ取付け基板部に上部を導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記クリップ取付け基板部の下端より下部を下方に延ばされた固定側挟持杆(5)と、この固定側挟持杆の中間部に軸ピン(10)を介してその中間部を枢着された可動側挟持杆(6)とを備え、前記固定側挟持杆の下部に固定側接点(7)を突設し、前記可動側挟持杆の下部に前記固定側接点と対向する可動側接点(8)を突設し、前記固定側挟持杆の上部側と前記可動側挟持杆の上部側の間に圧縮コイルバネなどの弾性部材(11)を介装し、この弾性部材の弾力によって前記軸ピンを支点として前記可動側接点を前記固定側接点に向けた閉じる方向に付勢し、閉じられた前記固定側接点と前記可動側接点との間で前記平板状ワークの上部を懸垂状態に挟持できるように構成し、且つ前記平板状ワークと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側を各接点部位を除き非導電材の絶縁被覆部(20)で被覆して構成したものである。
【0015】
そして、本発明のクリップ式のワークハンガーは、前記した課題を解決するため、前記ワーククリップ(4)を次のように改良した。すなわち、前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下端部の横幅方向の中間位置に各挟持杆の下縁から縦方向(高さ方向)に切欠した液切れ溝部(15)をそれぞれ形成し、前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下端部に前記液切れ溝部を間にして横幅方向に離間した二股部(16,16)をそれぞれ形成し、この各二股部の各下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部(17,17)の対向する頂部面にて前記前記固定側接点(7)と前記可動側接点(8)をそれぞれ形成し、前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側を各接点部位を除き各二股部形状に合わせた前記絶縁被覆部(20)で被覆して構成した。そして、この前記絶縁被覆部(20)を、前記二股部に合わせてそれぞれ着脱自在に被嵌する二股被覆部(21,21)をもつ絶縁キャップ(20)で構成し、この二股被覆部をもつ絶縁キャップは、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で成形され、対向方向に向けて突設された前記接点部位を被覆しないための開口部(22)が形成され、この開口部の開口周縁部(23)は前記突起部の周壁を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌するように構成した。
【0016】
このように、本発明は、前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下端部に前記液切れ溝部(15)をそれぞれ形成し、この液切れ溝部(15)を間にして横幅方向に離間した二股部(16,16)をそれぞれ形成し、この二股部の下端部に横幅方向に離間した複数の接点をそれぞれ突設させたものである。液中から排出されたワーククリップに付着された液は前記液切れ溝部で早く除去され、液切れが良い。液中から搬出されたワーククリップが前の液を付着させた状態で次位の異なる液中に搬入するのを防ぐことができる。また、アンロードにおいてワークを取り外されたワーククリップへ向けてエアーを噴射し、ワーククリップを清掃する際も付着液は前記液切れ溝部(15)で早く除去され、液切れをスムーズに行える。しかも、ワーククリップの挟持部位を前記平板状ワークへの通電用の接点として構成し、各ワーククリップの接点を横幅方法に離間した二点接点したため、平板状ワークを挟持する機能及び通電効率を安定させることができる。
【0017】
また、本発明のクリップ式のワークハンガーは、前記した課題を解決するため、前記ワーククリップ(4)を次のように改良した。すなわち、前記固定側接点(7)と前記可動側接点(8)を、前記固定側挟持杆(5)と可動側挟持杆(6)の最下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部(17,17)の対向する頂部面にて形成し、この頂部面(前記各接点)を、縦方向(高さ方向)を短径とし、横方向(幅方向)を長径とした長円若しくは楕円形状に形成した。そして、前記絶縁被覆部(20)を、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で成形され、対向方向に向けて突設された長円若しくは楕円形状の前記接点部位を被覆しないための長円若しくは楕円形状の開口部(22)が形成され、この開口部の長円若しくは楕円形状の開口周縁部(23)は前記突起部(17)の周壁(楕円形状の円柱の周壁)を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌する絶縁キャップ(20)で構成した。
【0018】
このように、本発明は、前記ワーククリップでメッキ処理されるプリント基板などの平板状ワーク(W)の上部を懸垂状態に挟持すると共に、このワーククリップの挟持部位を前記平板状ワークへの通電用の接点として構成し、この各接点を各挟持杆の最下端部に形成し、且つ、各接点を、縦方向(高さ方向)を短径とし、横方向(幅方向)を長径とした長円若しくは楕円形状に形成した。このため、接点面積を比較的大きく形成できると共に、平板状ワーク(例えば方形な基板製品)に対する縦方向(高さ方向)の接点挟持範囲を比較的狭くすることができ、よって方形な基板製品に対する接点による上部掴みしろ範囲を比較的狭くすることができる。方形な基板製品に対する接点による上部掴みしろ範囲は基板製品にはならないため、この基板製品にならない接点による上部掴みしろ範囲をできるだけ狭くすることによって、製品範囲を縦方向(高さ方向)に比較的広くすることができる。しかも、接点を長円若しくは楕円形状に形成したことによって通電性にも優れている。
【0019】
さらに、各接点を長円若しくは楕円形状に形成し、この長円若しくは楕円形状の接点は、矩形接点のように角部がないため、形状的に絶縁キャップの開口周縁部で前記突起部の周壁(長円若しくは楕円形状の円柱の周壁)を密接的に被覆しやすく、絶縁キャップによるシール効果が高い。特に、矩形接点に比べてシール効果が高い。このように、接点周りのシール効果が高いため、接点周りの隙間の発生を防止でき、この接点周りの隙間にメッキ塊が生成され付着される弊害を解消でき、このメッキ塊の付着を元凶とした各接点の接触不良を防止できる。
【0020】
また、本発明のクリップ式のワークハンガーは、前記した課題を解決するため、前記ワーククリップ(4)を次のように改良した。すなわち、前記固定側接点(7)と前記可動側接点(8)を、前記固定側挟持杆(5)と可動側挟持杆(6)の最下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部(17,17)の対向する頂部面にて形成し、前記固定側接点(7)を垂直な平面形状の頂部面に、前記可動側接点(8)を前記固定側接点との対向方向にアール状に突起した円弧面形状の頂部面に形成した。そして、前記絶縁被覆部(20)を、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で成形され、対向方向に向けて突設された前記接点部位を被覆しないための開口部(22)が形成され、この開口部の開口周縁部(23)は前記突起部の周壁を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌する絶縁キャップ(20)で構成した。
【0021】
被処理物である平板状ワーク、例えばプリント基板には、0.1mm程度の薄板から2.6mm程度の厚板まである。本発明によれば、プリント基板の両面を垂直な平面形状に形成した前記固定側接点とアール状に突出した円弧面形状に形成した前記可動側接点で挟持するため、厚さの異なるプリント基板を懸垂状態に挟持する場合でも、これらの基板の基板面に対して、前記固定側接点を常に一定の接触効率で対接できることは勿論のこと、円弧面形状に形成した可動側接点も常に一定の接触効率で対接できる。よって、プリント基板の厚さの変化に対しても、固定側及び可動側の各接点の接触効率を常に一定にできる。しかも、係る課題を、製造コストを上げずに達成できる。
【0022】
また、本発明のクリップ式のワークハンガーは、前記ワーククリップの前記固定側挟持杆(5)と前記可動側挟持杆(6)を、ロストワックス法により各接点と一体的に鋳造形成したもので、例えばSUS系のステンレス鋼などの金属材料が好ましい。ロストワックス法により一体的に鋳造された各挟持杆の各接点は、高精度で且つその接点表面も滑らかに仕上げられる。
【0023】
また、本発明のクリップ式のワークハンガーは、前記ワーククリップの絶縁キャップ(20)で被覆される前記固定側挟持杆(5)と前記可動側挟持杆(6)の各下部側を実質的に左右対称をなす略同一形状に形成し、略同一形状に形成した前記各挟持杆の各下部側を前記開口周縁部(23)を含めて略同一形状に形成した前記絶縁キャップ(20)で着脱自在に被嵌できるようにした。
【0024】
これによって、一体成形の略同一形状の絶縁キャップを固定側にも可動側にも両用でき、絶縁キャップの製造コストをダウンさせることができ、絶縁キャップを各挟持杆に嵌める作業効率を向上させることができる。
【0025】
また、本発明のクリップ式のワークハンガーは、前記ワーククリップの絶縁キャップ(20)を、弾性、耐摩耗性、耐薬品性に優れたクロロプレンゴムで一体形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
よって、本発明に係る電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーによれば、液切れ溝部によって液切れをスムーズに行うことができ、しかも、各ワーククリップの接点を横幅方法に離間した二点接点したため、平板状ワークを挟持する機能及び通電効率を安定させることができる。
【0027】
また、本発明に係る電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーによれば、各接点を、各挟持杆の最下端部に形成し、且つ縦方向(高さ方向)を短径とし、横方向(幅方向)を長径とした長円若しくは楕円形状に形成したことによって、接点面積を比較的大きく形成できると共に、平板状ワーク(例えば方形な基板製品)に対する縦方向(高さ方向)の接点挟持範囲を比較的狭くすることができ、よって方形な基板製品に対する接点による上部掴みしろ範囲を比較的狭くすることができる。しかも、接点を長円若しくは楕円形状に形成したことによって通電性にも優れている。さらに、各接点を長円若しくは楕円形状に形成し、この長円若しくは楕円形状の接点は、矩形接点のように角部がないため、形状的に絶縁キャップの開口周縁部で前記突起部の周壁(長円若しくは楕円形状の円柱の周壁)を密接的に被覆しやすく、絶縁キャップによるシール効果が高い。このように、接点周りのシール効果が高いため、接点周りの隙間の発生を防止でき、この接点周りの隙間にメッキ塊が生成され付着される弊害を解消でき、このメッキ塊の付着を元凶とした各接点の接触不良を防止できる。
【0028】
また、本発明に係る電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーによれば、プリント基板の両面を垂直な平面形状に形成した前記固定側接点とアール状に突出した円弧面形状に形成した前記可動側接点で挟持するため、略平板状のワークを設定以外の厚さのワークに交換した場合でも、ワーク面に対する可動側接点の接触を常に一定にでき、接触効率を一定にできる。しかも、係る課題を、製造コストを上げずに達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図4は本発明の実施形態で、図1は正面図、図2は一部縦断側面図、図3はクリップ部の拡大側面図で、Aは薄板状ワークを挟持した閉止状態の拡大側面図、Bは全開状態の拡大側面図、図4はクリップ部の拡大分解正面図である。図5は本発明のクリップ部の他の実施形態の拡大分解正面図である。図6は図1〜図4及び図5の実施形態に共通する本発明の接点部分の拡大側面図である。
【0030】
なお、以下の説明において、特に図を限定してない実施形態の説明は、図1〜図4の実施形態、図5の実施形態に共通する。
【0031】
図中、符号1は電気メッキ装置において用いられるクリップ式のワークハンガーであり、このクリップ式のワークハンガー1は、メッキ液A中に入れられてメッキ処理されるプリント基板などの矩形の平板状ワークWを懸垂状態に吊持するもので、このワークハンガー1を介して電流を前記平板状ワークWへ通電するものである。このクリップ式のワークハンガー1は、移送レール(この実施例では移送レールを陰極レールとして機能させている。)Bに横移動自在に吊り下げ支持される支持機能と該移送レールBに導電的に接続される接触機能とを併せ持つ支持部2と、この支持部2の下部に一体的に接続されるように固定ボルトC1によって面接触状態に固着され、前記平板状ワークWの横長辺の方向に沿って延ばされた長方形状の横長のクリップ取付け基板部3と、このクリップ取付け基板部3に該基板部3の横幅方向に所定の間隔をおいて取付けられ、前記平板状ワークWの上部を挟持し、該平板状ワークWを懸垂状態に吊り下げ支持する複数(図では4個)のワーククリップ4を備えている。前記前記ワークハンガー1の前記各構成部分(前記支持部2、前記クリップ取付け基板部3及び前記ワーククリップ4)は導電材で形成される。具体的には電導度や引張り強さを考慮して、前記支持部2と前記ワーククリップ4はステンレス鋼、前記クリップ取付け基板部3は銅又は黄銅で形成している。前記移送レールを陰極レールとして機能させた場合は、電流を前記移送レールBから前記支持部2、前記クリップ取付け基板部3、前記ワーククリップ4を経て、各ワーククリップ4の挟持部位から前記ワークWへ通電させるようにしている。
【0032】
前記ワーククリップ4は、前記クリップ取付け基板部3に上部を導電的に接続されるように面接触状態に固定ボルトC2によって固着され、前記クリップ取付け基板部3の下端より下部を下方に延ばされた固定側挟持杆5と、この固定側挟持杆5の中間部に固着されたブラケット9に軸ピン10を介してその中間部を枢着された可動側挟持杆6とを備え、前記固定側挟持杆5の下端部に固定側接点7を突設し、前記可動側挟持杆6の下端部に前記固定側接点7と対向する可動側接点8を突設してある。更に、前記固定側挟持杆5の上部側と前記可動側挟持杆6の上部側の間に圧縮コイルバネから成る弾性部材11を介装し、この弾性部材(圧縮コイルバネ)11の弾力によって前記軸ピン10を支点として前記可動側接点8を前記固定側接点7に対して閉じる方向に付勢し、図3(A)のように、閉じられた前記固定側接点7と前記可動側接点8との間で前記平板状ワークWの上部を懸垂状態に挟持できるように構成してある。前記弾性部材(圧縮コイルバネ)11の弾力に抵抗して前記可動側挟持杆6の上部側を前記固定側挟持杆5の上部側に向けて図3(B)の矢印方向へ押圧すれば、前記可動側接点8は前記固定側接点7から離れる方向に移動され、図3(B)のように各接点は開放される。さらに、メッキ処理される前記平板状ワークWと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側は各接点部位を除き非導電材の絶縁被覆部20で被覆される。この絶縁被覆部20として、この実施形態では着脱自在な絶縁キャップ(後で述べる)を用いている。なお、前記ワーククリップ4に対する前記平板状ワークWの装着又は脱着に際して、複数の各ワーククリップ4の各可動側挟持杆6の上部側を前記弾性部材(圧縮コイルバネ)11の弾力に抵抗して同時に押圧して行うが、この押圧は図示しない機械的な強制力を用いて行われる。
【0033】
図1〜図4に示した実施形態では、前記固定側挟持杆5と可動側挟持杆6の各下端部の横幅方向の中間位置に、各挟持杆5,6の下縁から縦方向(高さ方向)に切欠した逆U字状の液切れ溝部15をそれぞれ形成し、前記固定側挟持杆5と可動側挟持杆6の各下端部に前記液切れ溝部15を間にして横幅方向に離間した二股部16,16をそれぞれ形成した。この各二股部16,16の各下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部17,17の対向する頂部面を前記固定側接点7と前記可動側接点8として形成した。前記したように、メッキ処理される前記平板状ワークWと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側は各接点部位を除き各二股部16,16形状に合わせた前記絶縁被覆部20で被覆される。
【0034】
前記絶縁被覆部20として実施例では、前記二股部16,16に合わせてそれぞれ着脱自在に被嵌する二股被覆部21,21をもつ絶縁キャップ20を用いている。この二股被覆部21,21をもつ絶縁キャップ20は、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂(好ましくは、弾力性、耐摩耗性、耐薬品性に特に優れたクロロプレンゴム。)で一体成形され、対向方向に向けて突設された前記接点部位を被覆しないための開口部22,22が形成され、この開口部22,22の開口周縁部23,23は前記突起部17,17の周壁を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部22,22によって被覆されない接点部位(前記突起部の頂部面)を除いて前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌できるように構成してある。
【0035】
図1〜図4に示した実施形態のワーククリップ4では、前記液切れ溝部15によって液切れをスムーズに行うことができ、しかも、各ワーククリップ4の接点7,8を横幅方法に離間した二点接点したため、平板状ワークWを挟持する機能及び通電効率を安定させることができる。
【0036】
図5に示したクリップ部の他の実施形態は、前記液切れ溝部15を形成しない構成で、その他の構成は図1〜図4の実施形態で示したワーククリップ4の構成と実質的に同じである。よって、図5に示した図4の符号と同じ符号の説明は共通するため、その説明は省略する。なお、図5の実施形態では、各接点7,8を2個ずつ横幅方向に離間して突出形成したが、これに限定されずに例えば横幅方向の中心位置に1個ずつ突出形成したものも実施可能である。
【0037】
また、図1〜図4及び図5の実施形態に示した前記ワーククリップ4は、前記固定側接点7と前記可動側接点8を、前記固定側挟持杆5と可動側挟持杆6の最下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部17,17の対向する頂部面にて形成し、この頂部面(前記各接点)を、縦方向(高さ方向)を短径とし、横方向(幅方向)を長径とした長円形状(若しくは楕円形状)に形成してある。そして、前記絶縁キャップ20は、対向方向に向けて突設された長円形状(若しくは楕円形状)の前記接点部位を被覆しないための長円形状(若しくは楕円形状)の開口部22が形成され、この開口部22の長円形状(若しくは楕円形状)の開口周縁部23は、前記突起部17の周壁(長円若しくは楕円形状の円柱の周壁)を密接的に被覆し、且つ図6で明瞭に示したように前記接点7,8の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部22によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌できるように構成してある。
【0038】
前記絶縁キャップ20は、前記したように、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で、好ましくは、弾力性、耐摩耗性、耐薬品性に特に優れたクロロプレンゴムで一体成形され、このクロロプレンゴム製の絶縁キャップ20に前記開口部22を囲む突縁状の開口周縁部23を一体的に形成してある。前記開口周縁部23は、前記したように、前記突起部17の周壁(長円若しくは楕円形状の円柱の周壁)を密接的に被覆し、且つ図6で明瞭に示したように前記接点7,8の突設位置よりわずかに突出させて形成してあるが、各接点7,8を開けた開放状態では各接点7,8より突出された状態にあり、各接点7,8を閉じた状態では前記平板状ワークWを挟んで各接点7,8が圧接されるように変形される。このようにして、前記ワークWと共にメッキ液A中に入れられる前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側は、各接点7,8を除いて前記絶縁キャップ20によってメッキ液Aから確実に隔絶され確実に絶縁される。また、クロロプレンゴム製の前記絶縁キャップ20は、特に優れた弾力性を有しているため、その装脱着に際しては、各接点7,8の突出形態に対応して容易に変形され、各挟持杆5,6への装着あるいは脱着が容易であり、絶縁キャップの取り替え作業が容易である。
【0039】
さらに、各接点7,8を長円若しくは楕円形状に形成し、この長円若しくは楕円形状の接点は、矩形接点のように角部がないため、形状的に前記絶縁キャップ20の開口周縁部23で前記突起部17の周壁(長円若しくは楕円形状の円柱の周壁)を密接的に被覆しやすく、絶縁キャップ20によるシール効果が高い。特に、矩形接点に比べてシール効果が高い。このように、接点周りのシール効果が高いため、接点周りの隙間の発生を防止でき、この接点周りの隙間にメッキ塊が生成され付着される弊害を解消でき、このメッキ塊の付着を元凶とした各接点の接触不良を防止できる。
【0040】
また、図1〜図4及び図5の実施形態に示した前記ワーククリップ4は、前記固定側接点7と前記可動側接点8を、前記固定側挟持杆5と可動側挟持杆6の最下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部17,17の対向する頂部面にて形成し、図6で明瞭に示したように、前記固定側接点7を垂直な平面形状の頂部面(図6の符号Xで示した仮想垂直線に沿う)に、前記可動側接点8を前記固定側接点7との対向方向にアール状に突起した円弧面形状の頂部面に形成してある。これによって、厚さの異なるプリント基板を懸垂状態に挟持する場合でも、これらの基板の基板面に対して、垂直な平面形状の頂部面から成る前記固定側接点7を常に一定の接触効率で対接できることは勿論のこと、前記軸ピン10を支点として可動される可動側接点8も円弧面形状の頂部面にて形成されているため、常に一定の接触効率で対接できる。よって、プリント基板の厚さの変化に対しても、固定側及び可動側の各接点7,8の接触効率を常に一定にできる。
【0041】
また、前記ワーククリップ4の前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6を、公知のロストワックス法により各接点と一体的に鋳造形成し、SUS系のステンレス鋼で形成してある。ロストワックス法により一体的に鋳造された各挟持杆の各接点は、高精度で且つその接点表面も滑らかに仕上げられる。
【0042】
また、図2〜図6に示したように、前記絶縁キャップ20で被覆される前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側を実質的に左右対称をなす略同一形状に形成した。前記各挟持杆5,6の各下部側を略同一形状に形成したことによって、同一形状の一種類の絶縁キャップ20を固定側にも可動側にも両用できるようにした。絶縁キャップを両用できるようにしたことによって、絶縁キャップの製造コストをダウンさせることができ、絶縁キャップを各挟持杆に嵌める作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の正面図である。
【図2】本発明の一部縦断側面図である。
【図3】本発明のクリップ部の拡大側面図で、Aは薄板状ワークを挟持した閉止状態の拡大側面図を、Bは全開状態の拡大側面図である。
【図4】本発明のクリップ部の拡大分解正面図である。
【図5】本発明のクリップ部の他の実施形態の拡大分解正面図である。
【図6】本発明の接点部分の拡大側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ワークハンガー
W 平板状ワーク
A メッキ液
B 移送レール(陰極バー)
2 支持部
3 クリップ取付け基板部
4 ワーククリップ
5 固定側挟持杆
6 可動側挟持杆
7 固定側接点
8 可動側接点
9 ブラケット
10 軸ピン
11 弾性部材(圧縮コイルバネ)
15 液切れ溝部
16,16 二股部
17,17 突起部
20 絶縁被覆部(絶縁キャップ)
21,21 二股被覆部
22,22 開口部
23,23 開口周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送レールに横移動自在に支持される支持部(2)と、該支持部に一体的に接続された横長のクリップ取付け基板部(3)と、このクリップ取付け基板部に該基板部の横幅方向に所定の間隔をおいて取付けられた複数のワーククリップ(4)を備え、前記支持部、前記クリップ取付け基板部及び前記ワーククリップを導電材で形成し、前記ワーククリップでメッキ処理されるプリント基板などの平板状ワーク(W)の上部を懸垂状態に挟持すると共に、このワーククリップの挟持部位を前記平板状ワークへの通電用の接点として構成した電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー(1)において、前記ワーククリップ(4)を、前記クリップ取付け基板部に上部を導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記クリップ取付け基板部の下端より下部を下方に延ばされた固定側挟持杆(5)と、この固定側挟持杆の中間部に軸ピン(10)を介してその中間部を枢着された可動側挟持杆(6)とを備え、前記固定側挟持杆の下部に固定側接点(7)を突設し、前記可動側挟持杆の下部に前記固定側接点と対向する可動側接点(8)を突設し、前記固定側挟持杆の上部側と前記可動側挟持杆の上部側の間に圧縮コイルバネなどの弾性部材(11)を介装し、この弾性部材の弾力によって前記軸ピンを支点として前記可動側接点を前記固定側接点に向けた閉じる方向に付勢し、閉じられた前記固定側接点と前記可動側接点との間で前記平板状ワークの上部を懸垂状態に挟持できるように構成し、且つ前記平板状ワークと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側を各接点部位を除き非導電材の絶縁被覆部(20)で被覆して構成したものにおいて、
前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下端部の横幅方向の中間位置に各挟持杆の下縁から縦方向に切欠した液切れ溝部(15)をそれぞれ形成し、前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の各下端部に前記液切れ溝部を間にして横幅方向に離間した二股部(16,16)をそれぞれ形成し、この各二股部の各下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部(17,17)の対向する頂部面にて前記前記固定側接点(7)と前記可動側接点(8)をそれぞれ形成し、前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側を各接点部位を除き各二股部形状に合わせた前記絶縁被覆部(20)で被覆して構成したことを特徴とする電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項2】
移送レールに横移動自在に支持される支持部(2)と、該支持部に一体的に接続された横長のクリップ取付け基板部(3)と、このクリップ取付け基板部に該基板部の横幅方向に所定の間隔をおいて取付けられた複数のワーククリップ(4)を備え、前記支持部、前記クリップ取付け基板部及び前記ワーククリップを導電材で形成し、前記ワーククリップでメッキ処理されるプリント基板などの平板状ワーク(W)の上部を懸垂状態に挟持すると共に、このワーククリップの挟持部位を前記平板状ワークへの通電用の接点として構成した電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー(1)において、前記ワーククリップ(4)を、前記クリップ取付け基板部に上部を導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記クリップ取付け基板部の下端より下部を下方に延ばされた固定側挟持杆(5)と、この固定側挟持杆の中間部に軸ピン(10)を介してその中間部を枢着された可動側挟持杆(6)とを備え、前記固定側挟持杆の下部に固定側接点(7)を突設し、前記可動側挟持杆の下部に前記固定側接点と対向する可動側接点(8)を突設し、前記固定側挟持杆の上部側と前記可動側挟持杆の上部側の間に圧縮コイルバネなどの弾性部材(11)を介装し、この弾性部材の弾力によって前記軸ピンを支点として前記可動側接点を前記固定側接点に向けた閉じる方向に付勢し、閉じられた前記固定側接点と前記可動側接点との間で前記平板状ワークの上部を懸垂状態に挟持できるように構成し、且つ前記平板状ワークと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側を各接点部位を除き非導電材の絶縁被覆部(20)で被覆して構成したものにおいて、
前記固定側接点(7)と前記可動側接点(8)を、前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の最下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部(17,17)の対向する頂部面にて形成し、この頂部面にて形成された前記各接点を、縦方向を短径とし、横方向を長径とした長円若しくは楕円形状に形成したことを特徴とする電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項3】
移送レールに横移動自在に支持される支持部(2)と、該支持部に一体的に接続された横長のクリップ取付け基板部(3)と、このクリップ取付け基板部に該基板部の横幅方向に所定の間隔をおいて取付けられた複数のワーククリップ(4)を備え、前記支持部、前記クリップ取付け基板部及び前記ワーククリップを導電材で形成し、前記ワーククリップでメッキ処理されるプリント基板などの平板状ワーク(W)の上部を懸垂状態に挟持すると共に、このワーククリップの挟持部位を前記平板状ワークへの通電用の接点として構成した電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー(1)において、前記ワーククリップ(4)を、前記クリップ取付け基板部に上部を導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記クリップ取付け基板部の下端より下部を下方に延ばされた固定側挟持杆(5)と、この固定側挟持杆の中間部に軸ピン(10)を介してその中間部を枢着された可動側挟持杆(6)とを備え、前記固定側挟持杆の下部に固定側接点(7)を突設し、前記可動側挟持杆の下部に前記固定側接点と対向する可動側接点(8)を突設し、前記固定側挟持杆の上部側と前記可動側挟持杆の上部側の間に圧縮コイルバネなどの弾性部材(11)を介装し、この弾性部材の弾力によって前記軸ピンを支点として前記可動側接点を前記固定側接点に向けた閉じる方向に付勢し、閉じられた前記固定側接点と前記可動側接点との間で前記平板状ワークの上部を懸垂状態に挟持できるように構成し、且つ前記平板状ワークと共にメッキ液中に入れられる前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側を各接点部位を除き非導電材の絶縁被覆部(20)で被覆して構成したものにおいて、
前記固定側接点(7)と前記可動側接点(8)を、前記固定側挟持杆と可動側挟持杆の最下端部からそれぞれ対向方向に突出された突起部(17,17)の対向する頂部面にて形成し、前記固定側接点を垂直な平面形状の頂部面に、前記可動側接点を前記固定側接点との対向方向にアール状に突起した円弧面形状の頂部面に形成したことを特徴とする電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項4】
前記固定側挟持杆(5)と前記可動側挟持杆(6)は、ロストワックス法により各接点と一体的に鋳造したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項5】
前記絶縁被覆部(20)を、前記二股部(16,16)に合わせてそれぞれ着脱自在に被嵌する二股被覆部(21,21)をもつ絶縁キャップ(20)で構成し、この二股被覆部をもつ絶縁キャップは、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で成形され、対向方向に向けて突設された前記接点部位を被覆しないための開口部(22)が形成され、この開口部の開口周縁部(23)は前記突起部の周壁を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項6】
前記絶縁被覆部(20)を、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で成形され、対向方向に向けて突設された長円若しくは楕円形状の前記接点部位を被覆しないための長円若しくは楕円形状の開口部(22)が形成され、この開口部の長円若しくは楕円形状の開口周縁部(23)は前記突起部の周壁を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌する絶縁キャップ(20)で構成したことを特徴とする請求項2に記載の電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項7】
前記絶縁被覆部(20)を、耐薬品性及び弾力性を有する絶縁性のゴム系樹脂で成形され、対向方向に向けて突設された前記接点部位を被覆しないための開口部(22)が形成され、この開口部の開口周縁部(23)は前記突起部の周壁を密接的に被覆し且つ前記接点の突設位置よりわずかに突出させて形成し、前記開口部によって被覆されない接点部位を除いて前記固定側挟持杆と前記可動側挟持杆の各下部側をそれぞれ下方より着脱自在に被嵌する絶縁キャップ(20)で構成したことを特徴とする請求項3に記載の電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項8】
絶縁キャップ(20)で被覆される前記固定側挟持杆(5)と前記可動側挟持杆(6)の各下部側を実質的に左右対称をなす略同一形状に形成し、略同一形状に形成した前記各挟持杆の各下部側を前記開口周縁部(23)を含めて略同一形状に形成した前記絶縁キャップ(20)で着脱自在に被嵌できるようにしたことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。
【請求項9】
前記ゴム系樹脂はクロロプレンゴムである請求項5から7のいずれかに記載の電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−321242(P2007−321242A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156683(P2006−156683)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(592141466)丸仲工業株式会社 (15)