説明

電気二重層キャパシタの処理方法および処理装置

【課題】環境に優しく処理することができる電気二重層キャパシタの処理方法を提供する。
【解決手段】内部に有機系電解液を含有するキャパシタ本体が外装品で覆われた電気二重層キャパシタを処理する電気二重層キャパシタの処理方法であって、前記外装品内から前記キャパシタ本体を取り出す前処理工程と、前記工程に引き続いて、前記キャパシタ本体を150〜200℃、且つ、200hPa以下の環境下で所定時間処理することで、内部から前記有機系電解液を取り除く電解液除去工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタの処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタと呼称する)は、分極性電極の界面に形成される電気二重層を利用することによりエネルギーを貯蔵するデバイスである。その構成はイオンのみを透過可能なセパレータを介して、一対の電極および集電極(導電性基材)を配置した構成を基本としている。これら電極間には電解液と呼ばれる液体が満たされている。キャパシタは、その構造において二つに大別される。一つは、前記基本構成における電極やセパレータを帯状とし、これらを巻き取って筒状の容器に収納したものであって、巻回式キャパシタである。もう一つは、前記基本構成を平板状とし、これらを複数積層したものであって、バイポーラ積層キャパシタである。また、前記基本構成を複数積層したものにおいて1つおきの集電極、すなわち隣接しない集電極を同一端子としてまとめたものがモノポーラ積層キャパシタに相当する。なお、積層キャパシタでは、前記基本構成の外気との接触を避けるために外装品で覆われている。
【0003】
このようにキャパシタにはその構造により多数の種類が存在するが、これらのキャパシタの基本構成は全く同じであって、電極とセパレータと集電極とを備え、電解液を内部に含有した構成となっている。
【0004】
キャパシタの容量を向上させるため、上記基本構成の電極として、比表面積が大きくかつ安価な活性炭をベースとし、導電助剤となるカーボンブラックと、バインダーとなるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との2物質を混合してなる混合物をシート状にしたものやこの混合物を集電極に塗布したものが用いられている。
【0005】
上記基本構成のセパレータの原料としては、電極同士をセパレートしてイオンのみを透過できるようなセルロース系のものや高分子炭化水素系のものが用いられている。
【0006】
上記基本構成の電解液に関し、キャパシタの容量をC[F]、キャパシタにかかる電圧をV[V]とすると、キャパシタに貯蔵されるエネルギー量は0.5とCとVとVの乗算(0.5×C×V×V)で表される。一般に、上記基本構成の電解液として希硫酸などの水を溶媒とした電解液を使用すると、前記電圧Vとして1.2V程度しかかけることができない。前記電圧Vが前記電圧値(1.2V)よりも大きくなると、水の電気分解が起こり水素ガスおよび酸素ガスが生成する。これらガスに起因して性能の低下や構造の変形を引き起こしてしまう。一方、上記基本構成の電解液として有機溶剤を溶媒とした電解液を使用すると、前記電圧Vとして2.5V程度かけることができる。これは、水を溶媒とした場合のおよそ2倍にあたり、キャパシタに貯蔵するエネルギー量では、およそ4倍にあたる。
【0007】
このため、上記基本構成の電解液として、有機系溶剤を溶媒とした電解液(以下、有機系電解液と呼称する)を用いるのが一般的である。
【0008】
上記の有機系電解液として、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどを単体もしくはこれらを混合したものが用いられている。これら有機系電解液のほとんどは、その取扱いが規制されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−242034号公報(段落[0022]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のキャパシタには重金属が全く含まれていない。そのため、キャパシタは鉛蓄電池と比較して環境に優しい蓄電体といわれている。しかしながら、不要となった使用済みキャパシタの廃棄処理として、一般廃棄物と同様に処理することが一般的であった。このように使用済みキャパシタを処理することができるものの、環境に対し低負荷で、言い換えると、環境に優しく処理することが求められていた。
【0011】
従って、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、環境に優しく処理することができる電気二重層キャパシタの処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決する本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法は、内部に有機系電解液を含有するキャパシタ本体が外装品で覆われた電気二重層キャパシタを処理する電気二重層キャパシタの処理方法であって、前記外装品内から前記キャパシタ本体を取り出す前処理工程と、前記工程に引き続いて、前記キャパシタ本体を150〜200℃、且つ、200hPa以下の環境下で所定時間処理することにより、内部から前記有機系電解液を取り除く電解液除去工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、前述した課題を解決する本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法は、上述した電気二重層キャパシタの処理方法であって、前記所定時間が2時間以上6時間以下であることを特徴とする。
【0014】
前述した課題を解決する本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法は、内部に有機系電解液を含有する電極を備えるキャパシタ本体が外装品で覆われた電気二重層キャパシタを処理する電気二重層キャパシタの処理方法であって、前記外装品内から前記キャパシタ本体を取り出し、当該キャパシタ本体内から前記電極を取り出す前処理工程と、前記工程に引き続いて、前記電極を60〜200℃、且つ、200hPa以下の環境下で所定時間処理することで、内部から前記有機系電解液を取り除く電解液除去工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、前述した課題を解決する本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法は、上述した電気二重層キャパシタの処理方法であって、前記所定時間が2時間以上であることを特徴とする。
【0016】
前述した課題を解決する本発明に係る電気二重層キャパシタの処理装置は、上述した電気二重層キャパシタの処理方法で用いられる電気二重層キャパシタの処理装置であって、炉内を加熱する加熱手段を備える真空炉と、前記真空炉に連結して設けられ、当該真空炉内を真空排気する真空排気手段と、前記真空炉と前記真空排気手段の間に設けられ、炉内を冷却する冷却手段を備える液化炉と、前記加熱手段を制御して、前記真空炉内の温度を調整する真空炉内温度制御手段と、前記真空排気手段を制御して、前記真空炉内の圧力を調整する真空炉内圧力制御手段と、前記冷却手段を制御して、前記液化炉内の温度を調整する液化炉内温度制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法によれば、電気二重層キャパシタ内から有機系電解液を取り除くことができ、環境に優しく処理することができる。
【0018】
本発明に係る電気二重層キャパシタの処理装置によれば、電気二重層キャパシタ内から有機系電解液を取り除くことができる。さらに、真空炉と真空排気手段の間に液化炉を配置したことにより、液化炉内にて気体の有機系電解液を液化することができ、当該気体の有機系電解液の前記真空排気手段への流入を防ぐことができる。これにより、電気二重層キャパシタを環境に優しく処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電気二重層キャパシタの処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法による試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法による試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法および処理装置について、各実施形態にて説明する。
【0021】
[第一番目の実施形態]
本発明の第一番目の実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、以下に説明する。
本実施形態では、キャパシタ本体内部の有機系電解液の処理に適用した場合について説明する。
【0022】
本実施形態では、セパレータを介して配置された一対の電極および集電極を備え、内部に有機系電解液を含有したキャパシタ本体が外装品で覆われた電気二重層キャパシタを処理する場合について説明する。
なお、前記電極の原料としては、例えば、500m2/g〜3000m2/gの比表面積をもつ活性炭をベースとし、導電助剤としてのカーボンブラックと、バインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の2物質の混合物をシート状にしたもの、または、この混合物を集電極に塗布したものが挙げられる。前記有機系電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどを単体もしくはこれらを混合したものが用いられる。
【0023】
まず、電気二重層キャパシタの外装品内からキャパシタ本体を取り出す(前処理工程)。これにより、キャパシタ本体が外気に曝された状態になる。例えば、電気二重層キャパシタが積層型である場合には、外装品である外装フィルムを取り外す。電気二重層キャパシタが巻回型である場合には、外装品である円筒状の容器を取り外す。
【0024】
続いて、前処理工程により得られたキャパシタ本体を、所定の温度(第1の処理温度)、且つ、所定の圧力の環境下にて、所定時間処理した(電解液除去工程)。
【0025】
前記所定の温度としては、有機系電解液の溶媒の沸点よりも高い温度範囲であって、例えば150〜200℃が挙げられる。これにより、有機系電解液の溶媒を気化させることができる。処理温度が150℃よりも低いと、キャパシタ本体の内部の有機系電解液が気化せず、これを確実に取り除くことができないためである。他方、処理温度が200℃よりも高いと、上記の電極が上記のPTFEを含有する場合に、このPTFEの変質点である230℃を超え、電極が変質してしまう可能性があるためである。
【0026】
前記所定の圧力としては、例えば200hPa以下が挙げられる。200hPa以下で処理することにより、電極に用いられる活性炭が所定の比表面積、例えば、500m2/g〜3000m2/gであっても、有機系電解液の溶媒を活性炭の細孔内部から排出させることができる。この処理圧力が前記圧力値(200hPa)よりも高いと、有機系電解液を活性炭の細孔内部から確実に排出させることができないためである。
【0027】
前記所定時間としては、例えば、2時間〜6時間の範囲が挙げられる。2時間よりも処理時間が短いと、キャパシタ本体の内部の有機系電解液を確実に取り除くことができないためである。他方、6時間よりも処理時間が長いと、処理コスト増を招くためである。
【0028】
このように、上記の電気二重層キャパシタに対し前処理工程を実施した後に、電解液除去工程を実施することにより、キャパシタ本体の内部の有機系電解液を取り除くことができる。これにより、キャパシタ本体は、取扱いが規制されないもので構成されることになる。すなわち、ただ単に焼却処理するのではなく、取扱いが規制されているものを分別できる。さらには、分別したそれぞれを適正に処理できる。よって、従来の一般廃棄物と同様に処理した場合と比べ、環境に優しく処理することができる。
【0029】
[第二番目の実施形態]
本発明の第二番目の実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、以下に説明する。
本実施形態では、電極内部の有機系電解液の処理に適用した場合について説明する。
なお、本実施形態では、上述した第一番目の実施形態の場合と同様の原料からなる電極および有機系電解液が用いられる。
【0030】
まず、電気二重層キャパシタの外装品内からキャパシタ本体を取り出し、さらに、キャパシタ本体内から電極を取り出す(前処理工程)。これにより、電極が外気に曝された状態になる。
【0031】
続いて、前処理工程により得られた電極を、所定の温度(第2の処理温度)、且つ、所定の圧力の環境下にて、所定時間処理した(電解液除去工程)。
【0032】
前記所定の温度としては、有機系電解液の溶媒の沸点よりも高い温度範囲であって、例えば60〜200℃が挙げられる。これにより、有機系電解液の溶媒を気化させることができる。処理温度が60℃よりも低いと、電極の内部の有機系電解液が気化せず、これを確実に取り除くことができないためである。他方、処理温度が200℃よりも高いと上記の電極が上記のPTFEを含有する場合に、このPTFEの変質点である230℃を超え、電極が変質してしまう可能性があるためである。
【0033】
前記所定の圧力としては、例えば200hPa以下が挙げられる。200hPa以下で処理することにより、電極に用いられる活性炭が所定の比表面積、例えば、500m2/g〜3000m2/gであっても、有機系電解液の溶媒を活性炭の細孔内部から排出させることができる。この処理圧力が前記圧力値(200hPa)よりも高いと、有機系電解液を活性炭の細孔内部から確実に排出させることができないためである。
【0034】
前記所定時間としては、2時間以上が挙げられる。2時間よりも処理時間が短いと、電極の内部の有機系電解液を確実に取り除くことができないためである。
【0035】
このように、上記の電極に対し前処理工程を実施した後に、電解液除去工程を実施することにより、電極の内部の有機系電解液を取り除くことができる。これにより、電極は、取扱いが規制されてないもので構成されることになる。すなわち、ただ単に焼却処理するのではなく、取扱いが規制されているものを分別できる。さらには、分別したそれぞれを適正に処理できる。よって、従来の一般廃棄物と同様の処理した場合と比べ、環境に優しく処理することができる。
【0036】
[第三番目の実施形態]
本発明の第三番目の実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理装置について、以下に説明する。
本実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理装置は、上述した第一番目および第二番目の実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理方法で用いられる処理装置であって、例えば、キャパシタ本体の内部から有機系電解液を取り除く処理、電極の内部から有機系電解液を取り除く処理を実施するために用いられる装置である。
【0037】
本実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理装置は、図1に示すように、真空炉(真空チャンバー)1と冷却トラップ(液化炉)2と真空ポンプ(真空排気手段)3とを備える。
【0038】
真空炉1は、炉内を加熱する加熱手段である加熱器(図示せず)を備える。この加熱器には、当該加熱器を制御して、真空炉1内の温度を、例えば、上記の第1の処理温度、または上記の第2の処理温度に調整可能な真空炉内温度制御手段である真空炉内温度調整装置(図示せず)が設けられる。真空炉1には配管12が連通して設けられる。配管12の途中には真空引き用バルブ5が設けられる。真空炉1には配管11が連通して設けられる。配管11の途中にはリーク用弁4が設けられる。リーク用弁4を開状態にすることで、真空炉1内を大気開放することができるようになっている。
【0039】
冷却トラップ2は、配管12に連通して設けられる。冷却トラップ2は、炉内を冷却する冷却手段である冷却器(図示せず)を備える。この冷却器には、当該冷却器を制御して、冷却トラップ2内の温度を、例えば、上記の有機系電解液が液化する温度以下に調整可能な液化炉内温度制御手段である冷却トラップ内温度調整装置(図示せず)が設けられる。冷却トラップ2には配管13が連通して設けられる。
【0040】
真空ポンプ3は、配管13に連通して設けられる。真空ポンプ3は、真空炉1内を真空排気する機器である。真空ポンプ3には、当該真空ポンプ3を制御して、真空炉1内の圧力を、例えば、200hPa以下に調整する真空炉内圧力制御手段である真空炉内圧力制御装置(図示せず)が設けられる。配管13の途中には真空引き用バルブ6が設けられる。
【0041】
すなわち、上述した処理装置においては、真空ポンプ3は、配管12、冷却トラップ2、配管13を介して真空炉1に連結されることになる。冷却トラップ2が真空炉1と真空ポンプ3の間に設けられることになる。
【0042】
上述した処理装置を用いて、電気二重層キャパシタが備える電極を処理する場合について、以下に説明する。なお、処理装置において、バルブ4〜6を制御することで、リーク用バルブ4が閉状態に、真空引き用バルブ5,6が閉状態に調整される。上記の冷却トラップ内温度調整装置が上記の冷却器を制御して、冷却トラップ2内の温度が上記の有機系電解液が液化する温度以下に調整される。
【0043】
まず、電気二重層キャパシタの外装品を取り外して、当該外装品内からキャパシタ本体を取り出し、さらにキャパシタ本体内から電極を取り出しておく。
【0044】
続いて、上記の電極を真空炉1内に配置し、上記の真空炉内温度調整装置が上記の加熱器を制御すると共に、真空炉内圧力制御装置が真空ポンプ3を制御する。これにより、真空炉1内が加熱され、内部の温度が漸増していき上記の第2の処理温度に調整される。また、真空炉1内が真空排気されて、内部が真空状態、例えば200hPa以下に調整される。つまり、電極が真空炉1内にて、第2の処理温度で、且つ高圧状態にて処理されることになる。このとき、電極に含有される有機系電解液の溶媒が気化し、気体の溶媒が配管12を通じて冷却トラップ2に流入し、当該冷却トラップ2内にて冷却される。このような処理を所定時間、例えば、2時間以上実施することにより、電極内から有機系電解液を確実に取り除くことができる。
【0045】
したがって、本実施形態に係る電気二重層キャパシタの処理装置によれば、電極内から有機系電解液を確実に取り除くことができる。さらに、真空炉1と真空ポンプ3との間に冷却トラップ2を配置したことにより、電極内から取り除かれた有機系電解液が冷却トラップ2内で液化することになり、当該有機系電解液の真空ポンプ3内への流入を防ぐことができる。すなわち、ただ単に焼却処理するのではなく、取扱いが規制されているものを分別できる。さらには、分別したそれぞれを適正に処理できる。よって、従来の一般廃棄物と同様の処理した場合と比べ、環境に優しく処理することができる。
【0046】
なお、上記では、上記の処理装置を用いて電気二重層キャパシタの電極を処理する場合について説明したが、上記の処理装置を用いて、電気二重層キャパシタのキャパシタ本体の処理に適用することも可能である。
【実施例1】
【0047】
本発明の第1の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、具体的に説明する。
本実施例では、内部に有機系電解液を含有するキャパシタ本体を備えた電気二重層キャパシタを処理する場合について説明する。なお、電気二重層キャパシタは、コンデンサや電池などと同様に、外装にはフィルムや金属缶などを用いて外気と遮断された状態となっている。
【0048】
本実施例では、上述した第一番目の実施形態の処理方法を用いて上記の電気二重層キャパシタを処理した。具体的には、まず、電気二重層キャパシタの外装品を取り外して、キャパシタ本体が外気に曝される状態にした。続いて、キャパシタ本体を、上記の第1の処理温度として150℃で、且つ、上記の所定の圧力として200hPa以下の環境下で処理した。所定の時間ごとに、キャパシタ本体が室温程度まで冷却され、大気圧下になっている状態にて、その質量を測定した。この測定結果につき、未処理のときのキャパシタの質量を100%として規格化したキャパシタ質量を図2にて点線および三角形で示した。
【0049】
なお、本実施例では、上述した第三番目の実施形態の処理装置を用いて実施した。本装置では、真空炉と真空ポンプ(真空引き処理に用いた油回転ポンプ)との間に配置される冷却トラップとして、−40℃仕様の冷却トラップ(東京理科機械社製の商品名:UT−50L)を用いた。このような箇所に冷却トラップを配置したことにより、減圧処理によって揮発した有機系電解液、特に溶媒が油回転ポンプのオイルに混入することを避けることができる。
【実施例2】
【0050】
本発明の第2の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、具体的に説明する。
本実施例では、上述した第1の実施例の場合と同じ電気二重層キャパシタに対し、上述した第1の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理温度のみを変更し、それ以外は上記の第1の実施例と同じ処理を行っている。
【0051】
本実施例では、上記の第1の処理温度として200℃で、且つ、上記の所定の圧力として200hPa以下の環境下で処理した。所定の時間ごとに、キャパシタ本体が室温程度まで冷却され、大気圧下になっている状態にて、その質量を測定した。この測定結果につき、未処理のときのキャパシタの質量を100%として規格化したキャパシタ質量を図2にて2点鎖線およびばつ印で示した。
【実施例3】
【0052】
本発明の第3の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、具体的に説明する。
本実施例では、有機系電解液を含有する電極を処理する場合について説明する。
本実施例で処理する電極は、比表面積が500m2/g〜3000m2/gである活性炭とカーボンブラックとポリテトラフロオエチレン(PTFE)からなる4cm角(4cm×4cm)のシート状物に、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートの3種を混合した溶媒と25wt%溶液とからなる電解液(有機系電解液)を含浸させたものである。なお、このような特性の活性炭を用いることで、実効的に電極面積が向上し、性能、特に静電容量が向上する。
【0053】
本実施例では、電解液が含まれてない状態の電極の質量は0.14gであり、解体して取り出した、電解液を含有する電極の質量は0.41gであった。このことから、電極に含まれる電解液は、0.41−0.14=0.27gである。さらに、電解液中の塩の質量は、0.27×25wt%=0.0675gとなる。
【0054】
本実施例では、上述した第二番目の実施形態の処理方法を用いて上記の電極を処理した。具体的には、まず、電気二重層キャパシタの外装品を取り外し、キャパシタ本体内から電極を取り出して、当該電極が外気に曝される状態にした。続いて、電極を、上記の第2の処理温度として60℃で、且つ、上記の所定の圧力として200hPa以下の環境下で処理した。所定の時間ごとに、電極が室温程度まで冷却され、大気圧下になっている状態にて、その質量を測定した。この測定結果につき図3にて二点鎖線および菱形で示した。
【実施例4】
【0055】
本発明の第4の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、具体的に説明する。
本実施例では、上述した第3の実施例の場合と同じ電極に対し、上述した第3の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理温度のみを変更し、それ以外は上記の第3の実施例と同じ処理を行っている。
【0056】
本実施例では、上記の第2の処理温度として100℃で、且つ、上記の所定の圧力として200hPa以下の環境下で処理した。所定の時間ごとに、電極が室温程度まで冷却され、大気圧下になっている状態にて、その質量を測定した。この測定結果につき図3にて点線および三角形で示した。
【実施例5】
【0057】
本発明の第5の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、具体的に説明する。
本実施例では、上述した第3の実施例の場合と同じ電極に対し、上述した第3の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理温度のみを変更し、それ以外は上記の第3の実施例と同じ処理を行っている。
【0058】
本実施例では、上記の第2の処理温度として150℃で、且つ、上記の所定の圧力として200hPa以下の環境下で処理した。所定の時間ごとに、電極が室温程度まで冷却され、大気圧下になっている状態にて、その質量を測定した。この測定結果につき図3にて実線および丸形で示した。
【実施例6】
【0059】
本発明の第6の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について、具体的に説明する。
本実施例では、上述した第3の実施例の場合と同じ電極に対し、上述した第3の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理温度のみを変更し、それ以外は上記の第3の実施例と同じ処理を行う方法である。
【0060】
本実施例では、上記の第2の処理温度として200℃で、且つ上記の所定の圧力として200hPa以下の環境下で処理した。所定の時間ごとに、電極が室温程度まで冷却され、大気圧下になっている状態にて、その質量を測定した。この測定結果につき図3にて1点鎖線およびばつ印で示した。
【0061】
[比較例1]
第1の比較例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について説明する。
本比較例では、上述した第1の実施例の場合と同じ電気二重層キャパシタに対し、上述した第1の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理温度および処理圧力を変更し、それ以外は上記の第1の実施例と同じ処理を行っている。
【0062】
本比較例では、まず、電気二重層キャパシタの外装品を取り外して、キャパシタ本体が外気に曝される状態にした。続いて、キャパシタ本体を、室温環境下・大気中にて保持し、時間ごとにその質量を測定した。測定結果を図2に示した。この測定結果につき、未処理のときのキャパシタの質量を100%として規格化したキャパシタ質量を図2にて実線おおび菱形で示した。
【0063】
[比較例2]
第2の比較例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について説明する。
本比較例では、上述した第1の比較例の場合と同じ電気二重層キャパシタに対し、上述した第1の比較例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理圧力のみを変更し、それ以外は上記の第1の比較例と同じ処理を行っている。
【0064】
本比較例では、まず、電気二重層キャパシタの外装品を取り外して、キャパシタ本体が外気に曝される状態にした。続いて、キャパシタ本体を、室温環境下で200hPa以下となるように真空引き処理を行った。時間ごとに、大気圧に戻し、その質量を測定した。この測定結果につき、未処理のときのキャパシタの質量を100%として規格化したキャパシタ質量を図2にて1点鎖線および四角印で示した。
【0065】
[比較例3]
第3の比較例に係る電気二重層キャパシタの処理方法について説明する。
本比較例では、上述した第3の実施例の場合と同じ電極に対し、上述した第3の実施例に係る電気二重層キャパシタの処理方法における処理温度および処理圧力を変更し、それ以外は上記の第3の実施例と同じ処理を行っている。
【0066】
本比較例では、まず、電気二重層キャパシタの外装品を取り外し、キャパシタ本体内から電極を取り出して、当該電極が外気に曝される状態にした。続いて、電極を、室温環境下・大気中にて保持し、時間ごとにその質量を測定した。この測定結果につき図3にて実線および四角形で示した。
【0067】
[評価]
電気二重層キャパシタを処理する場合、具体的には、キャパシタ本体の内部の有機系電解液を取り除く場合、図2に示すように、第1の比較例においては、処理時間が0から20時間に亘って、キャパシタ質量がほぼ100%であることが確認された。第2の比較例においては、処理時間が0から約12時間程度に亘って、キャパシタ質量がほぼ100%であることが確認された。なお、図2の破線で示されるように、溶媒除去分にあっては、75%程度であった。
【0068】
これに対し、第1の実施例においては、処理時間が0から約6時間に亘って、キャパシタ質量が漸減して90%程度になり、処理時間が約6時間から20時間以上に亘って、キャパシタ質量が90%程度でほぼ一定であることが確認された。
【0069】
第2の実施例においては、処理時間が0から約1時間に亘って、キャパシタ質量が漸減して90%程度になり、処理時間が約1時間から3時間に亘って、キャパシタ質量が90%程度でほぼ一定であることが確認された。
【0070】
よって、上記から、電気二重層キャパシタの外装品を取り外し、キャパシタ本体を処理する場合にあっては、150〜200℃の温度範囲(第1の処理温度)、且つ、200hPa以下の環境下で処理することにより、キャパシタ本体の内部の有機系電解液を取り除くことができることが確認された。その結果、キャパシタ本体は取扱いが規制されないもので構成されることになり、従来の一般廃棄物と同様に処理した場合と比べ、環境に優しく処理することができることが確認された。
【0071】
電気二重層キャパシタを処理する場合、具体的には、電極の内部の有機系電解液を取り除く場合、図3に示すように、第3の比較例においては、処理時間が0から20時間に亘って、電極質量が0.38gから漸減して0.35gになることが確認された。
【0072】
これに対し、第3の実施例においては、処理時間が0時間か20時間に亘って、電極質量が0.41gから漸減して0.27gになることが確認された。
【0073】
第4の実施例においては、処理時間が0時間か20時間に亘って、電極質量が0.41gから漸減して0.23gになることが確認された。
【0074】
第5の実施例においては、処理時間が0から2時間に亘って、電極質量が0.41gから漸減して0.21g程度になり、処理時間が2時間から20時間以上に亘って、電極質量が0.21g程度でほぼ一定であることが確認された。この0.21gは、電解液を含んでいない状態の電極質量0.14gと、電解液中の塩の質量0.0675gとの和に合致する。そのため、溶媒は全て揮発して、冷却トラップに捕獲されていることが確認された。
【0075】
第6の実施例においては、上述の第5の実施例の場合と同じであって、処理時間が0から2時間に亘って、電極質量が0.41gから漸減して0.21g程度になり、処理時間が2時間から20時間以上に亘って、電極質量が0.21g程度でほぼ一定であることが確認された。この0.21gは、電解液を含んでいない状態の電極質量0.14gと、電解液中の塩の質量0.0675gとの和に合致する。そのため、溶媒は全て揮発して、冷却トラップに捕獲されていることが確認された。
【0076】
よって、上記から、電気二重層キャパシタの外装品を取り外し、さらに電極を取り出しこの電極を処理する場合にあっては、60〜200℃の温度範囲(第2の処理温度)、且つ、200hPa以下の環境下で処理することにより、電極の内部の有機系電解液を取り除くことができることが確認された。その結果、電極は取扱いが規制されないもので構成されることになり、従来の一般廃棄物と同様に処理した場合と比べ、環境に優しく処理することができることが確認された。
【0077】
なお、上記では、500m2/g〜3000m2/gの活性炭からなる電極を処理する場合について説明したが、これと同じ比表面積を有する炭素材料からなる電極を処理することも可能である。
【0078】
なお、上記では、電解液の溶媒として、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートを電解液の溶媒として含有する電極を処理する場合について説明したが、これらにエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを加え、単体で、またはこれらの内の2種以上の混合物を電解液の溶媒として含有する電極を処理することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る電気二重層キャパシタの処理方法および処理装置は、環境に優しく処理することができるため、電気機器産業や自動車産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 真空炉
2 冷却トラップ
3 真空ポンプ
4 リーク用バルブ
5,6 真空引き用バルブ
11,12,13 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に有機系電解液を含有するキャパシタ本体が外装品で覆われた電気二重層キャパシタを処理する電気二重層キャパシタの処理方法であって、
前記外装品内から前記キャパシタ本体を取り出す前処理工程と、
前記工程に引き続いて、前記キャパシタ本体を150〜200℃、且つ、200hPa以下の環境下で所定時間処理することにより、内部から前記有機系電解液を取り除く電解液除去工程とを備える
ことを特徴とする電気二重層キャパシタの処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気二重層キャパシタの処理方法であって、
前記所定時間が2時間以上6時間以下である
ことを特徴とする電気二重層キャパシタの処理方法。
【請求項3】
内部に有機系電解液を含有する電極を備えるキャパシタ本体が外装品で覆われた電気二重層キャパシタを処理する電気二重層キャパシタの処理方法であって、
前記外装品内から前記キャパシタ本体を取り出し、当該キャパシタ本体内から前記電極を取り出す前処理工程と、
前記工程に引き続いて、前記電極を60〜200℃、且つ、200hPa以下の環境下で所定時間処理することで、内部から前記有機系電解液を取り除く電解液除去工程とを備える
ことを特徴とする電気二重層キャパシタの処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電気二重層キャパシタの処理方法であって、
前記所定時間が2時間以上である
ことを特徴とする電気二重層キャパシタの処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタの処理方法で用いられる電気二重層キャパシタの処理装置であって、
炉内を加熱する加熱手段を備える真空炉と、
前記真空炉に連結して設けられ、当該真空炉内を真空排気する真空排気手段と、
前記真空炉と前記真空排気手段の間に設けられ、炉内を冷却する冷却手段を備える液化炉と、
前記加熱手段を制御して、前記真空炉内の温度を調整する真空炉内温度制御手段と、
前記真空排気手段を制御して、前記真空炉内の圧力を調整する真空炉内圧力制御手段と、
前記冷却手段を制御して、前記液化炉内の温度を調整する液化炉内温度制御手段とを具備する
ことを特徴とする電気二重層キャパシタの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179557(P2012−179557A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44588(P2011−44588)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】