電気二重層キャパシタモジュールの製造方法
【課題】電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を機械的には強固に、かつ電気的には低抵抗で接続することが可能な電気二重層キャパシタモジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法は、複数個の電気二重層キャパシタセル10の引出電極(12、13)同士を接続し直列接続して電気二重層キャパシタモジュールを製造する方法であって、電気二重層キャパシタセルの引出電極のL字形状に成型する工程と、前記引出電極にリベット穴を穿設する工程と、電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を重ね合わせ前記リベット穴にリベットを挿通し前記引出電極同士を固着する工程と、前記引出電極同士を溶接する工程と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法は、複数個の電気二重層キャパシタセル10の引出電極(12、13)同士を接続し直列接続して電気二重層キャパシタモジュールを製造する方法であって、電気二重層キャパシタセルの引出電極のL字形状に成型する工程と、前記引出電極にリベット穴を穿設する工程と、電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を重ね合わせ前記リベット穴にリベットを挿通し前記引出電極同士を固着する工程と、前記引出電極同士を溶接する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気二重層キャパシタセルを直列接続して構成されるキャパシタモジュールの製造方法であって、特に電気二重層キャパシタセル同士を、低抵抗でかつ強固に接続するための電気二重層キャパシタモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタにおいては、一般に円筒型などその他の形態に比べて積層型はエネルギー密度が高い。積層型の電気二重層キャパシタセルは、分極性電極をセパレータともに積層した積層体に引き出し電極を取り付け、さらに積層体に電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムに入れられ、ラミネートの開口部から引き出し電極が引き出された状態で密封されてなる。
【0003】
非特許文献1に記載されているように、電気二重層キャパシタは耐電圧が低いために、複数のキャパシタセルを直列接続してキャパシタモジュールを構成して利用される。このように積層型のキャパシタセルを直列接続して利用する際には、充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので適当な加圧機構を設ける(特許文献1)。また、特許文献2には、その図15に関連して、複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士が直列接続されて構成されたキャパシタモジュールが開示されている。
【非特許文献1】岡村廸夫著「電気二重層キャパシタと蓄電システム」日刊工業新聞社発行、2005年9月30日第3版第1刷、第8頁〜第9頁、第150頁〜第157頁
【特許文献1】特開2005−93492号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のように複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を直列接続してキャパシタモジュールを構成するにあたっては、(1)充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので、引出電極同士の接続部で、ある程度の機械的強度に対する要求を満たす接続方法とすること、及び(2)キャパシタセルの引出電極同士の接続部では極力電気抵抗を低減した接続方法とすること、を考慮する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載の発明ではこれらのことが全く考慮されておらず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、複数個の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を接続し直列接続して電気二重層キャパシタモジュールを製造する方法であって、電気二重層キャパシタセルの引出電極のL字形状に成型する工程と、前記引出電極にリベット穴を穿設する工程と、電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を重ね合わせ前記リベット穴にリベットを挿通し前記引出電極同士を固着する工程と、前記引出電極同士を溶接する工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法において、前記リベットがブラインドリベットであることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法において、前記溶接する工程では、YAGレーザーによる溶接を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を機械的には強固に、かつ電気的には低抵抗で接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法に用いる電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図5】ブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図12】ブラインドナット50による引出電極の固着を説明する図である。
【図13】スリーブ部60による基板80の取り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法に用いる電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。この電気二重層キャパシタセル10は積層型の電気二重層キャパシタセルである。より具体的には、キャパシタ本体については、正の電極体(正極体)と負の電極体(負極体)をこれらの間にセパレータを介在させつつ交互に重ねることにより所定の積層体に組成される。正極体および負極体は、集電極とその両面に形成される分極性電極(活性炭電極)とから平板状に構成される。これら集電極は、矩形状の金属箔(アルミニウム箔)からなり、矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状の導電部(リード)が一体形成される。導電部は同極同士が集束され接合され、正の引出電極12、負の引出電極13とされる。
【0011】
そして、金属層を含む積層構造の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネート)から形成される容器部11の周縁において、正の引出電極12、負の引出電極13の一部が引き出され、一辺を除く三辺が熱溶着(ヒートシール)される。より具体的には、容器部11は正の引出電極12、負の引出電極13が突き出る一辺を開口可能とされており、そして、その開口部から内部に電解液を注入し、電解液の含浸処理などが終わると、真空ポンプにより空気や水分を除去した状態において、残りの一辺が熱溶着(ヒートシール)され、電気二重層キャパシタセル10が製作される。
【0012】
概略、以上のようにして構成される電気二重層キャパシタセル10は、耐電圧が低いために、複数個を直列接続した電気二重層キャパシタモジュールとして利用される。このとき、一の電気二重層キャパシタセル10の正の引出電極12と、他の電気二重層キャパシタセル10の負の引出電極13とを接続する必要があるが、本発明の製造方法では特にこの接続方法に特徴点を有するものであるので、これについて以下詳細に説明する。
【0013】
電気二重層キャパシタセル10同士を接続する際には、正の引出電極12はX−X’線により切断しA−A’線で90°折り曲げ加工を施し、また、負の引出電極13はY−Y’線により切断しB−B’線で90°折り曲げ加工を施す。このとき、正の引出電極12と、負の引出電極13とは互いに逆方向に折り曲げ加工がなされ、図2に示すように引出電極はL字状とされる。また、正の引出電極12及び負の引出電極13には、リベットを挿通するためのリベット穴14を設ける加工を施す。なお、引出電極の切断工程、引出電極の折り曲げ工程、引出電極にリベット穴14を穿設する工程の順序は任意とすることが可能である。
【0014】
ここで、引出電極の折り曲げ工程では、図2(A)及び図2(B)の2パターンの電気二重層キャパシタセル10を用意しておき、セル同士を接続するに際しては、図3に示すように、図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→・・・の順序とする。電気二重層キャパシタモジュールを構成する際に接続する電気二重層キャパシタセル10の数は任意である。引出電極を接続する前段としては、接続する電気二重層キャパシタセル10をまとめて仮組するが、このとき隣り合う電気二重層キャパシタセル10の引出電極に設けられたリベット穴14の位置が一致するようにして引出電極を重ね合わせて仮組する。
【0015】
上記のように借り組みされた複数個の電気二重層キャパシタセル10の引出電極部のリベット穴14には、図4に示すようにブラインドリベット20が挿通される。挿通されたブラインドリベット20は不図示の専用の治具を用いることで、重ね合わされた引出電極同士を固着することができる。
【0016】
ここで、ブラインドリベット20によって、正の引出電極12と負の引出電極13とを固着するときのブラインドリベット20の固着動作について説明する。図5はブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。図5は正の引出電極12、負の引出電極13とブラインドリベット20との模式的な断面を示す図であり、図5(A)はブラインドリベット20がリベット穴14に挿通された状態、図5(B)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着された状態をそれぞれ示している。
【0017】
ブラインドリベット20は、接合対象を固着するリベット本体部30とマンドレル40とから構成されている。リベット本体部30には円筒状のスリーブ部31と、このスリーブ部31の軸径より大径なフランジ部32とから構成されており、スリーブ部31にマンドレル40が貫通するよう配されている。マンドレル40はシャフト部41と、シャフト部41の先端に配されたヘッド部42とを有している。ブラインドリベット20が正の引出電極12及び負の引出電極13それぞれのリベット穴14に挿通された後に、専用の治具にてマンドレル40を上昇させることで、リベット本体部30におけるスリーブ部31が変形してバルジ部33を構成すると共に、シャフト部41が引っ張り破壊されて図5(B)のような固着を行うことができる。本発明の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法では、このようなブラインドリベット20が用いられているので、引出電極の一方側からのみの固着作業で済み、作業性を向上させることが可能となる。ブラインドリベット
20によって、それぞれの電気二重層キャパシタセル10の引出電極が固着されると、図6に示すような状態となる。上記のようなブラインドリベット20を用い、溶接工程の前段で引出電極同士を固着することは、引出電極同士の接平面Pを密着させることとなり、これによって溶接の仕上がりが向上し、接続部での強度が向上し、電気抵抗が抑制される。
【0018】
次に引出電極を溶接する工程を実施する。この溶接工程では超音波溶接、TIG溶接、YAGレーザー溶接などの任意の方法を用いることが可能であるが、今回は作業性の観点からYAGレーザー溶接を採用した実施形態について説明する。YAGレーザー溶接では重ね合わせられた引出電極部の上側の引出電極に、片側からYAGレーザーを照射し、照射部を溶融させることによって重ね合わされた引出電極同士を接続する。図7乃至図11は本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。図7に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、二の字の形状でYAGレーザーを照射したパターンである。また、図8に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、ジグザグにYAGレーザーを照射したパターンである。また、図9に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、YAGレーザーによってジグザグの照射を2回繰り返したパターンである。また、図10に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の周囲に、YAGレーザーによって一筆書きの矩形の照射を行ったパターンである。また、図11に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の周囲に、YAGレーザーによって一筆書きのオーバルの照射を行ったパターンである。引出電極の接続部で必要となる強度と、生産性とを考慮に入れることによって、図7乃至図11のいずれかの方法を適宜選択することが可能である。
【0019】
なお、超音波溶接では、超音波を発生させるホーンと、溶接部を受けるアンビルが必要であるので、片面側からのレーザー照射によるYAGレーザー溶接の方が簡便性についてはYAGレーザー溶接の方が優れている。
【0020】
本実施形態に係る製造方法では、リベット留め部が溶接部の補強として機能すると共に、リベット留めを溶接前段に行うことで、溶接時において引出電極同士を密着させることができる。このように本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、リベットによる締結手段と、YAGレーザー溶接による締結手段の2つを組み合わせて用いることで、それぞれを単独で用いたときに比べて大きなアドバンテージを得ることができる。
【0021】
以上のような、本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士を機械的には強固に、かつ電気的には低抵抗で接続することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、膨張収縮を繰り返す電気二重層キャパシタに対しても信頼度の高い引出電極部を提供することができる。
【0023】
また、リベットを打つための装置や、YAGレーザー溶接装置などは自動化対応が進んでいるために、本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法は、これらを用いることで自動化対応をしやすい、というメリットがある。
【0024】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては引出電極同士を固着させる工程においては、ブラインドリベット20を用いたが、本実施形態では固着工程においては、ブラインドナット50を用いる。この固着工程以外の工程については、
先の実施形態と同様であるので説明を省略し、ブラインドナット50による固着について詳しく説明する。図12はブラインドナット50による引出電極の固着を説明する図である。
【0025】
図12は正の引出電極12、負の引出電極13とブラインドナット50との模式的な断面を示す図であり、図12(A)はブラインドナット50がリベット穴14に挿通された状態を示しており、図12(B)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着する経過の状態を示しており、図12(C)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着した状態を示しており、図12(D)は正の引出電極12と負の引出電極13とを固着するスリーブ部60で基板等を取り付けた状態を示している。
【0026】
ブラインドナット50は、接合対象を固着するスリーブ部60とボルト本体部70とから構成されている。スリーブ部60には円筒状で内周部に雌ネジが設けられている雌ネジ部61と、この雌ネジ部61の軸径より大径なフランジ部62とから構成されており、雌ネジ部61にボルト本体部70の雄ネジ部71が螺着するよう配されている。ボルト本体部70は雄ネジ部7と、雄ネジ部7の先端に配されたヘッド部72とを有している。
【0027】
このようなブラインドナット50を用いて2枚の引出電極を固着するには以下のような操作が行われる。すなわち、図12の(A)に示すように、スリーブ部60を2枚の引出電極に貫設されたボルト穴14に嵌挿し、フランジ部62を一方の引出電極に当接させた状態で専用の工具(不図示)のビット部(不図示)をヘッド部72の多角孔(不図示)に差し込み、引き続き工具を駆動してヘッド部72を軸心回りに所定方向に回転させる。
【0028】
こうすることによってスリーブ部60が回転しない状態で雄ネジ部71のみが回転するため、図12の(B)に示すように、ボルト本体部70の雄ネジ部71が螺着しているスリーブ部60が引出電極側に向かって引き寄せられ、その基端側が径方向に膨出したバルジ部63が形成される。かかるバルジ部63の形成によって、重ね合わされた2枚の引出電極は当該バルジ部63とフランジ部62とによって挟持され互いに接合した状態(すなわち、かしめ処理が施された状態)になる。
【0029】
上記のように2枚の引出電極を固着しているスリーブ部60の雌ネジ部61は、その他のものを取り付けるためのネジ穴としても利用することができる。図13はスリーブ部60による基板80の取り付けを説明する図である。本実施形態では、このスリーブ部60を用いて基板80をネジ90によって取り付ける例について説明する。この基板80には、各電気二重層キャパシタセル10を監視するための並列モニタなどの回路(不図示)を設けると好適である。このようにネジ90で基板80を引出電極に固着することによって、所定の電気回路をスペース効率よく実装することが可能となる。また、本実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
10・・・電気二重層キャパシタセル
11・・・容器部
12・・・(正の)引出電極
13・・・(負の)引出電極
14・・・リベット穴(ボルト穴)
20・・・ブラインドリベット
30・・・リベット本体部
31・・・スリーブ部
32・・・フランジ部
33・・・バルジ部
40・・・マンドレル
41・・・シャフト部
42・・・ヘッド部
50・・・ブラインドナット
60・・・スリーブ部
61・・・雌ネジ部
62・・・フランジ部
63・・・バルジ部
70・・・ボルト本体部
71・・・雄ネジ部
72・・・ヘッド部
80・・・基板
90・・・ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気二重層キャパシタセルを直列接続して構成されるキャパシタモジュールの製造方法であって、特に電気二重層キャパシタセル同士を、低抵抗でかつ強固に接続するための電気二重層キャパシタモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタにおいては、一般に円筒型などその他の形態に比べて積層型はエネルギー密度が高い。積層型の電気二重層キャパシタセルは、分極性電極をセパレータともに積層した積層体に引き出し電極を取り付け、さらに積層体に電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムに入れられ、ラミネートの開口部から引き出し電極が引き出された状態で密封されてなる。
【0003】
非特許文献1に記載されているように、電気二重層キャパシタは耐電圧が低いために、複数のキャパシタセルを直列接続してキャパシタモジュールを構成して利用される。このように積層型のキャパシタセルを直列接続して利用する際には、充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので適当な加圧機構を設ける(特許文献1)。また、特許文献2には、その図15に関連して、複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士が直列接続されて構成されたキャパシタモジュールが開示されている。
【非特許文献1】岡村廸夫著「電気二重層キャパシタと蓄電システム」日刊工業新聞社発行、2005年9月30日第3版第1刷、第8頁〜第9頁、第150頁〜第157頁
【特許文献1】特開2005−93492号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のように複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を直列接続してキャパシタモジュールを構成するにあたっては、(1)充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので、引出電極同士の接続部で、ある程度の機械的強度に対する要求を満たす接続方法とすること、及び(2)キャパシタセルの引出電極同士の接続部では極力電気抵抗を低減した接続方法とすること、を考慮する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載の発明ではこれらのことが全く考慮されておらず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、複数個の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を接続し直列接続して電気二重層キャパシタモジュールを製造する方法であって、電気二重層キャパシタセルの引出電極のL字形状に成型する工程と、前記引出電極にリベット穴を穿設する工程と、電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を重ね合わせ前記リベット穴にリベットを挿通し前記引出電極同士を固着する工程と、前記引出電極同士を溶接する工程と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法において、前記リベットがブラインドリベットであることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法において、前記溶接する工程では、YAGレーザーによる溶接を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を機械的には強固に、かつ電気的には低抵抗で接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法に用いる電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図5】ブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。
【図12】ブラインドナット50による引出電極の固着を説明する図である。
【図13】スリーブ部60による基板80の取り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法に用いる電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。この電気二重層キャパシタセル10は積層型の電気二重層キャパシタセルである。より具体的には、キャパシタ本体については、正の電極体(正極体)と負の電極体(負極体)をこれらの間にセパレータを介在させつつ交互に重ねることにより所定の積層体に組成される。正極体および負極体は、集電極とその両面に形成される分極性電極(活性炭電極)とから平板状に構成される。これら集電極は、矩形状の金属箔(アルミニウム箔)からなり、矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状の導電部(リード)が一体形成される。導電部は同極同士が集束され接合され、正の引出電極12、負の引出電極13とされる。
【0011】
そして、金属層を含む積層構造の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネート)から形成される容器部11の周縁において、正の引出電極12、負の引出電極13の一部が引き出され、一辺を除く三辺が熱溶着(ヒートシール)される。より具体的には、容器部11は正の引出電極12、負の引出電極13が突き出る一辺を開口可能とされており、そして、その開口部から内部に電解液を注入し、電解液の含浸処理などが終わると、真空ポンプにより空気や水分を除去した状態において、残りの一辺が熱溶着(ヒートシール)され、電気二重層キャパシタセル10が製作される。
【0012】
概略、以上のようにして構成される電気二重層キャパシタセル10は、耐電圧が低いために、複数個を直列接続した電気二重層キャパシタモジュールとして利用される。このとき、一の電気二重層キャパシタセル10の正の引出電極12と、他の電気二重層キャパシタセル10の負の引出電極13とを接続する必要があるが、本発明の製造方法では特にこの接続方法に特徴点を有するものであるので、これについて以下詳細に説明する。
【0013】
電気二重層キャパシタセル10同士を接続する際には、正の引出電極12はX−X’線により切断しA−A’線で90°折り曲げ加工を施し、また、負の引出電極13はY−Y’線により切断しB−B’線で90°折り曲げ加工を施す。このとき、正の引出電極12と、負の引出電極13とは互いに逆方向に折り曲げ加工がなされ、図2に示すように引出電極はL字状とされる。また、正の引出電極12及び負の引出電極13には、リベットを挿通するためのリベット穴14を設ける加工を施す。なお、引出電極の切断工程、引出電極の折り曲げ工程、引出電極にリベット穴14を穿設する工程の順序は任意とすることが可能である。
【0014】
ここで、引出電極の折り曲げ工程では、図2(A)及び図2(B)の2パターンの電気二重層キャパシタセル10を用意しておき、セル同士を接続するに際しては、図3に示すように、図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→・・・の順序とする。電気二重層キャパシタモジュールを構成する際に接続する電気二重層キャパシタセル10の数は任意である。引出電極を接続する前段としては、接続する電気二重層キャパシタセル10をまとめて仮組するが、このとき隣り合う電気二重層キャパシタセル10の引出電極に設けられたリベット穴14の位置が一致するようにして引出電極を重ね合わせて仮組する。
【0015】
上記のように借り組みされた複数個の電気二重層キャパシタセル10の引出電極部のリベット穴14には、図4に示すようにブラインドリベット20が挿通される。挿通されたブラインドリベット20は不図示の専用の治具を用いることで、重ね合わされた引出電極同士を固着することができる。
【0016】
ここで、ブラインドリベット20によって、正の引出電極12と負の引出電極13とを固着するときのブラインドリベット20の固着動作について説明する。図5はブラインドリベット20による引出電極の固着を説明する図である。図5は正の引出電極12、負の引出電極13とブラインドリベット20との模式的な断面を示す図であり、図5(A)はブラインドリベット20がリベット穴14に挿通された状態、図5(B)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着された状態をそれぞれ示している。
【0017】
ブラインドリベット20は、接合対象を固着するリベット本体部30とマンドレル40とから構成されている。リベット本体部30には円筒状のスリーブ部31と、このスリーブ部31の軸径より大径なフランジ部32とから構成されており、スリーブ部31にマンドレル40が貫通するよう配されている。マンドレル40はシャフト部41と、シャフト部41の先端に配されたヘッド部42とを有している。ブラインドリベット20が正の引出電極12及び負の引出電極13それぞれのリベット穴14に挿通された後に、専用の治具にてマンドレル40を上昇させることで、リベット本体部30におけるスリーブ部31が変形してバルジ部33を構成すると共に、シャフト部41が引っ張り破壊されて図5(B)のような固着を行うことができる。本発明の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法では、このようなブラインドリベット20が用いられているので、引出電極の一方側からのみの固着作業で済み、作業性を向上させることが可能となる。ブラインドリベット
20によって、それぞれの電気二重層キャパシタセル10の引出電極が固着されると、図6に示すような状態となる。上記のようなブラインドリベット20を用い、溶接工程の前段で引出電極同士を固着することは、引出電極同士の接平面Pを密着させることとなり、これによって溶接の仕上がりが向上し、接続部での強度が向上し、電気抵抗が抑制される。
【0018】
次に引出電極を溶接する工程を実施する。この溶接工程では超音波溶接、TIG溶接、YAGレーザー溶接などの任意の方法を用いることが可能であるが、今回は作業性の観点からYAGレーザー溶接を採用した実施形態について説明する。YAGレーザー溶接では重ね合わせられた引出電極部の上側の引出電極に、片側からYAGレーザーを照射し、照射部を溶融させることによって重ね合わされた引出電極同士を接続する。図7乃至図11は本発明の実施形態に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法における溶接パターンを説明する図である。図7に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、二の字の形状でYAGレーザーを照射したパターンである。また、図8に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、ジグザグにYAGレーザーを照射したパターンである。また、図9に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の両側に、YAGレーザーによってジグザグの照射を2回繰り返したパターンである。また、図10に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の周囲に、YAGレーザーによって一筆書きの矩形の照射を行ったパターンである。また、図11に示すのは、引出電極部におけるリベット本体部30の周囲に、YAGレーザーによって一筆書きのオーバルの照射を行ったパターンである。引出電極の接続部で必要となる強度と、生産性とを考慮に入れることによって、図7乃至図11のいずれかの方法を適宜選択することが可能である。
【0019】
なお、超音波溶接では、超音波を発生させるホーンと、溶接部を受けるアンビルが必要であるので、片面側からのレーザー照射によるYAGレーザー溶接の方が簡便性についてはYAGレーザー溶接の方が優れている。
【0020】
本実施形態に係る製造方法では、リベット留め部が溶接部の補強として機能すると共に、リベット留めを溶接前段に行うことで、溶接時において引出電極同士を密着させることができる。このように本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、リベットによる締結手段と、YAGレーザー溶接による締結手段の2つを組み合わせて用いることで、それぞれを単独で用いたときに比べて大きなアドバンテージを得ることができる。
【0021】
以上のような、本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士を機械的には強固に、かつ電気的には低抵抗で接続することが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法によれば、膨張収縮を繰り返す電気二重層キャパシタに対しても信頼度の高い引出電極部を提供することができる。
【0023】
また、リベットを打つための装置や、YAGレーザー溶接装置などは自動化対応が進んでいるために、本発明に係る電気二重層キャパシタモジュールの製造方法は、これらを用いることで自動化対応をしやすい、というメリットがある。
【0024】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の実施形態においては引出電極同士を固着させる工程においては、ブラインドリベット20を用いたが、本実施形態では固着工程においては、ブラインドナット50を用いる。この固着工程以外の工程については、
先の実施形態と同様であるので説明を省略し、ブラインドナット50による固着について詳しく説明する。図12はブラインドナット50による引出電極の固着を説明する図である。
【0025】
図12は正の引出電極12、負の引出電極13とブラインドナット50との模式的な断面を示す図であり、図12(A)はブラインドナット50がリベット穴14に挿通された状態を示しており、図12(B)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着する経過の状態を示しており、図12(C)は正の引出電極12と負の引出電極13とが固着した状態を示しており、図12(D)は正の引出電極12と負の引出電極13とを固着するスリーブ部60で基板等を取り付けた状態を示している。
【0026】
ブラインドナット50は、接合対象を固着するスリーブ部60とボルト本体部70とから構成されている。スリーブ部60には円筒状で内周部に雌ネジが設けられている雌ネジ部61と、この雌ネジ部61の軸径より大径なフランジ部62とから構成されており、雌ネジ部61にボルト本体部70の雄ネジ部71が螺着するよう配されている。ボルト本体部70は雄ネジ部7と、雄ネジ部7の先端に配されたヘッド部72とを有している。
【0027】
このようなブラインドナット50を用いて2枚の引出電極を固着するには以下のような操作が行われる。すなわち、図12の(A)に示すように、スリーブ部60を2枚の引出電極に貫設されたボルト穴14に嵌挿し、フランジ部62を一方の引出電極に当接させた状態で専用の工具(不図示)のビット部(不図示)をヘッド部72の多角孔(不図示)に差し込み、引き続き工具を駆動してヘッド部72を軸心回りに所定方向に回転させる。
【0028】
こうすることによってスリーブ部60が回転しない状態で雄ネジ部71のみが回転するため、図12の(B)に示すように、ボルト本体部70の雄ネジ部71が螺着しているスリーブ部60が引出電極側に向かって引き寄せられ、その基端側が径方向に膨出したバルジ部63が形成される。かかるバルジ部63の形成によって、重ね合わされた2枚の引出電極は当該バルジ部63とフランジ部62とによって挟持され互いに接合した状態(すなわち、かしめ処理が施された状態)になる。
【0029】
上記のように2枚の引出電極を固着しているスリーブ部60の雌ネジ部61は、その他のものを取り付けるためのネジ穴としても利用することができる。図13はスリーブ部60による基板80の取り付けを説明する図である。本実施形態では、このスリーブ部60を用いて基板80をネジ90によって取り付ける例について説明する。この基板80には、各電気二重層キャパシタセル10を監視するための並列モニタなどの回路(不図示)を設けると好適である。このようにネジ90で基板80を引出電極に固着することによって、所定の電気回路をスペース効率よく実装することが可能となる。また、本実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
10・・・電気二重層キャパシタセル
11・・・容器部
12・・・(正の)引出電極
13・・・(負の)引出電極
14・・・リベット穴(ボルト穴)
20・・・ブラインドリベット
30・・・リベット本体部
31・・・スリーブ部
32・・・フランジ部
33・・・バルジ部
40・・・マンドレル
41・・・シャフト部
42・・・ヘッド部
50・・・ブラインドナット
60・・・スリーブ部
61・・・雌ネジ部
62・・・フランジ部
63・・・バルジ部
70・・・ボルト本体部
71・・・雄ネジ部
72・・・ヘッド部
80・・・基板
90・・・ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を接続し直列接続して電気二重層キャパシタモジュールを製造する方法であって、
電気二重層キャパシタセルの引出電極のL字形状に成型する工程と、
前記引出電極にリベット穴を穿設する工程と、
電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を重ね合わせ前記リベット穴にリベットを挿通し前記引出電極同士を固着する工程と、
前記引出電極同士を溶接する工程と、を含むことを特徴とする電気二重層キャパシタモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記リベットがブラインドリベットであることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法。
【請求項3】
前記溶接する工程では、YAGレーザーによる溶接を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法。
【請求項1】
複数個の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を接続し直列接続して電気二重層キャパシタモジュールを製造する方法であって、
電気二重層キャパシタセルの引出電極のL字形状に成型する工程と、
前記引出電極にリベット穴を穿設する工程と、
電気二重層キャパシタセルの引出電極同士を重ね合わせ前記リベット穴にリベットを挿通し前記引出電極同士を固着する工程と、
前記引出電極同士を溶接する工程と、を含むことを特徴とする電気二重層キャパシタモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記リベットがブラインドリベットであることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法。
【請求項3】
前記溶接する工程では、YAGレーザーによる溶接を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタモジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−232573(P2010−232573A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80805(P2009−80805)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(393013560)株式会社パワーシステム (127)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(393013560)株式会社パワーシステム (127)
【Fターム(参考)】
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