説明

電気二重層キャパシタ装置

【課題】キャパシタセルのセル群と、回路基板の接続を効果的に行う。
【解決手段】キャパシタセル10が複数積層されてセル群が形成されている。各キャパシタセル10の上部には、一対の電極板10bが突出形成されており、この電極板10bにより隣接するもの同士が直列または並列接続されている。そして、電極板10bには、上方に突出する金属の線材または板材よりなる接続片20が取り付けられ、この接続片20が回路基板30に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電気二重層キャパシタセルを積層配列したセル群からなる電気二重層キャパシタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタ装置は、各種の電源として利用されるが、1つの電気二重層キャパシタセル(以後適宜キャパシタセルという)の出力電圧(耐電圧)自体は数V程度と低い。従って、キャパシタセルを複数積層したセル群をユニットとして製作される。なお、各キャパシタセルは、アルミラミネートの袋体中に電気二重層キャパシタが形成されており、上部に一対の電極板が設けられている。
【0003】
そして、セル群は、複数のキャパシタセルを直列接続して、所望の電圧を得る。そこで、キャパシタセルの電極板は順次隣接するキャパシタセルの電極板に接続される。
【0004】
特許文献1では、隣接する2つのキャパシタセルの電極板をリベットにより結合すると共にTIG溶接により固定している。また、特許文献2では、塑性変形が可能な板状の接続部材の両端を隣接する2つのキャパシタセルの電極板に溶接することによって、電気的接続を行っている。
【0005】
また、電気二重層キャパシタ装置のセル群についての充放電は、基本的に電気二重層キャパシタセルが直列接続されたセル群の両端の電極について行えばよい。しかし、各キャパシタセルにおいて、充放電状態が均一でなくなる場合もおおい。この場合には、なるべくこれらキャパシタセル同士の充放電状態を一定にしたいという要求がある。そこで、直列接続したキャパシタセルの電極についての電圧を計測しておき、この計測値に基づき各キャパシタセルにおける充電量が均一になるように充放電を制御することが行われている。
【0006】
【特許文献1】特開2003-272966
【特許文献2】特開2002−151365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、各キャパシタセルの電極板についての電圧を計測し充放電量を制御する場合には、このための回路等を搭載した回路基板をセル群に対し接続することが必要になる。
【0008】
この場合、隣接する電極板同士を回路基板の上方にまで伸ばして、これを折り曲げて、回路基板に直接ネジ止めしたり、各電極板に接続したケーブルなどを回路基板に接続することが考えられる。
【0009】
しかし、キャパシタセルの電極板を長くし、直接プリント基板にネジ止めをした場合、電極板を長くしなければならないため抵抗値が増え、装置全体の抵抗値が大きくなるという問題がある。
【0010】
また、ケーブルによる接続方法は、その作業が煩雑であり時間がかかる。また、ケーブルを束ねておくスペースも必要であり、装置が大きくなるという問題があった。
【0011】
さらに、ネジ止めの場合、電極やプリント基板上のネジの重さにより、振動、衝撃の影響で、電極の破損やケーブルが破損しやすいという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の電気二重層キャパシタセルを積層配列されたセル群と、このセル群の各電気二重層キャパシタセルに電気的に接続される回路基板とを含む電気二重層キャパシタ装置であって、前記各電気二重層キャパシタセルはその端部から突出形成され、電気二重層キャパシタセルの一対の電極にそれぞれ接続される電極板を含み、前記複数の電気二重層キャパシタセルは、隣接する電極板同士が適宜接続されることで直列または並列接続され、隣接する2つの電気二重層キャパシタセルの電極板の接続部分からは、接続片が突出され、この接続片が前記回路基板に接続されることを特徴とする。
【0013】
また、前記接続片は、金属の線材または板材であることが好適である。
【0014】
また、前記電気二重層キャパシタセルの隣接する2つの電極板の接続は、超音波溶接によって行われることが好適である。
【0015】
また、前記接続片は、折り曲げ可能であることが好適である。
【0016】
また、前記接続片は、前記電極板に外側から固定することが好適である。
【0017】
また、前記接続片は、別の板材に取り付けられており、この板材が前記電極板に固定されることが好適である。
【0018】
また、前記接続片は、前記板材の一端側に固定され、前記板材は他端側が前記電極板に固定されることで、前記板材はその他端側が電極板に対し移動可能であることが好適である。
【0019】
また、前記接続片は、前記2枚の電極板により挟み込んで固定することが好適である。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、電極板から接続片を突出させ、この接続片を利用して回路基板との接続を行う。これによって、作業性が改善でき、また小型、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る電気二重層キャパシタ装置の構成を示す図である。キャパシタセル10は、本体部10aが薄肉直方体状で、上部が山型となって閉じられ全体として板状となっている。そして、本体部10aの板状の上端部から一対のアルミニウムまたは銅(または銅合金)製の電極板10bが突出形成されている。なお、本体部10aは、多層シートにより構成され、その内部に活性炭電極、セパレータ、電解液などからなる電気二重層キャパシタが収容されている。
【0023】
キャパシタセル10の1つの電極板10bは、隣接するキャパシタセル10の1つの電極板10bと接続されている。接続される2つの電極板10bは、両者が近寄るように折り曲げられ、両者が重ね合わされた部分において超音波溶接されている。なお、レーザ溶接、抵抗溶接、半田付けなど他の手段で接続してもかまわない。
【0024】
また、キャパシタセル10の他の電極板10bは、反対側の隣接したキャパシタセル10の電極板10bと接続され、積層された複数のキャパシタセル10が直列接続される。なお、用途によっては、複数のキャパシタセル10を並列接続してもよい。なお、図においては、省略したが、両端部のキャパシタセル10の隣接するキャパシタセル10の電極板10bと接続されない電極板10bがセル群の両端電極になっている。
【0025】
そして、各電極板10bには、直立可能な金属製の接続片20が取り付けられており、この接続片20が電極板10bの上端から突出している。なお、この例において、接続片20は丸棒状であるが細い板状など各種形状にすることができる。
【0026】
この接続片20は、キャパシタセル10のセル群の上方に配置された回路基板30に設けられた穴を下側から貫通し、半田付けなどで接続されている。すなわち、接続片20は容易に変形可能であり、回路基板30に設けられた穴に位置あわせしてここを通過した後、回路基板の上面の銅パターン状に半田付けされる。なお、接続片20の先端を折り曲げて回路基板30上のパターンに半田付けすることも好適である。
【0027】
なお、キャパシタセル10を複数積層するが、このキャパシタセル10間には、ゴムシートを挿入配置することも好適である。このゴムシートは、厚さが0.2〜1mmくらいの摩擦抵抗が大きい、シリコン、EPDM、EPM(エチレン・プロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)などで構成することが好適である。
【0028】
図2〜図18には、接続片20の取り付けについて各種の例を示している。図2では、電極板10bの上端部に接続片20の下部が半田付けされており、接続片20の上部が電極板10bの上端から突出している。図3では、接続片20は、L字状に折り曲げられており、その一辺が電極板10bの上端に平行になるように電極板10bの上部に半田付けされている。従って、接続片20の他辺が電極板10bの上端から突出している。なお、2つの電極板10b同士を接続する場合には、予め電極板10b同士を溶接しておくことが好適である。なお、溶接は、超音波溶接が好適であるが、レーザ溶接、抵抗溶接などでもよい。
【0029】
図4では、電極板10bの上端部に接続片20の下部が溶接されており、接続片20の上部が電極板10bの上端から突出している。この溶接も、超音波溶接が好適であるが、レーザ溶接、抵抗溶接などでもよい。さらに、この例の場合、2つの電極板10bの貼り合わせ部については、その2つの電極板10b同士の溶接も同時に行うことができる。図5では、接続片20は、L字状に折り曲げられており、その一辺が電極板10bの上端に平行になるように電極板10bの上部に溶接されている。
【0030】
図6では、接続片20の下部は、2つの電極板10bの間に挿入されている。そして、この接続片20が挿入されている部分を含めて、2つの電極板10bを溶接することで、接続片20が電極板10bに固定される。図7では、接続片20は、L字状に折り曲げられており、その一辺が2つ電極板10b間に側部から上端に平行になるように挿入され、2つの電極板10bおよび接続片20が溶接されている。
【0031】
図8では、接続片20は、その下部が接続用銅板22に半田付けされており、この接続用銅板22が電極板10bに溶接されている。なお、この接続用板は、接続片20と半田付けが可能な板であれば良い。また、この溶接は、超音波溶接が好適であるが、レーザ溶接、抵抗溶接などでもよい。さらに、この例の場合、2つの電極板10bの貼り合わせ部については、その2つの電極板10b同士の溶接も同時に行うことができる。なお、接続用銅板22は、通常銅または銅合金で構成される。図9では、接続片20がL字状に折り曲げられており、その一辺が接続用銅板22に半田付けされている。
【0032】
図10,11,12には、接続片20の接続用銅板22への取り付け方の例を示している。すなわち、電極板10bと接続片20との溶接が不可能な場合は、電極板10bに溶接が可能な材料(接続用銅板22)と接続片20を事前に溶接しておき、これを電極板10bに溶接する。図10では、接続用銅板22の端部を丸めこの部分で接続片20を巻き付け、この部分を溶接して接続用銅板22に接続片20を固定している。また、図11では、接続片20をL字状として、その一辺を接続用銅板22上に位置させ、この部分を接続用銅板22の延長部分22aで覆い、これらを溶接して接続用銅板22に接続片20を溶接固定している。図12は、接続用銅板22の長辺の一部分を上側に向かって延長した接続部22aを有し、この接続部22a上に接続用銅板22の長辺にほぼ並行になるように接続片20の一端を位置させ、この接続部22aを巻き付け、この部分を溶接して接続用銅板22に接続片20を固定している。図10〜12の固定は、超音波溶接が好適であるが、レーザ溶接、抵抗溶接、半田付け、カシメも可能である。
【0033】
図13,14は、図12の接続用銅板22を電極板10bに固定する例を示している。図13は、接続用銅板22の細長部分を電極板10bに溶接固定し、接続片20の接続用銅板22に固定されている他端側を上側に曲げ、L型にする。この時、溶接前にL型に曲げてもよい。この溶接は、超音波溶接が好適であるが、レーザ溶接、抵抗溶接でもよい。さらにこの例の場合、2つの電極板10bの貼り合せ部については、その2つの電極板10b同士の溶接も同時に行うことができる。また、接続用銅板22は、電極板10bに半田付けで固定してもよい。この溶接または、半田付け時、接続用銅板22の両端部を電極板10bの側面から巻き付け、固定することで、位置決めが容易になり作業性が向上する。図14は、接続用銅板22と接続片20の一端が固定された接続部22aを接続用銅板22と重なるように曲げた一例である。図13,14においては、接続片20が主に移動可能となる。また、接続用銅板22は電極板10bの全幅との固定が可能であり、固定範囲が広がることで、接触抵抗値を低くでき、セルの信頼性が上がる。
【0034】
図15,16は、図10,11の接続用銅板22を電極板10bに固定する例を示している。これらの例では、接続用銅板22は細長であり、その一端側に接続片20が固定されている。そして、この接続用銅板22の接続片20が取り付けられていない側のみを電極板10bに溶接固定する。この溶接は、超音波溶接が好適であるが、レーザ溶接、抵抗溶接などでもよい。さらに、この例の場合、2つの電極板10bの貼り合わせ部については、その2つの電極板10b同士の溶接も同時に行うことができる。また、接続用銅板22は、電極板10bに半田付けで固定してもよい。従って、接続用銅板22の接続片20が取り付けられている側が自由端となり、移動可能になっている。
【0035】
このように、接続片20や接続用銅板22と接続片20の両方を移動可能にすることによって、接続片20の上端部の位置決めが容易になり、接続片20の上端部の回路基板30への固定が容易になる。すなわち、図2〜9,13,14においては、接続片20を主に移動可能に、また、図17,18については、接続片20だけだなく、接続用銅板22が移動可能になるため、接続片20の上端部の位置を自由に調整できる。
【0036】
図19には、回路基板30の他の例が示されている。この例では、回路基板30に穴を設けるのではなく、回路基板30の側部に円弧状の切り欠き32を設けている。従って、接続片20の上端部をこの切り欠き32を通過させ、直立のまま、または内側に向けて折り曲げることで、回路基板30上の導電性パッドに容易に半田付けすることができる。この例の方が、回路基板30に穴を設け、ここに接続片20を通過させる方法より作業が楽になる。
【0037】
なお、上述の実施形態に記載したように、電極板10b同士の接続には、溶接を利用した。従って、キャパシタセル間の抵抗値が小さくなり、装置の抵抗を低くできる。また、接続片20や接続用銅板22がフレキシブルであるため、作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態の構成を示す図である。
【図2】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図3】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図4】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図5】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図6】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図7】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図8】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図9】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図10】接続片を接続用銅板に取り付けた状態の一例を示す図である。
【図11】接続片を接続用銅板に取り付けた状態の一例を示す図である。
【図12】接続片を接続用銅板に取り付けた状態の一例を示す図である。
【図13】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図14】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図15】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図16】接続片の取り付け状態の一例を示す図である。
【図17】図15の接続片の動きを示す図である。
【図18】図16の接続片の動きを示す図である。
【図19】回路基板の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 キャパシタセル、10a 本体部、10b 電極板、12 ゴムシート、20 接続片、22 接続用銅板、22a 延長部分、30 回路基板、32 切り欠き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気二重層キャパシタセルを積層配列されたセル群と、
このセル群の各電気二重層キャパシタセルに電気的に接続される回路基板とを含む電気二重層キャパシタ装置であって、
前記各電気二重層キャパシタセルはその端部から突出形成され、電気二重層キャパシタセルの一対の電極にそれぞれ接続される電極板を含み、
前記複数の電気二重層キャパシタセルは、隣接する電極板同士が適宜接続されることで直列または並列接続され、
隣接する2つの電気二重層キャパシタセルの電極板の接続部分からは、接続片が突出され、
この接続片が前記回路基板に接続されることを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記接続片は、金属の線材または板材であることを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記電気二重層キャパシタセルの隣接する2つの電極板の接続は、超音波溶接によって行われることを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記接続片は、折り曲げ可能であることを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記接続片は、前記電極板に外側から固定することを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記接続片は、別の板材に取り付けられており、この板材が前記電極板に固定されることを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記接続片は、前記板材の一端側に固定され、前記板材は他端側が前記電極板に固定されることで、前記板材はその他端側が電極板に対し移動可能であることを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電気二重層キャパシタ装置であって、
前記接続片は、前記2枚の電極板により挟み込んで固定することを特徴とする電気二重層キャパシタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−269830(P2006−269830A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87191(P2005−87191)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)