説明

電気二重層キャパシタ

【課題】 分割型ケースの超音波融着時に内部素子の損傷を防止する手段を持つ電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】 電気二重層キャパシタ積層体22の上下面に正極端子板23または負極端子板24を配置してなる電気二重層キャパシタユニット25を用い、電気二重層キャパシタ積層体22の厚さ方向に分割する外装ケースの上ケース26の天井面と電気二重層キャパシタユニット25の正極端子板23との間に制振部材28を介在させ、上ケース26と下ケース27を超音波融着により一体化して封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気二重層キャパシタに関し、特に集電体の損傷を起こさないパッケージングを施した電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解質を含んだ電解液からなる電気素子であり、電極の分極により、電解液と電極との間に形成される電気二重層に電荷を蓄える機能を有する。図1は電気二重層キャパシタの基本セルの構造を示す断面図である。図1に示すように、電気二重層キャパシタの分極性電極11には、電解液に対して安定で導電性があり、かつ大きな表面積を有する必要があるため、粉末活性炭や活性炭繊維、および特許文献1のようにこれらの活性炭をポリテトラフルオロエチレンなどのバインダにより成形したものが用いられる。
【0003】
従来用いられている電気二重層キャパシタには、電解液として水溶液系電解液(例えば、硫酸水溶液)を用いるものと有機系電解液を用いるものの2種類がある。一般に有機系電解液を用いる電気二重層キャパシタの方が高い耐電圧を得られるが、電解液のイオン伝導度が小さいために内部抵抗が大きくなり、充放電電流が抑えられる欠点がある。一方、水溶液系電解液を用いる電気二重層キャパシタは耐電圧が低いが、電解液のイオン伝導度が高いために内部抵抗が小さく、大きな出力電流が得られ、大電流充放電の用途に適している。
【0004】
セパレータ12には、ガラス繊維やポリプロピレン繊維等の不織布およびポリオレフィン系多孔質フィルムなど、電子絶縁性でかつイオン透過性の高い多孔膜が用いられている。
【0005】
集電体13には、電解液に水溶液系電解質を用いた場合はカーボン粉末等により導電性を付与したゴムあるいはエストラマーが、一方、電解液に有機溶媒系電解液を用いた場合は金属製のフィルムが用いられる。
【0006】
ガスケット14は、基本セルの形状を維持し、電解液の漏れを防ぐと共に、上下の集電体13の接触による短絡を防ぐ役割がある。集電体13の外側には端子取り出しのため端子板15が設けられている。
【0007】
前記水溶液系電解液を用いた電気二重層キャパシタ素子は、耐電圧が硫酸電解液の電気分解電圧によって決まり、約1.2Vと低い。また、有機系電解液の電気二重層キャパシタでも2〜3Vと低い耐電圧しか得られない。そのため、数V以上のシステムに用いるには、電気二重層キャパシタ素子を複数個直列に接続して所望の耐電圧を得る必要がある。
【0008】
これまで、電気二重層キャパシタは主にメモリ等のバックアップのような、比較的小電流の用途に用いられてきた。これに対し、近年電子機器関係では、主電源である電池の長寿命化、および瞬間的な電流供給のため、瞬時に大電流を供給できる電気二重層キャパシタの重要性が認知されつつある。携帯電話機、モバイルコンピューター等の携帯情報機器は、その携帯性を向上させるべく小型化への要求が高まっている。そのために電気二重層キャパシタへも小型化の要求が高い。
【0009】
そこで小型化のために、特許文献2のような有底箱型のケースと蓋を用いた例がある。電気二重層キャパシタ積層体の厚さ方向に上ケースと下ケースとに分割したケース用いて超音波融着による外装の封止を行うと、単純かつ簡単な製造工程で製造できるので、工数の低減、設備費用の低減になりコストダウンにつながる。
【0010】
【特許文献1】特開平6−196364号公報
【特許文献2】特公平6−58867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電気二重層キャパシタユニットを配置したケースで、上ケースと下ケースを超音波で融着する際に、超音波振動により電気二重層キャパシタの集電体に損傷が生じ、液漏れが発生し不良品となることがあった。このとき発生する集電体の損傷には亀裂、伸びなどがある。
【0012】
本発明が目的とするところは、分割型ケースの超音波融着時に電気二重層キャパシタ内部の集電体などに損傷を発生させない電気二重層キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電気二重層キャパシタは、電気二重層キャパシタ素子を積層して形成した電気二重層キャパシタ積層体の厚さ方向の上下面に正極または負極の端子板を配置した電気二重層キャパシタユニットを分割型の外装用ケースに前記端子板を引き出しながら収容した電気二重層キャパシタであって、前記外装用ケースは下方が開放された箱型の上ケースと上方が開放された箱型の下ケースとを超音波融着して形成され、前記電気二重層キャパシタユニットの上面と前記上ケースの天井面の間、前記電気二重層キャパシタユニットの下面と前記下ケースの内側底面の間のうち少なくとも一方に超音波振動を減衰させる制振部材を介在させた構造とする。
【0014】
前記制振部材は端子板とケースの間に挿入された弾性体シートとすることができる。
【0015】
前記弾性体シートは熱可塑性エラストマーとすることができる。
【0016】
前記弾性体シートは黒鉛シートとすることができる。
【0017】
前記熱可塑性エラストマーは、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレンのいずれかとすることができる。
【0018】
このように、本発明では、上ケースと下ケースとの間を超音波融着して構成された電気二重層キャパシタであって、ケースと端子板の間に、超音波振動を減衰させる制振部材を介在させた。この制振部材に弾性体シートなどを用いることにより内部に伝わる超音波振動を減衰させ、電気二重層キャパシタ集電体の亀裂等の損傷を防ぎ、液漏れを発生させないようにする。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、上ケースと下ケースを超音波で融着する際に、ケースと端子板の間に制振部材を介在させると、集電体に伝わる超音波振動を減衰させることができるので、良品率の高い電気二重層キャパシタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図2に、本発明にかかる所要部位に制振部材を挿入した構造を示す。すなわち図2は本発明の実施の形態での電気二重層キャパシタを示す分解斜視図である。電気二重層キャパシタ素子21を直列に接続した電気二重層キャパシタ積層体22の上下面に正極端子板23または負極端子板24を配置したものを電気二重層キャパシタユニット25とし、電気二重層キャパシタ積層体22の厚さ方向に上ケース26と下ケース27とに分割したケース内に電気二重層キャパシタユニット25を配置し、このとき上ケース26の天井面と正極端子板23の間に制振部材28として弾性体シートを挿入する。ただし、下ケース27の内側底面部と負極端子板24の間にも制振部材28として弾性体シートを挿入してもよい。ここで用いる弾性体シートには、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性エラストマー、あるいは黒鉛などの炭素素材が適しているが、他の無機材質を用いることもできる。次に、上ケースと下ケースとの間を超音波融着することにより電気二重層キャパシタを作製する。
【実施例】
【0022】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0023】
(実施例1)
電気二重層キャパシタ素子は、導電性ゴムからなる集電体の周囲にガスケットを融着し、ガスケット内部の集電体上に、活性炭、カーボンからなり導電補助材とバインダを加えた分極性電極を6.5mm角の面に40μm程度の厚さで形成し、この分極性電極に約40wt%(重量%)の硫酸を含浸させ、さらに、セパレータを積層し、再び、前記分極性電極および上記と同じ構成の集電体を積層した。この電気二重層キャパシタ素子を複数枚重ねることで、電気二重層キャパシタ積層体を作製した。
【0024】
また端子板として、銅板に錫メッキを施し、さらに、内部抵抗を低減するために銀ペーストを塗布したものを用いた。
【0025】
次に図2に示すように電気二重層キャパシタ積層体22の上下面に正極端子板23または負極端子板24を配置し、10×10×1.2mmの電気二重層キャパシタユニット25を作製した。
【0026】
下ケースは電気絶縁材料からなる有底箱型の四角形のケースであり、下ケースも超音波融着部を除くと上ケースとほぼ同形状である。図3は上ケースと下ケースの超音波融着部における突き合わせ状態を示す断面図である。図3を参照すると、三角形状の突部31が下ケース27の周囲全体にある。電気絶縁材料からなる有底箱型の上ケース26には、内部に下面34(天井面)および階段状の段差部35があり、階段状の段差部35は周囲全体にある。下ケースの突部31が上ケースの段差部35の面に接触し、突部31は先端が尖っているので単位面積あたりに加わる力が増加し、従って超音波融着時の接着強度を増すことができる。
【0027】
次に図2のような有底箱型の四角形の下ケース27の底部に電気二重層キャパシタ積層体22の上下面にそれぞれ正極端子板23と負極端子板24を配置した電気二重層キャパシタユニット25を載せ、リード端子41、42を外部に突出させる。その上に蓋となる上ケース26を載せる。このとき正極端子板23と上ケース26との間には制振部材28である厚さ50μmのポリエチレンシートを挟んだ。その後、ケースを受け治具に固定し、エアプレス等を利用して超音波ホーンを下降させ、上ケース26下面が電気二重層キャパシタ積層体22を加圧するのと同時に上ケース26の段差面が下ケース27の突部に圧着・加圧し、さらにその状態で超音波発振を行い摩擦により発熱させて溶着し、上ケース26と下ケース27を一体化して製品が完成する。図4はその完成品の斜視図である。
【0028】
作製した電気二重層キャパシタに定格電圧である5Vの電圧を印加し、液漏れによる短絡が起きていないかを調べた。その結果、不良数は2個(サンプル数n=100)で、制振部材である弾性体シートが超音波振動を減衰させるので電気二重層キャパシタ積層体へ伝わるエネルギーが減り、集電体への亀裂等の損傷を防ぐことができ、従って液漏れを防止する効果を確認できた。
【0029】
(実施例2)
制振部材として厚さ50μmの黒鉛シートを用いた。この制振部材を用いた他は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。作製した電気二重層キャパシタに定格電圧である5Vの電圧を印加し、液漏れによる短絡が起きていないかを調べた。その結果、不良数は4個(n=100)であった。
【0030】
(実施例3)
制振部材として厚さ50μmのポリウレタンシートを用いた。この制振部材を用いた他は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。作製した電気二重層キャパシタに定格電圧である5Vの電圧を印加し、液漏れによる短絡が起きていないかを調べた。その結果、不良数は3個(n=100)であった。
【0031】
(実施例4)
制振部材として厚さ50μmのポリプロピレンシートを用いた。この制振部材を用いた他は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。作製した電気二重層キャパシタに定格電圧である5Vの電圧を印加し、液漏れによる短絡が起きていないかを調べた。その結果、不良数は3個(n=100)であった。
【0032】
(実施例5)
制振部材として厚さ50μmのポリスチレンシートを用いた。この制振部材を用いた他は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。作製した電気二重層キャパシタに定格電圧である5Vの電圧を印加し、液漏れによる短絡が起きていないかを調べた。その結果、不良数は4個(n=100)であった。
【0033】
(比較例1)
図5は比較例1の電気二重層キャパシタを示す分解斜視図である。図5に示すように、制振部材をケースと端子の間に用いなかった。制振部材を用いなかった他は、実施例1と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。作製した電気二重層キャパシタに定格電圧である5Vの電圧を印加し、液漏れによる短絡が起きていないかを調べた。その結果、不良数は30個(n=100)であった。
【0034】
実施例1〜5、比較例1の結果をまとめたものを表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1のように、実施例1〜5では比較例1と比べて液漏れ不良数が1/15ないし1/7.5となった。すなわち、実施例1〜5の電気二重層キャパシタでは制振部材である弾性体シートが超音波振動を減衰させるので電気二重層キャパシタ積層体へ伝わるエネルギーが減り、集電体の亀裂等の損傷を防ぐことができ、その結果、液漏れを防止する効果を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】電気二重層キャパシタの基本セルの構造を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態での電気二重層キャパシタを示す分解斜視図。
【図3】実施例1での上ケースと下ケースの超音波融着部における突き合わせ状態を示す断面図。
【図4】実施例1の電気二重層キャパシタ完成品の斜視図。
【図5】比較例1の電気二重層キャパシタの分解斜視図。
【符号の説明】
【0038】
11 分極性電極
12 セパレータ
13 集電体
14 ガスケット
15 端子板
21 電気二重層キャパシタ素子
22 電気二重層キャパシタ積層体
23 正極端子板
24 負極端子板
25 電気二重層キャパシタユニット
26 上ケース
27 下ケース
28 制振部材
31 突部
34 下面
35 段差部
41、42 リード端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気二重層キャパシタ素子を積層して形成した電気二重層キャパシタ積層体の厚さ方向の上下面に正極または負極の端子板を配置した電気二重層キャパシタユニットを分割型の外装用ケースに前記端子板を引き出しながら収容した電気二重層キャパシタであって、
前記外装用ケースは下方が開放された箱型の上ケースと上方が開放された箱型の下ケースとを超音波融着して形成され、
前記電気二重層キャパシタユニットの上面と前記上ケースの天井面の間、前記電気二重層キャパシタユニットの下面と前記下ケースの内側底面の間のうち少なくとも一方に超音波振動を減衰させる制振部材を介在させたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記制振部材が弾性体シートであることを特徴とする、請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記弾性体シートが熱可塑性エラストマーであることを特徴とする、請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記弾性体シートが黒鉛シートであることを特徴とする、請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレンのいずれかであることを特徴とする、請求項3に記載の電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−153516(P2008−153516A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341367(P2006−341367)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)