説明

電気光学ディスプレイを駆動させる方法

【課題】電気光学ディスプレイを駆動させる方法の提供。
【解決手段】電気光学ディスプレイが、複数の異なる駆動スキームを用いて駆動される。ループ内の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される正味のインパルスの絶対値が、特性インパルス(すなわち、画素をその2つの極限の光学状態の間で駆動するために要求されるインパルスの絶対値の平均)の20パーセント未満になるように、該駆動スキームの波形が選択される。複数の異なる駆動スキームは、グレースケール駆動スキームとモノクローム駆動スキームとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国特許出願公開第2006/0280626号、米国特許第7,012,600号、米国特許第6,531,997号、米国特許第6,504,524号、米国特許出願公開第2005/0001812号、米国特許出願公開第2005/0024353号、米国特許出願公開第2005/0270261号、米国特許出願公開第2005/0179642号、および米国特許出願公開第2002/0180687号に関連する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、電気光学ディスプレイ、特に双安定電気光学ディスプレイを駆動させる方法、およびそのような方法において用いられる装置に関する。より具体的には、本発明は、複数の駆動スキームが同時に用いられることを可能にすることによって電気光学ディスプレイを更新することが意図される駆動方法に関する。本発明は、特に、しかし排他的ではなくして、1つ以上の種類の電気的に荷電した粒子が、液体に懸濁しており、電界の影響の下で、該液体を介して移動することによって、ディスプレイの外観を変化させる粒子ベースの電気泳動ディスプレイを用いた使用に対して意図される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
材料またはディスプレイに適用される用語「電気光学」は、画像化技術における従来の意味で本明細書において用いられ、ディスプレイ状態が少なくとも1つの光学特性において異なる、第1および第2のディスプレイ状態を有する材料を指し、該材料は、材料への電界の適用によって、その第1から第2のディスプレイ状態に変化させられる。光学特性は、通常、肉眼での認知が可能な色であるが、別の光学特性、例えば光学透過率、反射率、発光であり得、または機械読取り向けのディスプレイの場合には、可視域外の電磁波長の反射率における変化の意味での偽色などの別の光学特性であり得る。
【0004】
用語「グレー状態」は、画像化技術における従来の意味で本明細書において用いられ、画素の2つの極限の光学状態の中間の状態を指し、必ずしもこれらの2つの極限状態の間の白黒の遷移を意味するものではない。例えば、以下に参照されるいくつかの特許および公開出願は、電気泳動ディスプレイを記述し、該電気泳動ディスプレイにおいて、極限状態は、白色と藍色とであり、その結果として、中間の「グレー状態」は、実質的には薄青色になる。実際に、既に述べたように、2つの極限状態の間の遷移は、全く色の変化ではないこともあり得る。
【0005】
用語「双安定の」および「双安定」は、当該技術における従来の意味で本明細書において用いられ、ディスプレイ状態が少なくとも1つの光学特性において異なる、第1および第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ素子を備えているディスプレイを指し、また、有限時間のアドレッシングパルスによって、任意の所与の素子がその第1または第2のいずれかのディスプレイ状態を想定して駆動された後に、該アドレッシングパルスが停止した後に、その状態が、ディスプレイ素子の状態を変化させるために要求されるアドレッシングパルスの最短期間の少なくとも何倍か、例えば少なくとも4倍の間持続することを示す。前述の米国特許出願公開第2002/0180687号に、グレースケールの能力を有する一部の粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、それらの極限の白黒状態だけではなく、それらの中間のグレー状態においても安定しており、一部の他の種類の電気光学ディスプレイも同じであるということが、示される。この種類のディスプレイは、双安定ではなく、適切に「マルチ安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書中に用いられ、双安定ディスプレイとマルチ安定ディスプレイとの両方を包含し得る。
【0006】
用語「インパルス」は、時間に対する電圧の積分の、従来の意味で本明細書中に用いられる。しかし、一部の双安定電気光学媒体は、電荷変換器として機能し、そのような媒体については、インパルスの代替的な定義、すなわち時間に対する電流の積分(適用される合計の電荷に等しい)が用いられ得る。媒体が電圧時間インパルス変換器または電荷インパルス変換器のいずれとして機能するかによって、インパルスの適当な定義が用いられるべきである。
【0007】
以下の議論のほとんどは、最初のグレーレベルから最終的なグレーレベル(最初のグレーレベルと異なり得るし、異ならないこともあり得る)への遷移を介する、電気光学ディスプレイの1つ以上の画素を駆動する方法に焦点を合わせている。用語「波形」は、1つの、特定の最初のグレーレベルから特定の最終的なグレーレベルへの遷移を成就するために用いられる時間に対する全体的な電圧の曲線を意味するように用いられる。概して、そのような波形は、複数の波形要素を含み、ここで、これらの要素は、本質的に長方形(すなわち、所与の素子が、時間期間に定電圧の適用を含む場合)であり、該素子は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。用語「駆動スキーム」は、特定のディスプレイに対するグレーレベルの間の全ての可能な遷移を成就するのに十分な、一組の波形を意味する。
【0008】
いくつかの種類の電気光学ディスプレイが公知である。電気光学ディスプレイの1つの種類は、回転二色メンバータイプであり、例えば米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に記述される(この種類のディスプレイは、しばしば「回転二色ボール」ディスプレイと呼ばれるが、用語「回転二色メンバー」が、より正確であるとして好まれる。これは、上述の特許のうちの一部において、回転メンバーは、球状ではないからである)。そのようなディスプレイは、多数の小型ボディ(通常は球形または円柱形)を用い、該ボディは、異なる光学特性を有する2つ以上の部分と、内部双極子を有する。これらのボディは、マトリックス内の、液体が充填された液胞内に浮遊させられ、該液胞は、ボディが自由に回転するように液体で充填されている。ディスプレイの外観は、そこへの電界の適用に対して変化し、これによってボディを様々な位置に回転させ、ボディのどの部分が表示面を介して見られるかを変更する。この種類の電気光学媒体は、概して双安定である。
【0009】
別の種類の電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に、半導体金属酸化物と、電極に装着された可逆の色の変化を可能にする複数の色素分子とから形成された電極を含む、ナノクロミックフィルムの形状におけるエレクトロクロミック媒体を用いる。例えば、O’Regan、Bら著、「Nature 1991」、353、737、およびWood、D.著、「Information Display」、18(3),24(2002年3月)を参照されたい。また、Bach、U.ら著、「Adv. Mater.」、2002年、14(11)、845も参照されたい。この種類のナノクロミックフィルムはまた、例えば米国特許第6,301,038号および第6,870,657号、ならびに米国特許出願公開第2003/0214695号に記述される。この種類の媒体はまた、概して双安定である。
【0010】
別の種類の電気光学ディスプレイは、エレクトロウェッティングディスプレイであり、これは、Philipsによって開発され、2003年9月25日発行の雑誌「Nature」に「Performing Pixels:Moving Images on Electronic Paper」と題して記述され、また、Hayes、R.A.ら著、「Video−Speed Electronic Paper Based on
Electrowetting」、Nature、425、2003年、383−385にも記述される。米国特許出願公開第2005/0151709号に、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイは、双安定に作られ得ることが示されている。
【0011】
別の種類の電気光学ディスプレイは、数年にわたる熱心な研究開発の対象となっているが、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、該ディスプレイにおいて、複数の荷電粒子が、電界の影響の下で流体を介して移動する。電気泳動ディスプレイは、良好な輝度およびコントラスト、広い表示角度、状態双安定性、および液晶ディスプレイと比較しての低電力消費の特質を有し得る。それにも関わらず、これらのディスプレイの長期間にわたる画像品質の問題が、それらの幅広い使用を妨げていた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈殿する傾向があり、これらのディスプレイに不十分な耐用年数をもたらす。
【0012】
上述のように、電気泳動媒体は、流体の存在が必要である。電気泳動媒体の最先端の先行技術において、この流体は液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状の流体を用いて生成され得、例えば、Kitamura、T.ら著、「Electrical toner movement for electronic paper−like display」、IDW Japan、2002年、Paper HCS1−1、およびYamaguchi、Y.ら著、「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」、IDW Japan、2001年、Paper AMD4−4を参照されたい。また、米国特許出願公開第2005/0001810号、欧州特許出願第1,462,847号、第1,482,354号、第1,484,635号、第1,500,971号、第1,501,194号、第1,536,271号、第1,542,067号、第1,577,702号、第1,577,703号、および第1,598,694号、ならびに国際出願第WO2004/090626号、第WO2004/079442号、および第WO2004/001498号も参照されたい。電気泳動媒体が、そのような沈殿を可能にする向きで用いられるとき、例えば媒体が垂直面に配置される看板の場合には、そのようなガスベースの電気泳動媒体は、液体ベースの電気泳動媒体と同様の粒子沈殿による問題の影響を受けやすいと思われる。実際に、粒子の沈殿は、液体ベースの媒体よりもガスベースの電気泳動媒体において、より深刻な問題であるように思われ、それは、液体の粘性と比較して、ガス状の流体のより低い粘性が、電気泳動粒子のより速い沈殿を可能にするからである。
【0013】
マサチューセッツ工科大学(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡されたか、またはそれらの名においた非常に多くの特許および出願は、先ごろに発行され、カプセル化された電気泳動媒体を記述している。そのようなカプセル化された媒体は、非常に多くの小型カプセルを含み、該カプセル自体のそれぞれは、内相を含み、該内相は、媒体を懸濁している液体に懸濁される、電気泳動的に移動する粒子を含み、カプセル壁は、内相を囲繞している。通常は、カプセル自体は、重合体バインダ内に保持され、2つの電極の間に位置するコヒーレント層を形成する。この種類のカプセル化された媒体は、例えば、米国特許番号
【0014】
【数1】

および、米国特許出願公開番号
【0015】
【数2】

および、国際出願公開第WO00/38000号、第WO00/36560号、第WO00/67110号、および第WO01/07961号、ならびに欧州特許第1,099,207(B1)号、および第1,145,072(B1)号に記述される。
【0016】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体の中の分散マイクロカプセルを囲繞する壁は、連続相によって置換され得、これによって、いわゆる「重合体分散型電気泳動ディスプレイ」を生成し、該ディスプレイにおいて、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の分離液滴および重合体の連続相を含み、そのような重合体分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の分散液滴は、それぞれの個別の液滴と関連する分散カプセル膜は存在しないが、カプセルまたはマイクロカプセルとして見なされ得る。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。従って、本出願の目的のために、そのような重合体分散型電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種として見なされる。
【0017】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、通常は、従来の電気泳動媒体のクラスター化および沈殿の故障モードを欠点として有さず、例えば幅広く様々な、柔軟かつ堅固な物質にディスプレイをプリンティングまたはコーティングする能力などのさらなる利点を提供する(用語「プリンティング」の使用は、プリンティングおよびコーティングの全ての形式を含むように意図され、予め計測されたコーティング、例えばパッチダイ(patch die)コーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング、ロールコーティング(ナイフオーバーロールコーティング、前後ロールコーティングなど)、グラビアコーティング、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーンプリンティング工程、静電プリンティング工程、熱プリンティング工程、インクジェットプリンティング工程、および他の同様の技術を含むが、これらに限定されない)。故に、結果として生じるディスプレイは、柔軟であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は、(様々な方法を用いて)プリントされ得るので、ディスプレイ自体は、安価に作られ得る。
【0018】
関連した種類の電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、荷電粒子および流体は、カプセルの中に包まれないが、その代わりに、通例は重合体フィルムである、キャリア媒体内に形成された複数のキャビティ内に保持される。例えば、いずれもSipix Imaging、Inc.に譲渡された、国際出願公開第WO02/01281号、および米国特許出願公開第2002/0075556号を参照されたい。
【0019】
電気泳動媒体は、しばしば(例えば、多くの電気泳動媒体において、粒子が、実質的にディスプレイを通過する可視光の透過を遮るために)不透明であり、反射モードにおいて動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「シャッターモード」において動作するように作られ得、該シャッターモードにおいて、1つのディスプレイの状態は、実質的に不透明であり、1つは光を透過する。例えば、前述の米国特許第6,130,774号、および第6,172,798号、ならびに米国特許第5,872,552号、第6,144,361号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイに似ているが、電界強度の変化に依存し、同様のモードにおいて動作し得る。米国特許第4,418,346号を参照されたい。
【0020】
粒子ベース電気泳動ディスプレイ、および同様の挙動を表示する電気光学ディスプレイ(そのようなディスプレイは、便宜上下文において「インパルス駆動ディスプレイ」と呼ばれ得る)の双安定またはマルチ安定の挙動は、従来の液晶(「LC」)ディスプレイの挙動と著しい対照をなす。ねじれネマチック液晶は、双安定でもマルチ安定でもないが、電圧変換器として機能し、その結果として、そのようなディスプレイの画素に所与の電界を適用することは、画素において以前存在したグレーレベルに関わらず、画素における特定のグレーレベルを生成する。さらに、LCディスプレイは、一方向のみ(非透過すなわち「ダーク」から透過すなわち「ライト)、に駆動される。最終的に、LCディスプレイの画素のグレーレベルは、電界の極性に対して敏感ではなく、その振幅に対してのみ敏感であり、実質的に、技術的な理由のために、市販のLCディスプレイは、通常は頻繁な間隔で駆動場の電極を反転させる。対照的に、双安定電気光学ディスプレイは、第1近似では、インパルス変換器として機能し、その結果として、画素の最終的な状態は、適用される電場およびこの場が適用される時間だけでなく、電場の適用以前の画素の状態にも依存する。
【0021】
用いられる電気光学媒体が双安定であろうとも無かろうとも、高解像度ディスプレイを取得するためには、ディスプレイの個々の画素は、隣接する画素から干渉されることなく、アドレス可能でなくてはならない。この目的を達成するための1つの方法は、トランジスタまたはダイオードなどの非線形素子のアレイに、それぞれの画素と関連する少なくとも1つの非線形素子を提供し、「アクティブマトリックス」ディスプレイを生成することである。1つの画素をアドレスするアドレス指定または画素電極は、関連付けられた非線形素子を介して、適切な電圧源に接続される。通常は、非線形素子がトランジスタのときは、画素電極は、トランジスタのドレインに接続され、この配置が、以下の記述において想定されるが、しかしこれは本質的には任意のものであり、画素電極は、トランジスタのソースに接続され得る。従来的には、高解像度アレイにおいて、画素は、行と列との二次元アレイに配置されることによって、任意の特定の画素が、1つの特定された行と1つの特定された列との交差によって固有に定義される。各列における全てのトランジスタのソースは、単一の列の電極に接続され、一方で、各行における全てのトランジスタのゲートは、単一の行の電極に接続される。再び、行に対するソースおよび列に対するゲートの割当ては、従来的なものであるが、本質的には任意のものであり、望まれる場合には、逆にされ得る。行の電極は、行ドライバに接続されるが、これは、任意の所与の瞬間において、1つの行のみが選択されるということを保証する。すなわち、選択された行の電極に電圧が印加されたときには、選択された行における全てのトランジスタが伝導性であることを保証し、その一方で他の全ての行に電圧が印加されたときには、これらの選択されていない行における全てのトランジスタが、非伝導性のままであることを保証する。列の電極は、列のドライバに接続され、該列のドライバは、様々な列の電極に、選択された行の画素を所望の光学状態まで駆動するように、選択された電圧を加える(前述の電圧は、共通前面電源に対するものであり、それは、従来は電気光学媒体の非線形アレイから反対の側に提供され、ディスプレイ全体にわたって及んでいる)。「ラインアドレス時間」として公知の、予め選択された間隔の後に、選択された行は切断され、次の行が選択され、かつ、列ドライバ上の電圧は、変更され、その結果として、ディスプレイの次のラインが書き込まれる。この工程は繰り返され、その結果として、ディスプレイ全体が、一行ずつ書き込まれる。
【0022】
最初は、そのようなインパルス駆動の電気光学ディスプレイをアドレスする理想の方法は、コントローラが、画像のそれぞれの書き込みを配置し、その結果として、それぞれの画素が、その最初のグレーレベルから最後のグレーレベルまで直接的に遷移する、いわゆる「一般的グレースケール画像フロー」であると思われ得る。しかし、不可避的に、インパルス駆動ディスプレイ上に画像を書き込むことにおいて、いくらかのエラーが存在する。実際に直面するそのようなエラーの一部は、以下のものを含む。
(a)事前状態依存;少なくとも一部の電気光学媒体に関して、新たな光学状態に画素を切り替えるために要求されるインパルスは、現在および所望の光学状態だけではなく、画素の以前の光学状態にも依存する。
(b)ドウェル時間依存;少なくとも一部の電気光学媒体に関して、新たな光学状態に画素を切り替えるために要求されるインパルスは、画素が、その様々な光学状態において使用した時間に依存する。この依存の正確な性質は、深くは理解されていないが、一般的に、画素が現在の光学状態に長くあるほど、より多くのインパルスが要求される。
(c)温度依存;新たな光学状態に画素を切り替えるために要求されるインパルスは、温度に多大に依存する。
(d)湿度依存;新たな光学状態に画素を切り替えるために要求されるインパルスは、電気光学媒体の少なくとも一部の種類に関して、周囲の湿度に依存する。
(e)機械的均一性;新たな光学状態に画素を切り替えるために要求されるインパルスは、ディスプレイにおける機械的な変化、例えば電気光学媒体または関連するラミネーション接着剤の厚さの変化によって影響され得る。他の種類の機械的不均一性は、媒体の異なる製造バッチの間の不可避的な差異、製造における許容誤差および材料の差異からもたらされ得る。
(f)電圧エラー;画素に適用される実際のインパルスは、ドライバによって伝達される電圧における、避けられがたい僅かなエラーのために、論理的に適用されるインパルスとは、不可避的に僅かながら異なる。
【0023】
一般的グレースケール画像フローは、「エラーの集積」現象の被害を受ける。例えば、温度依存が、それぞれの遷移で正の向きに0.2L(Lは、通常のCIE定義である、
=116(R/R1/3−16
を有し、ここで、Rは反射率であり、Rは標準的な反射率の値である)のエラーをもたらすと考えられたい。50回の遷移の後に、このエラーは、10Lにまで集積する。恐らくより現実的には、それぞれの遷移での平均的なエラーは、ディスプレイの理論的な反射率と実際の反射率との間の差の項で表すと、±0.2Lであると想定する。100回の連続的な遷移の後には、画素は、それらの予測される状態からの平均的なずれ2Lを表示する。そのようなずれは、所定の種類の画像においては、平均的なオブザーバに対して明らかである。
【0024】
このエラー現象の集積は、温度が原因のエラーに当てはまるだけでなく、上記の全てのエラーに当てはなる。前述の米国特許第7,012,600号に記述のように、そのようなエラーに対する補正は可能であるが、限定された程度の精度までである。例えば、温度エラーは、温度センサおよびルックアップテーブルを用いることによって補正され得るが、温度センサは、限定的な分解能を有し、電気光学媒体の温度とは僅かに異なる温度を読み得る。同様に、事前状態依存は、事前状態を格納し、多次元遷移マトリックスを用いることによって補正され得るが、コントローラメモリは、記録され得る状態の数および格納され得る遷移マトリックスの大きさを限定し、この種類の補正の精度を限定的なものにする。
【0025】
故に、一般的グレースケール画像フローは、良好な結果を与えるために、適用されるインパルスの非常に正確な制御を要求する。経験的に、電気光学ディスプレイの技術に関する現在の状態において、一般的グレースケール画像フローは、市販のディスプレイにおいて実行不可能であることが判明した。
【0026】
一部の状況下において、単一のディスプレイが、複数の駆動スキームを利用することが望ましくあり得る。例えば、2つより多いグレーレベルの能力を有するディスプレイは、可能な全てのグレーレベルの間の遷移を成就し得るグレースケール駆動スキーム(「GSDS」)と、2つのグレーレベルの間、通常はそれぞれの画素の2つの極限の光学状態の間のみの遷移を成就し得るモノクローム駆動スキーム(「MDS」)とを利用し得、MDSは、GSDSよりも素早い、ディスプレイの再書き込みを提供する。ディスプレイの再書き込みの間に変更される全ての画素が、MDSによって用いられる2つのグレーレベルの間のみの遷移を成就するときに、MDSが用いられる。例えば、前述の米国特許出願公開第2005/0001812号は、グレースケール画像を表示することが可能で、かつユーザが、表示された画像に関連するテキストを入力することを可能にする、モノクロームダイアログボックスを表示することが可能な、電子ブックまたは同様なデバイスの形式のディスプレイを記述する。ユーザがテキストを入力しているときには、高速MDSが、ダイアログボックスの素早い更新のために用いられ、これによって、ユーザに、入力されるテキストの素早い確認を提供する。一方で、ディスプレイに示されるグレースケール画像全体が変更されているときには、より遅いGSDSが用いられる。
【0027】
ディスプレイは、2つより多い駆動スキームを、有用に用い得る。例えば、ディスプレイは、ディスプレイの小さな領域の更新のために用いられる1つのGSDSと、ディスプレイ上の全ての画像が変更またはリフレッシュされる必要があるときに用いられる第2のGSDSとを有し得る。例えば、ディスプレイに示される図面の小部分を編集するユーザは、(ディスプレイの点滅を要求しない)第1のGSDSを用いて編集結果を検分し得るが、(ディスプレイの点滅を含む)第2の「クリアリング」GSDSを用いて最終的な編集図面をより正確に示すか、またはディスプレイ上に新たな図面を示し得る。そのようなスキームにおいて、第2のGSDSは、「グレースケールクリア」駆動スキームまたは「GSCDS」と呼ばれ得る。
【0028】
前述の米国特許出願公開第2005/0001812号において詳細に論じられたように、少なくとも一部の種類の電気光学ディスプレイに対して、用いられる駆動スキームは、DC平衡がとれていることが望ましい。これは、同一のグレーレベルにおいて始まり、かつ終了する任意の一連の任意の遷移に対して、一連の遷移の間に加えられるインパルスの代数的な合計が有界であることを意味する。DC平衡がとれた駆動スキームは、より安定したディスプレイ性能および低減された画像のアーティファクト(artifact)を提供することが判明した。望ましくは、駆動スキーム内の全ての個別の波形が、DC平衡がとれたれたものであるが、実際には、全ての波形をDC平衡がとれたものにすることは、困難であり、その結果として、駆動スキームは、全体としてはDC平衡がとれたものであるが、通常は、DC平衡がとれた波形とDC平衡がとれていない波形との混合である。
【0029】
同一のディスプレイにおける、そのようにDC平衡の混合した2つの駆動スキームの使用は、両方の駆動スキームからの遷移を用いる遷移ループのために、DC平衡がとれていない全体的な駆動スキームをもたらし得る。例えば、MDSおよびGSDSを用いるディスプレイ、および白−黒−白の単一遷移ループを用いるディスプレイを考えていただきたい。GSDSは、白−黒(W→B)遷移に対してIの正味のインパルスを有し得、かつ(DC平衡がとれているので)B→W遷移に対して−Iの正味のインパルスを有し得る。同様に、MDSは、白−黒(W→B)遷移に対して(Iとは等しくない)Iの正味のインパルスを有し得、(DC平衡がとれているので)B→W遷移に対して−Iの正味のインパルスを有し得る。画像が、GSDSを用いて白から黒に駆動され、次いでMDSを用いて黒から白に駆動される場合には、ループに対する正味のインパルスは、I−Iであり、これは、ゼロと等しくはない。さらに、この同一のループは無限に繰り返され得るので、ループに対する正味のインパルスは、集積し得、その結果として、正味のインパルスは有界ではなく、全体的な駆動スキームは、もはやDC平衡がとれていない。
【0030】
本発明は、電気光学ディスプレイおよびそのようなディスプレイを動作する方法を提供し、該方法は、2つの異なる駆動スキームが同時に用いられることによって全体的な駆動スキームが、DC平衡がとれた、またはDC平衡がとれている状態に非常に近いことを保証する。
【0031】
本発明は、複数の異なる駆動スキームを用いて電気光学ディスプレイを駆動する方法を提供し、ループの中の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約(irreducible)ループの間に画素に適用される正味のインパルスの絶対値が、特性インパルスの20パーセント未満になるように、該駆動スキームの波形が選択され、均一既約ループは、第1のグレーレベルから開始し、ゼロまたはそれ以上のグレーレベルを通過し、該第1のグレーレベルで終了する、グレーレベルのシーケンスであり、全ての遷移は、同一の駆動スキームを用いて成就され、該ループは、該第1のグレーレベル以外の、どのグレーレベルも1度より多くは訪問せず、不均一既約ループは、第1のグレーレベルから開始し、1またはそれ以上のグレーレベルを通過し、該第1のグレーレベルで終了するグレーレベルのシーケンスであり、該ループは、少なくとも2つの異なる駆動スキームを用いる遷移を含み、該ループの最後の遷移を成就するために用いられた該駆動スキームは、該ループの開始の直前に該第1のグレーレベルへの該遷移を成就するために用いられた該駆動スキームと同一であり、該ループは、より短い既約ループを含まず、該特性インパルスは、2つの極限の光学状態の間で画素を駆動させるために要求される該インパルスの該絶対値の平均である。
【0032】
望ましくは、ループの中の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される正味のインパルスは、(以下に定義されるように)特性インパルスの10パーセント未満であり、好ましくは、特性インパルスの5パーセント未満である。最も望ましくは、全ての均一および不均一の既約ループの間の正味のインパルスは、本質的にゼロであり、すなわち、そのような全てのループは、DC平衡がとれている。
【0033】
本方法において、複数の駆動スキームは、グレースケール駆動スキームおよびモノクローム駆動スキーム、または2つのグレースケール駆動スキームおよび1つのモノクローム駆動スキームを含み得る。後者の場合において、2つのグレースケール駆動スキームのうちの1つは、画像のローカルな更新を用い得、他方は、グローバルな更新を用い得る。あるいは、2つのグレースケール駆動スキームのうちの1つは、他方よりもより正確なグレーレベルを提供し得るが、より多くのディスプレイの点滅をもたらす。
【0034】
本発明は、上に論じられた電気光学媒体のうちの任意の種類を利用し得る。故に、例えば、電気光学ディスプレイは、回転二色メンバー、エレクトロクロミックディスプレイ媒体、またはエレクトロウェッティングディスプレイ媒体を含み得る。あるいは、電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動媒体を含み得、該電気泳動媒体において、複数の荷電粒子が、電界の影響の下で流体を介して移動する。荷電粒子および流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に包まれ得るか、または重合体バインダを含む連続した位相内の、複数の分散液滴として存在し得る。流体は、ガス状であり得る。
【0035】
本発明は、電気光学媒体の層と、電界を該電気光学媒体の層に適用するように配置された少なくとも1つの電極と、該少なくとも1つの電極によって該電気光学媒体に適用された該電界を制御するように配置されたコントローラとを含む、電気光学ディスプレイにまで及び、該コントローラは、本発明の方法を実行するように配置されている。
【0036】
本発明のディスプレイは、例えば、電子ブックリーダ、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、看板、時計、棚ラベル、およびフラッシュドライブなどの、電気光学ディスプレイが以前に用いられた、本質的に任意の用途において用いられ得る。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
複数の異なる駆動スキームを用いて電気光学ディスプレイを駆動させる方法であって、該方法は、ループ内の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される正味のインパルスの絶対値が、特性インパルスの20パーセント未満になるように、該駆動スキームの波形が選択されるという点において特徴付けられ、
均一既約ループは、第1のグレーレベルから開始し、ゼロまたはそれ以上のグレーレベルを通過し、該第1のグレーレベルで終了する、グレーレベルのシーケンスであり、全ての遷移は、同一の駆動スキームを用いて成就され、該ループは、該第1のグレーレベル以外のどのグレーレベルも1度より多くは訪問せず、
不均一既約ループは、第1のグレーレベルから開始し、1またはそれ以上のグレーレベルを通過し、該第1のグレーレベルで終了する、グレーレベルのシーケンスであり、該ループは、少なくとも2つの異なる駆動スキームを用いる遷移を含み、該ループの最後の遷移を成就するために用いられた該駆動スキームは、該ループの開始の直前に該第1のグレーレベルへの該遷移を成就するために用いられた該駆動スキームと同一であり、該ループは、より短い既約ループを含まず、
該特性インパルスは、2つの極限の光学状態の間で画素を駆動させるために要求される該インパルスの絶対値の平均である、
方法。
(項目2)
前記ループ内の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される前記正味のインパルスの絶対値は、前記特性インパルスの10パーセント未満である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ループ内の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される前記正味のインパルスの絶対値は、前記特性インパルスの5パーセント未満である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される、前記正味のインパルスの絶対値は、本質的にゼロである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記駆動スキームは、グレースケール駆動スキームと、モノクローム駆動スキームとを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記駆動スキームは、2つのグレースケール駆動スキームと、モノクローム駆動スキームとを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記2つのグレースケール駆動スキームのうちの1つは、画像のローカルな更新を用い、他方は、グローバルな更新を用いる、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記2つのグレースケール駆動スキームのうちの1つは、他方よりもより正確なグレーレベルを提供するが、前記ディスプレイのより多くの点滅を引き起こす、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記電気光学ディスプレイは、回転二色メンバー、エレクトロクロミックディスプレイ媒体、またはエレクトロウェッティングディスプレイ媒体を含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動媒体を含み、該電気泳動媒体の中で、複数の荷電粒子が、電界の影響の下で流体を介して移動する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記荷電粒子および前記流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内にカプセル化されている、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記荷電粒子および前記流体は、重合体バインダを含む連続した相内に、複数の分散液滴として存在する、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記流体はガス状である、項目10に記載の方法。
(項目14)
電気光学媒体の層と、電界を該電気光学媒体の層に適用するように配置された少なくとも1つの電極と、該少なくとも1つの電極によって該電気光学媒体に適用される該電界を制御するように配置されたコントローラとを含む、電気光学ディスプレイであって、
該コントローラは、項目1〜13のうちのいずれか1項に記載の方法を実行するように配置されている、電気光学ディスプレイ。
(項目15)
項目14に記載のディスプレイを備えている、電子ブックリーダ、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、サイン、時計、棚ラベル、またはフラッシュドライブ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
既に述べられたように、本発明は、複数の異なる駆動スキームを用いて電気光学ディスプレイを駆動させる方法を提供し、ループの中の遷移の数によって除算された、全ての均一および不均一の既約ループの間に画素に適用される正味のインパルスの絶対値が特性インパルスの20パーセント未満になるように、該駆動スキームの波形が選択される。
【0038】
本発明は、均一および不均一の既約ループの概念に基づいている。本目的のために、グレーレベルループは、最初および最後のグレーレベルが同一のグレーレベルのシーケンスである。例えば、4つのグレーレベル(2ビット)のグレースケールを想定し、最も暗いものから最も明るいものまで、1、2、3、および4と、グレーレベルが表示されるときに、そのようなグレーレベルループの実施例は、
1→1
2→3→2
1→4→3→2→1
である。
【0039】
均一な既約ループは、第1のグレーレベルから始まり、ゼロまたはそれ以上のグレーレベルを通過し、第1のグレーレベルで終了するグレーレベルのシーケンスであり、全ての遷移は、同一の駆動スキーム(通常は、グレーレベル駆動スキーム、すなわち「GSDS」)を用いて成就され得る。一般的に、グレーレベルループは、任意のグレーレベルを複数回訪問し得るが、均一既約ループは、最後のグレーレベルを除いて、任意のグレーレベルを1度よりも多くは訪問せず、該最後のグレーレベルは、既に留意されたように、最初のグレーレベルと同一のものでなくてはならない。例えば、同一の4つのグレーレベル(2ビット)のグレースケールを想定すると、均一既約ループは、
1→1
2→2
1→2→1
3→2→1→3
1→2→3→4→1
である。最初のループは、単にグレーレベル1からグレーレベル1に遷移し、第2のループは、グレーレベル2からグレーレベル2に遷移する。第3の実施例は、グレーレベル1から始まり、グレーレベル2に遷移し、次いでグレーレベル1に戻る。
【0040】
グレーレベルループは、均一(すなわち、同一の駆動スキームを用いて全ての遷移を成就させる)であり得るが、既約ではない。既約ではない均一ループの例は、
1→2→3→2→1
1→2→2→1
3→2→3→2→3
である。これらのループの全ては既約ではなく、なぜなら、これらは最初と最後のグレーレベル以外の同一のグレーレベルへの繰り返しの訪問を含むからであり、全ては、複数の既約ループに低減され得る。
【0041】
グレースケール内の任意の数のグレーレベルに対して、有限数の均一な既約ループが存在するということが容易に明らかとなる。
【0042】
不均一ループは、均一ループに似ているが、不均一ループが、少なくとも2つの異なる駆動スキームを用いる遷移を含む点において異なる。不均一ループにおいて、均一ループにおけるように、最初と最後のグレーレベルは、同一のものでなくてはならない。また、不均一ループにおいて、ループの最後の遷移を成就するために用いられる駆動スキームは、最初のグレーレベルへの遷移を成就するために以前に用いられた駆動スキームと同一のものでなくてはならない。実施例として、前述の4つのグレーレベルのスケールにおいて、駆動スキームAを用いるグレーレベル1からグレーレベル4への、以下に記号的に表示される遷移を考察されたい。
1→(a)→4
駆動スキームBを用いてのグレーレベル4からグレーレベル1への逆の遷移が、記号的に以下に表示される。
4→(b)→1不均一ループは、これら2つの遷移から作られ得、故に、
1→(a)→4→(b)→1
となり、元のグレーレベル1の状態は、ループの終わりにおいて示されるように、駆動スキームBを用いて達成された。
【0043】
他の様々な不均一ループが、それぞれ複数の駆動スキームを用いて作られ得ることが、容易に明らかとなる。不均一既約ループは、以下の2つの特性を有するものだと定義され得る。
(a)最初および最後のグレーレベルは同一であり、最後のグレーレベルを達成するために用いられる駆動スキームは、最初のグレーレベルを達成するために用いられたものと同一である。
(b)不均一ループ自体は、既約ループを含まない。
【0044】
不均一既約ループの実施例は、以下である。
1→(a)→4→(b)→1→(b)→2→(a)→1
1→(a)→4→(b)→1→(c)→4→(d)→1
既約ではない不均一ループの実施例は、以下である。
1→(a)→4→(a)→1→(b)→4→(a)→1
1→(a)→2→(b)→3→(b)→2→(a)→1
なぜならば、これらは、既約のループを含み、最初のループは、2つの連続した1→(a)→4→(a)→1の既約ループを含み、第2のループは、2つの入れ子となった既約ループを含む。
【0045】
複合した均一ループは、有限な一連の既約ループおよび他の既約ループ内に含まれた既約ループに、同様の方法で「分解」され得ることが理解される。故に、例えば、均一ループの
1→4→3→2→3→2→3→2→1→2→1
は、1→4→3→2→1の中に含まれた2つの連続した2→3→2のループに分解され、1→2→1のループが続く。
【0046】
均一および不均一のループの両方は、この様にして既約ループの組み合わせに分解され得るので、全ての既約ループが、DC平衡のとれている場合には、全ての可能なループ(すなわち、同一のグレーレベルで開始および終了する、全ての可能なシーケンス)は、DC平衡がとれているということになる。
【0047】
既に述べられたように、単一のディスプレイが、複数の駆動スキームを利用する場合において、全体的な駆動スキームおよび個別の駆動スキームが、DC平衡がとれていること(または、望ましさは劣るが、任意の所与のループの中のインパルスの代数和が小さいという意味で、実質的にDC平衡がとれていること)は、有益である。本発明に従って、全ての均一および不均一既約ループが、DC平衡のとれているように、駆動スキームが選択され、または、本発明の好ましさの劣る形態において、全ての均一および不均一の既約ループは、実質的にDC平衡がとれている。実質的なDC平衡は、一部または全ての均一および不均一ループにおいて、小さなDC不平衡を許容する。
【0048】
既に述べられたように、本発明の1つの好ましい形態は、複数の駆動スキームとして、モノクローム駆動スキームおよび少なくとも1つのクレースケール駆動スキームを用いる。電気光学ディスプレイの技術における当業者には周知のように、グレースケール駆動スキーム(GSDS)は、グレースケールにおける任意のグレーレベルから他の任意のグレーレベルへの遷移を行うために用いられ得る。GSDSグレースケール更新の作用を介して達成される、グレーレベルシーケンスの実施例は、
2→(G)3→(G)1→(G)4→(G)3→(G)1→(G)3→(G)3→(G)3(G)→2
であり、「→(G)」は、関連する遷移が、GSDSによって成就されることを意味する。この実施例は、前述の4つのグレーレベル(2ビット)のグレースケールを想定し、グレーレベルは、最も暗いものから最も明るいものへと、1、2、3および4と表示される。
【0049】
モノクローム駆動スキーム(MDS)は、グレーレベルのモノクロームサブセットに属するグレーレベルの間の遷移を成就するために用いられ得、該モノクロームサブセットは、前述のグレースケールの2つのグレーレベルを含む。この実施例において、モノクロームサブセットは、{1、4}、すなわち最も暗いグレーレベルおよび最も明るいグレーレベル(通常は、それぞれ黒および白)である。グレーレベルの任意の所与のシーケンスにおいて、一部の遷移は、MDSによって成就され得、他のものは、GSDSによって成就され得る。例えば、グレーレベルシーケンスは、
2→(G)3→(G)1→(M)4→(M)1→(M)4→(G)3→(G)1→(M)4→(G)2
であり、「(M)」は、関連する遷移が、MDSによって成就されることを意味する。このシーケンスは、不均一な更新、すなわちGSDSおよびMDSの組み合わせを用いた更新を意味する。
【0050】
本発明の特に好ましい実施形態は、3つの異なる駆動スキーム、すなわちグレースケール駆動スキーム、グレースケールクリア駆動スキームおよびモノクローム駆動スキームを用いる。グレースケール駆動スキームおよびグレースケールクリア駆動スキームは、様々な点において異なり得、例えば、グレースケール駆動スキームは、ローカルな更新(すなわち、変更される必要がある画素のみが、再書き込みされる)を用い得、一方でグレースケールクリア駆動スキームは、グローバルな更新(すなわち、全ての画素が、それらのグレーレベルが変更されるか否かに関わらず、再書き込みされる)を用い得る。あるいは、グレースケールクリア駆動スキームは、グレースケール駆動スキームよりもより正確なグレーレベルを提供し得るが、遷移の間のより多くの点滅という犠牲を払う。
【0051】
全ての既約の均一および不均一既約ループの実質的または完全なDC平衡をとるために、本発明において用いられた駆動スキームの個別の波形の調節は、本出願の最初の段落において参照された、様々な特許および出願に記述された、任意の技術によって成就され得る。これらの技術は、ディスプレイの以前のさまざまな状態に依存して波形を変化させること(この結果として、例えば均一なループ1→2→1および1→3→2→1の両方は、2→1の遷移で終了し、この2→1の遷移のために用いられた波形は、2つの場合において異なり得る)、平衡のとれたパルスのペア、およびグレーレベルの一部の変化を成就させるが、ゼロの正味のインパルスを有し得る、他の波形の要素の挿入を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2013−47855(P2013−47855A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−264095(P2012−264095)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2008−525154(P2008−525154)の分割
【原出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】