説明

電気光学装置、及び、電子機器

【課題】電気光学物質の焼付きと、フリッカと、消費電力の増大と、を抑制しつつ、ディスクリネーションの影響を抑えコントラストの低下を抑制できる電気光学装置および電子機器を提供する。
【解決手段】電気光学装置1は、データ線Xを複数本まとめて制御するマルチプレクサ単位回路を複数有するマルチプレクサ31を含む、データ線駆動回路30を有する。この電気光学装置1では、データ線駆動回路30は、1つのフレームにおいて、画素電極41のうち走査線Yが延びる方向に並ぶものの極性の総計が略等しく、かつ、画素電極41のうち走査線Yおよびデータ線Xが延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性となり、かつ、画素電極41のうち走査線Yが延びる方向に隣接しかつ異なるマルチプレクサ単位回路で制御されるものが同じ極性となるように、正極性書込および負極性書込を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、及び、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置として、アクティブマトリクス型の液晶表示装置が知られている。このア
クティブマトリクス型の液晶表示装置は、複数の走査線、これら走査線に略直交する複数
のデータ線、ならびに、走査線及びデータ線の交差に対応して設けられた複数の画素回路
を有する第1の基板と、この第1の基板に対向して設けられた第2の基板と、前記第1の
基板及び前記第2の基板の間に設けられた電気光学物質である液晶と、を備えている。
【0003】
液晶は、第1の基板上の画素回路が有する画素電極及び第2の基板上の共通電極から、
画像信号としての電圧が印加されることにより駆動される。上述の電圧としては、直流電
圧と交流電圧とがあるが、液晶は直流電圧で駆動されると焼付きを起こす。このため、液
晶は交流電圧で駆動される。この交流電圧で液晶を駆動する方式として単純なものに、共
通電極の電位を基準電位として、共通電極よりも高い電位(以降、正極性と呼ぶ)である
正極性画像信号、及び、共通電極よりも低い電位(以降、負極性と呼ぶ)である負極性画
像信号を、1フレームごとに交互に各データ線に供給する、フレーム反転駆動方式がある

【0004】
ところが、フレーム反転駆動方式では、フリッカと呼ばれる画面のちらつきが発生する
。これは、液晶に画像信号を印加する画素電極の極性が、正極性の場合と負極性の場合と
で、液晶の光学特性に微妙なずれが生じることにより、1フレームごとに交互に現れる正
極性のフレームと負極性のフレームとの間で、画像の明るさに差異が生じるためである。
【0005】
このフリッカを抑えるために、正極性画像信号及び負極性画像信号を、1水平ラインご
とに交互に各データ線に供給する1H反転駆動方式や、1画素ごとに交互に各データ線に
供給するドット反転駆動方式が用いられている。これらの方式では、1フレーム内に正極
性の画素電極及び負極性の画素電極が混在するため、フリッカを相殺させ、フリッカを抑
制できる。
【0006】
しかし、この1H反転駆動方式やドット反転駆動方式では、フリッカを抑制できる点で
は有利であるが、画像信号の極性を反転させる回数が増えるため、消費電力の増大を招く
という問題があった。
【0007】
このため、フリッカを抑えつつ、消費電力の抑制を図った電気光学装置(例えば、特許
文献1参照)が示されている。この電気光学装置では、複数のデータ線をp本(pは2以
上の自然数)ごとのブロックとして規定し、正極性画像信号及び負極性画像信号を1ブロ
ックごとに交互に各データ線に供給する方式(以降、ブロック反転駆動方式と呼ぶ)を採
用している。
【0008】
これによれば、1フレーム内に正極性の画素電極及び負極性の画素電極が混在するため
、フリッカを相殺させ、フリッカを抑制できる。また、画像信号の極性を反転させる回数
の増加を抑制できるため、消費電力の増大を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−258485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、複数の画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界では、ディスクリネーシ
ョンの影響により、コントラストが低下するという問題がある。1H反転駆動方式、ドッ
ト反転駆動方式、ブロック反転駆動方式では、複数の画素電極のうち極性が異なるもの同
士の境界が多い。特に、ドット反転駆動方式ではこの境界が多いため、ディスクリネーシ
ョンの影響が大きく、コントラストの低下が問題であった。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、電気光学物質の焼付きと、フリッカと
、消費電力の増大と、を抑制しつつ、ディスクリネーションの影響を抑えコントラストの
低下を抑制できる電気光学装置、及び、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
本発明の電気光学装置は、複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられ
た画素を有する電気光学装置において、前記画素に設けられた画素電極と前記データ線と
が、前記走査線からの制御信号に応じてスイッチング素子を介して接続されるとともに前
記画素電極と対向して共通電極が形成され、当該共通電極の電位を基準として高電位側の
正極性画像信号及び低電位側の負極性画像信号を、複数本で制御するマルチプレクサ単位
回路を介して前記データ線に供給するデータ線駆動回路を有し、前記データ線駆動回路は
、前記マルチプレクサ単位回路内において前記画素電極のうち前記走査線及び前記データ
線が延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性となり、かつ、異なるマルチプレクサ
単位回路毎の境界で制御されるものが同じ極性となるように前記正極性及び負極性画像信
号を供給することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、以下の手順でデータ線を介して画素電極に正極性画像信号を書き込
む。
まず、走査線に制御信号を供給して、スイッチング素子をオン状態にする。次に、デー
タ線駆動回路から共通電極の電位よりも高い電位の画像信号をデータ線に供給して、スイ
ッチング素子を介して、画素電極に書き込む。これにより、共通電極の電位と画素電極に
書き込んだ電位との電位差が液晶に印加される。
【0015】
また、以下の手順でデータ線を介して画素電極に負極性画像信号を書き込む。
まず、走査線に制御信号を供給して、スイッチング素子をオン状態にする。次に、デー
タ線駆動回路から共通電極の電位よりも低い電位の画像信号をデータ線に供給して、スイ
ッチング素子を介して、画素電極に書き込む。これにより、共通電極の電位と画素電極に
書き込んだ電位との電位差が液晶に印加される。
【0016】
また、マルチプレクサ単位回路内において、複数の画素電極のうち走査線及びデータ線
が延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性となる。これにより、画素電極に交流電
圧の画像信号を書き込めるため、電気光学物質が焼付くことを防止できる。また、極性の
反転する回数を削減できるため、消費電力の増大を抑制できる。また、画素電極間で極性
が異なるもの同士の境界の数を削減できるため、画素間のディスクリネーションの影響を
抑制でき、コントラストの低下を抑制できる。さらに、1フレーム内に正極性の画素電極
及び負極性の画素電極を混在させることで、フリッカを相殺させ、フリッカを抑制できる

【0017】
また、複数の画素電極のうち、異なるマルチプレクサ単位回路毎の境界で制御されるも
のが同じ極性となる。これにより、複数の画素電極のうち走査線が延びる方向に隣接し、
かつ、異なるマルチプレクサ単位回路で制御されるもの同士において、極性が異なるもの
同士の境界を無くすことができるため、上述の画素電極同士の間におけるディスクリネー
ションの影響を抑制でき、コントラストの低下を抑制できる。
【0018】
また、上述の電気光学装置では、前記データ線駆動回路は、前記画素電極が、それぞれ
、連続する少なくとも2つ以上のフレームにおいて同じ極性となるように、前記正極性及
び負極性画像信号を供給することが好ましい。
【0019】
この発明によれば、画素電極が、それぞれ、連続する少なくとも2つ以上のフレームに
おいて同じ極性となる。これにより、極性の反転する回数を削減できるため、より消費電
力の増大を抑制できる。
【0020】
また、上述の電気光学装置では、前記データ線駆動回路は、フレーム単位で前記画素電
極のうち極性が異なるもの同士の境界が変わるように、前記正極性及び負極性画像信号を
供給することが好ましい。
【0021】
複数の画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が同一の画素電極間で固定されると
、ブロックむらが発生したり電気光学物質が焼付いたりするおそれがある。
そこで、この発明によれば、複数の画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が、フ
レーム単位で変わるように、正極性及び負極性画像信号を供給する。これにより、連続す
るフレームにおいて、複数の画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が同一の画素電
極間で固定されるのを防止して、ブロックむらや電気光学物質の焼付きを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の平面図である。
【図2】前記実施形態に係るデータ線駆動回路のブロック図である。
【図3】前記実施形態に係る1つのフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。
【図4】前記実施形態に係る連続する複数のフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るデータ線駆動回路のブロック図である。
【図6】前記実施形態に係る1つのフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。
【図7】前記実施形態に係る連続する複数のフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。
【図8】上述の実施形態及び変形例に係る電気光学装置1の構成を示す斜視図である。
【図9】図8におけるZ−Z´断面図である。
【図10】上述の電気光学装置を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあ
たって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0024】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置1の平面図である。電気光学装置1
は、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(以降、TFTと呼ぶ)43がマトリク
ス状に配置された素子基板と、この素子基板に対向配置された対向基板と、素子基板及び
対向基板の間に設けられた液晶と、から構成されている。
素子基板上には、画素マトリクス10、走査線駆動回路20、マルチプレクサ31を有
するデータ線駆動回路30が形成される。
【0025】
画素マトリクス10には、所定間隔おきに設けられたm本(mは2以上の自然数)の走
査線Y1〜Ymと、これら走査線Y1〜Ymに略直交するように所定間隔おきに設けられ
たn本(nは2以上の自然数)のデータ線X1〜Xnと、走査線Y1〜Ymと略平行かつ
交互に設けられたm本のコモン線Z1〜Zmと、が形成される。各走査線Yと各データ線
Xとの交差部分には、上述のTFT43、画素電極41、蓄積容量44を有する画素回路
40が設けられている。
TFT43のゲートには、走査線Yが接続され、TFT43のソースには、データ線X
が接続され、TFT43のドレインには、画素電極41及び蓄積容量44が接続されてい
る。
【0026】
対向基板上には、複数の画素が配列された表示領域(図示省略)が形成され、各画素は
、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類のカラーフィルタからなるサブ画素で構成され
る。
【0027】
各画素は、画素電極41と、対向基板に形成される共通電極42と、これら両電極間に
設けられた液晶45と、によって構成される。これにより、画素マトリクス10は、複数
の画素がマトリクス状に配列されて構成される。
【0028】
走査線駆動回路20は、画素マトリクス10の各走査線Yを駆動し、データ線駆動回路
30は、画素マトリクス10の各データ線Xを駆動する。
具体的には、走査線駆動回路20は、制御信号を各走査線Yに対してパルス的に線順次
で供給する。これにより、ある走査線Yに制御信号が供給されると、この走査線Yに接続
されるTFT43がオン状態になり、この走査線Yに対応する画素が全て選択されること
になる。
【0029】
また、データ線駆動回路30は、画像信号を各データ線Xに対して順次印加する。これ
により、画像信号を各データ線Xに順次供給し、オン状態のTFT43を介して、各画素
の画素電極41に順次画像信号を書き込む。画素電極41の電圧は、蓄積容量44により
、画像信号が書き込まれる期間よりも3桁も長い期間に亘って保持される。
【0030】
ここで、画像信号の電圧レベルを変化させることで、液晶の配向や秩序は印加電圧に応
じて変化するため、各画素の光変調による階調表示が可能となる。例えば、液晶を通過す
る光量は、ノーマリーホワイトモードであれば、印加電圧が高くなるにつれて減少し、ノ
ーマリーブラックモードであれば、印加電圧が高くなるにつれて増加する。したがって、
画像信号に応じたコントラストを有する光が各画素から射出されて、画像が表示される。
【0031】
図2は、データ線駆動回路30のブロック図である。
データ線駆動回路30を構成するマルチプレクサ31は、データ線Xを3本ずつまとめ
て制御するマルチプレクサ単位回路M1〜Msを含んで構成される。ここで、sは、2以
上の自然数である。3本ずつまとめられるデータ線Xは、それぞれ、R(赤)、G(緑)
、B(青)のサブ画素に対応している。
【0032】
マルチプレクサ単位回路M1〜Msは、それぞれ、第1、第2、第3のスイッチング素
子51、52、53を有する。第1〜第3のスイッチング素子51〜53の一方の端子は
、全て入力端子SIに接続され、他方の端子は、それぞれ、出力端子SOR、SOG、S
OBに接続されている。出力端子SOR、SOG、SOBは、それぞれ、R(赤)、G(
緑)、B(青)の各色のデータ線Xに接続されている。すなわち、各マルチプレクサ単位
回路M1〜Msは、R(赤)、G(緑)、B(青)の各サブ画素に画像信号を供給する。
【0033】
入力端子SIには、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色の画像データが混合した画像
信号が供給される。
第1〜第3のスイッチング素子51〜53の制御端子SSには、第1〜第3のスイッチ
ング素子51〜53のいずれかを選択する制御信号が供給される。
【0034】
以上のマルチプレクサ31は、以下のように動作する。
マルチプレクサ単位回路M1〜Msの入力端子SIに画像信号を供給するとともに、制
御端子SSに制御信号を供給する。
すると、制御信号に応じて、第1〜第3のスイッチング素子51〜53が順次オン状態
になる。具体的には、第1のスイッチング素子51がオン状態になると、入力端子SIか
ら入力された画像信号がR(赤)のデータ線X1に供給される。第2のスイッチング素子
52がオン状態になると、入力端子SIから入力された画像信号がG(緑)のデータ線X
2に供給される。第3のスイッチング素子53がオン状態になると、入力端子SIから入
力された画像信号がB(青)のデータ線X3に供給される。
これにより、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色のデータ線Xを順次選択し、この選
択したデータ線Xに画像信号を供給できる。
【0035】
以上のデータ線駆動回路30は、画素電極41ごとに、共通電極42の電位よりも高い
電位である正極性画像信号、または、共通電極42の電位よりも低い電位である負極性画
像信号を、データ線Xに供給する。
具体的には、データ線駆動回路30は、マルチプレクサ単位回路内において、複数の画
素電極41のうち走査線Y及びデータ線Xが延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極
性となり、かつ、異なるマルチプレクサ単位回路M1〜Ms毎の境界で制御されるものが
同じ極性となるように、正極性及び負極性画像信号をデータ線Xに供給する。
【0036】
図3は、1つのフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。図3中、
データ線Xは、上述の各マルチプレクサ単位回路M1〜Msにより3本ずつ制御される。
例えば、データ線X1、X2、X3は、図2のマルチプレクサ単位回路M1で制御される

図3中、「+」、「−」の記号は、走査線Yとデータ線Xの交差に対応した画素電極の
極性を示す。具体的には、「+」の記号は、画素電極が正極性であることを示す。「−」
の記号は、画素電極が負極性であることを示す。
【0037】
図3では、マルチプレクサ単位回路内において、複数の画素電極のうち走査線Y及びデ
ータ線Xが延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性となっている。
例えば、走査線Y(a+1)に係る画素電極に注目すると、データ線X3、X4、X5
との交差に対応する画素電極41A、41B、41Cは、正極性であり、X6、X7、X
8との交差に対応する画素電極41D、41E、41Fは、負極性である。したがって、
マルチプレクサ単位回路M2において、走査線Y(a+1)の延びる方向に隣接する3つ
の画素電極41B、41C、41Dのうち、画素電極41B、41Cの2つが同じ極性で
ある。
また、例えば、データ線X10に係る画素電極に注目すると、走査線Ya、Y(a+1
)との交差に対応する画素電極41G、41Hは、正極性であり、走査線Y(a+2)、
Y(a+3)との交差に対応する画素電極41I、41Jは、負極性である。したがって
、マルチプレクサ単位回路M4において、データ線X10の延びる方向に隣接する画素電
極のうち、2つの画素電極41G、41H、及び、画素電極41I、41Jが、それぞれ
、同じ極性である。
【0038】
また、複数の画素電極のうち、異なるマルチプレクサ単位回路毎の境界で制御されるも
のが同じ極性となっている。
例えば、データ線X6、X7に係る画素電極に注目すると、走査線Y(a+1)との交
差に対応する画素電極41D、41Eは、両方とも、負極性であり、走査線Y(a+2)
との交差に対応する画素電極41K、41Lは、両方とも、正極性である。データ線X6
、X7は、それぞれ、図2のマルチプレクサ単位回路M2、M3で制御されるので、異な
るマルチプレクサ単位回路M1、M2で制御される画素電極41D、41E、及び、画素
電極41K、41Lが、それぞれ、同じ極性である。
【0039】
図4は、連続する複数のフレームにおける走査線Yaに係る画素電極の極性を表す模式
図である。図4中、データ線Xは、上述の各マルチプレクサ単位回路M1〜Msにより3
本ずつ制御される。例えば、データ線X1、X2、X3は、図2のマルチプレクサ単位回
路M1で制御される。
図4中、「+」、「−」の記号は、走査線Yとデータ線Xの交差に対応した画素電極の
極性を示す。具体的には、「+」の記号は、画素電極が正極性であることを示す。「−」
の記号は、画素電極が負極性であることを示す。
【0040】
図4において、画素電極が、それぞれ、連続する少なくとも2つ以上のフレームにおい
て同じ極性となっている。
例えば、走査線Yaとデータ線X6の交差に対応した画素電極に注目すると、Jフレー
ム目、J+1フレーム目における画素電極41M、41Nは、負極性であり、J+2フレ
ーム目、J+3フレーム目における画素電極41P、41Qは、正極性である。ここで、
Jは自然数である。上述の画素電極41M、41N、41P、41Qは、フレームが異な
るが、同一の画素電極であるので、画素電極が連続する2つのフレームにおいて同じ極性
である。
【0041】
また、フレーム単位で複数の画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が変わってい
る。
例えば、Jフレーム目における走査線Yaに係る画素電極に注目すると、データ線X1
0、X11との交差に対応する画素電極41R、41Sは、それぞれ、正極性及び負極性
である。つまり、Jフレーム目においては、極性が異なる画素電極同士の境界が、画素電
極41R、41Sの間にある。
一方、J+1フレーム目における走査線Yaに係る画素電極に注目すると、データ線X
11、X12との交差に対応する画素電極41T、41Uは、それぞれ、正極性及び負極
性である。つまり、J+1フレーム目においては、極性が異なる画素電極同士の境界が、
画素電極41T、41Uの間にある。
したがって、Jフレーム目からJ+1フレーム目に変わることで、極性が異なる画素電
極同士の境界が変わっている。
【0042】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)マルチプレクサ単位回路内において、複数の画素電極のうち走査線Y及びデータ
線Xが延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性となる。これにより、画素電極に交
流電圧の画像信号を書き込めるため、電気光学物質が焼付くことを防止できる。また、極
性の反転する回数を削減できるため、消費電力の増大を抑制できる。また、画素電極間で
極性が異なるもの同士の境界の数を削減できるため、画素間のディスクリネーションの影
響を抑制でき、コントラストの低下を抑制できる。さらに、1フレーム内に正極性の画素
電極及び負極性の画素電極を混在させることで、フリッカを相殺させ、フリッカを抑制で
きる。
【0043】
(2)複数の画素電極のうち、異なるマルチプレクサ単位回路毎の境界で制御されるも
のが同じ極性となる。これにより、複数の画素電極のうち走査線Yが延びる方向に隣接し
、かつ、異なるマルチプレクサ単位回路で制御されるもの同士において、極性が異なるも
の同士の境界を無くすことができるため、上述の画素電極同士の間におけるディスクリネ
ーションの影響を抑制でき、コントラストの低下を抑制できる。
【0044】
(3)複数の画素電極が、それぞれ、連続する少なくとも2つ以上のフレームにおいて
同じ極性となる。これにより、極性の反転する回数を削減できるため、より消費電力の増
大を抑制できる。
【0045】
(4)フレーム単位で画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が変わる。これによ
り、連続するフレームにおいて、複数の画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が同
一の画素電極間で固定されるのを防止して、ブロックむらや電気光学物質の焼付きを防止
できる。
【0046】
<2.第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係るデータ線駆動回路30Aのブロック図である。デ
ータ線駆動回路30Aは、マルチプレクサの構成が、図2のデータ線駆動回路30と異な
る。
【0047】
マルチプレクサ31Aは、データ線Xを6本ずつまとめて制御するマルチプレクサ単位
回路N1〜Ntを含んで構成される。ここで、tは、2以上の自然数である。具体的には
、マルチプレクサ単位回路N1〜Ntは、第1実施形態のマルチプレクサ単位回路M1〜
Msを2つずつ一体化したものである。
【0048】
図6は、1つのフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。図6中、
データ線Xは、上述の各マルチプレクサ単位回路N1〜Ntにより6本ずつ制御される点
が、図3と異なる。
【0049】
図7は、連続する複数のフレームにおける複数の画素電極の極性を表す模式図である。
図7中、データ線Xは、上述の各マルチプレクサ単位回路N1〜Ntにより6本ずつ制御
される点が、図4と異なる。
【0050】
本実施形態によれば、上述の(1)〜(4)に加え、以下のような効果がある。
(5)第1実施形態に係るデータ線駆動回路30では、データ線Xを3本ずつまとめて
制御するマルチプレクサ単位回路M1〜Msを含んで構成されるのに対し、本実施形態に
係るデータ線駆動回路30Aでは、データ線Xを6本ずつまとめて制御するマルチプレク
サ単位回路N1〜Ntを含んで構成される。このため、同数のデータ線Xを制御する場合
、データ線駆動回路30と比べて、データ線駆動回路30Aの方が、マルチプレクサ単位
回路が少なくなる。
【0051】
<3.変形例>
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる
範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、複数の画素電極のうち走査線が延びる方向に隣接する3つのものを、またデー
タ線が延びる方向に隣接する2つのものを、それぞれ同じ極性としたが、これに限らず、
5つのものが同じ極性であってもよい。
【0052】
また、上述の各実施形態では、本発明を液晶を用いた電気光学装置1に適用したが、こ
れに限らず、液晶以外の電気光学物質を用いた電気光学装置にも適用できる。電気光学物
質とは、電気信号(電流信号または電圧信号)の供給によって透過率や輝度といった光学
的特性が変化する物質である。例えば、有機EL(Electro Luminescent)や発光ポリマ
ーなどのOLED素子を電気光学物質として用いた表示パネルや、着色された液体とこの
液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを電気光学物質として用いた電気
泳動表示パネル、極性が相違する領域ごとに異なる色に塗り分けられたツイストボールを
電気光学物質として用いたツイストボールディスプレイパネル、黒色トナーを電気光学物
質として用いたトナーディスプレイパネル、あるいは、ヘリウムやネオン等の高圧ガスを
電気光学物質として用いたプラズマディスプレイパネルなど各種の電気光学装置に対して
も、上記実施形態と同様に本発明が適用され得る。
【0053】
<4.電気光学装置>
図8は、上述の実施形態及び変形例に係る電気光学装置1の構成を示す斜視図であり、
図9は、図8におけるZ−Z´断面図である。
電気光学装置1は、筐体400(図9中破線で示す)に収納されている。電気光学装置
1は、画素電極406等が形成された素子基板451と、この素子基板451に対向配置
されかつ共通電極42等が形成された対向基板452と、素子基板451及び対向基板4
52の間に設けられた電気光学物質としての液晶455と、素子基板451の下側(対向
基板452とは反対側)に設けられて液晶455に光を照射する光源としてのバックライ
ト450と、を有する。素子基板451は、ガラスや半導体等で形成され、この素子基板
451上には、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を用いて各種の回
路等が形成される。また、対向基板452は、ガラス等の透明性の材料で形成される。
【0054】
対向基板452の外周部には、素子基板451及び対向基板452の間隙を封止するシ
ール部材454が設けられている。このシール部材454は、素子基板451及び対向基
板452とともに、液晶455が封入される空間を形成する。シール部材454には、素
子基板451及び対向基板452の間隔を保持するため、スペーサ453が混入されてい
る。なお、シール部材454には、液晶455を封入するための開口部が形成されており
、この開口部は、液晶455の封入後に封止材456で封止されている。
【0055】
ここで、素子基板451の対向基板452側の表面であって、シール部材454の一辺
の外側には、Y方向に延在するデータ線を駆動するデータ線駆動回路401が形成されて
いる。さらに、この一辺には複数の接続電極457が形成されて、この接続電極457を
通して各種信号が入力される。また、シール部材454の前記一辺の両側の辺には、X方
向に延在する後述する走査線を駆動する走査線駆動回路402が形成されている。
【0056】
<5.電子機器>
次に、上述した実施形態に係る電気光学装置1を適用した電子機器について説明する。
図10に、電気光学装置1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、
複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、ならびに表示ユニットとして
の電気光学装置1を有する。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光
学装置1に表示される画面がスクロールされる。
【符号の説明】
【0057】
1…電気光学装置、10…画素マトリクス、20…走査線駆動回路、30、30A…デ
ータ線駆動回路、31、31A…マルチプレクサ、41…画素電極、42…共通電極、4
3…TFT、X…データ線、Y…走査線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられた画素を有する電気光学装
置において、
前記画素に設けられた画素電極と前記データ線とが、前記走査線からの制御信号に応じ
てスイッチング素子を介して接続されるとともに前記画素電極と対向して共通電極が形成
され、
当該共通電極の電位を基準として高電位側の正極性画像信号及び低電位側の負極性画像
信号を、複数本で制御するマルチプレクサ単位回路を介して前記データ線に供給するデー
タ線駆動回路を有し、
前記データ線駆動回路は、前記マルチプレクサ単位回路内において前記画素電極のうち
前記走査線及び前記データ線が延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性となり、か
つ、異なるマルチプレクサ単位回路毎の境界で制御されるものが同じ極性となるように前
記正極性及び負極性画像信号を供給することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記データ線駆動回路は、前記画素電極が、それぞれ、連続する少なくとも2つ以上の
フレームにおいて同じ極性となるように、前記正極性及び負極性画像信号を供給すること
を特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記データ線駆動回路は、フレーム単位で前記画素電極のうち極性が異なるもの同士の
境界が変わるように、前記正極性及び負極性画像信号を供給することを特徴とする請求項
1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
複数の走査線と複数のデータ線との交差に対応して設けられた画素を有する電気光学装
置の駆動方法において、
前記画素に設けられた画素電極と前記データ線とを、前記走査線からの制御信号に応じ
てスイッチング素子を介して接続し、
前記画素電極と対向して形成された共通電極の電位を基準として高電位側の正極性画像
信号及び低電位側の負極性画像信号を、複数本で制御するマルチプレクサ単位回路を介し
て前記データ線に供給し、
前記マルチプレクサ単位回路において前記画素電極のうち前記走査線及び前記データ線
が延びる方向に隣接する2以上のものが同じ極性とし、かつ、異なるマルチプレクサ単位
回路毎の境界で制御されるものが同じ極性となるように前記正極性及び負極性画像信号を
供給することを特徴とする電気光学装置の駆動方法。
【請求項5】
前記画素電極が、それぞれ、連続する少なくとも2つ以上のフレームにおいて同じ極性
となるように、前記正極性及び負極性画像信号を供給することを特徴とする請求項4に記
載の電気光学装置の駆動方法。
【請求項6】
フレーム単位で前記画素電極のうち極性が異なるもの同士の境界が変わるように、前記
正極性及び負極性画像信号を前記データ線に供給することを特徴とする請求項4または5
に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機
器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−123411(P2012−123411A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23875(P2012−23875)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2005−156682(P2005−156682)の分割
【原出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】