電気光学装置
【課題】 電気光学装置に用いるインバータ回路に関する。
【解決手段】 インバータのNチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記N型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極とを有する。またインバータ回路のPチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられたゲイト電極と、を有する。
【解決手段】 インバータのNチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記N型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極とを有する。またインバータ回路のPチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられたゲイト電極と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】本発明は、駆動用スイッチング素子として薄膜トランジスタ(以下TFTという)を使用した液晶電気光学装置における画像表示方法において、特に中間的な色調や濃淡の表現を得るための階調表示方法に関するものである。本発明は、特に、外部からいかなるアナログ信号をもアクティブ素子に印加することなく、階調表示をおこなう、いわゆる完全デジタル階調表示に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶組成物はその物質特性から、分子軸に対して水平方向と垂直方向に誘電率が異なるため、外部の電解に対して水平方向に配列したり、垂直方向に配列したりさせることが容易にできる。液晶電気光学装置は、この誘電率の異方性を利用して、光の透過光量または散乱量を制御することでON/OFF、すなわち明暗の表示をおこなっている。液晶材料としては、TN(ツイステッド・ネマティック)液晶、STN(スーパー・ツイステッド・ネマティック)液晶、強誘電性液晶、ポリマー液晶あるいは分散型液晶とよばれる材料が知られている。液晶は外部電圧に対して、無限に短い時間に反応するのではなく、応答するまでにある一定の時間がかかることが知られている。その値はそれぞれの液晶材料に固有で、TN液晶の場合には、数10msec、STN液晶の場合には数100msec、強誘電性液晶の場合には数10μsec、分散型あるいはポリマー液晶の場合には数10msecである。
【0003】液晶を利用した電気光学装置のうちでもっとも優れた画質が得られるものは、アクティブマトリクス方式を用いたものであった。従来のアクティブマトリクス型の液晶電気光学装置では、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用い、TFTにはアモルファスまたは多結晶型の半導体を用い、1つの画素にP型またはN型のいずれか一方のみのタイプのTFTを用いたものであった。即ち、一般にはNチャネル型TFT(NTFTという)を画素に直列に連結している。そして、マトリクスの信号線に信号電圧を流し、それぞれの信号線の直交する箇所に設けられたTFTに双方から信号が印加されるとTFTがON状態となることを利用して液晶画素のON/OFFを個別に制御するものであった。このような方法によって画素の制御をおこなうことによって、コントラストの大きい液晶電気光学装置を実現することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなアクティブマトリクス方式では、明暗や色調といった、階調表示をおこなうことは極めて難しかった。従来、階調表示は液晶の光透過性が、印加される電圧の大きさによって変わることを利用する方式が検討されていた。これは、例えば、マトリクス中のTFTのソース・ドレイン間に、適切な電圧を周辺回路から供給し、その状態でゲイト電極に信号電圧を印加することによって、液晶画素にその大きさの電圧をかけようとするものであった。
【0005】しかしながら、このような方法では、例えば、TFTの不均質性やマトリクス配線の不均質性のために、実際には液晶画素にかかる電圧は、各画素によって、最低でも数%も異なってしまった。これに対し、例えば、液晶の光透過度の電圧依存性は、極めて非線型性が強く、ある特定の電圧で急激に光透過性が変化するため、たとえ数%の違いでも、光透過性が著しく異なってしまうことがあった。例えば、TN液晶ではON/OFF状態の中間状態の電位差は約1.2Vであり、16階調を達成せんとする場合には、75mVの精度で、電位差を制御する必要があった。そのため、実際には16階調を達成することが限界であった。
【0006】このように階調表示が困難であるということは、液晶ディスプレー装置が従来の一般的な表示装置であるCRT(陰極線管)と競争してゆく上で極めて不利であった。
【0007】本発明は従来、困難であった階調表示を実現させるための全く新しい方法を提案することを目的とするものである。
【0008】
【問題を解決するための手段】さて、液晶にかける電圧をアナログ的に制御することによって、その光透過性を制御することが可能であることを先に述べたが、本発明人らは、液晶に電圧のかかっている時間を制御することによって、視覚的に階調を得ることができることを見出した。
【0009】例えば、代表的な液晶材料であるTN(ツイステッド・ネマチック)液晶を用いた場合において、例えば、図1(a)において、Aで示されるような矩形パルスを印加する場合と、Cで示されるような矩形パルスを印加する場合を比べて見ると、Aの方が明るいことを見出した。ここで、パルスの周期は1msecとした。結果的には、Aが最も明るく、以下、B、C、Dの順であった。このことは全く予想外のことである。なぜならば、通常の上記のTN液晶材料においては、1msecという時間はあまりにも短く、そのような短時間にはTN液晶は反応しないのである。したがって、いずれの場合にも液晶はON状態を実現することは不可能なはずである。しかしながら、実際には液晶は中間的な濃さを実現できた。
【0010】その具体的な原理についてはまだ詳細にわかっていない。しかしながら、本発明人らは、この現象を利用して階調表現が可能であることを見いだしたのである。すなわち、液晶材料が反応しないような周期で液晶材料にパルスを印加するときにパルスの幅を制御することによって、中間的な明るさをデジタル制御で実現することが、まさに本発明の特徴とするものである。本発明人らの研究の結果、このような中間的な濃度を得るためのパルスの周期はTN液晶の場合には10msec以下が必要であることがわかった。
【0011】ここで、パルスの周期という語句について、その意味を明確にする。すなわち、この場合には、複数のパルスを連続的に液晶に印加するのであるが、この場合のパルスの周期とは、1つのパルスが始まってから、次のパルスが始まるまでの間の時間のことをいう。したがって、パルスの繰り返し周波数の逆数となる。また、パルス幅とは、パルスが電圧状態にある時間のことをいう。したがって、図1において、例えばCのパルス列の場合には、Tがパルスの周期であり、τがパルス幅である。
【0012】同様な効果は、STN液晶においても、強誘電性液晶においても、また、ポリマー液晶あるいは分散型液晶においても見られた。いずれも、その応答時間よりも短い周期のパルスを加えることによって、中間的な色調が得られることが明らかになった。すなわち、STN液晶においては、100msec以下、のぞましくは10msec以下、強誘電性液晶においては10μsec以下、のぞましくは1μsec以下、ポリマー液晶あるいは分散型液晶においては10msec以下、のぞましくは1msec以下の周期のパルスを加えることによって、階調表示が得られた。
【0013】通常は、テレビ等の画像では1秒間に30枚の静止画が次々に繰り出されて動画を形成する。したがって、1枚の静止画が継続する時間は約30msecである。この時間は人間の目にはあまりにも早すぎて、文字通り『目にも止まらない』時間であり、結果として、視覚的には静止画を1枚1枚識別することはできない。ともかく、通常の動画を得るには、1枚の静止画は長くても100msec以上継続することはできない。
【0014】本発明を利用して256階調の階調表示をおこなうとすれば、例えば、T=3msecとすれば、この3msecの時間を、少なくとも256分割しうるパルス電圧印加方法を、画素に電圧を印加する方法として採用する必要がある。すなわち、最短で3msec/256=11.7μsecのパルス状の電圧が画素にかかるような回路を組む必要がある。実際には、図3に示すように、パルスのデューティー比τ/Tと液晶画素の光透過性は非線型的な関係であり、256階調を得るためには、さらに、パルスのデューティー比を細かく制御することが必要である。
【0015】しかも、実際の画像表示をおこなう場合には、他の画素も考慮しなければならない。実際の画像表示装置では、例えば400行もの行がある。すなわち、後に述べるように、マトリクスのアクティブ素子は100nsecという極短応答性が求められる。そこで、そのような短時間応答性を有する回路の例を図4に示し、以下、その説明をする。
【0016】図4は本発明を実施するために必要な液晶表示装置のアクティブマトリクスの回路の例を示す。本発明では、アクティブ素子は100nsec以下の短時間で応答することが要求されるので高速動作する回路を組む必要がある。そのためには従来のようにNTFTあるいはPTFTだけでスイッチングをおこなうのではなく、図4に示されるようにNTFTとPTFTとが相補的に動作するように構成された、インバータ型の回路を用いることが必要である。
【0017】この例ではN×Mのマトリクスの例を示したものであるが、煩雑さをさけるために、そのうちのn行m列近傍のみを示した。これと同じものを上下左右に展開すれば完全なものが得られる。
【0018】図4には、4つのインバータ回路が描かれている。各インバータ回路は少なくとも1つのNTFTと少なくとも1つのPTFTから構成される。TFTの数は、不良が存在した場合に備えて、さらに増やしても構わない。この回路では、NTFTとPTFTのゲイト電極が信号線Xn に接続され、また、このNTFTとPTFTのソースあるいはドレインの一方は互いに接続され、これは画素Zn,mの電極に接続される。そして、このNTFTおよびPTFTの他方のソースあるいはドレインは、それぞれ、信号線Ym とYm に接続されている。以下では、信号線X1,X2,..XN を、集合的に、あるいは個別にX線とよび、信号線Y1,Y2,..YM を、集合的に、あるいは個別にY線とよぶ。また、図では画素のキャパシタと並列に人為的にキャパシタが挿入されている。このとき挿入されたキャパシタは自然放電によって、画素の電圧が低下する速度を減速せしめる作用を有する。画素の電圧の降下は画素のばらつきによって決定されるものであるので、特に本発明のように、画素に印加される電圧が一定のものとして階調表示をおこなおうとする発明においては、画質の低下を招くものである。しかしながら、このように画素に並列にキャパシタを挿入することにより、画素のばらつきによる電圧降下は著しく抑えることができ、高画質を得ることができる。
【0019】次に、このような回路を用いた場合の回路の動作例を図1(b)および図2を用いて説明する。このマトリクス回路は図1(a)に示されるようなパルス状の電圧を液晶セルに印加するように動作する必要がある。そこで、このようなパルスを発生するためにX線およびY線に印加される信号電圧の概要を図1(b)に示す。例として、400×640のマトリクスを考える。
【0020】X線に印加される信号は、例えばXn 線の場合は、V(Xn )で示されるが、これは、周期Tで繰り返されるひとまとまりのパルスの中に、実は256個のパルス(以下、サブパルスという)が含まれており、さらにその256個のサブパルスのそれぞれは、400個の要素が入ったパルス列から構成されていることがわかる。ここで、400という数字はマトリクスの行数である。したがって、X線に印加されるパルスの最小単位はT=3msecとすれば、29nsecである。
【0021】一方、Y線には、時間T/256の間に、図のV(Y1 )、V(Ym )、V(Ym+1 )、V(Y400 )で示されるようなパルスが、それぞれのタイミングをずらして印加される。このパルスは、上記X線に印加されるパルスの最小単位パルスよりもさらに短い必要がある。結局、時間Tの間には、各Y線には、256回パルスが印加される。さらに、信号線Ym と対に設けられた信号線Ym には、図1(C)に示されるように、信号線Ym に印加される信号を補完するような信号が印加される。以下の説明では、いちいち、Ym の信号については説明しなくとも、Ym の信号を補完するような(逆相の)信号が加えられるものとする。
【0022】次に、実際の回路の動作を図2に基づいて説明する。まず、第1のサブパルスがそれぞれのX線に印加される。当然のことながら、これらのサブパルスはX線ごとに異なる。一方、Y線には、先に述べたように、パルスが最初にY1 、次にY2 というように順々に印加されてゆく。まず、パルスがY1 に印加されたときを考える。このとき、画素Z1,1 に接続されている、アクティブ素子はOFF状態となる。すなわち、Y1 は電圧状態(VH )であり、かつY1 は電圧状態でない(VL )ので、PTFTとNTFTはインバータとして動作する状態になる。さらにインバータの入力X1 はVH であるから、出力は反転してVL となる。次いで、Y2 に電圧が加わるのであるが、このとき、画素Z1,2 には電圧のかかった状態となる。すなわち、インバータの入力X1 はVL であるからである。そして、その後、X1 はVL を保ったまま、Y2 はVL にY2 はVH に信号が反転する。すると、PTFTとNTFTはインバータではなく、バッファーとして機能する。そして、このとき、X1 はVL であるので、この回路は動作せず、したがって、液晶セルに蓄えられた電荷は保持される。その後、X1 には、VL あるいはVH の信号が加えられるが、どちらの信号が加えられた場合であっても、この回路は動作しない。したがって、液晶セルに蓄えられた電荷は保持され続ける。この状態は、少なくとも、次にY1 がVH に、Y1 がVL になるまで持続する。同様に、Z1,m もZ1,m+1 もZ1,400 も、電圧状態となる、その状態を持続することとなる。。
【0023】このようにして、パルスが順々に印加されてゆき、Ym に印加された場合を考える。今、4つの画素Zn,m 、Zn,m+1 、Zn+1,m 、Zn+1,m+1 に注目しているとすれば、Xn およびXn+1 の第1のサブパルスのm番目および(m+1)番目に注目すればよい。Xn もXn+1 もm番目はVL なので、画素Zn,m 、Zn+1,mは電圧(充電)状態になる。ついで、Ym+1 にパルスが印加される。Xn もXn+1 も(m+1)番目はVL なので、この場合も画素Zn,m+1 、Zn+1,m+1 は充電状態となる。
【0024】次に、図では省略されているが、第2のサブパルスが来たものとする。このとき、Xn もXn+1 もm番目および(m+1)番目がVL ならば、充電状態がなくならず、以上4つの画素は引き続き電圧状態を継続する。その後、第(h−1)のサブパルスまでは、4つの画素とも電圧状態が継続したものとする。
【0025】次に、サブパルスが進んで、第hのサブパルスが来たものとする。図では煩雑さを避けるためにm番目および(m+1)番目以外は省略した。このとき、XnもXn+1 もm番目はVL なので、画素Zn,m 、Zn+1,m は電圧状態を継続する。しかし、Xn+1 には(m+1)番目がVH であるので、画素Zn+1,m は電圧状態が継続するものの、画素Zn+1,m+1 は、アクティブ素子の出力が電圧状態でなくなり、蓄えられていた電荷が放出され、電圧状態は中断される。
【0026】さらに、第iのサブパルスが来たときには、Xn の(m+1)番目はVH となったので、Zn,m+1 の充電状態は解除される。以下、第jおよび第kのサブパルスにおいて、それぞれ、Xn+1 、Xn のm番目がVH となったので、画素Zn,m、Zn+1,m の充電状態がぞれぞれ、第k、第jのサブパルス中に中断される。このような過程を経ることによって、図2のV(Z)に示すように、各画素ごとに電圧状態の時間をデジタル的にコントロールできる。
【0027】このような動作を繰り返すことにより、各画素に加わる電圧パルスの幅を図1(a)のように任意に制御することができる。
【0028】以上の説明から明らかなように、本発明を実施するにあたっては、上記のようなサブパルスは、明確に定義できるパルス状のものでなければならないわけではない。説明を簡単にするために、サブパルスという概念を持ち出したが、特に、サブパルスとサブパルスの間が明確でなく、信号としては、ほとんど境界のないものであっても、本発明を実施できることはあきらかである。さらに、説明をわかりやすくするために、信号のゼロレベルと電圧レベルを明確にしたが、これは、液晶あるいはTFTのしきい値電圧以下であるか、以上であるかという問題だけであるので、絶対にゼロである必要はない。また、電圧とは任意の点の電位を基準とした相対的な物理量であるので、以上の例において、パルスは逆の極性を持つものであっても、構わないことは明らかであろう。さらに、画素の対向電極に適当なオフセット電圧を加えても構わない。また、以上の例では、画面は1行づつ順に走査されていったが、最初にY1,Y3,Y5,... というように走査し、その後、Y2,Y4,Y6,..というように走査する、いわゆる飛び越し走査法も可能であることは言うまでもない。
【0029】
【実施例】『実施例1』 本実施例では図4に示すような回路構成を用いた液晶表示装置を用いて、壁掛けテレビを作製したので、その説明を行う。またその際のTFTは、レーザーアニールを用いた多結晶シリコンとした。
【0030】この回路構成に対応する実際の電極等の配置構成を1つの画素について、図5に示している。まず、本実施例で使用する液晶パネルの作製方法を図6を使用して説明する。図6(A)において、石英ガラス等の高価でない700℃以下、例えば約600℃の熱処理に耐え得るガラス50上にマグネトロンRF(高周波)スパッタ法を用いてブロッキング層51としての酸化珪素膜を1000〜3000Åの厚さに作製する。プロセス条件は酸素100%雰囲気、成膜温度150℃、出力400〜800W、圧力0.5Paとした。タ−ゲットに石英または単結晶シリコンを用いた成膜速度は30〜100Å/分であった。
【0031】この上にシリコン膜をプラズマCVD法により珪素膜52を作製した。成膜温度は250℃〜350℃で行い本実施例では320℃とし、モノシラン(SiH4)を用いた。モノシラン(SiH4)に限らず、ジシラン(Si2H6) またトリシラン(Si3H8)を用いてもよい。これらをPCVD装置内に3Paの圧力で導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.02〜0.10W/cm2 が適当であり、本実施例では0.055W/cm2 を用いた。また、モノシラン(SiH4)の流量は20SCCMとし、その時の成膜速度は約120Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。またTFTのチャネル領域となるシリコン層の成膜にはこのプラズマCVDだけでなく、スパッタ法、減圧CVD法を用いても良く、以下にその方法を簡単に述べる。
【0032】スパッタ法で行う場合、スパッタ前の背圧を1×10-5Pa以下とし、単結晶シリコンをタ−ゲットとして、アルゴンに水素を20〜80%混入した雰囲気で行った。例えばアルゴン20%、水素80%とした。成膜温度は150℃、周波数は13.56MHz、スパッタ出力は400〜800W、圧力は0.5Paであった。
【0033】減圧気相法で形成する場合、結晶化温度よりも100〜200℃低い450〜550℃、例えば530℃でジシラン(Si2H6) またはトリシラン(Si3H8) をCVD装置に供給して成膜した。反応炉内圧力は30〜300Paとした。成膜速度は50〜250Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。
【0034】これらの方法によって形成された被膜は、酸素が5×1021cm-3以下であることが好ましい。結晶化を助長させるためには、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とすることが望ましいが、少なすぎると、バックライトによりオフ状態のリ−ク電流が増加してしまうため、この濃度を選択した。この酸素濃度が高いと、結晶化させにくく、レーザーアニ−ル温度を高くまたはレーザーアニ−ル時間を長くしなければならない。水素は4×1020cm-3であり、珪素4×1022cm-3として比較すると1原子%であった。
【0035】また、ソ−ス、ドレインに対してより結晶化を助長させるため、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とし、ピクセル構成するTFTのチャネル形成領域のみに酸素をイオン注入法により5×1020〜5×1021cm-3となるように添加してもよい。上記方法によって、アモルファス状態の珪素膜を500〜5000Å、本実施例では1000Åの厚さに成膜した。
【0036】その後、フォトレジスト53をマスクP1を用いてソース・ドレイン領域のみ開孔したパターンを形成した。その上に、プラズマCVD法によりn型の活性層となる珪素膜54を作製した。成膜温度は250℃〜350℃でおこない、本実施例では320℃とし、モノシラン(SiH4)とモノシランベースのフォスフィン(PH3) 3%濃度のものを用いた。これらをPCVD装置内5Paの圧力でに導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.05〜0.20W/cm2 が適当であり、本実施例では0.120W/cm2 を用いた。
【0037】この方法によって出来上がったn型シリコン層の比導電率は2×10-1〔Ωcm-1〕程度となった。膜厚は50Åとした。こうして、図6(A)を得た。その後リフトオフ法を用いて、レジスト53を除去し、ソース・ドレイン領域55、56を形成した。
【0038】同様のプロセスを用いて、p型の活性層を形成した。その際の導入ガスは、モノシラン(SiH4)とモノシランベースのジボラン(B2H6)5%濃度のものを用いた。これらをPCVD装置内に4Paの圧力でに導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.05〜0.20W/cm2 が適当であり、本実施例では0.120W/cm2 を用いた。この方法によって出来上がったp型シリコン層の比導電率は5×10-2〔Ωcm-1〕程度となった。膜厚は50Åとした。こうして、図6(B)を得た。その後N型領域と同様にリフトオフ法を用いて、ソース・ドレイン領域59、60を形成した。その後、マスクP3を用いて珪素膜52をエッチング除去し、Nチャネル型薄膜トランジスタ用アイランド領域63とPチャネル型薄膜トランジスタ用アイランド領域64を形成した。
【0039】その後、図6(C)に示すように、XeClエキシマレーザーを用いて、ソース・ドレイン・チャネル領域をレーザーアニールすると同時に、活性層にレーザードーピングを行なった。この時のレーザーエネルギーは、閾値エネルギーが130mJ/cm2 で、膜厚全体が溶融するには220mJ/cm2 が必要となる。しかし、最初から220mJ/cm2 以上のエネルギーを照射すると、膜中に含まれる水素が急激に放出されるために、膜の破壊が起きる。そのために低エネルギーで最初に水素を追い出した後に溶融させる必要がある。本実施例では最初150mJ/cm2 で水素の追い出しを行なった後、230mJ/cm2 で結晶化をおこなった。
【0040】この上に酸化珪素膜をゲイト絶縁膜として500〜2000Å例えば1000Åの厚さに形成した。これはブロッキング層としての酸化珪素膜の作製と同一条件とした。この成膜中に弗素を少量添加し、ナトリウムイオンの固定化をさせてもよい。
【0041】この後、この上側にリンが1〜5×1021cm-3の濃度に入ったシリコン膜またはこのシリコン膜とその上にモリブデン(Mo)、タングステン(W),MoSi2 またはWSi2との多層膜を形成した。これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニングして図6(D) を得た。NTFT用のゲイト電極66、PTFT用のゲイト電極67を形成した。例えばチャネル長7μm、ゲイト電極としてリンド−プ珪素を0.2μm、その上にモリブデンを0.3μmの厚さに形成した。同時に、図7(D’)に示すように、ゲイト配線65とそれに並行して配置された配線68もパターニングした。
【0042】また、ゲート電極材料としては、上記材料以外に、例えばアムミニウム(Al)も使用することができる。アルミニウムを用いた場合、これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニング後、その表面を陽極酸化することで、セルファライン工法が適用可能なため、ソース・ドレインのコンタクトホールをよりゲートに近い位置に形成することが出来るため、移動度、スレッシュホールド電圧の低減からさらにTFTの特性を上げることができる。
【0043】かくすると、400℃以上にすべての工程で温度を加えることがなくC/TFTを作ることができる。そのため、基板材料として、石英等の高価な基板を用いなくてもよく、本発明の大画面の液晶表示装置にきわめて適したプロセスであるといえる。
【0044】図6(E)において、層間絶縁物69を前記したスパッタ法により酸化珪素膜の形成として行った。この酸化珪素膜の形成はLPCVD法、光CVD法、常圧CVD法を用いてもよい。例えば0.2〜0.6μmの厚さに形成し、その後、第5のフォトマスクP5を用いて電極用の窓79を形成した。その後、さらに、これら全体にアルミニウムを0.3μmの厚みにスパッタ法により形成し第6のフォトマスクP6を用いてリ−ド74およびコンタクト73、75を作製した。こうして、図6(E)と図7(E’)を得た。その後、表面を平坦化用有機樹脂77、例えば透光性ポリイミド樹脂を塗布形成し、再度の電極穴あけを第7のフォトマスクP7にて行った。さらに、これら全体にITO(インジウム酸化錫)を0.1μmの厚みにスパッタ法により形成し第8のフォトマスクP8を用いて画素電極71を形成した。このITOは室温〜150℃で成膜し、200〜400℃の酸素または大気中のアニ−ルにより成就した。こうして、図6(F)と図7(F’)を得た。図7R>7(F’)のA−A’の断面図を図7(G)に示す。実際には、この上に液晶材料をはさんで、対向電極が設けられ、図に示すように対向電極と電極71の間に静電容量が生じる。それと同時に配線68と電極71との間にも静電容量が生じる。そして、配線68を対向電極と同電位に保つことによって、図4に示したように、液晶画素に並列に容量が挿入された回路を構成することとなる。特に本実施例のように配置することによって、配線68はゲイト配線65と並行であるので、2配線間の寄生容量が少なく、したがって、ゲイト配線を伝播する信号の減衰や遅延を減らす効果がある。
【0045】また、このようにして形成された配線68は、接地して使用される場合には、各マトリクスの終端に設けられる保護回路の接地線として使用できる。保護回路は、図10に示されるように、周辺の駆動回路と画素のあいだに設けられ、図11と図12で示されるような回路をいう。いずれも画素の配線に過大な電圧がかかるとON状態となり、電圧を取り去る作用を有する。これらの保護回路は、シリコンのようなドーピングされた、あるいはドーピングされていない半導体材料や、ITOのような透明導電材料、あるいは通常の配線材料を用いて構成される。したがって、画素の回路を形成するときに同時に形成することが可能である。
【0046】このことは、例えば、図11の各保護回路が、NTFTやPTFT、あるいはそれらをあわせたC/TFTで構成されていることから明らかであろう。また、図12の保護回路はTFTは使用されないが、ダイオードは、例えばPIN接合によって構成され、また、特にツェナー特性を重視するダイオードはNIN、PIP、あるいはNPN、PNPといった構造を有し、いちいち説明するまでもなく、本実施例で示した作製方法を援用することによって作製されうることは自明である。
【0047】さて、以上のようにして得られたTFTの電気的な特性はPTFTで移動度は40(cm2/Vs)、Vthは−5.9(V)で、NTFTで移動度は80(cm2/Vs)、Vthは5.0(V)であった。
【0048】上記の様な方法に従って作製された液晶電気光学装置用の一方の基板を得ることが出来た。この液晶表示装置の電極等の配置の様子を図5に示している。本発明によるインバータを構成するTFTが信号線Y1 とY1 の間、およびY2 とY2 の間に、信号線X1 、X2 に平行に設けられている。このようなマトリクス構成をを左右、上下に繰り返すことにより、640×480、1280×960といった大画素の液晶表示装置とすることができる。本実施例では1920×400とした。この様にして第1の基板を得た。
【0049】他方の基板の作製方法を図8に示す。ガラス基板上にポリイミドに黒色顔料を混合したポリイミド樹脂をスピンコート法を用いて1μmの厚みに成膜し、第9のフォトマスクP9を用いてブラックストライプ81を作製した。その後、赤色顔料を混合したポリイミド樹脂をスピンコート法を用いて1μmの厚みに成膜し、第10のフォトマスクP10を用いて赤色フィルター83を作製した。同様にしてマスクP11、P12を使用し、緑色フィルター85および青色フィルター86を作製した。これらの作製中各フィルターは350℃にて窒素中で60分の焼成を行なった。その後、やはりスピンコート法を用いて、レベリング層89を透明ポリイミドを用いて作製した。
【0050】その後、これら全体にITO(インジューム酸化錫)を0.1μmの厚みにスパッタ法により形成し第10のフォトマスクP10を用いて共通電極90を形成した。このITOは室温〜150℃で成膜し、200〜300℃の酸素または大気中のアニ−ルにより成就し、第2の基板を得た。
【0051】前記基板上に、オフセット法を用いて、ポリイミド前駆体を印刷し、非酸化性雰囲気たとえば窒素中にて350℃1時間焼成を行った。その後、公知のラビング法を用いて、ポリイミド表面を改質し、少なくとも初期において、液晶分子を一定方向に配向させる手段を設けた。
【0052】その後、前記第一の基板と第二の基板によって、ネマチック液晶組成物を挟持し、周囲をエポキシ性接着剤にて固定した。基板上のリードにTAB形状の駆動ICと共通信号、電位配線を有するPCBを接続し、外側に偏光板を貼り、透過型の液晶電気光学装置を得た。これと冷陰極管を3本配置した後部照明装置、テレビ電波を受信するチューナーを接続し、壁掛けテレビとして完成させた。従来のCRT方式のテレビと比べて、平面形状の装置となったために、壁等に設置することも出来るようになった。この液晶テレビの動作は図1R>1、図2に示したものと、実質的に同等な信号を液晶画素に印加することにより確認された。
【0053】『実施例2』 本実施例では図4に示すような回路構成を用いた液晶表示装置を用いて、壁掛けテレビを作製したので、その説明を行う。またその際のTFTは、レーザーアニールを用いた多結晶シリコンとした。
【0054】以下では、TFT部分の作製方法について図9にしたがって記述する。図9(A)において、石英ガラス等の高価でない700℃以下、例えば約600℃の熱処理に耐え得るガラス100上にマグネトロンRF(高周波) スパッタ法を用いてブロッキング層101としての酸化珪素膜を1000〜3000Åの厚さに作製する。プロセス条件は酸素100%雰囲気、成膜温度15℃、出力400〜800W、圧力0.5Paとした。タ−ゲットに石英または単結晶シリコンを用いた成膜速度は30〜100Å/分であった。
【0055】この上にシリコン膜をプラズマCVD法により珪素膜102を作製した。成膜温度は250℃〜350℃で行い本実施例では320℃とし、モノシラン(SiH4)を用いた。モノシラン(SiH4)に限らず、ジシラン(Si2H6) またトリシラン(Si3H8) を用いてもよい。これらをPCVD装置内に3Paの圧力で導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.02〜0.10W/cm2 が適当であり、本実施例では0.055W/cm2 を用いた。また、モノシラン(SiH4)の流量は20SCCMとし、その時の成膜速度は約120Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。またTFTのチャネル領域となるシリコン層の成膜にはこのプラズマCVDだけでなく、スパッタ法、減圧CVD法を用いても良く、以下にその方法を簡単に述べる。
【0056】スパッタ法で行う場合、スパッタ前の背圧を1×10-5Pa以下とし、単結晶シリコンをタ−ゲットとして、アルゴンに水素を20〜80%混入した雰囲気で行った。例えばアルゴン20%、水素80%とした。成膜温度は150℃、周波数は13.56MHz、スパッタ出力は400〜800W、圧力は0.5Paであった。
【0057】減圧気相法で形成する場合、結晶化温度よりも100〜200℃低い450〜550℃、例えば530℃でジシラン(Si2H6) またはトリシラン(Si3H8) をCVD装置に供給して成膜した。反応炉内圧力は30〜300Paとした。成膜速度は50〜250Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。
【0058】これらの方法によって形成された被膜は、酸素が5×1021cm-3以下であることが好ましい。結晶化を助長させるためには、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とすることが望ましいが、少なすぎると、バックライトによりオフ状態のリ−ク電流が増加してしまうため、この濃度を選択した。この酸素濃度が高いと、結晶化させにくく、レーザーアニ−ル温度を高くまたはレーザーアニ−ル時間を長くしなければならない。水素は4×1020cm-3であり、珪素4×1022cm-3として比較すると1原子%であった。
【0059】また、ソ−ス、ドレインに対してより結晶化を助長させるため、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とし、ピクセル構成するTFTのチャネル形成領域のみに酸素をイオン注入法により5×1020〜5×1021cm-3となるように添加してもよい。上記方法によって、アモルファス状態の珪素膜を500〜5000Å、本実施例では1000Åの厚さに成膜した。
【0060】その後、フォトレジスト103をマスクP1を用いてNTFTのソース・ドレイン領域となるべき領域のみ開孔したパターンを形成した。そして、レジスト103をマスクとして、リンイオンをイオン注入法により、2×1014〜5×1016cm-2、好ましくは2×1016cm-2だけ、注入し、n型不純物領域104を形成した。その後、レジスト103は除去された。
【0061】同様に、レジスト105を塗布し、マスクP2を用いて、PTFTのソース・ドレイン領域となるべき領域のみ開孔したパターンを形成した。そして、レジスト105をマスクとして、p型の不純物領域106を形成した。不純物としては、ホウソを用い、やはりイオン注入法を用いて、2×1014〜5×1016cm-2、好ましくは2×1016cm-2だけ、不純物を導入した。このようにして。図9(B)を得た。
【0062】その後、珪素膜102上に、厚さ50〜300nm、例えば、100nmの酸化珪素被膜107を、上記のRFスパッタ法によって形成した。そして、XeClエキシマレーザーを用いて、ソース・ドレイン・チャネル領域をレーザーアニールによって、結晶化・活性化した。この時のレーザーエネルギーは、閾値エネルギーが130mJ/cm2 で、膜厚全体が溶融するには220mJ/cm2 が必要となる。しかし、最初から220mJ/cm2 以上のエネルギーを照射すると、膜中に含まれる水素が急激に放出されるために、膜の破壊が起きる。そのために低エネルギーで最初に水素を追い出した後に溶融させる必要がある。本実施例では最初150mJ/cm2 で水素の追い出しを行なった後、230mJ/cm2 で結晶化をおこなった。さらに、レーザーアニール終了後は酸化珪素膜107は取り去った。
【0063】その後、フォトマスクP3によって、アイランド状のNTFT領域111とPTFT領域112を形成した。この上に酸化珪素膜108をゲイト絶縁膜として500〜2000Å例えば1000Åの厚さに形成した。これはブロッキング層としての酸化珪素膜の作製と同一条件とした。この成膜中に弗素を少量添加し、ナトリウムイオンの固定化をさせてもよい。
【0064】この後、この上側にリンが1〜5×1021cm-3の濃度に入ったシリコン膜またはこのシリコン膜とその上にモリブデン(Mo)、タングステン(W),MoSi2 またはWSi2との多層膜を形成した。これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニングして図9(D) を得た。NTFT用のゲイト電極109、PTFT用のゲイト電極110を形成した。例えばチャネル長7μm、ゲイト電極としてリンド−プ珪素を0.2μm、その上にモリブデンを0.3μmの厚さに形成した。図には示されていないが、実施例1の場合と同様にゲイト配線とそれに平行な配線も形成した。
【0065】この配線の材料としては、上記の材料以外にも、例えばアルミニウム(Al)を用いることも可能である。アルミニウムを用いた場合、これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニング後、その表面を陽極酸化することで、セルファライン工法が適用可能なため、ソース・ドレインのコンタクトホールをよりゲートに近い位置に形成することが出来るため、移動度、スレッシュホールド電圧の低減からさらにTFTの特性を上げることができる。
【0066】かくすると、400℃以上にすべての工程で温度を加えることがなくC/TFTを作ることができる。そのため、基板材料として、石英等の高価な基板を用いなくてもよく、本発明の大画面の液晶表示装置にきわめて適したプロセスであるといえる。
【0067】図9(E)において、層間絶縁物113を前記したスパッタ法により酸化珪素膜の形成として行った。この酸化珪素膜の形成はLPCVD法、光CVD法、常圧CVD法を用いてもよい。例えば0.2〜0.6μmの厚さに形成し、その後、第5のフォトマスクP5を用いて電極用の窓117を形成した。その後、さらに、これら全体にアルミニウムを0.3μmの厚みにスパッタ法により形成し第6のフォトマスクP6を用いてリ−ド116およびコンタクト114、115を作製した後、表面を平坦化用有機樹脂119、例えば透光性ポリイミド樹脂を塗布形成し、再度の電極穴あけを第7のフォトマスクP7にて行った。さらに、これら全体にITO(インジウム酸化錫)を0.1μmの厚みにスパッタ法により形成し第8のフォトマスクP8を用いて画素電極118を形成した。このITOは室温〜150℃で成膜し、200〜400℃の酸素または大気中のアニ−ルにより成就した。
【0068】得られたTFTの電気的な特性はPTFTで移動度は35(cm2/Vs)、Vthは−5.9(V)で、NTFTで移動度は90(cm2/Vs)、Vthは4.8(V)であった。
【0069】上記の様な方法に従って作製された液晶電気光学装置用の一方の基板を得ることが出来た。他方の基板の作製方法は実施例1と同じであるので省略する。その後、前記第一の基板と第二の基板によって、ネマチック液晶組成物を挟持し、周囲をエポキシ性接着剤にて固定した。基板上のリードにTAB形状の駆動ICと共通信号、電位配線を有するPCBを接続し、外側に偏光板を貼り、透過型の液晶電気光学装置を得た。これと冷陰極管を3本配置した後部照明装置、テレビ電波を受信するチューナーを接続し、壁掛けテレビとして完成させた。従来のCRT方式のテレビと比べて、平面形状の装置となったために、壁等に設置することも出来るようになった。この液晶テレビの動作は図1、図2に示したものと、実質的に同等な信号を液晶画素に印加することにより確認された。
【0070】
【発明の効果】本発明では、従来のアナログ方式の階調表示に対し、デジタル方式の階調表示を行うことを特徴としている。その効果として、例えば640×400ドットの画素数を有する液晶電気光学装置を想定したばあい、合計256,000個のTFTすべての特性をばらつき無く作製することは、非常に困難を有し、現実的には量産性、歩留りを考慮すると、16階調表示が限界と考えられているのに対し、本発明のように、全くアナログ的な信号を加えることなく純粋にデジタル制御のみで階調表示することにより、256階調表示以上の階調表示が可能となった。完全なデジタル表示であるので、TFTの特性ばらつきによる階調の曖昧さは全くなくなり、したがって、TFTのばらつきが少々あっても、極めて均質な階調表示が可能であった。したがって、従来はばらつきの少ないTFTを得るために極めて歩留りが悪かったのに対し、本発明によって、TFTの歩留りがさほど問題とされなくなったため、液晶装置の歩留りは向上し、作製コストも著しく抑えることができた。
【0071】例えば640×400ドットの256,000組のTFTを300mm角に作成した液晶電気光学装置に対し通常のアナログ的な階調表示を行った場合、TFTの特性ばらつきが約±10%存在するために、16階調表示が限界であった。しかしながら、本発明によるデジタル階調表示をおこなった場合、TFT素子の特性ばらつきの影響を受けにくいために、256階調表示まで可能になりカラー表示ではなんと16,777,216色の多彩であり微妙な色彩の表示が実現できている。テレビ映像の様なソフトを映す場合、例えば同一色からなる『岩』でもその微細な窪み等から微妙に色合いが異なる。自然の色彩に近い表示を行おうとした場合、16階調では困難を要する。本発明による階調表示によって、これらの微細な色調の変化を付けることが可能になった。
【0072】本発明の実施例では、シリコンを用いたTFTを中心に説明を加えたが、ゲルマニウムを用いたTFTも同様に使用できる。とくに、単結晶ゲルマニウムの電子移動度は3600cm2 /Vs、ホール移動度は1800cm2 /Vsと、単結晶シリコンの値(電子移動度で1350cm2 /Vs、ホール移動度で480cm2 /Vs)の特性を上回っているため、高速動作が要求される本発明を実行する上で極めて優れた材料である。また、ゲルマニウムは非晶質状態から結晶状態へ遷移する温度がシリコンに比べて低く、低温プロセスに向いている。また、結晶成長の際の核発生率が小さく、したがって、一般に、多結晶成長させた場合には大きな結晶が得られる。このようにゲルマニウムはシリコンと比べても遜色のない特性を有している。
【0073】本発明の技術思想を説明するために、主として液晶を用いた電気光学装置、特に表示装置を例として説明を加えたが、本発明の思想を適用するには、なにも表示装置である必要はなく、いわゆるプロジェクション型テレビやその他の光スイッチ、光シャッターであってもよい。さらに、電気光学材料も液晶に限らず、電界、電圧等の電気的な影響を受けて光学的な特性の変わるものであれば、本発明を適用できることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による駆動波形の例を示す。
【図2】 本発明による駆動波形の例を示す。
【図3】 本発明による液晶の階調表示特性の例を示す。
【図4】 本発明によるマトリクス構成の例を示す。
【図5】 実施例による素子の平面構造を示す。
【図6】 実施例によるTFTのプロセスを示す。
【図7】 実施例によるTFTのプロセスを示す。
【図8】 実施例によるカラーフィルターの工程を示す。
【図9】 実施例によるTFTのプロセスを示す。
【図10】実施例における保護回路の接続例を示す。
【図11】実施例における保護回路の例を示す。
【図12】実施例における保護回路の例を示す。
【0001】
【発明の利用分野】本発明は、駆動用スイッチング素子として薄膜トランジスタ(以下TFTという)を使用した液晶電気光学装置における画像表示方法において、特に中間的な色調や濃淡の表現を得るための階調表示方法に関するものである。本発明は、特に、外部からいかなるアナログ信号をもアクティブ素子に印加することなく、階調表示をおこなう、いわゆる完全デジタル階調表示に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶組成物はその物質特性から、分子軸に対して水平方向と垂直方向に誘電率が異なるため、外部の電解に対して水平方向に配列したり、垂直方向に配列したりさせることが容易にできる。液晶電気光学装置は、この誘電率の異方性を利用して、光の透過光量または散乱量を制御することでON/OFF、すなわち明暗の表示をおこなっている。液晶材料としては、TN(ツイステッド・ネマティック)液晶、STN(スーパー・ツイステッド・ネマティック)液晶、強誘電性液晶、ポリマー液晶あるいは分散型液晶とよばれる材料が知られている。液晶は外部電圧に対して、無限に短い時間に反応するのではなく、応答するまでにある一定の時間がかかることが知られている。その値はそれぞれの液晶材料に固有で、TN液晶の場合には、数10msec、STN液晶の場合には数100msec、強誘電性液晶の場合には数10μsec、分散型あるいはポリマー液晶の場合には数10msecである。
【0003】液晶を利用した電気光学装置のうちでもっとも優れた画質が得られるものは、アクティブマトリクス方式を用いたものであった。従来のアクティブマトリクス型の液晶電気光学装置では、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用い、TFTにはアモルファスまたは多結晶型の半導体を用い、1つの画素にP型またはN型のいずれか一方のみのタイプのTFTを用いたものであった。即ち、一般にはNチャネル型TFT(NTFTという)を画素に直列に連結している。そして、マトリクスの信号線に信号電圧を流し、それぞれの信号線の直交する箇所に設けられたTFTに双方から信号が印加されるとTFTがON状態となることを利用して液晶画素のON/OFFを個別に制御するものであった。このような方法によって画素の制御をおこなうことによって、コントラストの大きい液晶電気光学装置を実現することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなアクティブマトリクス方式では、明暗や色調といった、階調表示をおこなうことは極めて難しかった。従来、階調表示は液晶の光透過性が、印加される電圧の大きさによって変わることを利用する方式が検討されていた。これは、例えば、マトリクス中のTFTのソース・ドレイン間に、適切な電圧を周辺回路から供給し、その状態でゲイト電極に信号電圧を印加することによって、液晶画素にその大きさの電圧をかけようとするものであった。
【0005】しかしながら、このような方法では、例えば、TFTの不均質性やマトリクス配線の不均質性のために、実際には液晶画素にかかる電圧は、各画素によって、最低でも数%も異なってしまった。これに対し、例えば、液晶の光透過度の電圧依存性は、極めて非線型性が強く、ある特定の電圧で急激に光透過性が変化するため、たとえ数%の違いでも、光透過性が著しく異なってしまうことがあった。例えば、TN液晶ではON/OFF状態の中間状態の電位差は約1.2Vであり、16階調を達成せんとする場合には、75mVの精度で、電位差を制御する必要があった。そのため、実際には16階調を達成することが限界であった。
【0006】このように階調表示が困難であるということは、液晶ディスプレー装置が従来の一般的な表示装置であるCRT(陰極線管)と競争してゆく上で極めて不利であった。
【0007】本発明は従来、困難であった階調表示を実現させるための全く新しい方法を提案することを目的とするものである。
【0008】
【問題を解決するための手段】さて、液晶にかける電圧をアナログ的に制御することによって、その光透過性を制御することが可能であることを先に述べたが、本発明人らは、液晶に電圧のかかっている時間を制御することによって、視覚的に階調を得ることができることを見出した。
【0009】例えば、代表的な液晶材料であるTN(ツイステッド・ネマチック)液晶を用いた場合において、例えば、図1(a)において、Aで示されるような矩形パルスを印加する場合と、Cで示されるような矩形パルスを印加する場合を比べて見ると、Aの方が明るいことを見出した。ここで、パルスの周期は1msecとした。結果的には、Aが最も明るく、以下、B、C、Dの順であった。このことは全く予想外のことである。なぜならば、通常の上記のTN液晶材料においては、1msecという時間はあまりにも短く、そのような短時間にはTN液晶は反応しないのである。したがって、いずれの場合にも液晶はON状態を実現することは不可能なはずである。しかしながら、実際には液晶は中間的な濃さを実現できた。
【0010】その具体的な原理についてはまだ詳細にわかっていない。しかしながら、本発明人らは、この現象を利用して階調表現が可能であることを見いだしたのである。すなわち、液晶材料が反応しないような周期で液晶材料にパルスを印加するときにパルスの幅を制御することによって、中間的な明るさをデジタル制御で実現することが、まさに本発明の特徴とするものである。本発明人らの研究の結果、このような中間的な濃度を得るためのパルスの周期はTN液晶の場合には10msec以下が必要であることがわかった。
【0011】ここで、パルスの周期という語句について、その意味を明確にする。すなわち、この場合には、複数のパルスを連続的に液晶に印加するのであるが、この場合のパルスの周期とは、1つのパルスが始まってから、次のパルスが始まるまでの間の時間のことをいう。したがって、パルスの繰り返し周波数の逆数となる。また、パルス幅とは、パルスが電圧状態にある時間のことをいう。したがって、図1において、例えばCのパルス列の場合には、Tがパルスの周期であり、τがパルス幅である。
【0012】同様な効果は、STN液晶においても、強誘電性液晶においても、また、ポリマー液晶あるいは分散型液晶においても見られた。いずれも、その応答時間よりも短い周期のパルスを加えることによって、中間的な色調が得られることが明らかになった。すなわち、STN液晶においては、100msec以下、のぞましくは10msec以下、強誘電性液晶においては10μsec以下、のぞましくは1μsec以下、ポリマー液晶あるいは分散型液晶においては10msec以下、のぞましくは1msec以下の周期のパルスを加えることによって、階調表示が得られた。
【0013】通常は、テレビ等の画像では1秒間に30枚の静止画が次々に繰り出されて動画を形成する。したがって、1枚の静止画が継続する時間は約30msecである。この時間は人間の目にはあまりにも早すぎて、文字通り『目にも止まらない』時間であり、結果として、視覚的には静止画を1枚1枚識別することはできない。ともかく、通常の動画を得るには、1枚の静止画は長くても100msec以上継続することはできない。
【0014】本発明を利用して256階調の階調表示をおこなうとすれば、例えば、T=3msecとすれば、この3msecの時間を、少なくとも256分割しうるパルス電圧印加方法を、画素に電圧を印加する方法として採用する必要がある。すなわち、最短で3msec/256=11.7μsecのパルス状の電圧が画素にかかるような回路を組む必要がある。実際には、図3に示すように、パルスのデューティー比τ/Tと液晶画素の光透過性は非線型的な関係であり、256階調を得るためには、さらに、パルスのデューティー比を細かく制御することが必要である。
【0015】しかも、実際の画像表示をおこなう場合には、他の画素も考慮しなければならない。実際の画像表示装置では、例えば400行もの行がある。すなわち、後に述べるように、マトリクスのアクティブ素子は100nsecという極短応答性が求められる。そこで、そのような短時間応答性を有する回路の例を図4に示し、以下、その説明をする。
【0016】図4は本発明を実施するために必要な液晶表示装置のアクティブマトリクスの回路の例を示す。本発明では、アクティブ素子は100nsec以下の短時間で応答することが要求されるので高速動作する回路を組む必要がある。そのためには従来のようにNTFTあるいはPTFTだけでスイッチングをおこなうのではなく、図4に示されるようにNTFTとPTFTとが相補的に動作するように構成された、インバータ型の回路を用いることが必要である。
【0017】この例ではN×Mのマトリクスの例を示したものであるが、煩雑さをさけるために、そのうちのn行m列近傍のみを示した。これと同じものを上下左右に展開すれば完全なものが得られる。
【0018】図4には、4つのインバータ回路が描かれている。各インバータ回路は少なくとも1つのNTFTと少なくとも1つのPTFTから構成される。TFTの数は、不良が存在した場合に備えて、さらに増やしても構わない。この回路では、NTFTとPTFTのゲイト電極が信号線Xn に接続され、また、このNTFTとPTFTのソースあるいはドレインの一方は互いに接続され、これは画素Zn,mの電極に接続される。そして、このNTFTおよびPTFTの他方のソースあるいはドレインは、それぞれ、信号線Ym とYm に接続されている。以下では、信号線X1,X2,..XN を、集合的に、あるいは個別にX線とよび、信号線Y1,Y2,..YM を、集合的に、あるいは個別にY線とよぶ。また、図では画素のキャパシタと並列に人為的にキャパシタが挿入されている。このとき挿入されたキャパシタは自然放電によって、画素の電圧が低下する速度を減速せしめる作用を有する。画素の電圧の降下は画素のばらつきによって決定されるものであるので、特に本発明のように、画素に印加される電圧が一定のものとして階調表示をおこなおうとする発明においては、画質の低下を招くものである。しかしながら、このように画素に並列にキャパシタを挿入することにより、画素のばらつきによる電圧降下は著しく抑えることができ、高画質を得ることができる。
【0019】次に、このような回路を用いた場合の回路の動作例を図1(b)および図2を用いて説明する。このマトリクス回路は図1(a)に示されるようなパルス状の電圧を液晶セルに印加するように動作する必要がある。そこで、このようなパルスを発生するためにX線およびY線に印加される信号電圧の概要を図1(b)に示す。例として、400×640のマトリクスを考える。
【0020】X線に印加される信号は、例えばXn 線の場合は、V(Xn )で示されるが、これは、周期Tで繰り返されるひとまとまりのパルスの中に、実は256個のパルス(以下、サブパルスという)が含まれており、さらにその256個のサブパルスのそれぞれは、400個の要素が入ったパルス列から構成されていることがわかる。ここで、400という数字はマトリクスの行数である。したがって、X線に印加されるパルスの最小単位はT=3msecとすれば、29nsecである。
【0021】一方、Y線には、時間T/256の間に、図のV(Y1 )、V(Ym )、V(Ym+1 )、V(Y400 )で示されるようなパルスが、それぞれのタイミングをずらして印加される。このパルスは、上記X線に印加されるパルスの最小単位パルスよりもさらに短い必要がある。結局、時間Tの間には、各Y線には、256回パルスが印加される。さらに、信号線Ym と対に設けられた信号線Ym には、図1(C)に示されるように、信号線Ym に印加される信号を補完するような信号が印加される。以下の説明では、いちいち、Ym の信号については説明しなくとも、Ym の信号を補完するような(逆相の)信号が加えられるものとする。
【0022】次に、実際の回路の動作を図2に基づいて説明する。まず、第1のサブパルスがそれぞれのX線に印加される。当然のことながら、これらのサブパルスはX線ごとに異なる。一方、Y線には、先に述べたように、パルスが最初にY1 、次にY2 というように順々に印加されてゆく。まず、パルスがY1 に印加されたときを考える。このとき、画素Z1,1 に接続されている、アクティブ素子はOFF状態となる。すなわち、Y1 は電圧状態(VH )であり、かつY1 は電圧状態でない(VL )ので、PTFTとNTFTはインバータとして動作する状態になる。さらにインバータの入力X1 はVH であるから、出力は反転してVL となる。次いで、Y2 に電圧が加わるのであるが、このとき、画素Z1,2 には電圧のかかった状態となる。すなわち、インバータの入力X1 はVL であるからである。そして、その後、X1 はVL を保ったまま、Y2 はVL にY2 はVH に信号が反転する。すると、PTFTとNTFTはインバータではなく、バッファーとして機能する。そして、このとき、X1 はVL であるので、この回路は動作せず、したがって、液晶セルに蓄えられた電荷は保持される。その後、X1 には、VL あるいはVH の信号が加えられるが、どちらの信号が加えられた場合であっても、この回路は動作しない。したがって、液晶セルに蓄えられた電荷は保持され続ける。この状態は、少なくとも、次にY1 がVH に、Y1 がVL になるまで持続する。同様に、Z1,m もZ1,m+1 もZ1,400 も、電圧状態となる、その状態を持続することとなる。。
【0023】このようにして、パルスが順々に印加されてゆき、Ym に印加された場合を考える。今、4つの画素Zn,m 、Zn,m+1 、Zn+1,m 、Zn+1,m+1 に注目しているとすれば、Xn およびXn+1 の第1のサブパルスのm番目および(m+1)番目に注目すればよい。Xn もXn+1 もm番目はVL なので、画素Zn,m 、Zn+1,mは電圧(充電)状態になる。ついで、Ym+1 にパルスが印加される。Xn もXn+1 も(m+1)番目はVL なので、この場合も画素Zn,m+1 、Zn+1,m+1 は充電状態となる。
【0024】次に、図では省略されているが、第2のサブパルスが来たものとする。このとき、Xn もXn+1 もm番目および(m+1)番目がVL ならば、充電状態がなくならず、以上4つの画素は引き続き電圧状態を継続する。その後、第(h−1)のサブパルスまでは、4つの画素とも電圧状態が継続したものとする。
【0025】次に、サブパルスが進んで、第hのサブパルスが来たものとする。図では煩雑さを避けるためにm番目および(m+1)番目以外は省略した。このとき、XnもXn+1 もm番目はVL なので、画素Zn,m 、Zn+1,m は電圧状態を継続する。しかし、Xn+1 には(m+1)番目がVH であるので、画素Zn+1,m は電圧状態が継続するものの、画素Zn+1,m+1 は、アクティブ素子の出力が電圧状態でなくなり、蓄えられていた電荷が放出され、電圧状態は中断される。
【0026】さらに、第iのサブパルスが来たときには、Xn の(m+1)番目はVH となったので、Zn,m+1 の充電状態は解除される。以下、第jおよび第kのサブパルスにおいて、それぞれ、Xn+1 、Xn のm番目がVH となったので、画素Zn,m、Zn+1,m の充電状態がぞれぞれ、第k、第jのサブパルス中に中断される。このような過程を経ることによって、図2のV(Z)に示すように、各画素ごとに電圧状態の時間をデジタル的にコントロールできる。
【0027】このような動作を繰り返すことにより、各画素に加わる電圧パルスの幅を図1(a)のように任意に制御することができる。
【0028】以上の説明から明らかなように、本発明を実施するにあたっては、上記のようなサブパルスは、明確に定義できるパルス状のものでなければならないわけではない。説明を簡単にするために、サブパルスという概念を持ち出したが、特に、サブパルスとサブパルスの間が明確でなく、信号としては、ほとんど境界のないものであっても、本発明を実施できることはあきらかである。さらに、説明をわかりやすくするために、信号のゼロレベルと電圧レベルを明確にしたが、これは、液晶あるいはTFTのしきい値電圧以下であるか、以上であるかという問題だけであるので、絶対にゼロである必要はない。また、電圧とは任意の点の電位を基準とした相対的な物理量であるので、以上の例において、パルスは逆の極性を持つものであっても、構わないことは明らかであろう。さらに、画素の対向電極に適当なオフセット電圧を加えても構わない。また、以上の例では、画面は1行づつ順に走査されていったが、最初にY1,Y3,Y5,... というように走査し、その後、Y2,Y4,Y6,..というように走査する、いわゆる飛び越し走査法も可能であることは言うまでもない。
【0029】
【実施例】『実施例1』 本実施例では図4に示すような回路構成を用いた液晶表示装置を用いて、壁掛けテレビを作製したので、その説明を行う。またその際のTFTは、レーザーアニールを用いた多結晶シリコンとした。
【0030】この回路構成に対応する実際の電極等の配置構成を1つの画素について、図5に示している。まず、本実施例で使用する液晶パネルの作製方法を図6を使用して説明する。図6(A)において、石英ガラス等の高価でない700℃以下、例えば約600℃の熱処理に耐え得るガラス50上にマグネトロンRF(高周波)スパッタ法を用いてブロッキング層51としての酸化珪素膜を1000〜3000Åの厚さに作製する。プロセス条件は酸素100%雰囲気、成膜温度150℃、出力400〜800W、圧力0.5Paとした。タ−ゲットに石英または単結晶シリコンを用いた成膜速度は30〜100Å/分であった。
【0031】この上にシリコン膜をプラズマCVD法により珪素膜52を作製した。成膜温度は250℃〜350℃で行い本実施例では320℃とし、モノシラン(SiH4)を用いた。モノシラン(SiH4)に限らず、ジシラン(Si2H6) またトリシラン(Si3H8)を用いてもよい。これらをPCVD装置内に3Paの圧力で導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.02〜0.10W/cm2 が適当であり、本実施例では0.055W/cm2 を用いた。また、モノシラン(SiH4)の流量は20SCCMとし、その時の成膜速度は約120Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。またTFTのチャネル領域となるシリコン層の成膜にはこのプラズマCVDだけでなく、スパッタ法、減圧CVD法を用いても良く、以下にその方法を簡単に述べる。
【0032】スパッタ法で行う場合、スパッタ前の背圧を1×10-5Pa以下とし、単結晶シリコンをタ−ゲットとして、アルゴンに水素を20〜80%混入した雰囲気で行った。例えばアルゴン20%、水素80%とした。成膜温度は150℃、周波数は13.56MHz、スパッタ出力は400〜800W、圧力は0.5Paであった。
【0033】減圧気相法で形成する場合、結晶化温度よりも100〜200℃低い450〜550℃、例えば530℃でジシラン(Si2H6) またはトリシラン(Si3H8) をCVD装置に供給して成膜した。反応炉内圧力は30〜300Paとした。成膜速度は50〜250Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。
【0034】これらの方法によって形成された被膜は、酸素が5×1021cm-3以下であることが好ましい。結晶化を助長させるためには、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とすることが望ましいが、少なすぎると、バックライトによりオフ状態のリ−ク電流が増加してしまうため、この濃度を選択した。この酸素濃度が高いと、結晶化させにくく、レーザーアニ−ル温度を高くまたはレーザーアニ−ル時間を長くしなければならない。水素は4×1020cm-3であり、珪素4×1022cm-3として比較すると1原子%であった。
【0035】また、ソ−ス、ドレインに対してより結晶化を助長させるため、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とし、ピクセル構成するTFTのチャネル形成領域のみに酸素をイオン注入法により5×1020〜5×1021cm-3となるように添加してもよい。上記方法によって、アモルファス状態の珪素膜を500〜5000Å、本実施例では1000Åの厚さに成膜した。
【0036】その後、フォトレジスト53をマスクP1を用いてソース・ドレイン領域のみ開孔したパターンを形成した。その上に、プラズマCVD法によりn型の活性層となる珪素膜54を作製した。成膜温度は250℃〜350℃でおこない、本実施例では320℃とし、モノシラン(SiH4)とモノシランベースのフォスフィン(PH3) 3%濃度のものを用いた。これらをPCVD装置内5Paの圧力でに導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.05〜0.20W/cm2 が適当であり、本実施例では0.120W/cm2 を用いた。
【0037】この方法によって出来上がったn型シリコン層の比導電率は2×10-1〔Ωcm-1〕程度となった。膜厚は50Åとした。こうして、図6(A)を得た。その後リフトオフ法を用いて、レジスト53を除去し、ソース・ドレイン領域55、56を形成した。
【0038】同様のプロセスを用いて、p型の活性層を形成した。その際の導入ガスは、モノシラン(SiH4)とモノシランベースのジボラン(B2H6)5%濃度のものを用いた。これらをPCVD装置内に4Paの圧力でに導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.05〜0.20W/cm2 が適当であり、本実施例では0.120W/cm2 を用いた。この方法によって出来上がったp型シリコン層の比導電率は5×10-2〔Ωcm-1〕程度となった。膜厚は50Åとした。こうして、図6(B)を得た。その後N型領域と同様にリフトオフ法を用いて、ソース・ドレイン領域59、60を形成した。その後、マスクP3を用いて珪素膜52をエッチング除去し、Nチャネル型薄膜トランジスタ用アイランド領域63とPチャネル型薄膜トランジスタ用アイランド領域64を形成した。
【0039】その後、図6(C)に示すように、XeClエキシマレーザーを用いて、ソース・ドレイン・チャネル領域をレーザーアニールすると同時に、活性層にレーザードーピングを行なった。この時のレーザーエネルギーは、閾値エネルギーが130mJ/cm2 で、膜厚全体が溶融するには220mJ/cm2 が必要となる。しかし、最初から220mJ/cm2 以上のエネルギーを照射すると、膜中に含まれる水素が急激に放出されるために、膜の破壊が起きる。そのために低エネルギーで最初に水素を追い出した後に溶融させる必要がある。本実施例では最初150mJ/cm2 で水素の追い出しを行なった後、230mJ/cm2 で結晶化をおこなった。
【0040】この上に酸化珪素膜をゲイト絶縁膜として500〜2000Å例えば1000Åの厚さに形成した。これはブロッキング層としての酸化珪素膜の作製と同一条件とした。この成膜中に弗素を少量添加し、ナトリウムイオンの固定化をさせてもよい。
【0041】この後、この上側にリンが1〜5×1021cm-3の濃度に入ったシリコン膜またはこのシリコン膜とその上にモリブデン(Mo)、タングステン(W),MoSi2 またはWSi2との多層膜を形成した。これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニングして図6(D) を得た。NTFT用のゲイト電極66、PTFT用のゲイト電極67を形成した。例えばチャネル長7μm、ゲイト電極としてリンド−プ珪素を0.2μm、その上にモリブデンを0.3μmの厚さに形成した。同時に、図7(D’)に示すように、ゲイト配線65とそれに並行して配置された配線68もパターニングした。
【0042】また、ゲート電極材料としては、上記材料以外に、例えばアムミニウム(Al)も使用することができる。アルミニウムを用いた場合、これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニング後、その表面を陽極酸化することで、セルファライン工法が適用可能なため、ソース・ドレインのコンタクトホールをよりゲートに近い位置に形成することが出来るため、移動度、スレッシュホールド電圧の低減からさらにTFTの特性を上げることができる。
【0043】かくすると、400℃以上にすべての工程で温度を加えることがなくC/TFTを作ることができる。そのため、基板材料として、石英等の高価な基板を用いなくてもよく、本発明の大画面の液晶表示装置にきわめて適したプロセスであるといえる。
【0044】図6(E)において、層間絶縁物69を前記したスパッタ法により酸化珪素膜の形成として行った。この酸化珪素膜の形成はLPCVD法、光CVD法、常圧CVD法を用いてもよい。例えば0.2〜0.6μmの厚さに形成し、その後、第5のフォトマスクP5を用いて電極用の窓79を形成した。その後、さらに、これら全体にアルミニウムを0.3μmの厚みにスパッタ法により形成し第6のフォトマスクP6を用いてリ−ド74およびコンタクト73、75を作製した。こうして、図6(E)と図7(E’)を得た。その後、表面を平坦化用有機樹脂77、例えば透光性ポリイミド樹脂を塗布形成し、再度の電極穴あけを第7のフォトマスクP7にて行った。さらに、これら全体にITO(インジウム酸化錫)を0.1μmの厚みにスパッタ法により形成し第8のフォトマスクP8を用いて画素電極71を形成した。このITOは室温〜150℃で成膜し、200〜400℃の酸素または大気中のアニ−ルにより成就した。こうして、図6(F)と図7(F’)を得た。図7R>7(F’)のA−A’の断面図を図7(G)に示す。実際には、この上に液晶材料をはさんで、対向電極が設けられ、図に示すように対向電極と電極71の間に静電容量が生じる。それと同時に配線68と電極71との間にも静電容量が生じる。そして、配線68を対向電極と同電位に保つことによって、図4に示したように、液晶画素に並列に容量が挿入された回路を構成することとなる。特に本実施例のように配置することによって、配線68はゲイト配線65と並行であるので、2配線間の寄生容量が少なく、したがって、ゲイト配線を伝播する信号の減衰や遅延を減らす効果がある。
【0045】また、このようにして形成された配線68は、接地して使用される場合には、各マトリクスの終端に設けられる保護回路の接地線として使用できる。保護回路は、図10に示されるように、周辺の駆動回路と画素のあいだに設けられ、図11と図12で示されるような回路をいう。いずれも画素の配線に過大な電圧がかかるとON状態となり、電圧を取り去る作用を有する。これらの保護回路は、シリコンのようなドーピングされた、あるいはドーピングされていない半導体材料や、ITOのような透明導電材料、あるいは通常の配線材料を用いて構成される。したがって、画素の回路を形成するときに同時に形成することが可能である。
【0046】このことは、例えば、図11の各保護回路が、NTFTやPTFT、あるいはそれらをあわせたC/TFTで構成されていることから明らかであろう。また、図12の保護回路はTFTは使用されないが、ダイオードは、例えばPIN接合によって構成され、また、特にツェナー特性を重視するダイオードはNIN、PIP、あるいはNPN、PNPといった構造を有し、いちいち説明するまでもなく、本実施例で示した作製方法を援用することによって作製されうることは自明である。
【0047】さて、以上のようにして得られたTFTの電気的な特性はPTFTで移動度は40(cm2/Vs)、Vthは−5.9(V)で、NTFTで移動度は80(cm2/Vs)、Vthは5.0(V)であった。
【0048】上記の様な方法に従って作製された液晶電気光学装置用の一方の基板を得ることが出来た。この液晶表示装置の電極等の配置の様子を図5に示している。本発明によるインバータを構成するTFTが信号線Y1 とY1 の間、およびY2 とY2 の間に、信号線X1 、X2 に平行に設けられている。このようなマトリクス構成をを左右、上下に繰り返すことにより、640×480、1280×960といった大画素の液晶表示装置とすることができる。本実施例では1920×400とした。この様にして第1の基板を得た。
【0049】他方の基板の作製方法を図8に示す。ガラス基板上にポリイミドに黒色顔料を混合したポリイミド樹脂をスピンコート法を用いて1μmの厚みに成膜し、第9のフォトマスクP9を用いてブラックストライプ81を作製した。その後、赤色顔料を混合したポリイミド樹脂をスピンコート法を用いて1μmの厚みに成膜し、第10のフォトマスクP10を用いて赤色フィルター83を作製した。同様にしてマスクP11、P12を使用し、緑色フィルター85および青色フィルター86を作製した。これらの作製中各フィルターは350℃にて窒素中で60分の焼成を行なった。その後、やはりスピンコート法を用いて、レベリング層89を透明ポリイミドを用いて作製した。
【0050】その後、これら全体にITO(インジューム酸化錫)を0.1μmの厚みにスパッタ法により形成し第10のフォトマスクP10を用いて共通電極90を形成した。このITOは室温〜150℃で成膜し、200〜300℃の酸素または大気中のアニ−ルにより成就し、第2の基板を得た。
【0051】前記基板上に、オフセット法を用いて、ポリイミド前駆体を印刷し、非酸化性雰囲気たとえば窒素中にて350℃1時間焼成を行った。その後、公知のラビング法を用いて、ポリイミド表面を改質し、少なくとも初期において、液晶分子を一定方向に配向させる手段を設けた。
【0052】その後、前記第一の基板と第二の基板によって、ネマチック液晶組成物を挟持し、周囲をエポキシ性接着剤にて固定した。基板上のリードにTAB形状の駆動ICと共通信号、電位配線を有するPCBを接続し、外側に偏光板を貼り、透過型の液晶電気光学装置を得た。これと冷陰極管を3本配置した後部照明装置、テレビ電波を受信するチューナーを接続し、壁掛けテレビとして完成させた。従来のCRT方式のテレビと比べて、平面形状の装置となったために、壁等に設置することも出来るようになった。この液晶テレビの動作は図1R>1、図2に示したものと、実質的に同等な信号を液晶画素に印加することにより確認された。
【0053】『実施例2』 本実施例では図4に示すような回路構成を用いた液晶表示装置を用いて、壁掛けテレビを作製したので、その説明を行う。またその際のTFTは、レーザーアニールを用いた多結晶シリコンとした。
【0054】以下では、TFT部分の作製方法について図9にしたがって記述する。図9(A)において、石英ガラス等の高価でない700℃以下、例えば約600℃の熱処理に耐え得るガラス100上にマグネトロンRF(高周波) スパッタ法を用いてブロッキング層101としての酸化珪素膜を1000〜3000Åの厚さに作製する。プロセス条件は酸素100%雰囲気、成膜温度15℃、出力400〜800W、圧力0.5Paとした。タ−ゲットに石英または単結晶シリコンを用いた成膜速度は30〜100Å/分であった。
【0055】この上にシリコン膜をプラズマCVD法により珪素膜102を作製した。成膜温度は250℃〜350℃で行い本実施例では320℃とし、モノシラン(SiH4)を用いた。モノシラン(SiH4)に限らず、ジシラン(Si2H6) またトリシラン(Si3H8) を用いてもよい。これらをPCVD装置内に3Paの圧力で導入し、13.56MHzの高周波電力を加えて成膜した。この際、高周波電力は0.02〜0.10W/cm2 が適当であり、本実施例では0.055W/cm2 を用いた。また、モノシラン(SiH4)の流量は20SCCMとし、その時の成膜速度は約120Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。またTFTのチャネル領域となるシリコン層の成膜にはこのプラズマCVDだけでなく、スパッタ法、減圧CVD法を用いても良く、以下にその方法を簡単に述べる。
【0056】スパッタ法で行う場合、スパッタ前の背圧を1×10-5Pa以下とし、単結晶シリコンをタ−ゲットとして、アルゴンに水素を20〜80%混入した雰囲気で行った。例えばアルゴン20%、水素80%とした。成膜温度は150℃、周波数は13.56MHz、スパッタ出力は400〜800W、圧力は0.5Paであった。
【0057】減圧気相法で形成する場合、結晶化温度よりも100〜200℃低い450〜550℃、例えば530℃でジシラン(Si2H6) またはトリシラン(Si3H8) をCVD装置に供給して成膜した。反応炉内圧力は30〜300Paとした。成膜速度は50〜250Å/ 分であった。PTFTとNTFTとのスレッシュホ−ルド電圧(Vth)を概略同一に制御するため、ホウ素をジボランを用いて1×1015〜1×1018cm-3の濃度として成膜中に添加してもよい。
【0058】これらの方法によって形成された被膜は、酸素が5×1021cm-3以下であることが好ましい。結晶化を助長させるためには、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とすることが望ましいが、少なすぎると、バックライトによりオフ状態のリ−ク電流が増加してしまうため、この濃度を選択した。この酸素濃度が高いと、結晶化させにくく、レーザーアニ−ル温度を高くまたはレーザーアニ−ル時間を長くしなければならない。水素は4×1020cm-3であり、珪素4×1022cm-3として比較すると1原子%であった。
【0059】また、ソ−ス、ドレインに対してより結晶化を助長させるため、酸素濃度を7×1019cm-3以下、好ましくは1×1019cm-3以下とし、ピクセル構成するTFTのチャネル形成領域のみに酸素をイオン注入法により5×1020〜5×1021cm-3となるように添加してもよい。上記方法によって、アモルファス状態の珪素膜を500〜5000Å、本実施例では1000Åの厚さに成膜した。
【0060】その後、フォトレジスト103をマスクP1を用いてNTFTのソース・ドレイン領域となるべき領域のみ開孔したパターンを形成した。そして、レジスト103をマスクとして、リンイオンをイオン注入法により、2×1014〜5×1016cm-2、好ましくは2×1016cm-2だけ、注入し、n型不純物領域104を形成した。その後、レジスト103は除去された。
【0061】同様に、レジスト105を塗布し、マスクP2を用いて、PTFTのソース・ドレイン領域となるべき領域のみ開孔したパターンを形成した。そして、レジスト105をマスクとして、p型の不純物領域106を形成した。不純物としては、ホウソを用い、やはりイオン注入法を用いて、2×1014〜5×1016cm-2、好ましくは2×1016cm-2だけ、不純物を導入した。このようにして。図9(B)を得た。
【0062】その後、珪素膜102上に、厚さ50〜300nm、例えば、100nmの酸化珪素被膜107を、上記のRFスパッタ法によって形成した。そして、XeClエキシマレーザーを用いて、ソース・ドレイン・チャネル領域をレーザーアニールによって、結晶化・活性化した。この時のレーザーエネルギーは、閾値エネルギーが130mJ/cm2 で、膜厚全体が溶融するには220mJ/cm2 が必要となる。しかし、最初から220mJ/cm2 以上のエネルギーを照射すると、膜中に含まれる水素が急激に放出されるために、膜の破壊が起きる。そのために低エネルギーで最初に水素を追い出した後に溶融させる必要がある。本実施例では最初150mJ/cm2 で水素の追い出しを行なった後、230mJ/cm2 で結晶化をおこなった。さらに、レーザーアニール終了後は酸化珪素膜107は取り去った。
【0063】その後、フォトマスクP3によって、アイランド状のNTFT領域111とPTFT領域112を形成した。この上に酸化珪素膜108をゲイト絶縁膜として500〜2000Å例えば1000Åの厚さに形成した。これはブロッキング層としての酸化珪素膜の作製と同一条件とした。この成膜中に弗素を少量添加し、ナトリウムイオンの固定化をさせてもよい。
【0064】この後、この上側にリンが1〜5×1021cm-3の濃度に入ったシリコン膜またはこのシリコン膜とその上にモリブデン(Mo)、タングステン(W),MoSi2 またはWSi2との多層膜を形成した。これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニングして図9(D) を得た。NTFT用のゲイト電極109、PTFT用のゲイト電極110を形成した。例えばチャネル長7μm、ゲイト電極としてリンド−プ珪素を0.2μm、その上にモリブデンを0.3μmの厚さに形成した。図には示されていないが、実施例1の場合と同様にゲイト配線とそれに平行な配線も形成した。
【0065】この配線の材料としては、上記の材料以外にも、例えばアルミニウム(Al)を用いることも可能である。アルミニウムを用いた場合、これを第4のフォトマスクP4にてパタ−ニング後、その表面を陽極酸化することで、セルファライン工法が適用可能なため、ソース・ドレインのコンタクトホールをよりゲートに近い位置に形成することが出来るため、移動度、スレッシュホールド電圧の低減からさらにTFTの特性を上げることができる。
【0066】かくすると、400℃以上にすべての工程で温度を加えることがなくC/TFTを作ることができる。そのため、基板材料として、石英等の高価な基板を用いなくてもよく、本発明の大画面の液晶表示装置にきわめて適したプロセスであるといえる。
【0067】図9(E)において、層間絶縁物113を前記したスパッタ法により酸化珪素膜の形成として行った。この酸化珪素膜の形成はLPCVD法、光CVD法、常圧CVD法を用いてもよい。例えば0.2〜0.6μmの厚さに形成し、その後、第5のフォトマスクP5を用いて電極用の窓117を形成した。その後、さらに、これら全体にアルミニウムを0.3μmの厚みにスパッタ法により形成し第6のフォトマスクP6を用いてリ−ド116およびコンタクト114、115を作製した後、表面を平坦化用有機樹脂119、例えば透光性ポリイミド樹脂を塗布形成し、再度の電極穴あけを第7のフォトマスクP7にて行った。さらに、これら全体にITO(インジウム酸化錫)を0.1μmの厚みにスパッタ法により形成し第8のフォトマスクP8を用いて画素電極118を形成した。このITOは室温〜150℃で成膜し、200〜400℃の酸素または大気中のアニ−ルにより成就した。
【0068】得られたTFTの電気的な特性はPTFTで移動度は35(cm2/Vs)、Vthは−5.9(V)で、NTFTで移動度は90(cm2/Vs)、Vthは4.8(V)であった。
【0069】上記の様な方法に従って作製された液晶電気光学装置用の一方の基板を得ることが出来た。他方の基板の作製方法は実施例1と同じであるので省略する。その後、前記第一の基板と第二の基板によって、ネマチック液晶組成物を挟持し、周囲をエポキシ性接着剤にて固定した。基板上のリードにTAB形状の駆動ICと共通信号、電位配線を有するPCBを接続し、外側に偏光板を貼り、透過型の液晶電気光学装置を得た。これと冷陰極管を3本配置した後部照明装置、テレビ電波を受信するチューナーを接続し、壁掛けテレビとして完成させた。従来のCRT方式のテレビと比べて、平面形状の装置となったために、壁等に設置することも出来るようになった。この液晶テレビの動作は図1、図2に示したものと、実質的に同等な信号を液晶画素に印加することにより確認された。
【0070】
【発明の効果】本発明では、従来のアナログ方式の階調表示に対し、デジタル方式の階調表示を行うことを特徴としている。その効果として、例えば640×400ドットの画素数を有する液晶電気光学装置を想定したばあい、合計256,000個のTFTすべての特性をばらつき無く作製することは、非常に困難を有し、現実的には量産性、歩留りを考慮すると、16階調表示が限界と考えられているのに対し、本発明のように、全くアナログ的な信号を加えることなく純粋にデジタル制御のみで階調表示することにより、256階調表示以上の階調表示が可能となった。完全なデジタル表示であるので、TFTの特性ばらつきによる階調の曖昧さは全くなくなり、したがって、TFTのばらつきが少々あっても、極めて均質な階調表示が可能であった。したがって、従来はばらつきの少ないTFTを得るために極めて歩留りが悪かったのに対し、本発明によって、TFTの歩留りがさほど問題とされなくなったため、液晶装置の歩留りは向上し、作製コストも著しく抑えることができた。
【0071】例えば640×400ドットの256,000組のTFTを300mm角に作成した液晶電気光学装置に対し通常のアナログ的な階調表示を行った場合、TFTの特性ばらつきが約±10%存在するために、16階調表示が限界であった。しかしながら、本発明によるデジタル階調表示をおこなった場合、TFT素子の特性ばらつきの影響を受けにくいために、256階調表示まで可能になりカラー表示ではなんと16,777,216色の多彩であり微妙な色彩の表示が実現できている。テレビ映像の様なソフトを映す場合、例えば同一色からなる『岩』でもその微細な窪み等から微妙に色合いが異なる。自然の色彩に近い表示を行おうとした場合、16階調では困難を要する。本発明による階調表示によって、これらの微細な色調の変化を付けることが可能になった。
【0072】本発明の実施例では、シリコンを用いたTFTを中心に説明を加えたが、ゲルマニウムを用いたTFTも同様に使用できる。とくに、単結晶ゲルマニウムの電子移動度は3600cm2 /Vs、ホール移動度は1800cm2 /Vsと、単結晶シリコンの値(電子移動度で1350cm2 /Vs、ホール移動度で480cm2 /Vs)の特性を上回っているため、高速動作が要求される本発明を実行する上で極めて優れた材料である。また、ゲルマニウムは非晶質状態から結晶状態へ遷移する温度がシリコンに比べて低く、低温プロセスに向いている。また、結晶成長の際の核発生率が小さく、したがって、一般に、多結晶成長させた場合には大きな結晶が得られる。このようにゲルマニウムはシリコンと比べても遜色のない特性を有している。
【0073】本発明の技術思想を説明するために、主として液晶を用いた電気光学装置、特に表示装置を例として説明を加えたが、本発明の思想を適用するには、なにも表示装置である必要はなく、いわゆるプロジェクション型テレビやその他の光スイッチ、光シャッターであってもよい。さらに、電気光学材料も液晶に限らず、電界、電圧等の電気的な影響を受けて光学的な特性の変わるものであれば、本発明を適用できることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による駆動波形の例を示す。
【図2】 本発明による駆動波形の例を示す。
【図3】 本発明による液晶の階調表示特性の例を示す。
【図4】 本発明によるマトリクス構成の例を示す。
【図5】 実施例による素子の平面構造を示す。
【図6】 実施例によるTFTのプロセスを示す。
【図7】 実施例によるTFTのプロセスを示す。
【図8】 実施例によるカラーフィルターの工程を示す。
【図9】 実施例によるTFTのプロセスを示す。
【図10】実施例における保護回路の接続例を示す。
【図11】実施例における保護回路の例を示す。
【図12】実施例における保護回路の例を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Nチャネル型薄膜トランジスタとPチャネル型薄膜トランジスタとでなるインバータを有する電気光学装置において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記N型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、を有し、前記Pチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられたゲイト電極と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】 Nチャネル型薄膜トランジスタとPチャネル型薄膜トランジスタとでなるインバータを有する電気光学装置において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられたゲイト電極と、前記Pチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記P型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】 Nチャネル型薄膜トランジスタとPチャネル型薄膜トランジスタとでなるインバータを有する電気光学装置において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記N型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、前記Pチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記P型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタのチャネル領域は、ホウ素の濃度が1×1015〜1×1018cm-3の範囲であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項において、前記Pチャネル型薄膜トランジスタのチャネル領域は、ホウ素の濃度が1×1015〜1×1018cm-3の範囲であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかにおいて、平坦化膜が前記インバータを覆っていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】 請求項6において、前記平坦化膜はポリイミドであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気光学装置を用いたことを特徴とするプロジェクション型表示装置。
【請求項9】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気装置を用いたことを特徴とするテレビ。
【請求項1】 Nチャネル型薄膜トランジスタとPチャネル型薄膜トランジスタとでなるインバータを有する電気光学装置において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記N型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、を有し、前記Pチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられたゲイト電極と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】 Nチャネル型薄膜トランジスタとPチャネル型薄膜トランジスタとでなるインバータを有する電気光学装置において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられたゲイト電極と、前記Pチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記P型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】 Nチャネル型薄膜トランジスタとPチャネル型薄膜トランジスタとでなるインバータを有する電気光学装置において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のN型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記N型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、前記Pチャネル型薄膜トランジスタは、チャネル領域と、複数のP型の不純物領域が設けられた半導体層と、前記半導体層上に設けられたゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上に設けられ、かつ前記P型の不純物の少なくとも1つと重なっているゲイト電極と、を有することを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において、前記Nチャネル型薄膜トランジスタのチャネル領域は、ホウ素の濃度が1×1015〜1×1018cm-3の範囲であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1項において、前記Pチャネル型薄膜トランジスタのチャネル領域は、ホウ素の濃度が1×1015〜1×1018cm-3の範囲であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかにおいて、平坦化膜が前記インバータを覆っていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】 請求項6において、前記平坦化膜はポリイミドであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気光学装置を用いたことを特徴とするプロジェクション型表示装置。
【請求項9】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気装置を用いたことを特徴とするテレビ。
【図3】
【図4】
【図1】
【図2】
【図8】
【図10】
【図5】
【図6】
【図12】
【図7】
【図9】
【図11】
【図4】
【図1】
【図2】
【図8】
【図10】
【図5】
【図6】
【図12】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2000−206920(P2000−206920A)
【公開日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−47100(P2000−47100)
【分割の表示】特願平3−163871の分割
【出願日】平成3年6月7日(1991.6.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【公開日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【国際特許分類】
【分割の表示】特願平3−163871の分割
【出願日】平成3年6月7日(1991.6.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
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