説明

電気刺激時の不快感を軽減するための方法、並びにそのための組成物及び装置

神経頭蓋刺激用電極アセンブリは、電極と、導電性ゲルと、アダプタとを含み、アダプタは、電極をアダプタに対して位置決めし、導電性ゲルを受け入れて保持するための内部コンパートメントを有する。導電性ゲルは電極−ゲル界面に沿って電極と接触する。内部コンパートメントの一端にあって、ユーザの皮膚表面に対して電極アセンブリを位置決めするためのアダプタの位置決め表面に隣接するオリフィスによって、導電性ゲルはユーザの皮膚表面と接触してゲル−皮膚界面を画定することができ、電極−ゲル界面とゲル−皮膚界面との最小間隔は0.25cm〜1.3cmに維持される。頭蓋上の標的位置に対して複数の電極アセンブリを調整可能に位置決めするための電極アセンブリ実装装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年12月30日出願の米国特許仮出願第61/141,469号(発明の名称「電気刺激時の不快感を軽減するための方法及びそのための電極」)の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に神経頭蓋刺激を実施するための方法、装置及び組成物に関し、より詳細には、不快感や痛みを軽減させながら頭蓋の特定領域に神経頭蓋刺激を施すための方法、装置及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
非侵襲性神経頭蓋刺激とは、神経系の機能を変化させる目的で頸部又は頭部に設置された一以上の電極を通して行なう電流の印加である。その目的とするところは、神経精神疾患や癲癇、鬱病、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経変性障害、肥満、強迫性障害の処置を含む治療である。また、この刺激は、認知能力や学習、知覚関連作業の増強又は促進のために実施することもできる。
【0004】
非侵襲性神経頭蓋刺激(NINCS)は本質的に、電極を通して皮膚内又は皮膚に沿って電流を流すことを伴う。経頭蓋直流刺激(tDCS)は非侵襲性神経頭蓋刺激の一例であり、特定の脳領域に電流を流す目的で、頭皮に直流を直接印加する。NINCSの場合、電気刺激を受ける被験者に様々な不快感がもたらされることがある。不快感としては、ヒリヒリ感や痛み、焼けるような感覚、或いは他の望ましくない感覚を挙げることができる。また、剥離や発赤、炎症、熱傷、皮膚特性の変化等の症状を伴って皮膚のピリピリ感(skin irritation)が生じる場合がある。不快感とピリピリ感は一緒に生じることもあるし、別々に生じることもある。これらは通常、電極の下又はその付近で生じるが、電極間又は他の箇所で生じる場合もある。不快感は通常、刺激時又は刺激直後に覚えるが、刺激終了後長時間経ってから感じることもある。ピリピリ感は刺激時又はその直後に最も顕著であるが、刺激後しばらく経ってから明らかになることもある。
【0005】
ピリピリ感と不快感は幾つかの理由からNINCS時には望ましくない。ピリピリ感や不快感によって被験者に痛みや不快感が生じ、所望の刺激効果が複雑化し、健康への悪影響を及ぼすこともあり得る。また、ピリピリ感や不快感によって、最適なNINCSの印加が妨げられたり、被験者がNINCSを受けたいという気持ちが減ぜられることもある。
【0006】
従来のtDCS(NINCSの一種)においては、アノード電極とカソード電極の少なくとも一方を頭皮上に置き、両電極間に一定の直流(公称260μA〜3mA)を流す。tDCSの空間局所性(spatial focality)(標的)は有効性及び安全性に対して非常に重要であると考えられる。電極−頭皮接触面積の減少によって空間局所性が改善されると考えられる。しかし、電極電流が一定の場合、接触面積の減少によって電流密度が増加し、危険性が増大することがある。
【0007】
tDCSの安全性の観点から、1)電流の脳への傷害作用、及び2)電流の皮膚への掻痒作用、疼痛作用又は傷害作用を考慮することが重要である。脳傷害と皮膚作用は必ずしも関連していないため、別々に考慮すべきである。例えば、皮膚ピリピリ感を引き起こす刺激が脳機能に悪影響を及ぼすことがない場合もあり、脳傷害に皮膚ピリピリ感が伴わないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,640,122号公報
【特許文献2】米国特許第6,574,513号公報
【特許文献3】米国特許第6,445,940号公報
【特許文献4】米国特許第6,201,982号公報
【特許文献5】米国特許第6,175,753号公報
【特許文献6】米国特許第6,161,030号公報
【特許文献7】米国特許第4,171,696号公報
【特許文献8】米国特許第4,537,198号公報
【特許文献9】米国特許第4,683,892号公報
【特許文献10】米国特許第5,357,957号公報
【特許文献11】米国特許第5,479,934号公報
【特許文献12】米国特許第5,511,548号公報
【特許文献13】米国特許第5,630,422号公報
【特許文献14】米国特許第5,730,146号公報
【特許文献15】米国特許第5,740,812号公報
【特許文献16】米国特許第5,800,351号公報
【特許文献17】米国特許第6,047,202号公報
【特許文献18】米国特許第6,067,464号公報
【特許文献19】米国特許第537,198号公報
【特許文献20】米国特許第4,632,120号公報
【特許文献21】米国特許第4,709,702号公報
【特許文献22】米国特許第4,770,180号公報
【特許文献23】米国特許第4,836,219号公報
【特許文献24】米国特許第4,967,038号公報
【特許文献25】米国特許第5,038,782号公報
【特許文献26】米国特許第5,273,037号公報
【特許文献27】米国特許第5,291,888号公報
【特許文献28】米国特許第5,293,867号公報
【特許文献29】米国特許第5,348,006号公報
【特許文献30】米国特許第5,357,957号公報
【特許文献31】米国特許第5,404,875号公報
【特許文献32】米国特許第5,479,934号公報
【特許文献33】米国特許第5,564,433号公報
【特許文献34】米国特許第5,740,812号公報
【特許文献35】米国特許第5,800,351号公報
【特許文献36】米国特許第5,813,993号公報
【特許文献37】米国特許第6,067,464号公報
【特許文献38】米国特許第6,161,030号公報
【特許文献39】米国特許第6,167,298号公報
【特許文献40】米国特許第6,175,753号公報
【特許文献41】米国特許第6,201,982号公報
【特許文献42】米国特許第6,301,493号公報
【特許文献43】米国特許第6,381,481号公報
【特許文献44】米国特許第4,683,892号公報
【特許文献45】米国特許第4,709,702号公報
【特許文献46】米国特許第5,038,782号公報
【特許文献47】米国特許第5,479,934号公報
【特許文献48】米国特許第6,067,464号公報
【特許文献49】米国特許第6,155,974号公報
【特許文献50】米国特許第4,067,321号公報
【特許文献51】米国特許第4,632,120号公報
【特許文献52】米国特許第4,709,702号公報
【特許文献53】米国特許第4,936,306号公報
【特許文献54】米国特許第5,222,498号公報
【特許文献55】米国特許第4,177,817号公報
【特許文献56】米国特許第4,196,737号公報
【特許文献57】米国特許第5,282,843号公報
【特許文献58】米国特許第4,736,752号公報
【特許文献59】米国特許第3,817,252号公報
【特許文献60】米国特許第4,503,863号公報
【特許文献61】米国特許第4,535,779号公報
【特許文献62】米国特許第7,392,096号公報
【特許文献63】米国特許第6,343,226号公報
【特許文献64】米国特許第4,736,752号公報
【特許文献65】米国特許第4,367,755号公報
【特許文献66】米国特許第7,421,299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術の電極では、NINCS等(特にtDCS)の電気刺激活性時の皮膚ピリピリ感や痛みを最小限に抑えることに対処することができない。本発明の目的は、工学的に小さく、より局所的な電極に対して重点を置きながら、電極パラメータを最適化して皮膚ピリピリ感や痛みを最小限に抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、その第1の様相において、神経頭蓋刺激用電極アセンブリを提供するものであって、該アセンブリは、
電極装着用レシーバを含むと共に、電極及び導電性ゲル又はペーストと共に用いるホルダであって、該ゲル又はペーストを貯蔵するためのホルダリザーバを有するホルダを含むアダプタと、
該ホルダを被験者の頭皮に装着するための装着手段と、
を含み、
該ホルダは、該ゲル又はペーストの流れを制限する剛性又は半剛性壁を有する、電極アセンブリを提供する。
【0011】
本発明は、その第2の様相において、神経頭蓋刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減するための方法であって、本発明で詳述する神経頭蓋刺激デバイスと電極装置とを含む方法を提供する。
【0012】
本発明は、その第3の様相において、ピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減又は防止する神経頭蓋刺激ゲル用組成物を提供する。
【0013】
本発明は、その第4の様相において、頭蓋神経刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減するための方法であって、カソード又はアノードにおける電解質の消失又は生成をサポート、制御又は制限する(1)ゲルと(2)固体導体との適切な組み合わせを選択することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、その第5の様相において、頭蓋神経刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減又は防止することができる(1)ゲルと(2)電極の固体導体との特定の組み合わせを提供する。
【0015】
本発明は、その第6の様相において、神経頭蓋刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減するための方法であって、
適切な電極−皮膚接触面積を選択する工程、
適切な金属電極材料を選択する工程、
電極形状を選択する工程、
剛性又は半剛性ホルダを選択する工程、
適切なゲルを選択する工程、
ゲル又は皮膚に適用させる化学品を選択する工程、
ゲル/皮膚の温度を選択する工程、
ゲルの形状と量(体積量)、ゲルに対する電極の位置、及びゲルに曝露する皮膚の部分を決定するホルダにおいて電極とゲルを組み合わせる工程、
皮膚の下準備をする工程、
適切な装着手段を用いて個人の頭部にアセンブリを装着する工程、
抵抗等の電極特性をチェックする工程、及び/又は
皮膚に適用するコンディショニング電気波形を選択する工程を含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、その第7の様相において、複数の電極を用いて頭皮を通して経頭蓋電流を印加するための装置であって、各電極は、
近位端と頭皮に接触する遠位端を有し、その一部がゲルの一部を含んでいる少なくとも1個の剛性又は半剛性シェルと、
近位端とゲルの一部に接触する遠位端を有する少なくとも1個の電気刺激電極と、
頭皮に接触し、電解質を全く含まないか、電解質を最小限に含むか、又は一種以上の電解質を含むゲル又はペーストと、
頭皮上に位置決めされ、半剛性シェルに接続しているキャップ又はメッシュとを含む装置を提供する。
【0017】
本発明は、その第8の様相において、複数の電極を用いて頭皮を通して経頭蓋電流を印加するための装置であって、各電極は、
近位端と頭皮に接触する遠位端を有し、その一部が二次ゲルの一部を含んでいる少なくとも1個の半剛性シェルと、
電解質を全く含まないか、電解質を最小限に含むか、又は一種以上の電解質を含む一次ゲルの一部と接触する遠位端と近位端を有する少なくとも1個の電気刺激電極と、
一次ゲルの一部及び頭皮に接触する二次ゲルとを含み、二次ゲルは電解質を全く含まないか、又は一種以上の電解質を含んでもよい装置を提供する。
【0018】
本発明は、その第9の様相において、複数のユニットを用いて頭皮を通して経頭蓋電流を印加するための装置であって、各ユニットは、
近位端と頭皮に接触する遠位端を有する少なくとも1個の半剛性シェルと、
一部が半剛性シェルに接触し、一部が電気刺激電極に接触する電極マウントと、
ゲルの一部に接触する遠位端と近位端を有する少なくとも1個の電気刺激電極と、
頭皮に接触し、電解質を全く含まないか、又は一種以上の電解質を含むゲル又はペーストとを含む装置を提供する。
【0019】
本発明は、その第10の様相において、導電性バッキングと、該バッキング上にコートされた導電性ヒドロゲルマトリックスとを含む経頭蓋刺激電極であって、前記マトリックスは患者の皮膚に接触するようになっており、体の輪郭に沿うのに十分な可撓性を有する経頭蓋刺激電極を提供する。
【0020】
別の分野においては、脳波記録に小型の頭部電極を用い、脳刺激電流を印加するのではなく、脳電位を測定する。このような小型電極は、従来は神経頭蓋刺激に用いられたり検討されたりすることはなかったが、その理由は、小型の頭部電極を用いて所望の神経頭蓋刺激電流レベルを印加した場合、かなり高い電流密度がもたらされ、相当の痛み及び/又は不快感が引き起こされると考えられたからである。本明細書で後述する広範な実験の結果、本出願人は、本明細書に記載の発明の一部を構成する特定の設計条件下、先行技術に開示される小型頭部電極を修正して神経頭蓋刺激に有効利用できることを見出した。出願人は、先行技術の脳波記録電極を記載した以下の特許、即ち、米国特許第6,640,122号、米国特許第6,574,513号、米国特許第6,445,940号、米国特許第6,201,982号、米国特許第6,175,753号、米国特許第6,161,030号、米国特許第4,171,696号、米国特許第4,537,198号、米国特許第4,683,892号、米国特許第5,357,957号、米国特許第5,479,934号、米国特許第5,511,548号、米国特許第5,630,422号、米国特許第5,730,146号、米国特許第5,740,812号、米国特許第5,800,351号、米国特許第6,047,202号、米国特許第6,067,464号、米国特許第537,198号、米国特許第4,632,120号、米国特許第4,709,702号、米国特許第4,770,180号、米国特許第4,836,219号、米国特許第4,967,038号、米国特許第5,038,782号、米国特許第5,273,037号、米国特許第5,291,888号、米国特許第5,293,867号、米国特許第5,348,006号、米国特許第5,357,957号、米国特許第5,404,875号、米国特許第5,479,934号、米国特許第5,564,433号、米国特許第5,740,812号、米国特許第5,800,351号、米国特許第5,813,993号、米国特許第6,067,464号、米国特許第6,161,030号、米国特許第6,167,298号、米国特許第6,175,753号、米国特許第6,201,982号、米国特許第6,301,493号、米国特許第6,381,481号、米国特許第4,683,892号、米国特許第4,709,702号、米国特許第5,038,782号、米国特許第5,479,934号、米国特許第6,067,464号、米国特許第6,155,974号、米国特許第4,067,321号、米国特許第4,632,120号、米国特許第4,709,702号、米国特許第4,936,306号及び米国特許第5,222,498号の開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0021】
皮膚を経由する薬物送達(経皮薬物送達)を目的として上述のものとは異なる電極が用いられている。それらの電極は、電気刺激や電気療法、神経頭蓋刺激に広く用いられているものではないが、本発明の原理に従って修正すれば、神経頭蓋刺激にも適したものになる。出願人は、このような先行技術を記載した次の特許、即ち、米国特許第4,177,817号、米国特許第4,196,737号、米国特許第5,282,843号、米国特許第4,736,752号、米国特許第3,817,252号、米国特許第4,503,863号、米国特許第4,535,779号、米国特許第7,392,096号、米国特許第6,343,226号、米国特許第4,736,752号、米国特許第4,367,755号及び米国特許第7,421,299号の開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0022】
定義
本明細書で用いる次の単語及び用語は以下に示す意味を有するものとする。
【0023】
特に明記しない限り、「含む(comprising)、(comprise)」及びこれらが文法的に変化したものは、列挙された要素を含むと共に、列挙されていない更なる要素を包含することも許容するような「オープン」又は「包含的」な表現を意図している。
【0024】
本明細書で用いる「約」は、処方における構成要素濃度との関連で、一般には表示値の±20%を意味し、より一般には表示値の±10%を意味し、より一般には表示値の±5%を意味し、より一般には表示値の±2%を意味し、更に一般には表示値の±1%を意味し、更に一般には表示値の±0.5%を意味する。本明細書の開示の全体を通して、ある実施形態は範囲の形式で開示される。範囲形式による記載は、主に便宜上且つ簡潔さのためであり、開示された範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきでないことは理解されたい。従って、ある範囲の記載の場合には、その範囲内における全ての可能な部分的範囲と共に、個々の数値も具体的に開示されていると考慮すべきである。例えば、1〜6等の範囲の記載の場合、1〜3や1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分的範囲と共に、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5及び6も具体的に開示されていると考慮すべきである。これは範囲の広さとは関係なく適用される。
【0025】
図面の簡単な説明
本発明の上述の特徴及び他の特徴は、本発明の例示的実施形態に関する以下の詳細な説明と図面によってより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ要素を示す。
【図2】図2は、図1のアダプタと共に、アンロック位置にあるキャップ要素を示す。
【図3】図3は、キャップ要素がロック位置にある図2のアダプタを示す。
【図4】図4は、図1のアダプタと共に、アクセサリ要素を示す。
【図5】図5は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図6】図6は、図5のアダプタと共に、アンロック位置にある他のキャップ要素を示す。
【図7】図7は、キャップがロック位置にある図6のアダプタ及びキャップを示す。
【図8】図8は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図9】図9は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図10】図10は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図11】図11は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図12】図12は、図11のアダプタと共に、アクセサリ要素を示す。
【図13】図13は、電極アセンブリのアダプタと共に、他のアクセサリ要素を示す。
【図14】図14(a)及び図14(b)は、ゲル、電極、シールド及びキャップがプレロードされた図1のアダプタを示す。
【図15】図15は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図16】図16(a)及び図16(b)は、本発明の原理に係る電極アセンブリの他のアダプタを示す。
【図17】図17は、キャップを有さず、更なるシールドを有する図14のアダプタを示す。
【図18】図18は、更なるシールドを有する図14のアダプタを示す。
【図19】図19(a)及び図19(b)は、本発明に係る電極を示す。
【図20】図20は、本発明に係る電極を示す。
【図21】図21は、本発明に係る電極を示す。
【図22】図22は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用実装プレートを示す。
【図23】図23は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用半円形状バンドを示す。
【図24】図24は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用半円形状バンドを示す。
【図25】図25は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用十字状バンド設計を示す。
【図26】図26は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用円形状バンド設計を示す。
【図27】図27(a)及び図27(b)は、電極アセンブリを受け、それを位置決めする可撓性アームを含む、本発明に係る電極アセンブリ実装装置を示す。
【図28】図28は、電極アセンブリを受け、それを位置決めする可撓性アームを含む、本発明に係る電極アセンブリ実装装置を示す。
【図29】図29は、ペレット型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。
【図30】図30は、ペレット型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。
【図31】図31は、本発明に係るゴム型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。
【図32】図32は、本発明に係るAg/AgClディスク電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。
【図33】図33は、本発明に係るAg/AgClリング電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。
【図34】図34は、本発明に係る種々の電極及び種々のゲルを用いて種々の被験者にカソード刺激を行った際に生じた痛みを示す。
【図35】図35は、本発明に係る種々の電極及び種々のゲルを用いて種々の被験者にアノード刺激を行った際に生じた痛みを示す。
【図36】図36は、本発明に係る様々な電解質ゲルを有する様々な電極の平均実行時間を示す棒グラフである。
【図37】図37は、本発明に係る種々の電極及び種々のゲルを用いた際の電気化学的挙動と時間及び痛みの概要を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の同様の要素を示す図面においては同様の参照番号を用いる。
【0028】
発明の詳細な説明
医療用電極は従来、多くの形状や形態を採ってきた。電極間で電流を殆ど又は全く流さないEKGやEEG等のモニター用装置で用いる電極は通常、円形の接触表面を有するが、刺激装置デバイスで用いる電極はより大型で矩形表面を有する傾向にある。例えば、経頭蓋直流刺激用の電極は大型で正方形のスポンジ形態である。頭部の特定領域に高い電流密度を適用することは電気刺激プロトコルの効果の点からは望ましいが、現在の電極はこのようなパラメータを最適化するものではない。小型電極はこの効果を達成し、当該分野を発展させる上で理想的である。しかし、小型電極、即ち特定の高電流密度を用いると、皮膚の痛みや傷害をもたらすであろうと通常考えられている。
【0029】
本発明者らは、適切に設計された小型電極を用いることによって高電流(高電流密度)を皮膚に対し安全且つ快適に適用できることを見出した。この発見は、当該分野の専門家によって広く支持されている従来の認識に挑戦するものである。
【0030】
ここにおいて達成される本発明の目的は、神経頭蓋電気刺激(好ましい実施形態においては経頭蓋直流刺激)に適した実用的小型医療用電極である。主目的は、患者に対して安全且つ快適な方法で所望レベルの電流を送達できることである。従来の電極設計は、幾つかの理由から不適切である。大型電極の場合、皮膚の湾曲に対応するよう可撓にする必要がある。この結果、皮膚界面(例えば、金属電極と皮膚との間のゲルや他の物質の量)がうまく制御できなくなる。これによって電流ホットスポットや傷害がもたらされることが分かっている。小型電極についても試みが為されているが、従来の小型電極の設計は種々の理由から不適切である。幾つかの設計においては、可撓性(粘着性)バックが用いられているが、これでは、金属と皮膚の間隔が厳密には調節されない。また、他の従来の設計においては、「低プロファイル」構成によって金属と皮膚との間隔が不十分となる。本発明においては、皮膚に対する電極位置を固定し、金属と皮膚との間隔を最小限に維持し、安全且つ有効に大型電極の機能性を改良及び再現することができる電極が提供される。
【0031】
本発明は、その第1の様相において、神経頭蓋刺激用電極アセンブリを提供するものであって、該アセンブリは、
電極装着用レシーバを含むと共に、電極及び導電性ゲル又はペーストと共に用いるホルダであって、該ゲル又はペーストを貯蔵するためのホルダリザーバを有するホルダを含むアダプタと、
該ホルダを被験者の頭皮に装着するための装着手段と、
を含み、
該ホルダは、該ゲル又はペーストの流れを制限する剛性又は半剛性壁を有する、電極アセンブリを提供する。
【0032】
経頭蓋刺激時の皮膚の安全性及び快適さを確保するため、本発明に記載のように電極を適切に設計する必要がある。また、電極電圧が非常に高いレベルまで上昇しなことを確実にする必要もある。このような設計には、幾つかの工学的因子のバランスが必要である。本発明者らは、有効で安全な電極装置にとって重要な三特性を見出した。
【0033】
第1に、ゲル−皮膚接触面積を所望の範囲内にすることである。電流入力の位置を局所化し、接触の均一性を実際に制御するためには、この面積を最小化する必要がある。しかし、電流を流すことによる不快感を軽減するためにはこの面積を最大化する必要があり、流す電流量に関して(応じて)この面積を最大化することができる。
【0034】
第2に、電極と皮膚の最も近い要素間の間隔を最大化する必要がある一方、ヘッドギアと電極の全体のプロファイルが実用的でない程に高すぎない(即ち、頭部から離れて位置しない)ことである。頭部で用いる古典的な電極、例えば、EEGに用いる電極は、頭皮表面に直接置かれるか、又は頭皮表面に非常に近接して置かれる。しかし、神経頭蓋刺激等の際に大電流を頭皮に印加する場合、電極と皮膚との直接接触による潜在的な危険性が存在する。従って、頭皮と電極が十分に離れるように電極とそのホルダを設計することが非常に重要である。更に、皮膚は平坦ではなく柔軟性があるため、開口部のサイズに応じた程度に電極アセンブリ内に突き出ることも考慮する必要がある。従って、本発明に記載の所望の装置及びそのホルダは、a)電極を一定の高さに保持し、b)皮膚を電極領域内に突き出させるホルダを用いて電極を皮膚から物理的に離して位置決めする特定の深さを有する。ここで留意すべきは、電極(ペレット)の面積を制限するか、又はフィン(リング)を用いることによって(b)を行うことができるということである。この間隔を維持する理由は幾つかあるが、例えば、電気化学的産物を減らすことや、電極と皮膚との接触を防ぐこと、ゲル全体に電流を均一に流すことが挙げられる。
【0035】
第3に、ホルダ体積及び電極サイズの所定の制約の範囲内で金属電極とゲルとの接触面積を最大化する必要がある。電極がゲル物質の一表面にのみ接触する場合、電極−ゲル界面は基本的に2次元の界面である。しかし、金属電極をゲル内に浸漬する場合、3次元の界面となるため、表面積が大幅に増加する。例えば、ペレット電極は、小径の円筒状プラスチックホルダ内に嵌合させることができる。プラスチックホルダは皮膚接触面積は小さいが、深いため、表面積の大きい長いペレットを用いることができる。しかし、本発明者らのリング設計においては、電極接触面積は、実際には皮膚接触面積よりも小さい。
【0036】
電圧及び安全性を最適化するのに必要なこれらの重要な概念を具現化する電極の具体例、及び後述の説明的実施形態を図面で示す。本質的には、電極ホルダは両端が露出した剛性又は半剛性物質からなり、一定量のゲルと電極とを保持することができる。
【0037】
一実施形態においては、電極保持リザーバは、円筒状、円錐状、正方形状、矩形状、円形状、又はこれらの形状のより複雑な変形である。好ましい一実施形態においては、ホルダは、電極とゲル物質の両方を保持するのに適した体積を有する円筒又は双曲面形状である。
【0038】
ホルダを形成する物質は、ゲルと電極の両方を所定の位置に保持するのに適した如何なる剛性又は半剛性物質とすることができる。一実施形態においては、ホルダは、プラスチック、スポンジ及びセラミックから成る群から選択される物質で形成されるが、これらの物質に限定されない。好ましい一実施形態においては、ホルダは半剛性プラスチックで形成される。
【0039】
例えば、図1は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ100を示す。アダプタ100は、実質的に双曲線状の内部表面を有する内部コンパートメント102を含む本体101を有する。内部コンパートメント102は、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント102aと、電極アセンブリの導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント102bとを有する。コンパートメント102a、102bは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント102b内の導電性ゲルを電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント102a内に流すことができる。
【0040】
第1のコンパートメント102aは、切り込み(indentations)103(その各々は電極の底面を支えるためのランド面103aを有する)と、図2に示すようにキャップ110のタブ110aを受け入れるための溝104と、電極の導電体が第1のコンパートメント102aから離れて延在できるように経由する通路を画定するチャネル105とを更に有する。
【0041】
図3に示すように、カバー110の各タブ110aを対応する溝104の垂直部104aに挿入して、キャップ110を第1のコンパートメント102aの頂部内にシール可能に位置決めすることができる。キャップ110は、第1のコンパートメント102aに挿入した際、第1のコンパートメント102aの頂部の対応する表面部分に等角的に且つシール可能に接触するような形状の表面110bを有する。図1及び3に示すように、第1のコンパートメント102aに挿入した際、タブ110cを操作して、タブ110aが溝104の水平部104bに沿い、キャップ110の閉位置に向かって外側に移動するようにキャップ110を回転させることができる。図1から分かるように、水平部104bは水平方向に沿って若干下側へ延在しており、タブ110aが水平部104bに沿って外側に移動すると、表面110bが第1のコンパートメント102aの頂部の対応する表面部分に押し付けられ、キャップ110を閉位置で本体101に効果的に固定又はロックする相互作用力が生じるようになっている。図4は、アダプタ100に実装するアクセサリ410を示す。アクセサリ410の各タブ410aを対応する溝104の垂直部104aに挿入して、アクセサリ410をアダプタ100にロックすることができる。アクセサリ410は、内部表面402を有する本体401を有する。内部表面402は、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント402aと、電極アセンブリの導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント402bとに分割されている。コンパートメント402a、402b及び102aは互いに流体連通している。
【0042】
図5は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ500を示す。アダプタ500は、2種類のコンパートメント、即ち、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント502aと、電極アセンブリの導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント502bとを有する内部表面502を含む本体501を有する。コンパートメント502a及び502bは、切り込み503によって表面501から分割されている。この切り込み503によって、内部表面502に電極の底面を支えるためのランド面504が形成されている。2個の突起部505aは、電極の側面から一定の距離で電極を保持するように設計されている。この場合、電極の底面がランド面504に載り、突起部505aによって電極が両側からの如何なる動きからも隔離されるように電極を頂部から実装することができる。図6に示すように、突起部505b及び505cは、キャップ510をアダプタ500に等角的に且つシール可能にロックするような形状となっている。
【0043】
図6のキャップは突起部511を有する。それぞれ2個の垂直突出バー511aと水平突出部511bは、キャップ510をアダプタ500にロックする際に突起部505bの下に位置決めされる。
【0044】
図5〜7に示すように、キャップ510の各突出部511bを突起部505bの下に挿入し、キャップ510を第1のコンパートメント502aの上部に確実にしっかりと位置決めすることができる。キャップ510は、第1のコンパートメント502aに挿入した際、第1のコンパートメント502aの頂部の対応する表面部分に等角的に且つシール可能に接触するような形状の表面513を有する。図6及び7に示すように、第1のコンパートメント502aに挿入した際、タブ514を操作して、タブ510aが突出部505の水平突起部505bに沿い、キャップ510の閉位置に向かって外側に移動するようにキャップ510を回転させることができる。図6から分かるように、突起部505bは水平方向に沿って若干下側へ延在しており、タブ511bが突起部505bに沿って外側に移動すると、表面513が第1のコンパートメント502aの頂部の対応する表面部分に押し付けられ、キャップ510を閉位置で本体501に効果的に固定又はロックする相互作用力が生じるようになっている。
【0045】
図8は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ800を示す。アダプタ800は、2個の大きなコンパートメント、即ち、電極を位置決めするための半径が大きい上部コンパートメント802aと、導電性ゲルを受け入れるための半径が小さい下部コンパートメント802bとを有する内部表面802を含む本体801を有する。コンパートメント802a、802bは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント802b内の導電性ゲルを電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント802aに入れることができる。
【0046】
内部表面802から水平突出部804が上部コンパートメント802aの中心に延在している。垂直突出部803は水平突出部804から延在し、コンパートメント802cを有する。コンパートメント802c及び802bは互いに流体連通している。電極の底面は804の頂面に載っている。外側に向かって角張った突出部805は、電極の中心孔で電極を締め付けて保持するための突出本体803から延在している。本体803に電極を押し込むと、それに呼応して突出部805は内側へ動き、電極を所定の位置にしっかりと保持する。
【0047】
図9は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ900を示す。アダプタ900は、内部円筒面902を含む本体901を有する。円筒面902は、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント902aと、電極アセンブリの導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント902bを画定する。コンパートメント902a、902bは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント902b内の導電性ゲルを電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント902aに入れることができる。
【0048】
第1のコンパートメント902aは、切り込み903(その各々は電極の底面を支えるためのランド面903aを有する)と、電極が第1のコンパートメント902aに挿入できるように経由する通路を画定するチャネル904とを更に有する。或いは、アダプタ900内の電極は902aの頂部から実装することができる。アダプタ900の外壁の溝905を用いて、アダプタ900を実装装置の所定の位置にしっかりと保持することができる。
【0049】
図10は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1000を示す。アダプタ1000は、内部円筒面1002を含む本体1001を有する。円筒面1002は、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント1002aと、電極アセンブリの導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント1002bを画定する。コンパートメント1002a、1002bは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント1002b内の導電性ゲルを電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント1002aに入れることができる。
【0050】
第1のコンパートメント1002aは、突出部1003(その各々は電極の底面を支えるためのランド面1003aを有する)と、電極を所定の位置に保持するための垂直バー1003bとを更に有する。チャネル1004は、電極の導電体が第1のコンパートメント1002aから離れて延在できるように経由する通路を画定する。アダプタ1000内の電極は第1のコンパートメント1002aの頂部から実装することができる。アダプタ1000の外壁の溝1005は、その頂部にアダプタ1000の実装装置への実装を支持する3個のフラップ状突出部1006を有する。
【0051】
図11は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1100を示す。アダプタ1100は、内部円筒面1102を含む本体1101を有する。円筒面1102は、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント1102aと、電極アセンブリの大量の導電性ゲルを受け入れるための第2の幅広く延在するコンパートメント1102bを画定する。コンパートメント1102a、1102bは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント1102b内の導電性ゲルを電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント1102aに入れることができる。
【0052】
第1のコンパートメント1102aは、切り込み1103(その各々は電極の底面を支えるためのランド面1103aを有する)と、電極を保持するためのバー1104とを更に有する。図12に示すように、タブ1105は、アクセサリ要素1110を保持するためにバー1104の頂部から突出している。アクセサリ1110の底部1111はアダプタ1100の頂部1106に取り付けられる。
【0053】
図12に示すように、アクセサリ1110は、突出部1113を有する内部円筒面1112を含み、突出部1113は、他の電極を位置決めするための水平突出部1113aと、電極を保持するための垂直バー1113bとを有する。円筒面1112は、電極アセンブリの電極を位置決めするための第1のコンパートメント1112aと、導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント1112bを画定している。コンパートメント1102a、1112b及び1112aは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント1112b内の導電性ゲルを両方の電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント1112a及び1102aに入れることができる。
【0054】
図13は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1300を示す。アダプタ1300は、2個の異なる本体、即ち、下部本体100と上部本体1301を有する。内部表面1302は、電極アセンブリの3個の異なる電極を位置決めするための第1のコンパートメント1302aと、電極アセンブリの導電性ゲルを受け入れるための第2のコンパートメント1302bを画定している。コンパートメント1302a、1302bは互いに流体連通しており、これによって、第2のコンパートメント1302b内の導電性ゲルを電極と物理的に接触させる目的で第1のコンパートメント1302aに入れることができる。
【0055】
第1のコンパートメント1302aは、3個のスロット1303を更に有し、その各々は電極の底面を支えるためのランド面1303aを有する。電極は、アクセサリ1300の頂部から3個のスロット1303の各々に実装することができる。
【0056】
図14(a)及び14(b)は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1400を示す。アダプタ1400はアダプタ100を有し、そのコンパートメント102bは、導電性ゲル1403で既に満たされており、100の底面の着脱可能プラスチックシールド1401で覆われている。アダプタ100のコンパートメント102aには電極1404がプレロードされており、コンパートメント102aの頂部の締め付けホルダキャップ110で覆われている。
【0057】
図15は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1500を示す。アダプタ1500はアダプタ100を有し、その外表面101は螺旋状溝1501を有する。溝1501の設計は、アダプタ100を実装装置の関連する開口部内に装着し、該開口部内でアダプタ1500が時計回り又は反時計回りに回転するように行う。
【0058】
図16(a)及び16(b)は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1600を示す。アダプタ1600はアダプタ100を有し、その外表面101はその各々の側において、実装装置の関連する開口部内に滑り込ませるための2個の溝1601を有する。
【0059】
図17は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1700を示す。アダプタ1700はアダプタ100を有し、そのコンパートメント102bは、導電性ゲル1703で既に満たされており、100の底面の着脱可能プラスチックシールド1701で覆われている。更に、アダプタ100のコンパートメント102aには電極1704がプレロードされており、コンパートメント102aの頂部の着脱可能プラスチックシールド1702で覆われている。
【0060】
図18は、本発明に係る電極アセンブリのアダプタ1800を示す。アダプタ1800はアダプタ100を有し、そのコンパートメント102bは、導電性ゲル1802で既に満たされており、100の底面の着脱可能プラスチックシールド1801で覆われている。アダプタ100のコンパートメント102aは締め付けホルダキャップ110で覆われており、アダプタ本体100の側面101も着脱可能プラスチックシールド1803で覆われており、そこから電極1804をホルダ100内に滑り込ませることができる。
【0061】
あるアダプタを追加して更なる機能性を得ることは実用的であろう。例えば、大型電極の場合、電極領域外にゲルや塩溶液が漏れ出したり、刺激時に乾燥するといった問題が生じる可能性がある。このような問題は、大型電極が可撓性でなければならないという事実に一部起因する。従って、特定のアダプタを電極ホルダに追加して、構成要素を封じ込めたり、構成要素の位置を固定することができる。
【0062】
一実施形態においては、堅いプラスチックインセットを頭皮にしっかりと固定し、このような漏れを防止する。他の実施形態においては、アダプタをプラスチックホルダの頂部に置くキャップとして形成する。好ましい一実施形態においては、アダプタを2個の構成要素上のタブで合わせて所定の位置にロックする。特に好ましい一実施形態においては、タブをアダプタ上に設け、アダプタを所定の位置にロックするため、電極ホルダの内表面に溝を形成する。他の実施形態においては、タブを電極ホルダの外表面に設置し、溝をアダプタ内に設置する。
【0063】
所定の電極ホルダをゲルの量に合わせ、電極ホルダを所定の位置に保持するために、種々の方法がホルダに対して立案され、電極位置への実用的なアクセスや制御が行われている。一実施形態においては、電極をホルダの頂部から特定の距離にあるリッジ(a set of ridges)に押し込む。他の実施形態においては、電極アダプタはリッジのレベルで開口する側部を有し、電極をその側部から所定の位置に滑り込ませることができる。
【0064】
電極ホルダを身体、頭蓋又は頭皮に取り付けるため、ヘッドギアを後述のように用いることができる。電極ホルダをヘッドギアに装着するため、電極ホルダを修正してヘッドギアへの装着を確実にすることができる。このような修正には、ロック機構やスナップ機構、スクリュー機構の使用が挙げられる。また、電極ホルダをヘッドギアに固定するためのハードウェアの設計に当たっては、電極ホルダを固定する際にホルダが修正され又は機能的に作動して刺激が可能になるようにすることができる。一実施形態においては、電極ホルダにゲルを封入し、電極ホルダをヘッドギアに装着する際にシールに穴を開ける。
【0065】
上述のように、最適な電極ホルダのサイズは、ゲル−頭皮接触面積や電極と皮膚との間隔に最適な値の範囲に応じて変わる。一実施形態においては、ゲル−頭皮接触面積は7cm2未満で0.07cm2よりも大きい。好ましい一実施形態においては、接触面積は3cm2未満で1cm2よりも大きい。電極ホルダの底部のオリフィスの寸法は論理的には上述の寸法から得られるが、ゲル−頭皮接触表面積と同一の面積が露出されるように構築される。
【0066】
本発明の安全目的には、電極と皮膚との間の間隔が最適となるのに十分な高さにホルダを設ける(即ち、頭皮に対して垂直な軸に沿って間隔が十分に長くなるように設置する)ことが更に必要である。一実施形態においては、電極と皮膚との間隔は0.25cm〜1.3cmである。好ましい一実施形態においては、この間隔は0.5cm〜0.8cmである。
【0067】
従って、最適なホルダの総体積は、ゲル−皮膚接触オリフィスの理想的な面積、電極と皮膚との理想的な間隔に対応するのに必要な間隔(高さ)、及びホルダの内部輪郭及び形状によって決まる。内部ホルダの寸法は、刺激時に用いるゲルの適切な量にも対応できるようにすべきである。一実施形態においては、ゲルの量は0.1mL〜10mLである。好ましい一実施形態においては、ゲルの量は0.5mL〜5mLであり、好ましくは0.5mL〜1.5mLである。
【0068】
上述のように、本発明者らは、電圧と感覚を最小限に抑えながら小型電極でかなりの電流を流すことができることを見出した。しかし、電極は、痛みと電圧の両方を考慮した最小サイズよりも大きい必要がある。小型から大型電極設計への移行においては、電極の電圧容量に劇的な改善が見られ、電圧容量の増加はゲル−皮膚接触面積ではなく、金属−ゲル接触面積に関係していた。従って、本発明の電極アセンブリには金属−ゲル界面面積を増加させる方法を用いた。
【0069】
一実施形態においては、金属電極の特性を具体的に考慮する。電極はリング、ディスク、ペレット又は他の形状を採ることができる。好ましい一実施形態においては、電極はリング状であり、電極ホルダ内の特定の空間を占める最適な表面積を有するように設計されている。この線に沿って、電極のより複雑な変形を想定し、電極−ゲル接触表面積を増加させて、本発明の洞察を利用することができる。一実施形態においては、金属−ゲル接触面積はゲル−皮膚接触面積の50%よりも大きい。他の実施形態においては、金属−ゲル接触面積はゲル−皮膚接触面積の100%よりも大きい。好ましい一実施形態においては、ゲル内に露出した金属の垂直突出部を増加させて、ゲル−皮膚接触面積に対する金属−ゲル接触面積を増加させる。
【0070】
好ましい一実施形態においては、増加した垂直突出部はペレット電極設計の形態を採る。他の好ましい実施形態においては、金属の最大垂直寸法は水平直径の3倍よりも大きい。他の好ましい実施形態においては、電極の最大垂直寸法は最大水平寸法よりも小さい。
【0071】
他の好ましい実施形態においては、電極金属−ゲル接触面積には前記金属電極の頂部及び底部が含まれ、よって、(ゲルの頂部に載っている金属電極の場合と比べて)金属とゲルとの接触面積を約2倍にする。他の実施形態においては、金属電極の表面を巻き込み、リッジやスパイク、凹凸や曲線を利用する等によって金属−ゲル接触面積を増加させる。更に好ましい実施形態においては、焼結プロセスによって金属−ゲル接触面積を増加させる。更に好ましい実施形態においては、焼結プロセスでAgClを用いる。
【0072】
他の好ましい実施形態においては、電極の中心を空洞にしてゲル−金属接触面積を増加させる。本明細書においては、このような実施形態をリング電極としても記載している。他の好ましい実施形態においては、中空電極を電極ホルダの壁内に設ける。
【0073】
他の実施形態においては、複数の電極を用いてゲルに露出する電極表面積を最大にするように電極ホルダを構築する。好ましい一実施形態においては、同一ホルダ内で2個の電極を同時に用いることができるような追加のアクセサリ「スリーブ」をアダプタに設け、露出表面積を2倍にする。他の好ましい実施形態においては、単一ホルダ内で3個の別々の電極がゲルに十分に接触できるような3個の開口部をアダプタに形成し、露出表面積を3倍に増加させる。
【0074】
図19(a)〜21は、本発明に係る電極の幾つかの例を示す。
【0075】
図19(a)及び19(b)は、本発明に係る電極1900を示す。電極1900は、底面上に三角形のスパイク1901を有し、ゲルに接触する金属の表面積を増加させている。
【0076】
図20は、高さを例えば3倍増加させてゲル−金属接触表面積を増加させた電極2000を示す。電極2000は電極アダプタ100内に実装する。電極2000の頂部2001と底部2002は同一の表面積を有する。
【0077】
図21は、螺旋形状に設計し、ゲルと接触する総表面積を増加させた電極2100を示す。電極2100は、ゲルコンパートメント102b内に完全に浸漬するように構成されている。
【0078】
上述の設計は、ゲルとそれに続いて浸漬する電極に対するコンパートメントが単一の場合を示す。しかし、コンダクタンスを目的として、又はpHや温度、潜在的ビルドアップのより複雑な管理のために複数のゲルを設けることが望ましい場合がある。従って、本発明の他の実施形態では、異なるゲルを含むことができる複数のコンパートメントを有するホルダリザーバを伴う。
【0079】
異なる電極物質は刺激時に異なる物理化学的作用を示すことができるため、電圧ビルドアップと痛み感覚の両方を最小限に抑える上で幾つかの物質が他の物質に比べて望ましい場合があることは明らかである。従って、電極の固体導体は金属、ゴム、導電性ゴム、Ag/AgCl、Ag、金とすることができる。
【0080】
好ましい一実施形態においては、固体導体は焼結Ag/AgClである。
【0081】
本発明の電極アセンブリは、その特に好ましい一実施形態において、頭皮に対し表面積が約2cm2露出する円筒状で半剛性のプラスチック電極ホルダを有すると共に、頭皮オリフィスの上方約0.5cmにある誘導リッジによって電極ホルダ側面内に挿入され、後述の様相に記載の好ましい組成物のゲル1mLに完全に浸された焼結AgClリング電極を有する。
【0082】
刺激を確実に行い、神経頭蓋刺激時の安全性プロファイルを安定にするため、電極ゲルと金属電極の接触が維持されると共に、電極ゲルと頭皮の接触が維持されるよう、電極と頭皮との接続を十分に確実にする必要がある。前者の接触維持は上で詳述したようにプラスチックホルダによって行う。後者の接触維持には電極アセンブリ(好ましくは、複数の電極アセンブリ)と頭部との接続が必要である。これを用いる上で最も実用的な方法は、頭皮の所定の位置にプラスチックアセンブリを保持する「ヘッドギア」の一種である。従って、頭部にプラスチックインセットを保持する技術は重要であり、本明細書に記載のように、最も実用的な利用に対して最適化することができる。
【0083】
EEG等の幾つかの測定デバイスにおいては、定位置孔を有する可撓性キャップを用いて頭部の定位置に電極アレイを位置決めする。実際、このような測定の場合、被験者によらない所定の定位置を用いることが好ましい。これに対し、プリセット(EEG)位置を用いて刺激することも考えられるが、特定の刺激適用に呼応して頭皮の種々の特定位置に電極を置くことができることは、刺激の有効性と安全性の両方にとって好ましい。これは、脳領域の特定の標的を確実にすると共に、個人間の頭部サイズや輪郭の違いを明らかにするのに必要である。本明細書に記載のヘッド(実装用)ギアは、本発明に記載のプラスチックホルダに合うように設計されているが、本明細書に記載されていない電極やホルダにも適用することができる。
【0084】
一実施形態においては、頭部の前後又は左右を覆う可撓性バンドによって複数の電極アセンブリを装着する。このバンドには、個々の電極アセンブリ用の空間が含まれると共に、残りの頭部に回すサブバンドを接続するためのスロットが含まれており、各スロットには電極アセンブリ用の場所がバンドに沿って定間隔で設けられている。
【0085】
好ましい一実施形態においては、主バンドは頭部周囲を完全に覆っており、金具で接続されている。
【0086】
図26は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用の円形状バンド設計の一例を示す。
【0087】
ヘッドギア2600は、調整可能なプラスチックヘッドバンド2601とファブリック製C字形状の十字状バンド2604を有し、更にバンド2604の交差部に円形のファブリック製ディスク状領域2605も有する。ヘッドバンドの長さを増減させる円形ノブ2603を設けるのが好ましい。ヘッドバンド2601の長さ全てに亘って、十字状バンド2604を適切な位置に保持するための突起部2602が存在する。十字状バンド2604はその各々の末端に、ヘッドバンド2601の突起部2602に合う穴2606を有する。ディスク状セクション2605は、電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500)を収容する穴2607を有する。十字状バンド2604は、ヘッドバンド2601の別々の突起部2602に沿って調整し、ディスク状領域2605を頭部で正確に位置決めすることができる。
【0088】
他の好ましい実施形態においては、バンドは半円形状であり、中央の主バンドから分岐するバンドによって頭部に固定する。
【0089】
図23及び24は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用の半円形状バンド設計の例を示す。
【0090】
例えば、図23に示す可撓性ヘッドバンド2301はウェビングバックル2302をその一端に有し、頭部でのバンドの長さを調整する。種々のサブバンドアタッチメント2303をバンド2301の穴2305に装着し、電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500)のモジュール位置決めを行うのが好ましい。ヘッドバンド又はサブバンド2304の別々の穴2305にアダプタを実装することができる。
【0091】
図24は、プラスチック製「二重C字構造」十字状バンド2400を示す。十字状バンド2400の2個の主バンド間に追加の可撓性バンド2403を装着することができる。十字状バンド2400はその表面全体に沿って、種々の電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500)を実装するための多数の穴2404を有する。十字状バンド2400の別々の穴2404を用いて頭部の如何なる場所にも電極を有効に位置決めすることができる。
【0092】
他の好ましい実施形態においては、2個の主バンドが頭頂部上で「十字」を形成し、十字状バンドの各可動アームの両端には可動電極ホルダが含まれる。
【0093】
図25は、本発明に係る頭部固定手段用十字状バンド設計の一例を示す。プラスチック製十字状バンド2501は、互いに中心で交差する2個のプラスチックアーム2501a及び2501bを有する。2個のアーム2501a及び2501bは中心に沿って動かすことができる。2個のアーム2501a及び2501bの中心部には、更なる電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500)を装着するためのレセプタクル2504が設けられている。各アーム2501a又は2501bの末端には、他のプラスチックアタッチメント2502を保持するための可動C字状プラスチックホルダ2503が設けられている。プラスチックアタッチメント2502に電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500)を装着することができる。
【0094】
他の実施形態においては、頭部固定手段は「実装プレート」設計を伴い、これにはユニットを所定の位置に保持する2個のバンドと2個以上のプレートが含まれ、その各々は主バンドから分岐した、電極アセンブリ用の特定の可撓性又は所定の空間を有する。プレートは互いにヒンジによって接続されているため、頭部サイズや輪郭に合うように個々のプレートを調整することができ、正確な位置決めをすることができる。特に好ましい一実施形態においては、3個のプレートが中央のバンドに接続されている。
【0095】
図22は、本発明に係る電極アセンブリ実装装置用実装プレート設計の一例を示す。
【0096】
例えば、図22は、電極のモジュラー位置決め用の多数の穴2202を有する円形プラスチックプレート2200を示す。電極プレートは、ヒンジ接合2203によって互いに装着された3個以上の異なる部分から成るのが好ましく、これによって別々のプレート2200を自由に動かすことができる。また、可撓性バンド2201には、頭部にプレートを保持するためのプレートも装着されている。該プレートはその中心2207に小型の可撓性バンド2206を装着するオリフィスを有する。小型の可撓性バンドはその末端に穴を有し、プレート2200のオリフィス2207の内縁に沿って設けられたタブ2205をその穴に装着する。
【0097】
図27(a)〜28はそれぞれ、半円形状バンド設計及び円形状バンド設計の変形例を示しており、ここでは、サブバンドの代わりに可撓性アームが用いられているが、その各々は近位端において半円形状又は円形状バンドに装着され、遠位端において電極アセンブリを受け入れており、これらアームを操作して、ユーザの頭蓋皮膚表面上で電極アセンブリをフレキシブルに位置決めすることができる。
【0098】
図27(a)及び27(b)は、プラスチック製半円形状ヘッドバンド2700を示すが、5個の可撓性可動アーム2701がヘッドバンド2700の上部表面2700aから放射状に広がっている。各アームはC字状のプラスチックカップ2702を有し、これによって他のプラスチックピース2703を保持する。各プラスチックピース2703は、電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500のいずれか)を保持する。別々のアーム2701を動かすことによって、電極を頭部の如何なる場所でも位置決めすることができる。
【0099】
図28は、円形状の調整可能なプラスチックヘッドバンド2800を示すが、ヘッドバンド2800の長さ全体に亘って溝2802が設けられている。小型のプラスチック製スライダタブ2801が溝2802から突出しており、溝2802内で突出した可撓性アームを滑らせるように操作することができる。各アームにはC字状のプラスチックカップ2702を設けるのが好ましく、これによって他のプラスチックピース2703を保持する。各プラスチックピース2703は、電極アダプタ(例えば、上述のアダプタ100、800、1300、1400、1500、1700又は500のいずれか)を保持する。溝2802内で別々のアーム2701を動かすことによって、電極を頭部の如何なる場所でも位置決めすることができる。
【0100】
他の実施形態においては、可撓性EEGキャップを修正して任意に電極を位置決めすることができる。好ましい一実施形態においては、可撓性EEGキャップの特定の位置にサブバンドを置く。
【0101】
更に他の実施形態においては、テープ、接着剤、クリップ又はリッジを用いて電極を頭皮に装着する。
【0102】
神経頭蓋電極用電極アセンブリの位置決めに適した、バンドと開口領域で構成されるヘッドギアについて説明している。神経頭蓋刺激について記載された方法と共に当業者に公知の脳刺激に関する他の技法を用いることが可能であるが、必要に応じて神経頭蓋システム又は他の刺激技法に対して修正を行うことが要求される。このような他の脳刺激技法としては、経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流刺激、脳深部刺激、迷走神経刺激、頭蓋上刺激、経皮電気刺激、経頭蓋電気刺激が挙げられる。別の一実施形態においては、神経頭蓋刺激と頭蓋又は身体の他の箇所に位置する電極(例えば、頭部外電極)による刺激とを積極的に組み合わせることもできる。特定の一実施形態においては、電源を1個の神経頭蓋電極と身体上の他の電極とに接続する。身体上の追加電極は当業者に公知の種々の形態を採ってもよく、神経頭蓋刺激用に開発された技術を採用してもよい。
【0103】
本発明は、その第2の様相において、神経頭蓋刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減するための方法であって、神経頭蓋刺激デバイスと共に、本発明で詳述の電極装置を用いることを含む方法を提供する。本発明は如何なる神経頭蓋刺激技法にも関するが、本発明は特に経頭蓋刺激に有用であり、特に、経頭蓋直流刺激に適用される。理想的な実施形態においては、該方法は上述の電極装置、即ち、選択電極と、本発明に記載のゲル及び封じ込めアダプタを有する電極ホルダと、上述の頭部装着の特定手段とを有する電極装置を用いることを含む。
【0104】
本発明は、その第3の様相において、ピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減又は防止する神経頭蓋刺激ゲル用組成物を提供する。
【0105】
従来、ゲルは頭蓋電極と共に用いられてきたが、主にEEG等のモニター用途、又は一般の低電流刺激用であった。この種のゲルは、効果的な神経頭蓋刺激に必要な高電流・適用時間(例えば、最大2mAで20分超)に合うようには設計されておらず、このようなゲルは、患者を痛みや不快感から守るのに十分ではないであろうと一般に考えられている。しかし、本発明者らは、意外にも、ゲルを用いて不快感を最小限に抑えながら、このような高電流や長時間の刺激が行えることを見出した。本発明では、痛みや不快感を最小限に抑えながら頭皮に所望の電流を効果的に送達できることを本発明者らが見出した特定の組成物を提供する。
【0106】
また、電極やゲルの物理的変化(例えば、電気刺激時の電位やpH、温度の変化)が刺激を受ける被験者の痛みや感度の予測因子となるであろうことは当然のこととして予想されたが、本発明者らは、意外にも、刺激時にゲルのpHや温度が変化しなくても被験者が痛みを経験し得ることを見出した。また、電極電圧の上昇を制限すればpHや温度の変化を抑制することができるが、必ずしも痛みはなくならない。例えば、レクトロン(Lectron)IIゲルは、電極電位ビルドアップやpH変化に対する防御は最も大きいと思われるが、本発明者らのCCNY−4ゲルに比べて強い痛覚をもたらす。従って、本発明の神経頭蓋用途の安全且つ有効なゲルに関しては、pHや温度以外の特性を考慮する必要がある。
【0107】
本発明者らは、神経頭蓋刺激時の痛みや不快感に対して良好な防御を維持しながら効率的な電流送達を可能とする最適なゲルは特定のコア構成要素を有することを見出したが、その構成要素としては、1)特性をサポートする機能を有するポリマー、2)皮膚に作用して浸透性を増大及び/又は皮膚抵抗率を変化させるように機能する界面活性剤、3)ゲル水和を維持するように機能する湿潤剤、4)電気伝導度を上昇させるように機能する塩、5)水、及び6)防腐剤又は他の化学品が挙げられる。これらは適切なゲルの一般的な構成要素であるが、ゲルの性能は調製後のその全特性に関連することが分かっている。成分としてのこれらの構成要素の各々は他の構成要素の機能を果たす場合があり、例えば、界面活性剤が塩を有することもあれば、ポリマーが水和特性を有することもある。他の例として、塩以外の物質(例えば、ポリマーや界面活性剤)によって伝導度が得られる場合には塩を除外することができる。従って、このリストは重要な成分として、又は達成すべきコア機能のリストとして解釈することができる。
【0108】
しかし、このような特性を有する処方例を医療用電極に関して見出すことができるが、意外にも、特定の処方が本発明者らの用途に特に適していることを見出した。図37は試験したゲルのサンプルを示しており、その一般的な組成特徴や他の物理的特性が記載されている。これらのゲルは全て同様の特徴を有し、金属電極と共に用いることができるが、CCNYゲルのみは、用いた各電極に対する痛みの反応が最小限であることを示すことができた(本特許の図34及び35も参照のこと)。本発明者らは、通常の電極ゲルはゲルの基剤として用いることができるが、高電流を用いた神経頭蓋刺激時の痛みや不快感を防ぐには十分でないことを見出した。従って、電極用途の導電性ゲルとして当該技術分野で公知のゲル(例えば、シグナ(Signa)ゲルやスペクトラ(Spectra)360、テンシヴ(Tensive)、リダックス(Redux)、1090バイオゲル(BioGel)、レクトロン)はゲルの基剤又は基礎組成として適切であるが、痛みや不快感を最小限に抑えながら効果的に機能させるためには、本明細書で詳述する更なる特定の構成要素を追加する必要がある。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
特別に考慮する点としては、ゲルの特性を望ましいように又は望ましくないように変化させることができる、システムを流れる電流の存在が挙げられる。望ましくない変化の一例は、DC刺激時に電極周辺にカプセル層が形成されることであるという本発明者らの知見である。他の特別に考慮する点としては、如何に電流がゲル構成要素の作用や送達に望ましいように又は望ましくないように影響を及ぼすかということも挙げられる。更に他の望ましくない例としては、有害物質の電気的送達が挙げられる。これに対し、望ましい例としては、鎮痛物質の特異的な送達を挙げることができる。更に他の特別に考慮する点は、皮膚上での電気とゲル構成要素との相乗作用又は拮抗作用である。相乗作用の例としては、界面活性剤と電気刺激による皮膚抵抗の低下が挙げられる。更なる例や説明を実施形態に示す。これらの知見に基づき、医療用電極ゲルを本発明者らの用途に対して特に設計する必要があることは明らかである。特定の種類の成分や機能の各々を最適化する必要がある。
【0112】
ゲルに湿潤剤を用いてゲル水和を維持することができる。湿潤剤としてはプロピレングリコール等の物質が挙げられるが、エタノールの有無に関わらず処方することができる。プロピレングリコールは防腐剤としても機能することができる。プロピレングリコールは皮膚の発赤をもたらすこともあるため、その濃度を調節する必要がある。一実施形態においては、プロピレングリコールを1μM〜10mMの濃度で配合する。好ましい一実施形態においては、プロピレングリコールを1μM〜1mMの濃度で配合する。更に好ましい一実施形態においては、プロピレングリコールを1μM〜50μMの濃度で配合する。
【0113】
油を可溶化する界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤)をゲルに配合することができる。皮膚上の油層を可溶化する剤、又は皮膚に浸透する剤を用いることができる。これらは皮膚抵抗を低下させる上で特に有用である。その例としては、ヘキサメタリン酸ナトリウムやリン酸三ナトリウム、アトラス・ケミカル(Atlas Chemicals)製のトゥイーン(TWEEN)やスパン(SPAN)等の製品が挙げられる。一実施形態においては、ゲルには0.5〜5%のヘキサメタリン酸ナトリウムが含まれる。好ましい一実施形態においては、1%組成のヘキサメタリン酸ナトリウムゲルが好ましい。
【0114】
特殊なプラスチックホルダに対して適切なゲル粘度を調整する必要がある。当業者によく知られている種々の技法を用いてポリマーを処方することができるが、電流を流すことができるように設計する必要がある。特定の一実施形態においては、ポリマー又はポリマー剤にヒドロキシセルロースを用いることができる。
【0115】
用いるポリマーはベース液体に溶解することができる。適切な液体としては、水やアルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、極性溶媒が挙げられる。水、アルコール及びその混合液が好ましい。架橋剤等の更なる剤を添加して粘度等のゲル特性を調整することができる。光子、熱処理又は化学処理(例えば、脱プロトン化や酸化、還元が挙げられるが、これらに限定されない)によってポリマーを硬化又は架橋することができる。一実施形態においては、10,000〜1,000,000CPSの粘度を用いるが、150,000〜200,000CPSの粘度がより好ましい。他の実施形態においては、ゲルの粘度は、送達の際に脱水、温度変化又は皮膚接触によって変化する。好ましい一実施形態においては、約25℃から37℃への温度変化の際に粘度が上昇する。他の好ましい実施形態においては、空気、皮膚又はホルダ表面への接触の際に粘度が低下する。粘度の変化は、本発明に記載のように、空気又は皮膚への曝露によって媒介又は誘発することができる。例えば、位置決め表面に取り付けられ、アダプタのオリフィス上に延在するシール部材を有するアダプタを用いることによって、このシール部材を剥離するように、又はそこへ穴を開けるように構成する。一実施形態においては、ゲルにはアルコールが含まれる。他の実施形態においては、ゲルの凝固は温度の上昇に伴って生じるが、他の実施形態においては、温度の低下に伴って生じる。別の一実施形態においては、ゲルの溶媒はより低圧で蒸発し、固形物を後に残して粘度が変化する。また、更なる成分を用いて、ゲルの粘度又は他の関連する特性、例えば、「ダイラタント」(即ち、攪拌によって粘度が上昇する)を調整することができる。得られる高粘度によってシールの自由な動きが制限されよう。チキソトロピー流体の場合、攪拌によってゲル粘度が低下する。可塑性流体の添加又は存在によって粘度が変化する。
【0116】
ゲルの処方の鍵となるのは電解質である。本明細書において、電解質とは液体中でイオン化する如何なる物質をも指す。電解質は金属電極又は生体組織内にあるイオンを含むことができる。適切な物質の例としては、イオン化塩や酸又は塩基の塩、緩衝溶液が挙げられる。無機塩の例としては、塩化カリウムや硫酸ナトリウムが挙げられ、有機酸又は塩としては、クエン酸やクエン酸カリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。
【0117】
従来、電極設計は皮膚や組織に当接する電極の抵抗率を上昇させるように為されていたが、その理由は、皮膚/組織に対する電極/ゲルの伝導度が上昇すると、電極の縁に電流が集中し、それに伴って痛み/不快感の問題が生じると考えられていたためである。これを支持するモデリング研究にはDC刺激が含まれる。しかし、本発明者らは、意外にも、伝導度を上昇させたゲル(例えば、Cl-伝導度を上昇させたゲル)によって不快感が軽減する場合が多いことを見出した。
【0118】
好ましい一実施形態においては、添加塩としては、塩として添加される、及び/又は生理食塩水基剤に存在するNaClが挙げられる。二種以上の塩を用いることができる。NaClを補充する場合には、基剤100g当たり0.1〜50gのNaClを添加する等が可能である。特に好ましい一実施形態においては、水中の電解質濃度は0.01〜15重量%であり、0.25〜4%が好ましく、0.5〜2.5%がより好ましい。最も好ましい実施形態においては、ゲルにはNaClが約2重量%の濃度で含まれている。
【0119】
上述の中心概念に加え、ゲルには香料や着色剤、防腐剤等の種々の添加剤を含ませることができる。適切な物質は当該技術分野で通常用いられているものである。皮膚を保護又は回復させるように作用する特別な添加剤としては、酒石酸水素カリウムやココナツオイル、硫酸化ヒマシ油、アロエベラ、アロエ・バーバデンシス葉汁、グリセリン、合成ミツロウ、セテアリルアルコール、酢酸カルシウム、ビタミンE、A及びDが挙げられる。リドカインやベンゾカイン、その誘導体等の局所麻酔薬をゲルに添加することができる。一実施形態においては、ゲルにベンゾカイン6%を配合する。好ましい一実施形態においては、ベンゾカイン6%を含むラナケインを1〜50重量%(より好ましくは約2〜10%)でゲルに希釈する。他の好ましい実施形態においては、リドカイン2.5%及び/又はプリロカイン2.5%をゲルに配合する。他の実施形態においては、フォーゲラ(Fougera)で販売のリドカイン/プリロカイン2.5/2.5%クリームをゲルに1〜50重量%で配合する。他の実施形態においては、ドーク・デマトロジクス(Doak Dematologics )で販売のアマントル(Amantle)をゲルに1〜50重量%で配合する。
【0120】
本発明者らは、重要な特性について確認し、また、そのような特性を有する特定のゲルを用いて神経頭蓋刺激時の痛みや不快感を最小限に抑えることができることを確認した。従って、最も好ましい実施形態においては、本発明の電極ゲルは、ポリマー、湿潤剤、逆浸透水、界面活性剤、着色料及び塩化ナトリウム(0.5%生理食塩水基剤にNaClを補充)を含む(CCNY−4)。別の好ましい一実施形態においては、ゲルは更に麻酔剤としての約リドカイン又はベンゾカイン2.5%を含む(CCNY−5)。
【0121】
本発明は、その第4の様相において、頭蓋神経刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減するための方法であって、カソード又はアノードにおける電解質の消失又は生成をサポートする(1)ゲルと(2)固体導体との適切な組み合わせを選択することを含む方法を提供する。
【0122】
従って、本発明は、その第5の様相において、頭蓋神経刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減又は防止することができる(1)ゲルと(2)電極の固体導体との特定の組み合わせを提供する。
【0123】
上述のゲルについての考察から明らかなように、電極アセンブリの設計には、ゲルのpHや温度を単に制限することを超えたステップが要求されるであろう。本発明者らは、電極と神経頭蓋刺激に用いるゲルを特異的にマッチさせることが特に有効な戦略であることを見出した。複数の実施形態においては、用いるゲル/電極の組み合わせが固体導体の活性電解質の生成又は消失をサポートすることが電気化学的知識に基づき予測されている。
【0124】
電解質ゲルと用いる電極とのマッチングに関して、電極における電極電解質の生成又は消失をサポートする如何なる金属/ゲル構成も電圧を最小限に抑えるであろうと通常考えられている。AgClから成る好ましい電極の適切な例として、AgClの生成/消失が電極電圧を最小限に抑えるであろうと通常考えられている。
【0125】
しかし、本発明者らはこれに関して新しい発見を得た。本発明者らは、この反応を「過剰に」サポートした幾つかの構成が実際には、該反応を同レベルにはサポートしなかった構成に比べて痛みの軽減に対しあまり作用しなかったことを見出した。例えば、Cl-を有しないゲル(レクトロンII)を用いた場合、Cl-を有する他のゲル(シグナ)と比べて、電位が低下した(従って、実行時間が増大した)が、レクトロンIIは、Cl-を必要とするこのような反応を名目上はあまりサポートしなかった。
【0126】
従って、伝導性に関する上述の知見と組み合わせて、本発明者らは、電気伝導度が最適レベルのゲルを設計した。好ましい一実施形態においては、ゲルの塩含有量は理想的である。更に好ましい一実施形態においては、後述のように、Cl-レベルが理想的なゲルを設計した。好ましい実施形態においては、ゲルの電気伝導度は0.5S/m〜10S/mである。更に好ましい一実施形態においては、電気伝導度は1S/m〜6S/mである。最も好ましい実施形態においては、電気伝導度は4S/m〜5S/mである。他の実施形態においては、ゲルの熱伝導度は0.01W/m.C〜0.05W/m.Cである。最も好ましい実施形態においては、熱伝導度は0.025W/m.C〜0.035W/m.Cである。
【0127】
使用対象の電気化学システム(即ち、電極及びゲル)を更に検討することによって、所定の電極システムにおける特定のゲルパラメータが得られる。一実施形態においては、金属電解質MXは「陰」電極における1個の電子の付加によってM+X-(aq)に変化し、Mは「陽電極」におけるX-(aq)イオンの受容と電子の放出によってMXに変化する。他の実施形態においては、MXは「陽」電極における1個の電子の除去によってM++X(aq)に変化し、Mは「陰電極」におけるM+(aq)イオンの受容と電子の受容によってMXに変化する。これらの実施形態においては、Xは塩素やヨウ素等のハライドであることができ、Mは、MXが電気伝導性物質であり、MからMXへの変化やMXからMへの変化が電気化学的に可逆反応又は不可逆反応となるような如何なる金属であってもよい。好ましい一実施形態においては、金属陽電極及び陰電極の両方ともAgClであり、イオンはClである。特に好ましい一実施形態においては、Cl含有ゲルと接触するAgClの表面積は、40クーロンの電荷移動当たり0.5cm2よりも大きい。他の特に好ましい実施形態においては、陽電極と陰電極の金属は同一ではない。このような一実施形態においては、一方の電極はAgであり、他方はAgClである。電極の気孔率は0%(完全に密)〜50%(平均孔径:1μm〜100μm)である必要がある。
【0128】
他の実施形態においては、耐食性金属電極(例えば、ステンレス鋼合金や金、アルミニウム、ニッケル、銅が挙げられるが、これらに限定されない)プレート又はメッシュ、或いは導電性カーボンパッド、ウィーブ又はメッシュが電流コレクタとして作用し、中性塩MXは水に溶解した際にM+とX-を生成する。電極に電位を印加した際に、「陰」電極ではH2ガスが放出し、「陽」電極では種X(この場合、種Xは塩素又はヨウ素とすることができる)が堆積/放出する。一実施形態においては、金属電極は白金である。特に好ましい一実施形態においては、ゲルと接触するPtの表面積は40クーロンの電荷移動当たり0.5cm2よりも大きい。電極の気孔率は0%(完全に密)〜50%(平均孔径:1μm〜100μm)である必要がある。
【0129】
幾つかの用途においては、二種以上のゲル又は電解質層を用いる。一実施形態においては、電荷の移動は、Xn-がゲル、ペースト又は水和フィルム電解質を通過し、皮膚や他の体内組織を経由した後、皮膚から再び現れて第2のゲル、ペースト又は水和フィルム電解質に至るように行われる。対イオンのMn+は存在する必要があり、電荷を運ぶこともできる。好ましい一実施形態においては、M及びXは生体液又は生体組織に通常存在するイオンから選択される。
【0130】
一以上のゲルに関する上述の説明における特に好ましい一実施形態においては、XはClであり、MはAgである。好ましい一実施形態においては、ゲルのXの濃度は、生体組織(例えば、皮膚)や生体液に存在するXの濃度に近似するように選択する。特に好ましい一実施形態においては、Ag+Cl-の濃度は10mM〜200mMである。他の好ましい実施形態においては、ゲルのXの濃度は、生体組織に通常存在するXの濃度を超えるように選択する。更に好ましい一実施形態においては、ゲルの[Ag]及び[Cl]の濃度は200mM〜2Mである。他の好ましい実施形態においては、生体液や生体組織内に通常見出される2種以上のイオンがゲル内に存在する。特に好ましい一実施形態においては、イオンの濃度は、生体液や生体組織内に通常存在するイオンの濃度に近似する。更に好ましい一実施形態においては、ゲルの5種のイオンの濃度は、生体液や生体組織内の5種のイオンの濃度に近似する。このようなイオンは、組織内のより優性又は活性なイオン、或いはより可動性のイオンに対応することができる。このようなイオンとしては、NaやK、Cl、Ca、Mgを挙げることができる。好ましい一実施形態においては、ゲルのX-のピーク又は平均電流密度は0.1mA/cm2よりも大きく、10mA/cm2未満である。
【0131】
他の実施形態においては、X-はゲル、ペースト又は水和フィルム電解質を通過して皮膚に運ばれるが、ここでX-は皮膚を通して電荷を種Yに運び、Xは堆積又は放出され、種Yは必要な電荷バランスによってY-になる。次に、種Y-は皮膚及び体内組織を経由して第2のゲル、ペースト又は水和フィルム電解質に運ばれるが、ここで種Yは放出又は堆積され、種Xは必要な電荷バランスによって種X-に変化する。次に、種X-は第2の電極へ運ばれ、上述の電気化学反応を受ける。従って、M+はゲル、ペースト又は水和フィルム電解質を通過して皮膚に運ばれることができるが、ここでM+は皮膚を通して電荷を種Nに運び、Mは堆積又は放出され、種Nは必要な電荷バランスによってN-になる。次に、種N-は皮膚及び体内組織を経由して第2のゲル、ペースト又は水和フィルム電解質に運ばれるが、ここで種Nは放出又は堆積され、種Mは必要な電荷バランスによって種M+に変化する。次に、種M+は第2の電極へ運ばれ、上述の電気化学反応を受ける。好ましい一実施形態においては、X-は、通常体内に相当な濃度では存在しないイオンから選択する。更に好ましい一実施形態においては、X-は塩化物イオン又はヨウ素イオンである。好ましい一実施形態においては、X及びYの電荷移動密度は、ゲル−皮膚接触面積0.5cm2当たり1クーロンよりも大きいが、ゲル−皮膚接触面積0.5cm2当たり100クーロン未満である。他の好ましい実施形態においては、上述の反応を防止するため、通常は生体組織や生体液に相当な量で存在しないイオンをゲルから除外する。更に好ましい一実施形態においては、生体組織に相当な量で存在しないゲル内イオンの活量は1mM未満である。生体組織に通常存在するイオンを含有させるか又は除外するかは、最終的には、上述の全ての設計因子(例えば、発生電圧や望ましくない電気化学的産物の抑制、ピリピリ感の軽減等)によって決まる。本発明で示すように、ゲル組成物の設計や選択を適切に行うことは、安全且つ有効な神経頭蓋刺激に必要である。
【0132】
他の実施形態においては、電解質媒体は、セルロース、セルロース誘導体又は修飾物から成るペースト、又は水中濃度が任意である塩MXから成る塩水溶液と混合した天然繊維であり、ここで、Mはナトリウム、カリウム、マグネシウム又は銀、Xは塩素又はヨウ素であり、塩水中の塩濃度は10〜200mMであり、ローションに対する塩水の比率は、最小粘度を100CPS、最大粘度を100,000CPSに維持しながら、伝導度を10-3S/cmのオーダー又はそれ以上に維持するような値である。
【0133】
他の実施形態においては、電解質媒体は、セルロース、セルロース誘導体又は修飾物から成るペースト、又は水中濃度が任意である塩MXから成る塩水溶液と混合した天然繊維であり、ここで、Mはナトリウム、カリウム、マグネシウム又は銀、Xは塩素又はヨウ素であり、塩水中の塩濃度は10〜200mMであり、ローションに対する塩水の比率は、最小粘度を100CPS、最大粘度を100,000CPSに維持しながら、伝導度を10-3S/cmのオーダー又はそれ以上に維持するような値である。
【0134】
他の実施形態においては、如何なる親水性フィルム又は膜(例えば、天然スポンジやポリエチレンオキシド、分子量が100,000を超える高分子量フッ素化ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない)も塩水溶液で水和されるが、この溶液は、水中濃度が任意の塩MXから成り、Mはナトリウム、カリウム、マグネシウム又は銀、Xは塩素又はヨウ素であり、塩水中の塩濃度は10〜200mMであり、ローションに対する塩水の比率は、最小粘度を100CPS、最大粘度を100,000CPSに維持しながら、伝導度を10-3S/cmのオーダー又はそれ以上に維持するような値である。該フィルムの硬化又は架橋は、光子、熱処理又は化学処理(例えば、脱プロトン化や酸化、還元が挙げられるが、これらに限定されない)によって行うことができる。
【0135】
不快感のレベルを低く維持しながら電気化学的性能を改善するため、更なる特定の電解質を用いることができる。一実施形態においては、上述の塩水溶液に加えて、海水の形態(100mM〜500mM溶液)の支持電解質を用いる(NaCl、MgCl2又はKClとすることができるが、これらに限定されない)。
【0136】
電解質及び電極用の支持物質は本発明の目的のために特異的に設計される。一実施形態においては、非反応性セラミックや非導電性セラミック(例えば、Al23やTiO2が挙げられるが、これらに限定されない)であり、この場合、ホルダは多孔質であってもなくてもよい。多孔質の場合、ポアサイズは30μm〜500μmである。他の実施形態においては、非反応性ポリマーや非導電性ポリマー(例えば、PVDFやPVC、アクリルポリマー、ABSが挙げられるが、これらに限定されない)であり、この場合、ホルダは多孔質であってもなくてもよい。多孔質の場合、ポアサイズは30μm〜500μmである。他の実施形態においては、非反応性ポリマーや非導電性ポリマーとセラミックとの複合体(ポリマーはPVDFやPVC、アクリルポリマー、ABSとすることができるが、これらに限定されず、セラミックはAl23やTiO2とすることができるが、これらに限定されない)であり、この場合、ホルダは多孔質であってもなくてもよい。多孔質の場合、ポアサイズは30μm〜500μmである。
【0137】
組み合わせに用いるのに適した固体導体としては、皮膚における電流の印加又はそのモニター用に当該技術分野で通常用いられるものが挙げられる。電極用のこのような適切な導体の例としては、ゴムやAg、Ag/AgClが挙げられる。好ましい一実施形態においては、電極用固体導体は焼結AgClである。
【0138】
上述のように、組み合わせはゲルと電解質から成るが、これらは組み合わせると、電気化学的知識に基づき、固体導体の活性電解質の生成又は消失をサポートすることが予測されている。好ましい一実施形態においては、電極/ゲルの組み合わせは、アノード及びカソードにおいて、それぞれAgClの生成及び消失をサポートすることが予測されている。特に好ましい一実施形態においては、組み合わせはAg又はAg/AgCl固体導体とCCNY−4ゲルとから成る。
【0139】
本発明は、その第6の様相において、神経頭蓋刺激時のピリピリ感、感覚、不快感、傷害、熱傷、知覚、炎症、痛み又は発赤を軽減するための方法であって、
適切な電極−皮膚接触面積を選択する工程、
適切な金属電極材料を選択する工程、
電極形状を選択する工程、
剛性又は半剛性ホルダを選択する工程、
適切なゲルを選択する工程、
ゲル又は皮膚に適用させる化学品を選択する工程、
ゲル/皮膚の温度を選択する工程、
ゲルの形状と量、ゲルに対する電極の位置、及びゲルに曝露する皮膚の部分を決定するホルダにおいて電極とゲルを組み合わせる工程、
皮膚の下準備をする工程、
適切な装着手段を用いて個人の頭部にアセンブリを装着する工程、
電極抵抗をチェックする工程、及び/又は
皮膚に適用するコンディショニング電気波形を選択する工程を含む方法を提供する。
【0140】
本発明に係る一実施形態においては、電極の形状は、ペレット、リング、くぼみ面、鋸状面、凹面、凸面、蹄鉄形状、正方形、ダイヤフラム及びディスクから成る群から選択される。好ましい一実施形態においては、電極形状はリングである。更に好ましい一実施形態においては、リング外径はリング厚みの3倍よりも大きい。更に他の好ましい実施形態においては、リング内径はリング外径の50%よりも大きい。
【0141】
他の好ましい実施形態においては、電極形状はペレットである。より好ましい一実施形態においては、ペレット長はペレット径の3倍よりも大きい。
【0142】
他の実施形態においては、ゲルは、改変された既存の電極ゲル、既存の基剤ゲル(シグナやスペクトラ、テンシヴ、レクトロンII、リダックス等)から成る群から選択される。好ましい一実施形態においては、ゲルは、更なる塩を含有するシグナの改変型又はCCNY−4である。特に好ましい一実施形態においては、ゲルはCCNY−4である。
【0143】
他の実施形態においては、温度は約10〜45℃から成る範囲から選択される。好ましい一実施形態においては、温度は10〜37℃の範囲から選択される。
【0144】
他の実施形態においては、電気波形は、DC、断続DC、対称A.C、非対称A.C、不平衡三相、ランプ及びノイズから成る群から選択される。好ましい一実施形態においては、電流は直流であり、経頭蓋直流刺激(tDCS)の方法によって印加する。
【0145】
他の実施形態においては、皮膚の下準備は、送達物質(例えば、ゲルやクリーム)で運ぶことのできる化学品等によって皮膚の処置を施すこと、皮膚を電気的に処置すること、すりむきや引っ掻き等によって皮膚を機械的に変化させること、及び皮膚温度を変更することから成る群から選択される。
【0146】
他の実施形態においては、抵抗は、100Ω〜5MΩ、より好ましくは200Ω〜1MΩ、より好ましくは300Ω〜1MΩ、より好ましくは200Ω〜600Ω、より好ましくは100Ω〜600Ω、より好ましくは400Ω〜600Ωから成る群から選択される。
【0147】
他の実施形態においては、ホルダの形状は、円形、円筒形、円錐形及び正方形から成る群から選択される。好ましい一実施形態においては、ホルダ形状は円筒形、又は円筒の双曲面変形形状である。
【0148】
本発明は、その第7の様相において、複数の電極を用いて頭皮を通して経頭蓋電流を印加するための装置であって、各電極は、
近位端と頭皮に接触する遠位端を有し、その一部がゲルの一部を含んでいる少なくとも半剛性のシェルと、近位端とゲルの一部に接触する遠位端を有する少なくとも1個の電気刺激電極と、頭皮に接触し、電解質を全く含まないか又は一種以上の電解質を含むゲル又はペーストと、頭皮上に位置決めされ、半剛性シェルに接続しているキャップ又はメッシュとを含む装置を提供する。
【0149】
本発明に係る一実施形態においては、該装置は、本発明にて提供される手段(バンド装置やプレート装置、十字状装置、可撓性キャップ又はメッシュ)によって頭部に装着する半剛性シェルを有する。他の実施形態においては、前記電極は円筒形状を有する。更に他の実施形態においては、電極はディスク及びリング形状から成る群から選択される形状を有する。一実施形態においては、前記ゲルは高抵抗率を有するが、他の実施形態においては、ゲルは低抵抗率を有する。一実施形態においては、前記シェルは円形の遠位端を有するが、他の実施形態においては、前記シェルは正方形の遠位端を有する。一実施形態においては、前記電極は金属であるが、他の実施形態においては、前記電極はセラミックである。一実施形態においては、前記電極は銀であるが、他の実施形態においては、前記電極は塩化銀である。一実施形態においては、前記半剛性シェルは金属構成要素を含むが、他の実施形態においては、前記半剛性シェルは遠位端の一部を妨げる絶縁物質を含む。更に他の実施形態においては、前記半剛性シェルは、最小1cm2の開口部を有する遠位端を有する。
【0150】
本発明に係る一実施形態においては、前記半剛性シェルは、個々の患者に合うように前記キャップ又はメッシュ上の最適位置に前記半剛性シェルを調整するための調整及び装着機構を有する。他の実施形態においては、前記半剛性シェルは、電流密度を低下させるために面積を増加させた遠位端を有する。他の実施形態においては、前記半剛性シェルは、電流密度を低下させるためのメッシュを有する遠位端を有する。
【0151】
本発明は、その第8の様相において、複数の電極を用いて頭皮を通して経頭蓋電流を印加するための装置を提供するものであって、該装置における各電極は、
近位端と頭皮に接触する遠位端とを有し、その一部が二次ゲルの一部を含んでいる少なくとも1個の半剛性シェルと、
電解質を全く含まないか又は一種以上の電解質を含む一次ゲルの一部と接触する遠位端と近位端を有する少なくとも1個の電気刺激電極と、
一次ゲルの一部及び頭皮に接触する二次ゲルとを含み、二次ゲルは電解質を全く含まないか、又は一種以上の電解質を含んでもよい装置を提供する。
【0152】
本発明に係る一実施形態においては、前記二次ゲルは高抵抗率を有するが、他の実施形態においては、前記二次ゲルは低抵抗率を有する。一実施形態においては、前記電気刺激電極は二次ゲルの一部と接触しているが、他の実施形態においては、前記電気刺激電極は二次ゲルの一部とは接触していない。一実施形態においては、前記半剛性シェルは、一次ゲルと二次ゲルのための別々のコンパートメントを含むが、他の実施形態においては、前記半剛性シェルは、一次ゲルと二次ゲルのための単一のコンパートメントを含む。
【0153】
本発明は、その第9の様相において、複数のユニットを用いて頭皮を通して経頭蓋電流を印加するための装置を提供するものであって、各ユニットは、
近位端と頭皮に接触する遠位端を有する少なくとも1個の半剛性シェルと、
一部が半剛性シェルに接触し、一部が電気刺激電極に接触する電極マウントと、
ゲルの一部に接触する遠位端と近位端を有する少なくとも1個の電気刺激電極と、
頭皮に接触し、電解質を全く含まないか、又は一種以上の電解質を含むゲル又はペーストとを含む装置を提供する。
【0154】
一実施形態においては、前記半剛性シェルに前記電極マウントの一部が入っているが、他の実施形態においては、前記電極マウントに半剛性シェル全体が入っている。一実施形態においては、前記電極マウントは前記ゲル又はペーストと接触しているが、他の実施形態においては、前記半剛性シェルが前記ゲル又はペーストと接触している。一実施形態においては、前記半電極マウントは円形又は管状である。一実施形態においては、半電極マウントはその内表面上で前記ゲル又はペーストと接触するが、他の実施形態においては、前記半電極マウントはその外表面上で前記ゲル又はペーストと接触する。一実施形態においては、前記マトリックスは、該マトリックスの約10%〜70%の量の水を含有する疎水性ポリマーである。他の実施形態においては、前記マトリックスは酸又は強酸塩を実質的に含まない。更に他の実施形態においては、前記マトリックスは塩化物塩を実質的に含まない。一実施形態においては、前記マトリックスの抵抗率は頭皮に比べて高いが、他の実施形態においては、前記マトリックスの抵抗率は頭皮に比べて低い。一実施形態においては、前記マトリックスは1cm2未満の面積で頭皮と接触する。
【0155】
本発明は、その第10の様相において、導電性バッキングと、該バッキング上にコートされた導電性ヒドロゲルマトリックスとを含む経頭蓋刺激電極を提供するものであって、該マトリックスは患者の皮膚に接触するようになっており、体の輪郭に沿うのに十分な可撓性を有する、経頭蓋刺激電極を提供する。
【0156】
本発明は、電気刺激時に生じるピリピリ感や不快感を軽減又は排除することによって非侵襲性神経頭蓋刺激を容易にする。刺激がピリピリ感や不快感をもたらし得るメカニズムは幾つか存在し、例えば、1)加熱、2)軸索の電気刺激、3)pH変化、4)温度変化、5)電気穿孔又は電気透過、6)電気分解、7)電気泳動、8)イオン泳動、9)電気浸透が挙げられるが、これらに限定されない。これらのメカニズムは連係している場合もあるし、独立している場合もある。ピリピリ感や不快感をもたらし得る他のメカニズムも存在する。
【0157】
本発明者らは、NINCS時の不快感やピリピリ感を軽減する幾つかの方法が存在することを見出した。その方法としては、1)ゲル又は固体導体の特性を最適化すること、2)電極と電極ホルダの構造及び物理的特性を最適化すること、3)化学的前処理、4)電気的前処理、及び5)フィードバックモニタリングが挙げられる。これらの方法の各々は単独で適用することも、他の方法と組み合わせて適用することもできる。
【0158】
通常のNINCSセットアップ:
導電性配線を経由して被験者の頭部に設けられた電極に送達する電気エネルギーを発生させるデバイスが提供される。このデバイスは、印加する電圧及び/又は電流を制御することができる。電流はアンペア(A)の単位であり、ミリアンペア(mA)のスケールでもよい。電流は電線から電極へ流れ、そこで先ず固体(半剛性)導体(例えば、銀ディスク)に入る。電流は電線から固体導体内へ拡散する。電流密度(単位:A/m2)は電流が如何にして固体導体に拡散するかを表すが、この拡散は均一ではない(即ち、電流密度はどの場所でも同じではない)。固体導体のある部分における電流密度は、固体導体の他の部分における電流密度とは同一ではない。電流は導体の縁に沿って集中する傾向にあることが多い。固体導体に達した後、(固体導体に拡散した)電流は導電性ゲル内に流れる。固体導体とゲルとの間には界面が存在する(この界面は他では「電極」と称されるが、本明細書では「電極」とは頭部アセンブリ全体を意味する)。この界面における電流密度は特に重要である。一般には、電流密度は可能な限り低く、可能な限り均一である(即ち、「ホットスポット」がない)ことが望ましいが、常にそうであるとは限らないことが分かっている。その後、電流はゲル内を移動し、ゲル内で「拡散」し続けるが、この拡散はゲル内の電流密度値で測定する。また、ゲル内の電流密度もゲル全体で均一ではなく、ゲルのある部分における電流密度はゲルの他の部分における電流密度とは異なる。ゲルは皮膚と接触する。ゲルと皮膚との間には界面が存在する。この界面においても、電流密度が可能な限り低く、電流密度が非常に高い「ホットスポット」が無いことが重要である。その後、電流は皮膚に入って移動する。皮膚内でも特定の電流密度が存在するが、ゲルの場合と同様に必ずしも均一ではなく、皮膚内に電流密度ホットスポットがもたらされる。一般には、皮膚内の電流密度を可能な限り低く且つ均一にして、このような皮膚内の電流密度ホットスポットを回避することが望ましい。電極内での電流の推移については既に記載した。この推移の詳細は、用いる物質の形状や用いる物質の種類、また、皮膚の状態によっても変わる。重要なことは、如何に電極を形成するか、また、如何に皮膚の下準備をするかである。これらのパラメータを制御することによって、ピリピリ感や不快感を軽減又は防止するように電流密度を制御することができる。電流密度は、ピリピリ感や不快感の原因を説明する唯一のものではなく、また、制御する必要のある唯一のパラメータでもないが、重要となりそうな一パラメータである。
【0159】
ゲル、半剛性ホルダ又は固体導体の特性の変更:
本発明のゲルは、ある化学組成と物質特性を有する物質から成る。本発明の半剛性ホルダは、ある特定の化学組成と物質特性を有する物質から成る。本発明の固体導体は、ある特定の化学組成と物質特性を有する物質から成る。これらの因子は、NINCS時の皮膚ピリピリ感/不快感を軽減するように制御し、選択することができる。
【0160】
実験を行う前に上述の物質を決定し、用意しておくことができる。特定の場合においては、NINCSの直前又はNINCS時においても物質や物質特性を変更することが可能である。
【0161】
ピリピリ感や不快感を軽減するようにゲルの以下の物質特性を変更することができる。
ゲルの伝導度:具体的には30,000〜60,000μmhos/cm、又は40,000μmhos/cm超。ゲルのイオン性内容物:具体的にはNaCl、KCl及びCaCl2
ゲルの温度:具体的には0〜37℃の範囲。
ゲルの粘度:具体的には1,000〜1,000,0000CPS、又は180,000〜260,000CPSの範囲。
酢酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の化学品をゲルに添加する。本発明に記載のように、Clの濃度は神経頭蓋刺激において重要である。塩化ナトリウムを添加すると、ナトリウム濃度と共に塩化物濃度も上昇する。上述の化学品を添加した場合には、ナトリウム濃度は上昇するが塩化物濃度は上昇しない。
ゲルの抗酸化能力:具体的には、本発明に記載の抗酸化物質をゲルに添加する。
ゲルの鎮痛作用:具体的には、本発明に記載したような鎮痛剤をゲルに添加して得る。
【0162】
ピリピリ感や不快感を軽減するように固体導体の以下の物質特性を変更することができる。
固体導体抵抗(近位端〜遠位端)は1Ω〜1,000KΩ、又は10Ω〜1KΩの範囲。
固体導体は金属、ゴム、導電性ゴム、Ag/AgCl、Ag、金とすることができる。
【0163】
好ましい一実施形態においては、固体導体は焼結Ag/AgClである。他の好ましい実施形態においては、固体導体は導電性ゴムである。他の好ましい実施形態においては、固体導体とゲルの抵抗率の比を制御する。
【0164】
電極構造の変更:
電極は、金属と、ゲルと、固体導体及びゲル用のホルダとから成る。一般には、ホルダは電気絶縁体である。ホルダは頭皮又は頭部や頸部の他の部分と接触する。ホルダは通常、ウェル又は一連のウェルを構成し、そこにゲルが挿入され、ホルダによってゲルの形状が決まるようになっている。固体導体はゲルと接触し、通常はホルダによって所定の位置に保持される。また、ホルダは通常、電極キャップ又はバンドにも装着され、頭部で電極を位置決めする。幾つかのイメージによって、NINCS時のピリピリ感や不快感を軽減する構造の数例及び好ましい実施形態を示す。
【0165】
このような実施形態の幾つかにおいてはフィン設計を用いる。フィンはホルダの一部である。フィン設計には一以上の平面が含まれ、該平面は頭皮表面に対して垂直であり、2種の相互に関連する機能を果たす。即ち、1)該平面はゲルを複数のコンパートメントに分割し、2)電極の一部が該コンパートメントの各々に接触するように、該平面によってコンパートメント上で電極が位置決めされる。フィンは平行な平面であってもよく、電極中心に対して放射対称性であってもよく、他のパターンであってもよい。各フィンは矩形状であってもよく、互いに異なる形状を有してもよい。
【0166】
このような構造の特徴の一部としては、外径が1〜1000mm又は11〜12mmの範囲で、内径が1〜1000mm又は6〜7mmの範囲の一以上のリング状金属固体導体や、直径が1〜1000mm又は1.5〜2.5mmの範囲で、深さが1〜1000mm又は2〜4mmの範囲のペレット状固体導体、直径が1〜1000mm又は11〜12mmの範囲のディスク状固体導体が挙げられる。
【0167】
ホルダによってゲルがコンパートメントに分割されるが、コンパートメントの数は1〜100であり、単一のゲルに対して1個のコンパートメントが好ましく、ゲルの組み合わせに対して2〜7個のコンパートメント、より好ましくは2〜5個のコンパートメントである。
【0168】
ホルダによってゲルがコンパートメントに分割されるが、各コンパートメントには同一又は異なるゲルが対応する。ホルダによって近位の固体導体表面と頭皮表面との間隔が決まるが、この間隔は0.1〜100mm又は2〜5mmの範囲である。
【0169】
ホルダによってフィン設計を用いる固体導体の位置が決まるが、フィンの数は1〜1000、2〜7又は3〜5の範囲である。
【0170】
電極表面は、ニードル、マイクロニードル、マイクロアーキテクチャ、ナノフィーチャ又はナノチューブで修飾する。
【0171】
好ましい一実施形態においては、固体導体はリングであり、3個のフィンが放射対称性である電極ホルダ上に位置決めされている。他の好ましい実施形態においては、単一のホルダに2個の固体導体が収容されている。他の好ましい実施形態においては、切り込みや延長部分(例えば、曲線状の延長部分)を追加する等により固体導体の表面形状を変化させて固体導体の表面積を増加させる。
【0172】
化学的前処理:
NINCS時のピリピリ感や不快感を軽減するため、NINCの前に、化学品を用いて皮膚又は電極を前処理することができる。処理の何日間も、何時間も又は何秒間か前に化学品を適用することができる。化学品は皮膚又は電極に適用することができる。化学品は種々の手段、例えば、ブラッシングや絞り、注入、流し込み等によって適用することができる。化学品は皮膚又はゲルに浸透させることができる。化学品はNINCS時に適用することができる。また、化学品はNINCS後に適用することもできる。化学品は液状担体に溶解又は混合することができる。
【0173】
一実施形態においては、電極の下に0.2〜2mLのプレコンディショニングクリームを適用する。好ましい一実施形態においては、刺激の主工程の>5分前にプレコンディショニングクリームを適用する。他の好ましい実施形態においては、プレコンディショニングクリームの抵抗率をゲルの抵抗率よりも高くなるように選択する。この場合、該コンディショニングクリームによって電流の拡散が変更され、例えば、電流流入の均一性が増加する。他の好ましい実施形態においては、プレコンディショニングクリームの抵抗率をゲルの抵抗率よりも低くなるように選択する。この場合、電流フローに対する総抵抗は該クリームによって大幅に増加しないため、電極電位に対する寄与は最小限に抑えられる。該クリームは、後述の変化を伴ってゲルと皮膚の両方に界面を形成する。このような理由から、適切なプレコンディショニングクリームは、本発明に記載の用いるゲルにマッチさせることができ、本発明に記載の設計仕様や制約に基づくことができる。例えば、好ましい一実施形態においては、プレコンディショニングクリームにはゲル内の一次イオン担体が含まれる。他の好ましい実施形態においては、プレコンディショニングクリームからゲル内の一次イオン担体を排除する。ゲル内の一次イオン担体を組織や皮膚内の一次イオン担体とマッチさせた場合には、このような因子も考慮に入れる。
【0174】
他の実施形態においては、前処理クリームの特性は、本質的には本明細書で上述の電極ゲルの特性である。従って、該実施形態においては、前処理クリームは最適な電極ゲルと同一の組成であるが、頭皮には刺激前に塗布する。
【0175】
化学品によって皮膚の特性が変化することもあるし、電極の特性が変化することもあるし、異なる物質間や皮膚内への電流の移動の仕方が変化することもある。
【0176】
化学的前処理の目的には、皮膚の抵抗を変化させることや、皮膚の抵抗率を変化させること、皮膚の抵抗率を均一にすること、抵抗率ホットスポット又はコールドスポットを除去すること、毛穴をブロックすること、毛穴を開くこと、毛穴(汗腺や毛包を含む)の特性を変化させること、皮膚の血管の特性(拡張応答等)を変化させること、皮膚軸索の特性(発火閾値等)を変化させること、筋細胞の特性(発火閾値や機械的応答等)を変化させることが挙げられる。化学品は汗孔をブロックする又は開く物質とすることができる。化学品としては、次のものが挙げられる。
皮膚の酸バランスを回復させるのに役立つ酸外套等の緩衝剤やpHバランス用クリーム。塩基性産物を産生するものの下でこのクリームを用いてバランスを維持することができる。また、異なるクリームや局所溶液を、該クリームの特性に基づき、アノードやカソードの下で用いることも有用となり得る。
酸化亜鉛含有ヒドロコルチゾン1%クリーム等の痛み用軟膏(クリーム中の主成分の1種はピリピリ感を軽減する)。酸化亜鉛クリーム(バルメックス(Balmex)、デシチン(Desitin))、ワセリン及び酢酸アルミニウム(ブロー液)の組み合わせもピリピリ感を軽減することができる。
慢性発赤や炎症を軽減するのに役立つアロエベラ等の剤。
フォイル(Foille)等の熱傷軟膏
セレックス(Cellex)−CサンシェードSPF30+等の抗炎症剤。
ベンゾカインやリドカインプリロカイン、ラナケイン等の麻酔用又は鎮痛用クリームや軟膏。
【0177】
化学品はNaH2PO4等のpH緩衝剤とすることができる。
【0178】
化学品は皮膚インピーダンスを低下させる浸透促進剤(例えば、ステアリン酸やプロピレングリコール、リノール酸、エタノール、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、ステアリン酸)とすることができる。
【0179】
NINCS時又は電気的前処理時に化学品を電気によって活性化又は輸送することができる。化学品は1〜1,000,000μmhos/cmの範囲の高い伝導度(好ましくは40,000μmhos/cm超、最も好ましくは40,000〜60,000μmhos/cm)を有することができる。化学品は局所溶液等の麻酔薬とすることができる。化学品はトロノラン(Tronolane)等の痛みやピリピリ感を軽減するものとすることができる。化学品はリラックスエイド(Relaxaid)等の筋弛緩薬とすることができる。
【0180】
化学品はベンゲイ(BenGay)等の温度変化を誘導するものとすることができる。
【0181】
好ましい一実施形態においては、皮膚の表面に化学品を塗布した後、その表面上に電極を位置決めする。
【0182】
他の好ましい実施形態においては、皮膚と接触する表面上の電極に化学品を塗布した後、電極を皮膚上で位置決めする。
【0183】
電気的前処理:
NINCS時のピリピリ感や不快感を軽減するため、実際の刺激プロトコルの前に電流を印加し、被験者の感受性を効果的に高める。最も簡単な実施形態においては、後に刺激に用いる同一電極に電流を印加する。しかし、別個の電極を用いて電気的前処理を行うこともできる。
【0184】
処理の何日間も、何時間も又は何秒間か前に電気的前処理を行うことができる。また、電気的前処理はNINCS時又はNINCS後に行うことができる。
【0185】
電気的前処理工程は前処理用の適切な波形を選択することによって行う。前処理用電気波形はNINCSの場合と同一であってもなくてもよい。NINCSの場合と異なる前処理用波形を用いると次のように好都合となり得る。1)前処理用波形自身は如何なる皮膚ピリピリ感や不快感も引き起こさないが、後に行うNINCSがピリピリ感や不快感を誘導しないように皮膚や電極の状態を変化させる。2)前処理用波形は脳機能を変化させないが、皮膚特性を変化させる。
【0186】
前処理用電気波形は、振幅範囲が0.1〜1mAのDCを用いることができ、0.1〜60分間印可することができる。前処理用電気波形は、振幅範囲が0.1〜1mAで周波数範囲が0.01〜500kHzのACを用いることができ、0.1〜60分間印可することができる。前処理用電気波形は、周波数範囲が0.01〜500kHz、パルス幅が0.1us〜100秒、パルス間隔が0.1us〜100秒のパルスを用いることができる。
【0187】
前処理用電気波形は、ホワイトノイズやガウスノイズ、1/fノイズ、熱ノイズ、ショートノイズ等のノイズとすることができる。
【0188】
前処理用電気波形は、スロープが1mA/分〜1mA/msのランプとすることができる。前処理用電気波形は、標準偏差値が0〜10又は0〜10000のガウス波とすることができる。
【0189】
前処理用電気波形は、上述のものの組み合わせであってもよく、反復的な予備刺激を伴ってもよい。前処理用電気波形は、被験者のフィードバックを得ることを伴う場合もある。
【0190】
好ましい一実施形態においては、刺激前に低レベルのコンディショニングDC電流を印加する。コンディショニングDC電流は0.5mA未満であるが、0.1mA未満であってもよい。コンディショニングDC電流は1分間〜30分間印可する。コンディショニングDC電流はゆっくりと(例えば、0.1mA/分の速度で)ランプアップ及びランプダウンしさせることができる。このコンディショニングDC電流の印加後、NINCS療法用電流を印加する(この電流もDC電流とすることができるが、一般に振幅はより高く、より脳に有効である−この場合、コンディショニング電流の極性は電気療法用DC電流と同じであっても反対であってもよい)。コンディショニングDC電流とNINCS電気療法用電流との間隔は0〜10分間の範囲で変更することができる。コンディショニングDC電流とNINCS電気療法用電流との間隔において、電極の抵抗を試験することができる(この抵抗測定値によって、NINCS電気療法刺激の前に他の更なるコンディショニング電流が必要かどうか知ることができる(後述のフィードバックモニタリングも参照))。
【0191】
好ましい一実施形態においては、前処理用電気波形は単調に上昇する。他の好ましい実施形態においては、前処理用波形の強度は刺激の主工程前に上昇した後、低下する。更に好ましい一実施形態においては、前処理用電気波形の強度はゼロに戻る。更に好ましい一実施形態においては、波形は正弦波である。このような一実施形態においては、正弦波形の平均強度はゼロである。このような他の実施形態においては、正弦波形の平均強度はゼロではなく、平均強度は正又は負の値となり得、電気的処理の主工程の強度及び極性とマッチさせることができる。他の好ましい実施形態においては、波形は振幅が変調する正弦波である。このような一実施形態においては、正弦波周波数は1000Hzよりも大きい。このような他の実施形態においては、正弦波周波数は10000Hzよりも大きい。他の好ましい実施形態においては、波形は二以上の正弦波の組み合わせから成る。このような一実施形態においては、2種の波形間の周波数の差は100Hzよりも大きい。このような他の実施形態においては、2種の波形間の周波数の差は100Hz未満である。他の好ましい実施形態においては、前処理用電気波形にはパルスを用いる。
【0192】
フィードバックモニタリング:
皮膚のピリピリ感や不快感を防止又は軽減するため、電極及び/又は皮膚の状態を刺激前、刺激時又は刺激後にモニターすることができる。この状態はパラメータを感知してモニターする。このような測定値を用いてNINCSを終了させたり、NINCS特性(上述の特性全てを含む)を調整することができる。
【0193】
状態やパラメータをモニターするデバイス又はセンサは、NINCSデバイス自身に組み込んでも良く、別個のデバイスであってもよく、幾つかの重複する構成要素を有していてもよい。
【0194】
モニターしたパラメータは、例えば、デジタルディスプレイや表示灯、オーディオモニターを用いて被験者/オペレーターに表示することができる。パラメータは保存して、後に、例えば、保存デバイスで検索することができる。パラメータ又はパラメータの組み合わせの処理は、アルゴリズムや数学関数を用いて行うことができる。このアルゴリズムや数学関数では、加算や減算、平均化、経時的平均化、フィルタ、ローパスフィルタリング、ハイパスフィルタリング、線形又は非線形演算、ユーザー定義演算を用いることができる。このアルゴリズムの出力及びパラメータから、NINCSパラメータの変更に用いることのできる測定値が得られる。
【0195】
各測定値においては、NINCSを開始、停止、中断、変更すべきかどうか、又は被験者又はオペレーターに警告を与えるべきかどうかを判断するのに用いる「閾値」が存在し得る。
【0196】
好ましい一実施形態においては、電極電圧と電極電流をモニターし、電圧又は電流が閾値を超えた場合、電圧変化率又は電流変化率が閾値を超えた場合、電流×電圧が閾値を超えた場合、又は電流×電圧の変化率が閾値を超えた場合に刺激を停止する。刺激は即座に停止することもでき、徐々に抑えることもできる。被験者又はオペレーターに警告を与えることができる。刺激は自動的に停止させることもでき、被験者又はオペレーターが手動スイッチやトリガーを作動させた後に停止させることもできる。
【0197】
他の好ましい実施形態においては、電極電圧と電極電流をモニターし、電圧又は電流が閾値を超えた場合、電圧変化率又は電流変化率が閾値を超えた場合、電流×電圧が閾値を超えた場合、又は電流×電圧の変化率が閾値を超えた場合に刺激を抑制する。刺激電流及び/又は電圧は、閾値未満を維持するように自動的に抑制させる。被験者又はオペレーターに警告を与えることができる。被験者又はオペレーターは、手動スイッチやトリガーの作動によって別の自動抑制を無効にするよう選択することができる。
【0198】
他の好ましい実施形態においては、電極の抵抗をモニターする。試験電圧又は電流パルスを用いて抵抗をモニターすることができる。試験電圧又は電流パルスは、脳の変調や皮膚ピリピリ感が生じないように十分に小さくすることができる。試験電圧又は電流パルスはDCであってもACであってもよい。抵抗は、NINCSの開始又は継続が可能かどうか決定するためのフィードバック用閾値となる。電極の抵抗値から数学的関数を介して抵抗特性を求めることができる。ある電極の抵抗を再度、他の値(例えば、他の電極の抵抗)と比較することができる。
【0199】
他の好ましい実施形態においては、電極のインピーダンスをモニターする。一連の試験電圧又は電流パルスを用いてインピーダンスをモニターすることができる。一連の試験電圧又は電流パルスは、脳の変調や皮膚ピリピリ感が生じないように十分に小さくすることができる。一連の試験電圧又は電流パルスはDCであっても周波数の異なるACであってもよい。インピーダンスは、NINCSの開始又は継続が可能かどうか決定するためのフィードバック用閾値となる。電極のインピーダンスから数学的関数を介してインピーダンス特性を求めることができる。ある電極のインピーダンスを再度、他の値(例えば、他の電極の抵抗)と比較することができる。
【0200】
他の好ましい実施形態においては、温度プローブをゲル又は電極の一部に挿入して、温度をモニターする。温度プローブは熱電対、サーミスタ又は光学的とすることができる。
【0201】
他の好ましい実施形態においては、pHプローブをゲル又は電極の一部に挿入して、pHをモニターする。pHプローブは電気化学的、固体状態又は光学的とすることができる。電極電圧は変化に対する閾値が1〜1000V及び50〜150Vの範囲である。電極電圧の経時的変化は0.001V/時〜1000V/秒の範囲である。電極電流は変化に対する閾値が0.1〜1000mA及び1mA〜20mAの範囲である。
【実施例】
【0202】
方法
電極構成:材質と構造
本研究においては5種類の固体導体を試験した。1)「Agペレット」(2117−銀線;シュアピュア・ケメタルズ(Surepure Chemetals)、米国、ニュージャージー州、フローラムパーク);2)「Ag/AgCl焼結ペレット」(550015−ペレット電極;A−Mシステムズ社、米国、ワシントン州、カールスバーグ);3)「ゴムペレット」(116A−GSR−5、ゴム電極;オースチン医療機器、米国、テキサス州、ウェストチェスター;ペレットは全て2mm(D)×4mm(L)で、固体導体−ゲル接触面積は約30±2.5mm2);4)「Ag/AgCl焼結リング」(EL−TP−RNG焼結;ステンス・バイオフィードバック(Stens Biofeedback)社、カリフォルニア州、サンラファエル;外周径及び内周径はそれぞれ12mm及び6mmで、固体導体−ゲル接触面積は約140±5mm2);及び5)「Ag/AgCl焼結ディスク」(550025、ディスク電極、A−Mシステムズ;直径8mmで、電極−ゲル接触面積は約85±5mm2)。各電極−ゲル構成は単独でアノード又はカソードとして評価した。全ての電極に対してプラスチックホルダを用いて皮膚上で電極を位置決めし、用いたゲル量を標準化した。全てのペレット電極に対してはプラスチックホルダを用い、約90±5mm3のゲルを保持させたが、ゲル−皮膚接触面積は約25±2.5mm2であった。リング/ディスク電極に対しては特注ホルダを用い、約280±10mm3のゲルを収容させたが、ゲル−皮膚接触面積は約95±5mm2であった。
【0203】
次のゲルを試験した。1)「シグナゲル」(パーカー・ラボラトリーズ(Parker Laboratories)社、米国、ニュージャージー州、フェアフィールド)、2)「スペクトラ360」(パーカー・ラボラトリーズ社)、3)「テンシヴ」(パーカー・ラボラトリーズ社)、4)「リダックス」(パーカー・ラボラトリーズ社) 、5)「1090バイオゲル」(UFI社、米国、カリフォルニア州、モロベイ)、6)「レクトロンII」(ファーマソーティカル・イノベーションズ(Pharmaceutical Innovations)社、米国、ニュージャージー州、ニューアーク)、及び7)「CCNY−4」(特注品)。全てのゲルは使用時に室温に保った。携帯デジタル伝導度計(モデル2052、VWRインターナショナルLLC、米国、ニュージャージー州、ブリッジポート)で測定したゲルの電気伝導度値(単位:μmhos/cm)は次の通りであった。CCNY4約(45,000±10,000)、シグナ約(40,000±10,000)、リダックス約(35,000±10,000)、レクトロンII約(15,000±7,500)、1090バイオゲル約(15,000±7,500)、テンシヴ約(6,000±3,000)、及びスペクトラ約(1,500±500)。熱特性計(モデルKD2、デカゴン(Decagon)、米国、ワシントン州、プルマン)で測定したゲルの熱伝導度値(単位:W/m℃)は次の通りであった。CCNY4約(0.0326±0.0043)、シグナ約(0.0285±0.0034)、リダックス約(0.0326±0.0043)、レクトロンII約(0.0285±0.0008)、1090バイオゲル約(0.0280±0.0008)、テンシヴ約(0.0295±0.0024)、及びスペクトラ約(0.0274±0.0007)。
【0204】
DC刺激及び抵抗
定電流刺激装置(CX6650、シュナイダー・エレクトロニクス(Schneider Electronics)、ドイツ、グライヒェン)を用い、66.7ボルトの最大駆動電圧能力で全ての試験において直流を印加した。2mAの電流強度を最大で22分間用い、10秒の自動オン及びオフランプを用いて「刺激中断」の影響を回避した。刺激装置では、66.7Vの出力電位(電極と寒天/組織の両方における総電位)で自動的に刺激を停止するが、これを全ての試験においてカットオフポイントとして用いた。刺激前及び刺激後に、RMSデジタルマルチメータ(フルーク177、フルークコーポレーション、米国、ワシントン州、エヴェレット)を用いて寒天ゲル又は前腕皮膚の総セル抵抗(後述参照)を測定し、総セル抵抗が8MΩ未満の場合にのみ刺激を開始した。
【0205】
電極電位、pH及び温度の研究
電極電位、pH及び温度の変化を測定する研究において、150mMの(生理的)NaClから成る寒天の平坦なブロック上に電極をゲルを用いて実装した。これらの研究において、論理的根拠は、2個のリターン電極からの寄与なしに、1個の「活性」アノード電極又はカソード電極のみにおける変化を測定することであった。2個のリターン電極(一般には焼結Ag/AgClのディスク電極又はリング電極)の各々を約400±10mm3を超えるシグナゲルに浸漬した。総セル抵抗は、活性電極と並列接続した2個のリターン電極との間の抵抗を反映した。本明細書において、「電極電位」とは一般に、電極アセンブリ全体、ゲル及び皮膚における総電位を意味する。
【0206】
全ての実験においては、1個の活性アノード電極又はカソード電極と2個のリターン電極との間に2mAのDC電流を最大で22分間印可した。電極電位を定量化する実験においては、活性電極とリターン電極との間に電流を流し、電圧を同時に測定した。参照電極としては、約400±10mm3を超えるシグナゲルに浸漬した8mmの焼結Ag/AgClディスク電極を用いた。従って、測定した総電圧は、活性電極(電極、活性電極−ゲル界面、活性電極ゲルを含む)、寒天ゲル(活性電極から参照電極まで)及び参照電極(参照電極には電流は流れない)における電圧降下の合計であり、刺激の結果として実質的に変化する電圧のみが活性電極における電圧であることが予測される。従って、これらの実験において測定した電圧は、活性電極における電極−ゲル界面の「過電位」を大きく反映する。
【0207】
較正マイクロpH電極(オリオン9810BN、サーモ・サイエンティフィック(Thermo Scientific)、米国、マサチューセッツ州、ウォルサム)及びデジタルpH計(SM100、ミルウォーキー・インストゥルメンツ(Milwaukee Instruments)社、米国、ノースカロライナ州、ロッキーマウント)を用い、種々の曝露持続時間における寒天表面での活性電極ゲルのpHを測定した。pHを測定するため、刺激を停止し、固体導体をゲルから除去し、マイクロpH電極をゲルに5秒以内挿入した。pHの記録は、1分間、5分間、10分間、15分間及び20分間の曝露持続時間後に行った。pHの研究は4種の固体導体(Agペレット、Ag/AgCl焼結ペレット、ゴムペレット、Ag/AgCl焼結リング)に対して行うと共に、3種の電解質ゲル(シグナゲル、レクトロンIIゲル、CCNY4ゲル)に対しても行った。温度実験においては、刺激時にゲルの底面上でT型熱電対温度計(BAT−10、フィジテンプ・インストゥルメンツ(Physitemp Instruments)、米国、ニュージャージー州、クリフトン)を用いた。
【0208】
上述のように、総電位が66.7V(カットオフ電圧)に達した場合には、刺激装置によって刺激が自動的に停止した。刺激が22分間実施された場合には、「刺激時間」には22分間と記録され、22分間における最大pH及び温度変化が記された。22分よりも前に電位が66.7Vに達した場合には、「刺激時間」には電位が66.7Vに達した時間が記録され、この「刺激時間」における最大pH及び温度が記された。
【0209】
主観的感覚:8名の健常な被験者(男性6名及び女性2名、19〜35歳)が各実験に参加した。研究に入る前に、全ての被験者は書面によるインフォームド・コンセントを提出した。本研究はニューヨーク市立大学シティカレッジのIRB委員会で承認された。感覚試験は4種の固体導体(Agペレット、Ag/AgCl焼結ペレット、ゴムペレット、Ag/AgCl焼結リング)と3種のゲル(シグナ、レクトロンII及びCCNY4)に制限された。実験は、被験者の任意の好みに応じて遠位前腕又は近位前腕に対して行った。感覚の研究において、論理的根拠は「活性」電極(カソード又はアノード)の作用を確認することであった。2個のAg/AgClリング電極を「リターン」電極として用いた。リターン電極は活性電極の反対側に位置決めした。各リターン電極を約280±10mm3のシグナゲルに浸漬した。刺激前にピリピリ感や切傷が目に見えた皮膚領域は避けた。刺激前にはそれ以外に皮膚の下準備をする工程を行わなかった。
【0210】
刺激は最大22分間行い、被験者は刺激前の最初の2分間、刺激時、及び刺激後の最後の2分間に痛み(1〜10のアナログ尺度)を毎分記録した。更に、被験者は感覚(「焼けるような感覚」や「穿痛感」等)を記載するよう促された。刺激前に、各被験者はオペレーターに刺激を停止させる個人的終了値(5又はそれ未満)を示した。更に、各被験者は、電流の痛みスコアや知覚の性質に関わらず、実験の如何なる時点でも刺激を停止するよう要請することができた。刺激が22分間の曝露よりも前に停止した場合には、終了時の痛みスコアを記した。1時間を超える遅延が実験間で許可され、刺激部位(例えば、腕)を交換して連続実験を行った。参加者には試験した固体導体及びゲルの種類や組み合わせを知らせなかった。刺激後、如何なる皮膚損傷や発赤も記された。
【0211】
電極電位結果
導電性寒天における電極電位を2mAのDC刺激時に記録した。臨床的刺激時には、幾つかの理由から電極電位を最小限に抑えることが望ましいが、その理由としては、1)定電流刺激装置に対する電圧制限や、2)電気化学反応(電極過電位によって制限される)や加熱等による皮膚傷害の危険性の増大が挙げられる。カソード刺激においては、ゴムペレットの場合に可変電圧が増加したが、他の全ての固体導体の場合に電極電位が1V未満のままであった。アノード刺激においては、全ての固体導体の場合に可変電極電位値が増加した。
【0212】
アノード刺激実験の電極電位結果をまとめ、試験(電極/ゲルの組み合わせ当たり5回の試験)における平均電位とばらつきの両方を記載する。また、これらの電位は、DCアノード刺激時の電極部位における抵抗の変化を反映するものとしても解釈することができる。刺激装置の電位が66.7V(CX6650の駆動電圧能力)に達した場合には、刺激は自動的に停止し、この時点をその試験の最大曝露持続時間(「刺激時間」)として記録し、それ以外の場合には、曝露持続時間を22分間と記録した。
【0213】
図29及び30は、ペレット型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。
【0214】
図29は、AGペレット型電極アセンブリの電流誘導分極をアノードにおける見掛け電圧として経時的に示す。記載のゲルを用いて2mAのDC電流を流し、電圧の経時変化を測定した。後方の点線曲線は5回の繰り返しを示し、実線は平均を示す。図中の電極アセンブリは一般的な設計を示すだけのものである。
【0215】
図30は、Ag−AgClペレット型電極アセンブリの電流誘導分極をアノード電極アセンブリにおける見掛け電圧として経時的に示す。記載のゲルを用いて2mAのDC電流を流し、電圧の経時変化を測定した。後方の点線曲線は5回の繰り返しを示し、実線は平均を示す。図中の電極アセンブリは一般的な設計を示すだけのものである。
【0216】
図31は、ゴム型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。ゴムペレット型電極アセンブリの電流誘導分極をアノード電極アセンブリにおける見掛け電圧として経時的に示す。記載のゲルを用いて2mAのDC電流を流し、電圧の経時変化を測定した。後方の点線曲線は5回の繰り返しを示し、実線は平均を示す。図中の電極アセンブリは一般的な設計を示すだけのものである。
【0217】
図32は、ディスク型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。Ag−AgClディスク型電極アセンブリの電流誘導分極をアノードにおける見掛け電圧として経時的に示す。記載のゲルを用いて2mAのDC電流を流し、電圧の経時変化を測定した。後方の点線曲線は5回の繰り返しを示し、実線は平均を示す。図中の電極アセンブリは一般的な設計を示すだけのものである。
【0218】
図33は、リング型電極を有する電極アセンブリを用いた試験の電極電位結果を示す。Ag−AgClリング型電極アセンブリの電流誘導分極をアノード電極アセンブリにおける見掛け電圧として経時的に示す。記載のゲルを用いて2mAのDC電流を流し、電圧の経時変化を測定した。後方の点線曲線は5回の繰り返しを示し、実線は平均を示す。図中の電極アセンブリは一般的な設計を示すだけのものである。
【0219】
図36は、図31〜33の試験における電極の種類による実行時間の概要を示す。設計した電極アセンブリについてのアノード刺激時の平均電位実行時間プロファイルを示す。22分間は最大試験時間を表す。各電極において、左から右へ7種のゲル、即ち、電極ゲル、レクトロン、リダックス、シグナ、スペクトラ、テンシヴ及びCCNY4の場合の実行時間を示す。
【0220】
図37は、設計した神経頭蓋電極アセンブリに関する痛みと電気化学的性能の概要を示す。全ての場合において2mAの電流を用いた。被験者における平均痛みスコア(刺激期間の高い値と平均値)の概要を示すと共に、22分よりも前に刺激を停止することを選んだ被験者の割合、刺激後に電極下で発赤が生じた被験者の割合、ゲルの温度及びpHのピーク変化を示す。
【0221】
Ag/AgCl焼結ペレットを用いた場合、いずれのゲルと組み合わせてもアノード刺激を22分間完全に行うことができなかった。Agペレットを用いると、レクトロンIIゲルの場合にのみ22分間のアノード刺激を安定して行うことができたが、刺激後に電極の表面に沿って除去可能な黒いペースト様の残渣が見られた。ゴムペレットを用いた場合、種々の試験及びゲルにおいて曝露時間に多少のばらつきが見られ、更に、刺激後にゴム上に比較的広い堆積層が見られた。この層は容易に拭い去ることができ、ゴム固体導体の表面は明らかに無傷で影響を受けないままであった。Ag/AgCl焼結リングを用いた場合もAg/AgClディスク電極を用いた場合も、いずれのゲルと組み合わせても22分間の刺激を安定して行うことができ、Ag/AgClディスクの場合、平均電極電位は最も低かった。
【0222】
ゲルのpH及び温度
pH及び温度の測定においては、3種のゲル、即ち、塩化物を含む2種(シグナ及びCCNY−4)と名目上塩化物を含まない1種(レクトロンII)について検討し、各ゲルを独立して4種の固体導体(Agペレット、Ag/AgCl焼結ペレット、ゴムペレット、Ag/AgCl焼結リング)と組み合わせて試験した。全ての測定は寒天ゲル(150mMのNaCl)に対して行った。アノード刺激とカソード刺激の両方を独立して試験した。総セル電位(電極電位を含む)が刺激装置のカットオフ(66.7V)を超えた場合には、測定をカットオフ前の許容最大曝露時間に制限した。
【0223】
電極電位値を最小限に抑えるカソード刺激の場合、如何なる試験条件下でもゲル内で大幅な温度上昇は誘導されなかった。アノード刺激においては、電極電位の変化が生じなかった場合(例えば、Ag/AgCl焼結リングをいずれかのゲルと組み合わせた場合)には、ゲル内で温度変化は見られなかった。試験した3種のゲルの全てにおいて、Agペレット固体導体とAg/AgCl焼結ペレット固体導体のいずれの場合にもアノード刺激下で温度上昇が見られたが、電極電位の変化も最大であった。ゴムペレットを用いた刺激時に、試験間で誘導温度変化に大きなばらつきがあったが、電圧上昇が見られたため、温度は電圧及び時間に対して単調に(但し、直線的ではなく)上昇した。従って、電極下でのゲルの温度変化は電極電位の変化を制限することによって回避することができる。電極構成を固定した場合(ペレット)、電位変化は温度変化と定性的に関連した。
【0224】
レクトロンIIゲルを用いた場合、いずれの極性でも試験した電極全てにおいてpHの変化は見出されなかった。Ag/AgCl焼結ペレット及びAg/AgClリングの場合、3種のゲル全てにおいて、カソード刺激でもアノード刺激でもpHの変化は見られなかった。Agペレットを用いた場合、アノード刺激時にはpHの変化は見られなかったが、シグナやCCNY−4ゲルを用いるとカソード刺激時にpHのアルカリ化が見られた。シグナやCCNY−4ゲルをゴムペレットと用いた場合にのみ、電圧変化がなくても、アノード刺激時にゲルのpHが酸性になり、カソード刺激時にゲルのpHが塩基性になった。このように、温度の上昇は電極電位の上昇と関連するが、pHの変化は電極電位とは直接には関連せず、物質特異的である。即ち、pHの変化は固体導体とゲルの適切な組み合わせを用いて回避することができる。
【0225】
主観的感覚
図34は、カソード刺激を用いた試験の主観的な痛みの結果を示す。各電極アセンブリについての22分間のカソード刺激時(t=0〜22)の被験者4名の主観的な感覚スコアを示す。
【0226】
図35は、アノード刺激を用いた試験の主観的な痛みの結果を示す。各電極アセンブリについての22分間のアノード刺激時(t=0〜22)の被験者4名の主観的な感覚スコアを示す。
【0227】
N元(ゲル、極性及び電極)ANOVAを痛みの評価に用いた。ANOVAによって、痛みの評価に対するゲルの影響が有意である(F(1,8)=10.37、p=.0001)と共に電極の影響も有意である(F(1,8)=3.38、p=.019)ことが分かった。極性の影響はなく(F(1,8)=0.05、p=.831)、以下の相互作用の影響もなかった(ゲル−極性(F(1,8)=0.72、p=.488)、ゲル−電極(F(1,8)=0.33、p=.922)、極性−電極(F(1,8)=0.13、p=.944)、及びゲル−電極−極性(F(1,8)=0.37、p=.897))。概して、シグナゲルとCCNY−4は、レクトロンIIに比べて耐性が高かった。アノード刺激とカソード刺激との間に有意差はなかった。
【0228】
被験者、刺激極性、電極ゲル及び構成において、主観的な感覚は刺激をランプオン又はランプオフした際に最も高くなった。相対的な個々の痛みのスコア評価で予測されたように、被験者間での絶対レベルに差があると共に、耐性条件にも差があった。過半数の被験者は感覚が「活性」試験電極(アノード又はカソード)のみに限定されたことを示したが、リターン電極下での感覚を示した被験者も少数いたため、これは除外基準ではなかった。pH又は温度の変化と被験者の感覚の変化との間には明らかな相関はなく、例えば、Ag/AgCl焼結リング電極の場合、温度やpHは変化しなかったが、一部の被験者において不快感が引き起こされた。
【0229】
刺激後に皮膚を調べて軽い発赤があることが分かった。概して、カソード刺激の場合に小さな隆起や黒い点(<1mm)を伴う皮膚ピリピリ感や電極下での明らかな皮膚荒れを見る可能性が高い。皮膚損傷が見られることと主観的な痛みの感覚や物理的なゲルの変化とは明らかには相関しない。皮膚に対する影響は全て可逆的であり、数時間以内に消える。皮膚ピリピリ感が持続したことを報告する被験者はいなかった。
【0230】
前腕刺激と寒天ゲル刺激との比較において、記録した総セル電位に有意差はなかった。従って、総セル電位に関して前腕と寒天ゲルで得た結果は同等であった。本発明者らは、電極電位の変化と刺激時の皮膚感覚(又は刺激後の発赤)との間に一定の関係がないことを確認した。Ag/AgClリング電極を用いた刺激前の組織の平均抵抗は100kΩ〜8MΩの範囲であり、平均値は675.95±1100kΩであった。刺激後、組織抵抗は3kΩ〜800kΩの範囲まで有意に低下し、平均値は68.62±272.3kΩであった。従って、刺激後の平均電位降下割合は92.56%±67%であった。
【0231】
表面DC刺激の電気化学
本発明者らは、次の電気化学スキーム、即ち、カソード/アノードにおけるAgClの消失/生成をサポートするように電極/ゲル条件が存在する場合、過電位が最小限に抑えられつつ、pHや温度が変化せずに電気刺激が進行可能なことを提案する。刺激時にAgClの消失/生成がもはやサポートされない場合には、電極過電位は上昇して更なる化学反応が生じ、その結果、最終的に加熱やpH変化が引き起こされる可能性がある。過電位は必ずしもこのような変化を引き起こさない(又はそれほどに十分ではない)が、更なる化学反応にとっては必要である。
【0232】
DC刺激の場合、通常のアプローチはAg/AgCl非分極性電極を用いることである。Ag/AgCl電極を用いた場合、電極界面でファラデー電荷移動反応が進行可能な限り、重要な電気化学プロセスは開始しない。カソードにおいては、塩化銀の溶解及び銀イオンの還元によって電極におけるファラデー電荷送達が促進される。
AgCl→Ag++Cl-+添加電子→Ag(銀)+Cl-・・・・・・(1)
【0233】
カソードにおいては、こうしてAgClが電極表面から消失する。全てのAg/AgCl電極(ペレット及びリングの両方)を用いた本発明者らの試験条件下では、AgClの供給力はこのカソード反応が2mAで22分間行われるのに明らかに十分であったため、過電位の発生は最小限に抑えられたが、これは、ゲル組成とは関係なく進行した(例えば、ゲルのCl-ベースライン濃度は、それが産物であるため無関係である)。同様の理由から、ゲル組成とは関係なく、いずれのAgCl電極を用いた場合でも、カソード刺激時にはpHや温度の変化は見られなかった。
アノード電極部位においてはAgClが生成する。
Ag+Cl-→AgCl+e-・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0234】
上述のカソードプロセスとは対照的に、このアノードプロセスでは、ゲル内でのCl-供給力と固体導体表面でのAgが必要である。AgペレットとCl-リッチなゲルを用いてアノード刺激を行った場合、反応(2)が支持されるため、過電位は最小になり、実行時間は最長になるであろうと予測されよう。しかし、Agペレットを用いたアノード刺激時に高い過電位が生じ、名目上Cl-を含まないゲル(レクトロンII)を用いた場合にのみ22分間の実行時間が達成されたことが結果から分かっている。この特別な場合における本発明者らの仮説は、反応(2)の速度に起因して、金属電極上でAgClが急速に生成し、電極上で黒い層として現れ得ることである。この層は電極を更なる反応から「化学的に隔離」できるため、これによって、電極過電位の上昇と実行時間の短縮を説明することができる。この仮説は、この層を除去した後に第2の刺激を行うと、実行時間が新しくAgペレット電極を用いた場合と同程度に維持されるという本発明者らの所見によって支持される。しかし、AgCl層を除去せずに第2の刺激を行うと、実行時間は1分未満になる。Ag/AgClペレットがアノード刺激をサポートできないことから、1)同様の化学的隔離層が形成すること、又は2)利用できるAgのリザーバが不十分であることが分かる。
【0235】
Ag/AgClペレットはこの反応を完全にはサポートしないため、過電位が生じる。マイクロ温度センサ及びpHセンサを用い、刺激時の電極下でのゲルの物理的/化学的変化を検出した。皮膚における刺激時に、例えば、汗腺内で温度やpH変化のホットスポットが生じ得るが、それが本研究で測定できなかったことを無視することはできない。ゲルにおいては、ペレット電極と金属導体/ゲルの特定の組み合わせとを用いた場合にのみpHが変化することが分かった。pHの変化は、固体導体/ゲル界面での電気化学反応とゲルがpH変化を和らげる能力とを反映する。pHの変化が見られた際に、アノード部位はより酸性になり、カソード部位はより塩基性になったが、この所見は、アノード部位での水の酸化(H+の生成)及びカソード部位での水の還元(OH-の生成、メリル(Merrill)ら、2005における概説)と一致する。
アノード:2H2O→O2↑+4H++4e-・・・・・・・・・・・・(3)
カソード:2H2O+2e-→H2↑+2OH-・・・・・・・・・・・(4)
【0236】
アノードにおける酸性化及びカソードにおけるアルカリ化は、最適化されていない構成を用いた本発明者らの所見、及び各種電極を用いた先のpH測定値と一致する。電極/ゲルの組み合わせがAgClの生成又は消失をサポートすることが予測された全ての場合において、pHの変化は見られなかった。これは、AgClの生成/消失を開始するのにより高い電極過電位を必要とする水の還元/酸化と一致する。各AgCl反応が支持されなかった場合にpHの変化が必ずしも見られなかったが、これは、特定の電極設計の重要性を強めるものである。ゴム電極は、カソードにおけるAgClの消失(1)もアノードにおけるAgClの生成(2)もサポートすることができない。ゴム−ゲル界面において生じる化学反応は十分には明確にされておらず、刺激の延長をサポートすることは可能であるが、試験間で誘導電位及び関連する温度やpHの変化にばらつきがあった。
【0237】
本発明について、特にその好ましい実施形態を参照して図示及び説明を行ってきたが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、開示された実施形態に対して種々の形式や詳細の変更を為し得ることは本明細書に記載のように当業者には理解されよう。従って、本発明は、特許請求の範囲及びその均等の範囲によってのみ限定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経頭蓋刺激用電極アセンブリであって、
電極と、
導電性ゲルと、
アダプタとを含み、アダプタは、
電極をアダプタに対して位置決めし、導電性ゲルを受け入れて保持するための内部コンパートメントを有しており、これによって導電性ゲルは電極−ゲル界面に沿って電極に接触し、アダプタは更に、
内部コンパートメントと連通し、ユーザの皮膚表面に対して電極アセンブリを位置決めするためのアダプタの位置決め表面に隣接するオリフィスを有しており、このオリフィスを通って導電性ゲルがユーザの皮膚表面と接触してゲル−皮膚界面を画定することができる電極アセンブリにおいて、
位置決め表面はオリフィスにおいて横方向に延在する平面を画定しており、アダプタは、使用時の電極−ゲル界面と平面との最小間隔が0.25cm〜1.3cmとなるように更に構成されている電極アセンブリ。
【請求項2】
オリフィス内の平面の面積は25mm2〜95mm2である、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項3】
電極−ゲル界面の接触面積は30〜140mm2である、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項4】
電極−ゲル界面の接触面積とオリフィス内の平面の面積の比は0.3〜5.6である、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項5】
オリフィス内の平面の領域は円形又は楕円形である、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項6】
電極の一以上の表面は、リング、厚いリング、ディスク、ペレット、細長いペレット、くぼみ面、鋸状面、凹面、蹄鉄状面、螺旋状面、正方形、長方形、プレート、メッシュ及びダイヤフラムから成る群から選択される少なくとも1種の形状を画定している、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項7】
電極の一以上の表面には電極の表面積を増加させる表面特徴が備わっている、請求項6に記載の電極アセンブリ。
【請求項8】
電極は、金属、合金化金属、ゴム、導電性ゴム、Ag/AgCl、Ag及びAuから成る群から選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項9】
電極は焼結AgClを含むリング電極である、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項10】
焼結AgCl電極は気孔率が50%未満であり、平均孔径は1μm〜100μmである、請求項9に記載の電極アセンブリ。
【請求項11】
アダプタは剛性物質を含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項12】
アダプタは非導電性プラスチック物質を含む、請求項11に記載の電極アセンブリ。
【請求項13】
位置決め表面に取り付けられ、アダプタのオリフィス上に延在する第1のシール部材を更に含み、第1のシール部材は剥離するか又は穴が開くように構成されており、導電性ゲルがユーザの皮膚表面と接触してゲル−皮膚界面を画定することができるようになっている、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項14】
オリフィスに対して遠位置にあるアダプタの内部コンパートメントの開口端は第2のシール部材を有し、第1のシール部材と第2のシール部材は、内部コンパートメント内に導電性ゲルを封じ込めるように構成されている、請求項13に記載の電極アセンブリ。
【請求項15】
導電性ゲルは量が0.5mL〜5mLである、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項16】
導電性ゲルは伝導度が30,000〜60,000μmho/cmである、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項17】
導電性ゲルは、NaCl、KCl及びCaCl2から成る群から選択される少なくとも1種の塩を含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項18】
ゲルの総Cl濃度は150mMよりも高い、請求項17に記載の電極アセンブリ。
【請求項19】
ゲルの総Cl濃度は200mMよりも高い、請求項18に記載の電極アセンブリ。
【請求項20】
導電性ゲルは粘度が180,000〜260,000cPsである、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項21】
導電性ゲルは添加剤を更に含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項22】
添加剤は抗酸化剤を含む、請求項21に記載の電極アセンブリ。
【請求項23】
添加剤は鎮痛剤を含む、請求項21に記載の電極アセンブリ。
【請求項24】
鎮痛剤は、リドカイン、ベンゾカイン及びプリロカインから成る群から選択される、請求項23に記載の電極アセンブリ。
【請求項25】
添加剤はpH緩衝剤を含む、請求項21に記載の電極アセンブリ。
【請求項26】
添加剤は、ステアリン酸、プロピレングリコール、リノール酸、エタノール、ラウリル硫酸ナトリウム及びオレイン酸から成る群から選択される浸透促進剤を含む、請求項21に記載の電極アセンブリ。
【請求項27】
内部コンパートメントは、電極を位置決めするための一以上の位置決めタブを含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項28】
アダプタは、内部コンパートメント内に電極を封じ込めるように構成されたキャップ部材を更に含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項29】
電極はキャップ部材に固定して設けられている、請求項28に記載の電極アセンブリ。
【請求項30】
アダプタは、内部コンパートメント内に複数の電極を位置決めするように更に構成されている、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項31】
アダプタは、少なくとも他の電極を保持するためのアクセサリピースを更に含み、アクセサリピースはアダプタに装着されていて、アダプタの内部コンパートメントと連通しており、これによって、導電性ゲルは他の電極と接触するように更に延在する、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項32】
内部コンパートメントは、オリフィスに近接して内部コンパートメント内に延在する一以上のフィンを含む、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項33】
一以上のフィンは、電極の少なくとも一表面を位置決めするように構成されている、請求項32に記載の電極アセンブリ。
【請求項34】
アダプタの外表面は一以上の位置決め特徴を有する、請求項1に記載の電極アセンブリ。
【請求項35】
神経頭蓋刺激用装置であって、
請求項1に記載の一以上の電極アセンブリと、
ユーザの頭蓋に固定するように構成された一以上のバンドと、
各々が一以上のバンドに固定されるように構成された一以上の開口要素に設けられた二以上の開口部とを含む装置において、
ユーザの頭蓋上への一以上の電極アセンブリの位置決めは、一以上のバンドの少なくとも1個の再配置を1回以上行って、又は一以上の電極アセンブリを二以上の開口部で交互に入れ替えるように移動させて調整することが可能である装置。
【請求項36】
一以上の電極アセンブリは、最低でも4個の電極アセンブリから成り、最大でも5個の電極アセンブリから成る、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
ユーザの頭蓋上のどの標的位置からも1cm以内に電極アセンブリを調整可能に位置決めするように構成されている、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
二以上の電極アセンブリの位置決め表面は、接着剤を位置決め表面及びユーザの皮膚表面の一方又は両方に設けることなく、ユーザの皮膚表面に対してしっかりと位置決めすることができる、請求項35に記載の装置。
【請求項39】
一以上の開口要素は、ヒンジで接合されて単一の円形状で連結可能な(articulatable)プレートを形成する二以上の半円形状プレートを含む、請求項35に記載の装置。
【請求項40】
一以上の開口要素は一以上の開口バンドを含む、請求項35に記載の装置。
【請求項41】
一以上の開口バンドは二以上の電極アセンブリを受け入れるための電極カップを有する二以上のバンドを含み、電極カップは二以上のバンドの末端に旋回可能に実装されている、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
神経頭蓋刺激用装置であって、
請求項1に記載の一以上の電極アセンブリと、
ユーザの頭蓋の底部を取り囲むように構成された底部バンドと、
底部バンドから上方に延在し、末端に二以上の電極アセンブリを受け入れるための電極カップを有する一以上の可撓性の直線状延長部分とを含み、二以上の可撓性の直線状延長部分は、ユーザの皮膚表面の頭蓋部分に対して二以上の電極アセンブリの各々を調整可能に位置決めするように可動である装置。
【請求項43】
二以上の可撓性の直線状延長部分は、接着剤を電極アセンブリ及びユーザの皮膚表面の頭蓋部分の一方又は両方に適用することなく、皮膚表面の頭蓋部分に対して二以上の電極アセンブリの各々を位置決めするように可動である、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
神経頭蓋刺激を行うための方法であって、
一以上の電極アセンブリを選択する工程を含み、電極アセンブリの各々は、
調節電流源から電気エネルギーを受け取るための電極と、
導電性ゲルと、
アダプタとを含み、アダプタは、
電極をアダプタに対して位置決めし、導電性ゲルを受け入れて保持するための内部コンパートメントを有しており、これによって導電性ゲルは電極−ゲル界面に沿って電極に接触し、アダプタは更に、
内部コンパートメントと連通し、アダプタの位置決め表面に隣接するオリフィスを有しており、更に、
各電極アセンブリの位置決め表面をユーザの皮膚表面の頭蓋部分に対して位置決めする工程を含み、これによって、導電性ゲル物質は、電極−ゲル界面とゲル−皮膚界面との最小間隔が0.25cm〜1.3cmであるように、オリフィスにおいてゲル−皮膚界面に沿って頭蓋の皮膚表面と接触する方法。
【請求項45】
位置決め工程においては、接着剤を電極アセンブリ及びユーザの皮膚表面の頭蓋部分の一方又は両方に適用することなく、皮膚表面の頭蓋部分に対して各電極アセンブリを位置決めする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
一以上の電極アセンブリを電源に接続する工程と、
一以上の電極アセンブリを通る所定の電流を所定時間発生させる工程とを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
各電極アセンブリのオリフィスの断面積は25mm2〜95mm2であり、電極アセンブリの液体/ゲル−皮膚界面における電流密度は0.1mA/cm2〜10mA/cm2である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
位置決め工程の前に頭蓋の皮膚表面を前処理する工程を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前処理工程は、導電性ゲル及び皮膚表面の一方又は両方に化学品を適用する工程を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
化学品は、抗酸化剤、鎮痛剤及び発赤剤の一以上を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前処理工程は、皮膚表面に前処理波形を適用する工程を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前処理波形は、
0.1〜60分間印可の0.1〜1mAのDC電流、又は
0.1〜60分間印可の周波数が0.01〜500kHzで0.1〜1mAのAC電流の一方を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前処理波形は、周波数が0.01〜500kHz、パルス幅が0.1us〜100秒、パルス間隔が0.1us〜100秒のAC電流を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前処理波形は、ホワイトノイズ、ガウスノイズ、1/fノイズ、熱ノイズ及びショートノイズから成る群から選択される少なくとも1種の電気ノイズを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
電気的前処理波形はスロープが1mA/分〜1mA/msのランプ電流を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
電気的前処理波形は標準偏差が0〜10000のガウス波形を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
一以上の電極アセンブリの内の少なくとも1種の電極抵抗をモニターする工程を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも一以上の電極アセンブリは少なくとも二以上の電極アセンブリを含み、少なくとも二以上の電極アセンブリの少なくとも2種に印加される電圧をモニターする工程を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項59】
導電性ゲルのpHをモニターする工程を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項60】
神経頭蓋刺激用電極アセンブリであって、
電極と、
導電性液体又はゲルと、
絶縁体とを含む電極アセンブリにおいて、
導電性液体又はゲルは、電極−液体/ゲル界面に沿って電極と接触し、電極アセンブリの外部表面に到達して、ユーザの皮膚表面と液体/ゲル−皮膚界面において接触すると共に、
絶縁体は、電極−液体/ゲル界面と皮膚表面に接触するための電極アセンブリの外部表面との最小間隔が0.25cm以上となるように電極を位置決めするように構成されている電極アセンブリ。
【請求項61】
神経頭蓋刺激を行うための方法であって、
二以上の電極アセンブリを選択する工程を含み、電極アセンブリの各々は、
電極と、
導電性液体又はゲルと、
絶縁体とを含み、導電性液体又はゲルは、電極−液体/ゲル界面に沿って電極と接触し、電極アセンブリの外部表面に到達して、ユーザの皮膚表面と液体/ゲル−皮膚界面において接触し、更に、
各電極アセンブリの位置決め表面をユーザの皮膚表面の頭蓋部分に対して位置決めする工程を含み、これによって、導電性ゲル物質は、電極−液体/ゲル界面と液体/ゲル−皮膚界面との最小間隔が0.25cm〜1.3cmであるように、オリフィスにおいて液体/ゲル−皮膚界面に沿って頭蓋の皮膚表面と接触し、更に、
複数のアノード/カソード対において二以上の電極アセンブリを接続する工程と、
各アノード/カソード対で所定電流を所定時間発生させる工程とを含む方法において、
オリフィスの断面積は25mm2〜95mm2であり、液体/ゲル−皮膚界面における電流密度は0.1mA/cm2〜10mA/cm2である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14(a)】
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【図14(b)】
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【図15】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図17】
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【図18】
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【図19(a)】
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【図19(b)】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27(a)】
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【図27(b)】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2012−513851(P2012−513851A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543727(P2011−543727)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/069843
【国際公開番号】WO2010/078441
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508071180)リサーチ・ファウンデーション・オブ・ザ・シティー・ユニヴァーシティー・オブ・ニュー・ヨーク (6)
【Fターム(参考)】