説明

電気刺激装置

【課題】
m個の出力を有する電気刺激装置において、その中のn個の出力をおこなうようにして治療を開始した場合、間違えて、nよりも少ないl組の電極しか装着していないと、装着をしていない(n-l)組の電極からも出力があり、これに触れると危険である。
本発明は、このような危険性を回避し、実際に接続されている電極数を自動的に判断し、これに応じた通電方法を自動選択して出力するようにして、安全で効果的な電気刺激を可能にすることを目的とする。
【課題を解決する手段】
m個の出力状態を検査し、その中のn個の出力が可能なように電極が生体に接続されているとき、出力数はn極と判断し、それ以外の電極からは出力しないように禁止するようにした。また、判断されたn極に適した通電パターンを自動的に選択して出力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の出力を有する電気刺激装置に関するものであり、特に、安全性を向上させ、効果的な治療を可能にする電気刺激装置を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
電気刺激装置は、パルス波や正弦波の電気エネルギーを生体に供給し、筋肉のマッサージ、コリを取る、筋肉の廃用性萎縮の予防、血流増加、疼痛緩和等に用いられる。
【0003】
装置の構成は、刺激装置本体と、生体に貼付して刺激を与える1対の電極、装置本体と電極を接続するコード等からなる。
電気刺激には疾患に応じた適切な刺激条件がある。電流の強さ、波形、時間などである。これを装置のパネル面から設定し、治療をスタートすると、指定された刺激条件の刺激が出力され、コードから電極を経由して生体に供給され、治療をおこなう。
【0004】
最も簡単な装置は1対(2個)の電極を備えている。
しかし、患部も面積が広い場合、1つの電流だけでは十分な治療ができないため、電極数を増やし、広い領域を刺激できるようにしているものが多い(特許文献1及び2など)。
【0005】
一方、低周波(通常は1000Hz以下)の生体インピーダンスは高いため、大きなエネルギーを供給しようとすると、不快な刺激や痛みが生じ、ある程度以上の強さの刺激はできなくなる。
そこで、より高い周波数の電流を用いて刺激する方法が使用されている。例えば干渉低周波治療器と呼ばれるものが使用されている(図5参照)。
【0006】
以下に、図で説明をおこなう。
【特許文献1】特開2003-10344
【特許文献2】特開昭55-166164
【0007】
図3は特許文献1の実施例の一つとして示されている例であり、この例では4組の電極を例えば筋肉に沿って配列し、複数の電極から同時に通電し、最も刺激の強い部分が電極の配列方向に移動するようにし、効果的にマッサージをおこなうことができるようにしたものである。
【0008】
図4は、特許文献2に示された実施例で、リンパ管に沿って4対の電極を配列し、、特許文献1と同様、、強い刺激の部分を電極配列方向に移動させ、リンパ管マッサージをおこなおうというものである。
以上の2つの例では4対の電極を用いる例を述べたが、本発明は2対以上の複数組の電極を用いる場合を全て含む。
【0009】
図5は干渉低周波治療器の例である。刺激装置本体1で生成した電流は患者の状態に応じて増幅され、図5(B)のA出力及びB出力として出力され、電極AとA‘、BとB’から生体に供給される。
生体に供給される出力AとBは4000Hz程度の正弦波である。周波数が低周波よりも高いため、生体インピーダンスは低くなり、不快な電気刺激感は少ない。
出力AとBの周波数をはわずかに異なるものにすると、体内で干渉し、図5(B)のような干渉はが生じる。この干渉はによって生体を刺激する。
干渉低周波治療器は、皮膚に与える(不快な)刺激は少なく、筋肉等の組織は強く刺激できるという特長を有する。
【0010】
図5(C)は干渉低周波を1対の電極で実現する例である。図5(D)のような、体内で生じる干渉波と同じ刺激波形を刺激装置内部で発生させて、1対の電極から出力し、2対の干渉低周波治療器と同じ効果を得ることができる。ただし、この方式で通電すると、高い周波数を用いているので生体インピーダンスは低いが、生体に供給する電流の強さが低い周波数で変動しているため、この振幅変動に伴う刺激が強くなるという問題はある。
ここでは2組(4個)の電極を用いた例を述べたが、3組以上の電極を用いるものも実用化されている。本発明は、全て干渉低周波に適用できる。
【0011】
以上に述べた例以外にも、例えば10kHz程度の正弦波の振幅を変調させて生体を刺激するもの等、各種の電気刺激装置があるが、本発明は複数の出力を有する全ての電気刺激装置に適用できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図3や4のような複数出力型の電気刺激装置では、使用する電極の数と、刺激装置本体で設定する刺激条件とは一致させて使用する。例えば6個の出力を有する装置で2組の電極を用いる場合、装置の刺激条件も、使用する2組の電極から出力するように、設定しなければならない。
もし、2組の電極を生体に接続して、装置の刺激条件を6出力のままにして刺激を開始すると、2組の電極で生体は刺激できるが、使用していない電極が出力するタイミングでは、使用している電極には出力が無いので、治療効率と治療効果が低下する。しかも、使用していない電極にも出力があるので、これに不意に触れるとショックがあり、危険である。
これは複数出力の電気刺激装置全てに共通することである。
【0013】
図5(A)のような干渉低周波で、1対の電極のみを生体に接続して治療を開始すると、使用していない電極にも出力があるので、上で述べたことと同じ問題が生じる。しかもこの場合、生体に供給される電流は図5(B)の出力A又はBのような4000Hz程度の正弦波であるため、筋肉を収縮させることはできず、治療効果は低い。
逆に、電極を2組貼付して、刺激装置の刺激条件を図5(C)の通電法にして刺激を開始すると、図5(A)の1つの電流しか流れないため、狭い領域しか刺激できず、供給される電流の振幅変化のために、通常の干渉低周波よりも不快な刺激が多くなる。
【0014】
以上に述べたように、複数出力の電気刺激装置では、装置本体で設定する刺激条件と、使用する電極の数とは一致させて使用しないと、十分な治療効果が得られないだけでなく、電気のショックが生じる等の危険性が生じる。
しかし、従来の電気刺激装置には、これをチェックする機能は付いていなかった。
一部に、電極コードの本体接続部で、その構造から、ある刺激条件のときに専用に使用できる電極を識別するものは存在するが、汎用性は無く、特殊な場合にしか使用されなかいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで請求項1記載の発明では、複数の出力を同時に出力できる電気刺激装置において、実際に生体に接続している電極を電気的に検出して出力数を自動的に判断するようにした。
また、請求項2記載の発明では、複数の出力を同時に出力できる電気刺激装置において、実際に生体に接続している電極数に合わせて適切な刺激条件を自動的に選択して出力するようにした。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明で、実際に生体に接続している電極を検出して出力数を自動的に判断するようにしたので、使用電極だけに出力することができる。
このため、効率よく治療をおこなうことができ、しかも、使用していない電極には出力しないようにすることができるので、これに触れて電気的なショックを受けることは無くなり、安全性が高くなる。
【0017】
請求項2記載の発明で、複数の出力を同時に出力できる電気刺激装置において、実際に生体に接続している電極数に合わせて適切な刺激条件を自動的に選択して出力するようにした。
このため、治療目的に応じて貼付した使用電極に、目的に適した治療条件の刺激電流を与えることができるので、治療条件の設定ミスが無くなり、治療効果と治療効率を低下させる要因を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明のフローチャートである。
請求項1記載の発明では、使用前に装置からテスト信号を出力し、その応答を検出して、電極が実際に生体に接続されているかどうかを判断する。例えば1番目の電極について、その出力ポートを指定し、テスト信号を出し、その応答を検出し、その電極が生体に接続しているかどうかをチェックし、接続しているかどうかを判断する。例えば出力を出したとき所定の電流が流れれば、電極は生体に接続していると判断する。
【0019】
続いて2番目の電極についてテンスとし、生体に接続されているかどうかを判断する。
出力ポートを切り替えて全てのチェックをおこない、全体の電極の中の何個の電極を使用しているかを判断する。
もちろん、テストではどのような電気的なパラメータを用いてもよく、テストするポートの順番も問わない。
使用する電極数を判断した後は、使用しない電極には出力しないように出力を禁止すると、安全性はさらに高くなる。ただし、目的によっては、生体に接続しないで刺激に使用しない電極から、故意に所定の出力をおこなう場合もある。例えば何かの測定のトリガー信号等を。
【0020】
従来は、このような機能が無かったため、前述のような問題があり、治療効果と治療効果の低下を引き起こし、電気的なショックを与えるという危険性が発生することがあった。
しかし、本請求項記載の発明により、これらの不具合を解消することができる。
【0021】
請求項2記載の発明、出力の数に応じて、適切な刺激条件を自動選択するものである。
例えば図3や4のような複数出力の電気刺激装置では、使用する電極の数と、装置が発生する刺激条件とを合致させないと、課題の項で述べたように、治療効率が低下する、治療効果が低下する、使用していない電極への出力のため不意の接触によって電気的なショックが生じる、等の問題がある。
通常はこれを合致させて使用するようにしているので、正しく使う限りはこれらの問題は生じない。しかし、前述のように、使用ミス等により問題が発生する可能性がある。
本請求項記載の発明はこのような問題を解決するものである。
【0022】
ある刺激条件には適した使用電極数がある。例えば、図3のような6対の電極を使用する場合、電極がカバーする全刺激領域で、効果的に刺激できるような刺激を出力する必要がある。4出力用の刺激条件でも、8出力用の刺激条件でも不適である。
また、図5の干渉低周波でも、2対の電極を用いる場合(図5(A))と1対の電極を用いる場合(図5(C))とでは、刺激条件は異なる。6出力以上の場合も同様である。
【0023】
このように、刺激条件と使用電極数とは対を成す。
ただし、図3(A)の6出力型の刺激装置で、6対の電極を用いて刺激する場合、いくつかの刺激パターンは存在する。正しくは、刺激パターン群と使用電極数とが対をなす。
【0024】
そこで、実際には、例えば図3(A)の刺激装置で、4組の電極を使用する場合の刺激条件として、図3(C)のような刺激パターンをいくつか用意しておき、この中から、患者に適した刺激条件を選択することが一般的である。
請求項2記載の発明では、図3(C)のような刺激パターンをいくつか用意しておき、6出力であると判断した場合、刺激パターンの中の代表的なパターンを選択し、治療するようにすればよい。
この刺激パターングループの中から、疾患に応じた最適な刺激条件を施術者が選択しなおして、治療をおこなうようにしてもよい。
6出力であると判断した場合、これに対応する刺激を選択し、このパラメータを患者に適した値に変更して使用するようにしてもよい。4組の電極を使用する場合は固定の刺激条件を指定するようにしてもよい。
【0025】
図3の例では4出力であるが、本請求項記載の発明は、2出力以上の複数出力を有する電気刺激装置には全て適用できる。
図5のような干渉低周波治療器やその他全ての複数出力型電気刺激装置に適用できる。
【0026】
請求項2記載の発明により、実際に使用する電極数に対して、この電極数のために用意した刺激条件を出力するので、刺激条件と使用電極数の不一致による治療効果や治療効率、安全性等の問題は生じなくなる。
【0027】
請求項1記載の発明は実際に生体に接続されている電極数を検出して出力数を判断するものであり、請求項2記載の発明は実際に使用する電極数に応じた刺激条件を自動選択するものである。
この両者を組み合わせると、実際に使用する電極数を検出し、使用電極数による治療に適した刺激条件を自動選択することができるので、電極の貼り忘れや刺激条件の設定ミス等の誤りは無くなり、効果的で効率的な、安全な電機刺激をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のフローチャートの例である。
【図2】干渉低周波の電極装着例である。
【図3】特許文献1の実施例である。
【図4】特許文献2の実施例である。
【図5】2出力及び1出力型の干渉低周波治療器の電極配列と刺激電流の例である。
【符号の説明】
【0029】
1:電気刺激装置本体
2:電極用のコード
A、A‘、B,B’:電極
M:人体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出力を同時に出力できる電気刺激装置において、実際に生体に接続している電極を電気的に検出して出力数を自動的に判断するようにした電気刺激装置。
【請求項2】
複数の出力を同時に出力できる電気刺激装置において、実際に生体に接続している電極数に合わせて適切な刺激条件を自動的に選択して出力するようにした電気刺激装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−141695(P2006−141695A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335943(P2004−335943)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000114190)ミナト医科学株式会社 (31)
【Fターム(参考)】