説明

電気刺激装置

【課題】疼痛緩和効果の減弱や不快感を防止する。
【解決手段】体外パッチは、体の動きを計測するセンサと、センサの計測結果に係る情報を送信するパッチ側通信部とを備える。一方、本体ブロックは、生体内の神経または筋肉を刺激する刺激電極と、刺激電極に印加する刺激信号を生成する発振部と、パッチ側通信部から計測結果に係る情報を取得する本体側通信部と、計測結果に係る情報に基づいて発振部が生成する刺激信号の刺激強度を変更させる刺激プログラム選択部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を電気刺激する電気刺激装置に関し、特に、生体内に完全に植え込まれて使用される電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、痛み治療において、従来の薬物療法、神経ブロック療法あるいは外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を挙げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、この刺激電極が含まれる電極リードを体外の刺激装置と接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度が調べられる。この期間においては電気刺激装置の植え込みは行われていない。このトライアル期間において所定の効果が認められた場合にのみ、電気刺激装置の植え込みが実施される。
【0004】
電気刺激装置の植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置された電極リードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな刺激電極が留置され、この刺激電極が含まれる電極リードが皮下トンネルにより腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、電極リードが電気刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
脊髄は、内側から軟膜、くも膜、硬膜の3層の髄膜に覆われている。軟膜とくも膜の間には脳脊髄液が流れ、脊髄はこの脳脊髄液の中に浮いた状態にある。硬膜外腔には、疎な結合組織や脂肪が満たされている。一般的に、電極リードは、硬膜外腔内において能動的に組織に固定する機構を有しておらず、電極リード周囲の結合組織や脂肪によって支持される。したがって、体幹の屈曲や回旋などにより脊髄や刺激電極が移動して両者の位置関係に変化が生じると、目的とする脊髄神経への刺激が弱くなったり、目的としない脊髄神経が刺激されて、疼痛緩和の効果の減弱や不快感が起こる。このような効果の減弱や不快感は可逆的で、姿勢を元に戻せばなくなるものの、患者の行動が制限されるという問題があった。なお、効果の減弱や不快感が起こる姿勢は、患者毎に異なる。
【0006】
そのため、水銀を封入したスイッチを刺激装置内に備え、これによって患者の立った状態や横になった状態を検出して脊髄への刺激の刺激強度を制御する技術が考えられた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,342,409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、腰部や腹部、あるいは胸部に植え込まれた刺激装置内に備えたセンサにより患者の立った状態や横になった状態を検出する。そのため、疼痛緩和効果の減弱や不快感の原因となる、刺激電極の留置された付近の屈曲や回旋などの患者の動きを的確に検出することは難しく、患者に応じたきめ細かな刺激強度や電極構成の調節は困難であった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、疼痛緩和効果の減弱や不快感を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気刺激装置は、体外パッチは、体の動きを計測するセンサと、センサの計測結果に係る情報を送信するパッチ側通信部とを備える。一方、本体ブロックは、生体内の神経または筋肉を刺激する刺激電極と、刺激電極に印加する刺激信号を生成する発振部と、パッチ側通信部から計測結果に係る情報を取得する本体側通信部と、計測結果に係る情報に基づいて発振部が生成する刺激信号の刺激強度を変更させる刺激プログラム選択部とを備える。刺激電極は基本的には脊髄硬膜外腔に留置され、体外パッチは背部体表面に置かれることが好ましい。なお、センサは、例えば、歪センサや曲げセンサ等であり、体幹の屈曲や回旋を計測する。
【0011】
ここで、刺激電極は2以上の電極を含み、刺激プログラム選択部は、本体側通信部で取得した計測結果に係る情報に基づいて、刺激信号を印加する刺激電極(以下、「電極構成」という)を決定することが望ましい。
【0012】
本発明の好ましい形態としての電気刺激装置は、センサが刺激電極の位置する部位の体の動きを計測できるように、体外パッチが体表面に貼り付け可能となっている。
【0013】
例えば、体外パッチからの給電により充電可能な二次電池を本体ブロックが備えるような場合は、この二次電池に蓄えられた電力を利用して発振部が刺激信号を生成することができる。一方、体外パッチからの給電により蓄電可能なキャパシタを本体ブロックが備えるような場合でも、このキャパシタに蓄えられた電力を利用して発振部が刺激信号を生成することができる。
【0014】
本発明の上述した構成によれば、刺激する部位の近くの体表面に置かれたセンサの計測結果に係る情報によって、刺激強度や電極構成を制御することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、刺激電極が留置された付近の屈曲や回旋などの患者の動きを的確に計測することができるので、患者に応じたきめ細かな刺激強度や電極構成の調節を行うことができる。これにより、疼痛緩和効果の減弱や不快感を防止できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る本体ブロックの全体を示す分解外観図である。
【図3】(a)本発明の一実施形態に係る本体ブロックを示す拡大図である。(b)本発明の一実施形態に係る本体ブロックの軸方向の断面図である。
【図4】(a)〜(f)本発明の一実施形態に係る本体ブロックの径方向の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の設置手順を説明するための説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の設置手順を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の設置手順を説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の設置手順を説明するための説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の設置手順を説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る電気刺激装置の設置手順を説明するための説明図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る電気的刺激信号生成処理時の本体ブロックの刺激回路およびコイル部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態に係る電気的刺激信号生成処理時の体外パッチの動作の流れを示すフローチャートである。
【図14】本発明の他の実施形態に係る電気刺激装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る電気的刺激信号生成処理時の本体ブロックの刺激回路およびコイル部の動作の流れを示すフローチャートである。
【図16】本発明の他の実施形態に係る電気的刺激信号生成処理時の体外パッチの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための実施形態例について説明する。以下に述べる実施の形態例は、本発明の好適な具体例である。そのため、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明は、下記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。例えば、以下の説明で挙げる各パラメータの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法、形状および配置関係も概略的なものである。
【0018】
以下の手順で説明を行う。
<一実施形態例>
1.電気刺激装置の機械的構成
2.電気刺激装置の電気的構成
3.電気刺激装置の設置手順
4.電気刺激装置の動作
<他の実施形態例>
1.電気刺激装置の電気的構成
2.電気刺激装置の動作
<変形例>
【0019】
<本発明の一実施形態例>
本発明の一実施形態の例を、図1〜図13を参照して説明する。
[1.電気刺激装置の機械的構成]
まず、一実施形態に係る電気刺激装置の大まかな構成について図1および図2を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る電気刺激装置の全体を示す斜視図である。
図2は、図1に示す電気刺激装置の本体ブロックを上面から見た分解外観図である。
【0020】
電気刺激装置101は、電極ブロック102、回路ブロック103および支持体104を含む本体ブロック122と、センサ123の計測結果に応じて、生成する電気的な刺激信号の特性を変更させる体外パッチ121とを備える。本体ブロック122は、撓み変形可能な略円筒形状に形成されており、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。本体ブロック122は、脊髄の神経を刺激する際に、生体内(例えば、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔)に植え込まれる。そのため、本体ブロック122は、ホルダ部111(後述)を除く部分の直径が、約1mmから3mmであることが好ましい。
【0021】
本体ブロック122のうち、電極ブロック102と回路ブロック103はコネクタ部107で着脱可能となっており、回路ブロック103と支持体104はコネクタ部109で着脱可能となっている。さらに、基端部119からスタイレット120を挿入可能に形成されている。なお、電極ブロック102および回路ブロック103は刺激回路ブロックに相当する。
【0022】
より詳細に説明すると、図2に示すように、電極ブロック102と回路ブロック103は、電極ブロック102側のコネクタ部112と回路ブロック103側のコネクタ部107とが、例えばネジ等により固定されている。同様に、回路ブロック103と支持体104は、回路ブロック103側のコネクタ部109と支持体104側のコネクタ部113とが、同様にネジ等により固定されている。
【0023】
電極ブロック102、回路ブロック103および支持体104には、スタイレット120を挿入するための穴が形成されている。これらの穴は、電極ブロック102等の4つの部材が接続された状態で軸方向に連通し、スタイレット用ルーメンを形成する。このスタイレット用ルーメンは、基端部119に開口し、先端部114付近まで設けられている。なお、スタイレット用ルーメンの直径は、スタイレット120の直径とほぼ等しいか、それより少し長いことが望ましい。
【0024】
電極ブロック102は、先端部114が略半球状に形成され、その他の部分が略円筒形状に形成されている。先端部114の略半球状部分の半径は約0.5mm〜1.5mmであることが好ましく、その他の略円筒形状部分の直径は約1mm〜3mmであることが望ましい。このような電極ブロック102は、神経等を刺激するための4つの刺激電極105と、本体ブロック122を生体内に配置した際に各刺激電極105が生体に対して剥き出しになるように、等間隔に配置されるボディ106を含んでいる。さらに、ボディ106の基端部115側と回路ブロック103の先端部116とが連続するように接続するコネクタ部112とを含んでいる。なお、一実施形態の例では、刺激電極105の数を4つとしたが、これはあくまでも一例であって、刺激電極105の数は任意に設定できるものである。電極ブロック102の内部構成については、図3,4にて後述する。
【0025】
回路ブロック103は、電極ブロック102と同じ直径の略円筒形状に形成されている。回路ブロック103は、先端部116が電極ブロック102の基端部115側のボディ106と連続するように、電極ブロック102のコネクタ部112と接続するコネクタ部107を備えている。また、回路ブロック103には、コネクタ部107と連続するボディ108が設けられる。さらに、ボディ108の基端部117側に連続し、基端部117と支持体104とを接続するコネクタ部109を備えている。なお、回路ブロック103の内部構成については、図3,4にて後述する。
【0026】
支持体104は、回路ブロック103と接続するコネクタ部113と、電極ブロック102と同じ直径の略円筒形状に形成されたボディ110と、ボディ110よりも大きい直径を有する略円筒状のホルダ部111とを含んでいる。
【0027】
支持体104のコネクタ部113は、ボディ110の先端部118側が回路ブロック103と連続するように、回路ブロック103のコネクタ部109と接続される。ボディ110は、本体ブロック122が完全に生体内に植え込めるように切断可能となっており、コネクタ部113と、基端部119側に配置されるホルダ部111を接続する部分である。このホルダ部111は、医師が本体ブロック122を生体内に挿入する際に握る場所であるとともに、基端部119に開口するスタイレット用ルーメンにスタイレット120が挿入できるようになっている。なお、支持体104の内部構成については、図3,4にて後述する。
【0028】
次に、一実施形態に係る電気刺激装置の内部構成について図3,4を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る本体ブロックおよびその軸方向の内部構造を示す拡大図である。
図3(a)は、図1に示す本体ブロックを上面から見た拡大外観図である。
図3(b)は、図3(a)に示す本体ブロックのA―A’断面を示す断面図である。
【0029】
また、図4は、本発明の一実施形態に係る本体ブロックの軸に対して垂直方向の所定箇所の内部構造を示す断面図である。
図4(a)は、図3(a)に示す本体ブロックのB−B’断面を示す断面図である。
図4(b)は、図3(a)に示す本体ブロックのC−C’断面を示す断面図である。
図4(c)は、図3(a)に示す本体ブロックのD−D’断面を示す断面図である。
図4(d)は、図3(a)に示す本体ブロックのE−E’断面を示す断面図である。
図4(e)は、図3(a)に示す本体ブロックのF−F’断面を示す断面図である。
【0030】
最初に、電極ブロック102の内部構成について説明する。
パイプ206は、生体適合性と絶縁性を有し、かつ柔軟性のある素材、例えばポリテトラフルオロエチレン(Poly Tetra Fluoro Ethylene:PTFE)やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(Ethylene-Tetra Fluoro Ethylene copolymer:ETFE)でできており、中空の略円筒状に形成されている。その外径は0.1mm〜1mm程度であり、内径は、パイプ206の内部をスタイレット120が通過できるように、スタイレット120の直径とほぼ等しいか、それより少し長い程度が望ましい。このようなパイプ206の一端(先端部114側の端)が受け部213と結合される。
【0031】
受け部213は、ステンレス製で略円筒形状に形成されており、軸方向の中心に略円形の穴が開いている。この穴の軸方向の全長および直径は、受け部213の軸方向の全長および外径よりもそれぞれ短くなっている。また、受け部213の穴の直径は、パイプ206を軸方向あるいは軸に対して垂直方向に動かないように固定できるように、パイプ206の外径と略等しくすることが好ましい。これらパイプ206および受け部213は、ボディ106、刺激電極105およびコネクタ部112よりなる外層部内に収納・固定される。
【0032】
ボディ106は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材でできている。ボディ106の先端部114は前述したように、略半球状であり、その半径は、約0.5mm〜1.5mmの範囲であることが好ましい。そして、ボディ106の先端部114以外の部分は、中空の略円筒形状に形成されている。
【0033】
ボディ106の内径は、受け部213に接触する部分と、パイプ206に接触する部分で異なっている。受け部213に接触する部分の内径は、受け部213を固定するために、受け部213の外径とほぼ等しくなっている。また、パイプ206に接触する部分の内径は、パイプ206を固定するために、パイプ206の外径とほぼ等しくなっている。このような、ボディ106の中空の略円筒形状に形成された部分には、前述したように、4つの刺激電極105がボディ106の表面に剥き出しになるように、固定されている。
【0034】
刺激電極105は、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(プラチナ90%/イリジウム10%合金など)等の素材でできており、中空の略円筒状に形成されている。刺激電極105の外径は、ボディ106の外径とほぼ等しく形成される。また、刺激電極105の内径は、刺激電極105とその内部に設けられるパイプ206が接触しないような長さであることが望ましい。なお、4つの刺激電極105を先端部114側にあるものから順に刺激電極105a、105b、105c、105dと定義する。
【0035】
刺激電極105a〜105dには、導線202a〜202dの一端(先端部114側の端)がそれぞれはんだ203によって接着されており(図4(a)を参照)、導線202a〜202dの他端(基端部115側の端)がコネクタ部112(図2(a)を参照)と電気的に接続されている。なお、各導線202a〜202dのはんだ203で接着される箇所およびコネクタ部112と電気的に接続されている箇所以外の箇所は、PTFEやETFEによる絶縁被覆がなされており、ボディ106内部に完全に埋め込まれている(図4(b)を参照)。
【0036】
コネクタ部112は、ボディ106と同じ素材で形成されており、略円筒形状をしたボディ106の外径から段差を設けた切り欠き部として形成されている。この切り欠き部は、基端部115(図2(a)参照)から軸方向に所定の距離だけ形成されている。なお、この切り欠き部は四角形であり、切り欠き部上には4つのコネクタピン210(図2(a)を参照)が露出して配置され、この4つのコネクタピン210に各導線202a〜202dが電気的に接続されるようになっている。
【0037】
次に、回路ブロック103の内部構成について説明する。
回路ブロック103内に配置されるパイプ207も、長さ以外はパイプ206と同じである。このパイプ207は、コネクタ部107、コネクタ部107と連続するボディ108およびボディ108と連続するコネクタ部109を含む外層部内に収納・固定される(図2(b)および図3(b)を参照)。
【0038】
コネクタ部107は、後述する電気的接続部211以外はボディ106と同じ素材(ポリウレタンやシリコーン)で作られている。このコネクタ部107には、電極ブロック102のコネクタ部112と結合可能となるように、コネクタ部112の外径と略同じ形状の穴が軸方向に開けられている(図4(c)を参照)。このコネクタ部107の外径は、ボディ106の外径にほぼ等しい。また、コネクタ部107は、電極ブロック102のコネクタ部112と接続された場合に、4つのコネクタピン210とそれぞれ独立して電気的に接続される電気的接続部211を含んでいる。
【0039】
回路ブロック103のボディ108は、コネクタ部107,109と連続しており、コネクタ部107,109と同じ素材でできている。このボディ108は、中空の略円筒形状に形成されており、その外径はコネクタ部112と結合される、回路ブロック103のコネクタ部107の外径とほぼ等しく、内径はパイプ207の外径とほぼ等しく形成されている。
【0040】
このボディ108には、電気的刺激信号を生成する、フレキシブル回路基板上にカスタムICなどの小型な部品を実装した刺激回路205が埋め込まれている(図4(d)を参照)。
【0041】
刺激回路205は、生成した電気的刺激信号を各刺激電極105に独立して供給するように、ボディ108に埋め込まれている導線204を介して電気的接続部211と接続されている。また、電気的刺激信号を生成するための電力を得るためにコイル部212と電気的に接続されている。このコイル部212は、ボディ108の軸を中心に巻回されて形成される(図4(f)を参照)。なお、刺激回路205およびコイル部212の電気的な機能については、図5にて後述する。
【0042】
コネクタ部109は、すべてボディ108と同じ素材で形成され、コネクタ部107と同じ形状のものである。
【0043】
次に、支持体104の内部構成について説明する。
支持体104内に配置されるパイプ208,209も、その長さ以外はパイプ206,207と同じである。このパイプ208およびパイプ209の軸方向の間には弁体214が設けられている。
【0044】
弁体214は、例えばシリコーンゴム等のように、生体適合性のある弾性材料(特に軟質な材料が好ましい)で作られている。この弁体214は、パイプ208側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第一の切り込みと、この第一の切り込みと内部において交差し、パイプ209側にある一方の端面に開口し、他方の端面に開口しない第二の切り込みとを有している。この弁体214を設けることにより、スタイレット120を抜き差ししても、電極ブロック102および回路ブロック103の内部に体液等の液体がパイプ209から侵入することを防止することができる。
【0045】
これらのパイプ208,209および弁体214は、コネクタ部113、コネクタ部113と連続するボディ110に収納・固定される。
【0046】
コネクタ部113は、例えばポリウレタンやシリコーンで形成されており、前述した電極ブロック102のコネクタ部112(図2(a)参照)と同一の形状とされる。
【0047】
ボディ110は、コネクタ部113と同じ素材で作られており、中空の略円筒形状に形成される。このボディ110の外径は、回路ブロック103のボディ108の外径とほぼ等しく、ボディ110の内径は、パイプ209の外径とほぼ等しい。
【0048】
ホルダ部111は、プラスティック等の素材でできており、中空の略円筒形状に形成される。ホルダ部111は本体ブロック122を体内に挿入する際に手で持つ部分であるので、当該ホルダ部111の外径はボディ110の直径の2倍から3倍以上が好ましい。また、ホルダ部111の内径は、パイプ209の外径とほぼ等しい。
【0049】
以上のように、スタイレット用ルーメンは、受け部213、パイプ206〜209および弁体214により形成されている。
【0050】
[2.刺激回路等の電気的構成]
次に、電気刺激装置101の電気的な構成について図5を参照して説明する。
図5は、本発明の一実施形態例に係る電気刺激装置101の機能を示すブロック図である。
【0051】
電気刺激装置101は、電気的には、本体ブロック122に含まれる刺激回路205およびコイル部212と、体外パッチ121とを含む。
【0052】
刺激回路205は、通信部302と、制御部303と、刺激プログラム選択部310と、刺激パラメータ設定部304と、電極構成設定部305と、発振部306と、スイッチ部307とを含む。さらに、充電部308と、充電池309とを備える。
【0053】
充電池309は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。この充電池309は、蓄積している電力を、刺激回路205を構成する各ブロックに供給している。
【0054】
コイル部212は、例えばコイルとコンデンサで構成される共振回路である。コイル部212は、充電池309の充電を行う場合に、体外パッチ121から送信される充電用の電磁波を受信する。そして、このコイル部212による受信に伴って、コイル部212から発生される交流電流が充電部308に出力される。また、コイル部212は、体外パッチ121から送信される、所定の情報が載せられた電磁波を受信し、この受信した電磁波を通信部302に出力する。
【0055】
充電部308は、整流回路を内蔵し、コイル部212から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池309の充電を行う。
【0056】
通信部302は、コイル部212が受信した電磁波を復調し、電磁波に載せられている情報を取り出す。そして、取り出した情報を制御部303を介して刺激プログラム選択部310に出力する。刺激プログラム選択部310に出力される情報は、刺激信号の刺激強度および当該刺激信号の出力先の電極をどの刺激電極105にするのかを決定するためのプログラム(以下、「刺激プログラム」という)に対応する番号(以下、「刺激プログラム番号」という)である。
【0057】
刺激プログラム選択部310は、様々な種類の刺激プログラムおよびそれらの刺激プログラムに対応する刺激プログラム番号を記憶している。そして、制御部303から入力されたプログラム番号に対応する刺激プログラムを読み出し、この刺激プログラムに基づいて所定の制御情報を生成し、刺激パラメータ設定部304および電極構成設定部305に出力する。刺激パラメータ設定部304に出力される制御情報は、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報(以下、「刺激パラメータ」という)であり、電極構成設定部305に出力される情報は、電極構成に関する情報(以下、「電極構成情報」という)である。電気的刺激信号の刺激強度は、この電気的刺激信号のパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数により決定されるので、刺激パラメータはこれらパルス電圧等の値を示す信号である。また、電極構成情報は、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極105をスイッチ部307に選択させるための情報とを含む信号である。
【0058】
刺激パラメータ設定部304は、刺激プログラム選択部310から入力される刺激パラメータに基づいて、発振部306で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。刺激強度変更信号は発振部306に出力される。
【0059】
電極構成設定部305は、刺激プログラム選択部310から入力される電極構成情報に基づいて、発振部306で発生する電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択するための電極構成選択信号を生成する。この電極構成選択信号はスイッチ部307に出力される。
【0060】
発振部306は、刺激パラメータ設定部304から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成してスイッチ部307に出力する。
スイッチ部307は、電極構成設定部305から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部306から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極105を選択する。なお、制御部303は、例えばマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)であり、刺激回路205の各ブロックを制御する。
【0061】
次に、体外パッチ121の電気的構成について説明する。
体外パッチ121は、センサ123と、制御部411と、記憶部416と、通信部414と、コイル部413と、給電部412と、電源部415とよりなる。
【0062】
センサ123は、体外パッチ121を背中等に貼り付けた際に、体幹の屈曲や回旋を計測し、体幹の屈曲や回旋を示す情報(以下、「センサ出力値」という)を制御部411に出力する。なお、センサ123には、例えば歪センサや曲げセンサが用いられる。
【0063】
制御部411は、例えばマイコンを含み、前回のセンサ出力値を記憶してある。そして、前回のセンサ出力値に対する、センサ123から入力されるセンサ出力値の変化量(以下、「センサ出力値変化量」)を算出する。制御部411は、センサ出力値変化量が所定変化量よりも大きい場合に、前回のセンサ出力値と置き換えてセンサ123から入力されているセンサ出力値を記憶する。そして、記憶したセンサ出力値に対応するプログラム番号を記憶部416から取得して、通信部414に出力する。なお、記憶部416には、センサ出力値と、プログラム番号との関係が予め記録されている。
【0064】
また、制御部411は、医師等のユーザの操作に基づいて、給電部412や通信部414を制御する。操作は、体外パッチ121に配置された不図示のスイッチなどの操作部を直接操作することもできるし、不図示のコントローラから通信により行うこともできる。給電部412は、例えばユーザからの充電指示があった場合に、制御部411の制御に基づいて、充電用の電磁波を生成する。そして、生成した充電用の電磁波を、コイル部413を介して本体ブロック122のコイル部212に送信する。
【0065】
通信部414は、制御部411から入力されるプログラム番号を情報として載せた電磁波を生成し、コイル部413を介して本体ブロック122のコイル部212に送信する。
【0066】
コイル部413は、電磁波を本体ブロック122へ送信できるコイルであり、例えば電線を円筒形に巻いたものが用いられる。
【0067】
また、電源部415は、蓄積している電力を、体外パッチ121を構成する各ブロックに供給している。電源部415には、一次電池あるいは充電池が用いられる。
【0068】
[3.電気刺激装置の設置手順]
次に、本体ブロック122を体内に設置し、電気刺激装置101で脊髄の神経の電気刺激を行う手順の一例について図6〜図11を参照して説明する。
図6〜図11は、背中付近を示す人体の横断面図である。
【0069】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、X線透視下で患者の背中側から穿刺して、硬膜外針402を硬膜外腔405まで挿入する。この硬膜外針402が硬膜外腔405に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から3椎体以上低位が選ばれる(図6を参照)。なお、本例では、本体ブロック122を生体内に挿入する場合に硬膜外針402を用いるがこれに限られない。例えば、カニューレなどの管状導入具を用いることも可能である。
【0070】
次に、医師は、本体ブロック122のスタイレット用ルーメンにスタイレット120を挿入し、スタイレット120の先端を受け部213に当てる。そして、硬膜外針402に本体ブロック122の先端部114(図2(a)を参照)を通し、本体ブロック122を生体404内に挿入する。そして、スタイレット120の基端を軸方向に押すことにより、本体ブロック122が硬膜外腔405内に挿入される(図7を参照、本体ブロック122のホルダ部111、スタイレット120は不図示)。
【0071】
続いて、医師は、スタイレット120の基端部を軸方向にさらに押して、硬膜外腔405内に本体ブロック122を上向させ、本体ブロック122の刺激電極105を目標とする刺激部位の近くに位置させる。そして、刺激電極105の位置を少しずつ移動させながら、不図示のコントローラで本体ブロック122を操作して神経刺激を行い、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、疼痛緩和の効果が最大となる最適な刺激電極105の位置を決定する。
【0072】
続いて、医師は、本体ブロック122が完全に生体404内に植え込まれるようにするため、体外に突出した支持体104を切断する。具体的には、まずスタイレット120を本体ブロック122のスタイレット用ルーメンから取り出し、硬膜外針402を生体404から抜き去る(図8を参照)。そして、支持体104の生体404からはみ出ている部分を切断する(図9を参照)。
【0073】
以上の処理が完了した後、医師は、支持体104の切断した部分の外周を糸406で縛るとともに、この糸406で支持体104を生体404の組織に縫い付ける(図10を参照)。この処置は、支持体104に開口するスタイレット用ルーメンに体液等が入るのを防止するとともに、本体ブロック122が生体404内で移動しないようにするためのものである。
【0074】
次に、医師は、刺激電極105付近の体幹の動きを体外パッチ121のセンサ123で計測できるように、刺激電極105付近の体表面に体外パッチ121を貼り付けて固定する(図11を参照)。続いて、不図示のコントローラで本体ブロック122と体外パッチ121を操作して、患者に体幹の屈曲や回旋を行わせたときのセンサ出力値と疼痛緩和の効果が最大となる至適な刺激パラメータと電極構成情報の関係を求め、それらをプログラム番号と対応付ける。そして、プログラム番号と刺激パラメータおよび電極構成情報の関係を本体ブロック122の刺激プログラム選択部310に設定し、センサ出力値とプログラム番号の関係を体外パッチ121の記憶部416に設定する。
【0075】
ここで、患者が体を動かすと、刺激電極105付近の体幹の屈曲や回旋がセンサ123によって計測される。そして、その計測結果(前述のセンサ出力値)に基づいて、所定の強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号が所定の刺激電極105に出力されて、刺激電極105の位置に近い部分の神経刺激が行われる。なお、刺激回路205の充電池309(図5を参照)への充電も、この体外パッチ121を操作することによって行われる。
【0076】
[4.電気刺激装置の動作]
次に、電気刺激装置101が、センサ出力値に基づいて、電気的刺激信号を生成する処理(以下、「電気的刺激信号生成処理」という)の詳細について図12,13を参照して説明する。
【0077】
図12は、電気的刺激信号生成処理時の本体ブロックの刺激回路およびコイル部の動作の流れを示すフローチャートである。
【0078】
本体ブロック122が完全に生体404内に植え込まれると(図11を参照)、刺激プログラム選択部310は、医師が予め設定してあるデフォルトの刺激プログラム(以下、「刺激プログラム0」)を読み出し、刺激プログラム0を実行する。すると、刺激プログラム0に応じた刺激パラメータ(以下、「刺激パラメータ0」という)および電極構成情報(以下、「電極構成情報0」という)が、刺激パラメータ設定部304および電極構成設定部305にそれぞれ出力される(ステップS1)。
【0079】
刺激パラメータ設定部304は、入力された刺激パラメータ0に応じた強度の電気的刺激信号(以下、「デフォルト刺激信号」という)を発振部306に生成させる。一方、電極構成設定部305は、入力された電極構成情報0に基づいて、スイッチ部307と刺激電極105とを選択的に接続する。本例では、電極構成情報0が電極構成設定部305に入力されている場合に、刺激電極105a、105bとスイッチ部307とが電気的に接続されるものとする。
【0080】
その結果、発振部306で生成されたデフォルト刺激信号は、スイッチ部307を介して刺激電極105aと105bの間に出力されて、刺激電極105aと105bに近い部分の神経刺激が開始される(ステップS2)。
【0081】
以上の処理が完了した後、制御部303は、コイル部212および通信部302を介して、体外パッチ121から刺激プログラム変更要求があるか否かを確認する(ステップS3)。体外パッチ121から刺激プログラム変更要求がないならば(ステップS3のNO)、ステップS3の処理に戻って刺激プログラム変更要求を待つ。
【0082】
体外パッチ121から刺激プログラム変更要求があるならば(ステップS3のYES)、この刺激プログラム変更要求とともに送信される刺激プログラム番号N(Nは任意の自然数)が載せられた電磁波をコイル部212で受信する(ステップS4)。コイル部212で受信した電磁波は、通信部302へ出力される。通信部302は、入力された電磁波を復調して、この電磁波に載せてある刺激プログラム番号Nを取得する。そして、取得した刺激プログラム番号Nは、制御部303を介して刺激プログラム選択部310に出力される。
【0083】
刺激プログラム選択部310は、入力された刺激プログラム番号Nに対応する刺激プログラムNを読み出して実行する。すると、刺激プログラムNに応じた刺激パラメータ(以下、「刺激パラメータN」という)および電極構成情報(以下、「電極構成情報N」という)が、刺激パラメータ設定部304および電極構成設定部305にそれぞれ出力される(ステップS5)。
【0084】
刺激パラメータ設定部304は、入力された刺激パラメータNに応じた強度の電気的刺激信号(以下、「刺激信号N」という)を発振部306に生成させる。一方、電極構成設定部305は、入力された電極構成情報Nに基づいて、スイッチ部307と刺激電極105とを選択的に接続する。本例では、電極構成情報Nが電極構成設定部305に入力されている場合に、刺激電極105b、105cとスイッチ部307とが電気的に接続するものとする。
【0085】
そして、発振部306で生成された刺激信号Nは、スイッチ部307を介して刺激電極105bと105cの間に出力されて、刺激電極105bと105cに近い部分の神経刺激が開始される。
以上の処理が完了した後、ステップS3の処理に戻って刺激プログラム変更要求を待つ。
【0086】
図13は、電気的刺激信号生成処理時の体外パッチの動作の流れを示すフローチャートである。
本体ブロック122が完全に生体404内に植え込まれると(図11を参照)、センサ123による刺激電極105付近の体幹の屈曲や回旋が計測され、計測結果がセンサ出力値として制御部411に出力される(ステップ11)。制御部411は、センサ123から入力されるセンサ出力値および記憶している前回のセンサ出力値に基づいて、センサ出力値変化量を算出する。そして、センサ出力値変化量に所定変化があるか否かを確認する(ステップS12)。センサ出力値変化量に所定変化がないならば(ステップS12のNO)、ステップS12の処理に戻る。
【0087】
センサ出力値変化量に所定変化があるならば(ステップS12のYES)、制御部411は、前回のセンサ出力値と置き換えてセンサ123から入力されているセンサ出力値を記憶する。そして、記憶したセンサ出力値で記憶部416を検索し、このセンサ出力値に対応する刺激プログラム番号Nを取得する(ステップS13)。
【0088】
ここで、制御部411は、通信部414およびコイル部413を介して、コイル部212に、刺激プログラム変更要求を送信する(ステップS14)とともに、取得した刺激プログラムNが情報として載せられた電磁波を、本体ブロック122のコイル部212に送信する(ステップS15)。
以上の処理が完了した後、ステップS12の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0089】
<本発明の他の実施形態例>
次に、本発明の他の実施形態の例について図14〜図16を参照して説明する。
他の実施形態に係る電気刺激装置501は、一実施形態に係る電気刺激装置101と機械的な構成および植え込み手順は同じであるので、機械的な構成および植え込み手順の説明を省略することにする。また、電気刺激装置501の電気的な構成において、電気刺激装置101と共通の部分については同一符号を付して、説明を省略する。
【0090】
[1.電気刺激装置の電気的構成]
まず、他の実施形態に係る電気刺激装置501の電気的な構成について図14を参照して説明する。
図14は、他の実施形態に係る電気刺激装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0091】
電気刺激装置501は、電気刺激装置101と同様に、センサ123の計測結果に基づいて、電気的な刺激信号を生成し、その刺激信号で生体内の神経等を刺激するものである。この電気刺激装置501は、電気刺激装置101の刺激回路205および体外パッチ121の代替として、刺激回路502および体外パッチ503をそれぞれ設けたものである。
【0092】
刺激回路502は、刺激回路205の制御部303の代わりに制御部504を備えたものに、さらに記憶部505を備えている。
【0093】
制御部504は、コイル部212および通信部302を介して体外パッチ503のセンサ123による計測結果であるセンサ出力値を取得する。そして、そのセンサ出力値に対応するプログラム番号を記憶部505から取得して、刺激プログラム選択部310に出力する。なお、記憶部505は、記憶部416(図5を参照)と同じものであり、センサ出力値と、プログラム番号との関係が予め記録されている。
【0094】
一方、体外パッチ503は、体外パッチ121の制御部411の代わりに制御部506を備えたものから、記憶部416を除いた構成となっている。
【0095】
制御部506は、制御部411と同様に、前回のセンサ出力値を記憶してある。そして、センサ123から入力されているセンサ出力値および前回のセンサ出力値を利用して、センサ出力値変化量を算出する。制御部411は、センサ出力値変化量が所定変化量よりも大きい場合に、前回のセンサ出力値と置き換えてセンサ123から入力されているセンサ出力値を記憶し、記憶したセンサ出力値を通信部414に出力する。
【0096】
[2.電気刺激装置の動作]
次に、電気刺激装置501による電気的刺激信号生成処理の詳細について図15,16を参照して説明する。
【0097】
図15は、電気的刺激信号生成処理時の刺激回路およびコイル部の動作の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS31からステップS33までの処理は、図12に示すステップS1からステップS3までの処理と同じであるので、説明は省略する。
【0098】
体外パッチ503から刺激プログラム変更要求があるならば(ステップS33のYES)、体外パッチ503から送信される、センサ出力値が載せられた電磁波をコイル部212で受信する(ステップS34)。コイル部212で受信した電磁波は、通信部302へ出力される。通信部302では、入力された電磁波が復調され、この電磁波に載せてあるセンサ出力値が取得される。そして、センサ出力値は、制御部504に出力される。
【0099】
制御部504は、通信部302から入力されたセンサ出力値で記憶部505を検索し、このセンサ出力値に対応する刺激プログラム番号Nを取得する。制御部504で取得された刺激プログラム番号Nは、刺激プログラム選択部310に出力される。
【0100】
そして、刺激プログラム選択部310は、制御部504から入力された刺激プログラム番号Nに対応する刺激プログラムNを読み出して実行する。すると、刺激プログラムNに応じた刺激パラメータNおよび電極構成情報Nが、刺激パラメータ設定部304および電極構成設定部305にそれぞれ出力される(ステップS35)。
【0101】
刺激パラメータ設定部304は、入力された刺激パラメータNに応じた強度の電気的刺激信号である刺激信号Nを発振部306に生成させる。一方、電極構成設定部305は、入力された電極構成情報Nに基づいて、スイッチ部307と刺激電極105とを選択的に接続する。本例では、電極構成情報Nが電極構成設定部305に入力されている場合に、刺激電極105c、105dとスイッチ部307とが電気的に接続されるものとする。
【0102】
そして、発振部306で生成された刺激信号Nは、スイッチ部307を介して刺激電極105cと105dの間に出力されて、刺激電極105cと105dに近い部分の神経刺激が開始される。
以上の処理が完了した後、ステップS33の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0103】
図16は、電気的刺激信号生成処理時の体外パッチの動作の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS41からステップS42までの処理は、図13に示すステップS11からステップS12までの処理と同じであるので、説明は省略する。
【0104】
センサ出力値変化量に所定変化があるならば(ステップS42のYES)、制御部506は、前回のセンサ出力値と置き換えて、センサ123から入力されているセンサ出力値を記憶する。
【0105】
ここで、制御部506は、通信部414およびコイル部413を介して、本体ブロック122のコイル部212に刺激プログラム変更要求を送信する(ステップS43)とともに、記憶したセンサ出力値が載せられた電磁波をコイル部212に送信する(ステップS44)。
以上の処理が完了した後、ステップS42の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0106】
以上説明したように、上述した各実施形態では、刺激する部位の近くの体表面に置かれたセンサのセンサ出力値によって、刺激強度や電極構成を制御することができる。すなわち、刺激電極が留置された付近の屈曲や回旋などの患者の動きを的確に計測することができる。これにより、患者に応じたきめ細かな刺激強度や電極構成の調節を行うことができる。その結果、疼痛緩和効果の減弱や不快感を防止できる、という効果がある。
【0107】
また、上述の各実施形態では、電極ブロック、回路ブロックおよび支持体に連通するスタイレット用ルーメンを備えることで、電気刺激装置を生体内に植え込む際に、スタイレットを利用できる。そのため、電気刺激装置の体内への植え込みを容易に行うことができるとともに、刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることができる。
【0108】
<変形例>
なお、上述した各実施形態では、体外パッチに設けられるセンサの数を1としたが、2以上とすることも可能である。センサの数を増やすことで、より正確な体幹の屈曲や回旋を計測することができる。また、加速度センサを用いて重力を計測することで、患者の体位(仰向け、うつぶせ、左向き、右向き)を検出することができ、体幹の屈曲や回旋の計測と組み合わせることで、よりきめ細かな刺激強度や電極構成の調節を行うことができる。
【0109】
また、上述した各実施形態では、生体内に本体ブロックを挿入する際に、硬膜外針に直接本体ブロックを通す形態とした。しかしながら、予め硬膜外針を通して柔軟性のあるカニューレを刺激を行う部位の近くまで導いた後に、このカニューレ内に本体ブロックを通して生体内に挿入することで刺激電極の生体内への配置の正確性をより向上させることが可能である。
【0110】
また、上述した各実施形態では、コネクタにより電極ブロック、回路ブロック、支持体をそれぞれ着脱可能に接続した。しかし、コネクタを廃して、電極ブロックと回路ブロックが予め一体化されていてもよく、あるいは、回路ブロックと支持体が予め一体化されていてもよく、あるいは、すべてが予め一体化されていてもよい。
【0111】
また、上述した各実施形態では電源として充電池を用いたが、充電池の代わりにキャパシタを用いて、体外パッチから常に給電を受けながら作動させてもよい。
【0112】
また、上述した各実施形態では、支持体、回路ブロックおよび電極ブロックには、軸方向に連通するスタイレット用ルーメンが形成されているが、支持体の基端部から電極ブロックの先端部まで連通するルーメン(ガイドワイヤ用ルーメン)を形成してもよい。このガイドワイヤ用ルーメンを設ければ、ガイドワイヤを用いて、本体ブロックの体内への植え込みを行うことができるようになる。もちろん、これらスタイレット用ルーメンおよびガイドワイヤ用ルーメンを設けないような構成にしてもかまわない。
【0113】
また、上述した各実施形態では、本体ブロックは略円筒形状に形成されているが、棒状であればどのような形状でもよい。
【0114】
また、上述した各実施形態では、コイル部を回路ブロックに設けたが、支持体に設けてもよい。
【0115】
以上、本発明の各実施形態の例について説明したが、本発明は上記各実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含むことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0116】
101、501…電気刺激装置、102…電極ブロック、103…回路ブロック、104…支持体、105…刺激電極、106、108,110…ボディ、107,109,112,113…コネクタ部、114,116,118…先端部、115,117,119…基端部、120…スタイレット、121,503…体外パッチ、123…センサ、202,204…導線、203…はんだ、205…刺激回路、206〜209…パイプ、210…コネクタピン、211…電気的接続部、212…コイル部、213…受け部、214…弁体、302…通信部、303,504…制御部、304…刺激パラメータ設定部、305…電極構成設定部、306…発振部、307…スイッチ部、308…充電部、309…充電池、310…刺激プログラム選択部、402…硬膜外針、403…脊椎、404…生体、405…硬膜外腔、411,506…制御部、412…給電部、413…コイル部、414…通信部、415…電源部、416,505…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に植え込まれる本体ブロックと、該本体ブロックに対して通信および/または給電を行う体外パッチとを含む電気刺激装置であって、
前記体外パッチは、
体の動きを計測するセンサと、
前記センサの計測結果に係る情報を送信するパッチ側通信部とを備え、
前記本体ブロックは、
前記生体内の神経または筋肉を刺激する刺激電極と、
前記刺激電極に印加する刺激信号を生成する発振部と、
前記パッチ側通信部から前記計測結果に係る情報を取得する本体側通信部と、
取得した前記計測結果に係る情報に基づいて前記発振部が生成する前記刺激信号の刺激強度を変更させる刺激プログラム選択部とを備える
ことを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
前記刺激強度の変更は、前記刺激信号の周波数、パルス幅、パルス電流、パルス電圧に係る値のいずれか一つまたは複数を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記刺激電極は2以上の電極を含み、
前記刺激プログラム選択部は、前記本体側通信部で取得した前記計測結果に係る情報に基づいて、前記刺激信号の極性および/または前記刺激信号を印加する電極を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記体外パッチは、
前記計測結果の変化を検出するとともに、前記計測結果に所定変化があった場合のみ、前記計測結果に係る情報を前記本体側通信部へ送信する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−156175(P2011−156175A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20760(P2010−20760)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】