説明

電気化学セル

液体サンプル、特に、容積が小さい液体サンプル中の検体を検出し定量化する電気化学セルが提供される。好ましい実施形態では、電気化学セルは、導電層と絶縁層の組立体を含む。電気化学セルは、導電材料および絶縁材料を絶縁基板上の交互の層に堆積することで形成され得る。電気化学セルを取り扱う際に導電層への損傷を最小化するために、絶縁基板から最も遠い層が絶縁層であることが好ましい。導電層と絶縁層には通路が形成されてよく、通路の壁または複数の壁を集合的に形成する層のエッジを露出させる。導電層の露出されたエッジが電気化学セルの電極を形成する。電気化学セルは、少なくとも一つの作用電極と、少なくとも一つの他の電極、例えば、二重目的基準/対向電極とを備える。別の実施形態では、導電層と絶縁層の組立体は、絶縁基板の両方の主表面に形成され得る。組立体は、少なくとも一つの作用電極と、少なくとも一つの他の電極、例えば、二重目的基準/対向電極とを備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。より具体的には、本発明は、液体サンプル中の検体の濃度を検出および測定するのに好適な電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
液体サンプルの従来の電気化学分析について、検体のタイプの電気化学的決定、または、検体の濃度の測定、あるいはその両方のために、電極がサンプルに浸漬されていた。電極は、互いに離間され、サンプル中の電解液は電極間でイオンを伝達する。多くの状況では、サンプルは測定中には静的であり、ある状況では、サンプルは、サンプルがフローインジェクション分析の場合等のように流体運動の状態にある時に電気化学検出器を流れる。電極の寸法は、測定に必要なサンプルの容積を定める。サンプルの容積、および、迅速な測定の要件に関する制約は、従来のサイズの電極の表面積を覆うのにサンプルの容積が十分でないとき、微小電極の使用を必要とする。
【0003】
電気化学セルの製造のために微小電極を形成する様々な方法が提案された。互いにかみ合う電極またはバンド電極が形成されることができ、電極は、電気化学測定を実施するのに必要なサンプルの容積を最小化するよう近接される。これらの装置では、電極は同じ表面上に位置決めされる。米国特許第5,045,828号明細書は、(a)電気的に絶縁された表面を有する基板と、(b)表面上の一対の離間された電極と、(c)電極を相互接続する表面上の約5ミクロン以下の厚さを有する膜と、を備える湿度センサを記載する。従来のバイオセンサは、絶縁基板の同じ主表面上に作用電極と、二重目的基準/対向電極とを有する。反応化学は、作用電極、または、二重目的基準/対向電極および作用電極の両方に位置決めされる。米国特許第5,509,410号明細書は、信号読み出し回路に取り外し可能に取り付けられるよう適合されるセンサシステムを記載する。ストリップは、読み出し回路に取り外し可能に取り付けられるよう構成される細長い支持部と、支持部に沿ってそれぞれ延在し、回路に接続するための手段を備える第1の導体および第2の導体と、を備える。液体混合物および第1の導体に接触するよう位置決めされる活性電極は酵素の堆積部を有し、好ましくは電子メディエータである化合物を伴う反応を触媒し、酵素触媒反応と第1の導体との間で電子を移動することができる。基準電極は、混合物および第2の導体に接触するよう位置決めされる。システムは、電流を表す電気信号を供給するよう構成される回路を含む。
【0004】
国際公開第03/05639号パンフレットは、レセプタクルの形態の微小電極を開示する。レセプタクルは、典型的には小さい表面積を有する作用電極をレセプタクルの壁に備える。対向電極も設けられ、当該電極は、典型的には、作用電極よりもはるかに大きい表面積、一般的に、作用電極よりも少なくとも一桁大きい表面積を有する。電気活性物質はレセプタクルに配置され、定位置で任意には乾燥される。サンプルは、試験を行うためにレセプタクルに供給される。電気活性物質は、典型的には、保存中にレセプタクルの壁の作用電極に接触しないため、当該電極の汚れが最小化される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の様々な参考文献が、様々な分析的用途に対する電気化学セルの製造方法を記載している。これら参考文献の幾つかは、電極が隣り合わせに位置決めされ電極の表面に試薬を有する電気化学セルを記載し、他の参考文献は、電極の一つを有するレセプタクルが電気化学セルの壁に沿って配置され、試薬が活性電極から離れて位置決めされる電気化学セルを記載する。セルを構成する電極の位置および寸法は、電気化学セルの体積を決定する。したがって、セルが必要とする液体サンプルの容積を減少させるよう電極が位置決めされ、試薬の位置決めが作用電極と接触してもよい電気化学セルを提供することが望ましい。
【0006】
本発明は、液体サンプル、特に、容積が小さい液体サンプルにおける検体を検出し定量化する電気化学セルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
好ましい実施形態では、電気化学セルは、導電層と絶縁層との組立体を備える。電気化学セルは、導電材料および絶縁材料を絶縁基板上の交互の層に堆積することで形成される。電気化学セルを取り扱う際に導電層への損傷を最小化するために、絶縁基板から最も遠い層が絶縁層であることが好ましい。絶縁基板を含むか含まない導電層と絶縁層には通路が形成され、通路の壁または複数の壁を集合的に形成する層のエッジを露出させる。導電層の露出されたエッジが電気化学セルの電極を形成する。電気化学セルは、少なくとも一つの作用電極と、少なくとも一つの他の電極、例えば、二重目的基準/対向電極とを備える。代替的には、電気化学セルは、少なくとも一つの作用電極と、一つの基準電極と、一つの対向電極とを備えることができる。通路の形状および寸法は、露出した電極の面積および電気化学セルの容積を最適化するように選択され得る。本明細書で使用されるように、「最適化」といった用語は、非常に少量の液体サンプルで正確な電気的応答を得るように、電極の表面積を最大化する一方で、液体サンプルの容積を最小化する処理を指す。
【0008】
別の実施形態では、導電層と絶縁層の組立体は、絶縁基板の両方の主表面に形成され得る。組立体は、少なくとも一つの作用電極と、少なくとも一つの他の電極、例えば、二重目的基準/対向電極とを備えることができる。代替的には、電気化学セルは、少なくとも一つの作用電極と、一つの基準電極と、一つの対向電極とを備える。電気化学セルでは、絶縁層が、電気化学セルを取り扱う際に導電層に対する損傷を最小化するよう絶縁基板に面さない導電層の主表面上に堆積されることが好ましい。
【0009】
組立体における導電層の数は、電気化学セルにおける電極の数を決定する。作用電極として機能する導電層が、液体サンプル中の一つ以上の検体に特異の試薬を含むか、例えばグルコース、ケトン体、乳酸塩等のような液体サンプルにおける一つ以上の検体に特異の試薬を含む試薬を含む層を支持することが好ましい。一つ以上のこれら導電層が、サンプル中に存在し得る電子活性種からの妨害を決定するために使用され得る。少なくとも一つのこれら導電層が、基準電極の機能を実行しなくてはならない。任意には、電気化学セルは、基準電極から別個で、且つ、区別可能な対向電極を含むことができる。
【0010】
電気化学セルに導入され得る液体サンプルの容積は、個々の層の累積厚さおよび通路の周囲によって決定され得る。一つ以上の通路が、導電層と絶縁層の組立体に複数の電気化学セルを提供するよう、電気化学セルに形成され得る。これらの状況において、全ての通路が、検定の感度を向上させるために単一の液体サンプルで同じ組の検体に対して複数の同一の検定を実施するために使用されることができ、または、全ての通路が異なる液体サンプルで同じ組の検体に対する複数の同一の検定を実施するために使用され得る。複数の通路は、単一の液体サンプルで異なる検体の分析に使用され得る。通路の場所は、適用法に左右されて、サンプルの容積を最小化するか、クロストークを最小化するために動作され得る。
【0011】
本発明は、小容積のサンプルで動作し得る電気化学セルを構成する方法を提供する。本発明の電気化学セルは、導電層と絶縁層をインターレイし、液体サンプルに層のエッジを露出させるよう通路を形成することで構成され得る。液体サンプルに露出される導電層は、電気化学セルの電極を形成する。通路において、隣接する導電層、即ち電極は、絶縁層によって離間される。電気化学セルの特異性は、目的の検体と特定的に反応する試薬を含ませることで提供されることができ、それにより、測定可能な信号が生成される。
【0012】
検体に特有の試薬は、別個の層の形態で導電材料の層と同時に適用されることができ、導電材料の層に存在する適当な試薬が電極を形成し、代替的には、試薬は試薬で含浸された層として適用され、適用された層は電極を形成する層とは別個である。更に代替的には、試薬は通路の壁または複数の壁に沿って被覆され得る。
【0013】
本発明の電気化学セルは、どのタイプの電気化学測定にも使用され得る。導電層は、特定の検体を測定するよう変更され得る。電気化学セルは、イオン感知性電極を利用し得る。更に、電気化学セルは、目的の検体に特有の導電層に適当な試薬を有する電気化学バイオセンサでもよい。
【0014】
本発明により、非常に小容積のサンプルを必要とする電気化学セルを準備することが可能となる。本発明の電気化学セルは、非常に高い正確性および精度で再現され得る。単一の検体または複数の検体に対する検定は、本発明の電気化学セルで実施され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書で用いる「電気化学セル」といった表現は、互いに電気的に接続されている作用電極と対向電極とを備える装置を指す。使用の際、各電極で生ずる電気化学反応は、電子を電極に且つ電極から流して電流を発生させる。電気化学セルは、例えば、電池の形態で発生された電流を利用する、あるいは、印加された電流または電圧によって誘起される電気化学反応を検出するようセットアップされる。
【0016】
本明細書で用いる「層」といった用語は、単一の厚さのコーティング、または、表面を覆う単層を指す。「主表面」といった表現は、他の表面よりも大きい面積を有する基板の表面を指す。平坦な基板は、二つの主表面と、少なくとも一つの副表面とを備える。「通路」といった用語は、液体が流れ得る路、チャネル、または、管を指す。本明細書に記載の発明では、通路は、基板を含む全ての層を通ってよく、または、全ての層を通らなくてもよい。「容積」といった用語は、単一の通路または複数の通路を充填するに必要な液体の容積を意味する。電気化学セルは、単一の通路を有しても、複数の通路を有してもよい。「アパーチャ」といった用語は、通路または通路のセグメントに液体サンプルが入るための開口部を指す。通路は深さがあり、アパーチャは面積を有する。
【0017】
「作用電極」といった表現は、目的の反応が行われる電極を意味する。電流は、作用電極における検体、例えば、グルコースの濃度に比例し、「基準電極」といった表現は、作用電極とサンプルの界面において電位を可能な限り正確に測定する電極を意味し、「対向電極」といった表現は、基準電極と作用電極との間に正確な電位差が印加されていることを確実にする電極を意味し、「二重目的基準/対向電極」は、基準電極として、且つ、対向電極として機能する電極を意味する。理想的な状況では、電流は基準電極を流れない。作用電極と基準電極との間の電位差は、作用電極における所望の電位と同じと推定される。作用電極で測定される電位が作用電極で望まれる電位でない場合、対向電極と作用電極との間に印加される電位は相応じて変更され、即ち、電位は増加されるか減少される。対向電極における反応は、作用電極で生ずる電荷移動反応に等しく、且つ、反対であり、即ち、酸化反応が作用電極で生じた場合、対向電極で還元反応が生ずる。それにより、サンプルは電気的に中性のままとなる。電流は理想的な基準電極を流れないため、当該電極は安定した電位を維持する。電流は二重目的基準/対向電極中を流れるため、二重目的基準/対向電極は測定中に安定した電位を維持しない。測定時間に対する低電流および/または短い持続時間では、作用電極における応答が著しく影響を与えられないよう電位のシフトが十分に小さく、したがって、その二重目的基準/対向電極が二重目的基準/対向電極と指定される。
【0018】
「導電層」といった表現は、二つの絶縁層間に介在する導電性の層を意味する。「絶縁層」といった表現は、二つの導電層間に介在する層を意味する。絶縁層の抵抗は十分に高いため、電流は絶縁層を流れない。
【0019】
「試薬」といった用語は、検出および定量化処理の活性成分である物質を意味し、それにより、サンプルにおける検体の有無または濃度が決定される。試薬は、酵素、メディエータ、補酵素、イオノフォア、セル、または、それらの組み合わせを含むが、これらに制限されない。試薬は、典型的には、酵素およびメディエータを含む。メディエータは、電子/電荷を電極に移動する逆機構を可能にする、明確な電気活性電位の二つ以上の酸化状態を有する化学種である。酵素は、サンプル中の検体と反応して、検体の酸化を触媒する。酵素は、酸化反応で還元され、還元された酵素はメディエータによって再生成される。酵素の代表的な例として、グルコース酸化酵素、ラクテート酸化酵素、ベータヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼなどを含む。メディエータの代表的な例として、フェロセン、フェリシアン化物、キノンなどを含む。代替的には、例えば、イオン感応電極に使用されるイオノフォア等の検体と反応すると電気化学的に検出可能な化合物を形成するよう、イオン種および金属イオンが酵素の代わりに使用されてもよい。
【0020】
図1から図4を参照すると、電気化学セル10は、絶縁基板12と、複数の導電層14a、14bと、二つの導電層14aと14bの間に介在する絶縁層16aとを備える。別の絶縁層16bが絶縁基板12から最も遠い導電層上に堆積される。導電トラック18a、18bは、絶縁基板12に設けられ、導電トラック18c、18dは導電トラック18a、18b上に設けられる。試薬層20は導電層14a上に堆積される。通路22は、(a)絶縁基板12、(b)複数の導電層14a、14b、(c)複数の絶縁層16a、16b、および、(d)試薬層20を貫通する。導電層14a、14bそれぞれのエッジ24、26、試薬の層20のエッジ28、および、絶縁層16a、16bそれぞれのエッジ30、32は、通路22の壁を形成する。導電層14a、14bは電気化学セル10の電極を形成する。図1から図4に示す実施形態では、絶縁基板12の他に二つの絶縁層16a、16bと、二つの導電層14a、14が設けられる。
【0021】
図5から図8を参照すると、電気化学セル10’は、絶縁基板12’と、複数の導電層14a’、14b’と、複数の絶縁層16a’、16b’と、を備え、絶縁基板12’は二つの導電層14a’と14b’の間に介在する。絶縁層16a’、16b’は、それぞれ導電層14a’、14b’の上に堆積される。導電トラック18b’は絶縁基板12’の一方の主表面に設けられ、導電トラック18c’は絶縁基板12’の他方の主表面に設けられる。通路22’は、絶縁基板12’、複数の導電層14a’、14b’、および、複数の絶縁層16a’、16b’を貫通する。導電層14a’、14b’それぞれのエッジ24’、26’、および、絶縁層16a’、16b’それぞれのエッジ28’、30’は、通路22’の壁を形成する。導電層14a’、14b’は電気化学セル10’の電極を形成する。図5から図8に示す実施形態では、絶縁基板12’の他に二つの絶縁層16a’、16b’と、二つの導電層14a’、14b’が設けられる。導電層14a’が、目的の検体の有無または濃度を決定する検定法として好適な試薬を少なくとも一つ含むことが好ましい。導電層14a’以外の試薬を含む層(図示せず)は、導電層14a’が検定を行う上で必要な試薬を全て含まない場合に、導電層14a’に存在しない全ての試薬を供給するよう導電層14a’と対向し接触して配置される。
【0022】
絶縁基板に好適な材料は、ポリマー材料、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステルなどを含むが、これらに制限されない。これらの材料は市販されている。絶縁基板の目的は、基板上に堆積される層に対して機械的支持を提供することにある。
【0023】
導電層に好適な材料は、導電性の材料であり、炭素、および、例えば金、パラジウム、白金、銅、銀などの金属、例えば塩化銀などの導電性化合物、および、例えばインジウムにドーピングされた酸化スズなどの半導体材料を含むが、これらに制限されない。ある場合では、導電層は一つ以上の導電材料を混合することで形成され、他の場合では、導電層は一つの導電材料を別の導電材料上に堆積することで準備され得る。
【0024】
導電層は、例えばスクリーン印刷、蒸着、インクジェット印刷等の従来の技法を用いて、絶縁層に導電材料を堆積することで形成される。
【0025】
電気化学セルは、少なくとも一つの追加的な導電層と、各追加的な導電層に対する絶縁層とを更に含むことができる。追加的な導電層の一つは、対向電極を形成してもよい。前述の通り、追加的な導電層は、作用電極として機能してもよい。作用電極として機能するこれら追加的な導電層により、作用電極/対向電極の対として機能する二つ以上の導電層に異なる電位を印加することで、同じサンプルに対して異なる測定を行うことができる。代替的には、作用電極として機能する各導電層に同じ電位が印加されてもよく、同じ測定が同じサンプルに対して数回記録される。この手順は、行われた測定におけるエラーを排除または検出することを補助する。
【0026】
追加的な作用電極は、一つ以上の以下の機能について電気化学セルで使用され得る。
1)作用電極の表面積を増大することで、第1の作用電極と同じ検体を決定するための第2の作用電極として用いる。
2)第1の作用電極と同じ検体を決定するための第2の作用電極として用いることで、測定の完全性(第1の測定に対するカウンタチェックとして)を確認する。
3)液体サンプル中で第1の検体とは異なる第2の検体を測定するための、検体に対する第2のバイオセンサとして用いる。
4)液体サンプル中の妨害剤を補償するために、バックグランド信号を測定する手段として用いる。
【0027】
追加的な作用電極は、第1の電極と同じ二重目的基準/対向電極を用いてもよく、または、独自の二重目的基準/対向電極を有してもよい。
【0028】
絶縁層は、短絡を防止するために二つの導電層間を離間させる。絶縁層の材料は、典型的には、例えばアクリラート、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリマーである。ポリカーボネートおよび他のプラスチック並びにセラミックスは、絶縁層の材料としても好適である。絶縁層は、ポリマーの溶液から溶媒を蒸発させることで形成され得る。塗布された後に硬化する液体、例えば、ワニスが用いられてもよい。代替的には、架橋可能なポリマー溶液が使用され得る。これらは、熱または電磁放射線に曝すことで、あるいは、二成分の架橋可能システムの活性部分を一緒に混合することで架橋される。絶縁層を形成するために誘電体インクが用いられてもよい。絶縁層の好ましい材料は、登録商標「POLYPLAST」(Sericol Ltd.,Broadstairs,Kent,UK)なる名称で市販されている。絶縁層は、電圧差(mV単位)または電流(アンペア)等の電気化学応答を測定する装置に電気化学セルが接続され得るよう電気接触部を設けるために導電層の一部分を露出させたままで、導電層の所与の領域に堆積され得る。絶縁層は、例えばスクリーン印刷、ラミネート、または、他の従来の化学的堆積技法など、当技術分野におけるどの方法によって堆積されてもよい。好ましい絶縁層は、Sericard(登録商標)(Sericol Ltd.,Broadstairs,Kent,UK)と指定された予め形成されたポリマー懸濁液、または塗布された後に重合されるモノマー溶液を用いて形成され得る。
【0029】
一方は電気化学セルの作用電極として機能し、他方は基準電極として機能する、少なくとも二つの導電層が必要である。二つの導電層だけが使用される場合、一方の導電層は作用電極として機能し、他方の導電層は二重目的基準/対向電極として機能する。電気化学セルは、対向電極として機能する三つ目の導電層を含んでもよい。複数の作用電極は、追加的な導電層を利用して定められる。これらの作用電極は、所与のサンプル中の単一の検体または複数の検体の有無または量、あるいは、有無と量の両方を測定するために使用される。
【0030】
作用電極として機能する導電層は、炭素、パラジウム、金、または、白金等によって、例えば導電性インクの形態で形成されることが好ましい。導電性のインクは、白金または黒鉛、または、白金と黒鉛の両方の追加的な材料を含んでもよい。二つ以上の層が作用電極を形成するために使用されてもよく、層は、同じまたは異なる材料よりなる。
【0031】
二重目的基準/対向電極、基準電極、または、対向電極として機能する導電層は、炭素、パラジウム、金または白金、Ag/AgClなどによって、例えば導電性インクの形態で形成されることが好ましい。導電性インクは、例えば白金または黒鉛、または、白金と黒鉛の両方の追加的な材料を含んでもよい。二つ以上の層が二重目的基準/対向電極を形成するために使用されてもよく、層は、同じまたは異なる材料よりなる。三つの導電層が使用される場合、一つの導電層が作用電極として機能し、一つの導電層が基準電極として機能し、一つの導電層が対向電極として機能する。
【0032】
電気化学セル中の導電層の数は、電気化学セル中の電極の数を決定する。これら導電層は、例えばグルコース、ケトン体、乳酸塩などのサンプル中の一つ以上の検体に特有の試薬を含むか、あるいは、例えばグルコース、ケトン体、ラクテートなどのサンプル中の一つ以上の検体に特有の試薬を含む層に隣接していることが好ましい。一つ以上の導電層は、サンプル中に存在し得る電気活性種からの妨害を決定するために使用され得る。導電層の少なくとも一つは、基準電極として機能しなくてはならない。任意には、電気化学セルは、対向電極として機能する導電層を含むことができる。
【0033】
本発明の方法では、液体サンプルは、全血のサンプルでもよい。三つの電極を用いることを推奨する他の電気化学セルでは、液体サンプルは、赤血球または他の血液細胞を除去するためにフィルタ処理されたあるいは処置された全血でもよい。
【0034】
本発明の電気化学セルは様々な方法で準備される。一実施形態では、絶縁支持部は、スクリーン印刷またはスパッタリングといった他の堆積技術を用いて、炭素または導電金属などの導電材料でコーティングされ、第1の導電層を形成する。次に、試薬が、例えばドロップコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの任意の塗布方法または、例えば化学結合グループを用いて導電材料の層への試薬の化学結合で、導電層上に塗布される。例えば酵素またはメディエータなどの反応性成分が存在した場合には、例えばピロールまたはアクリルアミドなどのモノマーの原位置での重合により試薬を塗布してもよく、それにより、ポリマーマトリックスにおいて反応性成分の物理的エントラップメントを結果として生ずる。試薬は、通路が形成されるべき、電気化学セルの領域に位置する。試薬層の領域は通路のアパーチャの領域よりも大きい。絶縁層は、測定装置と着脱可能に接触するよう第1の導電層の一部が露出されるようにして、第1の導電層および試薬層上に堆積される。第2の導電層は、第2の導電層の接触領域、即ち、二重目的基準/対向電極を露出するようにして絶縁層上に加えられる(applied)。絶縁層は、接触部を露出したまま第2の導電層上に加えられる。通路は、絶縁層および導電層、更に、所望であれば絶縁基板の中を切ることで形成される。
【0035】
通路は、パンチング、ダイカット、ミリング、掘削、削磨、レーザカット等を含むがこれらに制限されない任意の方法で、層を切って形成される。当業者は、層の物理的特性および電気化学セルの予想される使用に基づいて適当な方法を容易に選ぶことができる。パンチングについて、単一の通路が電気化学セル組立体の上方から、または、電気化学セル組立体の下方からパンチングされ得る。重なり合う二重通路は、電気化学セル組立体の上方から、または、電気化学セル組立体の下方からパンチングされ得る。紫外線を用いるレーザカットは、他の方法と比べてより高い歩留まりを提供する。通路を形成する際に層が受ける機械的圧力が、二つの隣接する導電層間で導電性を生じないことを確実にしなくてはならない。通路を形成する物理的ステップに後続して、電極の表面積を増大させるパターンを作成するよう化学的エッチング処理が行われることが予想される。
【0036】
代替的な実施形態では、銀および塩化銀の混合物を含む層は、絶縁基板の一つの主表面に印刷される。絶縁基板は、ポリ塩化ビニル(PVC)、Melinex(登録商標)ポリエステル(E.I.duPont de Nemours,Inc.)であることが好ましい。当該層は、絶縁層で覆われているが、測定装置との着脱可能な接続のために接触領域を残している。絶縁層は、Sericard(登録商標)材料より作られることが好ましい。絶縁基板の他方の主表面は、第1の導電層で被覆されている。第1の導電層は、炭素または導電金属を含むことが好ましい。被覆は、スクリーン印刷、または、スパッタリングのような別の技法によって行われる。試薬は、試薬が堆積される領域の寸法が通路のアパーチャの寸法よりも大きくなるよう通路が形成されるべき場所に、例えばドロップコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の任意の堆積方法によって、第1の導電層上に印刷される。続いて、絶縁層が試薬層および第1の導電層上を覆うように加えられ、測定装置との着脱可能な接続のために接触領域を露出させる。通路は、絶縁層、絶縁基板、および、導電層、さらには、試薬を通過するようにして形成される。
【0037】
本発明の電気化学セルは、光重合材料が導電層に塗布され、最終的なアーティクルで保持されるべき光重合材料の一部分が電磁照射線の適切な印加により硬化される、光重合技術によって準備される。所望の数の導電層および光重合層が加えられた後、光重合層の未硬化部分は適当な溶媒で洗浄することで除去される。
【0038】
層の寸法パラメータは、基板または隣接する層に層を加える方法によって影響を与えられる。例えば、スクリーン印刷は、スクリーンメッシュ、および、塗布される材料の物理的特性に依存して、約2μmから約100μmの厚さを、典型的には提供する。スパッタリングは、約10nmから約10μmの厚さを典型的には提供する。ラミネーションは、約25μmから約6mmの厚さを提供する。絶縁層および導電層は、機械力の下で過剰に圧縮されることを回避するために、十分な剛性を有する材料より形成されなくてはならず、この過剰な圧縮は電極の厚さにばらつきを与え、短絡を生ずる可能性を高める。
【0039】
試薬を含む層における、または、作用電極として機能する導電層の材料に含まれる試薬として使用され得る材料は、グルコース酸化酵素、グルコースデヒドロゲナーゼ、ベータヒドロキシブチラートデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ等の酵素、および例えば、必要であればニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)のような補酵素を含む。試薬を含む層は、酸化−還元メディエータを更に含んでもよい。
【0040】
電気化学セルの試薬は、試薬層を介して電気化学セルに導入される必要はない。試薬は、通路が形成された後に通路の壁に沿って塗布されてもよい。試薬は、多孔性材料に供給され、多孔性材料は通路の壁によって囲まれる空洞を充填するように位置決めされる。
【0041】
使用される場合、電気化学セルで必要とされる試薬の量は重要でなく、所望の性能のために使用されるべき試薬の正確な量は、当業者によって容易に決定される。
【0042】
液体サンプルを受け入れる通路は、電気化学セルの様々な層に形成され得る。通路の壁の一部分を形成する導電層の露出されたエッジは、電気化学セルの電極を定める。通路の断面は、例えば円形、楕円形、多角形等、どの形状でもよい。形状は、規則的、例えば、正三角形、正方形、または、不規則的、例えば、異なる長さの辺を有する多角形でもよい。更に、通路の断面の形状は通路の長さに沿って変化してもよい。更に、各層は異なる形状のアパーチャを有してもよい。通路に露出される電極の表面積が、所望の信号対ノイズ比を得るために最適化されることが好ましい。一般的に、表面積が高いほど、信号対ノイズ比がよくなる。通路は、通路が簡単に液体で充填されるようベントとして機能する少なくとも一つの開口部を含むことが好ましい。開口部は、絶縁基板に形成されることが好ましい。このような開口部が設けられていない場合、サンプルは、アパーチャに流れた際に通路に入れないか、辛うじて通路に入る。開口部は、アパーチャよりも小さくてもよいが、電気化学セルから空気を逃がすことを可能にするのに十分に大きくなくてはならない。
【0043】
幾つかの実施形態では、通路は形成される必要がない。このタイプの実施形態では、電気化学セルの端部は液体サンプルと接触して配置される。液体サンプルと接触する電気化学セルの端部は、導電層のエッジを露出させていることを特徴とする。
【0044】
液体サンプル中の電気活性種がどの試薬も必要とすることなく測定される検定法では、作用電極を構成する導電層は、その上にどの試薬も堆積される必要がない。周知の通り、電気化学測定は、基準電極に接続される作用電極を用いることで実施される。測定は、電位の変化(電位差測定法)または電流の生成(電流測定)を伴ってもよい。電極自体は検体に対して特異性を発揮しない。特異性は、検体の混合物における複数の検体の一つとだけ反応する酵素(バイオセンサの場合)を有することで、または、混合物における複数の検体の一つだけをフィルタ処理装置に選択的に通過させるフィルタ処理技法を用いることで、電極に与えられる。脳のドーパミンのようなある検体の電気化学測定において、バイオセンサの「ダミー」電極の妨害剤の決定は、電気化学測定が作用電極の表面の試薬をどれも使用することなく行われる例の一つである。例えば米国特許第5,628,890号明細書を参照されたい。
【0045】
(動作)
電気化学セルに液体サンプルを導入する任意の方法が使用され得る。毛細管引力によってサンプルを摂取するのに好適な通路の寸法は特定され得る。例えば重力、化学的に補助されるウィッキング、または、真空による吸引等の、他の方法が使用されてもよい。ある適用法では、通路は、ウィッキングによるサンプルの摂取を可能にする多孔性材料で充填されてもよい。
【0046】
通路のアパーチャは、被験者から液状の生体サンプルを抽出する装置と電気化学セルが一体化されることを可能にするよう設計される。例えば、ランセットのような機械的装置、または、レーザのような光学装置は、人間の体(皮膚)に人工開口部を形成するために、通路のアパーチャを通ってサンプル抽出サイトに方向付けられる。人工開口部から出現する液体サンプルは、例えば真空により供給される吸引等のような追加的な機械力、または、例えば重力のような自然に提供される力のいずれかによって、電気化学セルに移動される。本発明の電気化学セルを一体化するのに好適な装置は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,093,156号明細書に記載される。
【0047】
電気化学セルは、フローセルとして使用されてもよく、液体は、対流、拡散、または、浸透の下で通路の長さについて横切る。サンプルからのより大きい種が通路のアパーチャの寸法に基づいて除外される。大型の種の代表的な例は、細胞、プロテイン、および、皮膚を含むがこれらに制限されない。
【0048】
所与の通路の容積は、電気化学セルの当該通路によって必要とされる液体サンプルの容積を特定する。所与の通路の全体的な容積は、当該通路の各セクションの容積の合計に等しい。電気化学セルにおける所与の通路を充填するに必要な液体の容積は、個々の層の累積厚さと、当該通路の様々なセクションの面積によって決定される。どの所与の通路も1マイクロリットルを超える容積を有さないことが好ましい。
【0049】
組立体において複数の電気化学セルを実際に形成するよう、電気化学セルに一つ以上の通路が形成され得る。これらの状況において、複数の通路は、検定の感度を高めるよう一つの液体サンプルで複数の同一の検定について使用され、代替的には、複数の通路は、異なる液体サンプルで同じ検体に対して複数の同一の検定を実施する、あるいは、単一の液体サンプルで複数の検体に対して検定を実施するよう使用され得る。通路の場所は、適用法に依存して、要求されるサンプルの容積を最小化する、または、クロストークを最小化するよう特定される。通路がより離間されると、クロストークは減少される。通路が近接されると、より小容積のサンプルが必要となる。
【0050】
本発明における使用に好適な測定装置は、作用電極と、二重目的基準/対向電極とを有する電気化学セルを収容することができる、全ての市販の検体モニタを含む。代替的には、作用電極、基準電極、および、対向電極を有する電気化学セルを収容することができる、検体モニタが使用されてもよい。このような検体モニタは、例えばグルコースおよびケトン体のような検体をモニタリングするために使用される。一般的に、このようなモニタは、作用電極、基準電極、および、対向電極と電気接続されている電源を有さなくてはならない。モニタは、還元されたメディエータの電気化学酸化を発生するに十分な大きさの、作用電極と基準電極との間の電位差を供給できなくてはならない。モニタは、作用電極から対向電極への電子の流れを容易にするに十分な大きさの、基準電極と対向電極との間の電位差を供給できなくてはならない。更に、モニタは、作用電極における還元されたメディエータの酸化によって生成される電流を測定できなくてはならない。
【0051】
本発明の電気化学セルを用いる測定では、定電圧が作用電極に印加され、電流が時間の関数として測定される。この技法は、クロノアンペロメトリーとして知られている。印加される電圧は、還元されたメディエータを酸化するのに必要な電圧以上でなくてはならない。従って、必要とされる最小電圧は、メディエータの関数である。
【0052】
サンプルは、溶液抵抗に対する責任を担う。溶液抵抗は、電子の流れを妨げる。測定に対する溶液抵抗の影響は、本発明によって最小化される。当然のことながら、電極を近接して配置することは、溶液抵抗が電極間の間隔の関数であるため、溶液抵抗の影響を最小化する。電流が異なる電極中を流れることができるため、作用電極に対する溶液抵抗の影響が最小化され得る。
【0053】
電流測定では、電流は、コットレル式に従って時間とともに減衰される。
【数1】

このとき、
=時間tにおける電流、
n=電子の数
F=ファラデー定数
A=電極の面積
=電気化学活性種のバルク濃度
=電気化学活性種の拡散係数である。
したがって、i1/2は定数である。
【0054】
電流測定において、定電圧が基準電極に対して作用電極で印加され、作用電極と対向電極との間の電流が測定される。電気化学セルの応答は、接触(グルコース応答成分)と、ファラデー(溶液抵抗成分)といった二つの成分を有する。溶液の抵抗が最小化された場合、どの所与の時間における電気化学セルの応答も、溶液抵抗成分と比較して実質的により高いグルコース応答成分を有する。したがって、1秒といった短い検定時間でも電気化学セルの応答からグルコースの濃度との良好な相関を得ることができる。溶液の抵抗が高い場合、作用電極が受ける電圧は印加される電圧から著しく遅延される。この遅延は、三電極システムと比べて、二電極システムの場合に著しく高い。二電極システムの場合、作用電極と基準電極との間のiRの値は、三電極システムにおける値よりも著しく高くなる。三電極システムでは、作用電極と基準電極との間で電流が流れないため、電圧降下がより低くなる。したがって、一旦充電電流(ファラデー電流)が最小に減衰されると(二ミリ秒から三ミリ秒内)、観察される電流は全て接触電流となる。二電極システムにおいて、充電電流は、作用電極における電圧が安定した状態(印加された電圧に到達する)に達するまで減少されない。したがって、二電極システムでは、応答プロフィールの減衰が遅い。
【0055】
電気化学セルの通路は、任意の多数の方法によって液体サンプルで充填される。充填は、例えば毛細管引力、化学的に補助されるウィッキング、または、真空等によって行われる。代替的には、液体サンプルは、通路を流れることができる。電気化学セルを充填する態様は、適用法、例えば、センサの単一使用またはフローインジェクション分析における連続測定に依存する。
【0056】
本明細書に記載の本発明の利点は、小容積の液体サンプル、改善された電流分布、および、複数の作用電極を使用する能力を含む。
【0057】
本発明の電気化学セルによって提供される恩恵は、小容積の生物学的サンプルを用いる能力、毛細管引力または重力作用により電気化学セルを充填する能力、通路のアパーチャの寸法が十分に小さい場合に大型の種を排除する能力、異なる電気活性種の測定を含む、複数の測定を行う能力を含む。本発明の電気化学セルは、幾つかの方法で、例えば、セルを皮膚に対して配置したときに、切開装置に電気化学セルの通路を横切らせることで皮膚に開口部を形成し、形成された開口部の部位から直接液体サンプルが流れるときに、電気化学セルが液体サンプルで充填されることを可能にする装置等と、使用され得る。代替的には、電気化学セルは、フローセルの形態で使用されてもよく、このとき、液体サンプルは、対流、拡散、または、浸透等の、流体移動技術の下で通路を横切る。
【0058】
以下の非制限的な実施例は、本発明の電気化学セルを更に例示する。
【0059】
(実施例1)
本実施例は、グルコースの決定に対する多層電気化学セルを例示する。導電層が、絶縁基板(ポリ塩化ビニル、約450マイクロメートルの厚さ)の一つの主表面に形成された。導電層(炭素、約15μmの厚さ)が、スクリーン印刷を用いてPVC基板上に堆積された。トリミングされた後の個々のセルの寸法は幅が5mmで長さが40mmであった。しかしながら、実際のケースでは、複数のセルが一枚のカードで準備され、上述した寸法を有する個々のセルに切断された。ブドウ糖酸化酵素、フェロセン、および、炭素(BESバッファ、Clerol(登録商標)消泡剤(Henkel−Nopco,Leeds,UK)、および、アルギン酸塩結合剤を含む)よりなる試薬は、炭素の導電層の一部分上に約20μmのコーティングの厚さにスクリーン印刷された。Sericard(登録商標)絶縁層(約20μmの厚さ)は、導電層の全領域上にスクリーン印刷され、電気接触部として機能するよう、絶縁基板の主表面の一方の端部の近傍にある導電層の小さい領域を露出させた。銀と塩化銀との混合物の層(約20μmの厚さ)が絶縁層上に印刷され、第2の導電層が形成された。第2のSericard(登録商標)絶縁層(約20μmの厚さ)は、電気接触部として機能するよう銀/塩化銀の層の一部分が露出されたままとなるように、銀/塩化銀の導電層上に印刷された。二つの導電層の露出された部分は、測定装置に対する電気化学セルの着脱可能な接続のために使用された。測定装置は、電気化学セルに電位を与え、発生した電流を測定することができる、自家製のポテンシオスタットであった。このような装置は、当業者によって市販のポテンシオスタットから容易に構成され得る。3mmの直径を有する円筒形の通路は、試薬が堆積された領域よりも通路の直径が小さくなるように、試薬が堆積された領域に機械的パンチングによって形成された。試薬層が堆積された炭素の導電層は、作用電極を形成し、銀/塩化銀を含む導電層は電気化学セルの二重目的基準/対向電極を形成する。
【0060】
(実施例2)
本実施例は、グルコースの定量に対する多層電気化学セルを例示する。導電層が、絶縁基板の両方の主表面に形成された。炭素、ブドウ糖酸化酵素、および、フェロセンの混合物を含む導電層は、Melinex(登録商標)絶縁基板の表面を略覆い、測定装置に対する着脱可能な接続のための電気接触領域を形成するよう、Melinex(登録商標)絶縁基板の第1の主表面の一方の端部上の一部分を露出させるようにして、スクリーン印刷を用いてMelinex(登録商標)絶縁基板の第1の主表面に加えられた。絶縁層は、測定装置に対する着脱可能な接続のために電気接触領域を形成するよう、絶縁基板の露出された部分に隣接する領域を露出して残すようにして、スクリーン印刷を用いて導電層上に加えられた。銀と塩化銀との混合物を含む層は、炭素を含む導電層と同様のパターンでスクリーン印刷を用いてMelinex(登録商標)絶縁基板の第2の主表面に加えられた。接触領域と直ぐ反対側の絶縁基板の主表面の部分は、銀と塩化銀との混合物を含む層によって覆われていない。絶縁層は、印刷された領域に隣接し、導電層に印刷されていない領域と対向する領域が露出されたままとなるようにして、銀/塩化銀を含む層にスクリーン印刷を用いて加えられた。露出された領域により、電気化学セルは、測定装置に挿入されたときに測定装置と電気的に接触することができる。通路は、機械的パンチングを用いて4mmの直径を有する孔を全ての層にパンチングすることで、電気化学セル組立体に形成された。通路に露出された導電層の部分は、電気化学セルの電極を形成する。
【0061】
本実施例の電気化学セルにおける構成要素の寸法は、実施例1で説明した電気化学セルにおける構成要素の寸法と略同じである。
【0062】
本発明の様々な変更および変化が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかとなり、本発明は、開示した例示的な実施形態に不当に制限されることがないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の電気化学セルの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1の電気化学セルの線2−2について取られた側面図である。
【図3】図2の電気化学セルの線3−3について取られた端面図である。
【図4】図1の電気化学セルの平面図である。
【図5】本発明の電気化学セルの一実施形態の分解斜視図である。
【図6】図5の電気化学セルの線6−6について取られた側面図である。
【図7】図6の電気化学セルの線7−7について取られた端面図である。
【図8】図5の電気化学セルの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、少なくとも二つの導電層と、少なくとも二つの絶縁層とを備える、電気化学セルであって、
前記少なくとも二つの導電層は、前記絶縁基板または少なくとも一方の前記絶縁層によって離間されている、電気化学セル。
【請求項2】
前記電気化学セルは、二つの導電層と、二つの絶縁層とを備える、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
三つ目の導電層と、三つ目の絶縁層とを更に含む、請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
少なくとも一つの導電層が作用電極として機能する、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記少なくとも二つの導電層は作用電極として機能する、請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記作用電極は、同じ検体の有無または濃度を決定することができる、請求項5に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記作用電極は、異なる検体の有無または濃度を決定することができる、請求項5に記載の電気化学セル。
【請求項8】
少なくとも一つの導電層が対向電極として機能する、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項9】
少なくとも一つの導電層が基準電極として機能する、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項10】
少なくとも一つの導電層が二重目的基準/対向電極として機能する、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項11】
導電層および絶縁層それぞれに形成される少なくとも一つの通路を更に有し、通路は、液体サンプルを受容することができる、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記少なくとも一つの通路は1マイクロリットルを超えない容積を有する、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
前記通路は規則的な形状を有する、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項14】
前記通路は不規則的な形状を有する、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記電気化学セルは、少なくとも一つの導電層と接触する少なくとも一つの試薬を更に含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項16】
前記少なくとも一つの試薬は酵素である、請求項15に記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記少なくとも一つの試薬は前記少なくとも一つの導電層に含まれている、請求項15に記載の電気化学セル。
【請求項18】
各導電層の厚さが100マイクロメートルを超えない、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項19】
各絶縁層の厚さが100マイクロメートルを超えない、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項20】
前記少なくとも二つの導電層は前記絶縁基板によって離間される、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項21】
前記少なくとも二つの導電層は少なくとも一つの絶縁層によって離間される、請求項1に記載の電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−507710(P2007−507710A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533942(P2006−533942)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/030834
【国際公開番号】WO2005/033688
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES