説明

電気化学センサーに用いる電極システム

本発明は改良された分析物の電気化学測定システム及び方法に係るものである。好ましい実施形態では、分析物または前記分析物との酵素反応の生成物を測定するための分析物測定電極(16a)及び酸素を生成するよう、及び/または電気化学的な妨害物質を還元するよう構成された補助電極を備えた電極システムが用いられる。前記補助電極(36)による酸素生成は前記酵素(38)及び/または対向電極に対する酸素の供給力を大きく改善する。それによって、電気化学センサーが虚血の状況下であっても機能するようにする。前記補助電極による(36)による妨害物質の変性は分析物測定電極上でそれらを実質的に非反応性にし、結果として電気化学的妨害物質が原因となる前記分析物の信号をより正確にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学センサーの性能を改良するためのシステム及び方法に広く係るものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学センサーは化学及び医学において、生物学的分析物の存在や濃度を測定するために有用である。そのようなセンサーは、例えば糖尿病患者におけるグルコースの監視や重症者管理における乳酸の監視に有用である。
【0003】
(真性)糖尿病は、すい臓が十分なインシュリンを作ることができない(I型またはインシュリン依存型)、及び/またはインシュリンが有効なものではない(II型または非インシュリン依存型)という疾患である。糖尿の状態では、患者は高い血糖値を経験するが、これは細い血管の悪化と結びついて多くの生理的な障害の原因となる(腎臓不全、肌の潰瘍、または眼の硝子液への出血)。低血糖反応(低血糖)は、インシュリンの不注意な過剰摂取、またはインシュリンの通常の摂取、または極端な運動と同時のグルコース低下剤摂取、または食物摂取が不十分であることにより引き起こされる。
【0004】
通常、糖尿病の人は血中グルコースの自己監視モニター(SMBG)を持ち歩いており、それは一般的には不愉快な、指からの血液採取法(finger pricking methods)を含むものである。快適さや利便性に欠けているため、糖尿病の人は通常一日2から4回の本人のグルコースレベルを測るにすぎないと思われる。不幸なことに、これらの時間間隔が広くばらついているため、気づくのが大変遅くなる可能性があり、時として高血糖症または低血糖症といった危険な副作用を招くこともある。従来の方法に基づいた場合、糖尿病の人がちょうど良いタイミングにSMBG値を測定することが考えにくいばかりではなく、彼らの血糖値が上がっているか(より高く)、下がっているか(より低く)を知ることもない。
【特許文献1】米国特許出願公開第10/885,476号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第10/838,912号明細書
【特許文献3】米国特許第6,001,067号明細書
【特許文献4】米国特許第6,702,857号明細書
【特許文献5】米国特許第6,212,416号明細書
【特許文献6】米国特許第6,119,028号明細書
【特許文献7】米国特許第6,400,974号明細書
【特許文献8】米国特許第6,595,919号明細書
【特許文献9】米国特許第6,141,573号明細書
【特許文献10】米国特許第6,122,536号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1153571号明細書
【特許文献12】米国特許第6,512,939号明細書
【特許文献13】米国特許第5,605,152号明細書
【特許文献14】米国特許第4,431,004号明細書
【特許文献15】米国特許第4,703,756号明細書
【特許文献16】米国特許第6,514,718号明細書
【特許文献17】米国特許第5,985,129号明細書
【特許文献18】国際公開第2004/021877号パンフレット
【特許文献19】米国特許第5,494,562号明細書
【特許文献20】米国特許第6,120,676号明細書
【特許文献21】米国特許第6,542,765号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第10/838,912号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第10/789,359号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第10/633,367号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2003/0032874号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第10/838,912号明細書
【特許文献27】米国特許第6,579,690号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第10/842,716号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第10/838,912号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第10/789,359号明細書
【特許文献31】米国特許出願公開第10/685,636号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第10/648,849号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第10/646,333号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第10/647,065号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第10/633,367号明細書
【特許文献36】米国特許第6,702,857号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第09/916,711号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第09/447,227号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第10/153,356号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第09/489,588号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第09/636,369号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第09/916,858号明細書
【特許文献43】米国特許第6,001,067号明細書
【特許文献44】米国特許第4,994,167号明細書
【特許文献45】米国特許第4,757,022号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第60/489,615号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第60/490,010号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第60/490,009号明細書
【特許文献49】米国特許出願公開第60/490,007号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、血糖値を連続的に検出及び/または定量化するための様々な経皮的及び埋設可能な電気化学センサーが開発されている。多くの埋設可能なグルコースセンサーは体内で複雑な状況下にあり、単に短期間のまたは不正確な血糖値の動きを与えるのみである。同様に、経皮的なセンサーは長期にわたって連続的に正確に動作することにおいて、及び血糖値を報告することにおいて問題を有する。埋設可能な装置から血糖値のデータを得るため、及び解析のため血糖値の傾向を過去に遡って確定するための努力がされてきた;しかし、これらの努力は、リアルタイムの血糖値の情報を測定するという点では糖尿病患者の支援にはならなかった。経皮的な装置から将来のデータ解析のために血糖のデータを得るための努力もまた行われてきたが、同様の問題が起こった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
過去の技術と比較して好ましい実施形態のセンサーは酸素を有効に発生し、センサーを十分な酸素レベルで、周囲の環境の酸素濃度とは独立に機能させる。別の好ましい実施形態としては、電気化学的妨害物質を変性するシステム及び方法が提供されている。
【0007】
第1の実施形態において、流体中の分析物の存在または濃度を決定する電気化学センサーが提供され、前記センサーは膜システムを含み、前記膜システムは酵素を含むものであって、前記酵素は前記分析物と反応し;作用電極を含む電気活性表面と、導電性の材料を含み且つ前記酵素と前記分析物の反応生成物を測定するよう構成された作用電極と;且つ導電材料を含み、且つ酸素を発生するよう構成された補助電極であって、前記補助電極は発生した前記酸素が酵素または電極表面まで拡散するように配置された補助電極、とを含む。
【0008】
第1の他の実施形態としては、前記補助電極は導電性金属、導電性ポリマー、及び導電性金属と導電性ポリマーのブレンドからなるグループから選択された導電材料を含む。
【0009】
第1の他の実施形態としては、前記補助電極はメッシュ、グリッド、多数の一定の間隔を有するワイヤーからなるグループから選択された形態を含む。
【0010】
第1の他の実施形態としては、前記補助電極はポリマーを含むものであって、前記ポリマーは前記補助電極の表面に位置する。
【0011】
第1の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース不透過性であるが酸素透過性である材料を含む。
【0012】
第1の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース不透過性であるが酸素透過性及び妨害物質透過性の材料を含む。
【0013】
第1の他の実施形態としては、前記ポリマーは、グルコースを遮断し且つ酸素、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及びアセトアミノフェンを、前記ポリマー自身を通過させ輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む。
【0014】
第1の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース及び酸素透過性の材料を含む。
【0015】
第1の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース、酸素及び妨害物質透過性の材料を含む。
【0016】
第1の他の実施形態としては、前記ポリマーは、酸素、グルコース、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及びアセトアミノフェンを、前記ポリマー自身を通過させ輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む。
【0017】
第1の他の実施形態としては、前記補助電極が少なくとも約+0.6Vの電位に設定されるよう構成される。
【0018】
第1の他の実施形態としては、前記補助電極が電気化学的妨害物質を電気化学的に変性し、前記作用電極において前記電気化学的妨害物質を実質的に電気化学的非反応性のものにするよう構成される。
【0019】
第1の他の実施形態としては、前記補助電極が少なくとも約+0.1Vの電位に設定されるよう構成される。
【0020】
第2の実施形態としては、流体中の分析物の存在または濃度を確定する電気化学センサーが提供され、前記センサーは膜システムを含み、前記膜システムは酵素を含むものであって、前記酵素は前記分析物と反応し;作用電極を含む電気活性な表面、導電性材料を含み前記酵素と前記分析物の反応生成物を測定するよう構成された作用電極;導電性材料を含み且つ前記作用電極において前記電気化学的妨害物質が実質的に電気化学的非反応性のものとなるよう電気化学的妨害物質を変性するために構成された前記補助電極を含む。
【0021】
第2の他の実施形態としては、前記補助電極は導電性金属、導電性ポリマー、及び導電性金属と導電性ポリマーのブレンドからなるグループから選択された導電材料を含む。
【0022】
第2の他の実施形態としては、前記補助電極はメッシュ、グリッド、多数の一定の間隔を有するワイヤーからなるグループから選択された形態を含む。
【0023】
第2の他の実施形態としては、前記補助電極はポリマーを含むものであって、前記ポリマーは前記補助電極の表面に位置する。
【0024】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーは電気化学的妨害物質透過性の材料を含む。
【0025】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース不透過性であるが酸素透過性である材料を含む。
【0026】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース不透過性であるが、酸素及び妨害物質透過性の材料を含む。
【0027】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーは、グルコースを遮断し且つ酸素、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及びアセトアミノフェンを、前記ポリマー自身を通過させ輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む。
【0028】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース及び酸素透過性の材料を含む。
【0029】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーはグルコース、酸素及び妨害物質透過性の材料を含む。
【0030】
第2の他の実施形態としては、前記ポリマーは、酸素、グルコース、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及びアセトアミノフェンを、前記ポリマー自身を通過させ輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む。
【0031】
第2の他の実施形態としては、前記補助電極が少なくとも約+0.1Vの電位に設定されるよう構成される。
【0032】
第2の他の実施形態としては、前記補助電極は酸素を発生するよう構成される。
【0033】
第2の他の実施形態としては、前記補助電極は少なくとも約+0.6Vの電位に設定されるよう構成される。
【0034】
第3の他の実施形態としては、電気化学的センサーが提供され、分析物を測定するよう構成された電気活性表面と;及び、前記電気活性な表面において前記電気化学的妨害物質が実質的に非反応性にされるよう電気化学的妨害物質を変性するために構成された、妨害物質変性補助電極とを含む。
【0035】
第3の他の実施形態としては、前記妨害物質変性補助電極は導電性金属、導電性ポリマー、及び導電性金属と導電性ポリマーのブレンドからなるグループから選択される導電性材料を含む。
【0036】
第3の他の実施形態としては、前記妨害物質変性補助電極はメッシュ、グリッド、多数の一定の間隔を有するワイヤーからなるグループから選択された形態を含む。
【0037】
第3の他の実施形態としては、前記妨害物質変性補助電極はポリマーを含むものであって、ポリマーは前記妨害物質変性補助電極の表面に位置する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
前記好ましい実施形態の詳細な説明
以下の記述及び例示は開示された発明の実施形態を詳細に説明するものである。当業者は、その範囲の中で行われる本発明の様々な変更及び修正があることを認めるであろう。従って、実施形態の例示に関する記載は、本発明の範囲を制限すると考えられるべきではない。
【0039】
定義
実施形態の理解を容易にするために、以下にいくつかの言葉を定義する。
【0040】
ここで使われる“分析物”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、生物学的流体中(例えば、血液、組織液、脳脊髄液、リンパ液または尿)の分析可能な物質または化学成分を参照するための用語を含むものである。分析物は自然に発生する物質、人工的な物質、新陳代謝に必要な物質、及び/または反応生成物を含んでいてもよい。ある実施形態では、前記検出領域、装置、及び方法による測定の対象となる分析物はグルコースである。しかしながら、他の分析物についても同様に考えられていて、アカルボキシプロトロンビン(acarboxyprothrombin)に制限されず、以下を含む;アシルカルニチン、アデニンリボースリン酸転移酵素(adenine phosphoribosyl transferase);アデノシン デアミナーゼ(adenosine deaminase);アルブミン(albumin);アルファ−フェトプロテイン(alpha−fetoprotein);アミノ酸プロファイル(amino acid profiles)(アルギニン(クレブズ回路)、ヒスチジン/ウロカニン酸、ホモシステイン、フェニルアラニン/チロシン、トリプトファン);アンドレノステンジオン(andrenostenedione);アンチピリン(antipyrine);アラビニトール エナンチオマー(arabinitol enantiomers);アルギナーゼ(arginase);ベンゾイルエクゴニン(benzoylecgonine);ビオチニダーゼ(biotinidase);ビオプテリン(biopterin);C−反応性蛋白質(c−reactive protein);カルニチン(carnitine);カルノシナーゼ(carnosinase);CD4;セルロプラスミン(ceruloplasmin);ケノデオキシコール酸(chenodeoxycholic acid);クロロキン(chloroquine);コレステロール(cholesterol);コリンエステラーゼ(cholinesterase);共役型1−βヒドロキシコール酸(conjugated 1−beta hydroxy−cholic acid);コルチゾール(cortisol);クレアチンキナーゼ(creatine kinase);クレアチンキナーゼ MM イソ酵素(creatine kinase MM isoenzyme);シクロスポリン A(cyclosporin A);d−ペニシラミン(d−penicillamine);デエチルクロロキン(deethylchloroquine);デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(dehydroepiandrosterone sulfate;DNA(アセチレーター多形(acetylator polymorphism)、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase)、α1―アンチトリプシン(alpha 1−antitrypsin)、嚢胞性繊維症(cystic fibrosis)、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー(Duchenne/Becker muscular dystrophy)、グルコース 6−フォスフェート デヒドロゲナーゼ(glucose− 6−phosphate dehydrogenase)、ヘモグロビン A(hemoglobin A)、ヘモグロビン S(hemoglobin S)、ヘモグロビンC(hemoglobin C)、ヘモグロビンD(hemoglobin D)、ヘモグロビンE(hemoglobin E)、ヘモグロビンF(hemoglobin F)、D−パンジャブ(D−Punjab)、β―タラセミア(beta−thalassemia)、ヘパティティス B ウィルス(hepatitis B virus)、HCMV、HIV−1、HTLV−1,レーバー遺伝性視神経障害(Leber hereditary optic neuropathy)、MCAD,RNA,PKU, 三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、性分化(sexual differentiation)、21−デオキシコーチソル(21−deoxycortisol));デスブチルハロファントリン(desbutylhalofantrine); ジヒドロプテリジン還元酵素(dihydropteridine reductase); ジフテリア/破傷風抗毒素(diptheria/tetanus antitoxin); 赤血球中アルギナーゼ(erythrocyte arginase); 赤血球中プロトポルフィリン(erythrocyte protoporphyrin);エステラーゼ D(esterase D); 脂肪酸/アシルグリシン(fatty acids/acylglycines);ヒト絨毛性ゴナドトロピン(free B−human chorionic gonadotropin);赤血球ポルフィリン(free erythrocyte porphyrin);チロキシン(free thyroxine (FT4));トリヨードチロニン(free tri−iodothyronine (FT3));フマリルアセトアセターゼ(fumarylacetoacetase);ガラクトース/ガラクトース1リン酸(galactose/gal−1−phosphate); ガラクトース1リン酸 ウリジルトランスフェラーゼ(galactose−l−phosphate uridyltransferase); ゲンタマイシン(gentamicin);グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(glucose−6−phosphate dehydrogenase);グルタチオン(glutathione);グルタチオン ペリオキシダーゼ(glutathione perioxidase);グリココール酸(glycocholic acid); グリコシル化ヘモグロビン(glycosylated hemoglobin);ハロファントリン(halofantrine);ヘモグロビン変異体(hemoglobin variants);ヘキソサミニダーゼ A(hexosaminidase A);ヒト赤血球炭酸脱水酵素l(human erythrocyte carbonic anhydrase I);17−α―ヒドロキシプロゲステロン(17−alpha− hydroxyprogesterone);ヒポキサンチンホスホリボシル転移酵素(hypoxanthine phosphoribosyl transferase);免疫活(または反応)性トリプシン(immunoreactive trypsin);ラクテート(lactate);鉛(lead);リポプロテイン (a)、B/A−1、R(lipoproteins( (a), B/A−1, R));リゾチーム(lysozyme);メフロキン(mefloquine);ネチルミシン(netilmicin);フェノバルビトン(phenobarbitone);フェニトイン(phenytoin);フィタニック/プリスタニック酸(phytanic/pristanic acid);プロゲステロン(progesterone);プロラクチン(prolactin);プロリダーゼ(prolidase);プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(purine nucleoside phosphorylase);キニーネ(quinine);逆位トリヨードチロニン(reverse tri−iodothyronine (rT3));セレン(selenium);血清膵臓リパーゼ(serum pancreatic lipase);シソミシン(sissomicin);ソマトメジンC(somatomedin C);特異抗体(specific antibodies)(アデノウィルス(adenovirus),抗核抗体(anti−nuclear antibody),アンチーゼータ抗体(anti−zeta antibody),アルボウイルス(arbovirus), オーエスキー病ウィルス(Aujeszky’s disease virus),デングウィルス(dengue virus),メジナ虫(Dracunculus medinensis),蝟粒条虫(Echinococcus granulosus),エントアメーバヒストリティカ(Entamoeba histolytica),エンテロウイルス(enterovirus),ジアルジア症(Giardia duodenalisa),ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori),B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus),ヘルペスウイルス(herpes virus), HIV−1,免疫グロブリンE(IgE(アトピー性疾患(atopic disease))),インフルエンザウィルス(influenza virus),ドノバン・リーシュマニア(Leishmania donovani),レプトスピラ(leptospira),麻疹/おたふくかぜ/風疹(measles/mumps/rubella),らい病マイコバクテリア(Mycobacterium leprae),肺炎マイコプラスマ(Mycoplasmapneumoniae),ミオグロビン(Myoglobin),回施糸状虫(Onchocerca volvulus),パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus),熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum),ポリオウイルス(poliovirus), 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus),リケッチア(rickettsia(恙虫病(scrub typhus))),マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni),トキソプラスマ(Toxoplasma gondii), トレポネーマパラディウム(Trepenoma pallidium), トリパノソーマ クルジ/ランゲリ(Trypanosoma cruzi/rangeli),ベシキュラストマチスウィルス(vesicular stomatis virus),バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti),黄熱病ウイルス(yellow fever virus));特異抗原(specific antigens)(B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus),HIV−1);サクシニルアセトン(succinylacetone);スルファドキシン(sulfadoxine);テオフィリン(theophylline);チロトロピン(thyrotropin(TSH));サイロキシン(thyroxine(T4));サイキロキシン結合性グロブリン(thyroxine−binding globulin);痕跡元素(trace elements);トランスフェリン(transferrin);UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ(UDP−galactose−4−epimerase);尿素(urea);ウロポルフィリノーゲン I シンターゼ(uroporphyrinogen I synthase);ビタミンA(vitamin A);白血球(white blood cells);及び亜鉛プロトポルフィリン(zinc protoporphyrin)。血液中または組織液中で自然に発生する、塩類(Salts),糖質(sugar),蛋白質(protein),脂肪(fat),ビタミン(vitamins)及び副腎皮質ホルモン(hormones)も実施形態によっては分析物を構成する。
【0041】
前記分析物は生物学的流体中に自然に存在するものかまたは内因性のものであってもよく、例えば,代謝生成物,ホルモン,抗原,抗体,及び同様のものであってよい。また,前記分析物は体内に取り入れられても、または外因性のものであってもよく、例えば、撮像のためのコントラスト剤、放射性同位元素,化学薬品,フルオロカーボンベースの合成血液(fluorocarbon−based synthetic blood),またはドラッグ(drug)または製薬化合物(pharmaceutical composition)で、インシュリン;エタノール;大麻(マリファナ,テトラヒドロカナビノール(tetrahydrocannabinol),ハシシュ(hashish));吸入薬(亜酸化窒素(nitrous oxide),亜硝酸アミル(amyl nitrite), 亜硝酸ブチル(butyl nitrite),塩化炭化水素(chlorohydrocarbons),炭化水素(hydrocarbon));コカイン(cocaine クラックコカイン((crack cocaine));覚せい剤(stimulants)(アンフェタミン(amphetamines),メタンフェタミン(methamphetamines),リタリン(Ritalin),サイラート(Cylert),プレルジン(Preludin),ジドレックス(Didrex),プレステート(PreState),ボラニル(Voranil),サンドレックス(Sandrex),プレジン(Plegine));鎮静剤(depressants)(バービチュエート(barbituates),メタカロン(methaqualone),(例えばバリウム(Valium),リブリウム(Librium),ミルタウン(Miltown),セラックス(Serax),イコアニル(Equanil),トランキセン(Tranxene))等の精神安定剤(tranquilizers);ハルシノゲン(hallucinogens)(フェンシクリジン(phencyclidine),リゼルギン酸(lysergic acid),メスカリン(mescaline),ペヨーテ(peyote),プシロシビン(psilocybin));麻酔薬(narcotics)((ヘロイン(heroin),コデイン(codeine),モルヒネ(morphine),アヘン(opium),メペリジン(meperidine),パーコセット(Percocet),パーコダン(Percodan),タシオネックス(Tussionex),フェンタニル(Fentanyl),ダルボン(Darvon),タルウィン(Talwin),ロモティル(Lomotil));デザイナードラッグ(designer drugs)(フェンタニル(fentanyl),メペリジン(meperidine),アンフェタミン(amphetamines),メタンフェタミン(methamphetamines)及びフェンシクリジン(phencyclidine)の類似物、例えば、エクスタシー(Ecstasy));アナボリックステロイド(anabolic steroids);及びニコチン(nicotine)を含むが、これらに制約されることはない。前記ドラッグ(drug)または製薬化合物(pharmaceutical composition)の代謝生成物もまた、予想される分析物である。例えば、アスコルビン酸,尿酸,ドーパミン,ノルアドレナリン,3−メトキシチラミン(3− methoxytyramine (3MT)),3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(3,4−dihydroxyphenylacetic acid (DOPAC)),ホモバニリン酸(homovanillic acid (HVA)),5−ヒドロキシトリプタミン(5− hydroxytryptamine (5HT),及び5−ヒドロキシインドール酢酸(5−hydroxyindoleacetic acid(FHIAA))等、身体内部で生成される神経化学物質及び他の化学物質もまた分析物となりうる。
【0042】
ここで使われる“操作可能な接続”、“操作可能な状態で接続された”及び“操作可能な状態で連結された”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、前記構成要素間の信号の伝達が可能となるように他の一つ(複数の)構成要素に連結された、一つまたはより多くの構成要素を含むものである。例えば、サンプル中の分析物の量を検出するために、及びその情報を信号に変換するために一つまたはそれ以上の電極が使われてもよい;その後信号は回路に伝達されてもよい。この場合には、電極は電子回路の回路構成要素に“操作可能な状態で接続”されている。
【0043】
ここで使われる“ホスト”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに哺乳類、特に人類を含むものである。
【0044】
ここで使われる“センサー”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、分析物を検出する分析物監視装置の一つまたは複数の部分を含むものである。一つの実施形態において、前記センサーは、作用電極、参照電極および任意に対向電極を有し且つ通過し前記センサー本体の内部に保護され本体の一つの場所で電気化学的に反応性の表面を形成する電気化学電池と、本体中の他の場所への電子的な接続と、本体に付着され且つ電気化学的な反応表面を覆う膜システムと、を含む。前記センサーの一般的な操作の間、生物学的サンプル(例えば、血液または組織液)、またはその一部は、酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)と(直接、または一つまたは複数の膜またはドメインを通過した後)接触する;前記生物学的サンプル(またはその一部)の反応により、前記生物学的サンプル中の前記分析物濃度の測定を可能にするような反応生成物を形成する。
【0045】
ここで使われる“信号出力”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、測定された前記分析物に直接関係している、分析物測定装置からのアナログまたはデジタル信号を含む。前記用語は1点、または、実質的に連続なグルコースセンサーからの時間間隔を有する多数のデータ点を広く含むもので、1秒の何分の1から例えば1,2または5分またはそれ以上までの時間間隔を有する個々の測定を含むものである。
【0046】
ここで使われる“電気化学電池”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、その内部で化学的なエネルギーが電気的なエネルギーへ変換される装置を含むものである。そのような電池は一般的に、お互い離れて配置され且つ電解質溶液と接触した二つまたは複数の電極からなる。前記電極と直流電流源との接続により、一方は負に帯電し、他の一方は正に帯電する。前記電解質中の正イオンは負極(カソード)へ移動し、一つまたは二つの電子と結合して、その電荷の一部またはすべてを失い、より低い電荷を持った新しいイオン、または中性原子、または分子となる;同時に負イオンは正極(アノード)へ移動し、一つまたは二つの電子を正極へ移動させ、同様に新しいイオンまたは中性粒子となる。その二つのプロセスの全体的な効果は、前記負イオンから前記正イオンへの電子の移動、化学反応である。
【0047】
ここで使われる“ポテンショスタット”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、前記電極間の抵抗の変化とは独立な前もって設定された値で3電極電池の前記作用電極と前記参照電極との間の電位差を操作する電子的システムを含むものである。たとえ前記作用電極と前記対向電極との間に電流が必要なときでも、前記電池の電圧と電流がポテンショスタットのコンプライアンスの制限を越えない限りは、要求された電位差を保つようにする。
【0048】
“電気化学的に反応性の表面”及び“電気的に活性な表面”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、電気化学反応が起こる前記電極表面を含むものである。一つの例としては、作用電極では、前記分析物による酵素触媒反応により生成された検出対象の過酸化水素が反応し、電流を生成するのを測定する(例えば、グルコースオキシダーゼを利用したグルコース分析物の検出では、副生成物としてHが生成され、Hが前記作用電極の表面と反応して二つのプロトン(2H)、検出電流を発生する二つの電子(2e)と一つの酸素分子(O)を生成する)。前記対向電極の場合には、作用電極によって生成される電流との平衡をとるため、還元種、例えばOが電極表面で還元される。
【0049】
“検出領域”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、特定の分析物を検出する能力を有する監視装置の領域を含むものである。前記検出領域は一般的に非導電性の本体と、本体を突き通って且つ本体中に保護され、本体に電気化学的反応表面を形成し前記本体上の他の場所で電子装置と接続する、作用電極と、参照電極と、及び任意に対向電極と、本体に固定され電気化学的反応表面を覆うマルチドメインの膜システムとを備える。
【0050】
“生データの流れ”及び“データの流れ”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、測定された分析物に直接関連する分析物センサーからのアナログまたはデジタル信号を含むものである。一つの例としては、生データの流れは、A/Dコンバータによって分析物濃度に対応するアナログ信号(例えば、ボルト数またはアンペア数)から変換され“カウント”単位で示されたデジタルデータである。前記用語は、実質的に連続な分析物センサーからのある時間間隔の多数のデータ点を広く包含するもので、1秒の何分の1から、例えば1、2、または5分、またはそれ以上までの時間間隔の個々の測定点を含むものである。
【0051】
“カウント”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、デジタル信号の測定の単位を含むものである。一つの例としては、カウント単位で測定された生データの流れは、直接電位(例えば、A/Dコンバーターで変換されたもの)に関連し、前記作用電極からの電流に直接関連する。他の例では、カウント単位で測定された対向電極電位は、直接電位に関連する。
【0052】
“電気的な電位”または“電位”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、電流の流れの原因となる回路内の2点間の電気的な電位差を含むものである。
【0053】
“虚血”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、ある部分(例えば、センサー)への循環の妨害によって起こる局所的かつ一時的な血液供給の欠乏を含むものである。虚血は、例えば血液供給の機械的な妨害(例えば、動脈が狭くなる、または破裂)によっても起こりうる。
【0054】
“システムノイズ”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、例えば、ガウシアン、モーションリレーテッド(motion−related)、フリッカ(flicker)、キネティック(kinetic)またはホワイト(white) ノイズを含んでいても良い、望まれない電子関連または拡散関連のノイズを含むものである。
【0055】
“偽信号”または“システムノイズよりも大きい、非−グルコースに関連した一過性の偽信号”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、例えば虚血、pHの変化、温度変化、圧力、及びストレス等の、実質的な非−グルコース反応による律速現象に起因する信号のノイズを含むものである。ここで記述したような偽信号は一般的には一過性のものであり、システムノイズよりも大きいことによって特徴付けられる。
【0056】
“低ノイズ”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、実質的に信号の大きさを減少させるノイズを含むものである。
【0057】
“高ノイズ”または“高スパイク”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、実質的に信号の大きさを増大させるノイズを含むものである。
【0058】
“遠くに”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、様々な要素と特定の参照位置との空間的な関係を含むものである。例えば、ある装置の実施形態では、細胞破壊ドメイン及び細胞不浸透性ドメインを有する膜システムが備えられている。もし前記センサーが参照点であり、細胞不浸透性ドメインが前記センサーのより遠くに位置していると考えるならば、そのドメインはセンサーに対して遠くにある。
【0059】
“隣接して”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、様々な要素と特定の参照位置との空間的な関係を含むものである。例えば、ある装置の実施形態では、細胞破壊ドメイン及び細胞不浸透性ドメインを有する膜システムが備えられている。もし前記センサーが参照点であり、細胞不浸透性ドメインが前記センサーのより近くに位置していると考えるならば、そのドメインはセンサーに対して隣接している。
【0060】
“妨害物質”または“妨害化学種”という用語は広義の用語であり、通常の意味で使われており、制限なしに、センサー内で興味ある分析物の測定を妨害し、前記分析物の測定結果を正確に表現しない信号を発生するような効果及び/または化学種を含むものである。電気化学センサーの一つの例としては、妨害物質は測定すべき前記分析物と重なる酸化電位を有する化合物である。
【0061】
ここで用いられるものとして、以下の省略形を適用する:Eq及びEqs(当量);mEq(ミリ当量);M(モル);mM(ミリモル);μM(マイクロモル);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);Kg(キログラム);L(リットル);mL(ミリリットル);dL(デシリットル);μL(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメーター);μm(マイクロメーター);nm(ナノメーター);h及びhr(時間);min.(分);s及びsec.(秒);℃(摂氏度)。
【0062】
概要
好ましい実施形態は、流体中における測定対象の分析物の濃度または濃度を示す物質または前記分析物の存在を測定する電気化学センサーの使用に関わるものである。ある実施形態においては、前記センサーは連続的な装置であり、例えば皮下、経皮的、または血管内の装置である。別の実施形態においては、前記装置は多数の断続する血液サンプルを分析できてもよい。
【0063】
前記センサーは、測定対象である前記分析物の濃度を示す出力信号を提供するために既知の様々な方法を用いてよく、その方法は侵襲性(invasive)、最小限の侵襲性(minimally invasive)、及び非侵襲性(non−invasive)のセンシング技術を含む。前記センサーは、生体内または生体外で前記分析物を測定する時に、酸素存在下における分析物と酵素との間の酵素反応の生成物または反応物を感知する前記型のものである。そのようなセンサーは一般的に、前記酵素を取り囲む、それ自身を体液が通過し且つその内部ではその体液内の前記分析物が酸素の存在下で酵素と反応して生成物を作り出す膜を備える。その後、前記生成物は電気化学的方法を用いて測定され、結果として電極システムの前記出力は前記分析物の測定として機能する。別の実施形態では、前記電極システムは、既知の様々な生体内または生体外分析物センサーまたはモニターとともに使われてもよい。
【0064】
図1は、電極システム(16)を利用した埋設可能な可能なグルコースセンサー(10)の一つの実施形態の分解透視図である。この実施形態では、検出領域(14)を有する本体が、電極システム(16a)、(16b)、(16c)(電気化学的な検出表面とも呼ばれる)、及びセンサーの電子機器とを含むものであり、図2を参照してさらに詳しく記述される。
この具体例では、前記電極システム(16)は前記センサーの電子機器に操作可能な状態で接続されており(図2)、且つ電気的に活性な表面(2、3、またはそれ以上の電極システムを含む)を備え、膜システム(18)で覆われている。前記膜システム(18)は前記電極システム(16)の前記電気的に活性な表面上に配置され、一つまたは複数の下記機能を提供する:1)前記露出した電極表面の、生物学的環境からの保護(細胞不浸透性ドメイン);2)前記分析物の拡散抵抗(制限)(抵抗ドメイン);3)酵素反応を可能にする触媒(酵素ドメイン);4)妨害物質の制限または遮断(妨害ドメイン);及び/または5)前記センサー界面の電気化学的な反応性表面の親水性(電解質ドメイン)、例えば“IMPLANTABLE ANALYTE SENSOR、”という名称の、2004年5月3日に出願された同時係属の米国特許出願公開第10/838,912号明細書に開示され、その内容はすべてここに組み込まれている。前記膜システムは、“SYSTEMS AND METHODS FOR MANUFACTURE OF AN ANALYTE−MEASURING DEVICE INCLUDING A MEMBRANE SYSTEM”という名称で、2004年7月6日に出願された同時係属の米国特許出願公開第10/885,476号明細書及び“IMPLANTABLE ANALYTE SENSOR”という名称で、2004年5月3日に出願された米国特許出願公開第10/838,912号明細書等に開示されたような機械的方法または化学的方法で前記センサー本体に取り付けられてよく、これらの内容はすべてここに組み込まれている。
【0065】
図1の実施形態においては、前記電極システム(16)は3つの電極を含む(作用電極(16a)、対向電極(16b)、及び参照電極(16c))ものであって、前記対向電極は前記作用電極で測定される前記化学種による生成電流と平衡をとるために提供される。グルコースオキシダーゼベースのグルコースセンサーの場合、前記作用電極で測定される化学種はHである。以下の反応に従ってグルコースオキシダーゼ、GOXは、酸素とグルコースが過酸化水素とグルコン酸塩に転換する際の触媒となる:
[化1]
GOX+グルコース+O → グルコン酸塩+H+還元されたGOX
【0066】
各グルコース分子の代謝のため、グルコース濃度の決定にはHの変化が監視されてもよく、前記生成物Hには比例的な変化がみられる。前記作用電極によるHの酸化は、前記対向電極における周囲の酸素、酵素が生成するH、または他の還元種が還元されることによって平衡となる。グルコースオキシダーゼ反応から生成される前記Hはさらに前記作用電極表面で反応し、二つのプロトン(2H)と二つの電子(2e)、及び一つの酸素分子(O)を生成する。そのような実施形態においては、前記対向電極が酸素を電子受容体として利用するため、この系においてもっとも考えられる還元種は酸素、または酵素が生成した過酸化水素である。前記対向電極において酸素が消費される場合二つの主な経路がある。これらの経路は、水酸化物を生成する4電子経路及び過酸化水素を生成する2電子経路を含む。前記対向電極に加えて、酸素は、前記酵素ドメイン内部の還元されたグルコースオキシダーゼによってさらに消費される。その結果、前記電極システム内には、前記酵素と前記対向電極の両方による酸素消費に帰すべき最終的な酸素の消費がある。理論的には、前記作用電極のドメイン内部では、前記対向電極の領域と比較して酸素の最終的な損失が非常に少ない。ある実施形態においては、前記対向電極が電流の平衡を維持する前記能力とセンサーの機能との間に強い相関がある。
【0067】
一般的には、電気化学センサーであってその内部で酵素反応が共反応物としての酸素に依存するものにおいて、低酸素の環境、例えば生体内、で機能低下または不正確さがみられる場合がある。皮下に埋め込まれた装置は、特に装置の機能に障害を与えうる一過性虚血に影響されやすい;例えば、埋設可能な電流測定型グルコースセンサーに要求される前記酵素反応のために、前記センサーがグルコースセンサーとして効果的に機能するように酸素はグルコースに対して過剰でなければならない。もしグルコースが過剰になったならば、前記センサーは酸素に対して高感度な装置となる。生体内で、グルコース濃度は前記酸素濃度の約100倍またはそれ以上変化する可能性がある。その結果、酵素ベースの電気化学分析物センサーの過去の技術の一つの制限は、酸素の欠乏に起因するものであり、図3を参照してより詳細に記述される。
【0068】
図2は一つの実施形態であるセンサーの電子機器を説明するブロック図である;しかしながら、当業者にとっては好ましい実施形態として様々なセンサー電子機器の形態が実行されうることは明らかである。この実施形態においては、ポテンショスタット(20)が示され、前記ポテンショスタットは電流の値を得るために電極システム(16)に操作可能な状態で接続され(図1)、且つ電流を電圧に変換するレジスター(図に示していない)を含む。前記A/Dコンバータ(21)はアナログ信号をデータ処理のために、“カウント”値に変換する。従って、カウントで示された前記結果の生データ信号は、直接前記ポテンショスタットによって測定される前記電流に関連している。
【0069】
マイクロプロセッサ(22)は、EEPROM(23)及びSRAM(24)を収容する中心的な操作ユニットである。他の実施形態としては、データ処理にここで述べたようなマイクロプロセッサではなくコンピュータシステムを利用してもよい。他の実施形態としては、特定用途向け集積回路(ASIC)を一部またはすべての前記センサーの中央プロセッシングに用いてもよい。EEPROM(23)は半永久的にデータを蓄積し、例えばセンサーのID及びデータ信号を処理するのに必要なプログラム(例えば、ここで記述されるようなデータスムーシングのためのプログラム)等のデータを蓄積する。SRAM(24)は、例えばセンサーの新しいデータを一時的に蓄積するための、システムのキャッシュメモリに用いられる。
【0070】
前記電池(25)は操作可能な状態で前記マイクロプロセッサ(22)に接続され、前記センサーに必要な電力を供給する。一つの実施形態としては、前記電池は二酸化マンガンリチウムであるが、適当なサイズ及び電力の電池が使われてよい。他の実施形態では、多数の電池がシステムに電力を供給するために使われてもよい。石英結晶(26)が操作可能な状態で前記マイクロプロセッサに接続され、かつコンピュータシステムのシステム時間を維持する。
【0071】
RFトランシーバ(27)は前記マイクロプロセッサ(22)に操作可能な状態で接続され、かつ前記センサーデータをセンサーからレシーバーに伝達する。ここではRFトランシーバーが示されているが、他の実施形態においては、レシーバーへの無線による接続のほかに有線による接続が含まれる。さらに他の実施形態では、前記センサーは例えば経皮的に誘導結合を経由して接続されてもよい。前記石英結晶(28)は、前記RFトランシーバからの前記データ伝達を同期させるためのシステム時間を与える。前記トランシーバ(27)は、一つの実施形態としては、送信機で置き換えられてもよい。
【0072】
図1、図2及び関連する本文は埋設可能なグルコースセンサーの実施形態を図示し、かつ説明するものであり、以下に記述する前記好ましい実施形態の電極システムはどのような既知の電気化学センサーが用いられてもよく、Shultsらによる米国特許第6,001,067号明細書;Braukerらによる米国特許第6,702,857号明細書;Wardらによる米国特許第6,212,416号明細書;Schulmanらによる米国特許第6,119,028号明細書;Leshoによる米国特許第6,400,974号明細書;Bernerらによる米国特許第6,595,919号明細書;Kurnikらによる米国特許第6,141,573号明細書;Sunらによる米国特許第6,122,536号明細書;Varallらによる欧州特許出願公開第1153571号明細書;Colvinらによる米国特許第6,512,939号明細書;Slateらによる米国特許第5,605,152号明細書;Bessmanらによる米国特許第4,431,004号明細書;Goughらによる米国特許第4,703,756号明細書;Hellerらによる米国特許第6,514,718号明細書;Goughらによる米国特許第5,985,129号明細書;Caduffによる国際公開第2004/021877号パンフレット;Maleyらによる米国特許第5,494,562号明細書;Hellerらによる米国特許第6,120,676号明細書;及びGuyらによる米国特許第6,542,765号明細書;発明名称が「IMPLANTABLE ANALYTESENSOR」である、2004年5月3日に出願された、同時係属の米国特許出願公開第10/838,912号明細書;発明名称が「INTEGRATED DELIVERY DEVICE FOR A CONTINUOUS GLUCOSESENSOR」である、2004年2月26日に出願された、米国特許出願公開第10/789,359号明細書;「OPTIMIZED SENSOR GEOMETRY FOR AN IMPLANTABLE GLUCOSESENSOR」;発明名称が「SYSTEM AND METHODS FOR PROCESSING ANALYTE SENSOR DATA,」である、2003年8月1日に出願された、米国特許出願公開第10/633,367号明細書、を含むものであり、内容は参考として全てここに組み込まれている。
【0073】
図3は、図1に記載されたような、既存の技術によるグルコースセンサー生データの流れを示すグラフである。x軸は分単位での時間を表す。y軸はカウント単位でセンサーデータを表す。この例では、カウント単位でのセンサー出力は30秒ごとに伝達される。前記生データの流れ(30)は、ある部分では実質的に滑らかなセンサー出力を含むが、他の部分においては誤った、または一過性のグルコース以外のものに関連する偽信号(32)を示す。特に、前記偽信号(32)を調べると、既存の技術におけるグルコースセンサーにおける局所的な虚血の影響が、前記膜システム内部の前記酵素における、及び/または電極表面の前記対向電極における酸素の欠乏に帰すべき誤った(非グルコースの)信号の値を作り出すと考えられる。
【0074】
ある状況では、グルコースの量に対して酸素が欠乏しているとき、前記酵素反応はグルコースよりも酸素によって制限される。その結果、前記出力信号はグルコース濃度よりは酸素濃度を示すものとなり、誤った信号を生成する。加えて、酵素反応が酸素によって律速されるとき、グルコースは酸素欠乏下では代謝によって完全には分解されないので、前記膜内部に蓄積されると考えられる。酸素が再度過剰になるとき、酸素の一過性の欠乏による過剰なグルコースもまた存在している。前記酵素反応速度は前記過剰なグルコースが分解されるまでの短時間大きくなり、結果として、非グルコースに関連して増大したセンサー出力のスパイクを生じる。従って、過剰な酸素(グルコースと比較して)は適正なセンサー機能に必要であり、一過性虚血は前記センサーデータにおける信号の損失を生じさせる可能性がある。
【0075】
他の状況では、酸素欠乏は、還元に利用可能な酸素が不十分であるときに前記対向電極でみられ、それによって前記対向電極に、その内部で前記作用電極から来る電流との平衡をとることができないという影響を及ぼす。前記対向電極で利用される酸素が不十分な状態にあるとき、前記対向電極は電気化学的な電子探索を最も負の値まで駆動される可能性があり、それは接地状態または0.0Vである可能性があり、シフトの基準の原因となり、以下にさらに詳細に説明するようにバイアス電位を減少させる。言い換えると、虚血は通常グルコース濃度の関数としてのセンサー電流の落ち込み(例えば、感度の低下)を生じる。これは前記作用電極がバイアスの減少によって、もはやその表面にやってきたすべてのHを酸化させないことにより起こる。ある極端な状況では、グルコースの増加は電流の増加、または減少でさえも生じない可能性がある。
【0076】
ある状況では、一過性虚血は高いグルコースレベルで起こる可能性があって、その場合酸素は前記酵素反応を制限するようになる可能性があり、結果としてデータに非グルコースに依存する下向きの傾向を生じる。ある状況では、患者がとるある動きまたは姿勢によって、血液が細管を搾り出され局所的な虚血を生じ且つ非グルコース依存の偽信号となるために、一過性の偽信号が起こる可能性がある。ある状況では、前記センサー界面の組織の拘縮により酸素はさらに一時的に制限される可能性がある。これは皮膚に圧力を与えたときに観察される、皮膚が青白くなることと同様のものである。そのような圧力下では、表皮及び皮下組織の双方において一過性虚血が起こりうる。一過性虚血は通常のことであり、皮下組織によって効果的に許容される。しかし、そのような虚血は埋設可能な装置における数分または一時間またはそれ以上続くような酸素欠乏の原因となりうる。
【0077】
既存技術のグルコースセンサーにおける一過性虚血の影響の例をいくつか記載してきたが、他の分析物、例えばアミノ酸(アミノ酸オキシダーゼ)、アルコール(アルコールオキシダーゼ)、ガラクトース(ガラクトースオキシダーゼ)、乳酸塩(乳酸塩オキシダーゼ)、コレステロール(コレステロールオキシダーゼ)、または類似のもの、を検出するため他の触媒を利用した分析物センサーに同様の効果がみられる。
【0078】
従来の電気化学センサーにおける他の問題は、測定すべき前記分析物(または、前記分析物との前記酵素反応の副生成物)と反応するのみではなく、加えて測定を意図していない他の電気化学的に活性な化学種(例えば、妨害物質)とも反応する可能性があり、このことは、これら“妨害物質”による信号強度の増大の原因となる。言い換えれば、妨害物質は測定すべき前記分析物(または、前記分析物との前記酵素反応の副生成物)と重なる酸化または還元電位を有する化合物である。例えば、従来の電流測定によるグルコースオキシダーゼベースのグルコースセンサーであって、前記センサーは過酸化水素を測定するものにおいては、アセトアミノフェン、アスコルビン酸塩、及び尿酸塩のような妨害物質が適切に制御されていない場合に不正確な信号強度を生成することが知られている。
【0079】
従来のグルコースセンサーには、少なくともいくつかの、例えばアスコルビン酸塩、及び尿酸塩等の妨害物質を遮る膜システムを利用するものがある。そのようなシステムのうちいくつかでは、少なくとも前記膜システムの一層が、これらの材料を通過する輸送が主に孔を通過して化学種が移動するような(例えば前記層がマイクロ孔を有するバリア、または特定のサイズの妨害物質を遮断するふるいのように働く)、多数の“マイクロ孔”または分子次元の孔を有する、相対的に不浸透性マトリックスである多孔性の構造を備える。他の同様なシステムとしては、前記膜システムの少なくとも一層が前記層を通過する溶質種の選択的な溶解及び拡散を許容するような透過性を規定する。望ましくないことに、いくつかの実施形態において、特に生体内での利用に際して満足のいく、または信頼できる、すべての妨害物質及び/または妨害物質を効果的に阻止する膜を見つけることは難しい。
【0080】
好ましい実施形態の電気化学センサー
一つの好ましい実施形態では、電気化学センサーは一過性虚血による前記影響を克服するために酸素を生成する補助電極を備えて提供される。好ましい実施形態の他の局面としては、電気化学センサーは電気化学的な妨害物質を電気化学的に変性(例えば、酸化または還元)して、前記作用電極上における妨害物質の影響を克服するため、それらを前記電気活性な検出表面において実質的に電気化学的に活性ではないものにするよう構成された補助電極を備えて提供される。
【0081】
酸素は正に帯電した電極(例えば、約+0.6から約+1.2Vまたはそれ以上に設定された)で起こる電気化学反応の生成物として生成されうることは知られている。酸素を生成する反応の一つの例としては、水の電気分解があり、アノードで酸素を生成する(例えば、前記作用電極)。前記典型的な電気化学グルコースセンサーにおいて、グルコースはグルコースオキシダーゼ及び酸素と反応することによって過酸化水素に変換され、その後過酸化水素は前記作用電極において酸化され、そこから酸素が生成される。このような手法で電気化学的に酸素を生成するための一つの難題は、補助電極が過剰な酸素を生成している一方、前記補助電極を前記分析物測定作用電極に隣接する位置に配置することで前記補助電極において過酸化水素の酸化が起こる可能性があり、結果として前記作用電極における信号を減少させることである。さらに、多くの電気化学的な妨害物質が約+0.1Vから約+1.2Vまたはそれ以上の電位において還元されうることが知られている;例えば、アセトアミノフェンは約+0.4Vの電位で還元される。
【0082】
従って、好ましい実施形態においては、前記センサーは電極システム(16)または他の電気活性な検出表面より上部に補助電極を配置し、上記のような不正確な信号に関する前記問題を減少させ、または取り除く。
【0083】
図4は好ましい実施形態における電気化学センサーの前記検出領域の一部分を側面からの概略図で示したものであり、前記作用(検出)電極が前記酵素の下方で且つさらに外部溶液から離れて位置している状態で、前記酵素と前記外部溶液との間にある補助電極を示している。特に、図4は外部溶液(12)を示しているが、これは生体内または生体外で前記センサーがさらされる、体内のまたは他の流体を表している。
【0084】
前記膜システム(18)は多数のドメイン(例えば、細胞不浸透性ドメイン、抵抗ドメイン、酵素ドメイン、及び/または、Rhodesらによる米国特許出願公開第2003/0032874号明細書、及び発明名称が「SYSTEMS AND METHODS FOR MANUFACTURE OF AN ANALYTE−MEASURING DEVICE INCLUDING A MEMBRANE SYSTEM」で、2004年6月6日に出願された、同時係属の米国特許出願公開第10/838,912号明細書(この内容は参考として全てここに組み込まれている)に開示されるような他のドメイン)を備え、外部溶液に隣接しており、且つ酵素反応に必要な流体を輸送する機能を有し、一方で、例えば前記センサー内部の成分を強い生物学的有害物質から保護する。各ドメインは独立には示されないが、前記図示された具体例において前記酵素(38)は補助電極(36)と前記作用電極(16a)との間に配置されて示されている。
【0085】
前記補助電極は前記電気活性表面と前記外部流体との間のどこに配置してもよいが、好ましくは、前記補助電極(36)は、前記膜システム(18)の内部に、または近接して、例えば前記酵素と他のドメインとの間に、配置される。前記補助電極(36)は既知の作用電極材料(例えば、白金、パラジウム、グラファイト、金、炭素、導電性ポリマー、または同種類のもの)から形成され、酸素を生成する電位の設定(例えば、約+0.6Vから+1.2Vまたはそれ以上)を有し、及び/または電気活性な(一つまたは複数の)表面で電気化学妨害物質を電気化学的に変性(例えば還元)して実質的に非反応性にする(例えば、約+0.1Vから+1.2Vまたはそれ以上)。前記補助電極はメッシュ、グリッド、多数の一定の間隔を有するワイヤー、または導電性ポリマー、または分析物がそれを透過できるよう設計された他の形態であってもよい。
【0086】
好ましい実施形態の局面としては、前記補助電極(36)の内部が酸素を生成するよう形成され、前記酵素(38)及び/または前記対向電極(前記補助電極の配置に依存する)に利用されるよう、前記補助電極(36)で生成された前記酸素が上方及び/または下方へ拡散する。加えて、前記外部溶液(前記補助電極(36)を通って拡散する)からの前記分析物(例えば、グルコース)が前記酵素(38)と反応して測定可能な生成物(例えば、過酸化水素)を形成する。その結果、前記補助電極(36)によって除かれることなく正確な測定を行うため酵素反応の前記生成物が下方前記作用電極(16a)へ拡散する。
【0087】
一つの他の実施形態としては、前記補助電極(36)が、グルコースは透過させないが酸素透過性であるポリマー材料でコートされていてもよい。このコーティングによって、前記補助電極においてグルコースは電気活性的に反応しないと考えられるが、それとは別に少なくともある程度の前記グルコースが前記補助電極(36)(前記酵素より上部に配置された場合)を通過する際に予備酸化される原因となる可能性があり、センサー配置によっては、前記作用電極における正確なグルコース濃度測定を妨害する可能性がある。ある実施形態では、前記ポリマーコーティングはシリコンを含む;しかしながら、酸素を選択的に透過させ、グルコースを透過させないものであれば、どのようなポリマーでも利用できる。前記補助電極(16)は、例えばディップコーティングまたはスプレーコーティング等の後、電極内部にグルコース輸送のための空間を維持するため吹き飛ばされ、または吸い取られ、または同様の処理をされるような、既知のどのような工程によってコートされてもよい。
【0088】
他の実施形態としては、前記補助電極(36)はグルコース及び酸素透過性であり、前記酵素と前記外部流体との間に配置可能なポリマー材料でコートされていてもよい。結果として、前記ポリマーコーティングは前記外部流体からのグルコースを前記補助電極(36)で電気化学的に反応させ、前記酵素(38)内へと通過してくるグルコースの量を制限し、結果として前記酵素中ですべての反応可能なグルコースと首尾よく反応するのに必要な酸素の量を減少させる。前記ポリマー材料は前記膜システムを通過するグルコースの量を制限するため、抵抗ドメインの代わりに、または共同して機能する。この実施形態は、グルコースの酸化と減少するセンサー信号出力との間の化学量論的な関係を仮定しており、センサーの配置によっては、キャリブレーションによって補正されうる。加えて、前記補助電極は酸素を生成し、さらに前記酵素反応において、及び/または前記対向電極において酸素が反応律速因子となる見込みを減少させる。
【0089】
他の好ましい実施形態としては、前記補助電極(36)は、前記電気活性の(一つまたは複数の)検出表面において電気化学的妨害物質を実質的に非反応性にするため電気化学的に変性(例えば酸化または還元)するよう配置される。これらの実施形態では、上記の酸素を発生する具体例に加えて、またはその代わりに、ポリマーコーティングが選択的に妨害物質(Bonnecazeらによる米国特許第6,579,690号明細書で開示されたように、例えば、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及び/またはアセトアミノフェン)に前記コーティングを通過させ、前記補助電極と電気化学的に反応させるよう選択され、効果的に前記妨害物質を予備酸化し、前記作用電極(16a)上でそれらを非反応性にする。一つの実施形態としては、酸素、アセトアミノフェン及び他の妨害物質を輸送し、グルコースを輸送しないためにシリコン材料を合成によって形成することが可能である。別の実施形態では、前記ポリマーコーティング材料はグルコースを阻止し酸素、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及びアセトアミノフェンを輸送可能にするために分子量で選ばれてもよい。さらに別の実施形態では、酸素、グルコース、アセトアミノフェン及び他の妨害物質を輸送するためにシリコン材料を合成によって形成することが可能である。別の実施形態では、前記ポリマーコーティング材料は、酸素、グルコース、尿酸塩、アスコルビン酸塩、及びアセトアミノフェンを輸送可能にするために分子量で選ばれてもよい。妨害物質と反応するために必要な前記電位の設定は、目的とする妨害物質に依存し、例えば、約+1.0Vから約+1.2Vである。別の実施形態では、前記補助電極内部は約+0.6Vから約+1.2Vの電位に設定されており、酸素生成及び電気化学的妨害物質の変性の両方の結果が得られる。別の実施形態では、前記補助電極内部は約+0.6Vの電位よりも低く設定されており、前記補助電極は主に、例えば電気化学的に妨害物質を変性するために機能すると考えられる。
【0090】
結果として、前記センサーを好ましい形態で実施することにより、電気化学センサー内における酸素欠乏の問題を、酵素ベースの電気化学センサー内部で前記酵素の上部に配置した補助電極において酸素を生成することによって減少させ、または取り除く。
【0091】
好ましい実施形態に関連する使用に適した方法及び装置は、発明名称が「MEMBRANE SYSTEMS INCORPORATING BIOACTIVE AGENTS」である、2004年5月10日に出願された、同時係属の米国特許出願公開第10/842,716号明細書;発明名称が「IMPLANTABLE ANALYTE SENSOR」である、2004年5月3日に出願された」、同時係属の米国特許出願公開第10/838,912号明細書;発明名称が「INTEGRATED DELIVERY DEVICE FOR A CONTINUOUS GLUCOSESENSOR」である、2004年2月26日に出願された、米国特許出願公開第10/789,359号明細書;発明名称が「SILICONE COMPOSITION FOR MEMBRANE SYSTEM」である、2003年10月28日に出願された、米国特許出願公開第10/685,636号明細書;発明名称が「SYSTEMS AND METHODS FOR REPLACING SIGNAL ARTIFACTS IN A GLUCOSE SENSOR DATA STREAM」である、2003年8月22日に出願された、米国特許出願公開第10/648,849号明細書;発明名称が「OPTIMIZED SENSOR GEOMETRY FOR AN IMPLANTABLE GLUCOSE SENSOR」である、2003年8月22日に出願された、米国特許出願公開第10/646,333号明細書;発明名称が「POROUS MEMBRANES FOR USE WITH IMPLANTABLE DEVICES」である、2003年8月22日に出願された、米国特許出願公開第10/647,065号明細書;発明名称が「SYSTEM AND METHODS FOR PROCESSING ANALYTE SENSORDATA」である、2003年8月1日に出願された、米国特許出願公開第10/633,367号明細書;発明名称が「MEMBRANE FOR USE WITH IMPLANTABLE DEVICES」である、米国特許第6,702,857号明細書;発明名称が「SENSOR HEAD FOR USE WITH IMPLANTABLE DEVICE」である、2001年7月27日に出願された、米国特許出願公開第09/916,711号明細書;発明名称が「DEVICE AND METHOD FOR DETERMINING ANALYTE LEVELS」である、1999年11月22日に出願された、米国特許出願公開第09/447,227号明細書;発明名称が「TECHNIQUES TO IMPROVE POLYURETHANE MEMBRANES FOR IMPLANTABLE GLUCOSE SENSORS」である、2002年5月22日に出願された、米国特許出願公開第10/153,356号明細書;発明名称が「DEVICE AND METHOD FOR DETERMINING ANALYTE LEVELS」である、2000年1月21日に出願された、米国特許出願公開第09/489,588号明細書;発明名称が「SYSTEMS AND METHODS FOR REMOTE MONITORING AND MODULATION OF MEDICAL DEVICES」である、2000年8月11日に出願された、米国特許出願公開第09/636,369号明細書;及び発明名称が「DEVICE AND METHOD FOR DETERMINING ANALYTE LEVELS,」である、2001年7月27日に出願された、米国特許出願公開第09/916,858号明細書に開示され、同様に登録特許で、発明名称が「DEVICE AND METHOD FOR DETERMINING ANALYTE LEVELS」である、1999年12月14日に登録された、米国特許第6,001,067号明細書;発明名称が「BIOLOGICAL FLUID MEASURING DEVICE」である、1991年2月19日に登録された、米国特許第4,994,167号明細書;及び発明名称が「BIOLOGICAL FLUID MEASURING DEVICE」である、1988年7月12日に出願された、米国特許第4,757,022号明細書;発明名称が「ROLLED ELECTRODE ARRAY AND ITS METHOD FOR MANUFACTURE」である、2003年7月23日に出願された、米国特許出願公開第60/489,615号明細書;発明名称が「INCREASING BIAS FOR OXYGEN PRODUCTION IN AN ELECTRODE ASSEMBLY」である、2003年7月25日に出願された、米国特許出願公開第60/490,010号明細書;発明名称が「OXYGEN ENHANCING ENZYME MEMBRANE FOR ELECTROCHEMICAL SENSORS」である、2003年7月25日に出願された、米国特許出願公開第60/490,009号明細書;発明名称が「OXYGEN−GENERATING ELECTRODE FOR USE IN ELECTROCHEMICAL SENSORS」である、2003年7月25日に出願された、米国特許出願公開第60/490,007号明細書;発明名称が「ROLLED ELECTRODE ARRAY AND ITS METHOD FOR MANUFACTURE」である、本願と同日に出願された、米国特許出願公開第_/_、_号明細書;発明名称が「INCREASING BIAS FOR OXYGEN PRODUCTION IN AN ELECTRODE ASSEMBLY」である、本願と同日に出願された、米国特許出願公開第_/_、_号明細書;発明名称が「OXYGEN ENHANCING ENZYME MEMBRANE FOR ELECTROCHEMICALSENSORS」である、本願と同日に出願された米国特許出願公開第_/_、_号明細書;発明名称が「ELECTROCHEMICAL SENSORS INCLUDING ELECTRODE SYSTEMS WITH INCREASED OXYGEN GENERATION」である、本願と同日に出願された、米国特許出願公開第_/_、_号明細書を含んで開示されている。前述の特許出願及び特許の内容は参考として全てここに組み込まれている。
【0092】
ここで引用された全ての参考文献の内容は参考として全てここに組み込まれている。参考として組み込まれた出版物及び特許または特許出願が本明細書に含まれる開示内容と相反する限り、本明細書はどのような相反する材料等についても、入れ替え可能で、及び/または本明細書の内容が優先することを意図している。
【0093】
ここで用いられる“含む(comprising)”という用語は、“含む(including)”、“含む(containing)”または“特徴とする(characterized by)”と同じ意味合いのものであり、且つ、包括的または制約がないもので、付加的な、列挙されていない要素または方法の段階を排除するものではない。
【0094】
本明細書及び請求項で使用されている材料の量、反応条件その他を表す全ての数字は、常に「約」という言葉で修飾されているとして理解されるべきである。従って、反対に指示されない限り、本明細書及び付属する請求項で設定された前記数値パラメータは近似値であり、前記本発明で必要とされるべき要求性能に依存して変更されうるものである。少なくとも、請求項の前記範囲と同等の原則の応用を制限しようと試みるものではないが、各数値パラメータは有意な桁数及び通常の数値を丸める方法にかんがみて解釈されるべきものである。
【0095】
上記の記載は本発明のいくつかの方法及び材料を開示したものである。この発明は、方法及び材料において変更可能であり、方法及び装置の構成を変更することも同様に可能である。本開示内容を考察することにより、またはここで開示された発明を実施することにより、そのような変更を行いうることは当業者にとって明白である。結果的に、この発明はここで開示された特定の実施形態に制限されることを意図されていないが、請求項に織り込まれた本発明の範囲や精神に沿った全ての変更及び代案を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】埋設可能なグルコースセンサーの一つの実施形態の分解透視図である。
【図2】一つの実施形態におけるセンサー電子機器のブロック図である。
【図3】好ましい実施形態である補助電極が無い状態での、グルコースセンサーから得られた生データの流れを示すグラフである。
【図4】好ましい実施形態である電気化学センサーの一部の概略図であり、膜システム内で酵素ドメインに隣接して配置された補助電極を示している。
【符号の説明】
【0097】
10 グルコースセンサー
12 外部溶液
14 検出領域
16 電極システム
16a 作用電極
16b 対向電極
16c 参照電極
18 膜システム
20 ポテンショスタット
21 A/Dコンバータ
22 マイクロプロセッサ
23 EEPROM
24 SRAM
25 電池
26 石英結晶
27 RFトランシーバ
28 石英結晶
36 補助電極
38 酵素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の分析物の存在または濃度を決定するための電気化学センサーであって、前記センサーは:
酵素を含む膜システムであって、前記酵素は前記分析物と反応するところの前記膜システムと;
作用電極を含む電気活性表面であって、前記作用電極は導電性材料を含み且つ前記酵素と前記分析物との反応生成物を測定するよう構成されるところの前記電気活性表面と;
導電性材料を含み且つ酸素を生成するよう構成された補助電極であって、生成された前記酸素が前記酵素または前記電気活性表面まで拡散するように配置されるところの前記補助電極と、を備えた電気化学センサー。
【請求項2】
前記補助電極が、導電性金属と、導電性ポリマーと、導電性金属と導電性ポリマーとのブレンドとからなるグループから選択される導電性材料を含む、請求項1に記載の電気化学センサー。
【請求項3】
前記補助電極が、メッシュと、グリッドと、多数の一定の間隔を有するワイヤーとからなるグループから選択される形態を含む、請求項1に記載の電気化学センサー。
【請求項4】
前記補助電極はポリマーを含むものであって、前記ポリマーが前記補助電極の表面に位置している、請求項1に記載の電気化学センサー。
【請求項5】
前記ポリマーが、グルコース不透過性であるが酸素透過性である材料を含む、請求項4に記載の電気化学センサー。
【請求項6】
前記ポリマーが、グルコース不透過性であるが、酸素と妨害物質とに対して透過性である材料を含む、請求項4に記載の電気化学センサー。
【請求項7】
前記ポリマーが、グルコースを遮断し、且つ、酸素と、尿酸塩と、アスコルビン酸塩と、アセトアミノフェンとを前記ポリマー内を通過させて輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む、請求項6に記載の電気化学センサー。
【請求項8】
前記ポリマーが、グルコースと酸素とに対して透過性である材料を含む、請求項4に記載の電気化学センサー。
【請求項9】
前記ポリマーが、グルコースと、酸素と、妨害物質に対して透過性である材料を含む、請求項4に記載の電気化学センサー。
【請求項10】
前記ポリマーが、酸素と、グルコースと、尿酸塩と、アスコルビン酸塩と、アセトアミノフェンとを、前記ポリマー内を通過させて輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む、請求項9に記載の電気化学センサー。
【請求項11】
前記補助電極が少なくとも約+0.6Vの電位に設定されるよう構成された、請求項1に記載の電気化学センサー。
【請求項12】
前記補助電極が電気化学的妨害物質を電気化学的に変性し、前記作用電極において前記電気化学的妨害物質を実質的に電気化学的非反応性とするよう構成された、請求項1に記載の電気化学センサー。
【請求項13】
前記補助電極が少なくとも約+0.1Vの電位に設定されるよう構成された、請求項12に記載の電気化学センサー。
【請求項14】
流体中の分析物の存在または濃度を決定するための電気化学センサーであって、前記センサーは:
酵素を含む膜システムであって、前記酵素は前記分析物と反応するところの前記膜システムと;
作用電極を含む電気活性表面であって、前記作用電極は導電性材料を含み且つ前記酵素と前記分析物との反応生成物を測定するよう構成されるところの前記電気活性表面と;
導電性材料を含む補助電極であり、且つ前記作用電極において前記電気化学的妨害物質が実質的に電気化学的非反応性とされるよう電気化学的妨害物質を変性するために構成された前記補助電極と、を備えた電気化学センサー。
【請求項15】
前記補助電極が、導電性金属と、導電性ポリマーと、導電性金属と導電性ポリマーとのブレンドとからなるグループから選択される導電性材料を含む、請求項14に記載の電気化学センサー。
【請求項16】
前記補助電極が、メッシュと、グリッドと、多数の一定の間隔を有するワイヤーとからなるグループから選択される形態を含む、請求項14に記載の電気化学センサー。
【請求項17】
前記補助電極はポリマーを含むものであって、前記ポリマーは前記補助電極の表面に位置している、請求項14に記載の電気化学センサー。
【請求項18】
前記ポリマーが電気化学的妨害物質透過性材料を含む、請求項17に記載の電気化学センサー。
【請求項19】
前記ポリマーが、グルコース不透過性であるが、酸素透過性である材料を含む、請求項17に記載の電気化学センサー。
【請求項20】
前記ポリマーが、グルコース不透過性であるが、酸素と妨害物質とに対して透過性である材料を含む、請求項20に記載の電気化学センサー。
【請求項21】
前記ポリマーが、グルコースを遮断し、且つ、酸素と、尿酸塩と、アスコルビン酸塩と、アセトアミノフェンとを前記ポリマー内を通過させて輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む、請求項17に記載の電気化学センサー。
【請求項22】
前記ポリマーが、グルコースと、酸素とに対して透過性である材料を含む、請求項17に記載の電気化学センサー。
【請求項23】
前記ポリマーが、グルコースと、酸素と、妨害物質とに対して透過性である材料を含む、請求項17に記載の電気化学センサー。
【請求項24】
前記ポリマーが、酸素と、グルコースと、尿酸塩と、アスコルビン酸塩と、アセトアミノフェンとを前記ポリマー内を通過させて輸送することを可能とする分子量を有する材料を含む、請求項23に記載の電気化学センサー。
【請求項25】
前記補助電極が少なくとも約+0.1Vの電位に設定されるよう構成された、請求項14に記載の電気化学センサー。
【請求項26】
前記補助電極が酸素を生成するよう構成された、請求項14に記載の電気化学センサー。
【請求項27】
前記補助電極が少なくとも約+0.6Vの電位に設定されるよう構成された、請求項26に記載の電気化学センサー。
【請求項28】
分析物を測定するよう構成された電気活性な表面と;
電気化学的妨害物質を変性し、前記電気化学的妨害物質を前記電気活性な表面において実質的に非反応性とするよう構成された妨害物質変性補助電極と、を備えた電気化学センサー。
【請求項29】
前記妨害物質変性補助電極が、導電性金属と、導電性ポリマーと、導電性金属と導電性ポリマーとのブレンドとからなるグループから選択される導電性材料を含む、請求項28に記載の電気化学センサー。
【請求項30】
前記妨害物質変性補助電極が、メッシュと、グリッドと、多数の一定の間隔を有するワイヤーとからなるグループから選択される形態を含む、請求項28に記載の電気化学センサー。
【請求項31】
前記妨害物質変性補助電極はポリマーを含むものであって、前記ポリマーは前記妨害物質変性補助電極の表面に位置している、請求項28に記載の電気化学センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500336(P2007−500336A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521312(P2006−521312)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/024178
【国際公開番号】WO2005/012873
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(504016422)デックスコム・インコーポレーテッド (17)