説明

電気化学式測定装置

【課題】広い範囲について高精度に簡単に測定し得る電気化学式測定装置を提供する。
【解決手段】抵抗R1(>R2)及びR6(<R7)を接続して検出した際における作用電極6aと参照電極6bとの間に生じた電極間電圧が、所定の出力レベルを以上でない場合には、そのまま環境中の特定成分の正規値を演算し、所定の出力レベルを以上である場合には、抵抗R2及びR7の接続に切替えることによって、環境中の特定成分の正規値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や気体等の環境中における特定成分を電気化学的に測定する電気化学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体や気体等の環境中における特定成分を電気化学的に測定する電気化学式測定装置の一種として、例えば、白金(Pt)又は金(Au)などの貴金属からなる作用電極と、塩化ナトリウム(NaCl)又は塩化カリウム(KCl)などからなりゲル状又は液状である内部液に銀(Ag)及び塩化銀(AgCl)からなる金属部が浸水してなる参照電極とを試料水に浸け、その際に、酸化還元反応によって発生する作用電極と参照電極の間の電圧を測定する酸化還元電位計が開示されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【0003】
かかる酸化還元電位計には、電極と試料水との反応の不安定さに拠るところから、測定値の非直線性が良くない(非直線の程度が大きい)といった問題があった。そして、かかる問題を解消するために、本発明者らは、作用電極と参照電極の間に、この間に生ずるインピーダンスを低減するための抵抗を設けることを発案していた。この発案によると、作用電極と参照電極との間にこの抵抗を介して電流が流れることによって、電極と試料水とが安定した反応をするために、非直線性が向上するようになった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−64275号公報
【特許文献2】特開平11−9566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の発案による解消法には、次のような問題が存在した。作用電極と参照電極の間に介する抵抗の値が小さい場合には、作用電極と参照電極の間に生ずる出力(電圧)の非直線性が特に良くなる(非直線の程度が特に小さい)(図8参照)といった利点を有する一方で、作用電極と参照電極の間に生ずる出力(電圧)が小さく(図8参照)、かつ電極と試料水との反応が鈍くなるために攪拌スピード(攪拌回転数)による影響を受ける(図9(a)参照)といった欠点を有する。また、作用電極と参照電極の間に介する抵抗の値が大きい場合には、作用電極と参照電極の間に生ずる出力(電圧)が大きく(図8参照)、かつ電極と試料水との反応がすばやいために攪拌スピード(攪拌回転数)による影響を受けにくい(図9(b)参照)といった利点を有する一方で、作用電極と参照電極の間に生ずる出力(電圧)の非直線性があまり良くならない(非直線の程度が比較的大きい。ただし、比較的低い濃度(0から0.4mg/L程度まで)においては、非直線の程度が特に小さい。)(図8参照)といった欠点を有する。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みて、広い範囲について高精度に簡単に測定し得る電気化学式測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電気化学式測定装置は、環境中の特定成分と電気化学的な反応をする作用電極と前記環境中において基準となる基準電極とを含み、前記作用電極による電気化学的な反応及び前記基準電極による基準に基づいた前記環境中の特定成分に係わる検出値を出力する電極群と、前記環境中における前記作用電極と前記基準電極との間に生ずるインピーダンスを段階的に低減するインピーダンス低減手段と、前記インピーダンス低減手段による各段階へのインピーダンスの低減に対応して、前記電極群により出力される検出値を段階的に増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された検出値に基づいて前記環境中の特定成分の正規値を求める正規値演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記インピーダンス低減手段は、前記作用電極と前記基準電極との間に複数の抵抗を段階的に接続するインピーダンス低減回路と、前記インピーダンス低減回路における複数の抵抗の接続段階を切替える低減回路切替部とから成り、前記増幅手段は、前記電極群により出力される検出値を段階的に増幅する増幅回路と、前記低減回路切替部による複数の抵抗の接続段階への切替えに応じて、前記増幅回路における増幅段階を切替える増幅度切替部とから成ることを特徴とする。
【0009】
また、前記インピーダンス低減手段は、電圧を段階的に生成する多段階電圧生成回路と、前記多段階電圧生成回路に接続するポテンションスタットと、前記ポテンションスタットと前記作用電極との間に接続する出力抵抗とを有するインピーダンス低減回路と、前記多段階電圧生成回路における電圧の生成段階を切替える低減回路切替部とから成り、前記増幅手段は、前記電極群により出力される検出値を段階的に増幅する増幅回路と、前記低減回路切替部による電圧の生成段階への切替えに応じて、前記増幅回路における増幅段階を切替える増幅度切替部とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気化学式測定装置は、インピーダンス低減手段(インピーダンス低減回路及び低減回路切替部)において、環境中における作用電極と基準電極との間に生ずるインピーダンスを段階的に低減し、増幅手段(増幅回路及び増幅度切替部)において、この低減した段階に応じて電極群から出力される低減された検出値を所定の出力レベルに増幅し、正規値演算手段において、この増幅された検出値に基づいて環境中の特定成分の正規値を求める。これは、対象とする環境中の特定成分の値に応じて、インピーダンスの低減及び電極群による検出値の増幅を適宜可能とする。したがって、広い範囲について高精度に簡単に測定し得るといった利点を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電気化学式測定装置は、電極群、インピーダンス低減手段、増幅手段及び正規値演算手段を備えることにより構成する。
【0012】
電極群は、環境中(液体、気体等)の特定成分と電気化学的な反応をする作用電極と、この環境中において基準となる基準電極とを含む。そして、作用電極による電気化学的な反応と基準電極による基準とに基づいた環境中の特定成分(残留塩素等)に係わる検出値を(電極間電圧等)出力する。
【0013】
インピーダンス低減手段は、環境中における作用電極と基準電極との間に生ずるインピーダンスを段階的に低減する。より具体的には、環境中の特定成分の値(濃度等)が小さい場合にはインピーダンスの低減が少なく、環境中の特定成分の値が大きい場合にはインピーダンスの低減が多くなるようにする。
【0014】
増幅手段は、インピーダンス低減手段による各段階へのインピーダンスの低減に対応して、電極群により出力される検出値を段階的に増幅する。換言すると、インピーダンス低減手段によりインピーダンスを低減した段階に応じて電極群から出力される低減された検出値を、所定の出力レベル(正規値演算手段により環境中の特定成分の正規値を要求される分解能にて演算するために必要な出力レベル)に増幅する。
【0015】
正規値演算手段は、増幅手段により増幅された検出値に基づいて環境中の特定成分の正規値を求める。
【0016】
このように構成した電気化学式測定装置は、インピーダンス低減手段において、環境中における作用電極と基準電極との間に生ずるインピーダンスを段階的に低減し、増幅手段において、この低減した段階に応じて電極群から出力される低減された検出値を所定の出力レベルに増幅し、正規値演算手段において、この増幅された検出値に基づいて環境中の特定成分の正規値を求めることができる。これによると、対象とする環境中の特定成分の値に応じて、インピーダンスの低減及び電極群による検出値の増幅を適宜可能とすることから、広い範囲について高精度に簡単に測定し得るといった利点を有するものとなる。
【0017】
以下、上述した実施形態について、電気化学式測定装置の一種であるところの液中残留塩素濃度計を実施例として、具体的に説明する。
【実施例】
【0018】
まず、図1に示す外観図、図2に示すブロック図を用いて、本発明に係わる液中残留塩素濃度装置の具体的な構成について説明する。
【0019】
本発明に係わる液中残留塩素濃度装置は、正面に入力部4及び表示器5を有する本体1と、電極群6(作用電極6a及び参照電極(基準電極)6b)を有するセンサー体2と、本体1とセンサー体2とを接続するケーブル3とを外見上に備え、増幅回路7、A/D変換器8、インピーダンス低減回路9、低減回路切替部13、増幅度切替部14、EEPROM10及びマイクロコンピュータ11を配設する電子基板と、電源部12とを本体の内部に備えることにより、全体を大略構成する。
【0020】
入力部4は、ONキー4A、スタートキー4b、モードキー4c、+キー4d及び−キー4eから成り、電力供給・測定開始・切替等をするための入力をする。ONキー4Aは、電源部12から電気系統各部に電力の供給を開始するためものである。スタートキー4bは、測定を開始するためのである。モードキー4cは、校正モード又は測定モードに切替えるためのものである。+キー4d、−キー4eは、試料水の校正値の設定、表示項目・数値等の選択をするためのものである。
【0021】
表示器5は、入力状況・測定結果・各種モード等を表示する。
【0022】
センサー体2は、作用電極6aと参照電極6bとを棒状の筐体2aの先端に備え、液中の残留塩素を検出し電極間電圧(検出値)を生ずる。作用電極6aは、白金(Pt)から成り、液中に浸けた際に残留塩素との反応の程度を示す電位が発生する。参照電極6bは、銀(Ag)に塩化銀膜(AgCl)を被覆して成り、液中に浸けた際に基準となる電位が発生する。
【0023】
ケーブル3は、その導線の一端側がセンサー体2の作用電極6aと参照電極6bとに配線接続して、センサー体2と一体を成し、又、その導線の他端側が本体1内部の電子基板に配線接続可能なようにコネクタ3aを有する。
【0024】
電源部12は、電気系統各部に電力を供給する。
【0025】
増幅回路7は、オペアンプA1にフィードバック抵抗R6及びR7(R6<R7)を用いた非反転増幅回路から成り、作用電極6aと参照電極6bとの間に生じる電極間電圧(アナログ信号)を段階的に増幅する。
【0026】
A/D変換器8は、この増幅された電極間電圧をデジタル信号に変換する。
【0027】
インピーダンス低減回路9は、作用電極6aと参照電極6bとの間に接続する抵抗R1(例えば、10MΩ)及び抵抗R2(例えば、200kΩ)から成り、液中に浸けた際に作用電極6aと参照電極6bとの間に生ずるインピーダンスを低減する。
【0028】
EEPROM10は、マイクロコンピュータ11により演算した換算係数値、その他の各種データを書換え可能に記憶する。
【0029】
マイクロコンピュータ11は、CPU、演算制御用プログラム(インピーダンス低減回路9の抵抗R1と抵抗R2との切替制御、増幅回路7の抵抗R6と抵抗R7との切替制御、換算係数の演算、試料水の残留塩素濃度の演算その他の演算制御等)・換算係数を演算するための演算式・試料水の残留塩素濃度を演算するための演算式等を記憶するROM、演算結果データ・入力データ等を一時的に記憶するRAM、タイマー、IOポート等を備え、抵抗R1と抵抗R2との切替制御、抵抗R6と抵抗R7との切替制御、換算係数の演算、試料水の残留塩素濃度の演算その他の各種情報についての演算制御等を行う。
【0030】
なお、Sw1、Sw2及びマイクロコンピュータ11にて低減回路切替部13を構成する。また、Sw6、Sw7及びマイクロコンピュータ11にて増幅度切替部14を構成する。また、インピーダンス低減回路9及び低減回路切替部13にてインピーダンス低減手段を構成する。また、増幅回路7及び増幅度切替部14にて増幅手段を構成する。また、マイクロコンピュータ11にて正規値演算手段を構成する。
【0031】
次に、図3に示すメインフローチャートを用いて、本発明に係わる液中残留塩素濃度装置の測定モードを主とした具体的な操作及び動作について説明する。
【0032】
ONキー4Aが押されると電源部12から電気系統各部に電力を供給し(ステップS1)、マイクロコンピュータ11において、測定又は校正のいずれが選択されたかを判断する(ステップS2)。ここで、モードキー4cが押されると(ステップS2でモードキーのオン)、校正モードに入る(ステップS4)。なお、この校正モードについては、後に詳述する。
【0033】
一方、センサー体2の電極群6が配置する先端部分が試料水に浸けられ、スタートキー4bが押されると(ステップS2でスタートキーのオン)、マイクロコンピュータ11のポートP2、P7からのOFF制御信号に基づいて切替スイッチSw2、Sw7がオフし、抵抗R2、R7が非接続状態となり、かつマイクロコンピュータ11のポートP1、P6からのON制御信号に基づいて切替スイッチSw1、Sw6がオンし、抵抗R1、R6が接続状態となる(ステップS3)。
【0034】
続いて、作用電極6aと参照電極6bとの間に電極間電圧(アナログ信号)が発生すると、増幅回路7においてこの発生した電極間電圧(アナログ信号)を増幅し、A/D変換器8においてデジタル信号に変換し、マイクロコンピュータ11において取り込む(ステップS5)。
【0035】
続いて、マイクロコンピュータ11において、A/D変換器8から取り込んだ電極間電圧を増幅回路7における増幅度で除することにより作用電極6aと参照電極6bとの間に生じた電極間電圧を演算し、この演算した電極間電圧が200mV以上であるか否かを判断する(ステップS6)。
【0036】
ここで、演算した電極間電圧が200mV以上である場合(ステップS6でYES)には、マイクロコンピュータ11のポートP1、P6からのOFF制御信号に基づいて切替スイッチSw1、Sw6がオフし、抵抗R1、R6が非接続状態となり、かつマイクロコンピュータ11のポートP2、P7からのON制御信号に基づいて切替スイッチSw2、Sw7がオンし、抵抗R2、R7が接続状態となる(ステップS7)。
【0037】
続いて、作用電極6aと参照電極6bとの間に電極間電圧(アナログ信号)が発生すると、増幅回路7においてこの発生した電極間電圧(アナログ信号)を増幅し、A/D変換器8においてデジタル信号に変換し、マイクロコンピュータ11において取り込む(ステップS8)。
【0038】
続いて、ステップS6において演算した電極間電圧が200mV以上でない場合(ステップS6でNO)、又はステップS8の後、マイクロコンピュータ11において、A/D変換器8から取り込んだこの電極間電圧にEEPROM10に記憶している換算係数値を乗ずることにより、試料水の残留塩素濃度を演算し(ステップS9)、表示器5において、この演算した試料水の残留塩素濃度(試料水の測定濃度値)を表示する(ステップS10)。
【0039】
なお、以降、ステップS2に戻り、処理を繰り返すことが可能となる。
【0040】
次に、図4に示すサブルーチンフローチャートを用いて、本発明に係わる液中残留塩素濃度装置の校正モードを主とした具体的な操作及び動作について説明する。
【0041】
まず、+キー4d及び−キー4eにて試料水の校正値(他の方法により正確に求めた試料水の残留塩素濃度)が入力されるとマイクロコンピュータ11のRAMにおいて試料水の校正値を一時記憶する(ステップS21)。
【0042】
続いて、マイクロコンピュータ11において、この入力された校正値が0.4mg/L以上であるか否かを判断する(ステップS22)。
【0043】
ここで、この入力された校正値が0.4mg/L以上でない場合(ステップS22でNO)には、マイクロコンピュータ11のポートP2、P7からのOFF制御信号に基づいて切替スイッチSw2、Sw7がオフし、抵抗R2、R7が非接続状態となり、かつマイクロコンピュータ11のポートP1、P6からのON制御信号に基づいて切替スイッチSw1、Sw6がオンし、抵抗R1、R6が接続状態となる(ステップS23)。
【0044】
一方、この入力された校正値が0.4mg/L以上である場合(ステップS22でYES)には、マイクロコンピュータ11のポートP1、P6からのOFF制御信号に基づいて切替スイッチSw1、Sw6がオフし、抵抗R1、R6が非接続状態となり、かつマイクロコンピュータ11のポートP2、P7からのON制御信号に基づいて切替スイッチSw2、Sw7がオンし、抵抗R2、R7が接続状態となる(ステップS24)。
【0045】
続いて、ステップS23又はステップS24の後、作用電極6aと参照電極6bとの間に電極間電圧(アナログ信号)が発生すると、増幅回路7においてこの発生した電極間電圧(アナログ信号)を増幅し、A/D変換器8においてデジタル信号に変換し、マイクロコンピュータ11において取り込む(ステップS25)。
【0046】
続いて、マイクロコンピュータ11において、先にRAMにおいて一時記憶する試料水の校正値をA/D変換器8から取り込んだこの電極間電圧で除することにより、換算係数を演算し(ステップS26)、この校正モードを抜ける(ステップS27)。
【0047】
以上が、液中残留塩素濃度計を実施例とした説明である。
【0048】
上述した実施例において、ステップS6による作用電極6aと参照電極6bとの間に生じた電極間電圧の判断を200mV以上であるか否か、及びステップS22による試料水の校正値の判断を0.4mg/L以上であるか否かとした理由は、図5の電極間電圧と残留塩素濃度の関係グラフに示すように、作用電極6aと参照電極6bとの間に抵抗R1を接続して残留塩素濃度を検出した際における作用電極6aと参照電極6bとの間に生ずる電極間電圧が、0から200mV(残留塩素濃度の0から0.4mg/Lに該当)程度までの範囲については非直線性が良く(非直線の程度が特に小さい)、これを超えた範囲については非直線性があまり良くない(非直線の程度が比較的大きい)からである。
【0049】
なお、上述の実施例においては、インピーダンス低減回路は、抵抗(R6、R7)だけによって実現したが、図6のブロック図に示すように、電圧を生成する電圧生成回路(R16、R17、R18、R19)と、電圧生成回路に接続するポテンションスタットと、ポテンションスタットと作用電極6aとの間に接続する出力抵抗(R20)とから成るようなインピーダンス低減回路21にて実現してもよい。なお、この場合には、低減回路切替部13は、マイクロコンピュータ11だけにより構成する低減回路切替部22となる。
【0050】
また、インピーダンス低減回路は、抵抗R6及び抵抗R7の2個によって実現したが、3個以上の複数個で実現しても同様に実施可能である。
【0051】
また、電極群を作用電極及び参照電極により構成し、その電極間電圧を検出する検出系の態様としたが、電極群を作用電極、参照電極及び対照電極により構成し、作用電極と対照電極(基準電極)との間に生ずる電流を検出する検出系の態様としても同様に実施可能である。
【0052】
また、図5に示す電極間電圧と残留塩素濃度との関係を示すグラフは、ある電極形状の際においてのデータ例であり、電極形状等が異なる場合には、特性の傾向は同様に示すが、値は異なる。例えば、R1の直線関係から非直線関係に移るポイント(200mV、0.4mg/Lの箇所)は、電極形状等によって異なる。
【0053】
また、本発明に係わる液中残留塩素濃度装置の測定モードを主とした具体的な操作及び動作については、図3に示すメインフローチャートを用いて説明したが、図7に示すメインフローチャートのような流れで行ってもよい。
【0054】
図7に示すメインフローチャートによる測定モードを主とした具体的な操作及び動作について詳述する。S41からS45までは、図3に示すメインフローチャートのS1からS5までと同じであるので詳述を省略する。
【0055】
ステップS45に続いて、マイクロコンピュータ11において、A/D変換器8から取り込んだこの電極間電圧にEEPROM10に記憶している換算係数値を乗ずることにより、試料水の残留塩素濃度を演算する(ステップS46)。
【0056】
続いて、マイクロコンピュータ11において、この演算した試料水の残留塩素濃度が0.4mg/L以上であるか否かを判断する(ステップS47)。
【0057】
ここで、演算した試料水の残留塩素濃度が0.4mg/L以上である場合(ステップS47でYES)には、マイクロコンピュータ11のポートP1、P6からのOFF制御信号に基づいて切替スイッチSw1、Sw6がオフし、抵抗R1、R6が非接続状態となり、かつマイクロコンピュータ11のポートP2、P7からのON制御信号に基づいて切替スイッチSw2、Sw7がオンし、抵抗R2、R7が接続状態となる(ステップS48)。
【0058】
続いて、作用電極6aと参照電極6bとの間に電極間電圧(アナログ信号)が発生すると、増幅回路7においてこの発生した電極間電圧(アナログ信号)を増幅し、A/D変換器8においてデジタル信号に変換し、マイクロコンピュータ11において取り込む(ステップS49)。
【0059】
続いて、マイクロコンピュータ11において、A/D変換器8から取り込んだこの電極間電圧にEEPROM10に記憶している換算係数値を乗ずることにより、切替後の試料水の残留塩素濃度を演算する(ステップS50)。
【0060】
続いて、ステップS47において試料水の残留塩素濃度が0.4mg/L以上でない場合(ステップS47でNO)、又はステップS50の後、表示器5において、演算した試料水の残留塩素濃度(試料水の測定濃度値)を表示する(ステップS51)。
【0061】
なお、以降、ステップS2に戻り、処理を繰り返すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】液中残留塩素濃度装置(電気化学式測定装置)の外観図である。
【図2】液中残留塩素濃度装置(電気化学式測定装置)のブロック図である。
【図3】液中残留塩素濃度装置(電気化学式測定装置)メインフローチャートである。
【図4】液中残留塩素濃度装置(電気化学式測定装置)のサブルーチンフローチャートである。
【図5】電極間電圧と残留塩素濃度との関係を示すグラフである
【図6】液中残留塩素濃度装置(電気化学式測定装置)の別のブロック図である。
【図7】液中残留塩素濃度装置(電気化学式測定装置)の別のメインフローチャートである。
【図8】出力(環境中の特定成分に係わる検出値)と濃度(環境中の特定成分の値)との関係を示すグラフである。(背景技術)
【図9】電極間出力の割合と攪拌回転数との関係を示すグラフである。(背景技術)
【符号の説明】
【0063】
1 本体
2 センサー体
2a 棒状の筐体
3 ケーブル
3a コネクタ
4 入力部
4a ONキー
4b スタートキー
4c モードキー
4d +キー
4e −キー
5 表示器
6 電極群
6a 作用電極
6b 参照電極(基準電極)
7 増幅回路
8 A/D変換器
9、21 インピーダンス低減回路
10 EEPROM
11 マイクロコンピュータ
12 電源部
13、22 低減回路切替部
14 増幅度切替部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中の特定成分と電気化学的な反応をする作用電極と前記環境中において基準となる基準電極とを含み、前記作用電極による電気化学的な反応及び前記基準電極による基準に基づいた前記環境中の特定成分に係わる検出値を出力する電極群と、
前記環境中における前記作用電極と前記基準電極との間に生ずるインピーダンスを段階的に低減するインピーダンス低減手段と、
前記インピーダンス低減手段による各段階へのインピーダンスの低減に対応して、前記電極群により出力される検出値を段階的に増幅する増幅手段と、
前記増幅手段により増幅された検出値に基づいて前記環境中の特定成分の正規値を求める正規値演算手段と、
を備えることを特徴とする電気化学式測定装置。
【請求項2】
前記インピーダンス低減手段は、前記作用電極と前記基準電極との間に複数の抵抗を段階的に接続するインピーダンス低減回路と、前記インピーダンス低減回路における複数の抵抗の接続段階を切替える低減回路切替部とから成り、
前記増幅手段は、前記電極群により出力される検出値を段階的に増幅する増幅回路と、前記低減回路切替部による複数の抵抗の接続段階への切替えに応じて、前記増幅回路における増幅段階を切替える増幅度切替部とから成ることを特徴とする請求項1記載の電気化学式測定装置。
【請求項3】
前記インピーダンス低減手段は、電圧を段階的に生成する多段階電圧生成回路と、前記多段階電圧生成回路に接続するポテンションスタットと、前記ポテンションスタットと前記作用電極との間に接続する出力抵抗とを有するインピーダンス低減回路と、前記多段階電圧生成回路における電圧の生成段階を切替える低減回路切替部とから成り、
前記増幅手段は、前記電極群により出力される検出値を段階的に増幅する増幅回路と、前記低減回路切替部による電圧の生成段階への切替えに応じて、前記増幅回路における増幅段階を切替える増幅度切替部とから成ることを特徴とする請求項1記載の電気化学式測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−90986(P2006−90986A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280259(P2004−280259)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)