電気化学検査ストリップにおける直接的な干渉電流の影響を軽減する方法
【課題】非コーティング領域を備えた電極を有する電気化学ストリップを用いてグルコース監視システムにおける直接的な干渉電流の影響を軽減する方法を提供すること。
【解決手段】電気化学センサ(62)を用いて分析物を測定する際に体液に対する干渉成分の影響を軽減する方法であって、基板(50)、第1の動作電極(10)、第2の動作電極(12)、および基準電極(14)を含む電気化学センサ(62)に用いることができる。第1の動作電極と第2の動作電極かまたは第2の動作電極のみが、試薬(22)に覆われていない領域を含む。本発明では、本発明の検査ストリップの実施形態を用いて干渉物質の影響を数学的に補正するアルゴリズムを説明する。
【解決手段】電気化学センサ(62)を用いて分析物を測定する際に体液に対する干渉成分の影響を軽減する方法であって、基板(50)、第1の動作電極(10)、第2の動作電極(12)、および基準電極(14)を含む電気化学センサ(62)に用いることができる。第1の動作電極と第2の動作電極かまたは第2の動作電極のみが、試薬(22)に覆われていない領域を含む。本発明では、本発明の検査ストリップの実施形態を用いて干渉物質の影響を数学的に補正するアルゴリズムを説明する。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、全体として、分析物測定システムによって測定される測定値における干渉成分の影響を軽減する方法に関し、詳細には、非コーティング領域を備えた電極を有する電気化学ストリップを用いてグルコース監視システムにおける直接的な干渉電流の影響を軽減する方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
多くの場合、電気化学グルコース測定システムでは、例えば、アセトアミノフェン、アスコルビン酸、ビリルビン、ドーパミン、ゲンチジン酸、グルタチオン、レボドパ、メチルドーパ、トラジミド(tolazimide)、トルブタミド、および尿酸などの生理学的流体中に一般に見られる干渉成分の酸化によって酸化電流が増大しうる。したがって、干渉成分によって生成される酸化電流部分を低減または排除して、グルコース測定器の精度を改善することができる。すべての酸化電流がグルコース濃度だけに依存するように、いずれの干渉成分からも酸化電流が生成されないのが理想的である。
【0003】
したがって、例えば、生理学的流体中に一般に見られるアスコルビン酸塩、尿酸塩、およびアセトアミノフェンなどの潜在的な干渉成分の存在下での電気化学センサの精度を改善するのが望ましい。このような電気化学センサで調べる分析物の例として、グルコース、乳酸塩、およびフルクトサミンを挙げることができる。グルコースが説明する主な分析物であるが、当業者には、ここに開示する本発明を他の分析物にも利用できることは明らかであろう。
【0004】
酸化電流は、様々な方法で生成することができる。具体的には、所望の酸化電流は、酸化還元メディエータと目的の分析物(例えば、グルコース)との相互作用によって生じるが、不所望の酸化電流は通常、電極表面で酸化される干渉成分および酸化還元メディエータと相互作用する干渉成分から生成される。例えば、ある種の干渉成分(例えば、アセトアミノフェン)は、電極表面で酸化する。他の干渉成分(例えば、アスコルビン酸)は、酸化還元メディエータとの化学反応によって酸化する。グルコース測定システムにおけるこのような干渉成分の酸化により、測定される酸化電流は、グルコースとすべての干渉成分の両方の濃度に依存する。したがって、干渉成分の濃度がグルコースと同じ効率で酸化し、かつ干渉成分の濃度がグルコースの濃度よりも高い場合、グルコース濃度の測定は、酸化電流全体に対する干渉成分の影響を軽減または排除して改善することができる。
【0005】
干渉成分の影響を低減するために用いることができる既知のある方法では、負に帯電した膜を用いて動作電極を覆う。一例として、NAFION(商標)などのスルホン酸フルオロポリマー(sulfonated fluoropolymer)を用いて、負に帯電したあらゆる化学物質が近づけないようにすることができる。一般に、アスコルビン酸塩や尿酸塩などの大抵の干渉成分は、負の電荷を有するため、負に帯電した膜は、負に帯電した干渉成分が電極表面に到達してその表面で酸化するのを防止する。しかしながら、この技術は、アセトアミノフェンなどのある種の干渉成分が正味の負の電荷を有しておらず、負に帯電した膜を通過できるため、必ずしも成功するわけではない。この技術はまた、干渉成分とある種の酸化還元メディエータとの相互作用から生じる酸化電流も低減しない。負に帯電した膜を動作電極に使用することにより、フェリシアニドなどのある種の一般に使用される酸化還元メディエータが負に帯電した膜を通過して電極と電子交換するのも防止できる。
【0006】
干渉成分の影響を軽減するために用いることができる他の既知の方法では、動作電極の上部にサイズ選択膜を用いる。一例として、酢酸セルロースなどの100ダルトン排除膜を用いて動作電極を覆い、分子量が100ダルトンを超えるすべての化学物質を排除することができる。一般に、大抵の干渉成分は、分子量が100ダルトンを超えるため、電極表面で酸化しないように排除される。しかしながら、このような選択膜は通常、検査ストリップの製造をより複雑にし、かつ酸化したグルコースが選択膜を介して拡散して電極に到達しなければならないため、試験時間が長くなる。
【0007】
干渉成分の影響を軽減するために用いることができる別の方法では、例えば、約−300mV〜+100mV(飽和カロメル電極に対して測定した場合)の低い酸化還元電位を有する酸化還元メディエータを用いる。酸化還元メディエータは、低い酸化還元電位を有するため、動作電極にかかる電圧も比較的低くなり、これにより、干渉成分が動作電極によって酸化される速度が低下する。比較的低い酸化還元電位を有する酸化還元メディエータの例として、オスミウムビピリジル複合体(osmium bipyridyl complexes)、フェロセン誘導体、およびキノン誘導体を挙げることができる。この技術の不利な点は、電位が比較的低い酸化還元メディエータは、合成が困難である場合が多く、不安定で、水溶性が低いことである。
【0008】
干渉成分の影響を軽減するために用いることができる別の既知の方法では、酸化還元メディエータでコーティングされたダミー電極を用いる。場合によっては、ダミー電極を、不活性なタンパク質または不活化された酸化還元酵素でコーティングすることもできる。ダミー電極の目的は、電極表面で干渉成分を酸化させること、および/または干渉成分によって還元された酸化還元メディエータを酸化することである。この方法では、干渉の影響を排除するために、動作電極で測定される酸化電流の合計からダミー電極で測定される電流を減じる。この方法の不利な点は、検査ストリップがグルコースの測定に用いることができない追加の電極および電気接点(すなわち、ダミー電極)を含まなければならないことである。ダミー電極を含めると、グルコース測定システムにおける電極の使用が非効率となる。
【0009】
〔発明の概要〕
ここに記載する本発明は、電気化学センサを用いて分析物を検出する際の干渉の影響を軽減する方法に関する。本発明に従った方法で使用できる電気化学センサは、基板、少なくとも第1の動作電極と第2の動作電極、および基準電極を含む。試薬層は、第1の動作電極の全てを完全に覆い、第2の動作電極を部分的にのみ覆うように電極上に設けられている。本発明に従った方法では、第2の動作電極の試薬層に覆われていない部分で生成される酸化電流を用いて、グルコース測定値に対する干渉物質の影響を補正する。
【0010】
ここに記載する本発明は、電気化学センサにおける干渉を軽減する方法を含む。この方法は、試薬層によって覆われた第1の動作電極における第1の酸化電流を測定するステップと、試薬層によって部分的にのみ覆われた第2の動作電極における第2の酸化電流を測定するステップと、予め選択された分析物(例えば、グルコース)の濃度を表す補正された酸化電流値を計算するステップとを含む。この計算では、第2の動作電極の覆われていない領域に対する覆われた領域の比率を用いて、酸化電流における干渉の影響を排除する。具体的には、補正された電流値は、以下の式を用いて計算することができる。
【数1】
但し、Gは補正された電流密度、WE1は第1の動作電極における補正されていない電流密度、WE2は第2の動作電極における補正されていない電流密度、Acovは第2の動作電極のコーティング領域、Auncは第2の動作電極の非コーティング領域である。
【0011】
本発明に使用できる電気化学ストリップの一実施形態では、電気化学グルコース検査ストリップは、試薬層で完全に覆われた第1の動作電極および試薬層で部分的にのみ覆われた第2の動作電極を含む。したがって、第2の動作電極は、試薬コーティング領域と非コーティング領域を有する。試薬層は、例えば、グルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素と、例えば、フェリシアニドなどの酸化還元メディエータを含むことができる。第1の動作電極は、1つがグルコースによる酸化電流、もう1つが干渉物質による酸化電流である2つの酸化電流源の合計を有する。同様に第2の動作電極は、グルコースによる酸化電流、試薬でコーティング部分における干渉物質による酸化電流、および試薬非コーティング部分における干渉物質による酸化電流の3つの酸化電流源の合計を有する。第2の動作電極の非コーティング部分は、この領域に試薬が存在しないため、干渉物質のみを酸化さ、グルコースは酸化させない。第2の動作電極の非コーティング部分で測定される酸化電流を用いて、合計の干渉物質酸化電流を推定し、干渉物質の影響を排除した補正された酸化電流を計算することができる。
【0012】
本発明に従った方法に用いることができる代替のストリップの実施形態では、電気化学グルコース検査ストリップは、試薬層で部分的にのみ覆われた第1の動作電極および第2の動作電極を含む。したがって、この実施形態では、第1の動作電極および第2の動作電極はそれぞれ、試薬コーティング部分と試薬非コーティング部分を有する。第1の動作電極の第1の非コーティング領域と第2の動作電極の第2の非コーティング領域は異なっている。第1の動作電極および第2の動作電極の非コーティング部分で測定される酸化電流を用いて、非コーティング部分の干渉酸化電流を推定し、補正されたグルコース電流を計算する。
【0013】
ここに記載する本発明は、電気化学センサにおける干渉を軽減する方法も含む。この方法は、試薬層で部分的に覆われた第1の動作電極における第1の酸化電流を測定するステップと、試薬層で部分的にのみ覆われた第2の動作電極における第2の酸化電流を測定するステップと、予め選択された分析物(例えば、グルコース)の濃度を表す補正された酸化電流値を計算するステップと、を含む。この計算では、第1の動作電極および第2の動作電極の覆われていない領域に対する覆われた領域の比率を用いて、酸化電流に対する干渉の影響を排除する。具体的には、補正された電流値は以下の式を用いて計算することができる。
【数2】
但し、f1は
に等しく、f2は
に等しく、Aunc1は第1の動作電極の非コーティング領域、Aunc2は第2の動作電極の非コーティング領域、Acov1は第1の動作電極のコーティング領域、Acov2は第2の動作電極のコーティング領域、Gは補正された電流値、WE1は第1の動作電極における補正されていない電流密度、WE2は第2の動作電極における補正されていない電流密度である。
【0014】
添付の図面を参照しながら、本発明の原理を用いた例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明を読めば、本発明の特徴および利点をより良く理解できるであろう。
【0015】
〔発明の詳細な説明〕
ここに開示する本発明は、電気化学グルコース測定システムの選択性を改善するための検査ストリップおよび方法を含む。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に従った検査ストリップの組立分解斜視図である。図1に例示されている本発明の実施形態では、血液または間質液などの体液中のグルコース濃度を測定するために用いることができる電気化学検査ストリップ62は、試薬層22で完全に覆われた第1の動作電極10、および試薬層22で部分的にのみ覆われた第2の動作電極12を含む。したがって、第2の動作電極は、試薬コーティング部分と試薬非コーティング部分を有する。試薬層22は、例えば、フェリシアニドなどの酸化還元メディエータ、およびグルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素を含むことができる。フェリシアニドは、炭素電極で約400mV(飽和カロメル電極に対して測定した場合)の酸化還元電位を有するため、例えば血液などの体液の導入により、酸化還元メディエータおよび/または動作電極によって干渉物質の著しい酸化が起こり、不所望な大きな酸化電流が生成される。したがって、第1の動作電極10で測定される酸化電流は、グルコースの酸化によって生成される第1の所望の酸化電流と、干渉物質によって生成される第2の不所望の酸化電流との酸化電流源の合計となる。第2の動作電極12で測定される酸化電流もまた、グルコースの酸化によって生成される第1の所望の酸化電流と、動作電極12の覆われた部分で干渉物質によって生成される第2の不所望の酸化電流と、動作電極12の覆われていない部分で干渉物質によって生成される第3の酸化電流との酸化電流源の合計となる。第2の動作電極12の非コーティング部分は、試薬が存在しないため、干渉物質のみを酸化させ、グルコースは酸化させない。第2の動作電極12の非コーティング部分で測定される酸化電流はグルコースに依存せず、この第2の動作電極12の非コーティング部分が既知であるため、第2の動作電極12の非コーティング部分の干渉物質の酸化電流を計算することが可能である。第2の動作電極12の非コーティング部分の計算した干渉物質酸化電流と、第1の動作電極10の領域および第2の動作電極12のコーティング部分の領域が分かっているため、電極で酸化した干渉成分の影響が補正されたグルコース電流を計算することが可能である。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に従った検査ストリップ62の組立分解斜視図である。図1に例示されている検査ストリップ62は、基板50に6つの層の材料を堆積させる6つの連続した印刷ステップによって製造することができる。この6つの層は、例えば、基板50にスクリーン印刷して堆積させることができる。本発明のある実施形態では、この6つの層は、導電層64、絶縁層16、試薬層22、接着層66、親水性層68、および最上層40を含むことができる。導電層64は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、基準電極14、第1の接点11、第2の接点13、基準接点15、およびストリップ検出バー17を含むことができる。絶縁層16は、カットアウト18をさらに含むことができる。接着層66は、第1の接着パッド24、第2の接着パッド26、および第3の接着パッド28をさらに含むことができる。親水性層68は、第1の親水性フィルム32および第2の親水性フィルム34をさらに含むことができる。最上層40は、透明部分36および不透明部分38をさらに含むことができる。検査ストリップ62は、図1に例示されているように、第1の側面54、第2の側面56、先端電極面58、および基端電極面60を有する。次の段落では、検査ストリップ62の各層を詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態では、基板50は、プラスチック、ガラス、およびセラミックなどの電気絶縁材料である。本発明の好適な実施形態では、基板50は、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETG、またはポリエステルなどのプラスチックとすることができる。具体的には、ポリエステルは、例えば、デュポン・テイジン・フィルムズ(DuPont Teijin Films)が製造するMelinex(登録商標)ST328とすることができる。基板50は、インキの接着を改善するために一方または両方の面に施されるアクリルコーティングも含むことができる。
【0019】
基板50上に堆積された第1の層は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、基準電極14、およびストリップ検出バー17を含む導電層64である。本発明に従えば、エマルジョンパターンを備えたスクリーンメッシュを用いて、図1に例示されているように、例えば、導電カーボンインキなどの材料を画定されたジオメトリに堆積させることができる。基準電極14は、対電極、基準/対電極、または準基準電極とすることもできる。導電層64は、スクリーン印刷、グラビア印刷、スパッタリング、蒸着、無電解メッキ、インクジェット、昇華、および化学蒸着などを用いて基板50上に堆積させることができる。導電層64に用いることができる好適な材料は、Au、Pd、Ir、Pt、Rh、ステンレス鋼、ドープされた酸化錫、および炭素などである。本発明のある実施形態では、カーボンインキ層は、1〜100μmの範囲、より具体的には5〜25μmの範囲、さらに具体的には約13μmの高さを有することができる。導電層の高さは、導電層の所望の抵抗および導電層を印刷するために用いる材料の導電性によって様々にすることができる。
【0020】
第1の接点11、第2の接点13、および基準接点15を用いて、測定器に電気的に接続することができる。これにより、測定器が、第1の接点11、第2の接点13、および基準接点15のそれぞれを介して第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14と電気的に通信することができる。
【0021】
基板50上に堆積された第2の層は、絶縁層16である。絶縁層16は、図1に示されているように、導電層64の少なくとも一部の上に設けられる。図2は、絶縁層16に対する第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14の位置を強調した検査ストリップ62の先端部分の簡易平面図である。絶縁層16は、図1および図2に示されているように、T型構造にできるカットアウト18をさらに含む。カットアウト18は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14の一部を露出させ、これらの部分を液体に接触させることができる。カットアウト18は、先端カットアウト幅W1、基端カットアウト幅W2、先端カットアウト長さL4、および基端カットアウト長さL5をさらに有する。先端カットアウト幅W1は、図2に例示されているように、第1の動作電極10および基準電極14の幅に一致する。先端カットアウト長さL4は、第1の動作電極10と基準電極14の合計よりも長い。基端カットアウト幅W2および基端カットアウト長さL5は、第2の動作電極12の幅および長さを露出させる矩形部分を形成している。本発明に従えば、先端カットアウト幅W1、基端カットアウト幅W2、先端カットアウト長さL4、および基端カットアウト長さL5はそれぞれ、約0.7mm、1.9mm、3.2mm、および0.43mmの寸法を有することができる。本発明の一実施形態では、第1の動作電極10、基準電極14、および第2の動作電極12はそれぞれ、約0.8mmとすることができるL1の長さ、約1.6mmとすることができるL2の長さ、および約0.4mmとすることができるL3の長さを有する。本発明に従えば、電極間隔S1は、第1の動作電極10と基準電極14との間の距離および基準電極14と第2の動作電極12との間の距離であり、約0.4mmとすることができる。
【0022】
基板50上に堆積された第3の層は試薬層22である。試薬層22は、図1に示されているように、導電層64および絶縁層16の少なくとも一部の上に設けられている。図3は、本発明の第1の実施形態に従った検査ストリップ62の先端部分の簡易平面図である。この検査ストリップ62の先端部分は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、基準電極14、および絶縁層16に対して試薬層22の位置を強調している。試薬層22は、図1および図3に例示されているように、試薬幅W3および試薬長さL6を有する矩形にすることができる。本発明の一実施形態では、試薬幅W3は約1.3mm、試薬長さL6は約4.7mmとすることができる。本発明の別の実施形態では、試薬層22は、第1の動作電極10および基準電極14を完全に覆うように十分な大きさの幅W3および長さL6を有する。しかしながら、試薬層22は、第2の動作電極が試薬層22で完全に覆われないように適切な大きさの幅W3および長さL6を有する。このようにした場合、第2の動作電極12は、図3に例示されているように、コーティング部分12cおよび非コーティング部分12uを有する。非コーティング部分12uは、ウイング幅W4および第2の動作電極長さL3に一致する長さを有する2つの矩形にすることができる。限定目的ではない一例として、ウイング幅W4は約0.3mmとすることができる。本発明の一実施形態では、試薬層22は、例えば、グルコースオキシダーゼまたはPQQグルコースデヒドロゲナーゼ(PQQは、ピロロキノリンキノン(pyrrolo-quionoline-quinoneの頭字語である))などの酸化還元酵素およびフェリシアニドなどの酸化還元メディエータを含むことができる。
【0023】
基板50上に堆積された第4の層は、第1の接着パッド24、第2の接着パッド26、および第3の接着パッド28を含む接着層66である。第1の接着パッド24および第2の接着パッド26は、サンプル受容室の壁部を形成している。本発明の一実施形態では、第1の接着パッド24および第2の接着パッド26は、どちらも試薬層22に接触しないように基板50の上に設けることができる。ストリップの体積を減少させなければならない本発明の別の実施形態では、第1の接着パッド24および/または第2の接着パッド26を、試薬層22と重なるように基板50上に設けることができる。本発明のある実施形態では、接着層66は、約70〜110μmの高さを有する。接着層66は、両面感圧接着材、UV硬化接着剤、感熱接着剤、熱硬化プラスチック、または当分野で周知の他の接着剤を含むことができる。限定目的ではない一例として、接着層66は、英国ハーツ、トリング(Tring, Herts, United Kingdom)に所在のテープ・スペシャリティーズ社(Tape Specialties LTD)が販売する水性アクリルコポリマー感圧接着材(商品番号A6435)などの感圧接着材をスクリーン印刷して形成することができる。
【0024】
基板50の上に堆積された第5の層は、図1に例示されているように、第1の親水性フィルム32および第2の親水性フィルム34を含む親水性層68である。親水性層68は、サンプル受容室の「ルーフ」を形成している。サンプル受容室の「側壁」および「フロアー」はそれぞれ、接着層66および基板50の一部によって形成されている。限定目的ではない一例として、親水性層68は、3M社が販売するような親水性曇り止めコーティングを備えた光学的に透明なポリエステルとすることができる。このコーティングの親水性は、液体をサンプル受容室内に導入しやすくするため、ストリップ62のデザインに用いられている。
【0025】
基板50の上に堆積された第6の層すなわち最終層は、図1に例示されているように、透明部分36および不透明部分38を含む最上層40である。本発明に従えば、最上層40は、感圧接着材で一側がコーティングされたポリエステルを含む。最上層40は、血液が透明部分36の下側にあるときにユーザーが高いコントラストを観察できるようにする不透明部分38を有する。これにより、ユーザーは、サンプル受容室が十分に満たされたことを視覚で確認することができる。ストリップ62が完全に積層されたら、図3に例示されているように、線A‐A’に沿ってカットし、このカットによりサンプル口52が形成される。
【0026】
図1‐図3に例示されている第1の検査ストリップの実施形態は、試薬層22が液体サンプル中に溶解し、この溶解した試薬層の部分が第2の動作電極12の非コーティング部分12uの上に移動しうるという欠点を有しうる。万一このようなことが起こると、非コーティング部分12uも、グルコース濃度に比例する酸化電流を測定する。これにより、干渉物質の酸化の影響を排除するための数学的アルゴリズムを使用しにくくなる。本発明の代替の実施形態では、試薬層22は、非コーティング部分12uに移動しないで溶解するようにデザインすべきである。例えば、試薬層22は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14に化学的に結合するか、または溶解した試薬層22への移動を最小限にする増粘剤を含むことができる。
【0027】
図4に例示されている本発明の別の実施形態は、第2の動作電極の非コーティング部分への溶解した試薬の移動を軽減し、状況によっては最小限にする。この実施形態では、第2の動作電極102は、図4に例示されているように、第2の動作電極102の2つの別個の部分がカットアウト108によって露出されるC型のジオメトリを有する。本発明に従えば、試薬層110は、図6に例示されているように、第2の動作電極102の一部のみに設けられ、非コーティング部分102uとコーティング部分102cを形成している。非コーティング部分102uは、サンプル口52に近接している。コーティング部分102cは、第1の動作電極100に近接している。組み立てられた検査ストリップ162のサンプル口52に液体を導入すると、この液体は、サンプル口52から、全ての電極が液体で覆われるまでコーティング部分102cに流れる。非コーティング部分102uを液体の流れの上流に配置することにより、試薬層110が溶解して非コーティング部分102uに移動するのをほぼ完全に防止することができる。これにより、測定した酸化電流から干渉物質の影響を正確に排除した数学的アルゴリズムが可能となる。
【0028】
図4は、検査ストリップ162の組立分解斜視図である。検査ストリップ162は、導電層164、絶縁層106、および試薬層110の形状または位置が変化している点を除き、検査ストリップ62と同様に製造される。本発明の第2の実施形態では、基板50、接着層66、親水性層68、および最上層40は、第1の検査ストリップの実施形態と同じである。検査ストリップ162は、第1の側面54、第2の側面56、先端電極面58、および基端電極面60を有する。本発明の第1の検査ストリップの実施形態と第2の検査ストリップの実施形態では、同じ構造を有する要素には、同じ参照番号および名称を付したことに留意されたい。これらの検査ストリップの実施形態における同様の要素が構造が異なる場合、このような要素は、同一の名称であるが、異なる参照番号を付した。次の段落から、検査ストリップ162の各層を詳細に説明する。
【0029】
図4に例示されているストリップの実施形態では、基板50の上に堆積された第1の層は、第1の動作電極100、第2の動作電極102、基準電極104、第1の接点101、第2の接点103、基準接点105、およびストリップ検出バー17を含む導電層164である。本発明に従えば、エマルジョンパターンを有するスクリーンメッシュを用いて、図4に例示されているように、例えば、導電カーボンインキなどの材料を画定されたジオメトリに堆積させることができる。第1の接点101、第2の接点103、および基準接点105を用いて、測定器に電気的に接続することができる。これにより、測定器が、第1の接点101、第2の接点103、および基準接点105のそれぞれを介して第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104と電気的に通信することができる。
【0030】
図4の基板50上に堆積された第2の層は絶縁層106である。絶縁層106は、図4に示されているように、導電層164の少なくとも一部の上に設けられている。図5は、絶縁層106に対する第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104の位置を強調した検査ストリップ162の先端部分の簡易平面図である。
【0031】
図4に示されている基板50上に堆積された第3の層は、図6に示されているように、導電層164および絶縁層106の少なくとも一部の上に設けられた試薬層110である。図6は、第1の動作電極100、第2の動作電極102、基準電極104および絶縁層106に対する試薬層110の位置を強調した本発明の第2の実施形態に従った検査ストリップ162の先端部分の簡易平面図である。試薬層110は、試薬幅W13および試薬長さL16を有する矩形の形状にすることができる。本発明の一実施形態では、試薬幅W13を約1.3mm、試薬長さL16を約3.2mmとすることができる。本発明の好適な実施形態では、試薬層110は、第1の動作電極100、コーティング部分102c、および基準電極104を完全に覆うが、非コーティング部分102uを覆わないように十分な幅W13および長さL16を有する。
【0032】
図7は、試薬層が導電層と共に例示されている図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。図6とは異なり、図7は、絶縁層106を示していない。これは、不透明な絶縁層106の下側に隠れたコーティング部分102cと非コーティング部分102uとの間の導電関係を示すのに役立つ。
【0033】
図4に例示されているストリップの実施形態では、絶縁層106を用いて、第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104の幅を画定している。さらに、絶縁層106は、図4‐図6に示されているT型の構造にできるカットアウト108を含む。カットアウト108は、第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104の一部を露出させ、これらの部分を液体に接触させることができる。さらに、カットアウト108は、図5および図6に例示されているように、先端カットアウト幅W11、基端カットアウト幅W12、先端カットアウト長さL14、および基端カットアウト長さL15を有する。先端カットアウト幅W11は、非コーティング部分102uの幅に一致する。先端カットアウト長さL14は、非コーティング部分102uの長さよりも長い。基端カットアウト幅W12と基端カットアウト長さL15は、第1の動作電極100、基準電極104、およびコーティング部分102cの幅および長さをほぼ露出させる矩形部分を形成している。
【0034】
本発明に従えば、先端カットアウト幅W11、基端カットアウト幅W12、先端カットアウト長さL14、および基端カットアウト長さL15はそれぞれ、約1.1mm、0.7mm、2.5mm、および2.6mmの寸法を有することができる。
【0035】
図4の実施形態では、非コーティング部分102u、基準電極104、第1の動作電極100、およびコーティング部分102cはそれぞれ、約0.7mmとすることができるL10の長さ、約0.7mmとすることができるL12の長さ、約0.4mmとすることができるL11の長さ、および0.4mmとすることができるL13の長さを有する。電極間隔S11は、約0.2〜0.75mmの範囲、より好ましくは0.6〜0.7mmの範囲とすることができる非コーティング部分102uと基準電極104との間の距離である。電極間隔S10は、基準電極104と第1の動作電極100との間の距離およびコーティング部分102cと第1の動作電極100との間の距離であり、約0.2mmとすることができる。電極間隔S11は、試薬が溶解して非コーティング部分102uに移動する可能性を低くするためにS10よりも大きいことに留意されたい。加えて、電極間隔S11は、印刷工程のばらつきにより試薬層110が非コーティング部分102uの上に堆積される可能性を低くするためにS10よりも大きい。第4の層から第6の層は、第1のストリップの実施形態と同様にストリップ162の上に次々に設けられる。接着層66、親水性層68、および最上層40の相対位置および形状が図4に例示されている。
【0036】
図8に例示されている本発明の実施形態では、電極が液体に接触する順番が非コーティング部分102u、第1の動作電極100、基準電極104、そしてコーティング部分102cとなるように、第2の動作電極102のC型を部分的に変更することができる。代替の形態では、第1の動作電極100とコーティング部分102cは、基準電極104から等距離であって、抵抗降下に望ましい。図7に例示されている第2のストリップの実施形態(すなわち、検査ストリップ162)では、電極が液体に接触する順番が非コーティング部分102u、基準電極104、第1の動作電極100、そしてコーティング部分102cとなるように電極が配置されている。検査ストリップ162の場合、コーティング部分102cは、第1の動作電極100と基準電極104との間の距離よりも基準電極104から離れている。
【0037】
したがって、アルゴリズムを用いて、干渉物質の影響のない補正されたグルコース電流を計算する。検査ストリップにサンプルを導入すると、一定の電位が第1および第2の動作電極にかかり、両方の電極で電流を測定する。試薬が電極領域の全体を覆っている第1の動作電極では、以下の式を用いて酸化電流に寄与する成分を表すことができる。
WE1=G+Icov (式1)
但し、WE1は第1の動作電極における電流密度、Gは干渉物質の影響のないグルコースによる電流密度、Icovは試薬で覆われた動作電極の部分における干渉物質による電流密度である。
【0038】
試薬で部分的に覆われた第2の動作電極では、以下の式を用いて酸化電流に寄与する成分を表すことができる。
WE2=G+Icov+Iunc (式2)
但し、WE2は第2の動作電極における電流密度、Iuncは試薬で覆われていない動作電極の部分における干渉物質による電流密度である。本発明の代替の実施形態では、第1の動作電極と第2の動作電極で異なった領域に試薬をコーティングすることができるが、式を異なる非コーティング領域に対して修正しなければならない。
【0039】
干渉物質の影響を軽減するために、第2の動作電極のコーティング部分における干渉電流と第2の動作電極の非コーティング部分における干渉電流との間の関係を表す式を導出した。コーティング部分で測定される干渉物質酸化電流密度は、非コーティング部分で測定される電流密度と同じであると見積もる。この関係は、以下の式で表すことができる。
【数3】
但し、Acovは試薬で覆われた第2の動作電極の領域、Auncは試薬で覆われていない第2の動作電極の領域である。
【0040】
非コーティング部分12uおよびコーティング部分12cはそれぞれ、AuncおよびAcovとして表す領域を有することができることに留意されたい。非コーティング部分12uは、試薬層22でコーティングされていないため、干渉物質は酸化させることができるがグルコースは酸化させることができない。これとは異なり、コーティング部分12cは、グルコースと干渉物質を酸化させることができる。非コーティング部分12uは、コーティング部分12cの領域に比例して干渉物質を酸化させることが経験的に分かっているため、第2の動作電極12全体で測定される干渉物質電流の割合を推定することが可能である。これにより、第2の動作電極12で測定される全電流から、干渉物質電流の部分を差し引いて補正することができる。本発明のある実施形態では、Aunc:Acovの比率は、約0.5:1〜5:1の間、好ましくは約3:1にすることができる。電流を補正するためのこの数学的アルゴリズムについての詳細は、以降の段落で説明する。
【0041】
本発明の代替の実施形態では、コーティング部分で測定される干渉物質酸化電流密度は、非コーティング部分で測定される電流密度とは異なりうる。これは、コーティング部分における干渉物質のより効率的な酸化またはより非効率的な酸化によるものである。ある場合には、酸化還元メディエータの存在により、非コーティング部分に対する干渉物質の酸化が促進されるであろう。別の場合には、ヒドロキシエチルセルロースなどの粘度を上げる物質が存在すると、非コーティング部分に対する干渉物質の酸化が減少するであろう。第2の動作電極を部分的にコーティングする試薬層に含まれる成分によっては、コーティング部分で測定される干渉物質酸化電流密度が非コーティング部分よりも増大または低下するであろう。この作用を、式3aを以下のように変更して現象モデルにすることができる。
Icov=f×Iunc (式3b)
但し、fは、非コーティング部分に対するコーティング部分の干渉物質の酸化効率の影響を含む補正係数である。
【0042】
本発明のある実施形態では、式1、式2、および式3aから、干渉の影響のない補正されたグルコース電流密度を求める式を導出することができる。3つの式(式1、式2、および式3a)全体では、G、Icov、Iuncである3つの未知数が含まれる。式1は、以下の式に変形することができる。
G=WE1−Icov (式4)
次いで、式3aのIcovを式4に代入して式5を得ることができる。
【数4】
ついで、式1と式2を組み合わせて式6を得ることができる。
Iunc=WE2−WE1 (式6)
次いで、式6のIuncを式5に代入して式7aを得ることができる。
【数5】
【0043】
式7aは、第1の動作電極および第2の動作電極の電流密度の値と、第2の動作電極の非コーティング領域に対するコーティング領域の比率のみを必要とする、干渉の影響を排除した補正されたグルコース電流密度Gを求める式である。本発明の一実施形態では、比率
は、例えば、グルコース測定器の読出し専用メモリにプログラムすることができる。本発明の別の実施形態では、比率
は、AcovまたはAuncにおける製造のばらつきを補正できる較正コードチップを用いてグルコース測定器に転送することができる。
【0044】
本発明の代替の実施形態では、コーティング部分の干渉物質酸化電流密度が非コーティング部分の干渉物質酸化電流密度と異なる場合に、式1、式2、および式3bを用いることができる。このような場合、代替の修正式7bが、以下に示すように導出される。
G=WE1−{f×(WE2−WE1)} (式7b)
【0045】
本発明の別の実施形態では、一定の閾値を超えた場合だけ、測定器がグルコース電流の修正式7aまたは式7bを用いることができる。例えば、WE2がWE1よりも約10%以上大きい場合、測定器は式7aまたは式7bを用いて電流出力を修正することができる。しかしながら、WE2がWE1の約10%以下の場合は、測定器は、WE1とWE2の間の平均電流値を単純に採用して測定値の精度および正確さを改善する。サンプル中の干渉レベルが著しい可能性が高い一定の条件の場合だけ式7aまたは式7bを用いる方法は、測定されたグルコース電流を過度に修正するリスクを緩和する。WE2がWE1よりも十分に大きい(例えば、約20%以上)場合、これが、干渉物質の濃度が十分に高いことを示していることに留意されたい。このような場合、極端に高い干渉物質のレベルによって式7aまたは式7bの精度が低下しうるため、グルコース値の代わりにエラーメッセージを出力とするのが望ましいであろう。
【0046】
図9および図10に例示されている本発明の実施形態では、第1の動作電極および第2の動作電極は、それぞれの電極の非コーティング部分が異なるように試薬層で部分的に覆われている。これは、第1の動作電極が試薬層で完全に覆われる前記した第1および第2の検査ストリップの実施形態と対照的である。
【0047】
図9は、非コーティング部分を有する2つの動作電極が存在するように試薬層22が導電層および絶縁層2002で例示されている本発明の別の実施形態に従った検査ストリップ2000の先端部分の簡易平面図である。検査ストリップ2002は、図1に示されているカットアウト18とジオメトリが異なっている点を除き、検査ストリップ62と同様の要領で製造される。検査ストリップ2002は、検査ストリップ62と同じ基板50、導電層64、試薬層22、接着層66、親水性層68、および最上層40を有する。検査ストリップ2002は、図9に例示されているようにダンベルのような形状のカットアウト2004を有するように変更されている。カットアウト2004の変更された形状により、第1の動作電極2008が、第1のコーティング部分2008cおよび第1の非コーティング部分2008uを含み、第2の動作電極2006が第2のコーティング部分2006cおよび第2の非コーティング部分2006uを含むことができる。検査ストリップ2000が干渉物質の影響を効率的に軽減するために、第1の非コーティング部分2008uは、第2の非コーティング部分2006uと異なる総面積を有しなければならない。
【0048】
図10は、非コーティング部分を有する2つの動作電極が存在するように試薬層820が導電層で例示されている本発明のさらに別の実施形態に従った検査ストリップ5000の先端部分の簡易平面図である。検査ストリップ5000は、第1の動作電極4002および第2の動作電極4004の両方がC型の形状を有するように導電層164と形状が異なる点を除き、検査ストリップ162と同様の要領で製造される。検査ストリップ5000は、検査ストリップ162と同じ基板50、絶縁層106、試薬層110、接着層66、親水性層68、および最上層40を有する。変更された形状により、第1の動作電極4002が、第1のコーティング部分4002cおよび第1の非コーティング部分4002uを含み、第2の動作電極4004が、第2のコーティング部分4004cおよび第2の非コーティング部分4004uを含むことができる。検査ストリップ5000が干渉物質の影響を効率的に軽減するために、第1の非コーティング部分4002uは、第2の非コーティング部分4004uとは異なる領域を有しなければならない。
【0049】
検査ストリップ2000および5000は、要求される位置合わせ精度での試薬層の堆積および続く全ての層の堆積において製造が容易であるという利点を有する。さらに、第1および第2の動作電極の両方が、あらゆる干渉物質とある程度同じ化学反応および電気化学反応をしなければならないため、修正プロセスでの精度が確実に上昇する。両方の動作電極があるレベルの非コーティング領域を有する場合、同じ反応が両方の電極で起こるが反応の程度は異なる。式7aを単純に変形して、以下に示す式7cをグルコースの修正の式として用いることができる。
【数6】
但し、
は第1の動作電極の非コーティング領域、Aunc2は第2の動作電極の非コーティング領域、Acov1は第1の動作電極のコーティング領域、Acov2は第2の動作電極のコーティング領域である。
【0050】
本発明の1つの利点は、第1および第2の動作電極を用いてサンプル受容室が液体で十分に満たされたことを決定できることである。第2の動作電極が干渉物質の影響を補正するだけでなく、グルコースを測定できるということも本発明の利点である。これにより、唯1つの検査ストリップを用いて2つのグルコース測定値を平均できるため、より正確な結果を得ることができる。
【0051】
例1
検査ストリップを、図1‐図3に例示されている本発明の第1の実施形態に従って用意した。これらの検査ストリップを、様々な濃度の干渉物質を有する血液で試験した。試験するために、これらのストリップを、第1の動作電極と基準電極との間および第2の動作電極と基準電極との間に0.4Vの定電位を印加する手段を有するポテンシオスタットに電気的に接続した。血液のサンプルをサンプル口に導入して、血液がサンプル受容室内に吸引され、第1の動作電極、第2の動作電極、および基準電極が血液に接触するようにした。試薬層が血液で水和され、フェロシアニドが生成される。このフェロシアニドの量は、サンプル中に存在するグルコースの量および/または干渉物質の濃度に比例しうる。サンプルを検査ストリップに導入してから約5秒後に、フェロシアニドの酸化を、第1および第2の動作電極の両方についての電流として測定する。
【0052】
図11は、様々なレベルの尿酸でスパイクした血液中の70mg/dLグルコースサンプルで試験した第1の動作電極の電流レスポンスを示している。第1の動作電極における補正されていない電流(四角で示されている)は、尿酸濃度に比例した電流の上昇を示している。しかしながら、式7aを用いて補正された電流(三角で示されている)は、尿酸濃度の上昇の影響がないことを示している。
【0053】
図12は、様々なレベルの尿酸でスパイクした血液中の240mg/dLグルコースサンプルで試験した第1の動作電極の電流レスポンスを示している。240mg/dLグルコースでストリップを試験する目的は、一定範囲のグルコース濃度に対しても式7aの補正アルゴリズムが有効であることを示すためである。図11と同様に、第1の動作電極における補正されていない電流(四角で示されている)は、尿酸濃度に比例した電流の上昇を示している。しかしながら、補正された電流(三角で示されている)は、尿酸濃度の上昇の影響がないことを示している。
【0054】
例2
干渉物質の電流を補正する方法を広範な干渉物質に適用できることを示すために、図1の実施形態に従って製造したストリップを、尿酸に加えて、様々な濃度レベルのアセトアミノフェンおよびゲンチジン酸で試験した。この影響の大きさを定量するために、10%(グルコースレベル>70mg/dLの場合)または7mg/dL(グルコースレベル≦70mg/dLの場合)を超えるグルコース出力の変化を著しい干渉と定義した。表1は、第1の動作電極での補正されていない電流が、式7aを用いて補正された電流レスポンスで試験したストリップよりも、より低い干渉物質濃度で著しい干渉物質の影響を示すことを表している。これは、式7aを用いた第1の動作電極の電流出力を補正する方法が干渉物質の補正に有効であることを示している。表1は、式7aにおける電流の補正がアセトアミノフェン、ゲンチジン酸、および尿酸についての干渉に有効であることを示している。表1はまた、血中で一般に見られる干渉物質の濃度範囲を示している。加えて、表1は、式7aにおける電流の補正が240mg/dLグルコース濃度レベルで有効であることも示している。
【0055】
図13は、検査ストリップ800の組立分解斜視図を示している。検査ストリップ800は、連続的な要領で、ユーザーの皮膚層を刺入して生理学的流体を流出させ、検査ストリップ800内に収集するようにデザインされている。検査ストリップ800は、基板50、導電層802、絶縁層804、試薬層820、接着層830、および最上層824を含む。検査ストリップ800は、先端部58および基端部60をさらに含む。
【0056】
検査ストリップ800では、導電層802は、基板50の上に設けられた第1の層である。導電層802は、図13に示されているように、第2の動作電極806、第1の動作電極808、基準電極810、第2の接点812、第1の接点814、基準接点816、およびストリップ検出バー17を含む。導電層802に用いる材料および導電層802の印刷工程は、検査ストリップ62と検査ストリップ800の両方と同じである。
【0057】
絶縁層804は、基板50の上に設けられた第2の層である。絶縁層16は、矩形の構造にできるカットアウト18を含む。カットアウト18は、第2の動作電極806、第1の動作電極808、および基準電極810の一部を露出させ、これらの部分を液体に接触させることができる。絶縁層804に用いる材料および絶縁層804の印刷工程は、検査ストリップ62と検査ストリップ800の両方と同じである。
【0058】
試薬層820は、基板50、第1の動作電極808、および基準電極810の上に設けられた第3の層である。試薬層820に用いる材料および試薬層820の印刷工程は、検査ストリップ62と検査ストリップ800の両方と同じである。
【0059】
接着層830は、基板50の上に設けられた第4の層である。接着層830に用いる材料および接着層830の印刷工程は、検査ストリップ62および検査ストリップ800の両方と同じである。接着層830の目的は、最上層824を検査ストリップ800に固定することである。本発明のある実施形態では、最上層824は、図13に示されているように、一体型ランスの形態にすることができる。このような実施形態では、最上層824は、先端部58に位置するランス826を含むことができる。
【0060】
刺入部材とも呼ぶことができるランス826は、ユーザーの皮膚に刺入して検査ストリップ800内に血液を導入して、第2の動作電極806、第1の動作電極808、および基準電極810が血液に接触するように構成することができる。ランス826は、組み立てられた検査ストリップの先端部58まで延びているランセットベース832を含む。ランス826は、プラスチック、ガラス、およびシリコーンなどの絶縁材料、またはステンレス鋼や金などの導電材料のいずれかで形成することができる。一体型ランスを用いる一体型医療装置のさらなる詳細は、国際公開第GB01/05634号および米国特許出願第10/143,399号に開示されている。加えて、ランス826は、上記した国際公開第GB01/05634号および米国特許出願第10/143,399号に開示されているように、例えば、順送りダイスタンプ法により製造することができる。
【0061】
図14は、検査ストリップとインターフェイスする測定器900を示す簡易模式図である。本発明の実施形態では、検査ストリップ62、検査ストリップ162、検査ストリップ800、検査ストリップ2000、検査ストリップ3000、または検査ストリップ5000は測定器900と共に使用するのに適しているであろう。測定器900は、第2の動作電極、第1の動作電極、および基準電極に対する電気接続を形成する少なくとも3つの電気接点を有する。具体的には、第2の接点(13、103、または812)および基準接点(15、105、または816)が第1の電圧源910に接続され、第1の接点(11、101、または814)および基準接点(15、105、または816)が第2の電圧源920に接続される。
【0062】
試験を行う場合、第1の電圧源910が、第2の動作電極と基準電極との間に第1の電位E1を印加し、第2の電圧源920が、第1の動作電極と基準電極との間に第2の電位E2を印加する。本発明の一実施形態では、第1の電位E1と第2の電位E2は、例えば約+0.4Vなどの同じ電位にすることができる。本発明の別の実施形態では、第1の電位E1と第2の電位E2を異なるようにすることができる。第2の動作電極、第1の動作電極、および基準電極が血液で覆われるように血液サンプルを導入する。これにより、第2の動作電極および第1の動作電極が、グルコースおよび/または酵素に特異的でない物質に比例する電流を測定することができる。サンプルを導入してから約5秒後に、測定器900が、第2の動作電極と第1の動作電極の両方についての酸化電流を測定する。
【表1】
【0063】
〔実施の態様〕
(1)電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層で覆われている第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層によって部分的に覆われ、覆われた領域と覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いてグルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、を含む、方法。
(2)実施態様(1)に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数7】
但し、
Gは補正された電流値であり、
WE1は前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は前記第2の動作電極における補正されていない電流密度であり、
Acovは前記第2の動作電極のコーティングされた領域であり、
Auncは前記第2の動作電極のコーティングされていない領域である。
(3)電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層に部分的に覆われ、第1の覆われた領域と第1の覆われていない領域を有する第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層に部分的に覆われ、第2の覆われた領域と第2の覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第1の動作電極および前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いて、グルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、を含む、方法。
(4)実施態様(3)に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数8】
但し、
Aunc1は、前記第1の動作電極の非コーティング領域であり、
Aunc2は、前記第2の動作電極の非コーティング領域であり、
Acov1は、前記第1の動作電極のコーティング領域であり、
Acov2は、前記第2の動作電極のコーティング領域であり、
Gは、補正された電流値であり、
WE1は、前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は、前記第2の動作電極における補正されていない電流密度である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に従った検査ストリップの組立分解斜視図である。
【図2】導電層および絶縁層を含む図1に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図3】試薬層の位置が導電層と絶縁層で例示されている図1に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に従った検査ストリップの組立分解斜視図である。
【図5】導電層および絶縁層を含む図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図6】試薬層が導電層と絶縁層で例示されている図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図7】試薬層が導電層で例示されている図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図8】試薬層が抵抗降下の影響を軽減するのに役立つ導電層で例示されている本発明の別の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図9】2つの動作電極が非コーティング部分を有するように試薬層が導電層と絶縁層で例示されている本発明のさらに別の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図10】2つの動作電極が非コーティング部分を有するように試薬層が導電層と絶縁層で例示されている本発明のさらに別の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図11】様々なレベルの尿酸でスパイクした血中の70mg/dLグルコースサンプルで試験した本発明に従ってデザインされたストリップの第1の動作電極における電流を示すグラフである。
【図12】様々なレベルの尿酸でスパイクした血中の240mg/dLグルコースサンプルで試験した本発明に従ってデザインされたストリップの第1の動作電極における電流を示すグラフである。
【図13】一体型ランスを有する検査ストリップの組立分解斜視図である。
【図14】基板上に第1の接点、第2の接点、および基準接点が設けられた検査ストリップとインターフェイスする測定器を示す簡易模式図である。
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、全体として、分析物測定システムによって測定される測定値における干渉成分の影響を軽減する方法に関し、詳細には、非コーティング領域を備えた電極を有する電気化学ストリップを用いてグルコース監視システムにおける直接的な干渉電流の影響を軽減する方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
多くの場合、電気化学グルコース測定システムでは、例えば、アセトアミノフェン、アスコルビン酸、ビリルビン、ドーパミン、ゲンチジン酸、グルタチオン、レボドパ、メチルドーパ、トラジミド(tolazimide)、トルブタミド、および尿酸などの生理学的流体中に一般に見られる干渉成分の酸化によって酸化電流が増大しうる。したがって、干渉成分によって生成される酸化電流部分を低減または排除して、グルコース測定器の精度を改善することができる。すべての酸化電流がグルコース濃度だけに依存するように、いずれの干渉成分からも酸化電流が生成されないのが理想的である。
【0003】
したがって、例えば、生理学的流体中に一般に見られるアスコルビン酸塩、尿酸塩、およびアセトアミノフェンなどの潜在的な干渉成分の存在下での電気化学センサの精度を改善するのが望ましい。このような電気化学センサで調べる分析物の例として、グルコース、乳酸塩、およびフルクトサミンを挙げることができる。グルコースが説明する主な分析物であるが、当業者には、ここに開示する本発明を他の分析物にも利用できることは明らかであろう。
【0004】
酸化電流は、様々な方法で生成することができる。具体的には、所望の酸化電流は、酸化還元メディエータと目的の分析物(例えば、グルコース)との相互作用によって生じるが、不所望の酸化電流は通常、電極表面で酸化される干渉成分および酸化還元メディエータと相互作用する干渉成分から生成される。例えば、ある種の干渉成分(例えば、アセトアミノフェン)は、電極表面で酸化する。他の干渉成分(例えば、アスコルビン酸)は、酸化還元メディエータとの化学反応によって酸化する。グルコース測定システムにおけるこのような干渉成分の酸化により、測定される酸化電流は、グルコースとすべての干渉成分の両方の濃度に依存する。したがって、干渉成分の濃度がグルコースと同じ効率で酸化し、かつ干渉成分の濃度がグルコースの濃度よりも高い場合、グルコース濃度の測定は、酸化電流全体に対する干渉成分の影響を軽減または排除して改善することができる。
【0005】
干渉成分の影響を低減するために用いることができる既知のある方法では、負に帯電した膜を用いて動作電極を覆う。一例として、NAFION(商標)などのスルホン酸フルオロポリマー(sulfonated fluoropolymer)を用いて、負に帯電したあらゆる化学物質が近づけないようにすることができる。一般に、アスコルビン酸塩や尿酸塩などの大抵の干渉成分は、負の電荷を有するため、負に帯電した膜は、負に帯電した干渉成分が電極表面に到達してその表面で酸化するのを防止する。しかしながら、この技術は、アセトアミノフェンなどのある種の干渉成分が正味の負の電荷を有しておらず、負に帯電した膜を通過できるため、必ずしも成功するわけではない。この技術はまた、干渉成分とある種の酸化還元メディエータとの相互作用から生じる酸化電流も低減しない。負に帯電した膜を動作電極に使用することにより、フェリシアニドなどのある種の一般に使用される酸化還元メディエータが負に帯電した膜を通過して電極と電子交換するのも防止できる。
【0006】
干渉成分の影響を軽減するために用いることができる他の既知の方法では、動作電極の上部にサイズ選択膜を用いる。一例として、酢酸セルロースなどの100ダルトン排除膜を用いて動作電極を覆い、分子量が100ダルトンを超えるすべての化学物質を排除することができる。一般に、大抵の干渉成分は、分子量が100ダルトンを超えるため、電極表面で酸化しないように排除される。しかしながら、このような選択膜は通常、検査ストリップの製造をより複雑にし、かつ酸化したグルコースが選択膜を介して拡散して電極に到達しなければならないため、試験時間が長くなる。
【0007】
干渉成分の影響を軽減するために用いることができる別の方法では、例えば、約−300mV〜+100mV(飽和カロメル電極に対して測定した場合)の低い酸化還元電位を有する酸化還元メディエータを用いる。酸化還元メディエータは、低い酸化還元電位を有するため、動作電極にかかる電圧も比較的低くなり、これにより、干渉成分が動作電極によって酸化される速度が低下する。比較的低い酸化還元電位を有する酸化還元メディエータの例として、オスミウムビピリジル複合体(osmium bipyridyl complexes)、フェロセン誘導体、およびキノン誘導体を挙げることができる。この技術の不利な点は、電位が比較的低い酸化還元メディエータは、合成が困難である場合が多く、不安定で、水溶性が低いことである。
【0008】
干渉成分の影響を軽減するために用いることができる別の既知の方法では、酸化還元メディエータでコーティングされたダミー電極を用いる。場合によっては、ダミー電極を、不活性なタンパク質または不活化された酸化還元酵素でコーティングすることもできる。ダミー電極の目的は、電極表面で干渉成分を酸化させること、および/または干渉成分によって還元された酸化還元メディエータを酸化することである。この方法では、干渉の影響を排除するために、動作電極で測定される酸化電流の合計からダミー電極で測定される電流を減じる。この方法の不利な点は、検査ストリップがグルコースの測定に用いることができない追加の電極および電気接点(すなわち、ダミー電極)を含まなければならないことである。ダミー電極を含めると、グルコース測定システムにおける電極の使用が非効率となる。
【0009】
〔発明の概要〕
ここに記載する本発明は、電気化学センサを用いて分析物を検出する際の干渉の影響を軽減する方法に関する。本発明に従った方法で使用できる電気化学センサは、基板、少なくとも第1の動作電極と第2の動作電極、および基準電極を含む。試薬層は、第1の動作電極の全てを完全に覆い、第2の動作電極を部分的にのみ覆うように電極上に設けられている。本発明に従った方法では、第2の動作電極の試薬層に覆われていない部分で生成される酸化電流を用いて、グルコース測定値に対する干渉物質の影響を補正する。
【0010】
ここに記載する本発明は、電気化学センサにおける干渉を軽減する方法を含む。この方法は、試薬層によって覆われた第1の動作電極における第1の酸化電流を測定するステップと、試薬層によって部分的にのみ覆われた第2の動作電極における第2の酸化電流を測定するステップと、予め選択された分析物(例えば、グルコース)の濃度を表す補正された酸化電流値を計算するステップとを含む。この計算では、第2の動作電極の覆われていない領域に対する覆われた領域の比率を用いて、酸化電流における干渉の影響を排除する。具体的には、補正された電流値は、以下の式を用いて計算することができる。
【数1】
但し、Gは補正された電流密度、WE1は第1の動作電極における補正されていない電流密度、WE2は第2の動作電極における補正されていない電流密度、Acovは第2の動作電極のコーティング領域、Auncは第2の動作電極の非コーティング領域である。
【0011】
本発明に使用できる電気化学ストリップの一実施形態では、電気化学グルコース検査ストリップは、試薬層で完全に覆われた第1の動作電極および試薬層で部分的にのみ覆われた第2の動作電極を含む。したがって、第2の動作電極は、試薬コーティング領域と非コーティング領域を有する。試薬層は、例えば、グルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素と、例えば、フェリシアニドなどの酸化還元メディエータを含むことができる。第1の動作電極は、1つがグルコースによる酸化電流、もう1つが干渉物質による酸化電流である2つの酸化電流源の合計を有する。同様に第2の動作電極は、グルコースによる酸化電流、試薬でコーティング部分における干渉物質による酸化電流、および試薬非コーティング部分における干渉物質による酸化電流の3つの酸化電流源の合計を有する。第2の動作電極の非コーティング部分は、この領域に試薬が存在しないため、干渉物質のみを酸化さ、グルコースは酸化させない。第2の動作電極の非コーティング部分で測定される酸化電流を用いて、合計の干渉物質酸化電流を推定し、干渉物質の影響を排除した補正された酸化電流を計算することができる。
【0012】
本発明に従った方法に用いることができる代替のストリップの実施形態では、電気化学グルコース検査ストリップは、試薬層で部分的にのみ覆われた第1の動作電極および第2の動作電極を含む。したがって、この実施形態では、第1の動作電極および第2の動作電極はそれぞれ、試薬コーティング部分と試薬非コーティング部分を有する。第1の動作電極の第1の非コーティング領域と第2の動作電極の第2の非コーティング領域は異なっている。第1の動作電極および第2の動作電極の非コーティング部分で測定される酸化電流を用いて、非コーティング部分の干渉酸化電流を推定し、補正されたグルコース電流を計算する。
【0013】
ここに記載する本発明は、電気化学センサにおける干渉を軽減する方法も含む。この方法は、試薬層で部分的に覆われた第1の動作電極における第1の酸化電流を測定するステップと、試薬層で部分的にのみ覆われた第2の動作電極における第2の酸化電流を測定するステップと、予め選択された分析物(例えば、グルコース)の濃度を表す補正された酸化電流値を計算するステップと、を含む。この計算では、第1の動作電極および第2の動作電極の覆われていない領域に対する覆われた領域の比率を用いて、酸化電流に対する干渉の影響を排除する。具体的には、補正された電流値は以下の式を用いて計算することができる。
【数2】
但し、f1は
に等しく、f2は
に等しく、Aunc1は第1の動作電極の非コーティング領域、Aunc2は第2の動作電極の非コーティング領域、Acov1は第1の動作電極のコーティング領域、Acov2は第2の動作電極のコーティング領域、Gは補正された電流値、WE1は第1の動作電極における補正されていない電流密度、WE2は第2の動作電極における補正されていない電流密度である。
【0014】
添付の図面を参照しながら、本発明の原理を用いた例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明を読めば、本発明の特徴および利点をより良く理解できるであろう。
【0015】
〔発明の詳細な説明〕
ここに開示する本発明は、電気化学グルコース測定システムの選択性を改善するための検査ストリップおよび方法を含む。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に従った検査ストリップの組立分解斜視図である。図1に例示されている本発明の実施形態では、血液または間質液などの体液中のグルコース濃度を測定するために用いることができる電気化学検査ストリップ62は、試薬層22で完全に覆われた第1の動作電極10、および試薬層22で部分的にのみ覆われた第2の動作電極12を含む。したがって、第2の動作電極は、試薬コーティング部分と試薬非コーティング部分を有する。試薬層22は、例えば、フェリシアニドなどの酸化還元メディエータ、およびグルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素を含むことができる。フェリシアニドは、炭素電極で約400mV(飽和カロメル電極に対して測定した場合)の酸化還元電位を有するため、例えば血液などの体液の導入により、酸化還元メディエータおよび/または動作電極によって干渉物質の著しい酸化が起こり、不所望な大きな酸化電流が生成される。したがって、第1の動作電極10で測定される酸化電流は、グルコースの酸化によって生成される第1の所望の酸化電流と、干渉物質によって生成される第2の不所望の酸化電流との酸化電流源の合計となる。第2の動作電極12で測定される酸化電流もまた、グルコースの酸化によって生成される第1の所望の酸化電流と、動作電極12の覆われた部分で干渉物質によって生成される第2の不所望の酸化電流と、動作電極12の覆われていない部分で干渉物質によって生成される第3の酸化電流との酸化電流源の合計となる。第2の動作電極12の非コーティング部分は、試薬が存在しないため、干渉物質のみを酸化させ、グルコースは酸化させない。第2の動作電極12の非コーティング部分で測定される酸化電流はグルコースに依存せず、この第2の動作電極12の非コーティング部分が既知であるため、第2の動作電極12の非コーティング部分の干渉物質の酸化電流を計算することが可能である。第2の動作電極12の非コーティング部分の計算した干渉物質酸化電流と、第1の動作電極10の領域および第2の動作電極12のコーティング部分の領域が分かっているため、電極で酸化した干渉成分の影響が補正されたグルコース電流を計算することが可能である。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に従った検査ストリップ62の組立分解斜視図である。図1に例示されている検査ストリップ62は、基板50に6つの層の材料を堆積させる6つの連続した印刷ステップによって製造することができる。この6つの層は、例えば、基板50にスクリーン印刷して堆積させることができる。本発明のある実施形態では、この6つの層は、導電層64、絶縁層16、試薬層22、接着層66、親水性層68、および最上層40を含むことができる。導電層64は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、基準電極14、第1の接点11、第2の接点13、基準接点15、およびストリップ検出バー17を含むことができる。絶縁層16は、カットアウト18をさらに含むことができる。接着層66は、第1の接着パッド24、第2の接着パッド26、および第3の接着パッド28をさらに含むことができる。親水性層68は、第1の親水性フィルム32および第2の親水性フィルム34をさらに含むことができる。最上層40は、透明部分36および不透明部分38をさらに含むことができる。検査ストリップ62は、図1に例示されているように、第1の側面54、第2の側面56、先端電極面58、および基端電極面60を有する。次の段落では、検査ストリップ62の各層を詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態では、基板50は、プラスチック、ガラス、およびセラミックなどの電気絶縁材料である。本発明の好適な実施形態では、基板50は、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETG、またはポリエステルなどのプラスチックとすることができる。具体的には、ポリエステルは、例えば、デュポン・テイジン・フィルムズ(DuPont Teijin Films)が製造するMelinex(登録商標)ST328とすることができる。基板50は、インキの接着を改善するために一方または両方の面に施されるアクリルコーティングも含むことができる。
【0019】
基板50上に堆積された第1の層は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、基準電極14、およびストリップ検出バー17を含む導電層64である。本発明に従えば、エマルジョンパターンを備えたスクリーンメッシュを用いて、図1に例示されているように、例えば、導電カーボンインキなどの材料を画定されたジオメトリに堆積させることができる。基準電極14は、対電極、基準/対電極、または準基準電極とすることもできる。導電層64は、スクリーン印刷、グラビア印刷、スパッタリング、蒸着、無電解メッキ、インクジェット、昇華、および化学蒸着などを用いて基板50上に堆積させることができる。導電層64に用いることができる好適な材料は、Au、Pd、Ir、Pt、Rh、ステンレス鋼、ドープされた酸化錫、および炭素などである。本発明のある実施形態では、カーボンインキ層は、1〜100μmの範囲、より具体的には5〜25μmの範囲、さらに具体的には約13μmの高さを有することができる。導電層の高さは、導電層の所望の抵抗および導電層を印刷するために用いる材料の導電性によって様々にすることができる。
【0020】
第1の接点11、第2の接点13、および基準接点15を用いて、測定器に電気的に接続することができる。これにより、測定器が、第1の接点11、第2の接点13、および基準接点15のそれぞれを介して第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14と電気的に通信することができる。
【0021】
基板50上に堆積された第2の層は、絶縁層16である。絶縁層16は、図1に示されているように、導電層64の少なくとも一部の上に設けられる。図2は、絶縁層16に対する第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14の位置を強調した検査ストリップ62の先端部分の簡易平面図である。絶縁層16は、図1および図2に示されているように、T型構造にできるカットアウト18をさらに含む。カットアウト18は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14の一部を露出させ、これらの部分を液体に接触させることができる。カットアウト18は、先端カットアウト幅W1、基端カットアウト幅W2、先端カットアウト長さL4、および基端カットアウト長さL5をさらに有する。先端カットアウト幅W1は、図2に例示されているように、第1の動作電極10および基準電極14の幅に一致する。先端カットアウト長さL4は、第1の動作電極10と基準電極14の合計よりも長い。基端カットアウト幅W2および基端カットアウト長さL5は、第2の動作電極12の幅および長さを露出させる矩形部分を形成している。本発明に従えば、先端カットアウト幅W1、基端カットアウト幅W2、先端カットアウト長さL4、および基端カットアウト長さL5はそれぞれ、約0.7mm、1.9mm、3.2mm、および0.43mmの寸法を有することができる。本発明の一実施形態では、第1の動作電極10、基準電極14、および第2の動作電極12はそれぞれ、約0.8mmとすることができるL1の長さ、約1.6mmとすることができるL2の長さ、および約0.4mmとすることができるL3の長さを有する。本発明に従えば、電極間隔S1は、第1の動作電極10と基準電極14との間の距離および基準電極14と第2の動作電極12との間の距離であり、約0.4mmとすることができる。
【0022】
基板50上に堆積された第3の層は試薬層22である。試薬層22は、図1に示されているように、導電層64および絶縁層16の少なくとも一部の上に設けられている。図3は、本発明の第1の実施形態に従った検査ストリップ62の先端部分の簡易平面図である。この検査ストリップ62の先端部分は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、基準電極14、および絶縁層16に対して試薬層22の位置を強調している。試薬層22は、図1および図3に例示されているように、試薬幅W3および試薬長さL6を有する矩形にすることができる。本発明の一実施形態では、試薬幅W3は約1.3mm、試薬長さL6は約4.7mmとすることができる。本発明の別の実施形態では、試薬層22は、第1の動作電極10および基準電極14を完全に覆うように十分な大きさの幅W3および長さL6を有する。しかしながら、試薬層22は、第2の動作電極が試薬層22で完全に覆われないように適切な大きさの幅W3および長さL6を有する。このようにした場合、第2の動作電極12は、図3に例示されているように、コーティング部分12cおよび非コーティング部分12uを有する。非コーティング部分12uは、ウイング幅W4および第2の動作電極長さL3に一致する長さを有する2つの矩形にすることができる。限定目的ではない一例として、ウイング幅W4は約0.3mmとすることができる。本発明の一実施形態では、試薬層22は、例えば、グルコースオキシダーゼまたはPQQグルコースデヒドロゲナーゼ(PQQは、ピロロキノリンキノン(pyrrolo-quionoline-quinoneの頭字語である))などの酸化還元酵素およびフェリシアニドなどの酸化還元メディエータを含むことができる。
【0023】
基板50上に堆積された第4の層は、第1の接着パッド24、第2の接着パッド26、および第3の接着パッド28を含む接着層66である。第1の接着パッド24および第2の接着パッド26は、サンプル受容室の壁部を形成している。本発明の一実施形態では、第1の接着パッド24および第2の接着パッド26は、どちらも試薬層22に接触しないように基板50の上に設けることができる。ストリップの体積を減少させなければならない本発明の別の実施形態では、第1の接着パッド24および/または第2の接着パッド26を、試薬層22と重なるように基板50上に設けることができる。本発明のある実施形態では、接着層66は、約70〜110μmの高さを有する。接着層66は、両面感圧接着材、UV硬化接着剤、感熱接着剤、熱硬化プラスチック、または当分野で周知の他の接着剤を含むことができる。限定目的ではない一例として、接着層66は、英国ハーツ、トリング(Tring, Herts, United Kingdom)に所在のテープ・スペシャリティーズ社(Tape Specialties LTD)が販売する水性アクリルコポリマー感圧接着材(商品番号A6435)などの感圧接着材をスクリーン印刷して形成することができる。
【0024】
基板50の上に堆積された第5の層は、図1に例示されているように、第1の親水性フィルム32および第2の親水性フィルム34を含む親水性層68である。親水性層68は、サンプル受容室の「ルーフ」を形成している。サンプル受容室の「側壁」および「フロアー」はそれぞれ、接着層66および基板50の一部によって形成されている。限定目的ではない一例として、親水性層68は、3M社が販売するような親水性曇り止めコーティングを備えた光学的に透明なポリエステルとすることができる。このコーティングの親水性は、液体をサンプル受容室内に導入しやすくするため、ストリップ62のデザインに用いられている。
【0025】
基板50の上に堆積された第6の層すなわち最終層は、図1に例示されているように、透明部分36および不透明部分38を含む最上層40である。本発明に従えば、最上層40は、感圧接着材で一側がコーティングされたポリエステルを含む。最上層40は、血液が透明部分36の下側にあるときにユーザーが高いコントラストを観察できるようにする不透明部分38を有する。これにより、ユーザーは、サンプル受容室が十分に満たされたことを視覚で確認することができる。ストリップ62が完全に積層されたら、図3に例示されているように、線A‐A’に沿ってカットし、このカットによりサンプル口52が形成される。
【0026】
図1‐図3に例示されている第1の検査ストリップの実施形態は、試薬層22が液体サンプル中に溶解し、この溶解した試薬層の部分が第2の動作電極12の非コーティング部分12uの上に移動しうるという欠点を有しうる。万一このようなことが起こると、非コーティング部分12uも、グルコース濃度に比例する酸化電流を測定する。これにより、干渉物質の酸化の影響を排除するための数学的アルゴリズムを使用しにくくなる。本発明の代替の実施形態では、試薬層22は、非コーティング部分12uに移動しないで溶解するようにデザインすべきである。例えば、試薬層22は、第1の動作電極10、第2の動作電極12、および基準電極14に化学的に結合するか、または溶解した試薬層22への移動を最小限にする増粘剤を含むことができる。
【0027】
図4に例示されている本発明の別の実施形態は、第2の動作電極の非コーティング部分への溶解した試薬の移動を軽減し、状況によっては最小限にする。この実施形態では、第2の動作電極102は、図4に例示されているように、第2の動作電極102の2つの別個の部分がカットアウト108によって露出されるC型のジオメトリを有する。本発明に従えば、試薬層110は、図6に例示されているように、第2の動作電極102の一部のみに設けられ、非コーティング部分102uとコーティング部分102cを形成している。非コーティング部分102uは、サンプル口52に近接している。コーティング部分102cは、第1の動作電極100に近接している。組み立てられた検査ストリップ162のサンプル口52に液体を導入すると、この液体は、サンプル口52から、全ての電極が液体で覆われるまでコーティング部分102cに流れる。非コーティング部分102uを液体の流れの上流に配置することにより、試薬層110が溶解して非コーティング部分102uに移動するのをほぼ完全に防止することができる。これにより、測定した酸化電流から干渉物質の影響を正確に排除した数学的アルゴリズムが可能となる。
【0028】
図4は、検査ストリップ162の組立分解斜視図である。検査ストリップ162は、導電層164、絶縁層106、および試薬層110の形状または位置が変化している点を除き、検査ストリップ62と同様に製造される。本発明の第2の実施形態では、基板50、接着層66、親水性層68、および最上層40は、第1の検査ストリップの実施形態と同じである。検査ストリップ162は、第1の側面54、第2の側面56、先端電極面58、および基端電極面60を有する。本発明の第1の検査ストリップの実施形態と第2の検査ストリップの実施形態では、同じ構造を有する要素には、同じ参照番号および名称を付したことに留意されたい。これらの検査ストリップの実施形態における同様の要素が構造が異なる場合、このような要素は、同一の名称であるが、異なる参照番号を付した。次の段落から、検査ストリップ162の各層を詳細に説明する。
【0029】
図4に例示されているストリップの実施形態では、基板50の上に堆積された第1の層は、第1の動作電極100、第2の動作電極102、基準電極104、第1の接点101、第2の接点103、基準接点105、およびストリップ検出バー17を含む導電層164である。本発明に従えば、エマルジョンパターンを有するスクリーンメッシュを用いて、図4に例示されているように、例えば、導電カーボンインキなどの材料を画定されたジオメトリに堆積させることができる。第1の接点101、第2の接点103、および基準接点105を用いて、測定器に電気的に接続することができる。これにより、測定器が、第1の接点101、第2の接点103、および基準接点105のそれぞれを介して第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104と電気的に通信することができる。
【0030】
図4の基板50上に堆積された第2の層は絶縁層106である。絶縁層106は、図4に示されているように、導電層164の少なくとも一部の上に設けられている。図5は、絶縁層106に対する第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104の位置を強調した検査ストリップ162の先端部分の簡易平面図である。
【0031】
図4に示されている基板50上に堆積された第3の層は、図6に示されているように、導電層164および絶縁層106の少なくとも一部の上に設けられた試薬層110である。図6は、第1の動作電極100、第2の動作電極102、基準電極104および絶縁層106に対する試薬層110の位置を強調した本発明の第2の実施形態に従った検査ストリップ162の先端部分の簡易平面図である。試薬層110は、試薬幅W13および試薬長さL16を有する矩形の形状にすることができる。本発明の一実施形態では、試薬幅W13を約1.3mm、試薬長さL16を約3.2mmとすることができる。本発明の好適な実施形態では、試薬層110は、第1の動作電極100、コーティング部分102c、および基準電極104を完全に覆うが、非コーティング部分102uを覆わないように十分な幅W13および長さL16を有する。
【0032】
図7は、試薬層が導電層と共に例示されている図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。図6とは異なり、図7は、絶縁層106を示していない。これは、不透明な絶縁層106の下側に隠れたコーティング部分102cと非コーティング部分102uとの間の導電関係を示すのに役立つ。
【0033】
図4に例示されているストリップの実施形態では、絶縁層106を用いて、第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104の幅を画定している。さらに、絶縁層106は、図4‐図6に示されているT型の構造にできるカットアウト108を含む。カットアウト108は、第1の動作電極100、第2の動作電極102、および基準電極104の一部を露出させ、これらの部分を液体に接触させることができる。さらに、カットアウト108は、図5および図6に例示されているように、先端カットアウト幅W11、基端カットアウト幅W12、先端カットアウト長さL14、および基端カットアウト長さL15を有する。先端カットアウト幅W11は、非コーティング部分102uの幅に一致する。先端カットアウト長さL14は、非コーティング部分102uの長さよりも長い。基端カットアウト幅W12と基端カットアウト長さL15は、第1の動作電極100、基準電極104、およびコーティング部分102cの幅および長さをほぼ露出させる矩形部分を形成している。
【0034】
本発明に従えば、先端カットアウト幅W11、基端カットアウト幅W12、先端カットアウト長さL14、および基端カットアウト長さL15はそれぞれ、約1.1mm、0.7mm、2.5mm、および2.6mmの寸法を有することができる。
【0035】
図4の実施形態では、非コーティング部分102u、基準電極104、第1の動作電極100、およびコーティング部分102cはそれぞれ、約0.7mmとすることができるL10の長さ、約0.7mmとすることができるL12の長さ、約0.4mmとすることができるL11の長さ、および0.4mmとすることができるL13の長さを有する。電極間隔S11は、約0.2〜0.75mmの範囲、より好ましくは0.6〜0.7mmの範囲とすることができる非コーティング部分102uと基準電極104との間の距離である。電極間隔S10は、基準電極104と第1の動作電極100との間の距離およびコーティング部分102cと第1の動作電極100との間の距離であり、約0.2mmとすることができる。電極間隔S11は、試薬が溶解して非コーティング部分102uに移動する可能性を低くするためにS10よりも大きいことに留意されたい。加えて、電極間隔S11は、印刷工程のばらつきにより試薬層110が非コーティング部分102uの上に堆積される可能性を低くするためにS10よりも大きい。第4の層から第6の層は、第1のストリップの実施形態と同様にストリップ162の上に次々に設けられる。接着層66、親水性層68、および最上層40の相対位置および形状が図4に例示されている。
【0036】
図8に例示されている本発明の実施形態では、電極が液体に接触する順番が非コーティング部分102u、第1の動作電極100、基準電極104、そしてコーティング部分102cとなるように、第2の動作電極102のC型を部分的に変更することができる。代替の形態では、第1の動作電極100とコーティング部分102cは、基準電極104から等距離であって、抵抗降下に望ましい。図7に例示されている第2のストリップの実施形態(すなわち、検査ストリップ162)では、電極が液体に接触する順番が非コーティング部分102u、基準電極104、第1の動作電極100、そしてコーティング部分102cとなるように電極が配置されている。検査ストリップ162の場合、コーティング部分102cは、第1の動作電極100と基準電極104との間の距離よりも基準電極104から離れている。
【0037】
したがって、アルゴリズムを用いて、干渉物質の影響のない補正されたグルコース電流を計算する。検査ストリップにサンプルを導入すると、一定の電位が第1および第2の動作電極にかかり、両方の電極で電流を測定する。試薬が電極領域の全体を覆っている第1の動作電極では、以下の式を用いて酸化電流に寄与する成分を表すことができる。
WE1=G+Icov (式1)
但し、WE1は第1の動作電極における電流密度、Gは干渉物質の影響のないグルコースによる電流密度、Icovは試薬で覆われた動作電極の部分における干渉物質による電流密度である。
【0038】
試薬で部分的に覆われた第2の動作電極では、以下の式を用いて酸化電流に寄与する成分を表すことができる。
WE2=G+Icov+Iunc (式2)
但し、WE2は第2の動作電極における電流密度、Iuncは試薬で覆われていない動作電極の部分における干渉物質による電流密度である。本発明の代替の実施形態では、第1の動作電極と第2の動作電極で異なった領域に試薬をコーティングすることができるが、式を異なる非コーティング領域に対して修正しなければならない。
【0039】
干渉物質の影響を軽減するために、第2の動作電極のコーティング部分における干渉電流と第2の動作電極の非コーティング部分における干渉電流との間の関係を表す式を導出した。コーティング部分で測定される干渉物質酸化電流密度は、非コーティング部分で測定される電流密度と同じであると見積もる。この関係は、以下の式で表すことができる。
【数3】
但し、Acovは試薬で覆われた第2の動作電極の領域、Auncは試薬で覆われていない第2の動作電極の領域である。
【0040】
非コーティング部分12uおよびコーティング部分12cはそれぞれ、AuncおよびAcovとして表す領域を有することができることに留意されたい。非コーティング部分12uは、試薬層22でコーティングされていないため、干渉物質は酸化させることができるがグルコースは酸化させることができない。これとは異なり、コーティング部分12cは、グルコースと干渉物質を酸化させることができる。非コーティング部分12uは、コーティング部分12cの領域に比例して干渉物質を酸化させることが経験的に分かっているため、第2の動作電極12全体で測定される干渉物質電流の割合を推定することが可能である。これにより、第2の動作電極12で測定される全電流から、干渉物質電流の部分を差し引いて補正することができる。本発明のある実施形態では、Aunc:Acovの比率は、約0.5:1〜5:1の間、好ましくは約3:1にすることができる。電流を補正するためのこの数学的アルゴリズムについての詳細は、以降の段落で説明する。
【0041】
本発明の代替の実施形態では、コーティング部分で測定される干渉物質酸化電流密度は、非コーティング部分で測定される電流密度とは異なりうる。これは、コーティング部分における干渉物質のより効率的な酸化またはより非効率的な酸化によるものである。ある場合には、酸化還元メディエータの存在により、非コーティング部分に対する干渉物質の酸化が促進されるであろう。別の場合には、ヒドロキシエチルセルロースなどの粘度を上げる物質が存在すると、非コーティング部分に対する干渉物質の酸化が減少するであろう。第2の動作電極を部分的にコーティングする試薬層に含まれる成分によっては、コーティング部分で測定される干渉物質酸化電流密度が非コーティング部分よりも増大または低下するであろう。この作用を、式3aを以下のように変更して現象モデルにすることができる。
Icov=f×Iunc (式3b)
但し、fは、非コーティング部分に対するコーティング部分の干渉物質の酸化効率の影響を含む補正係数である。
【0042】
本発明のある実施形態では、式1、式2、および式3aから、干渉の影響のない補正されたグルコース電流密度を求める式を導出することができる。3つの式(式1、式2、および式3a)全体では、G、Icov、Iuncである3つの未知数が含まれる。式1は、以下の式に変形することができる。
G=WE1−Icov (式4)
次いで、式3aのIcovを式4に代入して式5を得ることができる。
【数4】
ついで、式1と式2を組み合わせて式6を得ることができる。
Iunc=WE2−WE1 (式6)
次いで、式6のIuncを式5に代入して式7aを得ることができる。
【数5】
【0043】
式7aは、第1の動作電極および第2の動作電極の電流密度の値と、第2の動作電極の非コーティング領域に対するコーティング領域の比率のみを必要とする、干渉の影響を排除した補正されたグルコース電流密度Gを求める式である。本発明の一実施形態では、比率
は、例えば、グルコース測定器の読出し専用メモリにプログラムすることができる。本発明の別の実施形態では、比率
は、AcovまたはAuncにおける製造のばらつきを補正できる較正コードチップを用いてグルコース測定器に転送することができる。
【0044】
本発明の代替の実施形態では、コーティング部分の干渉物質酸化電流密度が非コーティング部分の干渉物質酸化電流密度と異なる場合に、式1、式2、および式3bを用いることができる。このような場合、代替の修正式7bが、以下に示すように導出される。
G=WE1−{f×(WE2−WE1)} (式7b)
【0045】
本発明の別の実施形態では、一定の閾値を超えた場合だけ、測定器がグルコース電流の修正式7aまたは式7bを用いることができる。例えば、WE2がWE1よりも約10%以上大きい場合、測定器は式7aまたは式7bを用いて電流出力を修正することができる。しかしながら、WE2がWE1の約10%以下の場合は、測定器は、WE1とWE2の間の平均電流値を単純に採用して測定値の精度および正確さを改善する。サンプル中の干渉レベルが著しい可能性が高い一定の条件の場合だけ式7aまたは式7bを用いる方法は、測定されたグルコース電流を過度に修正するリスクを緩和する。WE2がWE1よりも十分に大きい(例えば、約20%以上)場合、これが、干渉物質の濃度が十分に高いことを示していることに留意されたい。このような場合、極端に高い干渉物質のレベルによって式7aまたは式7bの精度が低下しうるため、グルコース値の代わりにエラーメッセージを出力とするのが望ましいであろう。
【0046】
図9および図10に例示されている本発明の実施形態では、第1の動作電極および第2の動作電極は、それぞれの電極の非コーティング部分が異なるように試薬層で部分的に覆われている。これは、第1の動作電極が試薬層で完全に覆われる前記した第1および第2の検査ストリップの実施形態と対照的である。
【0047】
図9は、非コーティング部分を有する2つの動作電極が存在するように試薬層22が導電層および絶縁層2002で例示されている本発明の別の実施形態に従った検査ストリップ2000の先端部分の簡易平面図である。検査ストリップ2002は、図1に示されているカットアウト18とジオメトリが異なっている点を除き、検査ストリップ62と同様の要領で製造される。検査ストリップ2002は、検査ストリップ62と同じ基板50、導電層64、試薬層22、接着層66、親水性層68、および最上層40を有する。検査ストリップ2002は、図9に例示されているようにダンベルのような形状のカットアウト2004を有するように変更されている。カットアウト2004の変更された形状により、第1の動作電極2008が、第1のコーティング部分2008cおよび第1の非コーティング部分2008uを含み、第2の動作電極2006が第2のコーティング部分2006cおよび第2の非コーティング部分2006uを含むことができる。検査ストリップ2000が干渉物質の影響を効率的に軽減するために、第1の非コーティング部分2008uは、第2の非コーティング部分2006uと異なる総面積を有しなければならない。
【0048】
図10は、非コーティング部分を有する2つの動作電極が存在するように試薬層820が導電層で例示されている本発明のさらに別の実施形態に従った検査ストリップ5000の先端部分の簡易平面図である。検査ストリップ5000は、第1の動作電極4002および第2の動作電極4004の両方がC型の形状を有するように導電層164と形状が異なる点を除き、検査ストリップ162と同様の要領で製造される。検査ストリップ5000は、検査ストリップ162と同じ基板50、絶縁層106、試薬層110、接着層66、親水性層68、および最上層40を有する。変更された形状により、第1の動作電極4002が、第1のコーティング部分4002cおよび第1の非コーティング部分4002uを含み、第2の動作電極4004が、第2のコーティング部分4004cおよび第2の非コーティング部分4004uを含むことができる。検査ストリップ5000が干渉物質の影響を効率的に軽減するために、第1の非コーティング部分4002uは、第2の非コーティング部分4004uとは異なる領域を有しなければならない。
【0049】
検査ストリップ2000および5000は、要求される位置合わせ精度での試薬層の堆積および続く全ての層の堆積において製造が容易であるという利点を有する。さらに、第1および第2の動作電極の両方が、あらゆる干渉物質とある程度同じ化学反応および電気化学反応をしなければならないため、修正プロセスでの精度が確実に上昇する。両方の動作電極があるレベルの非コーティング領域を有する場合、同じ反応が両方の電極で起こるが反応の程度は異なる。式7aを単純に変形して、以下に示す式7cをグルコースの修正の式として用いることができる。
【数6】
但し、
は第1の動作電極の非コーティング領域、Aunc2は第2の動作電極の非コーティング領域、Acov1は第1の動作電極のコーティング領域、Acov2は第2の動作電極のコーティング領域である。
【0050】
本発明の1つの利点は、第1および第2の動作電極を用いてサンプル受容室が液体で十分に満たされたことを決定できることである。第2の動作電極が干渉物質の影響を補正するだけでなく、グルコースを測定できるということも本発明の利点である。これにより、唯1つの検査ストリップを用いて2つのグルコース測定値を平均できるため、より正確な結果を得ることができる。
【0051】
例1
検査ストリップを、図1‐図3に例示されている本発明の第1の実施形態に従って用意した。これらの検査ストリップを、様々な濃度の干渉物質を有する血液で試験した。試験するために、これらのストリップを、第1の動作電極と基準電極との間および第2の動作電極と基準電極との間に0.4Vの定電位を印加する手段を有するポテンシオスタットに電気的に接続した。血液のサンプルをサンプル口に導入して、血液がサンプル受容室内に吸引され、第1の動作電極、第2の動作電極、および基準電極が血液に接触するようにした。試薬層が血液で水和され、フェロシアニドが生成される。このフェロシアニドの量は、サンプル中に存在するグルコースの量および/または干渉物質の濃度に比例しうる。サンプルを検査ストリップに導入してから約5秒後に、フェロシアニドの酸化を、第1および第2の動作電極の両方についての電流として測定する。
【0052】
図11は、様々なレベルの尿酸でスパイクした血液中の70mg/dLグルコースサンプルで試験した第1の動作電極の電流レスポンスを示している。第1の動作電極における補正されていない電流(四角で示されている)は、尿酸濃度に比例した電流の上昇を示している。しかしながら、式7aを用いて補正された電流(三角で示されている)は、尿酸濃度の上昇の影響がないことを示している。
【0053】
図12は、様々なレベルの尿酸でスパイクした血液中の240mg/dLグルコースサンプルで試験した第1の動作電極の電流レスポンスを示している。240mg/dLグルコースでストリップを試験する目的は、一定範囲のグルコース濃度に対しても式7aの補正アルゴリズムが有効であることを示すためである。図11と同様に、第1の動作電極における補正されていない電流(四角で示されている)は、尿酸濃度に比例した電流の上昇を示している。しかしながら、補正された電流(三角で示されている)は、尿酸濃度の上昇の影響がないことを示している。
【0054】
例2
干渉物質の電流を補正する方法を広範な干渉物質に適用できることを示すために、図1の実施形態に従って製造したストリップを、尿酸に加えて、様々な濃度レベルのアセトアミノフェンおよびゲンチジン酸で試験した。この影響の大きさを定量するために、10%(グルコースレベル>70mg/dLの場合)または7mg/dL(グルコースレベル≦70mg/dLの場合)を超えるグルコース出力の変化を著しい干渉と定義した。表1は、第1の動作電極での補正されていない電流が、式7aを用いて補正された電流レスポンスで試験したストリップよりも、より低い干渉物質濃度で著しい干渉物質の影響を示すことを表している。これは、式7aを用いた第1の動作電極の電流出力を補正する方法が干渉物質の補正に有効であることを示している。表1は、式7aにおける電流の補正がアセトアミノフェン、ゲンチジン酸、および尿酸についての干渉に有効であることを示している。表1はまた、血中で一般に見られる干渉物質の濃度範囲を示している。加えて、表1は、式7aにおける電流の補正が240mg/dLグルコース濃度レベルで有効であることも示している。
【0055】
図13は、検査ストリップ800の組立分解斜視図を示している。検査ストリップ800は、連続的な要領で、ユーザーの皮膚層を刺入して生理学的流体を流出させ、検査ストリップ800内に収集するようにデザインされている。検査ストリップ800は、基板50、導電層802、絶縁層804、試薬層820、接着層830、および最上層824を含む。検査ストリップ800は、先端部58および基端部60をさらに含む。
【0056】
検査ストリップ800では、導電層802は、基板50の上に設けられた第1の層である。導電層802は、図13に示されているように、第2の動作電極806、第1の動作電極808、基準電極810、第2の接点812、第1の接点814、基準接点816、およびストリップ検出バー17を含む。導電層802に用いる材料および導電層802の印刷工程は、検査ストリップ62と検査ストリップ800の両方と同じである。
【0057】
絶縁層804は、基板50の上に設けられた第2の層である。絶縁層16は、矩形の構造にできるカットアウト18を含む。カットアウト18は、第2の動作電極806、第1の動作電極808、および基準電極810の一部を露出させ、これらの部分を液体に接触させることができる。絶縁層804に用いる材料および絶縁層804の印刷工程は、検査ストリップ62と検査ストリップ800の両方と同じである。
【0058】
試薬層820は、基板50、第1の動作電極808、および基準電極810の上に設けられた第3の層である。試薬層820に用いる材料および試薬層820の印刷工程は、検査ストリップ62と検査ストリップ800の両方と同じである。
【0059】
接着層830は、基板50の上に設けられた第4の層である。接着層830に用いる材料および接着層830の印刷工程は、検査ストリップ62および検査ストリップ800の両方と同じである。接着層830の目的は、最上層824を検査ストリップ800に固定することである。本発明のある実施形態では、最上層824は、図13に示されているように、一体型ランスの形態にすることができる。このような実施形態では、最上層824は、先端部58に位置するランス826を含むことができる。
【0060】
刺入部材とも呼ぶことができるランス826は、ユーザーの皮膚に刺入して検査ストリップ800内に血液を導入して、第2の動作電極806、第1の動作電極808、および基準電極810が血液に接触するように構成することができる。ランス826は、組み立てられた検査ストリップの先端部58まで延びているランセットベース832を含む。ランス826は、プラスチック、ガラス、およびシリコーンなどの絶縁材料、またはステンレス鋼や金などの導電材料のいずれかで形成することができる。一体型ランスを用いる一体型医療装置のさらなる詳細は、国際公開第GB01/05634号および米国特許出願第10/143,399号に開示されている。加えて、ランス826は、上記した国際公開第GB01/05634号および米国特許出願第10/143,399号に開示されているように、例えば、順送りダイスタンプ法により製造することができる。
【0061】
図14は、検査ストリップとインターフェイスする測定器900を示す簡易模式図である。本発明の実施形態では、検査ストリップ62、検査ストリップ162、検査ストリップ800、検査ストリップ2000、検査ストリップ3000、または検査ストリップ5000は測定器900と共に使用するのに適しているであろう。測定器900は、第2の動作電極、第1の動作電極、および基準電極に対する電気接続を形成する少なくとも3つの電気接点を有する。具体的には、第2の接点(13、103、または812)および基準接点(15、105、または816)が第1の電圧源910に接続され、第1の接点(11、101、または814)および基準接点(15、105、または816)が第2の電圧源920に接続される。
【0062】
試験を行う場合、第1の電圧源910が、第2の動作電極と基準電極との間に第1の電位E1を印加し、第2の電圧源920が、第1の動作電極と基準電極との間に第2の電位E2を印加する。本発明の一実施形態では、第1の電位E1と第2の電位E2は、例えば約+0.4Vなどの同じ電位にすることができる。本発明の別の実施形態では、第1の電位E1と第2の電位E2を異なるようにすることができる。第2の動作電極、第1の動作電極、および基準電極が血液で覆われるように血液サンプルを導入する。これにより、第2の動作電極および第1の動作電極が、グルコースおよび/または酵素に特異的でない物質に比例する電流を測定することができる。サンプルを導入してから約5秒後に、測定器900が、第2の動作電極と第1の動作電極の両方についての酸化電流を測定する。
【表1】
【0063】
〔実施の態様〕
(1)電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層で覆われている第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層によって部分的に覆われ、覆われた領域と覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いてグルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、を含む、方法。
(2)実施態様(1)に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数7】
但し、
Gは補正された電流値であり、
WE1は前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は前記第2の動作電極における補正されていない電流密度であり、
Acovは前記第2の動作電極のコーティングされた領域であり、
Auncは前記第2の動作電極のコーティングされていない領域である。
(3)電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層に部分的に覆われ、第1の覆われた領域と第1の覆われていない領域を有する第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層に部分的に覆われ、第2の覆われた領域と第2の覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第1の動作電極および前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いて、グルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、を含む、方法。
(4)実施態様(3)に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数8】
但し、
Aunc1は、前記第1の動作電極の非コーティング領域であり、
Aunc2は、前記第2の動作電極の非コーティング領域であり、
Acov1は、前記第1の動作電極のコーティング領域であり、
Acov2は、前記第2の動作電極のコーティング領域であり、
Gは、補正された電流値であり、
WE1は、前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は、前記第2の動作電極における補正されていない電流密度である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に従った検査ストリップの組立分解斜視図である。
【図2】導電層および絶縁層を含む図1に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図3】試薬層の位置が導電層と絶縁層で例示されている図1に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に従った検査ストリップの組立分解斜視図である。
【図5】導電層および絶縁層を含む図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図6】試薬層が導電層と絶縁層で例示されている図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図7】試薬層が導電層で例示されている図4に例示されている本発明の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図8】試薬層が抵抗降下の影響を軽減するのに役立つ導電層で例示されている本発明の別の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図9】2つの動作電極が非コーティング部分を有するように試薬層が導電層と絶縁層で例示されている本発明のさらに別の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図10】2つの動作電極が非コーティング部分を有するように試薬層が導電層と絶縁層で例示されている本発明のさらに別の実施形態に従った検査ストリップの先端部分の簡易平面図である。
【図11】様々なレベルの尿酸でスパイクした血中の70mg/dLグルコースサンプルで試験した本発明に従ってデザインされたストリップの第1の動作電極における電流を示すグラフである。
【図12】様々なレベルの尿酸でスパイクした血中の240mg/dLグルコースサンプルで試験した本発明に従ってデザインされたストリップの第1の動作電極における電流を示すグラフである。
【図13】一体型ランスを有する検査ストリップの組立分解斜視図である。
【図14】基板上に第1の接点、第2の接点、および基準接点が設けられた検査ストリップとインターフェイスする測定器を示す簡易模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層で覆われている第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層によって部分的に覆われ、覆われた領域と覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いてグルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数1】
但し、
Gは補正された電流値であり、
WE1は前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は前記第2の動作電極における補正されていない電流密度であり、
Acovは前記第2の動作電極のコーティングされた領域であり、
Auncは前記第2の動作電極のコーティングされていない領域である。
【請求項3】
電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層に部分的に覆われ、第1の覆われた領域と第1の覆われていない領域を有する第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層に部分的に覆われ、第2の覆われた領域と第2の覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第1の動作電極および前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いて、グルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数2】
但し、
Aunc1は、前記第1の動作電極の非コーティング領域であり、
Aunc2は、前記第2の動作電極の非コーティング領域であり、
Acov1は、前記第1の動作電極のコーティング領域であり、
Acov2は、前記第2の動作電極のコーティング領域であり、
Gは、補正された電流値であり、
WE1は、前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は、前記第2の動作電極における補正されていない電流密度である。
【請求項1】
電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層で覆われている第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層によって部分的に覆われ、覆われた領域と覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いてグルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数1】
但し、
Gは補正された電流値であり、
WE1は前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は前記第2の動作電極における補正されていない電流密度であり、
Acovは前記第2の動作電極のコーティングされた領域であり、
Auncは前記第2の動作電極のコーティングされていない領域である。
【請求項3】
電気化学センサにおける干渉を軽減する方法において、
試薬層に部分的に覆われ、第1の覆われた領域と第1の覆われていない領域を有する第1の動作電極における第1の電流を測定するステップと、
前記試薬層に部分的に覆われ、第2の覆われた領域と第2の覆われていない領域を有する第2の動作電極における第2の電流を測定するステップと、
前記第1の動作電極および前記第2の動作電極の前記覆われていない領域に対する前記覆われた領域の比率を用いて、グルコース濃度を表す補正された電流値を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記補正された電流値を以下の式を用いて計算する、方法。
【数2】
但し、
Aunc1は、前記第1の動作電極の非コーティング領域であり、
Aunc2は、前記第2の動作電極の非コーティング領域であり、
Acov1は、前記第1の動作電極のコーティング領域であり、
Acov2は、前記第2の動作電極のコーティング領域であり、
Gは、補正された電流値であり、
WE1は、前記第1の動作電極における補正されていない電流密度であり、
WE2は、前記第2の動作電極における補正されていない電流密度である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−524846(P2007−524846A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537423(P2006−537423)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004574
【国際公開番号】WO2005/045412
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502328710)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (70)
【住所又は居所原語表記】Beechwood Park North,Inverness IV2 3ED
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004574
【国際公開番号】WO2005/045412
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502328710)ライフスキャン・スコットランド・リミテッド (70)
【住所又は居所原語表記】Beechwood Park North,Inverness IV2 3ED
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