説明

電気化学的性質の測定方法及び装置

微小空洞電極(20)を含む材料の電気化学的性質の測定装置、及び材料の電気化学的性質の測定方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の電気化学的性質の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池、又は電気化学セル、例えば1次アルカリ電池又は2次リチウム電池は、一般的に使用されている電気エネルギー供給源である。電池は、通常アノードと呼ばれる負電極と、通常カソードと呼ばれる正電極と、を含有する。アノードは、酸化し得る活性物質を含有し、カソードは、還元し得る活性物質を含有又は消費する。アノード活性物質は、カソード活性物質を還元することが可能である。アノード物質とカソード物質との直接反応を防ぐために、アノードとカソードはセパレータにより互いに電気的に絶縁されている。
【0003】
電池をデバイスにおいて電気エネルギー源として用いると、アノード及びカソードの電気的接触が形成され、電子をデバイスに貫流させて、それぞれの酸化及び還元反応を生じさせることで電力が提供される。アノード及びカソードと接触している電解質は、電極間のセパレータを貫流するイオンを含有することで、放電中における電池全体の荷電平衡を維持する。
【0004】
電池材料は、多くの場合、円筒形の電池形態(例えば、単4若しくは単3電池)、又はボタン電池の形態で試験される。例としては、所与のカソード材料に関し、ボタン電池は、アノード(例えば、亜鉛アノード)及び水酸化カリウム溶液と、セパレータ紙と、対象となる材料を含有するカソードとを含む。放電試験中、アノードは酸化され(例えば、水酸化亜鉛及びオキシドに)、カソード材料は還元されて、2つの電極の間でセパレータを通ってイオン輸送が発生し、反応化学量論を維持する。通常、カソードは、放電効率を高めるために、グラファイト又はカーボンブラックなどの導電性助剤と混合される。試験用電池を製造するために、多くの場合、比較的大量の電極活物質、多くの電極調製工程、並びに多くのセル構成要素及びアセンブリハードウェアが使用される。放電試験から得られるデータに多くの要因が影響を与える可能性がある。例えば、電解質抵抗、材料加工、及び導電性助剤(例えば、グラファイト)の量、及び接触抵抗は全て、試験結果の精度に影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概して、本発明は、1種類以上の非常に少量の試料の電気化学的性質の測定に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、電気化学的活性物質の電気化学的性質の測定装置を特徴とする。この装置は、最大容積が15立方ミリメートル(μL)未満の微小空洞を有する電気化学的に導電性かつ化学的に不活性な基材と、この基材と電気的に接触する第1の導線とを含む。
【0007】
非常に小さな電極(例えば、微小電極)が測定に使用される場合、これらの電極に使用される電流は非常に小さくてもよく、小電極の表面と外部回路との間の電圧損失が最小量であり得るので、多くの場合バルク材料の放電試験に見られるオーム抵抗及び物質移動の制限などの干渉効果は、比較的わずかとなり得る。したがって、材料の固有の力学的特性を測定することができる。電池材料の放電試験に同じ原理を適用させた場合、多くの利点が生じ得る。例えば、対象となる材料の特性を、導電性基材の微小空洞(例えば、微小空洞電極)の中で測定することができる。このような設定では、ごく少量の材料を試験することが可能であり、導電性添加剤を除外することができ、セル組立ツールを使用する必要がなく、カソードを前もって作る必要がなく、アノードはスラリー状又は大きな表面積を有する形態である必要がなく、ボタン電池又は円筒形電池と比べてより高いCレートで試験セルを放電することができる。高いCレート値の試験材料はより時間効率が良い可能性があり、電池材料のハイスループット測定には有利であり得る。
【0008】
微小空洞電極は、少量の対象となる活性物質を含むことができる小さなガルバニセルの一部として組み込まれることができる。ガルバニセルは、任意に導電性助剤(例えば、グラファイト)を含むことができる。対象となる材料は、導電性ロッドの先端にある微小空洞の中に充填される。電解質溶液を含浸したセパレータ、及び亜鉛箔などのアノードを、この微小空洞の上部に定置する。セルは、通常のセルと同じ方法であるがずっと少ない電流で放電させることができる。アノードと対象となるカソード材料とを入れ替えた逆の構成もまた可能である。この試験方法は従来の試験方法を簡略化するが、同様の情報を収集する。
【0009】
別の態様において、本発明は、最大容積が15立方ミリメートルであり、かつ電気化学的活性物質を含む試料の電気化学的性質を測定することを含む方法を特徴とする。この実施形態は、本装置に関して上述された特徴のいずれかを含むことができる。
【0010】
本発明の一方及び/又は両方の実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、微小空洞及び/又は試料は、1立方ミリメートル未満の最大容積を有する。いくつかの実施形態では、微小空洞は、2ミリメートル以下の最大寸法、及び/又は0.01ミリメートル以上の最小寸法を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、電気化学的活性物質は、平均最大寸法を有する粒子を含む。平均最大粒子寸法対最大微小空洞寸法は、1:5未満(例えば、1:10未満、1:20未満、1:30未満)である。
【0013】
いくつかの実施形態では、基材は1種類以上の材料を含む。1種類以上の材料には、白金、チタン、タングステン、ニッケル、タンタル、ニオビウム、クロム、ルテニウム、ジルコニウム、モリブデン、パラジウム、及び/若しくはこれらの合金、並びに/又はステンレス鋼を挙げることができる。いくつかの実施形態では、基材は、1種類以上の貴金属などの材料の層でコーティングされている。この1種類以上の貴金属は、金、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、白金、銀、ロジウム、及び/又はこれらの組合せであることができる。いくつかの実施形態では、基材は、電気化学的機器と、又はポテンシオスタット及び/若しくはガルバノスタットなどの電気化学的機器を介してコンピュータと、更に連通する。
【0014】
いくつかの実施形態では、装置は、アノード及びアノードと電気的に接触する第2の導線を更に含む。アノード及び導線は、カソード活性物質が微小空洞の中にあるときにカソード活性物質を含む電気化学的活性物質と共に回路を完成させる。いくつかの実施形態では、微小空洞がカソード活性物質で充填されたときに、カソード活性物質は第1及び第2の導線、アノード、及び電解質と電気的に接触する。
【0015】
いくつかの実施形態では、装置は、カソード及びカソードと電気的に接触する第2の導線を更に含む。カソード及び第2の導線は、アノード活性物質が微小空洞の中にあるときにアノード活性物質を含む電気化学的活性物質と共に回路を完成させる。いくつかの実施形態では、微小空洞がアノード活性物質で充填されたときに、アノード活性物質は第1及び第2の導線、カソード、及び電解質と電気的に接触する。
【0016】
いくつかの実施形態では、装置は、複数の微小空洞及び/又は複数の電気化学的に導電性かつ化学的に不活性な基材を更に含む。少なくとも一方の電極は、2本以上の導線と電気的に接触する。いくつかの実施形態では、少なくとも1本の導線は、2つ以上の基材と電気的に接触する。いくつかの実施形態では、各基材は第1の導線と電気化学的に接触し、複数の基材は共通対極と電気化学的に接触する。
【0017】
いくつかの実施形態では、電気化学的活性物質は、カソード活性物質及び/又はアノード活性物質を含む。いくつかの実施形態では、電気化学的活性物質は2ミリグラム未満の質量を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、測定は、第1の導線と第2の導線とを有する装置と試料とを接触させることを含む。測定は、アノード及び/又はカソードで回路を形成することを更に含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は複数の試料を含むことができる。各試料の電気化学的性質は、同時に又は連続してのいずれかで、個別に測定され得る。
【0020】
本発明の一方又は両方の実施形態は、以下の利点の1つ以上を更に含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、小電極の表面と外部回路との間の電圧損失が最小量であり得るので、多くの場合バルク材料の放電試験に見られる干渉効果は、比較的わずかとなり得る。活性物質の固有の特性を評価することができる。いくつかの実施形態では、これら試験方法及び装置は従来の試験方法を簡略化する。例えば、少量の活性物質を使用して活性物質を特性化することができ、導電性添加剤を除外することができ、セル組立ツールを使用する必要がなく、カソードを前もって作る必要がなく、アノードはスラリー状又は大きな表面積を有する形態である必要がなく、及び/又はボタン電池又は円筒形電池と比べてより高いCレートで試験セルを放電することができる。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付図及び以下の説明で明らかにする。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】装置の実施形態の概略断面図。
【図2】装置の実施形態の概略断面図。
【図3】電池の実施形態の概略断面図。
【図4】デバイスの実施形態の斜視図。
【図5】電池の実施形態の概略断面図。
【図6A】アレイ中の装置の実施形態の写真。
【図6B】アレイ中の装置の実施形態の写真。
【図6C】アレイ中の装置の実施形態の写真。
【図7】電池の実施形態のボルタンメトリーグラフ。
【図8】電池の実施形態のボルタンメトリーグラフ。
【図9】電池の実施形態の放電グラフ。
【図10A】電池の実施形態の放電グラフ。
【図10B】電池の実施形態の放電グラフ。
【図10C】電池の実施形態の放電グラフ。
【図10D】電池の実施形態の放電グラフ。
【図11】電池の実施形態の放電グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
電池放電試験を実施して、カソード及びアノード活性物質の電気化学的性質を得ることができる。活性物質は少量のみ利用可能であり得るので、必要な活性物質が最小限であり、かつ材料の電気化学的性質を正確かつ効率的に測定することができるスクリーニング方法が望ましい。
【0025】
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、微小空洞電極20は、半導体コア4を取り囲む絶縁被覆2を含む。電極の一方の末端部6において、絶縁被覆は、半導体コア越えて延在して微小空洞8を形成する。電極の第2の末端部10において、半導体コアは絶縁被覆からから突出する。いくつかの実施形態では、図2を参照すると、微小空洞電極40は、絶縁被覆なしに導電性基材44内に直接位置付けられた微小空洞42を含む。いくつかの実施形態では、微小空洞電極の及び/又は微小空洞自体の1つ以上の表面は、任意に、導電性であるが化学的に不活性な材料12でコーティングされている。材料12は層の形態であることができる。
【0026】
微小空洞は、任意の形状、例えば、円筒形状、角柱形状、半球形形状、又は不規則形状を有することができる。いくつかの実施形態において、微小空洞の最大寸法は、2ミリメートル以下(例えば、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、若しくは0.5ミリメートル以下)及び/又は10マイクロメートル以上(例えば、0.5ミリメートル以上、0.75ミリメートル以上、若しくは1ミリメートル以上)であることができる。微小空洞の最大寸法は、顕微鏡(例えば、Keyence VHX−100顕微鏡)を使用して、顕微鏡画像から測定することができる。微小空洞の容積は、15μL未満(又は15mm)(例えば、13μL未満、5μL未満、1μL未満、若しくは0.01μL未満、)及び0.001μL超過(例えば、0.01μL超過、1μL超過、5μL超過、13μL超過)であることができる。いくつかの実施形態では、微小空洞の最大容積は、2立方ミリメートル以下(例えば、1立方ミリメートル未満、0.75立方ミリメートル未満、若しくは0.5立方ミリメートル未満)及び/又は0.1立方ミリメートル超過(例えば、0.5立方ミリメートル超過、0.75立方ミリメートル超過、1立方ミリメートル超過)であることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、微小空洞は円筒形であり、直径と深さの割合が0.5以上(例えば、1.0以上、1.5以上、2.0以上、若しくは2.5以上)及び/又は3以下(例えば、2.5以下、2.0以下、1.5以下、若しくは1.0以下)である。直径は、10μm以上及び/又は2mm以下であることができる。
【0028】
絶縁被覆は、精密に切断することができ、かつ試験条件下(例えば、−20℃〜80℃及び/又は溶媒と接触する)で変形及び/又は分解しない任意の絶縁材で形成されることができる。例えば、被覆は、ガラス、ステンレス鋼、不活性セラミックス材、不活性高分子、又は皮膜で保護している金属(passivating metal)(例えば、W、Ti、Zr、Nb、及び/又はTa)などの不活性物質で形成され得る。いくつかの実施形態では、被覆は反応物質で形成するされるが、不活性物質の絶縁コーティングでコーティングされている。再度図1を参照すると、絶縁被覆は、微小空洞の連続した表面、例えば、微小空洞の周壁をコーティングすることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、半導体コアは、微小空洞の1つの表面、例えば、底部表面を画定することができる。半導体コアは、白金線などの金属線であることができる。いくつかの実施形態では、半導体コアは、ステンレス鋼、白金、チタン、タングステン、ニッケル、タンタル、ニオビウム、クロム、ルテニウム、ジルコニウム、モリブデン、及び/若しくはパラジウム;又は白金、チタン、タングステン、ニッケル、タンタル、ニオビウム、クロム、ルテニウム、ジルコニウム、モリブデン、及び/又はパラジウムなどの合金等の材料を含むことができる。
いくつかの実施形態では、微小空洞が導電性基材内に直接位置付けられる場合、導電性基材は、ステンレス鋼、白金、チタン、タングステン、ニッケル、タンタル、ニオビウム、クロム、ルテニウム、ジルコニウム、モリブデン、及び/若しくはパラジウム;又は白金、チタン、タングステン、ニッケル、タンタル、ニオビウム、クロム、ルテニウム、ジルコニウム、モリブデン、及び/又はパラジウムなどの合金等の材料を含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、微小空洞電極の1つ以上の表面を、微小空洞電極が供される試験条件に対して比較的不活性(例えば、化学的に不活性)な導電性材料(例えば、12)でコーティングすることができる。例えば、1つ以上の表面を、金、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、白金、ロジウム、及び/又は銀などの1種類以上の貴金属でコーティングすることができる。コーティングはあらゆる厚さを有することができる。例えば、コーティングは、100ミクロン以下(例えば、80ミクロン以下、60ミクロン以下、30ミクロン以下、若しくは1ミクロン以下)及び/又は0.01ミクロン以上(例えば、1ミクロン以上、30ミクロン以上、60ミクロン以上、若しくは80ミクロン以上)の厚さを有する層であることができる。
【0031】
使用する際、微小空洞電極は、電池などの試験デバイスの中に組み込まれることができる。図3を参照すると、デバイス60は、絶縁被覆70と半導体コア72とで形成される微小空洞62を含んでいる。微小空洞は、導電性かつ化学的に不活性な層74でコーティングされている。電池活性物質64は微小空洞62内に充填される。電解質を含浸したセパレータ66は、微小空洞電極と対極68との間に位置付けられる。微小空洞電極を電池活性物質で充填するために、細かく粉砕されることができ、かつ平均最大寸法が微小空洞の最大寸法の1/5未満(例えば、1/10未満、1/20未満、又は1/30未満)である活性物質粉末の上に、微小空洞電極を数回押し付けることができる。いくつかの実施形態では、電池活性物質は、試験条件下で安定なペースト、若しくはジェル、又は任意の活性物質の形態であることができる。いくつかの実施形態では、電池活性物質がカソード活性物質の場合、対極は亜鉛箔であることができる。いくつかの実施形態では、微小空洞電極の反応領域は小さいので、対極は大面積を有する必要はない。更に、微小空洞内の少量の電池活性物質は、電解質相中の1種類以上の反応物質の多次元物質移動、及び対極(例えば、亜鉛)の高速動力学によって、十分に収容されることができる。微小空洞電極と対極との間に電気接点が確立すると、回路を完成させることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、図4を参照すると、微小空洞電極は不活性ホルダー80の中に配置され、この不活性ホルダー80は、それぞれが、微小空洞電極86又は対極用接点88のいずれかに電気的に接続される2本の導線(ワイヤ82及び84)を有する。いくつかの実施形態では、微小電極用のホルダーは、比較的化学的に不活性及び非導電性の任意の材料、例えば、アクリル樹脂材料及び/又は非導電性プラスチック材料(例えば、テフロン、ポリプロピレン)で作製される。ホルダーは、微小空洞電極の内容物と対極との間の接触を確実にすることができるネジ90を含むことができる。ホルダーは、微小空洞電極及び対極用接点の下に導電性のバネ92及び94を更に含んで、微小空洞電極86と接点88との間のあらゆる高差を調節することができ、こうして電極間の電気的導通が確実となる。電池活性物質を含有する微小空洞電極がホルダーにはめられると、電解溶液を含浸しているセパレータを微小空洞電極に接触させることができ、対極をセパレータの上に載せることができる。最終的に、電流がデバイスを貫流することができるように、デバイスは、ワイヤ82及び84を介してポテンシオスタット又はガルバノスタットなどの機器と接続され得る。いくつかの実施形態では、導線は、電気化学的機器に接続するためのインターフェースとしての機能を果たすコネクタに接続される。例えば、コネクタは任意のマルチピンコネクタ(例えば、DB−9コネクタ)であることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、図5を参照すると、2つ以上の微小空洞電極がアレイデバイスに組み込まれる。例えば、2つ以上の微小空洞電極102を不活性ホルダー100の中に挿入することができる。各微小空洞電極は、電極間のあらゆる高差を調節するためのバネ104を電極の下に有することができる。電極は、電解質を含浸している共通のセパレータ106、及び共通の対極108を共有することができる。図6A及び図6Bに示されるように、各微小空洞電極112は対応する導線(ワイヤ120)と電気的に導通することができ、共通の対極は、単一電気接点124と電気的に導通することができ、更にこの電気接点は順次導線(ワイヤ122)と接触される。図6B及び図6Cを参照すると、ワイヤ120及び122はデバイスから突き出ており、微小空洞電極の中に電池活性物質が含有されると電圧及び電流を測定することができるように、ポテンシオスタット又はガルバノスタットに接続され得る。微小空洞電極及び対極128、対極128、並びに任意に、対極128及び微小空洞電極に均一な圧力を加える均一な接触を確保する不活性プレート130、を分離するセパレータ126は、微小空洞電極の上に重ねられ、かつネジ132で止められて、回路が完成する。
【0034】
いくつかの実施形態では、微小空洞電極がアレイ中にある場合、電極は、電極の間に最小限の相互干渉が存在するように配置されされる。いくつかの実施形態では、2つの隣接する微小空洞間の最小距離は、各微小空洞と対極との間の最小距離よりも大きい。いくつかの実施形態では、電極間の距離は、1センチメートル以上(例えば、1.5cm以上、若しくは2cm以上)及び/又は3cm以下(例えば、2cm以下、若しくは1.5cm以下)であることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、バネは、導電性でありかつ比較的化学的に不活性である材料で作製される。例えば、バネは、コイル又はカンチレバー等の様々な形状いずれかを有することができる。バネは、銅−ベリリウム合金、ニッケル、スズ、青銅、真ちゅう、亜鉛、及び/又は銀を含むことができ、任意に導体材料(例えば、金)でめっきされることができる。微小空洞電極及び対極が、セパレータ及び対極と電気的に接続するように、これら構成要素の接点の高さの違いに合わせてバネを調節することができる。いくつかの実施形態では、バネ自体が電気的接続の一部である。
【0036】
前述においてワイヤなどの導線が記載されてきたが、特定の実施形態では、導線は、微小空洞電極と直接又は間接的に接触することが可能な任意の形状(例えば、タブ、ワイヤ)であることができる。導線は導電性であり、銅、銀、金、アルミニウム、及び/又はこれらの合金などの材料を挙げることができる。いくつかの実施形態では、導線はバネに半田付けされ、次に直接又は間接的のいずれかで、微小空洞電極又は対極と電気的に接触される。
【0037】
いくつかの実施形態では、微小空洞電極はホルダーから取り外し可能であり、天秤(例えば、微量天秤)を使用して容易に測定可能な質量を有する。したがって、電池活性物質を含有する前と後の微小空洞電極の質量を測定し、質量測定値の差異から電池活性物質の質量を決定することができる。いくつかの実施形態では、活性物質の質量と微小空洞電極の質量の比率は、1:100〜1:10,000(例えば、1:100〜1:1,000、1:100〜1:5,000、1:500〜1:10,000、1:1,000〜1:10,000)の範囲であることができる。
【0038】
小さな微小空洞は少量の活性物質を保持することができ、大きな微小空洞はより多くの量の活性物質を保持することができるように、活性物質の量は微小空洞の寸法に比例することができる。微小空洞電極中の活性物質の容積は、15μL未満(例えば、13μL未満、5μL未満、1μL未満、又は0.01μL未満)、及び0.001μL超過(例えば、0.01μL超過、1μL超過、5μL超過、又は13μL超過)であることができる。いくつかの実施形態では、微小空洞電極中の活性物質の容積は、2立方ミリメートル以下(例えば、1立方ミリメートル未満、0.75立方ミリメートル未満、若しくは0.5立方ミリメートル未満)及び/又は0.1立方ミリメートル超過(例えば、0.5立方ミリメートル超過、0.75立方ミリメートル超過、1立方ミリメートル超過)であることができる。いくつかの実施形態では、120mg以下(例えば、50mg以下、10mg以下、5mg以下、2mg以下、若しくは0.8μL以下)及び/又は0.5μg以上(例えば、0.8μg以上、2mg以上、5mg以上、10mg以上、若しくは50mg以上)の活性物質を、試験に用いる。電池活性物質を充填する前と後の微小空洞電極の質量測定値の差異から、又は充填された微小空洞電極から回収された活性物質の質量を測定することによって、電池活性物質の質量を決定することができる。少量の所要の活性物質は、例えば、少量の材料が合成される又は試験に使用可能である材料スクリーニングにおいて有利であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、電解質は液体であり得る。電解質は、様々な溶媒及び/又は塩を含むことができる。電解質組成物の例は、例えば、Totir et al.の米国特許出願第2005−0202320 A1号、及びEylem et al.の米国特許第7,160,647号に記載されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、セパレータは一枚の紙であり、又は電気化学セル及びガルバニセルで使用される任意の標準的な隔離材である。例えば、セパレータ20は、ポリプロピレン(例えば、不織布ポリプロピレン、微多孔性ポリプロピレン)、ポリエチレン、及び/又はポリスルホンンから形成され得る。セパレータは、例えば、ブラシ(Blasi)らの米国特許第5,176,968号に記載されている。セパレータはまた、例えば、多孔性絶縁ポリマー複合層(例えば、ポリスチレンゴム及び超微粒子状シリカ)であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、対極は、亜鉛箔などのアノード活性物質である。いくつかの実施形態では、対極は、1種類以上のアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)をアノード活性物質として含む。アルカリ金属は、純粋な金属であっても、金属の合金であってもよい。いくつかの実施形態では、対極はカソード活性物質を含むことができ、微小空洞中の活性物質はアノード活性物質であることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、試験用電池の測定に用いる電流は比較的小さい。一例として、電流は20C以下及び/又は0.1C以上であることができる。
【0043】
微小空洞電極は様々な方法で作製され得る。一例として、微小空洞電極は、不活性基質内に埋め込まれた半導体コアをエッチングすることによって作製され得る。例えば、白金線などの半導体コアをガラス管の中に挿入することができる。ガラス管の一方の末端部をプロパントーチで密封し、サンドペーパ及び/又はアルミナスラリーを用いて密封された末端部を研磨し、白金を腐食槽(例えば、王水槽)の中でエッチングすることができる。エッチングされる材料の量は、顕微鏡を使用してモニタされ得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、機械式ドリル(例えば、カーバイドドリルビットを使用する)、レーザドリル、化学エッチング、及びリソグラフィ法によって、基材にドリルで微小空洞を開ける。
【0045】
いくつかの実施形態では、微小空洞のアレイを用いる測定は、オートメーションに適している。例えば、活性物質のサンプリング、測定、廃棄、及び/又は回収は、ロボットを用いて行うことができる。アレイは、電気化学測定機器又はバッテリテスタに接続されて、コンピュータによって制御されることができる。
【0046】
次の実施例は、例示を意図するものであって、制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
空洞直径(100ミクロン)に対応する所望の直径を有する白金線を、ガラス管(外径289.6cm(114”)及び内径0.16cm(1/16”))の中に挿入し、一方の末端部をプロパントーチを用いて密封した。密封された末端部を2000グリットサンドペーパーで研磨し、加熱した王水槽の中で白金を深さ約100ミクロンまでエッチングした。電極をエッチング槽から頻繁に取り出し、電極を顕微鏡で検査することによって、エッチング深さをモニタした。より良好な電気接点を提供し、かつ白金の活性表面を落ち着かせるために、露出した白金表面を金でめっきした。
【0048】
キャビティの先端を活性物質粉末に数回押し付けることによって、微小空洞を手で充填し、続いて先端を濾紙でぬぐって、ガラスの先端表面から余剰材料を除去した。参照電極用のルギン管を具備したTeflon電気化学セルに電極を移した。電極の精度を調べるために、文献の材料(V.Vivier et al.,J.Electrochem.Soc.147,4252(2000))と類似している、Bi物質を、微小空洞電極の中で試験した。図7にプロットされた得られたボルタンメトリー曲線は、文献の曲線と一致し、3回の連続スキャンを反映しており、試験材料が徐々に濡れたことを示していた。
【0049】
新たなサンプリングのために微小空洞電極を音波処理によって素早く洗浄し、その後酸及び水で順次すすいだ。
【0050】
この手法の試験は、市販のNiOOH材料に対しても行われた。CoOOHでコーティングしたオキシ水酸化ニッケルの2つの試料を、微小空洞電極を用いて評価して、定量比較の再現性を調べた。図8は、40%KOH中の2つのサンプリングの第1回目のカソードに関するスキャンを示し、繰り返されたサンプリングの良好な再現性を明確に示している。
【0051】
電気化学反応が起こった際に起こり得る材料の濡れ、膨張、及び/又は収縮に起因して材料が移動する可能性を減少させるために、開いた電気化学セル構成を試験に使用した。セパレータ及びアノードを微小空洞電極の上に直接置くことによって空洞内にカソード材料を閉じ込めることにより、即ち、微小電池(図3)を形成することにより、このような潜在的問題の可能性を有意に低減することができる。セパレータ(直径0.64cm(0.25インチ)及び厚さ50μmの濾紙のディスク)に、35%KOH(aq)電解質を含浸させた。アノードは亜鉛箔であった。図9は、図3に記載の微小電池構成の例を示し、試験結果は過硫酸ナトリウムによる再酸化の前と後の市販のNiOOHに関するものであり、定電流が印加された。
【0052】
(実施例2)
直径0.76mm、深さ0.90mmを有する微小空洞を、直径0.64cm(0.25インチ)のステンレス鋼ロッド(18−8PH)の先端にドリルで開けた。測定された抵抗は0.01Ohm未満であった。空洞に充填された試料を回収し、定量化のために重さを量った。5回の個別の重量測定値を平均して試料の重量を決定した。図3に示されるのと同様の方法で微小電池を作製することができる。
【0053】
40%KOHを含有する紙セパレータを有する市販の電池材料の0.1mA(Cレート0.4)及び0.5mA(Cレート2)における試験結果は、図10A〜図10Dの通りであった。
【0054】
5つの試料の重さを量り、グラファイト5%を含むMnO(正味のMnOは88重量%である)の平均をとることによって、空洞に充填された材料の量を測定した。活性物質の質量は0.85mgであった(図10B)。0.4Cレートにおいて、材料利用率は95%を超え、結果は再現可能であった。これらの結果は、グラファイトなどの導電率強化用添加剤を含ませずに材料を試験することが可能であるが、材料利用率はグラファイトを含む材料と比較してずっと低いことを示している。
【0055】
空洞の設計に基づくこれらの微小電池は、少量で入手可能な電池のカソード材料を試験するのに特に適しており、収集されたデータは、標準的な形状因子の通常の電池と一致する。
【0056】
(実施例3)
実施例1及び2の設計説明に基づいて、8個のセルの微小空洞の電池アレイを作製した。約1mgの固体粉末試料を保持するために、ステンレス鋼ロッド(直径0.24cm(3/32”)、長さ0.95cm(3/8”))の一方の末端に空洞(直径0.8mm)をドリルで形成して、8個の微小空洞電極を作製し、この空洞を金でめっきした。8個のセルを、DB−9コネクタを介して外部の多チャンネル電池試験機器に接続されたバネ仕掛けの電気接点を有するアクリル製の本体に組み込込んだ。組立品は、単一共通アノード及び単一共通セパレータを使用するように設計された。相互干渉を、セパレータ厚さ及びセルとセルの間の抵抗値に基づくあらゆる種類の測定値の1%未満に低減するために、セルとセルを約1.5cm離間させた。粉末試料の小さな山に空洞をタンピングし、電解質を含浸したセパレータ及び微小空洞電極上の共通アノード箔を定置し、アクリル製ホルダーの上に単一ネジを親指でねじ込んでステンレス鋼プレート(厚さ0.32cm(1/8”))を介して8個のセル全てを押圧して、セルを準備した。この組立品は図6A〜図6Cに示されている。
【0057】
20重量%のグラファイト粉末を細砕することによってオキシ水酸化ニッケルを形成し、微小空洞に充填した。各空洞の材料(0.9〜1.1mg)の重量は、精密天秤を使用して、活性物質試料の充填前と充填後の微小空洞電極の重さを量ることによって得た。紙セパレータは35%水酸化カリウムを含浸し、アノードは亜鉛箔の一切れ(2×8cm、厚さ0.12mm)であった。8チャンネルのバッテリテスタを使用して0.1mA(約0.1A/gレート)で8個のセル全てを同時に放電した。
【0058】
図11を参照すると、8個のセル全てが典型的なオキシ水酸化ニッケルの放電パターンを示した。実行時間分布は、mAh/gにおける2%未満の標準偏差を明らかとし、この微小空洞技術が少量で高速のハイスループット電池材料試験に好適であることを示した。
【0059】
本発明の多数の実施形態を記載してきた。しかし、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われてもよいと理解されるであろう。例えば、微小空洞電極は、空気感受性材料及び/又は水分感受性材料のための不活性雰囲気下のデバイスにおいて操作され得る。いくつかの実施形態では、微小空洞電極は、リチウム電気化学で一般的に使用されるもののような環境制御ボックスの中で操作される。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の範疇にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的活性物質の電気化学的性質測定装置であって、
最大容積15立方ミリメートル未満の微小空洞を有する電子的に導電性かつ化学的に不活性な基材と、
前記基材と電気的に接触する第1の導線と、を含む、装置。
【請求項2】
前記微小空洞が、1立方ミリメートル未満の最大容積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記微小空洞が、2ミリメートル以下の最大寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記微小空洞が、0.01ミリメートル以上の最小寸法を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記基材が、白金、チタン、タングステン、ニッケル、タンタル、ニオビウム、クロム、ルテニウム、ジルコニウム、モリブデン、パラジウム、これらの合金、及びステンレス鋼からなる群から選択される1種類以上の材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記基材が、材料の層で更にコーティングされている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記材料が、貴金属である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
カソード活性物質が前記微小空洞の中にあるときにカソード活性物質を含む電気化学的活性物質と共に回路を完成させる、アノードおよび前記アノードと接触する第2の導線を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記微小空洞が前記カソード活性物質で充填されたときに、前記カソード活性物質が前記第1及び第2の導線、前記アノード、及び電解質と電気的に接触する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
アノード活性物質が前記微小空洞の中にあるときにアノード活性物質を含む電気化学的活性物質と共に回路を完成させる、カソードおよび前記カソードと接触する第2の導線を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記微小空洞が前記アノード活性物質で充填されたときに、前記アノード活性物質が前記第1及び第2の導線、前記カソード、及び電解質と電気的に接触する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記電気化学的活性物質が、2ミリグラム未満の質量を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記基材が、電気化学的機器を介してコンピュータと更に連通する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記基材が前記電気化学的機器と更に連通する、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
最大容積が15mm未満であり、かつ電気化学的活性物質を含む試料の電気化学的性質を測定することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−521205(P2011−521205A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503254(P2011−503254)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/039831
【国際公開番号】WO2009/126667
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】