説明

電気外科用出力を制御するための動き検出器

【課題】電気外科的出力を制御するための動き感知装置を有する電気外科用機器を提供すること
【解決手段】本開示の一態様では、本電気外科用機器は、細長いハウジングと、該ハウジング内に支持されかつ該ハウジングから遠位に延びる、電気外科用エネルギー源に接続可能な導電性要素と、該ハウジング内に配置されかつ電気外科用発電機に電気的に接続されたセンサとを含む。本センサは、導電性要素の動きを検出し、該導電性要素の動きに関連する信号を電気外科用発電機に伝達する。電気外科用エネルギー源は、センサからの信号に応答して電気外科用エネルギーを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、それらの全内容が引用により本明細書に組み込まれる、2003年2月20日に提出された米国特許仮出願第60/448、520号、および2004年1月1日に提出された米国特許仮出願第60/533、695号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、全体として電気外科用機器に関し、より詳細には、その電気外科的出力を制御するための動き検出器を有する電気外科用ペンシルに関する。
【0003】
(関連技術の背景)
近年、電気外科用機器は、外科医によって広く用いられるようになってきた。その結果、取り扱いが容易で操作しやすく、かつ信頼性を有し安全な機器に対する必要性が生じてきている。概して、ほとんどの外科用機器は通常、種々のハンドヘルドペンシル、例えば電気外科用ペンシル、鉗子、鋏等、および電気外科用ペンシルを含んでおり、それらによってエネルギーが組織部位に移送される。電気外科用エネルギーは、最初に電気外科用発電機から活性電極へ伝達され、次いで、該活性電極が、電気外科用エネルギーを組織に伝達する。単極システムでは、帰還電極パッドが患者の下に配置され、電気外科用発電機への電気経路を完成する。双極システム構成では、より小さい帰還電極が、手術部位と身体的に接触して、または手術部位に直接隣接して配置される。
【0004】
本明細書において、用語電気外科的高周波療法は、有意な切断を伴わない生物組織、例えばヒトの筋肉組織または内臓組織への電気火花の印加を含む。火花は、適切な電気外科用発電機から発生する高周波電気エネルギーの爆発によって生成される。一般に、電気外科的高周波療法は、組織の水分を取り除く、組織を縮小させる、組織を壊死させる、または組織を焼くために用いられる。結果として、電気外科的高周波療法用機器は主として、出血および手術による様々な流体の滲出を止めるために用いられる。これらの手術は、全体として、用語「凝固」によって包含される。一方、電気外科的「切断」は、切断効果を生成する、組織に印加される電気火花の使用を含む。これと対照的に、電気外科的「封止」は、組織のコラーゲンを融解させて溶融塊にするための電気外科用エネルギー、圧力および電極間の間隙距離の固有の組み合わせの使用を含む。
【0005】
種々の外科的効果に対して特定の電気外科波形が好ましいことが知られている。例えば、電気外科用ペンシルの電気外科用ブレードの切断効果を高めるために、或いは2つの対向する挟持部材の協働効果を高めるためには、連続(即ち定常)正弦波形が好ましい。生物組織の凝固を強めるためには、一連の不連続な高エネルギー電気外科パルスが好ましい。電気外科的「混合」、「短絡」または組織の溶解のためには、別の種類の電気外科波形が好ましい。理解されるように、これらの波形は一般に発電機によって調整され、通常、手術の開始時点で(または手術中に)外科医によって手動選択される所望の運転モードに依存する。
【0006】
本明細書において使用する用語「電気外科用ペンシル」は、活性電極に取り付けられ、組織を凝固、切断および封止するために用いられるハンドピースを有する機器を含むことを意図されている。本ペンシルは、ハンドスイッチ(ハンドピース自体の上に備えられた押下可能なボタン形状の)またはフットスイッチ(ハンドピースに動作可能に接続された押下可能なペダル形状の)によって作動させることができる。活性電極は、通常は細長く、かつ先のとがった
または丸みを帯びた遠位端を有する薄い平坦なブレードの形状とすることができる導電性要素である。一般に、この種の電極は、当技術界で「ブレード」型として知られている。代替的に、活性電極は、平坦な遠位端、丸みを帯びた遠位端、先のとがった遠位端、または傾斜した遠位端を有する中実の若しくは中空の細長く狭い円筒状の針を含むことができる。一般に、この種の電極は、当技術界で「ループ」型または「係蹄」型、或いは「針型」若しくは「ボール」型として知られている。
【0007】
上に述べたように、ペンシルのハンドピースは、適した電気外科用エネルギー源(例えば発電機)に接続され、該電気外科用エネルギー源が、電気外科用ペンシルの導電性要素に必要な電気外科用エネルギーを供給する。通常、電気外科用ペンシルによって患者に手術が施される際には、電気外科用発電機からのエネルギーは、活性電極を通して手術部位の組織に伝導され、次いで患者を通して帰還電極に伝導される。帰還電極は通常、患者の身体上の都合のよい位置に配置され、帰還ケーブルによって発電機に取り付けられる。
【0008】
手術中、外科医は、ハンドスイッチまたはフットスイッチを押下して電気外科用ペンシルを起動する。次いで、特定の外科的効果に所望される高周波電気外科用エネルギーのレベルに応じて、外科医は、例えば電気外科用機器上のダイヤルを回すことによって電気外科用発電機の電力レベルを手動で調節する。最近、活性電極によって感知される抵抗の量に応じて、または外科医によってハンドスイッチが押下された度合いにより送達される電気外科用エネルギーのレベルを変える電気外科用ペンシルが開発されてきた。これらの機器のうちの幾つかの例が、本発明の譲受人に譲渡された、2002年7月25日に提出された米国仮出願第60/398、620号および2002年11月5日に提出された米国仮出願題60/424、352号に記載されており、それらの全内容が引用により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ハンドスイッチまたはフットスイッチを使用せずに起動されかつ外科医による手動介入なくして電気外科用発電機からの電気外科的出力を自動的に制御することのできる電気外科用ペンシルに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
その電気外科的出力を制御するための動き感知装置を有する電気外科用機器を開示する。本開示の一態様では、電気外科用機器は、細長いハウジングと、該ハウジング内に支持されかつ該ハウジングから遠位に延びる、電気外科用エネルギー源に接続可能な導電性要素と、該ハウジング内に配置されかつ電気外科用発電機に電気的に接続されたセンサとを含む。本センサは、導電性要素の動きを検出し、該導電性要素の動きに関連する信号を電気外科用発電機に伝達する。電気外科用エネルギー源は、センサから伝達された信号に応答して電気外科用エネルギーを供給する。
【0011】
導電性要素の動きを検出するためのセンサは力感知変換器、加速度計、光学位置決定システム、高周波位置決定システム、超音波位置決定システムおよび磁場位置決定システムのうちの少なくとも1つであることを想定している。
【0012】
導電性要素は、該要素を貫通するように規定される長手軸を含み、センサは、該長手軸に沿った導電性要素の軸方向運動、導電性要素の長手軸を横断する横運動、および導電性要素の長手軸を中心とした回転運動のうちの少なくとも1つを検出するのが好ましい。一実施形態では、電気外科用エネルギー源が長手軸に沿った導電性要素の軸方向運動の検出に応答して切開用RFエネルギー出力を伝達することを想定している。別の実施形態では、電気外科用エネルギー源が長手軸を横断する導電性要素の横運動の検出に応答して止血用RFエネルギー出力を伝達することを想定している。
【0013】
センサは差動平行板加速度計、平衡相互嵌合櫛歯状加速度計、オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計、および薄膜型加速度計のうちの少なくとも1つとすることを想定している。センサは、長手軸に沿った軸方向の導電性要素の動きを検出するための第1の加速度計と、長手軸を横断する横方向の導電性要素の動きを検出するための第2の加速度計とを含むのが好ましい。センサが少なくとも1枚の圧電フィルムを含むことができることも想定している。
【0014】
一実施形態では、第1の加速度計が導電性要素の軸方向運動に対応する出力信号を電気外科用エネルギー源に伝達するように構成および適合され、第2の加速度計が導電性要素の横運動に対応する出力信号を電気外科用エネルギー源に伝達するように構成および適合されていることを企図している。第1および第2の加速度計の各々は、差動平行板加速度計、平衡相互嵌合櫛歯状加速度計、オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計および薄膜型加速度計のうちの少なくとも1つであるのが好ましい。
【0015】
特定の実施形態では、センサが所定の時間電気外科用ペンシルの動きを検出しないときおよび/または動きの所定の閾値レベルを上回る電気外科用ペンシルの動きを検出しないときには電気外科用エネルギー源が電気外科用エネルギーの供給を停止することを想定している。
【0016】
特定の実施形態では、センサが所定時間後に電気外科用ペンシルの動きを検出したときおよび/または動きの所定の閾値レベルを上回る電気外科用ペンシルの動きを検出したときには電気外科用エネルギー源が電気外科用エネルギーの供給を再開することを想定している。
【0017】
これらおよび他の目的を、図面の説明並びに好ましい実施形態の詳細な説明によって以下により明確に示す。
【0018】
本明細書に組み込まれかつその一部を構成する添付の図面は、本開示の実施形態を示しており、上に記載した本開示の全体的な説明、および下に記載する実施形態の詳細な説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、後述するとおりの効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本開示による電気外科用ペンシルの一実施形態の一部切欠き側面図である。
【図2】図2Aは、面内感知または面内力印加に適した加速度計の実施形態を示す。図2Bは、面内感知または面内力印加に適した加速度計の実施形態を示す。図2Cは、面内感知または面内力印加に適した加速度計の実施形態を示す。
【図3】図3は、本開示の別の実施形態による電気外科用ペンシルの一部切欠き斜視図である。
【図4】図4は、図3の指定領域の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
本明細書に開示する電気外科用ペンシルの実施形態を、同じ参照数字は類似の要素または同一の要素を示す図面を参照し、ここで詳細に説明する。図面において、また後続の説明において、従来と同様に、用語「近位」は、電気外科用ペンシルの術者に最も近接する端部を指し、用語「遠位」は、電気外科用ペンシルの術者から最も遠い端部を指す。
【0022】
加速度は、頻繁に感知または測定しなければならない物理的性質である。加速度は、時間に対する速度変化率として定義される。例えば、加速度は、力または質量を測定するために、若しくは何らかの制御システムを操作するために感知されることが多い。何らかの加速度測定の中心部に、加速度感知要素、または力感知変換器がある。変換器は、一般に電気信号または電気回路と連動して発電機、コンピュータ若しくは他の外科手術用コンソールに有益な出力信号を提供する機械的要素または電気機械的要素(例えば圧電変換器、ピエゾ抵抗変換器または歪みゲージ)であることが多い。例示的な変換器が米国特許第5、367、217号、第5、339、698号、および第5、331、242号に記載されており、それらの全内容が引用により本明細書に組み込まれる。加速度計は、加速度または加速度を与えることのできる重力を測定する計器として定義される。別の種類の力感知変換器が加速度計である。例示的な加速度計が米国特許第5、594、170号、第5、501、103号、第5、379、639号、第、5、377、545号、第5、456、111号、第5、456、110号、および第5、005、413号に記載されており、それらの全内容が引用により本明細書に組み込まれる。
【0023】
数種類の加速度計が知られている。第1の種類の加速度計は、シリコンビームによって懸架されたバルク微細加工を施したシリコン塊を組み込んでおり、サスペンションビーム上のイオン注入ピエゾ抵抗器が、該塊の動きを感知する。第2の種類の加速度計は、キャパシタンスの変化を利用して塊の動きを検出する。第3の種類の加速度計は、構造体の物理的負荷の移動の結果としての構造体の共振周波数の変化を測定することによって加速度を検出する。加速度計が加重フレックスプリント回路内に挟まれた圧電フィルムを含むことができるのを想定している。少なくとも1つのフレックス抵抗回路を用いて、加速度ではなく手術器具の位置および/または配向を検出することができることも想定している。
【0024】
ここで図1に移ると、本開示の一実施形態により構築された電気外科用ペンシルの一部切欠き側面図が記載されており、全体が数字100で表されている。以下の説明は電気外科用ペンシルを対象とするが、本開示の特徴および概念を他の電気外科用機器、例えば解剖器具、アブレーション器具、プローブ等に応用することができるのを想定している。電気外科用ペンシル100は、その遠位端103においてブレードレセプタクル104を支持するように構成および適合された細長いハウジング102を含んでおり、次いで、ブレードレセプタクル104が、その中に電気メスブレード106を受け入れている。ブレード106の遠位端108は、レセプタクル104から遠位に延び、一方、ブレード106の近位端110は、ハウジング102の遠位端103内に保持されている。電気メスブレード106は、導電性材料、例えばステンレススチールまたはアルミニウムで製造されるか、若しくは導電性材料を塗布されるのが好ましい。
【0025】
図に示すように、電気外科用ペンシル100は、ケーブル112を介して、従来型の電気外科用発電機「G」に連結されている。ケーブル112は、電気外科用発電機「G」を電気メスブレード106の近位端110と電気的に相互接続する送電線114を含む。ケーブル112は、ハウジング102内に支持された動き感知装置124(例えば加速度計)を電気外科用発電機「G」と電気的に相互接続する制御ループ116を更に含む。
【0026】
ほんの一例として、電気外科用発電機「G」は、コロラド州ボールダー所在のTyco
Healthcare,LPの一部門であるValleylab,Inc.,によって製造された「FORCE FX」発電機、「FORCE 2」発電機または「FORCE
4」発電機のうちの任意の1つ、若しくはそれらと等価の物とすることができる。電気外科用発電機「G」のエネルギー出力は、組織切断に対して適切な電気外科用信号(例えば1ワット〜300ワット)を提供しかつ組織凝固に対して適切な電気外科用信号(例えば1ワット〜120ワット)を提供するために可変とすることができるのが好ましい。適した電気外科用発電機「G」の一例は、本発明の譲受人に譲渡された、Orszulakらに付与された米国特許第6、068、627号に開示されており、その全内容が引用により本明細書に組み込まれる。‘627号特許に開示された電気外科用発電機は、とりわけ、その中に識別回路およびスイッチを含む。一般に、識別回路は、発電機から受信した情報に応答し、発電機に検証信号を返信する。一方、スイッチは、識別回路に接続され、該識別回路から受信した信号伝達に応答する。
【0027】
電気外科用ペンシル100は、ハウジング102の外側表面上に支持された起動ボタン126を更に含む。起動ボタン126は、電気メスブレード106に伝達される電気エネルギーの送達を制御するために用いられる押下可能スイッチ128を制御するように動作可能である。
【0028】
上述の図1に戻ると、電気外科用ペンシル100は、ハウジング102内に支持された加速度計124を含む。加速度計124は、発電機「G」に動作可能に接続され、次いで、該発電機「G」が、適切な量の電気外科用エネルギーを電気メスブレード106に制御して伝達し、かつ/または電気外科用発電機「G」からの波形出力を制御する。
【0029】
使用に際し、外科医が起動ボタン126を押下することによって電気外科用ペンシル100を起動し、それにより電気エネルギーを電気メスブレード106に伝達することが可能となる。起動ボタン126を押下した状態で、図1に双頭の矢印「X」で示すX軸に沿って外科医が繰り返し電気外科用ペンシル100を動かす際に(即ち穿刺様運動において)、加速度計124が、制御ループ116を経由して対応する信号を発電機「G」に伝達する。次いで、発電機「G」が加速度計124から受信した信号を解釈し、その後、送電線114を介して、対応する切開用電気外科用エネルギー出力(即ち、切開に関連する特定の電力および波形)を電気メスブレード106に伝達する。
【0030】
他方では、外科医が例えば図1に双頭の矢印「Z」で示すX軸に直角な方向に電気外科用ペンシル100を動かした場合、加速度計124は、制御ループ116を経由して、対応する信号を発電機「G」に伝達する。次いで、発電機「G」が加速度計124から受信した直交信号を解釈し、その後、送電線114を介して、止血用電気外科用エネルギー出力(即ち、止血に関連する特定の電力および波形)を電気メスブレード106に伝達する。
【0031】
従って、本開示の電気外科用ペンシルは、単に電気外科用ペンシルを特定のパターンまたは方向に動かすことによって外科医が電気メスブレード106に送達される出力の種類および/若しくはエネルギーの量を制御することを可能にすることになる。この方法では、外科医は、電気メスブレード106に切開用エネルギー出力または止血用エネルギー出力を生成するために電気外科用ペンシル100上に配置されたどのボタン或いはスイッチも押下する必要がない。理解されるように、外科医は、電気メスブレード106に切開用エネルギー出力または止血用エネルギー出力を生成するのに発電機「G」上のダイヤル若しくはスイッチを調節する必要がない。
【0032】
位置感知または静電気印加に適した加速度計は、固定電極若しくは可動電極と共に多くの構成に形成することができる。面内動き感知性を有する加速度計の幾つかの実施形態を、直交座標系と併せて図2に示す。詳細には、図2A〜図2Cに示すように、差動平行板加速度計が、全体として150で示されている。差動平行板加速度計150は、Y軸に沿って移動可能でそれによって可動電極152と固定電極156および158との間の間隙を変化させるプルーフマス154に取り付けられた電極152を含む。Y軸に沿った可動電極152の動きが、電極対152、156および152、158によって形成されるキャパシタンスに逆の変化を生じさせる。図2Bには、平衡相互嵌合櫛歯状加速度計が全体として160で示されている。
【0033】
平衡相互嵌合櫛歯状加速度計160は、Y軸に沿って移動可能でそれによって可動電極162と固定ラップアラウンド形電極166との間の重なり合う領域を変化させるプルーフマス164に取り付けられた電極162を含む。図2Cには、オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計が全体として170で示されている。オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計170は、Y軸に沿って移動可能でそれによって可動電極172と固定ラップアラウンド形電極176との間の間隙を変化させるプルーフマス174に取り付けられた電極172を含む。
【0034】
軸方向(即ちX方向)、横方向(即ちY方向)および垂直方向(即ちZ方向)への電気外科用ペンシル100の加速度の変化を測定することのできる単一の加速度計124が好ましいが、図2A〜図2Cに示すような一対の同一の加速度計または異なる加速度計(即ち加速度計150、160および170)を用いることができるのを想定している。例えば、オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計170のような第1の加速度計をY方向への可動電極172の変位によって発電機「G」による切開用電気外科用エネルギーの電気メスブレード106への伝達が生じるように電気外科用ペンシル100内に取り付けることができ、一方で、別のオフセット相互嵌合櫛歯状加速度計170のような第2の加速度計を、X方向への可動電極172の変位によって発電機「G」による止血用電気外科用エネルギーの電気メスブレード106への伝達が生じるように第1の加速度計に直角に電気外科用ペンシル100内に取り付けることができる。
【0035】
任意の組み合わせの加速度計を任意の数の配向で電気外科用ペンシル100内に備え、回転加速度(Y方向およびZ方向)を含む任意の数の方向への加速度の変化を測定することができるのを想定している。X方向、Y方向およびZ方向への任意の加速度の組み合わせをも検出、測定並びに計算して発電機「G」からの電気外科出力を生じさせることができることも想定している。
【0036】
加速度計に加え、電気メスブレード106の動きを検出するための多くの他の種類のセンサを提供することができるのを想定している。他の種類の力感知変換器を用いてもよい。限定するものではないが、光学位置決定システム、高周波位置決定システム、超音波位置決定システムおよび磁場位置決定システムを含む他の種類のものを用いることができる。
【0037】
ブレード形状の活性電極を示しかつ説明してきたが、任意の種類の先端を電気外科用ペンシル100の活性電極として用いることができると想定している。例えば、活性電極は、平坦な端部、丸みを帯びた端部、先のとがった
端部または傾斜した端部を有する中実の若しくは中空の細長く狭い円筒状の針とすることができる。
【0038】
更に、加速度計124から受信した出力信号に応答した発電機「G」から電気メスブレード106への電気外科用エネルギーの伝達に要する時間を外科医が所望する応答性の度合いに基づいて調整することができるのを想定している。例えば、相対的により短い応答時間は、相対的により長い応答時間よりもより応答性に優れていると考えられるであろう。
【0039】
更に、電気外科用ペンシル100が長時間不動状態に保持されているかまたは横にして置かれている場合にエネルギー遮断信号を発電機「G」に伝達する動き検出アルゴリズムを有する加速度計124を備えることを想定している。軸方向運動、垂直運動、または横運動に応答した電気外科用ペンシル100の起動に対する感度を電気外科用ペンシル100が最後に用いられた時刻から時間が経過するにつれて低下させることができるのを企図している。そのようにすれば、電気外科用ペンシル100が不注意で起動される可能性は、時間がより長く経過するにつれて減少することになろう。更に、非使用時に電気外科用ペンシル100を無効化する機能により、機器の臨床上の安全性が向上する。動き検出アルゴリズムは、電気外科用ペンシル100が不注意で起動されるのを防止する「仮想ホルスタ」を効果的に生成する。
【0040】
ここで図3および図4に移ると、本開示の別の実施形態により構築された電気外科用ペンシルの一部切欠き斜視図が記載されており、全体が数字200で表されている。電気外科用ペンシル200は電気外科用ペンシル100に類似しており、構造および動作における相違点を識別するのに必要な範囲のみに限定して詳細に論じることにする。
【0041】
図3および図4に見られるように、電気外科用ペンシル200は、ハウジング102内に支持された薄膜型の加速度計またはセンサ224を含む。センサ224は、弾性材料で製造された基板226を含むのが好ましい。センサ224は、基板226の周縁沿いに配置された電極228のアレイ(明確化のために、4つだけの電極228a〜228dが示されている)を更に含む。センサ224は、導線232を介して各電極228に電気的に接続されたプルーフマス230を更に含む。プルーフマス230はX、YおよびZ軸に沿った任意の方向に移動可能で、それによりそれ自体と電極228との間の間隙距離およびリード線232を通る抵抗を変化させる。
【0042】
その結果、X、Yおよび/またはZ軸に沿ったプルーフマス230の動きが、制御ループ116を経由した特定の信号の発電機「G」(図1参照)への伝達を生じさせる。次いで、発電機「G」が、センサ224から受信したこの特定の信号を解釈し、その後、送電線114を介して、対応する別個の電気外科用エネルギー出力(即ち特定の電力および/または波形)を電気メスブレード106に伝達する。
【0043】
例えば、起動ボタン126を押下した状態では、外科医による電気外科用ペンシル200のX軸に沿った方向への動きにより(即ち穿刺様運動において)、センサ224が第1の特性信号を発電機「G」に伝達する。発電機「G」は、第1の特性信号を解釈し、次いで、対応する切開用電気外科用エネルギー出力(即ち、切開に関連する特定の電力および特定の波形)を電気メスブレード106に伝達する。
【0044】
更に別の例では、起動ボタン126を押下した状態では、外科医による電気外科用ペンシル200のX軸を横断する方向、例えばY軸および/またはZ軸に沿った方向への動きにより、センサ224が第2の特性信号を発電機「G」に伝達する。発電機「G」は、第2の特性信号を解釈し、次いで、対応する止血用電気外科用エネルギー出力(即ち、止血に関連する特定の電力および特定の波形)を電気メスブレード106に伝達する。
【0045】
基板226が凹形状の構造を有するのを想定している。この方法では、外科医が電気外科用ペンシル200を静止した状態に保持すると、プルーフマス230は、基板226の底部に戻ろうとすることになり、それ自体を効果的に自動リセットすることになる。換言すれば、凹形状の基板226は自動調心性を有することができ、従って、電気外科用ペンシル200に自己リセット機能を付与することができる。他の形状を用いることができるのも想定している。
【0046】
従って、電気外科用ペンシル100、200の電気外科用エネルギー出力は、外科医の手の自然な動きによって制御されることになり、対応するエネルギー出力を「切開用」設定から「止血用」設定に変更するのに特定の思考を必要とせず、逆の場合も同様である。
【0047】
電気外科用ペンシル100、200が所定の時間不動状態に保持されておりかつ/または動きの所定閾値レベルを下回る状態に保持されている(即ち、所定時間加速度計124および/またはセンサ224が電気外科用ペンシル100若しくは200の動きを感知せずかつ/または所定閾値レベルを下回る動きを感知する)際には、電気外科用発電機「G」が電気メスブレードに電気外科用エネルギーを伝達しないことを考えている。更に、時間および動きの閾値レベルを適宜調整することにより電気外科用ペンシル100または200の感度を増大および/または低下させることができることを考えている。
【0048】
所定時間が経過した後および/または所定閾値レベルを上回った後に加速度計124並びに/若しくはセンサ224が電気外科用ペンシル100または200の動きを検出したときに電気外科用発電機「G」が電気メスブレードへの電気外科用エネルギーの供給を開始および/または再開することを更に考えている。
【0049】
上記のことから、また種々の図面を参照すれば、当業者は、本開示の範囲を逸脱することなく特定の修正をも本開示に対して施すことができるのが分かるであろう。例えば、本開示の実施形態には、上述した1つまたは複数のセンサに加えて電気外科用エネルギー出力を制御するためのボタンを有する電気外科用ペンシルが含まれる。本開示による電気外科用機器の実施形態を本明細書に説明してきたが、本開示はそれらに限定されず、上記の説明は好ましい実施形態の単なる例示に過ぎないと見なすべきであることが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明の好ましい実施形態によれば、以下の電気外科用ペンシルなどが提供される。
(項1)
電気外科用ペンシルであって、
細長いハウジングと、
該ハウジング内で支持されかつ該ハウジングから遠位に延びる導電性要素であって、電気外科用エネルギー源に接続可能な導電性要素と、
該ハウジング内に配置されかつ該電気外科用エネルギー源に電気的に接続されたセンサとを備え、該センサは、該導電性要素の動きを検出しかつ該導電性要素の該動きに関連する信号を該電気外科用エネルギー源に伝達し、該電気外科用エネルギー源は、該センサから伝達された該信号に応答して電気外科用エネルギーを供給する、
電気外科用ペンシル。
(項2)
前記導電性要素の動きを検出するための前記センサは、加速度計、光学位置決定システム、高周波位置決定システム、および超音波位置決定システムのうちの少なくとも1つである、上記項1に記載の電気外科用機器。
(項3)
前記導電性要素は、該要素を貫通するように規定される長手軸を含み、前記センサは、該長手軸に沿った該導電性要素の軸方向運動、該導電性要素の前記長手軸を横断する横運動、および該導電性要素の該長手軸を中心とした回転運動のうちの少なくとも1つを検出する、上記項1に記載の電気外科用機器。
(項4)
前記電気外科用エネルギー源は、前記長手軸に沿った前記導電性要素の軸方向運動の前記検出に応答して切開用RFエネルギー出力を伝達する、上記項3に記載の電気外科用機器。
(項5)
前記電気外科用エネルギー源は、前記長手軸を横断する前記導電性要素の横運動の前記検出に応答して止血用RFエネルギー出力を伝達する、上記項3に記載の電気外科用機器。
(項6)
前記センサは、差動平行板加速度計、平衡相互嵌合櫛歯状加速度計、オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計、および薄膜型加速度計のうちの少なくとも1つである、上記項1に記載の電気外科用機器。
(項7)
前記センサは、
前記長手軸に沿った軸方向の前記導電性要素の動きを検出するための第1の加速度計と、
前記長手軸を横断する横方向の前記導電性要素の動きを検出するための第2の加速度計とを含む、上記項6に記載の電気外科用機器。
(項8)
前記第1の加速度計は、前記導電性要素の前記軸方向運動に対応する出力信号を前記電気外科用エネルギー源に伝達するように構成および適合されており、前記第2の加速度計は、該導電性要素の前記横運動に対応する出力信号を該電気外科用エネルギー源に伝達するように構成および適合されている、上記項7に記載の電気外科用機器。
(項9)
前記第1および第2の加速度計の各々は、差動平行板加速度計、平衡相互嵌合櫛歯状加速度計、オフセット相互嵌合櫛歯状加速度計、および薄膜型加速度計のうちの少なくとも1つである、上記項7に記載の電気外科用機器。
(項10)
前記第1および第2の加速度計の各々は、少なくとも1つの圧電フィルム動き検出器を含む、上記項7に記載の電気外科用機器。
(項11)
前記電気外科用エネルギー源は、
所定時間における前記電気外科用ペンシルの動き、および
動きの所定閾値レベルを上回る前記電気外科用ペンシルの動き、
のうちの少なくとも1つを前記センサが検出しないときに電気外科用エネルギーの供給を実質的に減少させる、上記項1に記載の電気外科用機器。
(項12)
前記電気外科用エネルギー源は、
前記所定時間後の前記電気外科用ペンシルの動き、および
前記動きの所定閾値レベルを上回る前記電気外科用ペンシルの動き、
のうちの少なくとも1つを前記センサが検出したときに電気外科用エネルギーの供給を実質的に増加させる、上記項11に記載の電気外科用機器。
(項13)
前記電気外科用エネルギー源は、
所定時間における前記電気外科用ペンシルの動き、および
動きの所定閾値レベルを上回る前記電気外科用ペンシルの動き、
のうちの少なくとも1つを前記センサが検出しないときに電気外科用エネルギーの供給を実質的に減少させる、上記項3に記載の電気外科用機器。
(項14)
前記電気外科用エネルギー源は、
前記所定時間後の前記電気外科用ペンシルの動き、および
前記動きの所定閾値レベルを上回る前記電気外科用ペンシルの動き、
のうちの少なくとも1つを前記センサが検出したときに電気外科用エネルギーの供給を実質的に増加させる、上記項13に記載の電気外科用機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−104813(P2010−104813A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5344(P2010−5344)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【分割の表示】特願2006−503650(P2006−503650)の分割
【原出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【出願人】(300044528)コヴィディエン アクチェンゲゼルシャフト (87)
【Fターム(参考)】