説明

電気外科用高周波エネルギー伝達媒体

【課題】伝達ケーブルの誘導性成分および容量性成分を制御し、RF放射に起因する容量漏失を顕著に減少させるように、三次元の物理的スペースにある近位幾何学的関係を有する二重らせんで巻かれる電気外科用伝達ケーブルを提供する。
【解決手段】電気外科用ケーブル20は、供給伝達ライン18と戻り伝達ライン19との間をカップリングする極近接した電場を有する。このカップリングは、手術の間に送達されるRFエネルギーの印加を最大にし、そして供給配線および戻り配線によって放射される漂遊RFエネルギーを最小にする。極近接した電場のカップリングは、フィールドキャンセルによって電場を顕著に低減し、それによって患者および外科医の安全を増大する。カップリングは、上記供給配線および戻り配線の三次元の幾何学的配向をにより低損失誘導/容量(「LC」)伝達媒体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本開示は、電気外科的手順を実施するための電気外科用システムおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、低減されたエネルギー損失で、電気外科用生成器から処置部位まで電気外科用高周波エネルギーを効率的に伝達するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
電気外科手術は、組織を切断、切除(アブレーション)、または凝固するために手術部位への高周波電流の印加を含む。単極電気外科手術では、供給電極または能動電極が、電気外科用生成器から組織に高周波エネルギーを供給し、戻り電極が、この電流を生成器に戻す。単極電気外科手術では、この供給電極は、代表的には、外科医によって保持され、かつ処置されるべき組織に適用される外科用器具の一部である。患者戻り電極は、上記能動電極から遠方に置かれて、電流を生成器に戻す。
【0003】
双極電気外科手術では、ハンドヘルド器具の電極の1つが能動電極として、他方が戻り電極として機能する。戻り電極は、これら2つの電極(例えば、電気外科用鉗子)の間に電気回路が形成されるように能動電極に緊密に近接して置かれる。このようにして、印加された電流は、これら電極の間に位置決めされた身体組織に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処置部位への、すなわち、電気外科用生成器から上記器具への電気外科用エネルギーの伝達は、電気外科用ケーブルを経由して達成される。伝達の間に電場がこのケーブルにより生成され、漂遊電気外科用RFエネルギーが、代表的には、このケーブルの経路に沿って放射され、これは、処置エネルギーを低減する傾向がある。さらに上記電場は、患者モニタリング機器のような、手術場所のその他の電子機器の作動を妨害し得る。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、電気外科用生成器から器具への電気外科用エネルギーの伝達の際に、漂遊電気外科用RFエネルギーが放射されるのを抑制でき、これにより、患者モニタリング機器のような手術場所のその他の電子機器の作動が妨害されるのを防止できる、電気外科用エネルギーをその生成器から電気外科用器具に伝達するシステムおよび方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本開示は、電気外科用高周波(RF)エネルギーの伝達に関する。電気外科用ケーブルが開示され、供給伝達ラインと戻り伝達ラインとの間をカップリングする緊密に近接した電場を有する。このカップリングは、手術の間に送達されるRFエネルギーの印加を最大にし、そして供給配線および戻り配線によって放射される漂遊RFエネルギーを最小にする。緊密に近接した電場のカップリングは、フィールドキャンセルによって電場を顕著に低減し、それによって患者および外科医の安全を増大する。カップリングは、上記供給配線および戻り配線の三次元の幾何学的配向をにより低損失誘導/容量(「LC」)伝達媒体を提供する。この幾何学的配向は、LC反応成分に影響し、漂遊RF放射によって引き起こされる非制御容量リアクタンスを低減する。特に、容量リアクタンスが、半波長より短い伝達媒体に対するアンテナ効果(例えば、漂遊RFエネルギーの急速放電)によって引き起こされる。それ故、漂遊RFエネルギーの損失が所定のレベルまで含まれ、該所定レベルはまた、上記エネルギー供給源に対する容量負荷(例えば、電気外科用エネルギー)を減少する。
【0007】
本開示の1つの局面によれば、生成器から電気外科用器具に電気外科用エネルギーを伝達するシステムが開示される。この電気外科用システムは、組織を処理するための電気外科用エネルギーを生成するように構成された生成器を含む。該生成器は、組織にエネルギーを供給する1つ以上の能動出力端子を含む。この能動出力端子は、1つ以上の供給ラインに作動可能に接続されている。この生成器は、上記組織からエネルギーを戻す1つ以上の戻り出力端子をも含む。該戻り出力端子は、少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている。上記システムはまた、上記1つ以上の供給ラインに作動可能に接続された電気外科用器具と、1つ以上の戻りラインに作動可能に接続された1つ以上の戻り電極とを含む。上記システムはさらに、1つ以上の供給ラインと1つ以上の戻りラインとを含む電気外科用ケーブルを含む。これら1つ以上の供給ラインと1つ以上の戻りラインとは、上記ケーブルに沿った電場がその長さに沿って減ずるように二重らせん様式で巻かれている。
【0008】
本開示の別の局面によれば、電気外科用ケーブルが開示されている。このケーブルは、電気外科用エネルギーの供給源から電気外科用器具まで電気外科用エネルギーを伝達するよう構成されている。この電気外科用エネルギーの供給源は、1つ以上の能動出力端子と1つ以上の戻り出力端子とを含む。この電気外科用ケーブルは、上記能動出力端子に作動可能に接続された1つ以上の供給ラインと、上記戻り出力端子に作動可能に接続された1つ以上の戻りラインとを含む。上記1つ以上の供給ラインと1つ以上の戻りラインとは、同じ軸を有し、この軸に沿った並進が異なる2つの合同のらせんを、上記ケーブルに沿った電場がその長さに沿って減じられるように幾何学的に備える。
【0009】
本開示のさらなる局面によれば、高周波を電気外科用器具に伝達する方法が開示されている。この方法は、組織を処理するための電気外科用エネルギーを生成するように構成された生成器を提供する工程を含む。この生成器は、組織にエネルギーを供給する1つ以上の能動出力端子を含む。この能動出力端子は、1つ以上の供給ラインに作動可能に接続されている。電気外科用器具は、少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続されている。上記生成器は、組織からエネルギーを戻す1つ以上の戻り出力端子をも含む。この戻り出力端子は、少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている。1つ以上の戻り電極は、1つ以上の戻りラインに作動可能に接続されている。上記方法は、1つ以上の供給ラインと1つ以上の戻りラインとを電気外科用ケーブル内に入れる工程をも包含する。上記供給ラインと戻りラインとは、上記ケーブルに沿った電場がその長さに沿って減じられるように二重らせん様式で巻かれている。
【0010】
本発明は例えば以下の手段を提供する。
【0011】
(項目1)
電気外科用システムであって、
組織を処理するための電気外科用エネルギーを生成するように構成された生成器であって、組織にエネルギーを供給する少なくとも1つの能動出力端子を含み、該少なくとも1つの能動出力端子は、少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続されており、該生成器は、該組織からエネルギーを戻す少なくとも1つの戻り出力端子をも含み、該少なくとも1つの戻り出力端子は少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている生成器と、
該少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続された電気外科用器具と、
該少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続された少なくとも1つの戻り電極と、
該少なくとも1つの供給ラインと該少なくとも1つの戻りラインとを含む電気外科用ケーブルであって、該少なくとも1つの供給ラインと該少なくとも1つの戻りラインとが、該ケーブルに沿った電場がその長さに沿って減じられるように二重らせん様式で巻かれているケーブルと
を備える、電気外科用システム。
【0012】
(項目2)
前記少なくとも1つの供給ラインと前記少なくとも1つの戻りラインとが、前記電気外科用ケーブルの誘導成分とその容量成分とを制御し、かつRF放射に起因する容量性漏洩を減少させるように、三次元の物理的スペースにおける近位幾何学的関係を有する二重らせんで巻かれる、項目1に記載の電気外科用システム。
【0013】
(項目3)
前記少なくとも1つの供給ラインと前記少なくとも1つの戻りラインとが、幾何学的に同じ軸を有し、該軸に沿う並進が異なる2つの合同らせんを含む二重らせんで巻かれる、項目1〜2のいずれか1項に記載の電気外科用システム。
【0014】
(項目4)
前記少なくとも1つの供給ラインと前記少なくとも1つの戻りラインとが、シースで覆われている、項目1〜3のいずれか1項に記載の電気外科用システム。
【0015】
(項目5)
前記少なくとも1つの供給ラインと前記少なくとも1つの戻りラインとが、誘電絶縁体の周りに巻かれている、項目1〜4のいずれか1項に記載の電気外科用システム。
【0016】
(項目6)
前記電気外科用器具が、
その遠位端に配置された端部エフェクターアセンブリを有する少なくとも1つのシャフト部材を含む電気外科用鉗子であって、該端部エフェクターアセンブリが2つの顎部材を含み、該顎部材が、互いに対して相対的に間隔を置いた第1の位置から、該顎部材がそれらの間の組織を把持するように協動する少なくとも1つの次の位置まで移動可能であり、該顎部材の各々が電気的シールプレートを含み、1つの電気的シールプレートが前記少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続されており、かつ別のシールプレートが前記少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている、項目1〜5のいずれか1項に記載の電気外科用システム。
【0017】
(項目7)
電気外科用エネルギーの供給源から電気外科用器具に電気外科用エネルギーを伝達するよう構成された電気外科用ケーブルであって、該電気外科用エネルギーの供給源が少なくとも1つの能動出力端子と少なくとも1つの戻り出力端子とを有し、
該少なくとも1つの能動出力端子に作動可能に接続された少なくとも1つの供給ラインと、該少なくとも1つの戻り出力端子に作動可能に接続された少なくとも1つの戻りラインとを備え、該少なくとも1つの供給ラインと該少なくとも1つの戻りラインとが三次元の物理的スペースにおける近位幾何学的関係を有する二重らせんで巻かれている、電気外科用ケーブル。
【0018】
(項目8)
前記二重らせんが、同じ軸を有し、該軸に沿った並進が異なる2つの合同らせんを幾何学的に備える、項目7に記載の電気外科用ケーブル。
【0019】
(項目9)
前記電気外科用器具が、前記少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続された単極の電気外科用器具であり、少なくとも1つの戻り電極が前記少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている、項目7または8のいずれか1項に記載の電気外科用ケーブル。
【0020】
(項目10)
前記電気外科用器具が、その遠位端に配置された端部エフェクターアセンブリを有する少なくとも1つのシャフト部材を備える電気外科用鉗子であって、該端部エフェクターアセンブリが2つの顎部材を含み、該顎部材が、互いに対して相対的に間隔を置いた第1の位置から、該顎部材がそれらの間の組織を把持するように協動する少なくとも1つの次の位置に移動可能であり、該顎部材の各々が電気的シールプレートを含み、1つの電気的シールプレートが前記少なくともつの供給ラインに作動可能に接続されており、かつ別のシールプレートが前記少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている、項目7、8または9のいずれか1項に記載の電気外科用ケーブル。
【0021】
(項目11)
前記少なくとも1つの供給ラインと前記少なくとも1つの戻りラインとが、誘電絶縁体の周りに巻かれている、項目7、8、9または10のいずれか1項に記載の電気外科用ケーブル。
【0022】
(項目12)
高周波電気外科用エネルギーを電気外科用器具に伝達する方法であって、
組織を処置するための電気外科用エネルギーを生成するよう構成された生成器を提供する工程であって、該生成器は該組織にエネルギーを提供する少なくとも1つの能動出力端部を含み、該少なくとも1つの能動出力端子は少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続され、該電気外科用器具が該少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続され、該生成器は該組織からエネルギーを戻す少なくとも1つの戻り出力端子をも含み、該少なくとも1つの戻り出力端子は少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続され、少なくとも1つの戻り電極が該少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続される、工程と、
電気外科用ケーブル内に該少なくとも1つの供給ラインと該少なくとも1つの戻りラインとを入れる工程であって、該少なくとも1つの供給ラインと該少なくとも1つの戻りラインとが、該ケーブルに沿った電場がその長さに沿って減少するように二重らせん様式で巻かれる、工程と、を包含する、方法。
【0023】
(項目13)
前記電気外科用器具が、前記少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続され、かつ少なくとも1つの戻り電極が前記少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続されている、項目12に記載の方法。
【0024】
(項目14)
さらに、
その遠位端に配置された端部エフェクターアセンブリを有する少なくとも1つのシャフト部材を備える電気外科用鉗子を提供する工程であって、該端部エフェクターアセンブリが2つの顎部材を含み、該顎部材が、互いに対して間隔を置かれた第1の位置から、該顎部材がそれらの間の組織を把持するよう協動する少なくとも1つの次の位置まで移動可能であり、該顎部材の各々が電気的シールプレートを含み、1つの電気的シールプレートが前記少なくとも1つの供給ラインに作動可能に接続され、かつ別のシールプレートが前記少なくとも1つの戻りラインに作動可能に接続される、工程、を包含する項目12に記載の方法。
【0025】
(項目15)
前記入れる工程の前記すくなとも1つの供給ラインと前記少なくとも1つの戻りラインとが、誘電性絶縁体の周りに巻かれる、項目12に記載の方法。
【0026】
(摘要)
電源から電気外科用器具まで電気外科用エネルギーを伝達するシステムおよび方法が提供される。この電気外科用システムは、組織を処置するための電気外科用エネルギーを生成するよう適合された生成器を含む。この生成器は、組織にエネルギーを供給する1つ以上の能動電極を含む。この能動出力端子は、1つ以上の供給ラインに作動可能に連結される。この生成器はまた、組織からエネルギーを戻す1つ以上の戻り出力端子を含む。これらの戻り出力端子は、少なくとも1つの戻りラインに作動可能に連結される。上記システムは、上記1つ以上の供給ラインに作動可能に連結された電気外科用器具、と1つ以上の戻りラインに作動可能に連結された1つ以上の戻り電極とをも含む。上記システムはまた、1つ以上の供給ラインおよび1つ以上も戻りラインを含む電気外科用ケーブルをさらに含む。上記1つ以上の供給ラインと1つ以上も戻りラインとは、上記ケーブルに沿った電場がその長さに沿って減じられるように二重らせん様式で巻かれる。
【発明の効果】
【0027】
以上により本発明によれば、電気外科用エネルギーをその生成器から電気外科用器具に伝達するシステムおよび方法において、電気外科用生成器から器具への電気外科用エネルギーの伝達の際に、漂遊電気外科用RFエネルギーが放射されるのを抑制でき、これにより、患者モニタリング機器のような手術場所のその他の電子機器の作動が妨害されるのを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、従来技術の電気外科用システムの概略ブロック図である。
【図2】図2は、本開示による電気外科用システムの1つの実施形態の概略ブロック図である。
【図3】図3は、本開示の1つの実施形態による電気外科用システムの別の実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、本開示による内視鏡鉗子の側面部分内側図である。
【図5】図5は、本開示による生成器の概略ブロック図である。
【図6】図6は、本開示による電気外科用ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の特定の実施形態は、添付の図面を参照して本明細書で以下に説明される。以下の説明では、周知の機能または構成は、不必要な詳細で本開示をあいまいにすることを避けるために詳細には説明されない。当業者は、本開示による本発明が、単極電気外科用システムまたは双極電気外科用システムいずれか、また内視鏡器具または開放器具のいずれかとともに使用するために適合され得ることを理解する。異なる電気的接続および機械的接続ならびにその他の考慮が、各々の特定のタイプの器具にも適用されることが認識されるべきである。
【0030】
本開示は、三次元の物理的スペースにおける近位幾何学的関係を有する二重らせんで巻かれることにより、伝達ケーブルの誘導性成分および容量性成分を制御し、かつRF放射に起因する容量漏洩を顕著に減少させる、電気外科用伝達ケーブルを提供する。二重らせんで巻かれている本開示による伝達ケーブルは、1/2波長より短い伝達媒体に対する伝達アンテナ効果を低減することによって漂遊RF放射を最小にする。
【0031】
図1は、先行技術の電気外科用システムの概略図である。このシステムは、供給伝達ライン118を経由して単極電気外科用器具110に電気外科用高周波(「RF」)エネルギーを供給する電気外科用生成器102を含む。このRFエネルギーは、戻り伝達ライン119を経由して戻りパッドとして示される戻り電極111を通じて生成器102に戻される。従来は、この供給ライン118および戻りライン119は、ランダムな様式で配向され、ライン130として示される、それらを通ってRFエネルギーが流れるとき生じる、放射された漂遊RFエネルギーを最小にするように互いに対して配向されていない。供給ライン118および戻りライン119のランダムな配置は、漂遊RF放射に起因する非制御容量カップリングを生じる。放射RFエネルギー源は、手術手順の間に供給ライン118および戻りライン119のランダム配向によって引き起こされる伝達アンテナ効果を引き起こし、所望のRF処置エネルギーに対して他のRF漏洩経路を形成する。
【0032】
図2は、本開示による電気外科用システムの概略図である。このシステムは、患者Pの組織を処置するための1つ以上の電極を有する電気外科用器具10を含む単極電気外科用システムである。電気外科用RFエネルギーは、能動出力端子に作動可能に接続された供給ライン18を経由して生成器2によって器具10に供給され、器具10が組織を凝固し、シールし、および/または他の処置をすることを可能にする。エネルギーは、戻り電極11、および戻り出力端子に作動可能に接続された戻りライン19を通じて生成器2に戻される。これら供給ライン18および戻りライン19は、ケーブル20内に入れられている。
【0033】
システムは、複数の戻り電極11を含み得、患者Pとの全体の接触面積を最大にすることにより、損傷された組織の危険を最小にすると考えられている。さらに、生成器2および戻り電極11は、いわゆる「組織対患者」接触をモニターすることにより、それらの間で十分な接触が存在することを確実にして、組織損傷の危険をさらに最小にし得る。生成器2は、複数の供給端子および戻り端子、ならびに対応する数(例えば、各々の2つ)の伝達ケーブルを含み得る。
【0034】
図3は、本開示による電気外科用システム3を示す。このシステム3は、対向する顎部材を有する電気外科用鉗子12を含む双極電気外科用システムである。この鉗子12は、遠位端に配置された端部エフェクターアセンブリ100を有する1つ以上のシャフト部材13を含む。この端部エフェクターアセンブリ100は、2つの顎部材110、120を含み、これらは、これら顎部材が互いに対して間隔を置かれる第1の位置から、これら顎部材110および120がそれらの間の組織を把持するために協動する閉鎖位置まで移動可能である。これら顎部材の各々は、それらの間に保持された組織を通って電気外科用エネルギーを伝達する、エネルギー供給源(例えば、供給器2)に接続された電気的伝導性シールプレートを含む。電気外科用RFエネルギーは、能動電極に作動可能に接続された供給ライン18を経由して生成器2によって鉗子12に供給され、戻り電極に作動可能に接続された戻りライン19を通って戻る。これら供給ライン18および戻りライン19は、ケーブル20内に入れられている。
【0035】
図3に示されるように、鉗子12は、内視鏡ベッセルシール双極鉗子である。この鉗子12は、エフェクターアセンブリ100を支持するように構成されている。当業者は、本開示による本発明が、内視鏡器具または開放器具のいずれかとともに使用するために適合され得ることを理解する。より詳細には、鉗子12は、一般に、ハウジング12、ハンドルアセンブリ42、回転アセンブリ80、およびトリガーアセンブリ70を含み、これらは、端部エフェクターアセンブリ100と互いに協動して、組織を把持し処置する。この鉗子12はまた、シャフト13を含み、これは、端部エフェクターアセンブリ100と機械的に係合する遠位端14と、回転アセンブリ80の近位側のハウジング21と機械的に係合する近位端16とを有する。ハンドルアセンブリ42は、固定ハンドル50および移動可能ハンドル40を含む。ハンドル40は、固定ハンドル50と相対的に移動して、端部エフェクターアセンブリ100を作動させ、図3に示されるように使用者が組織を把持し操作することを可能にする。
【0036】
図3および図4を参照して、端部エフェクターアセンブリ100は、対向する顎部材110および120を含み、これらの顎部材は、それに取り付けられた、組織を介して電気外科用エネルギーを伝達する電気的伝導性シールプレート112および122をそれぞれ有する。より詳細には、これら顎部材110および120は、ハンドル40の動きに応答して、開放位置から閉鎖位置まで移動する。開放位置では、これらシールするプレート112および122は、互いに対して間隔を置かれた関係で配置される。クランプ位置または閉鎖位置では、これらシールプレート112および122は、協動して組織を把持し、それに電気外科用エネルギーを印加する。1つの想定される内視鏡鉗子に関するさらなる詳細は、共同所有された「血管シーラーおよび分割器」と題する米国出願第10/474,169号に記載されている。
【0037】
これら顎部材110および120は、ハウジング21内に入れられた駆動アセンブリ(図示せず)を用いて起動される。この駆動アセンブリは、移動可能ハンドル40と協動して、開放位置からクランプ位置または閉鎖位置までのこれら顎部材110および120の移動を与える。ハンドルアセンブリの例は、上記で特定された出願、ならびに「血管シーラーおよび分割器ならびにそれらを製造する方法」と題する共同所有された米国出願第10/369,894号、および「小トロカールおよびカニューレとの使用のための血管シーラーおよび分割器」と題する共同所有された米国出願第10/460,926号に示され、記載されている。
【0038】
顎部材110および120はまた絶縁体116および126を含み、これらは、顎部材110および120の外側の非伝導性プレートとともに、組織をシールすることに関連する公知の所望されない効果の多く、例えば、フラッシュオーバー、熱拡散および漂遊電流散逸を制限し、および/または低減するように構成されている。
【0039】
さらに、この特定の開示のハンドルアセンブリ42は、これら顎部材110と120との間で組織をシールするとき、特有の機械的利点を提供する4つのバーの機械的リンケージを含む。例えば、一旦、シールする部位のための所望の位置が決定され、これら顎部材110および120が適正に位置決めされると、ハンドル40が完全に圧縮されて、電気的伝導性シールプレート112および122を組織に対して閉鎖位置にロックする。鉗子12の内部作動構成要素の相互協動関係に関する詳細は、上記で引用された共同所有の米国特許出願第10/369,894号に記載されている。軸を外れた、レバーのようなハンドルアセンブリを開示する内視鏡ハンドルアセンブリの別の例は、上記で引用された米国特許出願第10/460,926号に記載されている。
【0040】
鉗子12は、シャフト12と機械的に連結される回転アセンブリ80およびその駆動アセンブリ(図示せず)をも含む。回転アセンブリ80の移動は、シャフト12に同様の回転移動を与え、これは、次に、端部エフェクターアセンブリ100を回転する。ハンドルアセンブリ20および回転アセンブリ80を介しての電気外科用エネルギーの移動のための種々の電気的形態をともなう種々の特徴は、上述の共同所有された米国特許出願第10/369,894号および米国特許出願第10/460,926号により詳細に記載されている。
【0041】
図3および4に関して最も良く観察されるように、端部エフェクターアセンブリ100は、シャフト12の遠位端14に付いている。顎部材110および120は、ピボット160の周りで、駆動アセンブリ(図示されず)の相対的往復、すなわち、長軸方向移動の際に、開放位置から閉鎖位置まで旋回可能である。再び、端部エフェクターアセンブリ100の種々の運動要素に関する機械的関係および協動関係は、上記で述べられた共同所有の米国特許出願第10/369,894号および米国特許出願第10/460,926号に関する例によってさらに記載される。
【0042】
この鉗子12は、それが、特定の目的に依存するか、または特定の結果を達成するために、完全または部分的に使い捨て可能であるように設計され得る。例えば、端部エフェクターアセンブリ100は、シャフト12の遠位端14と選択的かつ離脱可能に係合可能であり得るか、および/またはこのシャフト12の近位端16は、ハウジング21およびハンドルアセンブリ42と選択的かつ離脱可能に係合可能であり得る。これら2つの事例のいずれにおいても、この鉗子12は、必要に応じて、新規または異なる端部エフェクターアセンブリ100、または、端部エフェクターアセンブリ100およびシャフト12が古い端部エフェクターアセンブリ100を選択的に置き換えるために用いられる場合のように、部分的に使い捨て可能であるか、または再配置可能のいずれかであり得る。
【0043】
図2、3および5を参照して、生成器2は、この生成器2を制御するための適切な入力コンントロール(例えば、ボタン、アクチベーター、スイッチ、タッチスクリーンなど)を含む。さらにこの生成器2は、外科医に種々の出力情報(例えば、強度設定、処置完了指示など)を提供するための1つ以上の適切なディスプレイスクリーンを含み得る。このコントロールは、外科医がRFエネルギーの出力、波形、およびその他の適切なパラメーターを調節することを可能にして、特定の課題(例えば、凝固、組織シール、強度設定など)に適切な所望の波形を達成することを可能にする。器具10および/または鉗子12は、生成器2の特定の入力制御に余分であり得る複数の入力コントロールを含み得る。これら入力コントロールをこの器具10および/または鉗子12に配置することは、この生成器2との相互作用を要求することなく手術手順の間により容易でかつより迅速なRFエネルギーパラメーターの改変を可能にする。
【0044】
図5は、コントローラー4、高電圧DC電源7(「HVPS」)、およびRF出力ステージ8を有する生成器2の概略ブロック図を示す。このDC電源7は、RF出力ステージ8にDC電力を提供し、RF出力ステージ8は、次いで、DC電力をRFエネルギーに変換し、このRFエネルギーを器具10または鉗子20に供給する。コントローラー4は、揮発性タイプメモリー(例えば、RAM)および/または不揮発性タイプメモリー(例えば、フラッシュ媒体、ディスク媒体など)であり得るメモリー6に作動可能に接続されたマイクロプロセッサー5を含む。このマイクロプロセッサー5は、HVPS7および/またはRF出力ステージ8に作動可能に接続された出力ポートを含み、このマイクロプロセッサー5が、開放制御ループスキームおよび/または閉鎖制御ループスキームのいずれかに従って生成器2の出力を制御することを可能にする。閉鎖ループ制御スキームはフィードバック制御ループであり得、ここでは、複数の感知機構(例えば、組織インピーダンス、組織温度、出力電流および/または電圧など)を含み得るセンサー回路網11が、コントローラー4にフィードバックを提供する。このコントローラー4は、次いで、HVPS7および/またはRF出力ステージ8に信号伝達し、これらは、次いで、DCおよび/またはRF電源をそれぞれ調節する。このコントローラー4は、生成器2および/または器具10の入力コントロールから入力信号も受ける。このコントローラー4は、この入力信号を利用して生成器2によって出力される電力を調節し、および/またはそれに対する適切な制御機能を行う。
【0045】
図6は、ケーブル20の断面図を示す。このケーブル20は、供給ライン18および戻りライン19を含む。これら供給ライン18および戻りライン19は、コネクター31、32をそれぞれ経由して生成器2に作動可能に接続されている。コネクター31、32は、固定タイプであるか、または生成器2との複数器具および戻り電極パッドの使用を可能にする離脱タイプのいずれかであり得る。生成器2およびコネクター31、32はまたは、これらコネクター31、32に作動可能に接続されたデバイスを識別する識別手段(例えば、これらコネクター上に配置されたバーコードまたはその他のコード、および生成器に作動可能に接続されたスキャナーなど)を含み得る。コネクター31、32の接続に際し、生成器2は器具を識別し、そして特定のプログラムされた作動(例えば、手順を初期化する、作動パラメーターを設定する、電力設定を調節するなど)を実施する。
【0046】
これら供給ライン18および戻りライン19は絶縁され得る。種々のタイプの絶縁材料が用いられ得、これらは、当業者の範囲内である。これら供給ライン18および戻りライン19は、上記コネクター31、32からそれぞれ距離Aだけ延び、これは、コネクター31、32の位置によって最適に制御され、かつ約0.1インチ〜約6インチの間である。上記ライン18、19は、次いで、巻回部分35に巻かれたらせんであり、これは、所望のケーブルのインダクタンスおよびキャパシタンスに依存して約7フィートまたはそれを超える。あるいは、この巻回部分35は、これら供給ライン18および戻りライン19が距離Aだけ延びることなくコネクター31、32から延び得る。
【0047】
ケーブル長さBに沿った巻回部分35は、ケーブル構成要素を製造する際に用いられる材料の幾何学的形態および物理的性質(例えば、引っ張り強度、可撓性など)に依存して任意の長さであり得る。より詳細には、上記ライン18、19は、同じ軸を備え、この軸に沿った並進が異なる2つの合同のらせんを含む二重らせんで配向される。これらのライン18、19は、それら自体の周りでライン18、19を覆う複数のその他の配置で配向され得る。二重らせん状のこれらのライン18、19の配列は、それらを通過する電気外科用RFエネルギーによって生成される逆向きの電場を配向することにより、失われる漂遊RFエネルギーの量を減少させ、および/または相殺し、それによって最小にする。
【0048】
これらライン18、19は、ケーブル20内で誘電性絶縁体37の周りに巻かれ、誘電性絶縁体37は、ライン18、19のための支持を提供し、絶縁性シース39がこれらライン18、19を覆う。この絶縁体37およびシース39は、同じタイプからなり得る。これらライン18、19は、473kHZで7.37μHおよびAのインダクタンス定格、1MHzで32.0PFのキャパシタンスを有するワイヤを備え得、これにより10.4MHzのケーブル自己共振(self resonance)を生じる。このワイヤは、26ゲージおよび15kV定格であり得る。
【0049】
図6および部分35を参照して、らせんの1つの頂点と別のらせんの最も近い頂点との間の距離を表す距離Dは、約1/2であり得る。同じらせんの2つの頂点間の距離である距離Eは、約1インチである。ケーブル20の外側距離Fは、1インチの約3/8であり得る。
【0050】
図6に示されるケーブル20は、生成器20から組織部位にRFエネルギーを送達するための伝達媒体を提供する。このケーブル20は、放射されたRF電場を低減し、そして組織部位に供給される印加された臨床的処置エネルギーを最大にするRF伝達媒体の好ましい実施形態の1つの例を代表する。図6の寸法A、B、C、D、EおよびFは、三次元スペースにおける特有の幾何学的関係を形成し、生成器20の能動出力端部と戻り出力端部との間の電場カップリングを制御して、フィールドキャンセレーションによるメートルあたりの電場放射ボルトを顕著に低減する。
【0051】
物理的寸法A、B、C、D、EおよびFは独立し、かつ最適化されて低損失誘導性および容量性伝達媒体を提供し、これは、電場を制御することに加えて、漂遊RF放射によって引き起こされる非制御容量性カップリングを低減する。特に、以下の等式(1)および(2)は、ケーブル20の誘導性性質および容量性性質に関する寸法A、B、C、D、EおよびFの独立の関係を示す。
(1)インダクタンス=B(10.16×10−9)Ln[(2×D)/d]+2(A+C)(μH/1インチの特定されたワイヤ)
(2)キャパシタンス=[(B×(0.7065)×10−12))/Ln[(2×D)/d]]er
等式(1)および(2)において、dは、ワイヤ(例えば、供給ライン18および戻りライン19)の直径を示し、erは、ワイヤ絶縁体の誘電定数を示す。さらに、E=2×D、Dに対するEの比は、らせん形態の連続体を確立することを可能にし、F=k×Dであり、ここで、kは、約0.5〜約1.5の定数である。
【0052】
上記部分35の遠位端で、ライン18、19は巻かれず、かつデバイスコネクター33、34にそれぞれ作動可能に接続されている。これらライン18、19は、部分35からコネクター33、34まで距離Cだけ、巻かれない状態で約2.5フィートにわたって延びる。これらラインの初期長さAおよび巻かれない状態の長さCは、異なる全長部分に対して変動する巻回部分35の長さを有するワイヤの変動する長さに比較的一致するように維持される。
【0053】
双極手術では、上記コネクター33、34は、鉗子20上に置かれ得る。単極手術では、コネクター33は器具10に作動可能に接続され、コネクター34は戻り電極11に接続される。上記で論議されたように、複数の戻り電極が用いられる状況では、戻りライン19は、対応する数の配線に分割されて、すべての戻り電極11を生成器2に作動可能に接続し得る。単極手術で、ライン18の長さCは、ライン19における対応する減少とともに2.5フィートを超えて長くなり得、手術部位における外科用器具の操作を提供する。
【0054】
本開示によるケーブル20は、上記供給ラインおよび戻りライン18,19を、それらを通って生成される電場が相殺され、それによって漏れた漂遊RFエネルギーの量を減少させるように配向させる。より詳細には、上記で論議された方法におけるライン18、19の配置および配向は、電気外科用RFエネルギーの伝達の間に生成される電場の緊密な近接を提供し、処置部位に供給されるエネルギーの量を最大にする。電場を低減することは、従事者および患者の安全も増加する。
【0055】
低減されたRF放射は、容量性およびRF場漏れを低減し、かつ供給されたエネルギーのRF制御を改善する。低減されたRF放射は、RF伝達損失も低減し、さらにRF高調波を低減し、RF供給源の悪影響を最小にし、そして周縁誘導放射および放射性放出を低減することにより生成器2の効率も改善する。さらに、RF放射を低減することは、患者モニタリング機器のような部屋内に見出されるさらなる機器に対するRFノイズをも低減する。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態が、図面に示され、および/または本明細書中で論議されているが、この開示はそれに制限されることは意図されない。なぜなら、本開示は、当該技術が可能にするのと同じ範囲であり、しかも本明細書が同様に読まれることが意図されるからである。従って、上記の記載は、制限として解釈されるべきでなく、特定の実施形態の例示して単に解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲および精神内でその他の改変を想定し得る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電気外科用エネルギーをその生成器から電気外科用器具に伝達するシステムおよび方法の分野において、電気外科用生成器から器具への電気外科用エネルギーの伝達の際に、漂遊電気外科用RFエルルギーが放射されるのを抑制でき、これにより、患者モニタリング機器のような手術場所のその他の電子機器の作動が妨害されるのを防止できるシステムおよび方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
2 生成器
3 電気外科用システム
10 電気外科用器具
11 戻り電極
12 電気外科用鉗子
13 シャフト部材
14 遠位端
18 供給ライン
19 戻りライン
20 ケーブル
21 ハウジング
40 移動可能ハンドル
42 ハンドルアセンブリ
70 トリガーアセンブリ
50 固定ハンドル
80 回転アセンブリ
100 端部エフェクターアセンブリ
110、120 顎部材
P 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34871(P2013−34871A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200407(P2012−200407)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2007−244507(P2007−244507)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507364377)コヴィディエン・アクチェンゲゼルシャフト (62)
【Fターム(参考)】