説明

電気式床暖房システム

【課題】電気式床暖房システムにおいて、長時間通電を継続したときに起こりがちな床表面温度の異常上昇を抑制する。
【解決手段】定常運転モードでの運転が4時間、8時間と長時間にわたり継続するときに、所定時間経過した時点で、通電率を自動的に5%程度低減するように、コントローラの制御回路を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコード状電気ヒータを発熱源に持つ電気式床暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発熱源としてコード状電気ヒータを有する電気式床暖房システムは知られている。コード状電気ヒータを床下地の上に配設した後にその上から木質系床材を置くか、あるいはコード状電気ヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くことにより、電気式床暖房システムとされる。コード状電気ヒータには主に商用電源からの電力がコントローラを介して供給される。コントローラは、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、異常検知などの機能が備えられる(特許文献1、特許文献2など参照)。また、ヒータへの電力供給の制御を、比較制御手段により温度センサによって検出される周囲温度に応じた通電率制御で行うようにした床暖房等の制御装置も提案されている(特許文献3など参照)。
【0003】
従来の電気式床暖房システムにおいて、使用者は、使用開始時にコントローラの電源スイッチをONにし、希望する定常運転モードでの設定温度レベルを選択すると、100%通電率での立ち上げ運転モードが例えば30分程度継続した後、選択した設定温度レベルに対応する通電率での定常運転モードに切り替わる。床表面温度は設定温度レベルとなり、それ以降は、その温度が維持される。特許文献3に記載のように、温度センサにより検出される周囲温度に応じて通電率を制御するものでは、外気温度の変化に対応して、床表面温度を調整することもできる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−248122号公報
【特許文献2】特開平10−185222号公報
【特許文献3】特開平5−203168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発熱源としてコード状電気ヒータを用い、床表面温度の制御方式として通電率制御方式を採用した電気式床暖房システムの場合、選択した設定温度レベルに床表面温度が達した後は、その温度が維持される。しかし、設定温度レベルが高く通電率100%近傍での定常運転が継続する場合に、特に外気温度に変化のない状態で、7〜10時間程度の長時間にわたる運転を行うと、設定温度よりも高い温度に床表面温度が上昇することがある。
【0006】
床暖房の一般的な床表面温度は高くても27℃〜30℃前後といわれており、前記したような温度上昇が起こると、床表面温度は40℃前後という、設定温度よりも10℃程度も高い温度となる恐れがある。そのような温度環境は、床暖房の快適性を損なうと共に熱閉塞現象による低温火傷を引き起こす原因ともなりかねない。もちろん、電気式床暖房システムにはサーモスタットが過昇温防止手段として設けてあり、システムの安全性は確保されているが、通常、サーモスタットの作動温度は42〜50℃程度に設定されていることが多く、サーモスタットによってこの現象を回避することはできない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、発熱源としてコード状電気ヒータを用い、床表面温度の制御方式として通電率制御方式を採用した電気式床暖房システムにおいて、外気温度に変化がない環境下で、通電率100%近傍での定常運転が長時間継続する場合であっても、予め選択した設定温度レベルを大きく超えて床表面温度が上昇するのを回避できるようにした電気式床暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による電気式床暖房システムは、発熱源であるコード状電気ヒータと、コード状電気ヒータへの通電率を制御する通電率制御手段を少なくとも備えたコントローラとを少なくとも含む電気式床暖房システムであって、前記通電率制御手段は、コード状電気ヒータへ通電を開始した後の経過時間を監視するタイマー手段と、該タイマー手段で予め設定した時間が経過したときに、予め設定した量だけ通電率を低減する通電率低減手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明による電気式床暖房システムでは、コントローラは上記の通電率低減手段を備えており、通電開始後に所定時間通電が継続すると、通電率は自動的に予め設定した量だけ低減する。そのために、電気式床暖房システムが外気温度の変化がない環境下に置かれ、しかも通電率100%近傍での定常運転が長時間継続するときであっても、床表面温度が当初選択した設定温度レベル以上になるのを効果的に回避することができる。結果として、長時間の継続運転を行っても、床表面温度を一定の温度帯に維持することが可能となる。そのために、床暖房の快適性が損なわれることはなく、熱閉塞現象による低温火傷等を生じさせることもない。また、通電率を低減させることは、結果として不必要な電力使用を回避することとなり、消費電力が低減して省エネルギー効果ももたらされる。
【0010】
さらに、床暖房の上に座布団等が長時間放置されているとき、あるいはコード状電気ヒータとそれが配設されている均熱板との間に部分的な剥離が生じたときなどに、いわゆる強制断熱による熱閉塞現象が発生して、部分的に異常昇温領域が生じることがあるが、上記の通電率低減手段を備えることにより、このような異常昇温現象が発生するのも回避することができる。
【0011】
通電開始時から通電率自動低減開始までの時間をどの程度とするか、および通電率低減手段に設定する通電率低減量をどの程度にするかは、当該床暖房の使用条件や使用環境に応じて決められるが、好ましくは、通電率低減前と比較して通電率低減後の床表面温度の温度帯が低下しない範囲で設定される。例えば、通電開始時から通電率自動低減開始までの設定時間は、投入後4〜10時間の範囲で設定することが通常の床暖房の使用態様から判断して実際的である。4時間よりも短い時間では、電気式床暖房システムが置かれている環境によっては、床表面温度が設定した温度レベルに達していない段階で、通電率が強制的に低減することが起こり得、床表面温度が低下して、使用者に不快感を与えるからである。通電率低減量は通電開始時の通電率の10〜15%程度であることが望ましい。これより大きな値で低減させると、通電率低減前と比較して通電率低減後の床表面温度の温度帯が使用者が意識する程度に低下してしまう恐れがある。
【0012】
通電率低減回数は一回であってもよい。その場合、設定時間(例えば8時間)を経過した後に、通電開始時の通電率から例えば10%あるいは15%低減し、90%あるいは85%の通電率で定常運転が継続する。しかし、このように一度に通電率を10%あるいは15%という大きな値で低減させると、一時的に床表面温度の変化が大きくなり、使用者に不快感を与えることが考えられる。
【0013】
それを回避するために、好ましくは、通電率制御手段におけるタイマー手段は、同じまたは異なる間隔の設定時間を経時的に連続して多段に設定できるようにされる。この場合には、例えば、通電開始後4時間を経過したとき、通電開始時の通電率の5%を低減し、さらに4時間経過した後(通電開始後8時間を経過した後)は、さらに5%低減するように設定する。このように段階を追って通電率を低減することにより、床表面温度の変化を小さくすることができ、使用者が不快感を持つことは解消される。
【0014】
本発明による電気式床暖房システムにおいて、コントローラに、通電開始時の通電率を選択できる手段をさらに備えることもできる。具体的には、例えば、同じ定格出力のコード状電気ヒータに対して、通電開始時の通電率を100%通電率として運転を開始するか、それ以下の例えば75%通電率あるいは50%通電率で運転を開始するかを選択できるようにする。いずれの場合であっても、所定の設定時間経過後に、通電開始時の通電率を基準として、そこから予め設定した量だけ通電率を低減させる。
【0015】
この通電開始時の通電率を選択できる手段は、同じ電気式床暖房システムを環境の異なる地域、例えば北海道と東京のような寒暖の違いのある地域に設置するときにきわめて有効となる。例えば、この選択手段を、通常の使用状態では使用者が容易にアクセスできないコントローラ内の位置にディップスイッチとして取り付けておき、北海道域に電気式床暖房システムを施工するときには、施工業者が100%通電率のディップスイッチを選択して施工を行う。一方、東京域に施工するときには、施工業者が例えば75%通電率のディップスイッチを選択して施工を行う。
【0016】
北海道のように寒冷な地区では、使用者が高い設定温度を選択したときに、通電開始時通電率100%での定常運転モードが進行し、前記した27℃〜30℃前後の快適な床表面温度が得られる。一方、東京のような比較的温暖な地区では、同じ定格出力のコード状電気ヒータを用い、通電開始時通電率を75%に設定しておいても、定常運転モードで床表面温度は27℃〜30℃前後の快適な温度となる。そのために、低い通電開始時通電率を選択して施工された電気式床暖房システムにおいても、長時間運転継続時に、床表面温度が40℃程度にまで達することが起こり得るので、ここでも、本発明による通電率低減手段を採用することは有効となる。
【0017】
コントローラに、定常運転モードでの設定温度(床表面温度)に対応する通電率を選択するための通電率選択手段を設けることもできる。この場合、使用者がコントローラの電源スイッチをONにし、希望する設定温度レベルを選択すると、一定時間経過後に、設定温度レベルに対応した通電率での定常運転モードに入り、床表面温度は設定温度帯に維持される。選択した設定温度レベルが25℃程度以下のような低い温度の場合には、定常運転時での通電率は低く、その状態が長時間継続しても、上記した不快感を与えるような床表面温度の上昇は起こらない。しかし、高い設定温度レベルを選択した場合には、定常運転モードで100%あるいは100%近傍の通電率での運転が継続するので、40℃程度に達するような温度上昇が起こり得る。従って、定常運転モードで希望する設定温度レベルに対応する通電率を選択するための通電率選択手段を備えた形態のコントローラを用いる場合でも、本発明による上記した通電率低減手段を備えることはきわめて有効となる。
【0018】
なお、本発明における電気式床暖房システムの全体的な構成に特に制限はなく、従来知られている任意の構成、例えば、コード状電気ヒータを床下地の上に配設した後にその上から木質系床材を置くようにして施工された形態のもの、あるいはコード状電気ヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くようにして施工された形態のもの、などをすべてが含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発熱源としてコード状電気ヒータを用い、床表面温度の制御方式として通電率制御方式を採用した電気式床暖房システムにおいて、外気温度に変化がない環境下で長時間通電を継続する場合であっても、最初に設定した設定温度帯(レベル)以上に床表面温度が上昇するのを確実に回避することができ、使用者に過昇温による不快感を与えたり、熱閉塞現象による低温火傷を生じさせたりするのを確実に回避することができる。また、消費電力を低減することもでき、省エネルギー運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態により説明する。図1は本発明による電気式床暖房システムを示す概略図であり、図2は全体の制御系を示すブロック図である。
【0021】
図1において、床下地10の上に発熱源としてのコード状電気ヒータ11が配置され、その上にコード状電気ヒータ11を収容する凹溝を裏面に形成した多数枚の木質系床材12が敷設されて、電気式床暖房フロアを作っている。図示しないが、コード状電気ヒータを一体に組み込んだ木質系床材を電気的に接続しながら床下地の上に置くようにして電気式床暖房フロアを作るようにしてもよい。いずれにおいても、コード状電気ヒータ11には配線13を介して外部からの商用電力が供給され、配線途中にはコントローラ20が取り付けてある。
【0022】
図2は電気式床暖房システム全体の制御系を示すブロック図であり、本発明による電気式床暖房システムは、前記コントローラ20と該コントローラ20により制御された通電率で駆動されるコード状電気ヒータ11とからなる。コントローラ20は制御部30を備え、制御部30にはタイマー31とディップスイッチ32が接続し、さらに、操作盤40と記憶部50と駆動回路60が接続している。
【0023】
操作盤40には、システム全体のON−OFFスイッチ41、使用者が定常運転時での設定温度レベルLを選択するための温度レベル選択スイッチ42a〜42c、選択した設定温度レベルLや時刻等を表示するティスプレー43などが備えられる。この例で、図3に示すように、定常運転時での出力レベルは3段階st1〜st3の3つに区分されており、選択スイッチ42aを選択すると最大レベルLH(例えば、通電開始時の通電率Pの100%通電率L)で運転すべき旨の指令が制御部30に送られ、選択スイッチ42bを選択すると中間レベルLM(例えば、通電開始時の通電率Pの70%通電率)で運転すべき旨の指令が制御部30に送られ、選択スイッチ42cを選択すると最小レベルLL(例えば、通電開始時の通電率Pの40%通電率)で運転すべき旨の指令が制御部30に送られる。なお、温度レベル選択スイッチ42a〜42cは、スライダースイッチのように連続的に値が変化する形態のものであってもよい。
【0024】
記憶部50は給電率テーブルTを備えるが、これについては、後述する。
【0025】
駆動回路60は電源線13からヒータ11へ給電するための回路であり、通電率制御を行う手段の一例としてのスイッチング回路61を内蔵する。スイッチング回路61は1個または2個以上のリレーを備え、各リレーの開閉を制御部30からの指令で可変することでヒータ11への通電率Pを制御するものであり、それ自体は公知のものである。
【0026】
制御部30は、図3に示すように、スイッチング回路61に対してリレーの開閉周期Tの信号を送出する。この信号はハイレベル期間t1でスイッチング回路61を導通状態とし、ローレベル期間t2でスイッチング回路61を非導通状態とする。t1/t2の比を適宜の回路で制御することにより、設定した通電率Pが得られる。
【0027】
このコントローラ20において、使用者は、使用開始時にON−OFFスイッチ41をONにし、温度レベル選択スイッチ42a〜42cにより希望する設定温度レベルLi(LH,LM,LLのいずれか)を選択すると、100%通電率での立ち上げ運転モードが開始し、タイマー31に設定した例えば30分程度の時間が経過すると、定常運転モードに切り替わって、制御部30は、使用者が選択した定常運転時での設定温度レベルLiに対応したハイレベル期間t1の信号をスイッチング回路51に送り込む。なお、この運転態様およびそのためのシステム構成等は従来知られたものであり、詳細な説明は省略する。
【0028】
本発明によるコントローラ20は、タイマー31で予め設定した時間tが経過したときに、予め設定した量qだけ通電率を自動的に低減する通電率低減手段をさらに備えている点で、従来知られたコントローラと相違する。以下に、その相違点を中心に説明する。
【0029】
すなわち、本発明によるコントローラ20の記憶部50には、通電開始時のコード状電気ヒータ11への通電率Pmaxと所定時間ti経過後(例えば4時間と8時間経過後)の通電率Piを定めた給電率テーブルTが所要枚数格納されている。この例において、給電率テーブルTは、3枚のテーブルT1,T2,T3からなり、図5に示すように、給電率テーブルT1は、電源ON時の通電率Pmax:100%,電源ONから時間t1経過後(4時間経過後)の通電率P1:95%(−5%低減),電源ONから時間t2(>t1)(8時間経過後)経過後の通電率P2:90%(さらに−5%低減)となっている。
【0030】
また、給電率テーブルT2は、電源ON時の通電率Pmax:75%,電源ONから時間t1経過後(4時間経過後)の通電率P1:70%(−5%低減),電源ONから時間t2(>t1)(8時間経過後)経過後の通電率P2:65%(さらに−5%低減)となっている。
【0031】
また、給電率テーブルT3は、電源ON時の通電率Pmax:60%,電源ONから時間t1経過後(4時間経過後)の通電率P1:55%(−5%低減),電源ONから時間t2(>t1)(8時間経過後)経過後の通電率P2:50%(さらに−5%低減)となっている。
【0032】
ここにおいて、前記タイマー31で予め設定した時間tが、上記経過時間t1,t2に相当し、前記予め設定した量qは、すべて通電率の各段階での低減量(−5%)に相当する。
【0033】
コントローラ20において、この3枚のテーブルT1,T2,T3のいずれかが、ディップスイッチ32の操作により選択され、選択された給電率テーブルTiの情報が制御部30に取り込まれる。格納する給電率テーブルTが3枚に限らないことは、前記したとおりである。
【0034】
本発明による電気式床暖房システムの施工に際して、施工業者は、ディップスイッチ32を操作して、当該施工現場に最適な給電率テーブルTiをテーブルT1〜T3のいずれかから選択する。例として、施工現場が寒冷地であることから、テーブルT1を選択したとして、電気式床暖房システムの運転操作の一例を図6を参照して説明する。
【0035】
使用者は、操作盤40のON−OFFスイッチ41をONする(ステップ301)。制御部30はあらかじめ選択してあるディップスイッチ32を読み込み、テーブルT1の情報を取り込む(ステップ302)。使用者は、定常運転時の設定温度レベルLiを温度レベル選択スイッチ42a〜42cのいずれかから選択する(ステップ303)。ここでは、選択スイッチ42aを選択して通電開始時の通電率Pの100%通電率LHを定常運転時通電率として選択したとする。
【0036】
タイマー31が作動すると共に、通電率100%の立ち上げ運転が開始する(ステップ304)。予め設定した時間(通常30分程度)経過後に、定常運転モードに切り替わり(ステップ305)、制御部30は駆動回路60のスイッチング回路61に定常運転時の通電率(この例では、立ち上げ時の通電率Pの100%)に相当する長さの信号を送出し、駆動回路60は100%通電率LHでヒータ11を駆動を継続する(ステップ306)。
【0037】
タイマー31は通電開始時からの時間t1が経過したかどうかを監視する(ステップ307)。時間t1(例えば4時間)が経過した時点で、制御部30内の比較回路はテーブルT1に設定した時間t1経過後の通電率P1(95%)と、現在の通電率Ps%とを比較する(ステップ308)。現在の通電率Psが通電率P1と等しいかそれより低いときにはそのまま運転を継続する(ステップ309)。現在の通電率Psが通電率P1より高い場合には、制御部30は、通電率P1(95%)に対応した通電率となるように、駆動回路60のスイッチング回路61にハイレベル期間t1の変更信号を発信する(ステップ310)。それにより、システムは通電率95%での運転を継続する。
【0038】
時間t2(例えば通電開始時から8時間)が経過したかどうか監視する(ステップ311)。経過した時点で、制御部30内の比較回路はテーブルT1に設定した時間t2経過後の通電率P2(90%)と、現在の通電率Ps%とを比較する(ステップ312)。現在の通電率Psが通電率P2と等しいかそれより低いときにはそのまま運転を継続する(ステップ313)。現在の通電率Psが通電率P2より高い場合には、制御部30は、通電率P2(90%)に対応した通電率となるように、駆動回路60のスイッチング回路61にハイレベル期間t1の変更信号を発信する(ステップ314)。それにより、システムは通電率90%での定常運転を継続する。
【0039】
上記のように、本発明による電気式床暖房システムでは、定常運転状態が長時間継続しているときに、自動的に通電率を所定量だけ低減するようにしているので、特に立ち上げ時の通電率をそのまま維持した状態で定常運転が継続するような場合に起こりがちな、床表面温度が設定温度レベルよりも例えば10℃程度高くなる現象が起こるのを効果的に回避することができる。そのために、システムの安全性を向上させることができ、また運転の省エネルギー化ももたらされる。
【0040】
上記の説明では、使用者が定常運転時での設定温度レベルを最大値LH(通電率100%)とした場合を例として説明したが、例えば、前記した設定温度レベルLMあるいはLLを選択した場合には、定常運転時での通電率は、通電開始時の通電率はそれぞれ70%または40%であり、その場合、ステップ308,ステップ311での判断は常にno、すなわち、その時点での通電率Psは、通電率P1(95%)あるいは通電率P2(90%)より低くなっており、本発明の通電率自動低減機能は機能しない。しかし、使用者がLMまたはLLを選択した場合には、図7に一例を示すように、定常運転時の床温度レベルは25℃程度あるいは18℃程度と低く、長時間その運転状態が継続したとしても、床表面温度が例えば40℃程度にまで高くなるような現象は生じなく、特に問題はない。
【0041】
本発明による電気式床暖房システムを比較的温暖な地域に施工する場合には、施工業者はディップスイッチ32を操作して、図5に示したテーブルT2またはテーブルT3を選択することとなる。その場合には、前記した温度レベル選択スイッチ42aを選択すると最大レベルLHでは、通電開始時の通電率P(75%(テーブル2の場合)、60%(テーブル3の場合)を100として、その100%通電率、すなわち、75%×1=75%通電率、あるいは60%×1=60%通電率での運転が定常運転モードでの通電率となる。温度レベル選択スイッチ42b(中間レベルLM)を選択したときには、定常運転モードでは、75%×0.7=53%通電率(テーブル2の場合)、あるいは60%×0.7=42%通電率(テーブル3の場合)での運転となる。さらに、温度レベル選択スイッチ42c(低レベルLL)を選択したときには、定常運転モードでは、75%×0.4=30%通電率、あるいは60%×0.4=24%通電率での運転となる。
【0042】
上記の場合でも、前記したように、最大レベルLHでの運転(定常運転時に、通電開始時の通電率Pの100%通電率で運転)では、長時間運転継続により40℃程度までの床表面温度の上昇が起こり得るので、本発明による自動通電率低減手法はやはり有効となる。
【0043】
上記の説明では、通電率テーブルT1〜T3の選択手段としてディップスイッチ32を例示したが、ディップスイッチ32は例示であり、複数個の通電率テーブルの中からそのいずれかを選択できる手段であれば、任意の選択手段を用いることができる。また、通電率を制御するための回路としてリレーを用いたスイッチング回路61を示したが、これも例示であり従来知られた任意の通電率制御手段を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による電気式床暖房システムの一例を示す概略図。
【図2】電気式床暖房システム全体の制御系を示すブロック図。
【図3】通電開始時の通電率と定常運転時での出力レベルとの関係を示すテーブル。
【図4】システムにおける通電率制御を示す波形を説明する図。
【図5】給電率テーブルを説明するための図。
【図6】制御のフロー図。
【図7】通電率制御方式による床表面温度と時間との関係の一例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0045】
10…床下地、11…コード状電気ヒータ、12…木質系床材、13…配線、20…コントローラ、30…制御部、31…タイマー、32…ディップスイッチ、40…操作盤、42a〜42b…設定温度レベル選択スイッチ、50…記憶部、60…駆動回路、61…スイッチング回路、T…通電率テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源であるコード状電気ヒータと、コード状電気ヒータへの通電率を制御する通電率制御手段を少なくとも備えたコントローラとを少なくとも含む電気式床暖房システムであって、
前記通電率制御手段は、コード状電気ヒータへ通電を開始した後の経過時間を監視するタイマー手段と、該タイマー手段で予め設定した時間が経過したときに、予め設定した量だけ通電率を低減する通電率低減手段を備えていることを特徴とする電気式床暖房システム。
【請求項2】
前記通電率制御手段におけるタイマー手段は、同じまたは異なる間隔の設定時間を経時的に連続して多段に設定できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房システム。
【請求項3】
前記コントローラは、通電開始時の通電率を選択できる手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電気式床暖房システム。
【請求項4】
前記コントローラは、定常運転モードでの設定温度に対応する通電率を選択するための通電率選択手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気式床暖房システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−46844(P2007−46844A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232281(P2005−232281)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】