説明

電気抵抗溶接方法およびその装置

【課題】 鋼板部品の移動と部品の供給とを合理的に関連づけて溶接時間を短縮できる電気抵抗溶接方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 一対の電極6,7の間に鋼板部品13を停止させるとともに、いずれか一方の電極に供給され同電極に保持された部品9を両電極6,7の進出によって鋼板部品13の所定位置に電気抵抗溶接を行い、次いで両電極6,7の後退後、次の溶接位置へ鋼板部品13を両電極6,7間で移動させて次の部品溶接に備え、この鋼板部品13の移動とほぼ同時にいずれか一方の電極に次の部品9の供給を行い、その後、次の部品9が両電極6,7の進出によって鋼板部品13に溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同軸上に配置されている一対の電極の間で鋼板部品にプロジェクションナットなどの部品を溶接する電気抵抗溶接方法およびその装置に関している。
【背景技術】
【0002】
同軸上に配置されている一対の電極の間で鋼板部品にプロジェクションナットなどの部品を溶接する電気抵抗溶接に関しては、特許第3306579号公報などで知られている。
【特許文献1】特許第3306579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような技術においては、鋼板部品の複数箇所に部品を溶接するに当たり、鋼板部品の移動と部品の供給との関連動作をどのように行うかについての配慮がなされていない。したがって、溶接に要する時間が短縮できないと言う問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、鋼板部品の移動と部品の供給とを合理的に関連づけて溶接時間を短縮できる電気抵抗溶接方法およびその装置の提供を目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、方法の発明であり、同軸上に配置されている一対の電極の間に鋼板部品を停止させるとともに、いずれか一方の電極に供給され同電極に保持された部品を両電極の進出によって鋼板部品の所定位置に電気抵抗溶接を行い、次いで両電極の後退後、次の溶接位置へ鋼板部品を両電極間で移動させて次の部品溶接に備え、この鋼板部品の移動とほぼ同時にいずれか一方の電極に次の部品の供給を行い、その後、次の部品が両電極の進出によって鋼板部品に溶接されることを特徴とする電気抵抗溶接方法である。
【発明の効果】
【0006】
両電極の間に停止させてある鋼板部品に、一方の電極に保持された部品が両電極の進出によって電気抵抗溶接がなされ、この溶接完了後に両電極が後退して鋼板部品が次の溶接位置へ移動させられ、この鋼板部品の移動とほぼ同時期に部品がいずれか一方の電極に供給され、鋼板部品の次の箇所に溶接される。
【0007】
したがって、鋼板部品は両電極間で溶接位置が順次移動し、それと同時に部品供給がなされるので、鋼板部品の移動の後から部品供給がなされるような長時間を要する動作ではなく、短時間で溶接が進行する。このような利点は、自動車用フロアパネルのような大型の鋼板部品を移動手段、例えば、ロボット装置で保持して、電極に対する溶接位置を順次移動させてプロジェクションナットなどの部品を溶接する場合に効果的であり、生産性の向上図ることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、いずれか一方の電極への部品供給は、電極軸線にほぼ直交する方向に進退する供給ロッドによって行われる請求項1記載の電気抵抗溶接方法である。
【0009】
このように供給ロッドが電極軸線とほぼ直交する向きに進退するから、両電極間の上下方向のスペースが小さくても部品の供給を円滑に行うことができる。つまり、通常、鋼板部品は電極軸線にほぼ直交する方向から両電極間に進入させるものであるから、これと同方向に供給ロッドを進退させることによって、上下方向のスペースをできるだけ小さくし、鋼板部品の移動と供給ロッドの移動において両者が干渉することを容易に防止することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、いずれか一方の電極に設けたガイドピンが他方の電極に設けた受入孔に進入する請求項1または請求項2記載の電気抵抗溶接方法である。
【0011】
このようにガイドピンが受入孔に進入するので、両電極の芯ずれが防止され、部品が鋼板部品の所定位置に対して正確に溶接でき、鋼板部品の品質向上に効果的である。
【0012】
請求項4記載の発明は、部品を保持している側の電極のガイドピンが他方の電極に設けた受入孔に進入する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気抵抗溶接方法である。
【0013】
このように部品を保持したガイドピンが相手方電極の受入孔に進入するので、部品と鋼板部品との相対位置が正確に設定され、鋼板部品の品質向上に効果的である。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記受入孔がいずれか一方の電極のガイドピンに設けられている請求項3または請求項4記載の電気抵抗溶接方法である。
【0015】
このように一方のガイドピンが他方のガイドピンに設けた受入孔に進入するので、両電極の芯ずれが防止され、部品が鋼板部品の所定位置に対して正確に溶接でき、鋼板部品の品質向上に効果的である。
【0016】
請求項6記載の発明は、いずれか一方の電極に設けた受入孔を有するガイドピンが電極の進出によって鋼板部品の下孔を貫通し、他方の電極に設けられて部品を保持するガイドピンが前記受入孔に進入する請求項1または請求項2記載の電気抵抗溶接方法である。
【0017】
受入孔を有するガイドピンが鋼板部品の下孔を貫通するので、電極と鋼板部品との相対位置が所定のとおり正確に設定される。このような相対位置の設定がなされた状態のところへ部品を保持したガイドピンが進出してきて前記受入孔に進入する。したがって、両電極のセンタリングが正確に行われ、しかも前記下孔と部品との相対位置が正確に確保できる。特に、受入孔を有するガイドピンを先行的に鋼板部品の下孔に貫通させ、その後から部品を保持したガイドピンを進出させて受入孔に進入するように順序だてて動作させることにより、上記のような部品と鋼板部品との相対位置を一層正確に維持することができる。
【0018】
請求項7記載の発明は、いずれか一方の電極に設けた受入孔を有するガイドピンが部品を保持した状態で電極の進出によって鋼板部品の下孔を貫通し、他方の電極に設けられたガイドピンが前記受入孔に進入する請求項1または請求項2記載の電気抵抗溶接方法である。
【0019】
受入孔を有するガイドピンが部品を保持した状態で鋼板部品の下孔を貫通するので、電極と鋼板部品との相対位置が所定のとおり正確に設定される。このような相対位置の設定がなされた状態のところへ他方のガイドピンが進出してきて前記受入孔に進入する。したがって、両電極のセンタリングが正確に行われ、しかも前記下孔と部品との相対位置が正確に確保できる。特に、受入孔を有するガイドピンを先行的に鋼板部品の下孔に貫通させ、その後から他方のガイドピンを進出させて受入孔に進入するように順序だてて動作させることにより、上記のような部品と鋼板部品との相対位置を一層正確に維持することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記部品はプロジェクションナットであり、いずれか一方の電極のガイドピンがプロジェクションナットのねじ孔に進入した状態でプロジェクションナットが同電極に保持される請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電気抵抗溶接方法である。
【0021】
対象部品がプロジェクションナットとされることにより、電極のガイドピンがねじ孔に進入する。したがって、上述のようにねじ孔の中心と鋼板部品の下孔の中心とが正確に合致し、プロジェクションナットの溶接位置が正確に求められる。
【0022】
請求項9記載の発明は、装置の発明であり、同軸上に配置されている一対の電極と、いずれか一方の電極に進退可能な状態で設けられて突出方向に付勢されているとともに鋼板部品の下孔に進入するガイドピンと、いずれか一方の電極に進退可能な状態で設けられて突出方向に付勢されているとともにプロジェクションナットのねじ孔に進入してプロジェクションナットを同電極に保持するガイドピンと、電極軸線にほぼ直交する方向に進退して部品をいずれか一方の電極のガイドピンに供給する供給ロッドと、両電極間に鋼板部品を停止させるとともに鋼板部品の複数の下孔を順次電極軸線上に移動させる移動手段によって構成され、前記移動手段による鋼板部品の移動と、前記供給ロッドによる部品の供給とをほぼ同期させて動作させる制御装置が設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接装置である。
【0023】
この溶接装置の発明による作用効果は、請求項6記載の発明の作用効果と同じである。すなわち、受入孔を有するガイドピンが鋼板部品の下孔を貫通するので、電極と鋼板部品との相対位置が所定のとおり正確に設定される。このような相対位置の設定がなされた状態のところへ部品を保持したガイドピンが進出してきて前記受入孔に進入する。したがって、両電極のセンタリングが正確に行われ、しかも前記下孔と部品との相対位置が正確に確保できる。特に、受入孔を有するガイドピンを先行的に鋼板部品の下孔に貫通させ、その後から部品を保持したガイドピンを進出させて受入孔に進入するように順序だてて動作させることにより、上記のような部品と鋼板部品との相対位置を一層正確に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
つぎに、本発明の電気抵抗溶接方法およびその装置を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0025】
図1および図2は、実施例1を示す。
【0026】
図2(A)は、本願発明の電気抵抗溶接方法およびそれに使用する溶接装置を示す側面図である。溶接装置全体は符号1で示されている。基台2から起立している支柱3の上部に、アーム部材4がほぼ水平方向に向けて取付けられている。このアーム部材4にほぼ鉛直方向に進退出力をするエアシリンダ5が取付けられ、そのピストンロッド(図示していない)に上部電極6が結合してあり、この上部電極6はほぼ鉛直方向に進退するようになっている。
【0027】
前記上部電極6と同軸の状態で下部電極7が配置されている。この下部電極7は、基台2に固定したエアシリンダ8に結合されており、エアシリンダのピストンロッド(図示していない)がほぼ鉛直方向に進退するようになっており、したがって、下部電極7もほぼ鉛直方向に進退動作をするようになっている。上部電極6と同軸の状態で下部電極7が配置されているので、ほぼ鉛直方向の電極軸線O−Oが形成されている。
【0028】
この実施例における部品は、鉄製のプロジェクションナットであり、符号9で示されている。プロジェクションナット9は、図1(B)に符号を記載したように、四角い本体部10と、その中央部にあけられたねじ孔11と、本体部10の片側四隅に設けられた溶着用突起12によって構成されている。以下の記載においてプロジェクションナットを単にナットと表現することもある。
【0029】
自動車のフロアパネルのような鋼板部品13が移動手段であるロボット装置14に保持されている。このロボット装置14は一般的に使用されている多軸式のものであり、アーム部材15に鋼板部品13を掴むチャック機構16が結合してある。アーム部材15の本数は、鋼板部品13に付与される挙動に応じて複数本とされ、アーム部材15を連結する関節軸部分に駆動手段17が取付けられている。この駆動手段17としては、アーム部材15を所定角度揺動させるステッピングモータが採用されている。このステッピングモータにも符号17が付されている。
【0030】
前記ステッピングモータ17には制御装置19からの動作信号が入力されて、所要の移動軌跡で鋼板部品13を移動させるようになっている。なお、図2にはアーム部材15とステッピングモータ17がそれぞれ1つずつ図示されており、簡略的な図示になっている。
【0031】
なお、前記ロボット装置14に換えて、移動式の治具を用いることも可能である。例えば、ラックピニオンの機構によって治具を移動させて鋼板部品13に対する溶接位置を順次移行させるのである。したがって、鋼板部品13に対する移動手段は種々なものが採用できることになる。
【0032】
前記下部電極7の端面から断面円形のガイドピン20が突き出た状態で設けられている。このガイドピン20は図1に示すように、下部電極7の中心部にあけたガイド孔21に摺動自在な状態で挿入されている。そして、ガイドピン20と一体とされた円盤形のフランジ部23が、ガイド孔21よりも大径の大径孔22に摺動自在な状態で挿入されている。ガイドピン20は突出方向に付勢されており、この付勢手段として圧縮コイルスプリング24が採用されている。この圧縮コイルスプリング24に換えて、空気圧を利用することもできる。
【0033】
前記ガイドピン20には、テーパ部25を介して小径部26が設けてあり、この小径部26が後述の受入孔に進入するようになっている。
【0034】
ナット9は、図1に示すように、溶着用突起12が上向きになったいわゆる裏向きで下部電極7に供給されて、ねじ孔11にガイドピン20が串刺し状に進入して保持される。この保持状態は、図1に示すように、ねじ孔11の開口縁がテーパ部25に係合して保持がなされている。そして、ねじ孔11を貫通した小径部26は、ナット9の本体部10から上方に突き出ている。
【0035】
前記下部電極7へのナット1の供給は、電極軸線O−Oにほぼ直交する方向に進退する供給ロッド28によって行われる。図2(B)に示すように、供給ロッド28の先端部に先端側が開放した下向きの凹部29が形成され、ここにナット9が収容される。凹部29に収容されているナット9が落下しないようにするために、永久磁石30が供給ロッド28の上面側に埋設してある。この永久磁石30は、ナット9を吸引できるものであればよく、他の方法としては電磁石や空気吸引の方式であってもよい。
【0036】
供給ロッド28は、符号31で示すようなスクエアーモーションをするようになっている。すなわち、供給ロッド28が進出してきてナット9のねじ孔11がガイドピン20と同軸になった位置で停止する。ついで、供給ロッド28が電極軸線O−Oの方へ下降すると、ねじ孔11に小径部26が相対的に進入する。その後、供給ロッド28がそのままの位置で後退すると、ナット9がガイドピン20に残留して、下部電極7へのナット供給が完了する。
【0037】
上述のようなスクエアーモーション31を付与するために、供給ユニット32が設けられている。この供給ユニット32は、ほぼ鉛直方向に進退出力をするエアシリンダ33と、このエアシリンダ33のピストンロッド(図示していない)に結合されているとともにほぼ水平方向に配置された基板34と、基板34に固定されほぼ水平方向に進退出力をするエアシリンダ35と、このエアシリンダ35によって進退する前記供給ロッド28によって構成されている。なお、基板34にガイド筒36が固定され、ここに後退した供給ロッド28が収容される。
【0038】
前記ガイド筒36の端部にナット供給管37が結合され、パーツフィーダ38から送り出されたナット9がナット供給管37から前記凹部29に移載されるようになっている。このような供給ユニット32は、下方に延びる支持軸39とブラケット40を介して支柱3に固定されている。
【0039】
溶接電流を出力する変圧器42が支柱3に取付けられ、そこから延びる導線43,44が上部電極6と下部電極7に接続されている。
【0040】
図1に示すように、前記上部電極6の端面から断面円形のガイドピン45が突き出た状態で設けられている。このガイドピン45は、上部電極67の中心部にあけたガイド孔46に摺動自在な状態で挿入されている。そして、ガイドピン45と一体とされた円盤形のフランジ部47が、ガイド孔46よりも大径の大径孔48に摺動自在な状態で挿入されている。ガイドピン45は突出方向に付勢されており、この付勢手段として圧縮コイルスプリング49が採用されている。この圧縮コイルスプリング49に換えて、空気圧を利用することもできる。
【0041】
前記ガイドピン45の中心部に受入孔50が下方に開口した状態で設けてある。この受入孔50の内径は、前記ガイドピン20の小径部26が摺動またはごくわずかな隙間のもとで進入するような寸法とされている。
【0042】
鋼板部品13には、ナット9のねじ孔11に合致する円形の下孔52が複数個あけられており、ねじ孔11と下孔52が同軸になった状態でナット溶接が行われる。
【0043】
図2にしたがって全体的な動作状態を説明する。
【0044】
上部電極6と下部電極7の間に、ロボット装置14のチャック機構16で掴まれた鋼板部品13が溶接装置1の外部から挿入され、下孔52(図1参照)が電極軸線O−Oに合致した位置で鋼板部品13の挿入動作が停止する。このような動作は、制御装置19からの動作メモリーに基づいた動作信号によって複数の駆動手段17が出力して行われる。この鋼板部品13の挿入動作と同時またはその前に、エアシリンダ35とエアシリンダ33で形成される供給ロッド28のスクエアーモーションにより、ナット9が下部電極7のガイドピン20に供給され、その後、供給ロッド28はもっとも後退した位置に復帰している。このような供給ロッド28の進退動作や昇降動作は、制御装置19からの動作信号が空気切換弁27に入力され、それによる動作空気がエアシリンダ35や33に吸排されて行われる。
【0045】
上述のようにして1箇所の下孔52に対するナット溶接が完了すると、今度は、ロボット装置14により鋼板部品13の次の下孔52が電極軸線O−Oに合致するように移動される。この移動とほぼ同時に供給ロッド28が動作して次のナット9が下部電極7に供給される。上述の「ほぼ同時に」とは、鋼板部品13の移動とナット9の供給とが同時に完了するのが最も望ましいことを意味している。換言すると、鋼板部品13の移動とナット9の供給とが同時に完了しなければ、所要時間が長期化されるので、望ましくないことを意味している。しかしながら、許容される程度であれば、鋼板部品13の移動またはナット9の供給のいずれかの完了時期が遅延してもよい。
【0046】
図1にしたがって電極の動作状態を説明する。
【0047】
図1(A)は、鋼板部品13が上部電極6と下部電極7の間に存在していて、鋼板部品13の1つの下孔52が電極軸線O−Oに合致した状態であり、同時にナット9が下部電極7のガイドピン20に支持されている状態である。ここで、上部電極6が下方へ進出すると、(B)図に示すように、そのガイドピン45が下孔52を貫通し、上部電極6の下面51が鋼板部品13の表面に密着し、上部電極6の下降はここで停止する。この貫通が行われるのと同時またはその直後に下部電極7が上昇し、ガイドピン20の小径部26が(C)図に示すように、受入孔50に進入する。この(C)図に示す段階では、両圧縮コイルスプリング49,24は圧縮されない状態になっている。そして、ナット9の上面がガイドピン45の下面に密着している。
【0048】
(C)図の状態からさらに下部電極7が上昇すると、(D)図に示すように、ガイドピン45はナット9によって押し戻され、このときに圧縮コイルスプリング49が縮小する。そして、さらに下部電極7が上昇すると、ナット9の溶着用突起12が鋼板部品13の下面に当たるので、今度はガイドピン20に対してねじ孔11の開口縁からテーパ部25に押し下げ力が作用して、圧縮コイルスプリング24が縮小する。
【0049】
このような動作で(D)図に示す状態になってから、制御装置19の動作で溶接電流の通電がなされて、ナット9の溶接が完了する。
【0050】
それから両電極6,7が前述の動作順序とは逆の順序または両電極6,7が同時に後退すると、ロボット装置14が作動して次の下孔52が電極軸線O−Oに合致させられて鋼板部品13の移動が停止する。この鋼板部品13の移動と同時に供給ロッド28が動作してナット9が下部電極7のガイドピン20に供給される。その後の両電極6,7の動作は、圧縮コイルスプリング49,24の圧縮状態を含めて上述の(A)図〜(D)図の動作と同じである。
【0051】
なお、上述のような動作において、圧縮コイルスプリング49が先に圧縮されるようにするために、圧縮コイルスプリング24のばね定数を圧縮コイルスプリング49のそれよりも高く設定してある。
【0052】
実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0053】
上部電極6と下部電極7の間に停止させてある鋼板部品13に、下部電極7に保持されたナット9が上部電極6と下部電極7の進出によって電気抵抗溶接がなされ、この溶接完了後に上部電極6と下部電極7が後退して鋼板部品13が次の溶接位置へ移動させられ、この鋼板部品13の移動とほぼ同時期にナット9が下部電極7に供給され、鋼板部品13の次の箇所に溶接される。
【0054】
したがって、鋼板部品13は上部電極6と下部電極7の間で溶接位置が順次移動し、それと同時にナット供給がなされるので、鋼板部品13の移動の後からナット供給がなされるような長時間を要する動作ではなく、短時間で溶接が進行する。このような利点は、自動車用フロアパネルのような大型の鋼板部品13を移動手段、例えば、ロボット装置14で保持して、上部電極6,下部電極7に対する溶接位置を順次移動させてプロジェクションナット9などの部品を溶接する場合に効果的であり、生産性の向上図ることができる。
【0055】
下部電極7へのナット供給は、電極軸線O−Oにほぼ直交する方向に進退する供給ロッド28によって行われる。
【0056】
このように供給ロッド28が電極軸線O−Oとほぼ直交する向きに進退するから、上部電極6と下部電極7間の上下方向のスペースが小さくてもナット9の供給を円滑に行うことができる。つまり、通常、鋼板部品13は電極軸線O−Oにほぼ直交する方向から上部電極6と下部電極7の間に進入させるものであるから、これと同方向に供給ロッド28を進退させることによって、上下方向のスペースをできるだけ小さくし、鋼板部品13の移動と供給ロッド28の移動において両者が干渉することを容易に防止することができる。
【0057】
前記受入孔50が上部電極6のガイドピン45に設けられている。
【0058】
このように下部電極7のガイドピン20(小径部26)が上部電極6のガイドピン45に設けた受入孔50に進入するので、上部電極6と下部電極7の芯ずれが防止され、ナット9が鋼板部品13の所定位置に対して正確に溶接でき、鋼板部品13の品質向上に効果的である。
【0059】
上部電極6に設けた受入孔50を有するガイドピン45が上部電極6の進出によって鋼板部品13の下孔52を貫通し、下部電極7に設けられてナット9を保持するガイドピン20が前記受入孔50に進入する。
【0060】
受入孔50を有するガイドピン45が鋼板部品13の下孔52を貫通するので、上部電極6と鋼板部品13との相対位置が所定のとおり正確に設定される。このような相対位置の設定がなされた状態のところへナット9を保持したガイドピン20が進出してきて前記受入孔50に進入する。したがって、上部電極6と下部電極7のセンタリングが正確に行われ、しかも前記下孔52とナット9との相対位置が正確に確保できる。特に、受入孔50を有するガイドピン45を先行的に鋼板部品13の下孔52に貫通させ、その後からナット9を保持したガイドピン20を進出させて受入孔50に進入するように順序だてて動作させることにより、上記のようなナット9と鋼板部品13との相対位置を一層正確に維持することができる。
【0061】
装置発明は前述のように「同軸上に配置されている一対の電極と、いずれか一方の電極に進退可能な状態で設けられて突出方向に付勢されているとともに鋼板部品の下孔に進入するガイドピンと、いずれか一方の電極に進退可能な状態で設けられて突出方向に付勢されているとともにプロジェクションナットのねじ孔に進入してプロジェクションナットを同電極に保持するガイドピンと、電極軸線にほぼ直交する方向に進退して部品をいずれか一方の電極のガイドピンに供給する供給ロッドと、両電極間に鋼板部品を停止させるとともに鋼板部品の複数の下孔を順次電極軸線上に移動させる移動手段によって構成され、前記移動手段による鋼板部品の移動と、前記供給ロッドによる部品の供給とをほぼ同期させて動作させる制御装置が設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接装置」である。
【0062】
その作用効果は、つぎのとおりである。すなわち、受入孔50を有するガイドピン45が鋼板部品13の下孔52を貫通するので、上部電極6と鋼板部品13との相対位置が所定のとおり正確に設定される。このような相対位置の設定がなされた状態のところへナット9を保持したガイドピン20(小径部26)が進出してきて前記受入孔50に進入する。したがって、両電極6,7のセンタリングが正確に行われ、しかも前記下孔52とナット9との相対位置が正確に確保できる。特に、受入孔50を有するガイドピン45を先行的に鋼板部品13の下孔52に貫通させ、その後からナット9を保持したガイドピン20(小径部26)を進出させて受入孔50に進入するように順序だてて動作させることにより、上記のようなナット9と鋼板部品13との相対位置を一層正確に維持することができる。
【0063】
このように溶接装置の作用効果は、前記実施例1に記載した溶接方法の作用効果と同じである。
【実施例2】
【0064】
図3は、実施例2を示す。
【0065】
この実施例は、供給ロッド28が上部電極6にナット供給を行うものである。そのために、2点鎖線で示した供給ロッド28の凹部29は上方に開放している。供給ロッド28が符号31で示すようにスクエアーモーションを行うと実線図示のように、ナット9のねじ孔11に相対的にガイドピン45が進入しナット9の下面から突き出た状態になる。ナット9の位置ずれ等を防止するために、上部電極6の下端近くに永久磁石53が埋設してあり、その吸引力によりナット9が凹部29の内壁で位置決めされるようになっている。この永久磁石53を電磁石や空気吸引に置き換えることができる。それ以外の構成は先の実施例と同じなので、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0066】
また、両電極6,7の動作は、実施例1のものと同じであるが、ナット9は鋼板部品13の上面側に溶接される。受入孔50を有するガイドピン45がナット9を保持した状態で鋼板部品13の下孔52を貫通するので、上部電極6と鋼板部品13との相対位置が所定のとおり正確に設定される。このような相対位置の設定がなされた状態のところへ下部電極7側のガイドピン20が進出してきて小径部26が前記受入孔50に進入する。したがって、上部電極6と下部電極7のセンタリングが正確に行われ、しかも前記下孔52とナット9のねじ孔11との相対位置が正確に確保できる。特に、受入孔50を有するガイドピン45を先行的に鋼板部品13の下孔52に貫通させ、その後から下部電極7のガイドピン20を進出させて受入孔50に進入するように順序だてて動作させることにより、上記のようなナット9と鋼板部品13との相対位置を一層正確に維持することができる。それ以外の作用効果は、先の実施例と同じである。
【実施例3】
【0067】
図4は、実施例3を示す。
【0068】
図4(A)に示す実施例3は、上部電極6にはガイドピンがなく、下部電極7側のガイドピン20(小径部26)が進入する受入孔54が上部電極6の中心部に直接開口させてある。そして、小径部26は先の各実施例よりも長尺になっており、小径部26が鋼板部品13の下孔52を貫通して下部電極7と鋼板部品13との相対位置が先行して設定され、その後、上部電極の受入孔54内に小径部26が進入して、両電極6,7のセンタリングが行われる。それ以外の構成は先の各実施例と同じなので、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0069】
小径部26が鋼板部品13の下孔52を貫通して下部電極7と鋼板部品13との相対位置が先行して設定され、その後、上部電極の受入孔54内に小径部26が進入し、両電極6,7のセンタリングが行われる。これによって、鋼板部品13の下孔52とナット9のねじ孔11とが同心状態で正確に溶接される。
【0070】
下部電極7に設けたガイドピン20(小径部26)が上部電極6の受入孔54に進入する。このようにガイドピン20(小径部26)が受入孔54に進入するので、両電極6,7の芯ずれが防止され、ナット9が鋼板部品13の所定位置に対して正確に溶接でき、鋼板部品13の品質向上に効果的である。
【0071】
ナット9を保持している側の固定電極7のガイドピン20(小径部26)が上部電極6に設けた受入孔54に進入する。このようにナット9を保持したガイドピン20(小径部26)が相手方電極6の受入孔54に進入するので、ナット9と鋼板部品13との相対位置が正確に設定され、鋼板部品13の品質向上に効果的である。それ以外の作用効果は、先の各実施例と同じである。
【0072】
図4(B)に示す実施例3の変形例は、ナット9を保持する下部電極7側のガイドピン20に受入孔55が形成され、上部電極6側のガイドピンが大径部56と小径部57で構成されている。それ以外の構成は先の各実施例と同じなので、同様な機能の部材には同一の符号が記載してある。
【0073】
上部電極6が進出すると、ガイドピンの大径部56が下孔52を貫通して、上部電極6と鋼板部品13との相対位置が正確に設定される。それとほぼ同時に小径部57がガイドピン20の受入孔55に進入するので、ナット9のねじ孔11と下孔52とが正確に同軸状態となり、溶接精度が高く維持できる。それ以外の作用効果は、先の各実施例と同じである。
【0074】
上述の各実施例においては各種のエアシリンダが採用されているが、これに換えて進退出力をする電動モータを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
上述のように、本発明によれば、鋼板部品の移動と部品の供給とを合理的に関連づけて溶接時間を短縮できるので、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で効果的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】電極の動作順序を示す断面図である。
【図2】装置全体の側面図と供給ロッドの断面図である。
【図3】他の実施例を示す断面図である。
【図4】さらに他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 溶接装置
6 上部電極
7 下部電極
9 プロジェクションナット
11 ねじ孔
12 溶着用突起
13 鋼板部品
14 ロボット装置
19 制御装置
20 ガイドピン
24 圧縮コイルスプリング
26 小径部
O−O 電極軸線
28 供給ロッド
31 スクエアーモーション
32 供給ユニット
45 ガイドピン
49 圧縮コイルスプリング
50 受入孔
54 受入孔
55 受入孔
56 大径部
57 小径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に配置されている一対の電極の間に鋼板部品を停止させるとともに、いずれか一方の電極に供給され同電極に保持された部品を両電極の進出によって鋼板部品の所定位置に電気抵抗溶接を行い、次いで両電極の後退後、次の溶接位置へ鋼板部品を両電極間で移動させて次の部品溶接に備え、この鋼板部品の移動とほぼ同時にいずれか一方の電極に次の部品の供給を行い、その後、次の部品が両電極の進出によって鋼板部品に溶接されることを特徴とする電気抵抗溶接方法。
【請求項2】
前記電極への部品供給は、電極軸線にほぼ直交する方向に進退する供給ロッドによって行われる請求項1記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項3】
いずれか一方の電極に設けたガイドピンが他方の電極に設けた受入孔に進入する請求項1または請求項2記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項4】
部品を保持している側の電極のガイドピンが他方の電極に設けた受入孔に進入する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項5】
前記受入孔がいずれか一方の電極のガイドピンに設けられている請求項3または請求項4記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項6】
いずれか一方の電極に設けた受入孔を有するガイドピンが電極の進出によって鋼板部品の下孔を貫通し、他方の電極に設けられて部品を保持するガイドピンが前記受入孔に進入する請求項1または請求項2記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項7】
いずれか一方の電極に設けた受入孔を有するガイドピンが部品を保持した状態で電極の進出によって鋼板部品の下孔を貫通し、他方の電極に設けられたガイドピンが前記受入孔に進入する請求項1または請求項2記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項8】
前記部品はプロジェクションナットであり、いずれか一方の電極のガイドピンがプロジェクションナットのねじ孔に進入した状態でプロジェクションナットが同電極に保持される請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電気抵抗溶接方法。
【請求項9】
同軸上に配置されている一対の電極と、いずれか一方の電極に進退可能な状態で設けられて突出方向に付勢されているとともに鋼板部品の下孔に進入するガイドピンと、いずれか一方の電極に進退可能な状態で設けられて突出方向に付勢されているとともにプロジェクションナットのねじ孔に進入してプロジェクションナットを同電極に保持するガイドピンと、電極軸線にほぼ直交する方向に進退して部品をいずれか一方の電極のガイドピンに供給する供給ロッドと、両電極間に鋼板部品を停止させるとともに鋼板部品の複数の下孔を順次電極軸線上に移動させる移動手段によって構成され、前記移動手段による鋼板部品の移動と、前記供給ロッドによる部品の供給とをほぼ同期させて動作させる制御装置が設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−161926(P2008−161926A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−357583(P2006−357583)
【出願日】平成18年12月30日(2006.12.30)
【出願人】(000196886)
【Fターム(参考)】