説明

電気掃除機用吸込具及び電気掃除機

【課題】回転清掃体が雰囲気温度の変化による影響を受けず、軽量で、ごみが絡みにくく、使い勝手の良い電気掃除機用吸込具を提供することである。
【解決手段】底面に開口部を有する吸込具本体と、開口部より出し入れされ、かつ吸込具本体に取り外し自在に装着される回転可能な回転清掃体と、吸込具本体に、回転清掃体と平行に並べて配置された、回転清掃体を回転駆動する電動機を有する電気掃除機用吸込具において、回転清掃体は、円筒状のブラシコアと、ブラシコアの外周に配置されたハケを有し、ブラシコアの端部に、回転清掃体保持部を備えた構造において、回転清掃体保持部は、ブラシコアの端部に嵌合され、中心にシャフトを固定した円筒状のブラシカバーと、シャフトの先端に配置された軸受と、シャフトの外周かつ、ブラシカバーの内部に配置された付勢手段からなることを特徴としたことによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機用吸込具に関するもの、及びこの吸込具を用いた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気掃除機の吸込具として、回転清掃体とこの回転清掃体を駆動する駆動モータとを備える吸込具本体と、前記吸込具本体を形成する吸込具下ケース、および吸込具上ケースと、前記吸込具下ケースに設けられ、前記回転清掃体を収納する開口部と、この開口部の下面側から前面側にかけて設けた吸込口とを有するものがある。前記の構成において、回転清掃体と、回転清掃体を固定する開口部の壁面の間には、回転清掃体がスムーズに回動するようにするために、クリアランスが設けられている。
【0003】
又、以下の特許文献1〜3に示すように、ブラシバネを配置することでクリアランスを調節するものも提案されていた。
【0004】
特許文献1(特開平6−304100号公報)で提案されているように回転清掃体の一端にブラシバネを配設し、回転清掃体をスラスト方向に移動可能とし、この移動により回転清掃体の着脱を可能にした構造が提案されている。
【0005】
特許文献2(特開平6−269381号公報)では吸込具体に、電動機からの回転駆動力を回転清掃体に伝達する駆動ギヤにブラシバネを設け、前記回転清掃体を着脱自在に取り付けが可能とした構造が提案されている。
【0006】
特許文献3(特開昭62−207422号公報)では吸込具体に配設された回転清掃体の軸線方向の遊びを調節するために、軸受と回転清掃体の間にブラシバネを配設した構造が提案されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−304100号公報
【特許文献2】特開平6−269381号公報
【特許文献3】特開昭62−207422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記記載の背景技術では、以下のような課題が考えられる。
【0009】
前記背景技術にある回転清掃体と回転清掃体を固定する開口部の壁面にクリアランスを設ける構造の場合、一般的に強度が必要となる回転清掃体は、そのブラシコアを金属や、強化繊維入りの樹脂で製作するため、開口部を有する下ケースよりも雰囲気温度による収縮量が小さくなる恐れがある。
【0010】
そのため、前記吸込具を雰囲気温度の低い環境で使用した際には、回転清掃体と下ケースとのスラスト方向のクリアランスが狭くなり、回転清掃体が下ケースに押し付けられ摺動面が融解することで回転不良が発生するという恐れがある。
【0011】
又、例えば前記吸込具を雰囲気温度の高い環境で使用した際には、回転清掃体と下ケースとのスラスト方向のクリアランスが広がり、回転清掃体が回転駆動した時に、前記回転清掃体が下ケースとのクリアランスで振動することで異音が発生するという恐れがある。
【0012】
又、特許文献1では、回転ブラシ体に固定された軸を軸受が回転自在に保持しており、軸の外周にブラシバネが設けられている構造である。回転ブラシ体は軸を固定するために中実で形成されており、圧入固定するために軸長が長くなっている。そのため回転ブラシ体の質量が重くなるという恐れがある。
【0013】
又、特許文献2では、回転清掃体に電動機からの回転駆動力を回転清掃体に伝達する駆動ギヤにブラシバネを設け、前記ブラシバネの内径の間にブラシコアの端部を挿入し、前記回転清掃体を着脱自在とした構造である。このような構造では、回転清掃体を構成するブラシコアの外周部にブラシバネがむき出しの状態となっているために、ブラシバネに糸くずなどのごみが絡み易くなっているという恐れがある。
【0014】
又、特許文献3では、回転清掃体のブラシコアの内部を中空にして回転軸を通し、回転軸の両端を軸受で固定し、前記軸受とブラシコアの軸受当接面との間にブラシバネが設けられている構造である。このような構造では、ブラシコア内部にブラシバネを配設しているために回転清掃体の外径が大きくなり、これにより吸込具体の高さが高くなってしまうため、狭い隙間の掃除がしにくくなる等、使い勝手の悪化が懸念される。
【0015】
さらに、ブラシコア内部に回転軸を通しているため、回転ブラシ体の質量が重くなるという恐れがある。
【0016】
本発明の目的は、これらの問題を解決し、回転清掃体が雰囲気温度の変化による影響を受けず、軽量で、ごみが絡みにくく、使い勝手の良い電気掃除機用吸込具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、底面に開口部を有する吸込具本体と、前記開口部より出し入れされ、かつ前記吸込具本体に取り外し自在に装着される回転可能な回転清掃体と、前記吸込具本体に、前記回転清掃体と平行に並べて配置された、前記回転清掃体を回転駆動する電動機を有する電気掃除機用吸込具において、前記回転清掃体は、円筒状のブラシコアと、前記ブラシコアの外周に配置されたハケを有し、前記ブラシコアの端部に、回転清掃体保持部を備えた構造において、前記回転清掃体保持部は、前記ブラシコアの端部に嵌合され、中心にシャフトを固定した円筒状のブラシカバーと、前記シャフトの先端に回転方向及びスラスト方向の自由度を有し配置された軸受と、前記シャフトの外周かつ、前記ブラシカバーの内部に配置された付勢手段からなり、前記付勢手段は前記軸受を前記回転清掃体の外向きへ押す力を発生することを特徴とする。
【0018】
あるいは、本発明では、吸込具本体と、回転清掃体と、を有する電気掃除機用吸込具において、前記回転清掃体は、筒状のブラシコアと、該ブラシコアの端部に設けられた回転清掃体保持部と、を有し、前記回転清掃体保持部は、前記ブラシコアに接続する筒状のブラシカバーと、付勢手段と、前記吸込具本体に取り付けるための軸受と、を有し、前記付勢手段は前記ブラシカバーと、前記軸受との間に設けられることを特徴とする。
【0019】
あるいは、本発明では、吸込具本体と、回転清掃体と、を有する電気掃除機用吸込具において、前記回転清掃体は、筒状のブラシコアと、シャフトと、前記ブラシコアの端部に設けられた回転清掃体保持部と、を有し、前記回転清掃体保持部は、筒状のブラシカバーと、付勢手段と、軸受と、を有し、前記ブラシカバーと前記軸受は前記シャフトに固定され、前記付勢手段は、前記ブラシカバーと前記軸受とに固定され、前記シャフトの外周、かつ前記ブラシカバーの内部に設けられていることを特徴とする。
【0020】
又、前記シャフトと、前記ブラシカバーの固定部は、前記付勢手段の内側に配置され、スラスト方向の位置が重なることを特徴としたことによる。
【0021】
又、前記付勢手段が前記軸受に加える荷重は0.1N以上から10N以下であることを特徴としたことによる。
【0022】
又、上記記載の電気掃除機用吸込具を有することを特徴とした電気掃除機である。
【0023】
あるいは、電動送風機及び集塵部を有する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続されたホースと、一端が前記ホースの他端に接続される手元操作部と、一端が該手元操作部の他端に接続される延長管と、前記延長管の他端に接続される吸込具と、を備えた電気掃除機において、前記吸込具は、底面に開口部を有する吸込具本体と、前記開口部より出し入れされ、かつ前記吸込具本体に取り外し自在に装着される回転可能な回転清掃体と、前記吸込具本体に、前記回転清掃体と平行に並べて配置された、前記回転清掃体を回転駆動する電動機を有し、前記回転清掃体は、円筒状のブラシコアと、前記ブラシコアの外周に配置されたハケを有し、前記ブラシコアの端部に、回転清掃体保持部を備えた構造において、前記回転清掃体保持部は、前記ブラシコアの端部に嵌合され、中心にシャフトを固定した円筒状のブラシカバーと、前記シャフトの先端に回転方向及びスラスト方向の自由度を有し配置された軸受と、前記シャフトの外周かつ、前記ブラシカバーの内部に配置されたブラシバネからなり、前記ブラシバネは前記軸受を前記回転清掃体の外向きへ押す力を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回転清掃体保持部の内部に付勢手段(ブラシバネ)が配設されることで回転清掃体がスラスト方向に対して移動可能となっている。
【0025】
ここで、例えば、前記吸込具を雰囲気温度の低い環境で使用した際には、回転清掃体と下ケースとの軸方向のクリアランスが狭くなるが、回転清掃体保持部の内部に付勢手段(ブラシバネ)を配設することで、付勢手段(ブラシバネ)が圧縮されて、回転清掃体と下ケースとの収縮差を吸収することにより、回転清掃体が下ケースに押し付けられることが無いため、回転不良を防止することができる。
【0026】
又、例えば、前記吸込具を雰囲気温度の高い環境で使用した際には、回転清掃体と下ケースとの軸方向の隙間が広くなるが、付勢手段(ブラシバネ)が軸受を回転清掃体の外向き方向へ押しているため、回転清掃体のスラスト方向の振動を抑制し、前記回転清掃体が下ケースとのクリアランスでの異音発生を防止することができる。
【0027】
又、回転清掃体の回転駆動時のスラスト方向の振動を付勢手段(ブラシバネ)が吸収することにより、吸込具騒音を静音化することができる。
【0028】
又、回転清掃体保持部はブラシコアへのシャフトによる固定が不要となるため、前記回転清掃体保持部とブラシコアを別部品で構成し、ブラシコア中空とすることで、回転清掃体を軽量化することができる。
【0029】
又、回転清掃体保持部は、前記回転清掃体保持部の内部に付勢手段(ブラシバネ)が配設されることにより、付勢手段(ブラシバネ)部がブラシコアの外周部に露出していないため、付勢手段(ブラシバネ)部へごみの侵入がなく、糸がらみ等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1(a)】本発明による吸込具の回転清掃体である。
【図1(b)】本発明による回転清掃体保持部材の断面図である。
【図2】本発明による吸込具の分解斜視図である。
【図3】本発明による電気掃除機の外観図である。
【図4】本発明による吸込具本体を下から見たときの平面図(下面図)である。
【図5(a)】本発明による回転清掃体保持部118の構成図である。
【図5(b)】本発明による回転清掃体保持部118の外観図である。
【図6】本発明による回転清掃体204の取り外し方を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態の一例を添付の図面に基いて説明する。
【0032】
図2に本実施例による吸込具の分解斜視図を示す。図2において、201は下ケース、200は下ケースの上方に配置された上ケース、212は上ケース200及び下ケース201で構成された回転清掃体収納室、204は回転清掃体収納室212に配置された回転清掃体、205は回転清掃体204を駆動するための電動機、207は吸込具を持ち上げたときに自動的に回転停止するための安全スイッチ、208は電動機側プーリー、209は減速プーリーを構成する大プーリー、210は減速プーリーを構成する小プーリー、211は大プーリー209と小プーリー210を連結するシャフトである。
【0033】
電動機205によって発生された駆動力を大プーリー209と小プーリー210を連結するシャフト211を介して回転清掃体204の回転軸端部に伝達する伝達機構を構成している。
【0034】
202は吸込具本体内部と外部(掃除機本体)とを連通する空気通路が形成された自在継手のうち吸込具本体に対して上下方向に回動可能な第1の接続管、203は自在継手のうち前記第1の接続管に対して左右方向に回動可能な第2の接続管である。
【0035】
図2において、回転清掃体204の回転軸に沿う方向を吸込具の左右方向と呼び、この左右方向は通常吸込具の左右方向と一致する。また、吸込具の上下方向に関しては、吸込具を水平な床面上に置いた状態で、開口218が形成された側を下面側、反対側を上面側と呼ぶ。また、吸込具の進行方向側を正面側、後退方向側を背面側として説明する。
【0036】
吸込具は左右方向に幅広な形状をしている。吸込具において、回転清掃体収納室212は正面側に設けられ、電動機205は背面側に設けられている。安全スイッチ207は電動機205よりも背面側に設けられている。電動機側プーリー208は電動機205の側面(本実施例では左側)に設けられている。大プーリー209は電動機205と電動機側プーリー208の間に設けられている。小プーリー210は電動機側プーリー208の側面(本実施例では左側)に設けられている。シャフト211は大プーリー209と小プーリー210との間に設けられており大プーリー209と小プーリー210とを連結している。
【0037】
図3に本実施例による電気掃除機の外観図を示す。301は後部に吸込具本体が集塵するのに必要な吸気風を発生させる電動送風機(図示せず)を内蔵し、前部には塵埃を集塵する集塵室(図示せず)を内蔵した電気掃除機本体、302は電気掃除機本体301に接続され、柔軟に可動するように形成されたホース体、303は前記ホース体302に接続されて前記電気掃除機本体301や吸込具306を制御する手元スイッチ304を内蔵し、ホース体302と延長管305と連通する流路(図示せず)を持つハンドルグリップである。また、ホース体302とハンドルグリップ303及び延長管305には、吸込具306に電気を供給する給電線(図示せず)が内蔵されている。
【0038】
図4に本実施例による吸込具本体を下から見たときの平面図(下面図)及び、中央断面図(ない)を示す。403は吸込具下ケース201に設けられた床面開口部で、被清掃面に面する。401はバンパー、400は固定刷毛、404は後方車輪である。405は固定刷毛前方に設けた刷毛逃げ部A、406は固定刷毛後方に設けた刷毛逃げ部Bである。207は吸込具を持ち上げたときに自動的に停止するための安全スイッチであり、207aは被清掃面に設置されているかを検出するための床面検出車輪である。
【0039】
220は下ケース201の下面側に位置する軸受押さえ部材407を開閉するための係止部材であり、上ケース200と下ケース201から張り出した支持部を回動軸とし、組み付けにより上下方向で支持し、係止部材220の抜け外れを規制している。
【0040】
バンパー401は、吸込具本体の正面側に設けられている。床面開口部403はバンパー401よりも背面側に設けられており、固定刷毛400は床面開口部403よりも背面側に設けられている。後方車輪404は固定刷毛400よりも背面側に設けられている。
【0041】
図1(a),図1(b)に本実施例による回転清掃体204を示す。
【0042】
回転清掃体204の清掃部材107は、繊維等による刷毛105の他、軟質のブレード104のものを用いて構成することができ、刷毛105やブレード104をそれぞれ単独で、或いは刷毛105とブレード104とを混在させて構成することができる。また、筒状基体106を形成する部材で一体に成形した突出部で清掃部材を構成してもよい。いずれにしても、清掃部材107は筒状基体106の外周面から外方に突出するように構成される。
【0043】
回転清掃体204の両端には、前記回転清掃体を前記吸込具本体へ保持する保持部材A110,回転清掃体保持部118が設けられている。保持部材A110は、シタケース内部に設けられた保持部材B408の凹凸噛合部A701と噛合う凹凸からなる噛合部B112を有し、保持部材A110と保持部材B408で回動力を伝える役割を果たす。
【0044】
図5(a),図5(b)に本実施例による回転清掃体保持部118の分解斜視図と組立て図を示す。回転清掃体保持部118を構成する円筒状のブラシカバー111にはシャフト116が固定されており、シャフト116の外周にはブラシカバー111によって溝部120が形成されている。溝部にワッシャー114を配置し、ついでブラシバネ115,ワッシャー114の順に挿入する。その後、軸受113をシャフト116に沿って挿入し、軸受113がシャフト116に対して回転自在になるように固定されている。また、軸受113はブラシバネ115により下ケース201にスラスト方向(左右方向)外側に常に押し付けられた状態となっている。
【0045】
図1(b)に示すように、シャフト116と、ブラシカバー111の固定部111aは、ブラシバネ115の内側に配置され、スラスト方向(左右方向)の位置が重なるように構成している。これにより、ブラシカバー111内部のスペースを有効活用し、回転清掃体保持部118を小型化することができる。さらにスラスト方向(左右方向)で短くすることができるので、回転清掃体204のスラスト方向(左右方向)の幅が長くなり、ごみ取れ幅が増え、掃除効率が上がる。
【0046】
次に本実施例の動作を説明する。掃除機使用者がハンドルグリップ303に設置された手元スイッチ304を操作すると、操作されたスイッチに従った動作モードで電気掃除機本体301内の電動送風機が運転する。電動送風機によって発生した吸引力は、ホース体302,延長管305を通って吸込具306に到達する。それと同時に、ホース体302および延長管305に設けられた電源線から供給された電源が、回路基板206を介して電動機205を駆動する。
【0047】
電動機205とプーリー411,ベルト410で連結している回転清掃体204が回転することにより、回転清掃体204の清掃部材107である刷毛105やブレード104によって被掃除面からごみや塵埃を掻き上げて吸い込んでいる。
【0048】
図1(b)に本実施例における回転清掃体保持部118の断面図を示す。
【0049】
回転清掃体保持部118の内部にブラシバネ115を配設することにより、回転清掃体204がスラスト方向(左右方向)で図1(b)に示す可動領域(A)の範囲を移動可能とした。
【0050】
これは、吸込具に回転清掃体204が配置された状態で、吸込具の使用時の雰囲気温度が変化しても、ブラシバネ115によって、回転清掃体のスラスト方向(左右方向)外側に押されることで軸受113が下ケース201に密着し、ブラシカバー111には密着しない状態となるように、ブラシバネ115による回転清掃体204の可動領域(A)を設定した。
【0051】
本実施例ではブラシバネ115による可動領域(A)は1.8mmであり、この可動領域(A)であれば、例えば雰囲気温度の低い−10℃の環境で吸込具を使用した際に、回転清掃体204と下ケース201のクリアランスが狭くなっても、ブラシバネ115が軸受113を回転清掃体204のスラスト方向(左右方向)外側に押し、軸受113がブラシカバー111に非接触の状態となる。逆に雰囲気温度の高い40℃環境で吸込具306を使用した際に、回転清掃体204と下ケース201のクリアランスが広くなっても、ブラシバネ115によってスラスト方向(左右方向)外側に押された軸受113が下ケース201に密着した状態を維持できる。
【0052】
ここで、本実施例におけるブラシバネの荷重は0.1N以上から10N以下と設定した。ブラシバネ荷重の下限値である0.1N未満の前記ブラシバネ荷重では回転清掃体204をスラスト方向(左右方向)でのガタつきを吸収するには前記ブラシバネ荷重が不足し、振動低減の効果が弱くなる。また、前記ブラシバネ荷重が10Nより大きくとなるとブラシバネ115から回転清掃体204に加わる前記ブラシバネ荷重が過大であり、前記ブラシバネ荷重が加わったまま回転清掃体204が回転駆動すると、部品間の摺動面に関して摩擦熱による熱溶着が起こり回転不良となる。
【0053】
すなわち、ブラシバネ115による振動低減の効果が見込まれ、かつ前記ブラシバネ荷重が過負荷となり回転不良を引き起こさない値として、前記ブラシバネ荷重0.1N以上から10N以下と設定した。
【0054】
したがって、本実施例では一般的に強度が必要となる回転清掃体204のブラシコア117を金属や、強化繊維入りの樹脂を用いるため、開口部を有するシタケースよりも温度による収縮量が小さくなっている。
【0055】
このため、吸込具306を雰囲気温度の低い環境で使用した際、回転清掃体204と下ケース201の熱膨張率の違いによりスラスト方向(左右方向)のクリアランスが狭くなり、回転清掃体204が下ケース201に押し付けられるが、回転清掃体保持部118の内部にブラシバネ115を配設することにより、回転清掃体204と下ケース201との収縮差をブラシバネ115が吸収することができる。
【0056】
同様に、吸込具306を雰囲気温度の高い環境で使用した際、回転清掃体204と下ケース201の熱膨張率の違いにより、回転清掃体204と下ケース201とスラスト方向(左右方向)のクリアランスが広くなるが、前記ブラシバネ115が軸受113を下ケース201に押し付けるので、回転清掃体204の回転駆動時の振動を吸収することができる。
【0057】
また、回転清掃体保持部118とブラシコア117が別体で構成されるため、ブラシコアを中空に形成することが可能となり、回転清掃体204の軽量化が図れる。
【0058】
図6に本実施例による回転清掃体204の取り外し方を示す。
【0059】
吸込具の下面側を上面側に向ける。係止部材220の操作部に操作者の指を添え、吸込具中央側から外側に回動し、軸受押さえ部材407と係止部材220の係合を解除する(X)。そして、下ケース201から軸受押さえ部材407を開け、軸受押さえ部材407を外す(Y)。
【0060】
次に、軸受113を回転清掃体204のスラスト方向(左右方向)の内向きに押し、下ケース201との接触を解除した状態で、回転清掃体204を、上方に引き上げることにより、回転清掃体204の保持部材A110の噛合部112と保持部材B408の噛合部701が外れ、吸込具306から離脱できる(Z)。
【0061】
これにより、回転清掃体204の刷毛108に糸くず等が付着した際も容易に回転清掃体204を取り外し、簡単に糸くずなどの繊維状のものや、髪の毛等を取り除くことができる。
【0062】
取り付け時は回転清掃体204の端部に固定された軸受103を回転清掃体のスラスト方向(左右方向)内側に押しこみながら、回転清掃体204の保持部材A110の噛合部112と保持部材B408の噛合部701を合わせ、吸込具306にはめ込む。
【0063】
この時、回転清掃体保持部118の内部に配設されたブラシバネ115が軸受113を下ケース201に押し付けることで、不意に吸込具を下に向けた時などに回転清掃体204が外れにくくなっている。
【0064】
本発明の各実施例は床移動型の掃除機だけでなく、アップライト式やスティック式の掃除機にも適用できる。モータ駆動方式の吸込具だけでなく、エアー駆動方式にも適用できる。
【0065】
また、本発明の各実施例においてブラシバネを用いたがこれに限るものではない。軸受を前記回転清掃体の外向きへ押す(付勢する)機能を有するものであれば良く、バネのほかにゴムなどの弾性材料などの付勢手段でも同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0066】
104 ブレード(清掃部材の一部)
105 刷毛(清掃部材の一部)
107 清掃部材
108 刷毛(円筒状のもの)
109 刷毛台
110,409 保持部材A
111 ブラシカバー
112 噛合部B(保持部材Aの噛合部)
113 軸受
114 ワッシャー
115 ブラシバネ
116 シャフト
117 ブラシコア
118 回転清掃体保持部
119 固定面
120 溝部
200 上ケース
201 下ケース
202 第1の接続管
203 第2の接続管
204 回転清掃体
205 電動機
206 回路基板
207 安全スイッチ
207a 床面検出車輪
208 電動機側プーリー
209 大プーリー
210 小プーリー
211 シャフト
212 回転清掃体収納室
218 開口
220 係止部材
301 電動掃除機本体
302 ホース体
303 ハンドルクリップ
304 手元スイッチ
305 延長管
306 吸込具
400 固定刷毛
401 バンパー
403 床面開口部
404 後方車輪
405 刷毛逃げ部A
406 刷毛逃げ部B
407 軸受押さえ部材
408 保持部材B
410 ベルト
411 プーリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に開口部を有する吸込具本体と、前記開口部より出し入れされ、かつ前記吸込具本体に取り外し自在に装着される回転可能な回転清掃体と、
前記吸込具本体に、前記回転清掃体と平行に並べて配置された、前記回転清掃体を回転駆動する電動機を有する電気掃除機用吸込具において、
前記回転清掃体は、円筒状のブラシコアと、前記ブラシコアの外周に配置されたハケを有し、
前記ブラシコアの端部に、回転清掃体保持部を備えた構造において、
前記回転清掃体保持部は、前記ブラシコアの端部に嵌合され、中心にシャフトを固定した円筒状のブラシカバーと、前記シャフトの先端に回転方向及びスラスト方向の自由度を有し配置された軸受と、前記シャフトの外周かつ、前記ブラシカバーの内部に配置された付勢手段からなり、
前記付勢手段は前記軸受を前記回転清掃体の外向きへ押す力を発生することを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項2】
吸込具本体と、回転清掃体と、を有する電気掃除機用吸込具において、
前記回転清掃体は、筒状のブラシコアと、該ブラシコアの端部に設けられた回転清掃体保持部と、を有し、
前記回転清掃体保持部は、前記ブラシコアに接続する筒状のブラシカバーと、付勢手段と、前記吸込具本体に取り付けるための軸受と、を有し、
前記付勢手段は前記ブラシカバーと、前記軸受との間に設けられることを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項3】
吸込具本体と、回転清掃体と、を有する電気掃除機用吸込具において、
前記回転清掃体は、筒状のブラシコアと、シャフトと、前記ブラシコアの端部に設けられた回転清掃体保持部と、を有し、
前記回転清掃体保持部は、筒状のブラシカバーと、付勢手段と、軸受と、を有し、
前記ブラシカバーと前記軸受は前記シャフトに固定され、前記付勢手段は、前記ブラシカバーと前記軸受とに固定され、前記シャフトの外周、かつ前記ブラシカバーの内部に設けられていることを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された電気掃除機用吸込具において、前記シャフトと、前記ブラシカバーの固定部は、前記付勢手段の内側に配置され、スラスト方向の位置が重なることを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載された電気掃除機用吸込具において、前記付勢手段が前記軸受に加える荷重は0.1N以上から10N以下であることを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載された電気掃除機用吸込具において、
前記付勢手段はブラシバネであることを特徴とする電気掃除機用吸込具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電気掃除機用吸込具を有することを特徴とする電気掃除機。
【請求項8】
電動送風機及び集塵部を有する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続されたホースと、一端が前記ホースの他端に接続される手元操作部と、一端が該手元操作部の他端に接続される延長管と、前記延長管の他端に接続される吸込具と、を備えた電気掃除機において、
前記吸込具は、底面に開口部を有する吸込具本体と、前記開口部より出し入れされ、かつ前記吸込具本体に取り外し自在に装着される回転可能な回転清掃体と、
前記吸込具本体に、前記回転清掃体と平行に並べて配置された、前記回転清掃体を回転駆動する電動機を有し、
前記回転清掃体は、円筒状のブラシコアと、前記ブラシコアの外周に配置されたハケを有し、
前記ブラシコアの端部に、回転清掃体保持部を備えた構造において、
前記回転清掃体保持部は、前記ブラシコアの端部に嵌合され、中心にシャフトを固定した円筒状のブラシカバーと、前記シャフトの先端に回転方向及びスラスト方向の自由度を有し配置された軸受と、前記シャフトの外周かつ、前記ブラシカバーの内部に配置されたブラシバネからなり、
前記ブラシバネは前記軸受を前記回転清掃体の外向きへ押す力を発生することを特徴とする電気掃除機。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9785(P2013−9785A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143732(P2011−143732)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】