説明

電気掃除機

【課題】回転ブラシ駆動用の電動機が停止している時にも吸込具の使用状態を正確に判断しその状態に応じて最適な運転制御ができる電気掃除機を提供する。
【解決手段】吸引風を発生する電動送風機(図示せず)を内蔵する本体1と、電動送風機と連通する吸気経路(図示せず)に着脱自在に接続される第1の吸込具20と、第1の吸込具20に設けられ電動機11で回転駆動される回転ブラシ(図示せず)と、電動機11を駆動する双方向性サイリスタ27と、双方向性サイリスタ27の停止時に第1の吸込具20の被清掃面との接触状態及び吸気経路との着脱状態を検出する状態検出手段23とを備えたもので、双方向性サイリスタ27がオフしている時に、第1の吸込具20の操作により発生する起電力の影響を受けることなく、第1の吸込具20の接続状態や床との接触状態などの状態判定ができるので、その状態に適した清掃運転を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭用、業務用の電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9に従来の電気掃除機の概略構成図を示す。
【0003】
図9において、1は電気掃除機本体(以下「本体1」という)であり、2は本体1に内蔵され吸い込み力を発生する電動送風機であり、3は電動送風機2の異なった電力での動作モードを切り換える操作手段4を有したホースであり、5は延長管であり、6は吸引した塵埃を蓄積しておく集塵室であり、ホース3と集塵室6は、本体1に設けた吸気口7を介して接続され、集塵室6とホース3、または、集塵室6とホース3と延長管5で吸気経路8を形成している。
【0004】
9は床面に接して床面の塵埃等を吸引するための吸込具であり、床面の塵埃を掻き上げる回転ブラシ10と、回転ブラシ10を回転駆動する電動機11を内蔵している。
【0005】
吸気経路8には、本体1から電動機11へ電力を供給する電力線12が2本配置されており、本体1に設けた制御手段(図示せず)は、操作手段4にて設定されるモードに応じて電動送風機2と電動機11の供給電力を制御する。また、ホース3には集塵室6に蓄積された塵埃が満杯になると報知する塵埃満杯報知手段13が設けられている。
【0006】
上記のように構成された電気掃除機は、使用者が操作手段4を操作して電動送風機2と電動機11に電力を供給し、停止モードから動作モードへ移行すると、吸込具9から吸引された塵埃が、吸気経路8を経由して集塵室6に蓄積される。
【0007】
従来、この種の電気掃除機においては、吸込具9の離床、または着床の状態を検出する抵抗で構成された吸込具離床検出部(図示せず)を設け、前記吸込具離床検出部からの検出信号を電力線12を介して本体1に伝達し、前記検出信号に応じて電動送風機2の電力を制御するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、吸込具9の吸気経路8への装着状態を専用のスイッチを設けて検出し、装着時に、電動送風機2の電力を減少させるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−164399号公報
【特許文献2】特許第3285028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の電気掃除機の構成では、電動機11がオフした状態で、使用者が吸込具9を操作すると、回転ブラシ10が床面との接触によって回転し、それにより電動機11が発電機となって起電力が発生するので、特に特許文献1に示されるような構成では、前記起電力がノイズとなって検出信号に重畳し、吸込具9の離床、着床の状態を正確に検出できなくなる。そのため、吸込具9の状態を検出する場合は、回転ブラシを停止することが出来ず、また、特許文献2の構成においては、吸込具9の状態を検出するための専用の信号線を追加しなくてはならず、吸気経路8の構成が複雑になってしまうという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、複雑な構成をとることなく、回転ブラシが停止している時でも、吸込具の状態を高精度に検出し、吸込具の状態に合わせた清掃ができる使い勝手の良い電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電気掃除機は、吸引風を発生する電動送風機を内蔵する本体と、前記電動送風機と連通する吸気経路に着脱自在に接続される吸込具と、前記吸込具に設けられ電動機で回転駆動される回転ブラシと、前記電動機を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の停止時に前記吸込具の被清掃面との接触状態及び前記吸気経路との着脱状態を検出する状態検出手段とを備えたもので、駆動手段が停止している時に吸込具の操作により発生する起電力の影響を受けることなく、吸込具の接続状態や床との接触状態などの状態判定ができるので、その状態に適した清掃運転を行なうことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気掃除機は、複雑な構成を取ることなく、回転ブラシを停止していても、吸込具の状態に応じて最適な清掃を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、吸引風を発生する電動送風機を内蔵する本体と、前記電動送風機と連通する吸気経路に着脱自在に接続される吸込具と、前記吸込具に設けられ電動機で回転駆動される回転ブラシと、前記電動機を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の停止時に前記吸込具の被清掃面との接触状態及び前記吸気経路との着脱状態を検出する状態検出手段とを備えたもので、駆動手段が停止している時に吸込具の操作により発生する起電力の影響を受けることなく、吸込具の接続状態や床との接触状態などの状態判定ができるので、その状態に適した清掃運転を行なうことができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の電動機の起電力を検出する起電力検出手段を設け、状態検出手段は、前記起電力検出手段の検出結果に応じて補正をかけた結果を出力するようにしたもので、前記状態検出手段は、前記起電力検出手段の検出結果が起電力無しであれば、検出した状態をそのまま出力し、起電力が有る場合は、吸込具が被清掃物に接している状態を出力することにより、起電力の有無に応じて前記吸込具の状態を検出でき、回転ブラシが停止しているときも、吸込具の状態に応じた精度良い検出ができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1の発明の状態検出手段を、吸込具の被清掃面との接触状態を検出する第1の状態検出手段と、前記接触状態以外の他の状態を検出する第2の状態検出手段で構成し、前記第1の状態検出手段と前記第2の状態検出手段の検出結果より前記吸込具の状態を判断する判断手段と、任意のあるいは所定のタイミングで所定時間、電動機に電力を供給する一時供給手段を有し、前記第1の状態検出手段は、前記一時供給手段が前記電動機へ電力を供給するタイミングで前記電動機の負荷電流より前記吸込具の状態を検出するようにしたもので、前記一時供給手段が、定期的に、回転ブラシが回転しない程度の微少な電力を前記電動機に供給すると共に前記第1の状態検出手段にタイミング情報を出力し、前記第1の状態検出手段は、そのタイミングを受け取ると、負荷電流が、所定の値より高ければ前記回転ブラシに負荷がかかっており、前記吸込具が、被清掃面に接している情報を出力し、低ければ被清掃面に接していないという情報を前記判断手段に出力し、前記判断手段においては、前記第1の状態検出手段の検出する前記吸込具が被清掃面に接しているという情報を優先して、前記吸込具の状態を判断することにより、前記回転ブラシの回転停止時の起電力の影響を受けることなく、前記吸込具の状態を検出することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の吸込具を、主に床面を清掃する第1の吸込具と、前記第1の吸込具に着脱自在に装着されると共に吸気経路に着脱自在に接続される第2の吸込具とで構成し、状態検出手段で、前記第1の吸込具と前記第2の吸込具との着脱状態をも検出するようにしたもので、回転ブラシが停止している時でも、前記第1の吸込具の離床状態、着床状態、前記第2の吸込具のみが吸気経路上に装着された状態、前記吸気経路上に前記第1の吸込具・前記第2の吸込具共に無い場合の4つの状態を精度良く検出することができる。
【0017】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の状態検出手段を、吸込具の状態を検出する検出部と前記状態を判断する判断部で構成し、前記判断部を本体に設け、電動機に電源を供給する電力線を吸気経路上に配置し、前記検出部による検出情報を、前記電力線を介して前記判断部に伝達するようにしたもので、状態を検出するための専用の信号線を設ける必要が無く、吸込具の状態を検出、判断でき、複雑な構成にすることなく実現することができる。
【0018】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の状態検出手段の検出結果に応じて前記電動送風機への供給電力を変えるようにしたもので、回転ブラシが停止している状態でも、電動機の起電力によって発生する状態検出手段の誤検出による電動送風機の電力変化を発生させることなく、高精度な制御を行うことができる。
【0019】
第7の発明は、特に、第2〜6のいずれか1つの発明の起電力検出手段が電動機の起電力を検出しない時は、電動送風機への供給電力を低下させるようにしたもので、前記制御手段は、前記起電力検出手段が起電力を検出していない時は、使用者が、吸込具を操作していない、つまり清掃が中断されていると判断して前記電動送風機への電力を低下させ、無駄な電力を省き、逆起電力が検出されていれば、前記吸込具が操作されていると判断して、前記電動送風機への電力を上昇させることにより、清掃時にのみ必要な吸引力を確保することができ、使い勝手と省エネ性を向上することができる。
【0020】
第8の発明は、特に、第7の発明の吸込具が吸気経路に接続されている時のみ、電動送風機への供給電力を低下させるようにしたもので、前記吸込具が前記吸気経路上に装着されていない時の雑音等による前記制御手段の誤動作を防ぎ、制御精度を向上することができる。
【0021】
第9の発明は、第1〜8のいずれか1つの発明の電動送風機と電動機の動作モードを設定する操作手段と、前記電動送風機への供給電力が異なる、もしくは、前記電動機の回転数が異なる複数の動作モードを有して前記電動送風機と前記電動機を制御する制御手段を設け、前記電動送風機と前記電動機が停止する停止モードの時に、前記動作モードで前記回転ブラシを回転させるか、または停止させるかを設定する設定手段を有するもので、前記制御手段は、動作モードへの移行を受け付ける操作手段の操作とは異なった操作を行われたときに、前記動作モードで前記回転ブラシを回転させるか、または停止させるかを設定することにより、前記設定手段を前記モードを設定する前記操作手段とを兼ねることができ、専用の手段を設けることなく、前記回転ブラシの設定が行える。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電気掃除機の全体斜視図であり、図2は、同電気掃除機の制御のブロック図である。なお、上記従来例と同一部分については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図1、2において、20は第1の吸込具であり、21は、第1の吸込具20に着脱自在に装着される第2の吸込具であり、第2の吸込具21は、吸気経路8の一部を形成する延長管5に着脱自在に接続されている。第1の吸込具20には、従来同様に回転ブラシ10と、回転ブラシ10を駆動する電動機11を内蔵しており、電動機11には、吸気経路8に設けられた電力線12から第2の吸込具21を経由して電力が供給される。
【0025】
22は、操作手段4にて設定された電力を電動送風機2に供給するとともに、回転ブラシ10が所定の回転数で回転するよう電動機11に電力を供給して制御する制御手段である。
【0026】
図3に電動機11への電力供給制御の経路の回路構成図を示すが、図3に示すように、制御手段22は、その判断部をマイクロコンピュータ26で構成し、電動機11への電力供給量をマイクロコンピュータ26から送信されるトリガ信号により、電動機11の駆動手段となる双方向性サイリスタ27で制御を行う。
【0027】
マイクロコンピュータ26は、電動機11を位相制御しており、双方向性サイリスタ27のトリガタイミングを、電源のゼロクロスに対して変えることで、電動機11への供給電力を変化させることができ、電動送風機2に対しても同様の制御を行っている。
【0028】
23は、第1の吸込具20、第2の吸込具21の使用状態や接続状態を検出する状態検出手段であり、図3に示すように、検出部を第1の吸込具20に内蔵され電動機11に並列に接続された抵抗r2、r3と、第2の吸込具21に内蔵した抵抗r1で構成し、判断部として、マイクロコンピュータ26を用い、第1の吸込具20と第2の吸込具21の状態によって決まる、r1、r2、r3の合成抵抗と、抵抗RとでVddを分割してマイクロコンピュータ26に印加される信号電圧V1により、マイクロコンピュータ26が、第1の吸込具20と、第2の吸込具21の状態を判断する。
【0029】
第1の吸込具20は、電動機11に直列に接続された接触スイッチ28を備え、第1の吸込具20が床面などの被清掃物に接触していればオンし、接触していなければオフ構成となっており、被清掃物への接触が無ければ、電動機11への電力供給を強制的に遮断するようになっており、抵抗r3は、接触スイッチ28より電動機11側に、抵抗r2は、接触スイッチ28より反電動機11側に配置されている。
【0030】
24は、電動機11の回転によって誘起される起電力を検出する起電力検出手段であり、検出部は、状態検出手段23の検出部と兼ね、その判断をマイクロコンピュータ26にて行う。
【0031】
25は、通常は、集塵室6への塵埃の蓄積が満杯であることを報知する満杯報知手段として機能し、回転ブラシ10の回転、停止の設定が切り換わったことを報知する機能を兼ね備えたLEDで構成した報知手段であり、29は動作モード時に回転ブラシ10を回転させるか、させないかの情報を記憶しておく不揮発性の記憶装置である。
【0032】
また、マイクロコンピュータ26の片側と電力線12の片側のラインを共通の構成とすることにより、本体1とホース3の接続部は電気的に3本のラインで接続され、ホース3から延長管5、電動機11までは、電力線12の2本のラインのみで構成されている。
【0033】
操作手段4は、図3に示すように、SW1、SW2、SW3の複数のスイッチを有し、各々のスイッチを押されたときのR1、R2、R3、R4の合成抵抗値と、本体1側に配置された抵抗R0とでVddを分割してマイクロコンピュータ26に印加される信号電圧V2により、マイクロコンピュータ26が押されたスイッチを認識するようになっている。
【0034】
本実施の形態においては、SW1を停止スイッチとし、SW2とSW3を、電動送風機2と回転ブラシ10を夫々動作させる動作モードへ移行させるスイッチとする。
【0035】
以上のように構成された電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
操作手段4のスイッチSW2、またはスイッチSW3を操作すると、動作モードとなり、制御手段22によって、電動送風機2へ電力が供給されて動作を開始する。制御手段22は記憶装置29に記憶された情報を取り込み、この時、電動機11は、記憶装置29に記憶された設定で制御される。動作モードにおいて、停止スイッチSW1を操作すると、制御手段22は停止モードへの移行指示と判断して、停止モード、つまり、電動送風機2、電動機11共に電力供給を停止する。
【0037】
停止モードにおいて、停止スイッチSW1を操作すると、制御手段22は、動作モードにおいての回転ブラシ10の動作、非動作の切り換え指示であると判断して、現在、記憶装置29から取り込んでいる電動機11の動作設定とは逆の設定に切り換え、記憶装置29の記憶情報を切り換えた後の情報に更新する。
【0038】
これにより、回転ブラシ10の動作切り換え用のスイッチを設けることなく、回転ブラシ10の動作設定を切り換えることができるとともに、清掃する環境が日々変わらない一般の状況においては、清掃する毎に回転ブラシ10の動作の切り換えを行う必要がなく、使い勝手が向上する。
【0039】
また、回転ブラシ10の動作設定が切り換わった時に、満杯報知手段を兼ねた報知手段25を、回転ブラシ10が動作する設定に切り換わった時には1秒間の点灯、停止する設定値に切り換わった時には、1秒間点灯、1秒間消灯、1秒間点灯を行なうように制御手段22が制御することにより、停止モードで、回転ブラシ10の動作が確認できない状況でも、どちらの設定に切り換わったのか、使用者が容易に認識することが出来、しかも、専用の報知手段を必要としないので、簡単な構成で実現できる。
【0040】
動作モードにおいて、回転ブラシ10が動作する設定になっている場合、電動機11に電力が供給されている時は、図4に示すように、マイクロコンピュータ26は、双方向性サイリスタ27に対し、ゼロクロスから所定時間遅れたタイミングでトリガオンし、次のゼロクロスの前でトリガオフする位相制御を行っている。双方向性サイリスタ27がトリガオフしている時は、電動機11への電力供給は、一時的に遮断されるため、電動機11のインピーダンスを無視することができ、表1の(式1)〜(式4)に示すように、信号電圧V1はGNDに対して、Vddを、r1、r2、r3の合成抵抗と、Rとで分割した電圧が印加される。
【0041】
【表1】

【0042】
従って、マイクロコンピュータ26は、図4に示すように、双方向性サイリスタ27がトリガオフしている、ゼロクロスから所定の時間経過したタイミングT1にて信号電圧V1を判断することにより、第1の吸込具20と第2の吸込具21の使用状態、接続状態を判断することができる。
【0043】
状態としては、第1の吸込具20、第2の吸込具21共に吸気経路8上に接続され、かつ被清掃物に接触している状態と接触していない状態、第2の吸込具21のみが吸気経路8上に接続されている状態、第1の吸込具20、第2の吸込具21共に吸気経路8上に接続されていない状態の4つの状態を識別することができる。
【0044】
通常、電動機11に印加される電圧Eは、流れる電流をI、電動機11の内部抵抗をRaとすると、
【0045】
【数1】

【0046】
となる。Ecは電動機11が回転することによって発生する逆起電力であり、
【0047】
【数2】

【0048】
となる。
【0049】
双方向性サイリスタ27がトリガオフしている時は、電流Iは0であるが、回転ブラシ10は回転しているので、電動機11は起電力を発生しており、
【0050】
【数3】

【0051】
となり、電動機11にはEcの起電力が発生している。
【0052】
接触スイッチ28がオンしていれば、抵抗r1、r2、r3の合成抵抗値、
【0053】
【数4】

【0054】
に対して、Ecが影響して流れる電流Ic分だけ、回転ブラシ10の回転が停止している時にrcに流れる電流にオンされ、信号電圧V1には、Ecの影響を受けたレベルの電圧が現れる。
【0055】
この時、使用者が清掃を行う動作として、第2の吸込具21が装着された第1の吸込具20を被清掃面上を移動させると、回転ブラシ10は被清掃面から機械的な負荷を受けるが、電動機11に電力を供給して、回転力が発生しているため、回転ブラシ10と電動機11の回転数は、あまり影響を受けず、信号電圧V1は、使用者の動作に対して比較的安定したレベルを維持し、状態検出手段23は、高精度に状態を検出することができる。
【0056】
しかしながら、電動機11への電力を完全に停止した状態で、使用者が第2の吸込具21が装着された第1の吸込具20を床面上で操作すると、その動作に応じて回転部ブラシ10が回転し、それに連結された電動機11も回転する.このため、図5に示すように、状態検出手段23の検出部に起電力Ecの影響を受けたノイズが信号電圧V1に重畳し、第1の吸込具20が被清掃面に接触していても、マイクロコンピュータ26は、あたかも、第1の吸込具20が、被清掃面から離れた、もしくは、第1の吸込具20または、第2の吸込具21が吸気経路8から外されたと誤認識してしまう。しかも、式6に示すように、起電力のレベルは回転数、つまり回転ブラシ10の回転数に比例するため、使用者の第1の吸込具20の操作方法によって、ノイズの重畳の仕方が変わってくる。
【0057】
そこで、本実施の形態では、マイクロコンピュータ26は、図6に示すように、電動機11に電力を供給していない時は、前述したゼロクロスから所定のタイミングT1で信号電圧V1のレベルを確認した後、更に、所定のタイミングT2でも信号電圧V1のレベルの確認を行う。タイミングT1でのレベルとタイミングT2でのレベルが同じであれば、一時情報として起電力によるノイズが重畳していないと判断し、レベルが異なればノイズが重畳していると判断する。この確認をゼロクロス毎に所定回数行い、ノイズが重畳している一時情報の回数が所定回数以上であれば、電動機11による起電力が発生しているという情報を確定する。
【0058】
マイクロコンピュータ26は、起電力が発生しているという情報を確定すると、タイミングT1で検出した第1の吸込具20、第2の吸込具21の状態情報がどの状態であっても、第1の吸込具20と第2の吸込具21が吸気経路8上に装着され、かつ、被清掃面に接触している状態へと補正し、第1の吸込具20、第2の吸込具21の状態情報を確定する。
【0059】
回転ブラシ10と電動機11は、第1の吸込具20に設けられており、かつ、起電力をV1で検出できる状態は、第1の吸込具20と第2の吸込具21が吸気経路8上に装着され、かつ、被清掃面に接触している状態しかあり得ないため、この補正が有効となる。第1の吸込具20が被清掃面から離れる等上記以外の状態では、V1には起電力によるノイズが重畳してこないので、電動機11への電力供給を停止している状態では、タイミングT1とタイミングT2とのレベルが等しくなり、起電力が発生しているという情報を確定する必要は無く、また、タイミングT1でのレベルのみで、第1の吸込具20、第2の吸込具21の状態を検出することができる。
【0060】
従って、回転ブラシ10の回転が停止していても、第1の吸込具20、第2の吸込具21の4つの状態を高精度に検出することができ、しかも、その状態を本体1内のマイクロコンピュータ26に送信するのに専用の信号線を設ける必要がないので、第1の吸込具20、第2の吸込具21、吸気経路8の構成を複雑にすることなく実現することができる。
【0061】
また、動作モードにおいては、制御手段22によって、電動送風機2は位相制御され、第1の吸込具20、第2の吸込具21の使用状態に応じて供給する電力を変えるように制御されており、第1の吸込具20、第2の吸込具21が吸気経路8に装着され、被清掃面に接触しているときは、電動送風機2への供給電力を高くして清掃能力を向上し、接触していないときは清掃状態ではないので、供給電力を低下させて省エネを図る。
【0062】
また、吸気経路8に、第1の吸込具20、第2の吸込具21の何れも装着されていない時は、再び供給電力を高くするようにし、第2の吸込具21のみが吸気経路8に装着されている時には、更に供給電力を上げて第2の吸込具21の清掃能力を高めるようにする。以上のように、第1の吸込具20、第2の吸込具21の使用状態に応じて電動送風機2を制御することにより、それぞれの状態での清掃能力を向上させることができる。
【0063】
更に、回転ブラシ10が停止設定の状態での動作モード時に、マイクロコンピュータ26に入力される信号電圧V1が、第1の吸込具20、第2の吸込具21が吸気経路8に装着され、被清掃面に接触していない状態が確定し、かつ、信号電圧V2が、電動機11による起電力が発生していない状態が確定していれば、使用者によって第1の吸込具20は被清掃面に接触しているが、清掃のための操作をしていないので、制御手段22が電動送風機2への供給電力を低下させることにより、更に省エネを向上することができる。
【0064】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における電気掃除機の制御のブロック図を示すものである。なお、上記第1の実施の形態と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図7において、上記第1の実施の形態と異なるのは、動作モードにおいて回転ブラシ10が停止設定である時に、起電力を検出しない構成を取っており、任意の周期もしくは一定周期tで一時的に電動機11に電力を供給する一時供給手段30と、第1の吸込具20の被清掃面への接触、非接触を検出する第1の状態検出手段31と、第1の吸込具20、第2の吸込具21共に装着され被清掃面とは非接触か、また、吸気経路8上に第2の吸込具21のみが装着されているか、または、第1の吸込具20、第2の吸込具21共に接続されていないかの状態を検出する第2の状態検出手段32と、第1の状態検出手段31と第2の状態検出手段の検出結果より、第1の吸込具20、第2の吸込具21の状態を確定、判断する判断手段33を設けた点である。
【0066】
第2の状態検出手段32は、第1の実施の形態の状態検出手段23と同様の構成で、判断部をマイクロコンピュータ26に有しており、第1の状態検出手段31は、その検出部を図3に示すホース3内に設けた抵抗rで構成し、判断部をマイクロコンピュータ26に有する。
【0067】
以上のように構成された電気掃除機について、以下、その動作、作用を説明する。
【0068】
動作モードにおいて、回転ブラシ10の動作を停止する設定を選択されていると、第1の実施の形態でも説明したように、使用者の操作する第1の吸込具20の動作に応じて、信号電圧V1に起電力によるノイズが重畳してくる。しかし、これは、第1の吸込具20の接触スイッチ28がオンしている状態、つまり、第1の吸込具20、第2の吸込具21が共に吸気経路8上に装着され、かつ、被清掃面に接触している状態のみ、発生する現象である。
【0069】
マイクロコンピュータ26は、信号電圧V2に入力される波形に対し、図8に示すように、電動機11をトリガオンするタイミングT4より前のタイミングT3で、操作手段4での操作状態を判断し、タイミングT4以降のタイミングT5で、第1の状態検出手段31としての判断を行うことにより、本実施の形態においても、第1の状態検出手段31、第2の状態検出手段32の各々のための専用の信号線を設けることなく実現することができる。
【0070】
図3において、抵抗rの値を抵抗値の小さな数Ωのもので構成し、流れる電流Iが0〜約1Aになる電動機11で構成しているとする。電動機11がトリガオンしていない時は、信号電圧V2は、Vddを操作手段4の抵抗R1、R2、R3、R4の合成抵抗と、R0を分割した電圧となり、例えば、スイッチSW2を押されているとすると、
【0071】
【数5】

【0072】
となる。この時電力線12に流れる電流は微少であり、r<<R0、R1、R2、R3、R4とすることにより、抵抗rは無視することができる。
【0073】
これにより、タイミングT3で判断することにより、電動機11の動作に関わらず、操作手段4の操作状況を判断することができる。
【0074】
電動機11がトリガオンしていると電流Iが流れているので、抵抗rの両端にはr×Iの電圧降下が発生する。抵抗rと電動機11の構成により、この電圧降下は数Vとなり、前述した操作手段4の信号電圧に重畳されて、無視できないレベルでV2に現れる(図8のT5参照)。電流Iは、回転ブラシ10が受ける機械的負荷による負荷電流に大きく左右されるため、電動機11の起電力にはほとんど影響を受けない。また、第1の吸込具20が被清掃面から離れ、接触スイッチ28がオフすると電流Iは流れなくなるので、第1の状態検出手段31の判断部は、タイミングT5でのV2のレベルが所定のレベルより高ければ、第1の吸込具20が被清掃面に接触しており、低ければ、接触していないと判断することができる。
【0075】
一時供給手段30は、制御手段22より、動作モードであり、且つ回転ブラシ10の停止設定であるという情報を受け取ると、電源周波数の半周期を1つの単位として、所定の周期tに1回、双方向性サイリスタ27をトリガオンし、電動機11に一時的に電力を供給する。この時、周期tとトリガオンする位相制御のタイミングは、回転ブラシ10が回転しない、もしくは、ほとんど回転しない程度のものになるよう設定している。第1の状態検出手段31は、一時的に供給された電力に対してV2のレベルを監視する。
【0076】
また、第2の状態検出手段32は、第1の実施の形態の状態検出手段23と同様の判断を行う。
【0077】
判断手段33は、第1の状態検出手段31と第2の状態検出手段32の状態情報を受け取り、第1の状態検出手段31の情報を優先して判断を行う。つまり、第1の状態検出手段31の状態情報が被清掃面への接触している状態であれば、状態の確定情報とし、接触していない状態であれば、第2の状態検出手段32の状態情報を確定情報とする。
【0078】
これにより、電動機11の発生する起電力とは無関係に、第1の吸込具20、第2の吸込具21の状態を検出できるので、高精度な制御が可能となる。
【0079】
尚、本実施の形態において、電動機11に流れる電流を0V〜約1Aとし、抵抗rを数Ωとしたが、電動機11の電流に応じて、V2に重畳する電圧が、所望の電圧となるよう抵抗rを構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、回転ブラシを停止していても、吸込具の使用状態を正確に判断し、その吸込具の使用状態に最適な清掃を行うことができるもので、電動機等の電気負荷を有する吸込具等のアタッチメントを使用する各種機器に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の全体斜視図
【図2】同電気掃除機の制御のブロック図
【図3】同電気掃除機の電動機への電力供給配線図
【図4】同電気掃除機の吸込具の状態信号説明図
【図5】同吸込具の起電力発生時の状態信号説明図
【図6】同起電力の検出説明図
【図7】本発明の実施の形態2における電気掃除機の制御のブロック図
【図8】同電気掃除機の吸込具の被清掃物への接触検出説明図
【図9】従来の電気掃除機の全体斜視図
【符号の説明】
【0082】
1 本体
2 電動送風機
3 ホース
4 操作手段
5 延長管
8 吸気経路
10 回転ブラシ
11 電動機
20 第1の吸込具(吸込具)
21 第2の吸込具(吸込具)
23 状態検出手段
26 マイクロコンピュータ
27 双方向性サイリスタ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引風を発生する電動送風機を内蔵する本体と、前記電動送風機と連通する吸気経路に着脱自在に接続される吸込具と、前記吸込具に設けられ電動機で回転駆動される回転ブラシと、前記電動機を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の停止時に前記吸込具の被清掃面との接触状態及び前記吸気経路との着脱状態を検出する状態検出手段とを備えた電気掃除機。
【請求項2】
電動機の起電力を検出する起電力検出手段を設け、状態検出手段は、前記起電力検出手段の検出結果に応じて補正をかけた結果を出力するようにした請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
状態検出手段を、吸込具の被清掃面との接触状態を検出する第1の状態検出手段と、前記接触状態以外の他の状態を検出する第2の状態検出手段で構成し、前記第1の状態検出手段と前記第2の状態検出手段の検出結果より前記吸込具の状態を判断する判断手段と、任意のあるいは所定のタイミングで所定時間、電動機に電力を供給する一時供給手段を有し、前記第1の状態検出手段は、前記一時供給手段が前記電動機へ電力を供給するタイミングで前記電動機の負荷電流より前記吸込具の状態を検出するようにした請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項4】
吸込具を、主に床面を清掃する第1の吸込具と、前記第1の吸込具に着脱自在に装着されると共に吸気経路に着脱自在に接続される第2の吸込具とで構成し、状態検出手段で、前記第1の吸込具と前記第2の吸込具との着脱状態をも検出するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項5】
状態検出手段を、吸込具の状態を検出する検出部と前記状態を判断する判断部で構成し、前記判断部を本体に設け、電動機に電源を供給する電力線を吸気経路上に配置し、前記検出部による検出情報を、前記電力線を介して前記判断部に伝達するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
状態検出手段の検出結果に応じて前記電動送風機への供給電力を変えるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項7】
起電力検出手段が電動機の起電力を検出しない時は、電動送風機への供給電力を低下させるようにした請求項2〜6のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項8】
吸込具が吸気経路に接続されている時のみ、電動送風機への供給電力を低下させるようにした請求項7に記載の電気掃除機。
【請求項9】
電動送風機と電動機の動作モードを設定する操作手段と、前記電動送風機への供給電力が異なる、もしくは、前記電動機の回転数が異なる複数の動作モードを有して前記電動送風機と前記電動機を制御する制御手段を設け、前記電動送風機と前記電動機が停止する停止モードの時に、前記動作モードで前記回転ブラシを回転させるか、または停止させるかを設定する設定手段を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−25961(P2006−25961A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206910(P2004−206910)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】